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2003年 5月臨時議会
 高村議員の教育委員会委員選任賛成討論
(5/21)
 第2号、教育委員会委員の選任について賛成の討論を行ないます。

 前島章良さんを長野県の教育委員に、という知事の提案は、2月県議会最終日の3月18日に、島田基正議員・石坂ちほ議員2人の賛成討論、反対討論はないまま、採決で否決しました。
 改めて、今、臨時県議会に、知事より前島章良さんをと、提案されました。
いまの教育現場の状況と、長野県で始まっている30人規模学級などの教育の改革をさらに進めるために前島章良さんを教育委員にという提案を積極的に受けとめ賛成の立場から討論いたします。

 わが子の健やかな成長を願わない親はいませんし、県民誰もが子どもたちの幸せを心から願っています。学校現場では、多くの先生方が、忙しさに追われながらも、どの子にもゆきとどいた教育を、とがんばっています。にもかかわらず、子どもたちを取り巻く環境は厳しく、いじめ、不登校も残念ながら有効な解決策を見出せないまま増え続けています。1ヶ月に一度も学校に、行かれなかった子どもは、小学校で700人、中学校で2000人にものぼっています。この数には、1ヶ月間に一度、半日の登校・保健室・げたばこ登校など学校の敷地内に行った子は入っていません。いったいどれだけの子どもたちが本来楽しく学べるはずの学校に行かれず、義務教育を受けられないまま、放置され父母、教職員が心を痛め苦しんでいるのでしょうか。
 子どもたちに先生の目がよりゆきとどくようにとの願いをこめた30人学級のとりくみが長野県をはじめいくつかの地方自治体から意欲的に始まり、不登校の子どもなどを対象にしたフリー・スクールへの行政支援が文部科学省の検討課題にさえならざるを得ない事態です。

 前島さんの当時中学1年生の長男は、平成9年1月、「いじめられていた、ぼくみたいなことは、二度とくりかえさないようにしてほしい」との遺書を残して自殺しました。
 以来、前島さんは悲しみを乗り越えて、事実解明を求めて活動し、平成11年4月には、いじめや校内暴力で子どもを亡くした親のネットワーク組織「いじめ・校内暴力で子どもを亡くした親の会」を発足させ、その事務局を努め全国を飛び歩き、アドバイザーとして活躍しています。
 このような時、子育て世代を代表し、しかも、みずからのお子さんをいじめによる自殺で失うという最悪の事態から立ち上がり、悲しみと向き合い、悲しみを乗り越えて、全国の悲しみに打ちひしがれている親御さんや子どもたちに希望を与えてがんばっている前島章良さんが教育委員になれば、教育行政に何よりも大切な子どもたちや親の思いが届き、血の通った教育行政が前進できるに違いない、と期待したのは私ばかりではないと思います。
 前島さんは教育委員に推薦されたとき「多感な時期の子どもの悩みや迷いをともに受け止めてきた経験を、県の教育に反映させていきたい」と述べられております。

 前島さんの教育委員に反対する理由として、前島さんが須坂市教育委員会を相手に裁判係争中であることが問題にされたようです。しかし、この点は教育委員会が繰り返し「何の支障もない。」と答弁しています。何よりも前島さんは、罪を問われている加害者ではなく、被害者です。前島さんの裁判は、自殺した息子さんの遺書に「暴力ではないけれど、暴力よりも悲惨だった。悲しかった。僕はすべて聞いていた。あの4人にいじめられていた。僕は死ぬ。」と書かれていたにもかかわらず、「自殺の原因はいじめではない。」という教育委員会の判断に納得できないからでした。「あの4人にいじめられていた。僕は死ぬ。」という遺書を残して自殺した息子の死はいじめが原因ではない、と告げられて、納得する親が果たしているのでしょうか。なぜ、死ななければならなかったのか、真実を知りたいと願うことが、なぜ、いけないのでしょうか。子どもの命と引き換えにされたものに立ち向かいたいと願うことは、教育行政にとってマイナスなのでしょうか。
 私は、「裁判係争中」を理由に、教育委員への選任を認めないのは、まさに言いがかり以外のなにものでもないことを申し上げたいと思います。

 この人事案件の承認にあたって、今、わたしたち県議会のひとりひとりが、このどちらの側の県民の立場にたつのかが問われているのではないでしょうか。人事案件の否決という事態は、提案されている人の人格の否定、人間としての価値の否定にもつながりかねず、犯罪者や社会的道義に反する人でない限りは、極めて慎重な扱いが求められるものであり、そもそも私たち県議会議員にそんな重大な、人を品定めするような権限は与えられているものではありません。

 前議会で否決されて以降、多くの関係者のみなさんや教育問題で悩んでおられる父母のみなさんから、前島章良さんの教育委員の選任を求める声が多く寄せられています。
 5月21日付けの長野地区 父母の署名ですべての県会議員に寄せられた手紙の一部を紹介させていただきます。
 「過日私たちは、前島章良さんのお話をお聞きする機会がありました。いじめによりわが子を失われ、どん底の苦しみから、あらためて子育てや教育のあり方を語られました。前島さんのお話は、深く胸をえぐり涙なしには聞けませんでした。
 前島さんが教育委員に選任されるかもしれないとお聞きし、子育ての体験をもつ私たち、わが子がいじめや不登校の体験で苦しんでいたもの、現に今苦労しているものにとって大いに期待できるものとの思いを強くしました。このような体験者が教育委員に選任されれば、私たちの思いをきっと実現していただけると思い、県議会議員のみなさま方に私たちの気持ちをご理解いただき、議会に反映していただければこの上ない喜びであります。なにとぞよろしくお願いいたします。」といっておられます。

 最後に、「県教育委員は、平成14年(2002年)10月13日以降、すでに約7ヶ月にわたって空席となっております。長野県教育が抱える山積する課題を速やかに解決し、教育県としての輝きを取り戻すためには、適任者を一刻も早く県教育委員に任命することが、220万県民から選ばれた県知事に課せられた責務であると考えます。」と提案者である知事もおっしゃっています。これ以上空白の期間をおいてはいけないと思います。
 今回の県議選挙にあたって、当選された多くの議員の皆さんが、行き届いた教育という趣旨の公約をされています。
 4月から、長野県は3年生まで30人学級が拡大され、多くの父母に希望を与え、全学年拡大への期待が広がっています。
 新しい県議会のスタートにあたって、あれこれの政治的思惑でなく、何よりも子どもたちのしあわせのために、議員のみなさんが賛同されますよう呼びかけまして、賛成討論といたします。


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