back

2003年 7月議会
 高村議員の人事委員提案賛成討論
(7/11)
 第11号議案 人事委員会委員の選任についてのうち、茅野實氏の人事委員提案に賛成の討論を行ないます。

 まず最初に、この人事案件についての具体的な討論を行なうことに先立って、人事案件に対する議論のあり方について、私が感じている点について、一言述べさせていただきます。
 人事委員の選任について定めた地方公務員法第9条3項にも「……罪を犯し刑に処せられた者は、委員となることができない。」と規定されていますが、社会的に容認できない犯罪を犯したものはもちろんのこと、その他、法に定める欠格条項に反しないかぎり、人事に関する任命権者の知事の提案を尊重する、ということは、私たち日本共産党県議団がずっとつらぬいてきた人事案件に対する基本的な姿勢です。
 しかし、田中県政になってからの人事案件の提案に対して、しばしば、提案されている候補者の人権や思想・信条にかかわる問題までもが公の場で議論されるのがあたりまえのようになっていることに対し、私は大きな疑問を感じるものです。提案の趣旨について提案者である知事にただすことはあっても、提案されている候補者を議場や委員会に呼んでただしたりすることなどは議会として踏み込みすぎる行為ではないのでしょうか。人の人格や値打ちを論じると言うような権限が果たして私たち県議会議員に許されているのでしょうか。人事案件を議論する際の節度を持ったルールの確立が必要ではないかということを痛感するものです。

 さて、人事委員会は、県職員の人事や給与、勤務時間などの勤務条件に関して必要な措置をとることを任務とし、職員に対する不利益な処分についての不服申し立てを審査するなどの重要な任務があります。地方公務員法第9条2項では、「委員は、人格が高潔で、地方自治の本旨および民主的で能率的な事務の処理に理解があり、かつ、人事行政に関し識見を有するもののうちから、議会の同意を得て、地方公共団体の長が選任する。」と定めており、茅野實さんは人格、識見から見てふさわしい方であることは、すでにこの間の知事の答弁、説明からも明らかと思います。
 県内最大の金融機関、そして全国の地方銀行の中でも実力を持った銀行の頭取、会長、顧問を歴任され、みずから新人事制度を導入されるなどの企業経営の経験をはじめ、常に時代にふさわしい改革に取り組まれてきました。また、みずから設立された県環境保全協会の会長として、地球環境について国際的な視点に立った建設的な提言を行なわれている方であります。茅野氏は、幼少の頃に周辺の野山を駈けずり回り、蝶々の採集に明け暮れ、その美しさに自然の雄大さと神秘さに心を奪われた経験から、生命の宝庫である長野県の自然環境が、大型開発優先の政治・経済によって破壊が進む事に心を痛めておられます。一県民としても休日にはゴミひろいにも精を出す実践家としての飾らないリベラルな人柄は、すでに多くの県民が信頼をよせているところではないでしょうか。

 今回の人事委員会の委員の提案にあたり、国籍条項撤廃の考え方を賛否の基準にするというようなご意見もありますが、時代の大きな発展の中で、国際化が進み、個人の人格がより尊重される時代となり、定住外国人の参政権の問題も大きな現実的な課題となってきているとき、確かに国籍条項問題は重要な課題であり、今後の議論が人事委員会においても、おおいに時代にふさわしく論議が交わされることが重要であります。しかし、現時点では、人事委員会委員の適否を決めるのに、この国籍条項問題をとりざたするのはあまりにも狭い見方、考え方であり、ある一定の見解を持つ委員しか認めないとすることこそ、委員会の独立性・中立性を侵すものではないでしょうか。

 ちなみに、時代の流れは確実に国籍条項撤廃の方向に向いています。すでに、都道府県レベルでも高知県、神奈川県などで撤廃が始まっていますが、地方公務員法には、外国人が公務員になれないという明文規定はありません。内閣法制局は、1953年に「公務員に関する当然の法理として、公権力の行使または国家意志の形成への参画に携わる公務員となる者には日本国籍が必要。」との見解を出し、サンフランシスコ条約の発効後間もない時期のこの見解を根拠として国は自治体の国籍条項の撤廃を制限してきました。高知県の橋本知事は、「『当然の法理』などと言う法律でもないものを持ち出して無理に基準にするのは法治主義の原則に反する。」という見解を示し、たとえ公権力の行使などがあっても、公務員の仕事はすべて法律や条例、通達の枠内にしばられており、職員相互のチェックもあるので、「外国人だからといって特別の裁量が働く余地は無い。」としています。さらに「地方行政は住民を統治するものではなく、住民にサービスする機関であり、地域のために仕事をしてくれる人なら外国人でも問題はない。」「国際社会の中で日本が生きていくためにも、国籍条項の撤廃は必要だ。」と主張しています。
 いずれにしても、この問題は、今後おおいに県民的議論も必要とする問題ではないでしょうか。

 また、一部に、茅野實さんが知事の後援会「しなやか会」の顧問であることを問題にする意見があります。良識ある茅野さんは、仮に正式にこの人事案件が承認されたあかつきには、誤解を受けないよう、この問題にも役員を辞任されるなどしかるべき対処をなされる方と確信しています。
 また、労使関係の中立に反し、適任でないとのご指摘がありました。これまで、茅野氏がたびたびおこなってきた知事に対する筋の通った辛口のアドバイスを私はとき、これまでの八十二銀行頭取、会頭として、地域の発展に尽力をされてきた姿勢をみるとき、私は、公正中立な判断を曲げるような方には思えないのであります。
 吉村知事の時代、後援会長であった木島平村村長であった湯本安正さんは、知事後援会長の現職のまま、県の社会福祉協議会の会長、森林審議会の会長をはじめ各種の県の審議会などの役職を同時に歴任されておりました。そのほかにも、吉村知事の後援会婦人部長や後援会役員を勤められている方がやはり各種の県の審議会などの委員を歴任されていた方がいました。そのことは多くの県民の知るところでしたが、当時、県議会でそのことを問題にされた方は誰もおられませんでした。

 ご承知のように、人事委員会は3名の委員全員がそろわなければ会議を開き、審議することができません。今回の人事案が否決されれば、人事委員会の機能が停止し、停滞がもたらされる可能性があります。日々、県民の奉仕者としてがんばっている県職員にとっても人事委員会が機能しない、というような事態は、到底納得できるものではありません。
 また、このような県政の混乱を招くことは県民の理解を得られるものではありません。

 県議会の中の良心の声として、人事問題を政争の具にするべきではないと言うご意見がありますが、私もまったく同感です。深い見識を持ち、人格、識見とも豊かな人物である茅野實さんの人事委員の選任に心から賛成の討論といたします。


top back