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2004年 2月議会
 「長野県青少年保護育成条例」(仮称)の制定を求める請願について(請願第27号)
備前議員の反対討論(3/23)

* 記事はすべて、共産党県議団事務局のテープおこしによるものです。


 請願第27号「長野県青少年保護育成条例」(仮称)の制定を求める請願について反対の立場で討論を行います。
 長野県民はかつて計画された風俗営業法上の特殊浴場を一つも作らせず、競輪場、競馬場もなく、県下の市町村に持ち出されてきた場外馬券売場、舟券売場も作らせないできました。県民の運動とそこに示された県民の良識は長野県民の誇りです。さらに県民はポルノ・コミック誌など社会的に有害図書が問題になった時にも、県書店組合などの自主規制の運動で、これらの図書を売らない・置かせないステッカー運動や、売る場合もレジの横に置いて未成年者には売らない、などの取り組みで乗り越えてきた経験をもっています。
 私は条例で取り締まることを重点にするやり方ではなく、これまでのように県民の世論と運動で青少年に有害な環境をなくしていくことが大切であると思います。
 すでに「条例」が設置されている他の都道府県の状況と比較してみますと、長野県は有害図書や有害自動販売機の設置台数は全国で13位であり、また人口あたりの台数でも飛び抜けて多い訳ではありません。また県下のここ数年の推移を見ましても、有害図書・書籍やアダルトビデオ取り扱い店も減少あるいは横這い傾向にあります。これも広範な県民の住民運動とこれら取り扱い店の自主的な規制による成果であると言えます。
 私たち日本共産党は子ども達の健全な成長のためには社会の病理現象、道徳的退廃の打開を大人の責任で行うことが必要であるとの立場から、表現の自由や営業の自由を尊重しながら法的規制も一定認めつつ、子ども達の健やかな成長を阻む有害環境をなくすためには、何よりも大人社会の責任で大人社会みずからがメスを入れなければならないと考えるものです。
 援助交際などをはじめとする青少年を取り巻く諸問題が罰則や取り締まりで解決するものでないことは、多くの人々が指摘しているとおりです。根本的には一人一人の生き方に関わる問題であるだけに、生きる力を育てるための教育や、家庭や学校、地域社会の中で大人の積極的な支援が必要です。
 長野県では従来より、青少年を取り巻く社会環境の浄化については条例規制によらず、県民一人一人が自分自身の問題として受け止め、家庭、学校、地域、関係団体及び行政が一体となった県民総ぐるみの運動を展開して、関係業界の自主規制及び行政の啓発努力の上に多くの成果を上げてきました。この上に条例制定を行うことで、今まで培ってきた県民運動が後退するような懸念もあるわけです。
 本年1月に発行された平成15年度の長野県有害環境実態調査結果がありますが、この中に各市町村の有害自動販売機NO宣言の実施状況が集計されています。これは各自治体が自治会区や小学校区、そして市町村全域で宣言をしてこれに対処しようとする住民運動で青少年を守っていこうとするものです。これを見ますと、むしろ県内の市として唯一「青少年保護育成条例」のある長野市は、この住民運動の積み重ねである状況調査へはなんと未回答となっています。このことからも条例をつくったからといって、それまで積み上げてきた住民の地道な運動の成果が結果的に軽んじられてしまうことにも危惧を抱くわけです。
 他の都道府県が条例を制定していても、青少年の犯罪が一向に減少していないことからも、その効果には疑問があります。
 少年犯罪や少年問題の原因はさまざまですが、その背景の一つに、一人一人の子どもの自己肯定感情(自分を大切な存在だと思う感情)が深く傷つけられている問題があることは今多くの関係者や専門家が共通して指摘していることです。この自己肯定の感情が乏しければ、他人を人間として大切にする感情も乏しいものとならざるを得なくなります。子ども達が、自分が人間として大切にされていると実感でき、みずからの存在を肯定的なものと安心して受け止められるような条件を、家庭でも、地域でも、学校でも、つくることが切実に求められているのです。
 さらに社会的モラルの問題はその性格からいって、上からの管理、規制、統制、押しつけを強めるという立場では解決できないどころか、かえって有害な作用を子ども達に及ぼす可能性も有ります。それは条例によって縛るのではなく、家庭、学校、地域が共同して子ども達の悩みに応え支える得る住民運動を中心に進めていくことが大切であると思います。従って、今すぐに条例制定の必要性はなく、この請願は不採択とすべきであると考えるものです。以上申し上げまして、反対の討論といたします。

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