2004年 12月議会
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12月県議会が最終日を迎え、会期を延長してもなお、知事からの山口村越県合併関連議案の提案がないという事態の中で、県議会が苦悩の中での選択として、地方自治法で認められた議員の議案提案権を使い関連議案を提案せざるをえなくなったことに対し、賛成の討論を行ないます。 まず最初に、改めて確認しておかなければならないのは、それが越県合併であっても、県内合併であっても、その自治体が合併の道を選ぶのか、合併せずに自立の道を選ぶのかは、あくまでそこに住む住民自身の責任において決めることであり、住民が選択した結論は尊重されなければならない、ということです。この原則が守られなくなれば、市町村が議論を積み重ね、住民投票や意向調査などでいったん決定したことを、知事や県議会の思惑で覆しても許されるということになってしまい、市町村が意思決定をすることの意味はまったく無くなってしまいます。そんなことになれば、住民自治や民主主義のルールそのものが吹き飛んでしまい、大混乱です。 第一法規出版の注釈「地方自治法」によれば、「関係市町村から廃置分合または境界変更の申請が提出された場合には、都道府県知事がその形式および内容について審査し、都道府県議会の議決を経ることになる。申請に瑕疵がある場合や、廃置分合が適切を欠き、または不合理である場合に知事が独自の判断で都道府県議会の議決に付さずに握りつぶすことができるかどうかが問題になる。行政実例および下級審判例は積極に解しているが、この見解には疑問がある。軽微な瑕疵について補正を命じたり、申請そのものに重大明白な手続き上の瑕疵がある場合に手続きのやり直しを求めたりすることはできると解してよいが、廃置分合の政策上の不適正や合理性の判断については、知事が意見を付して議会の議決にゆだねるべきものと解するのが妥当である。」としています。 知事自らが合併重点支援地域に指定し、職員を派遣して財政シュミレーション作りや事務手続きの準備を応援し、賛成・反対の両派が納得のうえの投票方式による意向調査の結果合併賛成が多数となり、議会の議決を経て県に申請があげられてからすでに8ヶ月が経ちましたが、その申請は異議があるとの具体的な知事の意思表示もないまま、むしろ合併に向かっての事務手続きや合併を前提とした子ども達の交流が日々進む中で、村からの申請は事実上放置されてきました。 議員提案の議案が付託された本日の総務委員会で、私は、改めて参考人として御出席いただいた山口村の教育長に、申請が上がってから今日までの間に、知事からの明確な意思表示さえあればここまで進まなかったであろう子ども達の交流の実態と、すでに心は中津川市へと向いている子ども達の気持ちが、もし今、知事が総務省へ申請しないことになり、8ヶ月前に戻れるのかどうかをお聞きしました。教育長からは、そんなことはとても子ども達に到底説明できないことであり、中学校へ進学する子は制服をどうしようか、修学旅行の行き先も決められないと苦悩の答弁をされました。 「少数であっても長野県民であり続けたいという人々を、県知事として護らなければならない責務がある。」「葛藤し続けている。」という無念の思いがあっても、もう、これ以上の引き伸ばしは道義上許されません。 提案説明の中で、財政シュミレーションについてのお話がありました。提案者と私は少し意見が違いますが、財政シュミレーションはあくまで、その村が描く将来の自治体の姿、つまり、その前提条件をどう決めるのかでまったく違うものになります。地方交付税や各種補助金の大幅削減でますます厳しい財政状況の中で、全国どの地方自治体も大変な苦労をしています。合併特例債を条件に、期限を区切ってのいわゆる「平成の大合併」に、私は基本的に反対です。特例債がソフト事業には使えず、結局は借金であることから、合併したからといって、必ずしもばら色の未来ばかりとは言えず、山口村と同等、むしろ財政力指数はかなり厳しい自治体でも合併しない道を選択しているところもあります。しかし、そのどちらの道を選ぶのかは、あくまでそこに住む住民です。北山議員の質疑の中にありましたが、財政力が厳しくても自立を選んだ、泰阜村、栄村、その他の村々は村民自身が自立を選んだのであって、決して知事や県議会が自立を決めたり押し付けたのではありません。 合併に賛成の村民が多数であるという現実のもとで、賛成、反対の住民が、あくまで心を開いて話し合い、その結果として合併はやはり考え直したい、反対したい、長野県に残りたいという村民の多数派が、村の中で作られない限り、どんなに村の外で、山口村への思いを寄せる署名が沢山集まろうとも、外からの力で村民の将来を決めることはできません。 「寄らば大樹の陰」と田口議員はおっしゃいましたが、同じ村に一緒に住む人たちで自らが多数派を形成することをあきらめて、知事の権限に「寄らば大樹の陰」と結論を頼ることで、本当の自立が、村民の幸せがあるのでしょうか。 19日付けの信濃毎日新聞に意見広告が載りました。皆さんもご覧になったこととおもいます。私も尊敬をいたします井出孫六をはじめ優れた文化人の、そして良識ある皆さんと思われます。「失いたくない 信州人の宝。 藤村の山口村を救うことは長野県を救うこと 山口村を失うことは 長野県を失うこと」尊敬すべき文化人の皆様のこのご意見には、私は本当に残念であり、賛同をできません。山口村は、藤村は日本の財産です。山口村は決して文化人の皆様の持ち物ではありません。 今ここに、苦悩の中からのぎりぎりの選択として、本来知事の提案によるべきこの議案を、議員提案という異例の形で提案せざるを得なかった、提出者、賛同者となった私たち長野県議会議員一同は、決して自ら好き好んでこの議案を提案、賛同するわけではありません。好むと好まざるとにかかわらず、今この歴史の瞬間に長野県議会議員である私たちは、山口村や島崎藤村への思いや、「平成の大合併」に対する賛否や見解の違い、立場の違いをこえて、村民多数が自らの意志で選んだ道、住民の意思、住民自治を尊重しなければならないという一点で一致しています。 本来の提案者である知事からのご提案が未だされない以上、地方自治法で認められた議員としての権限を使い、最大限の努力をすることが私たちの責務です。 本日の総務委員会で最後に、もしかしたら長野県木曽郡山口村最後の村長になるかもしれない加藤村長のご挨拶を聞きながら、私は様々な思いが駆け巡り涙をこらえることができませんでした。長野県民である山口村の人々が岐阜県民になるかもしれないことに身を引き裂かれる思いがしない県民が一体どこにいるでしょうか。しかし、それが村民多数のみなさんの選択であるならば、それを尊重し、この県議会の議場で領土や財産の分捕り合戦のようなこえを荒げる争いはもう止めたいと思います。例え岐阜県民となっても、山口村の歴史や文化を引き継いで、どうか幸せに暮らせるよう、そしてこれだけ議論をした越県合併の議論のこの機会に両県の交流と友好を一層深めたいと心から願っています。 知事に於かれましても、住民自治尊重の立場で、220万県民のための県政改革に専念されますよう心から要望し、私の討論といたします。 |