5.高校改革プランについて
最後に教育行政について、高校改革プランについて教育委員長にお聞きします。
先日の山口県の高校での爆発事件や、あるいは、中学生の親や兄弟殺人など一連の少年がひきおこした事件は本当に心を痛めるものです。私は今日の子どもたちの間でのいじめや暴力・引きこもり・不登校、そして少年犯罪の多発など、これらは大人社会のゆがみの反映であるとともに、国連が日本政府に対して特別勧告している「極度の競争的な教育制度による影響」がでてきていることを注視しなければならないと思います。
先日の事件を受けて日本教育新聞には全国高校生活指導協議会の教諭が「『進学校』の生徒の中には『非効率』な行事指導やコミュニケーション育成の場が失われ、『大人』になれないまま18歳を迎える者もいる。今、学校のもつ非効率的な人間関係醸成部分に目をむけ直すことが必要ではないか」という所感が掲載されています。そのとおりだと思います。
今、このような社会のあり方をただしていくとともに、人間として生きる力を育てる教育がますます重要になっています。
国際社会の動きや平和・政治・経済を見る目、環境や一人一人の人権を尊重する社会を営むのに必要な基礎知識、この中でどう生きるかという基本的な・認識・能力を身に着けることは、すべての子どもにとって必要なことであり、できる子、あるいは関心のある子だけがやればいいという問題ではありません。
今回の高校「改革プラン」にはどこを読んでも、県民が深いところから求めている、教育に対する願いに応える改革の展望は何も示されていません。ただわかる事は高校の数を減らすことだけです。あまりにも教育が語られていない「改革」論議を拙速に突き進もうとしていることに終始しているように見えます。
全国的に多部制単位制の学校や総合学科高校がつくられている都道府県でも受験競争がいっそう激しくなっていること、生徒の興味・関心に応える学校選択の自由というなかでも、不登校や高校中退は実は少しもなくなっていません。
そこで教育委員長に伺いますが、高校改革プランにあります4通学区に単位制・多部制と総合学科を配置するという設定そのものが県民合意となっておらず、すでに導入された入試制度のあり方を含め県民的議論に付すべきではないでしょうか。答弁を求めます。
県教委は改革プランの策定に当たりまして生徒も望んでいるとか、広く県民の理解得られているとおっしゃいましたけれども、この策定に当たりまして検討委員会の審議と共に巾広く県民の意見を聞くとして、パブリックコメント、県内12会場における地域懇談会の開催、市町村長、保護者、学校関係者、民間企業経営者をメンバーとする改革プラン懇話会を設置し意見の聴取を行ってきたところであります。そして懇話会としての意見集約の結果は学校規模の標準目標値の設定や統廃合の基準数、学校の総数を示すことには反対でありました。
また、地域懇談会では統廃合ありきや画一的な魅力作りを打ち出した中間答申への批判も相次ぎました。この県民の多数の意見に応え、検討委員会の葉養委員長も「学校総数を示すことは長野県のような山間地ではなじまない」と表明をした経過があったにも関わらず、最終答申ではご承知のとおり、県民の意見を全く無視した統廃合ありきを打ち出しました。
何のための懇話会設置や地域懇談会であったのか、県教育委員会は県民集会や懇話会で示された県民の意見や意見集約に応え、県民無視の最終答申だけに依拠した今回の統廃合案は白紙撤回し、県民世論に従うべきであると思いますが教育委員長の答弁を求めます。
私は統廃合ありきというこの考え方に非常に危惧を覚えるものであります。実はこの統廃合につきまして私たち先日、共産党県議団として富山県を調査してきました。富山でも少子化傾向が進み、平成17年度はピーク時の55%と長野県の減少率よりも減少しています。しかし県教委は定員割れがあっても、学校の統廃合ではなく学校は残し、一学級の編成を17人とか25人などと柔軟な対応をしています。このことは学校の統廃合による地域への影響を考慮したものであります。学級定員は本県と同じ40人を標準としていますが、学校の実情や教科の特性に応じ学級編成が柔軟的に行われています。
学校の適正規模ということでは、その規模を1学年4から8学級程度とはしていますが、現状1学年3学級以下となる学校は地域の教育力などを活用しながら、その地域ならではの環境、情報、芸術、語学等の学習により、存続を継続することも行われ、実際には一クラス17人から25人あるいは30人というクラスもありました。そして山間地の県立高校の再編では、統廃合するのではなく、今年南砺総合高校といわれますが、南砺地域の県立4校が連携するひとくくりとして存続させ、総合高校をスタートさせています。
長野県は交通の便も山間地であり、物理的にも通学への負担を考慮した通学区制をとってきましたが、現在進められている高校改革プランは高校数を減らすことが第一義的に一人歩きしていることは明白です。富山県は中心部の富山市からは公共交通機関で60分もあれば全県に行ける利便性が高いところですが、このように少子化でも統廃合に拙速に走るのではなく、生徒数の変動に柔軟に対応しています。
私はこのような富山の例がすべてとは言いませんが、少なくとも本県は通学の利便も著しく悪く、家庭負担のことも考えれば、学校の統廃合先ずありきではない。かつ本題はどういった教育を子どもたちに行うのかが本来の目的にしなければならないと思います。ましてや当事者の子どもたちは学校を減らせとは言っていません。コスト削減で教育を語るべきではないと思います。
現実離れした一校6クラスという標準目標値なるもので教育は割り切れません。
私は富山県のような方式での柔軟な対応で学校数の削減をせず、クラスの弾力的運用で少人数規模学級を実現していることを県としても検討すべきであると思いますが、こういった身近な例も当然検討されたのか教育委員長にお聞きします。
またこのような富山の例の資料提供を教育委員会の定例会にしたのか教育長職務代理者の答弁を求めます。
【答弁 宮澤教育委員長】
ただいまのご意見、議員さんのおっしゃるとおりだと、正論でございます。
県としまして少人数学級の実施を検討すべきではないかとのご質問でございますけど、国の第6次公立高等学校学級編成および教職員配置改善計画では、1学級の生徒数は従来どおり40人を標準として定めております。県立高等学校における少人数学級の実現は、今後の課題として考えているところでございますが、当面は国の基準に従い1学級40人募集を基本として考えている次第でございます。今回の高等学校改革プランの検討にあたりましてもこの基準に沿って進めて参りたいと考えている次第でございます。なお学習面では選択講座、習熟度別授業、コース制、類型製による授業など学習集団を少人数にする工夫はすでにほとんどの学校で取り入れられており、きめ細かな学習指導が出来るよう努力しているところでございます。以上です。
【答弁 松沢教育長職務代理者】
お答え申し上げます。教育委員会事務局が教育委員会に対し、検討資料として富山県の資料を提供しているかというおたずねでございます。
高校再編整備に係る資料につきましては、全国都道府県をまとめた資料を提出したことはございますが、富山県に限らず、一つの県だけに限っての資料は提出してはございません。以上でございます。
一つの県を取り上げて提出してないということです。教育委員会の中でこういうことも論議をされていないということ、非常に大きな問題ではないかと私は思うわけです。
小学校の30人規模学級、この編成は国の基準を県は子ども達のためということでやり始めました。これと矛盾するということ、あなた方は全然そうは思わないわけですか。小学校の30人規模学級編成をすすめてきているけれども、高校についてはそういうことをしない、やはり国の基準というものを盾にする。これは子どもたちにとってスタンダード2つ当てているということじゃないですか。こんなことを私は絶対に矛盾だと思います。このような検討不十分であり、県民の合意が得られていないものを拙速にすすめようとしていること、これは長野県の次世代を担う子ども達の教育にとって害悪になると思います。私も中3・中2の子どもを抱える父親であります。こんな形で教育委員会がすすめていることを非常に危惧をしているということを申し上げましてすべての質問を終わります。
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