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2005年 06月議会 備前議員の一般質問(6/30)

* 記事はすべて、共産党県議団事務局のテープおこしによるものです。

  1. 医師確保対策について
  2. 県産材の振興について
  3. 伝統工芸の利用について
  4. 地球温暖化防止条例について
  5. 高校改革プランについて


1.医師確保対策について

 医師確保について衛生部長に伺います。私は昨年の12月議会において医師の不足について取り上げましたが、事態は深刻さを増しています。
 知事は2月議会で「重大な課題として考える」と答弁されましたが、実際にその後の検討はどうなのでしょうか、
 今回私たち共産党県議団では山間地や離島を抱え、しかも首都圏からは離れても独特の医師確保政策を作っている島根県を調査しました。島根県は、今回の新臨床研修制度の始まる前の平成14年から本格的な県独自の医師確保政策を作りました。体制も医師2人を含め5人の職員体制を組み、県内医療圏それぞれでの医師確保について初期から専門医療まで網羅する、「しまね地域医療支援センター」の事業を立ち上げました。ここでは島根で働く医師を「呼ぶ」「育てる」「助ける」として県内で働く医師確保をする事業が進められています。
 そのなかでは、専門医の養成のため、大規模病院と地域の診療所、民間病院も含め、2〜3年おきにローテーションして技術向上をはかるためのプログラムの運用をしています。
 さらには、高い技術を習得のために、大学や病院の研修を勤務として受けることや、学会研修や研究費用を用意しており、医師としてのやりがいと生涯を通じ島根で働くことに魅力を持たせようとしています。  また医師人材センターとしての「赤ひげバンク」への登録数は県内外で200人を超えています。さらに島根県は地域で働く勤務医をすぐ県職として採用する1億円10人の枠を保有しています。こうして安定的な医師の確保を目指し、地域の診療所等に勤務する医師の定着を促進させ、現在こうした医師が51名にものぼっていますがまだ不足しているそうです。
 医学生に対しては返還免除になる奨学金をはじめ、実習の受け入れなど、在学中から継続的で体系立って地域医療への動機付けを行っています。
 しかし、県内の医師需要を満たすのにはまだ程遠いとして、今年度からは大学、臨床研修指定病院との連携で研修医の定着にも力を注いでいます。
 いくつかご紹介しましたが、島根県での取り組みは今や、医療現場で従事している医師の確保から研修医の養成確保に着手してきています。このことから昨年の12月議会でも提案しましたが、医学生の時期から長野県の地域医療に触れ、そしてここで働くことへの動機付けのできるような魅力作りを、行政と民間も含めた病院や診療所等の県内医療機関、医療団体との連携でつくっていくことが必要であると思いますが、これについて衛生部長のお考え決意をお聞きします。


      【答弁 澤田衛生部長
       お答えいたします。項目的にご質問が無かったので私なりに3つにまとめてお答えさせていただきます。
       まず第1番目は、県としての医師確保は昨年の12月から一体どうなっているのかということが1点。
      2点目は島根でおこなわれているような医学生あるいは研修医を魅力ある組織を作ってこの県に引き寄せるため、あるいは募集するためにはどうしたらいいかということについて2点目。3点目には、行政・民間との連携をどう考えているかということに関して全体的には医者の確保についてどう考えているかと理解をしてお答えをさせていただきます。
       私どもの県では、医師不足の解消の検討については5つの方策を実際に着々と行なっております。
       1番目は、自治医科大学卒業医師の派遣に関しての取り組み。
       2番目は、県民医療室という須坂病院におきました場所による代診の業務について。
       3番目は、長野県の医師紹介センターというものを設立をして、そこで医師を紹介していること。
       4つめは、地域医療対策協議会というものを設立いたしまして、医師集めについてのアイディアを多くの方々からお受けし、実践に移そうとしていること。
       5つ目は信州大学の医学部の入学試験におきまして、県内の高校生に対しての県内枠というものを設けております。
       少し長くなりますけれども、1番目の自治医科大学に関しましては僻地の診療所に現在6名、それから僻地の所在病院に対して7名、僻地の診療所等の支援病院に対して11名を送って診療活動をしていただいております。
       また、県民医療室ではいま26名が登録しておりまして、僻地診療所への代診業務といったことを行なっております。
       長野県の医師紹介センターでは、12年度からいままでに16名の医者が、特に自治体立病院に関しての希望する方を紹介いたしまして、実際に周旋活動を行なっております。
       地域医療対策協議会についきましては、14名のメンバーでこの6月3日に立ち上げまして、積極的な医師確保についてのディスカッションを重ねることにしております。
       また、昨年度からでございますが、信州大学の医学部に県内高校の出身者のみを対象として入学をおこなっており、5名の方が県内枠ということで入学しております。
       2番目に県内医師研修生、医学生を呼び寄せることについての施策と申しますのは、これはまだ素案段階で、どのような形にして具体的に創っていくかまだ衛生部内で検討中でございますが、例えば1つの方法として、北海道に日鋼記念病院(日本鋼管記念病院)というのがございます。そこでは非常に珍しい取り組みといたしまして、ゼネラルフィジシャンといいますか、家庭医、一般医の養成講座を民間病院で始めました。いま木を見て森を見ずといわれますが、その人の病気だけを診て、その人全体を見ない医療がということで、多くの不信感を一般の方が持っておられますけども、これは決して一般の方だけではなく、医学生の中、あるいは医者の中にもそういう人がいます。「自分は例えば肩の関節しか見ない医者、そんなのはいやだ。」あるいは「自分は耳だけしか見ない。そんなのはいやだ。」「論文を書くことが医者の仕事ではない。」といった思いの方々に対して、医者になった人々に内科の医者であっても、例えば外来で小さな傷を縫ったり、貼ったりする仕事を教える。あるいは関節がはずれたものを教える。あるいは外科の先生にもきちっとしたリュウマチであるとか、糖尿のコントロールの仕方を覚えていただくといった、多科、多くの科にまたがった家庭医として、一般医としての勉強をするというコースを作って多くの方がそこで学んでいます。私はそういう思いを持った日本の多くの医者を長野県で、例えば「長野県信州家庭医養成熟」といった塾をつくりまして、定員10人とか20人の枠で  仲間の中から一般的な医療を徹底的に教え込む、論文は書けなくても、学会で英語の発表はしなくても一般の診療はできる、そういう先生方を全国規模で集める、そして長野県へ呼ぼう、そんな塾を作るというのも一つの方策としてあるのではないかと考えています。
       もう一つはよくあることですが奨学金です。奨学金も一定の額を一定の年数だけ払うということではなく、信州大学だけあって全国の80の医科大学がございますが、その全部に対して、どこに住んでいても結構です。何年生でもいいです。とにかく卒業して医師免許を取った後で長野県で働いてくださいというふうにしていま大きな問題は奨学金だけでは医学部の学生は卒業できません。なぜかというと、私学に行くと授業料が高いからです。授業料が年間に400万とか600万払わなければいけないという私学が沢山ございます。ですから月々の生活費と授業料だけではなくて、年間の実習費であるとか、授業料までを含めた形での大きな奨学金を出すことによって、しかも全国の大学に発信することによって、私は信州にきていただき、25・6で信州にきていただいて、この素敵な自然にめぐり会って、ひょっとすると素敵な異性にめぐり会ってここに定着していただければ、また増えるのではないかということで若い人たちからの信州への定着を促す意味で信州の大きな形での奨学金制度をつくるというのも一つの方策と考えています。これはいずれもお金がかかることですので、先生方のご賛同を得た上で進めなければいけないことではございますが、そんなことをいま少し考えています。
       もう一つは、民間を含めた医師確保体制の構築についてということでございますが、基本的なところでこれまでの私たちのものの考え方と少しく変えなければいけないと思います。それはどういうことかと言いますと、いままでは医者を確保するとか、ある一つの病院にどれだけの人間を確保するとか、一つの病院にどんな医療機器をおくかということで私たちは苦労してまいりました。いままでいつもそういうことで悩んできました。ところが、それだけでは圧倒的な医者の数が足りないということ、医療資源に費やすお金にも限りがあるということで、すこし頭を切り替えて、一つの病院であるとか、施設ではなくて、一つの医療圏として考えなければいけないのではないかと思います。私はこれを「信州新医療構想」というふうに名前をつけたいと思いますが、例えば私たちのこの県について考えますと、人口10万人あたりで少ないのは上伊那地区で115名です。一番多いところは、松本地区で179名の医者がいます。これだけの差がございます。しかも、同じように上伊那地区であっても、その地域によって医者の厚みと言うのは全く違います。ですから同じ医療圏に住んでいても、同じ厚みの医療を受けられるかということは大きな疑問でございます。ですから、あの病院にどれだけの医者ではなくて、その医療圏全体を考えれば小児科の数ある程度いる、整形外科の数ある程度あるわけです。ですからその病院のためだけではなく、その医者を地域の宝として、地域のために尽していただく方と考えて一つ一つの病院をはずれて、もう一つの大きな意味で医療圏という形で考えていく、そういう方策を考えないことには抜本的な解決にはならないと思います。しかも、いま申し上げているようないくつかの方策というのはすべて5年とか10年という中長期的な見方でないと医者は集まってまいりません。今言った一つの病院を広げて医療圏としてものを考えるという方向に少し頭を切り替えれば、直ちに来年度からでもその医者はある程度の仕事ができると思いますし、そのためにはまず各10の医療圏が自分たちの医療圏はどういう医療圏にするべきかという青写真を作っていただくべきかと思います。それに対して、県はそれなりの援助を考えるべきだと私は考えております。
       例えば、いま5つの地域で小児救急が行なわれていますが、それも厚みがあります。24時間やっていただいているところ、1日に3時間しかやっていけないところ、あと5つの医療圏では始まっていません。それに対して県は、自分たちの地域が医療圏あげて医療を行なうという決意を持って望むとこに関しては厚み、薄みをつけての援助をするようにしたいと思っておりますし、各医療圏が一丸となって自分たちの地域の医療をいかに良くするかという考え方の基本に立っての医師確保といった方法論もこれから考えねばならないことではないかと考えます。抽象的になってしまいますが、奨学金であるとか、塾と言ったものあるいは、自治医大の卒業生を待つといったことはこれからまだ先長い時間がかかります。むしろ、私たちはこの広い県内において10の医療圏、医療圏としてどうするかと言った考え方をするのが一番近道であり、最も確実な医師確保というか、医師・医療資源の有効利用ということにつながるのではないかと考えます。以上です。



 ただいま衛生部長からご答弁いただきました。やはり、昨年12月そして今年2月に質問したときよりは多少進展してきている、そして部長が替わったということで新たな面の芽が出てきているのではないかと思うわけですが、実際には、医療タイムス2月号で、「県内病院3分の2が医師不足」ということで、非常に深刻な状況がつづられているわけですが、この最新号を見ましたら、長野県の先ほどおっしゃられました「地域医療対策協議会が、実は国が昨年中に立ち上げるということが言われていたんですが、やっとここで立ち上げるということで、これは衛生部長が替わられたということで新たに発足していくということで、期待をするものであります。いまお話がありましたように医療圏として考える、これは私も12月のときに話をさせていただきました、上伊那医療圏、そして木曽の医療圏というのは非常に医師が足りないということが深刻な状況であります。そんな中で私も聞く中で循環器の先生が一人体制で24時間365日、あるいは脳外の先生がそのような状況でほとんどその先生の犠牲の上に地域の命を、皆さんの命が救われていると言うことを聞いているわけであります。是非とも先ほどおっしゃられたことを実行をしていただきたい。そのことをお願いをさせていただきたいと思います。
 そして、先日私たちは宮城県でも医師が非常に足りないということで、ここでは県議会は医師確保の特別委員会を開催し、県ではホームページのトップページで医師募集を打ち出していました。同様に青森県でも県内の医療状況を知らせ、青森で働く民間も含めた医師の募集状況をトップページですぐわかるように知らせています。これはいわば先ほど島根の件もそうですが、医師確保というのが競争時代に入ってきているとも言えます。これら新たな取り組みが医師不足で悩む自治体で行われてきています。そこで長野県でも、先ほど医療圏というお話もございました。公立・公的病院、診療所のみならず、民間も含めて医師確保をしていく体制を築くことを再度提案したいと思います。
 



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2.県産材の振興について

 次に県産材の振興について伺います。
 長野県は県土の約8割を森林が占める森林県です。そして従来より森林からさまざまな恵みを享受してきました。また、森林を育て、生活の糧としてきた先人たちの知恵は次世代に引き継ぐべき重要な文化です。環境の時代といわれる21世紀。森林には大きな期待が寄せられていますが、森林は大きく育つまでに長い年月がかかります。
 今回私たち共産党県議団は県産材の利活用をいっそう進めるにあたり、安い外国産材に対抗して業者からエンドユーザーまでの流通過程にどのように利活用されているのか調査をしてきました。
 ユーザーが国産材で建築したい場合、設計士がいかに国内産材の供給の情報をもちあわせていることがポイントになりますので、全国から木材も含め、総合的な建設資材のサンプルを紹介している、東京ガス運営のOZONE(オゾン)という会社を訪れました。
 全国から国産材での建設にこだわる建築士、設計士のデータを集め、ユーザーに紹介し、そこへ建設資材も国産材の紹介もしていました。そしてここで紹介されている国産材の中に長野県産の材が極めて少ないのが私たちの印象でした。
 岐阜県の飛騨材はショールームまであるのですが、長野県産材は県内業者がサンプルを数社が提供しているのみでした。先方に聞くと「長野県からも紹介があったが、乗ってこなかった」というようなお話でした。
 そこで県産材の普及にあたりどのような取り組みがおこなわれているのか林務部長にお伺いいたします。


      【答弁 高野林務部長】
       お答えを申し上げます。議員ご指摘のとおり、これからの森林を整備するためには木材需要の拡大、これは欠くべかざるものでございまして、本県の林政の最大の課題であるとこのように認識しております。県産材の普及対策についてのお尋ねでございますけれども、第1に木材需要の拡大対策。第2に生産流通加工体制の整備。第3には木材産業界の支援ということでございます。この3つを大きな柱としまして、これらの総合施策を総合的に展開することが重要であるとかように考えておりところでございます。
       具体的に申し上げれば第1の木材需要の拡大対策につきましては、一つ目には住宅部とも連携いたしまして、「信州ふるさとの森づくり助成金」などによる県産材住宅の建設促進による利用の拡大。それから2つ目には、学校等木造木質化などによります需要の拡大。それから3点目には、公共施設や公共土木工事の木造利用の拡大。それから4点目には、信州木材製品認証制度によります安心安全な県産材製品の品質向上とPRでございます。5点目には信州家具、あるいはブランド化、木製ガードレールなど多様な用途への拡大。それから6点目には木の良さや環境に対する役割などのPR等々でございます。
       第2の生産加工流通施設の整備につきましては、県産材の需要拡大施設、あるいは木材乾燥施設の整備充実、そして近年作業を進めておりますペレット製造施設やバイオマス発電などの整備に努めているところでございます。
       第3の木材産業の支援対策につきましては、木材産業による木材産業業者に対します経営近代化資金の融資や金融保証などによる経営安定支援、それから林業総合センターによる技術指導等々でございます。これらの施策を総合的に実施することによりまして県産材の利用の拡大、あるいは普及を図ってまいりたい。なお議員ご指摘のPR不足等々の点につきましては早速調査いたしまして対応してまいりたいと考えております。


 ただいま、何点か部長からご答弁をいただきました。私たちもこういった東京の施設だったんですが、非常にPRということが長野県は上手ではないなということを実感してきたわけでありまして、実は先日岐阜県庁を訪れて、岐阜県の林業振興ということを伺いました。住宅部と非常に連携されていまして、岐阜県産材というのをいかに売り込むか、市場に乗せていくかということで県としてのPRが非常に力強く、パンフレット類も非常に揃っているというのを実感してまいりました。是非その点を強めていただくことが大切だと思いますのでお願いをしたいと思います。
 私たちは県産材を出し、県内で自立でがんばる根羽村の取り組みについても調査をしました。根羽村では評価の高い根羽杉の普及策として今年は根羽杉で住宅をつくる施主に対し杉の柱材50本を提供する事業も進められています。そこで県はこのような村のおこなっている事業への支援を考えるおつもりはないか伺いたいと思います。
 特に本県では今年より「信州ふるさとのすまい助成金」の事業が開始されており、これの活用とも連携すべきであると考えますが知事はいかがお考えか伺います。
 また先日調査した岐阜県では様々な県産材の需要拡大の施策を展開しています。中でも産直住宅建設支援事業、飛騨・美濃産直の家キャンペーン事業、あるいは教育・社会福祉法人などの施設の木質化はもちろん、これは私も見たのですが内装の木質化にも支援しています。このような内装の木質化等の取り組みを本県もおこなうべきだと思いますが住宅部長の見解をお聞きします。


      【答弁 田中知事】
       ただいま議員からもご指摘がありましたように、本県は県組織のみならず、宣伝下手、アピール下手というところがあるかと思います。これはものづくり産業のように議論をして新しいものを作っていくというようなことは民度の高さとも相まってできるわけですし、あるいは相対的に言えば大変厳しい気候とはいえ、地形とはいえ本県は東北の諸地域に比べれば農作物も含めて恵まれている地域です。こうしたなかで本県の本来持っているブランド力というものを中に居りますと必ずしも相対化して的確にその価値を見出しえていないということがあろうかと思います。そしてそのプレゼンテーションの力やアピールの力ということが他の都道府県の県民性の方が逆にハングリー精神になるというところがあろうかと思いますので、そうした意味でも私どもは信州ブランド観光戦略局というものを創って本来の本県が持っている価値というものをより的確に県民にもご認識いただき、訴求していくということに努めるわけです。
       今の根羽杉の問題に関してでございます。根羽村は小木曽亮弌村長のもとネバーギブアップ宣言というものをして大変な意欲的な村でございます。信濃の国のなかにこそ歌われていませんが矢作川水系というものの源流で中京地域の方々にとってもなくてはならない地域です。この根羽杉の50本を提供をする「根羽杉の柱提供事業」というものを小木曽亮弌村長が発想されたわけでございますが、これは村長ともお話する中で逆に県が「ふるさとの住まい助成金事業」という中で、助成金50万円を交付をして本県産材を活用した住宅取得者に対する支援という形で従来の低利子融資制度をさらに改良したものを編み出したわけでございますが、これに小木曽村長も共鳴をいただいて「県が50万出すならば、村は根羽杉50本を無料で出そう」という県と村がフィフティ・フィフティで新たな事業に乗り出したいとおっしゃっているわけです。これは過日の下伊那地区の意見交換会でもお話をお聞きし、この点は川上村の藤原忠彦村長もそれぞれ家というものは針葉樹だけであるいは広葉樹だけで出来上がるというものでもないと、ですから川上村のカラマツを使う部分と根羽杉を使う部分を組み合わせると言うような県産材というものも県全体の中の木を組み合わせるような方策をぜひとも林務部や住宅部は考えて欲しいというお話をいただいておりまして、この点は鋭意進めるということをお約束しているところです。なお、木曽福島、上松、大桑、木島平の4町村でも地域材を活用した木造住宅への助成金制度というものが進められているところです。いま申し上げましたようにこうした点に関しましては議員のご指摘をいただくまでもなく、より進めさせていただきたいと考えております。


      【答弁 塚田住宅部長】
       お答えいたします。教育・福祉施設等の内装の木質化に取り組んでいくべきではないかというおたずねについてでございますが、県では環境への負荷が少ない循環型社会を築くことが急務であるということから、長野県県産材利用指針を平成15年に策定いたしました。その指針に基づき、信州のきでつくる私たちのくらしづくりを実現するため、県有施設の木質化・木造化をより推進しているところでございます。県営住宅につきましては平成15年度から内装にカラマツを使うなど木質化を行い、平成16年度からは原則としてすべて木造により建設することといたしました。また、他部局の県営施設におきましては、平成15年度に松本養護学校や松本盲学校の改修において床や内装の仕上げ材に県産材のカラマツ等を使うなど木質化を図っております。また木造化につきましても平成15年度から小規模の交番に取り組み16年度からは大規模の稲荷山養護学校なども木造により建設しているところでございます。木材の使用量につきましては工事量によって変動しておりますけども、県営住宅とその他の県有施設を合計しますと平成15年度は438立方メートル、平成16年度には1,250立方メートルを使用しまして、平成17年度は2,969立方メートルを予定しております。こういった形で年々増加している状況でございます。しかしながら、市町村等の教育・福祉施設等の施設整備につきましては各種補助制度を活用し木造化・木質化について取り組んでおるところでございますが、財政状況とかコスト高の面から必ずしも木造化・木質化が取り組みが進まない状況にございます。このような状況を踏まえまして県産材の利用促進に対する支援につきましては林務部において「木のかおる学校推進事業」の補助事業制度がございますが、小・中学校、幼稚園、保育園等に限定されておりまして、福祉施設等などが含まれておりませんので、林務部をはじめ関係部局と連携しながら県産材活用を図られるよう支援策を検討してまいりたいと存じます。なお、市町村等の公共施設につきましては、引き続き市町村連絡会議などを通じ木質化・木造化の促進を図ると共に、設計や施行に携わる建築関係団体に対しましても木造化・木質化に対する理解を求め取り組んでいただくようお願いしてまいりたいと存じます。以上でございます。





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3.伝統工芸の利用について

 つぎに伝統産業の振興について、教育長職務代理者および商工部長に伺います。
 現在県内には木曽漆器などの国指定の伝統工芸品7種があり、また、県知事認定の伝統工芸品などもあります。この度私は塩尻市と合併した旧楢川村や木曽地域の重要な基幹産業である、漆器について事業者の皆さんと話をする機会がありました。
 そこでは「伝統工芸フェアでは大きな団体なら参加することも可能だが、伝統工芸はどれも小規模でかつ勢いがなくなっており、出て行くこともできない」「県はフェアへの支援を打ち切ったが、放っておけば伝統工芸はなくなる。農業と同様危機的な状況だ。」と語られました。
 県内の漆器製造業の推移データを見ましたが、ピーク時の昭和63年から急に減少し、事業者数も180件あったものが15年には15%の28件に、従業員数も833人から26%の217人にまで落ち込んでいます。製造出荷額は出荷額も年々減少し続け、ピーク時であった63年71億円あまりのものが、平成15年は20億円へと30%をきるまでになっています。15年間でこれほど落ち込んでおり、深刻な状況がうかがえます。
 ところで漆器などの伝統工芸品の多くは地元産の材料を加工し、付加価値を付けており、自然との調和が基本にあります。そしてリサイクルのきくものも多く、きわめて環境重視型の産業ともいえます。大量生産・大量廃棄の時代から環境重視の時代となる中で長年使用できる息の長いものづくりであり、環境保全の精神を育むことができるものでもあります。
 こうした中、旧楢川村では漆器を子ども達にも伝えるために、従来より学校給食の食器に漆器を取り入れ、卒業時にはそれを記念にもらって卒業するということが行われてきました。漆器は欠けても何度でも塗りなおして使えます。またそういった産業が地区内に息づいています。食を通じて物を大切に使う習慣がこういった伝統工芸品を通じて育まれてきています。
 そこで学校給食に地産地消として地元産の食材を活用していく事業に県は支援していますが、木曽地方でかつてより行われてきた、このような特色ある教育現場等での事業をさらに県として支援していくおつもりはないかお聞きいたします。
 またこれは漆器だけではなく、県内の伝統工芸品について、さまざまな角度から学校現場での活用に展望が開くことが可能ではないかと思いますが、他の工芸品についても検討できないものかお聞きします。


      【答弁 松沢教育長職務代理者】
       お答え申し上げます。木曽地方の伝統工芸品の学校給食への利用についてのおたずねでございます。
       学校給食用の食器につきましては、文部科学省で定めております学校給食衛生管理の基準に基づきまして衛生的で物理的に安全なものであることが第一でございまして、洗浄・消毒・保管等が確実にできる材質や形態であることが基本でございます。そこで、市町村教育委員会等におきましては価格、強度および取り扱いの容易さなどを検討して学校給食用食器を選定しておりますが、議員ご指摘のとおり旧楢川村ではこどもたちが地域の伝統工芸産業への理解を深め誇りを持つことを願い、給食用漆器6点を開発して使用しているところでございます。木曽漆器は地域の伝統技術を生かした本物の良さを伝えられるものでございますが、一方、洗浄と熱による消毒・乾燥などによりキズやひび割れ等がおこりやすいといった取り扱い上の難しさもございます。また他の材質の食器と比べて高価であるため現状に置いては多くの市町村教育委員会では導入が困難な状況であるとそのように思っているところでございます。教育委員会といたしましては、食器の選定に際しては、安全性等を十分確認したうえで児童生徒に、ものを大切にする心を養うなどの教育的効果も考慮しながら選定できるように食器等に関する情報を収集いたしまして、市町村教育委員会に提供してまいります。
       つづきまして、県内伝統工芸品の学校現場での活用についてのおたずねでございます。
       県内の伝統工芸品などにつきましては小学校4年生の社会科、伝統的な工業などの地場産業の盛んな地域という単元の中で学習しております。この学習では、優れた技術・技法を長い年月かけて継承している人々の工夫・努力や、この産業が根付いている地域の特色などを具体的に調べ、伝統的な工業などの地場産業そのものの意味や役割について学んでおります。例えば、あけび細工の産地でございます野沢温泉小学校では3年生以上の子どもたちが総合的な学習の時間の中で伝統工芸士の方々から直接指導を受けながら年間を通じてあけび細工づくりをおこなってそれぞれに作品を制作しております。こうした例はほかにもございますが、このような学習を通してこどもたちは何気なく見ていた身の回りの伝統工芸品などのすばらしさを新たに発見し、郷土の誇りとして大切にしていこうとする気持ちを養っております。それらの学習を一層充実させると共に地域の誇りである県内の伝統工芸品につきまして、市町村教育委員会および学校関係者に県教育委員会としては周知してまいります。
       また学校現場における伝統工芸品の具体的な活用につきましても関係部局と連携を図りましてその方法等を検討してまいりたいと考えております。以上でございます。


      【答弁 山極商工部長】
       まず1点目の木曽漆器の学校給食への利用を県として支援できないかというおたずねでございますが、県内には議員お話がございましたように木曽漆器をはじめといたしまして7つの国指定の伝統工芸品と14の県指定の伝統的工芸品がございます。この伝統的工芸品を含めたいわゆる生活関連産業に関しての産地概況調査というものがございまして、これは平成15年度におこなった調査でございますが、50の産地組合へのアンケートにより実施をいたしまして、平成16年3月に取りまとめたものがございます。これによりますと生活様式の変化、あるいは国際化の進展等によりまして売上高が減少するなど大変厳しいという結果が出ておるわけでございます。またこの調査結果で多くの産地が抱えている課題といたしまして、内需の不振、後継者難、熟年技能者の高齢化等をあげておられるところでございます。これらの課題を解決していくためには、需要開拓や後継者の育成等をおこなっていく必要があるわけでございますが、木曽漆器工業協同組合におきましてはそのために木曽漆器まつりの開催ですとか、木曽漆器ブランドの確立のためのラベルの作成、京都高台寺における企画展の開催、文化財修復の技術アップ研修会の開催等事業を積極的に実施しているところでございます。こうした自主的な活動を支援するために県といたしましては、需要開拓、それから人材育成、新商品開発というこの3つの側面から助成制度を設けたり、技術面、金融面、経営面からの支援も行なっているところでございます。木曽漆器につきましては平成16年度に実施をいたしました京都高台寺における企画展ですとか、あるいは東京における伝統的工芸品展への出展経費や制作費に対しまして助成をさせていただいたところでございます。こうしたことから木曽漆器等伝統的工芸品を教育現場等で利用するということや、衛生面ですとかあるいは取り扱い面で解決しなければならない課題もございますが、産地にとっては新たな需要開拓につながっていくものであろうかと思います。県といたしまして、この商品の購入そのものに対しての助成となりますとなかなか難しい問題もございますが、産地の皆さんが教育現場等に出向きまして本物の伝統的工芸品の良さを知ってもらい需要を開拓していこうとする地道な活動ですとか、あるいは展示会等を通じてその良さを知ってもらうということは大変有意義なことでございまして、そうした活動に対しましては商工部といたしましても出来る限りの支援を行なってまいりたいと考えておるところでございます。
       また2点目の、県内伝統工芸品の教育現場等での活用についてということでございますが、大量生産・大量消費の時代におきまして子どもたちが手づくりの製品に触れ、ものの大切さを知り、地域の伝統文化に誇りを持ってもらうということは将来の市場創出を考えますと大変有効であると思われるわけでございます。このようなことから教育現場等におきましてどのような活動があるのか、産地の皆様のご意見もお聞きしながら教育委員会等関係部局と連携をしたしまして検討してまいりたいと考えております。以上です。
       

 ただいまお話いただきましたけれども、先ほども言いました。漆器産業は比較的まだ大きい伝統工芸産業とも言われているんですけれども、その方々がまさに農業と同じような状況だということをいわれます。使われないから価格が高くなる、高くなると売れないということを非常に言われていました。
 長野県の漆器は長野オリンピックのメダルにもなり世界に発信されました。伝統工芸の保護と伝承と同時に伝統工芸の職人さんの雇用の創出にもつながります。
 伝統産業の息づく京都府では、商工部と教育委員会が「匠の公共事業」として、学校現場等へ積極的に入り西陣織の普及として、この伝統産業を次世代へ伝えていく事業が進められております。ぜひともこの点についても検討いただきましてより一層長野県の伝統工芸が発展されるように検討いただきたいと思います。



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4.地球温暖化防止条例について

 つづいて、地球温暖化防止条例について伺います。
 地球温暖化による異常気象が世界的に頻発しているなか、温暖化防止京都議定書は、アメリカの離脱などの困難を乗り越えて発効することとなりました。
 日本は、公約である90年比6%の温暖化ガス削減目標達成が厳しく求められ、この間の増加分と合わせて、14%の削減が必要となっています。温暖化ガス排出量の8割を占める産業・公共分野の思い切った削減をはじめ、一人ひとりが、温暖化から地球環境を守る努力を家庭から、地域から積み上げていく取り組みがあらためて大切になっています。
 そこで、地球温暖化対策として光害防止について質問します。
 光害は不適切な照明により、動植物の発育障害、そして人には不眠や交通障害も引き起こすと言われます。そして過剰な電気エネルギーを使い、省エネの点からも問題視されています。さらに夜の空を明るくし星空を見えなくしています。ここに県内いくつかあるグループのうち、塩尻のグループが毎年おこなっている、夜空の明るさを測定した結果にも出ていますが、夜間の不適切な照明は地球温暖化防止上放置しておくことはできないとしています。
 ところで今年も環境省を中心として消灯キャンペーンが全国で展開されました。ブラックイルミネーション「CO2削減100万人の環」という企画で、6月19日の夜8時から10時まで2時間電気を消そうというものです。全国的には約22,600施設が実施され、うち県内の参加は26事業者であったそうです。私は本県の取り組みは極めて遅れていると残念に思いました。
 私は一昨年の質問で光害防止にかかわる条例の制定を提案しましたが、このときの生環部長は検討するという答弁でした。一方全国的には取り組みが始まっています。岡山、佐賀、熊本など条例制定あるいは、それまでの環境保全に関わる条例に光害対策が盛り込まれるなど努力されています。
 知事は2月議会の冒頭、地球温暖化防止について触れ、「対策を進める」と述べ、私は意気込みを感じた一人でした。そこで県は制定にむけている地球温暖化防止条例に光害防止の観点を盛り込むべきであると考えますが、生活環境部長のお考えを伺います。
 

      【答弁 太田生活環境部長】
       ご質問の地球温暖化防止条例へ光害防止の観点を盛り込むべきではないかという点につきましてお答え申し上げます。
       ご質問にございました光害につきましては、ご指摘のとおり、農作物の生育ですとか睡眠に影響を与えるとこういった他、星空を楽しむ夜間の良好な環境とこういう面も非常に大きな影響を与えているところでございます。環境省では平成10年3月に光害の対策ガイドラインというものを策定いたしまして、例えば街路照明器具の選択の問題ですとか、野外広告物、自販機を含めました夜間の光の問題、あるいは屋外照明、駐車場等でございますが、こういったものの照明のある種のガイドというものを設けておりまして、県でもこれは市町村あるいは環境団体への周知を図っているところでございますが、一方で最近では特に大型スーパーこういった非常に24時間営業や長時間営業ということで夜間も光を発するというところが多くなっているところでございます。
       ご質問にございました、今年のキャンペーンの中でもCo2の削減あるいはライトダウンキャンペーンということで単に光害ということで夜間の良好な環境を守るということに加えてCo2の削減という地球温暖化防止という観点からもこのキャンペーンをおこなったところでございます。先ほど県内につきまして26事業者ということでございますが、74施設ということでこれは全国からみて確かに小さい数字でございますが、これはそもそも夜間の光を節減すべき施設の数、絶対量の問題もございます。今年松本城等の施設の参加があって夜間の消灯8時から10時までの2時間ということで行なったところでございます。また、こういった夜間の光の問題につきましての関心ということで申し上げますと、今年の10月1日2日の両日には星空を楽しみ、身近な自然、宇宙・地球に目を向けてもらうという意味で第17回になりますが「星空の街・青空の街全国大会」というものが佐久市で開催される予定ということになっております。一方でこういった夜間の照明の問題につきましては生活者の視点に立ちました場合には防犯の問題、あるいは交通安全の確保の問題がございまして、先ほど申し上げましたガイドラインに沿った中での適切な利用ということが必要であろうというふうに考えております。
       地球温暖化防止条例につきましては、現在県の環境審議会に付置されまして信州大学農学部の高木なおき助教授を委員長といたしまして産業・エネルギー・行政など各分野の専門家9名で構成されております地球温暖化対策検討会におきまして様々な観点から検討をおこなっております。この検討会すでに2回の検討を行ないまして現在その条例の骨子となる事項を検討しているところでございます。ご指摘の光害、特に夜間照明の節減、こういった問題につきましては先ほど申し上げました夜間の良好な環境に加えてまさにエネルギーの過剰消費の防止、それに伴う温室効果ガスの排出削減とこういう地球温暖化防止の観点からの検討ということで対象になるものと思っております。現在県のホームページでもこの条例案、検討の内容につきまして県民の皆さまに広く意見を募集しているところでございますが、この地球温暖化防止条例どういうふうに内容を詰めていくかいうことに関しまして議員のご指摘のご質問の趣旨につきましても次回のこの検討会におきまして私どものほうから報告させていただきまして、検討の材料とざせていただきたいと思っております。
       繰り返しになりますがホームページ等多くの県民の皆様のご意見をいただきまして、この地球温暖化防止条例を実効ある、また県民総参加の条例としてまいりたいと考えておりますので、ご指摘の点につきましてもその中で検討させていただきたいと言う具合に考えております。以上でございます。



 ただいまご説明ありました。実は今回、2時間の消灯によって、全国で60万キロワット時以上の節電になったそうであります。これは私計算してみましたけれども二酸化炭酸ガスに換算すると2時間で262トン、電気代では1300万円ほどの金額が浮いていることになります。やはりこういった数字が出てくるとわかりやすいと思います。
 全国の光害を防止しようとし、行政が動いた地域は民間の天文台や天文サークルなどの活動がおこなわれ、地球温暖化防止と、きれいな大気と星空を取り戻そうということ、そして省エネがリンクしていることが伺えます。
 長野県は全国有数の国立あるいは大学の天体観測施設を有する県です。長野県らしい環境を取り戻すために、条例の制定に本腰をいれて政策化していくことを求めます。



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5.高校改革プランについて

 最後に教育行政について、高校改革プランについて教育委員長にお聞きします。
 先日の山口県の高校での爆発事件や、あるいは、中学生の親や兄弟殺人など一連の少年がひきおこした事件は本当に心を痛めるものです。私は今日の子どもたちの間でのいじめや暴力・引きこもり・不登校、そして少年犯罪の多発など、これらは大人社会のゆがみの反映であるとともに、国連が日本政府に対して特別勧告している「極度の競争的な教育制度による影響」がでてきていることを注視しなければならないと思います。
 先日の事件を受けて日本教育新聞には全国高校生活指導協議会の教諭が「『進学校』の生徒の中には『非効率』な行事指導やコミュニケーション育成の場が失われ、『大人』になれないまま18歳を迎える者もいる。今、学校のもつ非効率的な人間関係醸成部分に目をむけ直すことが必要ではないか」という所感が掲載されています。そのとおりだと思います。
 今、このような社会のあり方をただしていくとともに、人間として生きる力を育てる教育がますます重要になっています。
 国際社会の動きや平和・政治・経済を見る目、環境や一人一人の人権を尊重する社会を営むのに必要な基礎知識、この中でどう生きるかという基本的な・認識・能力を身に着けることは、すべての子どもにとって必要なことであり、できる子、あるいは関心のある子だけがやればいいという問題ではありません。
 今回の高校「改革プラン」にはどこを読んでも、県民が深いところから求めている、教育に対する願いに応える改革の展望は何も示されていません。ただわかる事は高校の数を減らすことだけです。あまりにも教育が語られていない「改革」論議を拙速に突き進もうとしていることに終始しているように見えます。
全国的に多部制単位制の学校や総合学科高校がつくられている都道府県でも受験競争がいっそう激しくなっていること、生徒の興味・関心に応える学校選択の自由というなかでも、不登校や高校中退は実は少しもなくなっていません。
 そこで教育委員長に伺いますが、高校改革プランにあります4通学区に単位制・多部制と総合学科を配置するという設定そのものが県民合意となっておらず、すでに導入された入試制度のあり方を含め県民的議論に付すべきではないでしょうか。答弁を求めます。


      【答弁 宮澤教育委員会委員長】
       まず多部制・単位制高校と総合学科高校の配置が県民合意になっていないのではないかというご質問でございますが、多部制・単位制高校につきましては平成15年6月に多部制・単位制高校検討委員会から新しい時代の公教育のニーズにあったシステムであり、できるだけ早期に実現することが望ましいとの報告がなされております。高等学校改革プラン検討委員会においても多部制・単位制高校については引続き検討がなされ、最終報告では総合学科とあわせて4つの通学区にそれぞれ1校以上配置することが望ましいと記述されております。また、昨年実施しましたパブリックコメントや地域懇談会においても多部制・単位制高校や総合学科高校について県民の皆様から生徒たちも望んでいる学校であるとか、多様な選択ができることは大事なこと、柔軟な授業選択により学習意欲が向上する、など積極的なご意見を沢山頂戴いたしております。このようなことから総合学科高校、多部制・単位制高校の配置につきましては広く県民の皆様からご理解いただけるものと考えているところでございます。推進委員会におきましては、活発なご論議をいただきたいと考えておるところでございます。以上です。



 県教委は改革プランの策定に当たりまして生徒も望んでいるとか、広く県民の理解得られているとおっしゃいましたけれども、この策定に当たりまして検討委員会の審議と共に巾広く県民の意見を聞くとして、パブリックコメント、県内12会場における地域懇談会の開催、市町村長、保護者、学校関係者、民間企業経営者をメンバーとする改革プラン懇話会を設置し意見の聴取を行ってきたところであります。そして懇話会としての意見集約の結果は学校規模の標準目標値の設定や統廃合の基準数、学校の総数を示すことには反対でありました。
 また、地域懇談会では統廃合ありきや画一的な魅力作りを打ち出した中間答申への批判も相次ぎました。この県民の多数の意見に応え、検討委員会の葉養委員長も「学校総数を示すことは長野県のような山間地ではなじまない」と表明をした経過があったにも関わらず、最終答申ではご承知のとおり、県民の意見を全く無視した統廃合ありきを打ち出しました。
 何のための懇話会設置や地域懇談会であったのか、県教育委員会は県民集会や懇話会で示された県民の意見や意見集約に応え、県民無視の最終答申だけに依拠した今回の統廃合案は白紙撤回し、県民世論に従うべきであると思いますが教育委員長の答弁を求めます。


      【答弁 宮澤教育委員長】
      統廃合対象校案は白紙撤回すべきではないかとのおたずねでございます。県民のみなさまからいただいたご意見といたしましては、例えば学校の選択肢が狭められないように、地元にとって交通の便のよい地域高校を残して欲しいという趣旨の意見が大変多くございましたが、このことにつきましては最終報告においても長野県の地理的要件を考慮し、交通の利便性や立地条件等特別な事情がある場合の1学年2学級を下限設定とすることが明記されております。再編整備の大枠ルールの1つとしているところでございます。またほかにも高校の魅力づくりについて現場の地域の主体性を尊重し、全面的に支援するようにしてほしいというご意見も多くございました。これは学校や地域内部からの高校改革という検討の柱として中間まとめから最終報告をいただくまでの検討経過の中で首尾一貫して流れていた考え方でございます。昨年度県民のみなさんより幅広く多くの意見を頂戴してまいりましたが、逐一検討委員会にお伝えしてまいりましたので、いただきました意見を勘案いただき、長野県の高校改革に向けて魅力ある高校づくりや高校の適正規模・適正配置について作成されたものが最終報告であると認識しております。また、推進委員会に提示させていただきました県立高等学校再編整備候補案の白紙撤回についてでございますが、この候補案の趣旨は各推進委員会での議論が活発に前向きに進められるように推進委員のみなさまに検討材料としてお示ししたものでございます。地域の事情や各界のお立場からご検討いただくための資料でございますので、各推進委員会のなかでご活用いただきながら、魅力ある高等学校づくり、県立高等学校の再編整備、総合学科、多部制・単位制高校の配置などについて具体的かつ積極的な議論が進められることを期待しているところでございますので、撤回することは考えておりません。以上です。


 私は統廃合ありきというこの考え方に非常に危惧を覚えるものであります。実はこの統廃合につきまして私たち先日、共産党県議団として富山県を調査してきました。富山でも少子化傾向が進み、平成17年度はピーク時の55%と長野県の減少率よりも減少しています。しかし県教委は定員割れがあっても、学校の統廃合ではなく学校は残し、一学級の編成を17人とか25人などと柔軟な対応をしています。このことは学校の統廃合による地域への影響を考慮したものであります。学級定員は本県と同じ40人を標準としていますが、学校の実情や教科の特性に応じ学級編成が柔軟的に行われています。
 学校の適正規模ということでは、その規模を1学年4から8学級程度とはしていますが、現状1学年3学級以下となる学校は地域の教育力などを活用しながら、その地域ならではの環境、情報、芸術、語学等の学習により、存続を継続することも行われ、実際には一クラス17人から25人あるいは30人というクラスもありました。そして山間地の県立高校の再編では、統廃合するのではなく、今年南砺総合高校といわれますが、南砺地域の県立4校が連携するひとくくりとして存続させ、総合高校をスタートさせています。
 長野県は交通の便も山間地であり、物理的にも通学への負担を考慮した通学区制をとってきましたが、現在進められている高校改革プランは高校数を減らすことが第一義的に一人歩きしていることは明白です。富山県は中心部の富山市からは公共交通機関で60分もあれば全県に行ける利便性が高いところですが、このように少子化でも統廃合に拙速に走るのではなく、生徒数の変動に柔軟に対応しています。
 私はこのような富山の例がすべてとは言いませんが、少なくとも本県は通学の利便も著しく悪く、家庭負担のことも考えれば、学校の統廃合先ずありきではない。かつ本題はどういった教育を子どもたちに行うのかが本来の目的にしなければならないと思います。ましてや当事者の子どもたちは学校を減らせとは言っていません。コスト削減で教育を語るべきではないと思います。
 現実離れした一校6クラスという標準目標値なるもので教育は割り切れません。
 私は富山県のような方式での柔軟な対応で学校数の削減をせず、クラスの弾力的運用で少人数規模学級を実現していることを県としても検討すべきであると思いますが、こういった身近な例も当然検討されたのか教育委員長にお聞きします。
 またこのような富山の例の資料提供を教育委員会の定例会にしたのか教育長職務代理者の答弁を求めます。

      【答弁 宮澤教育委員長】
      ただいまのご意見、議員さんのおっしゃるとおりだと、正論でございます。
       県としまして少人数学級の実施を検討すべきではないかとのご質問でございますけど、国の第6次公立高等学校学級編成および教職員配置改善計画では、1学級の生徒数は従来どおり40人を標準として定めております。県立高等学校における少人数学級の実現は、今後の課題として考えているところでございますが、当面は国の基準に従い1学級40人募集を基本として考えている次第でございます。今回の高等学校改革プランの検討にあたりましてもこの基準に沿って進めて参りたいと考えている次第でございます。なお学習面では選択講座、習熟度別授業、コース制、類型製による授業など学習集団を少人数にする工夫はすでにほとんどの学校で取り入れられており、きめ細かな学習指導が出来るよう努力しているところでございます。以上です。



      【答弁 松沢教育長職務代理者】
      お答え申し上げます。教育委員会事務局が教育委員会に対し、検討資料として富山県の資料を提供しているかというおたずねでございます。
       高校再編整備に係る資料につきましては、全国都道府県をまとめた資料を提出したことはございますが、富山県に限らず、一つの県だけに限っての資料は提出してはございません。以上でございます。


 一つの県を取り上げて提出してないということです。教育委員会の中でこういうことも論議をされていないということ、非常に大きな問題ではないかと私は思うわけです。
 小学校の30人規模学級、この編成は国の基準を県は子ども達のためということでやり始めました。これと矛盾するということ、あなた方は全然そうは思わないわけですか。小学校の30人規模学級編成をすすめてきているけれども、高校についてはそういうことをしない、やはり国の基準というものを盾にする。これは子どもたちにとってスタンダード2つ当てているということじゃないですか。こんなことを私は絶対に矛盾だと思います。このような検討不十分であり、県民の合意が得られていないものを拙速にすすめようとしていること、これは長野県の次世代を担う子ども達の教育にとって害悪になると思います。私も中3・中2の子どもを抱える父親であります。こんな形で教育委員会がすすめていることを非常に危惧をしているということを申し上げましてすべての質問を終わります。


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