back

2005年 12月議会
「医療制度改革に関する意見書案」提案説明
高村議員(12/12)

* 記事はすべて、共産党県議団事務局のテープおこしによるものです。



 議第3号「医療制度改革に関する意見書案」の提案説明を致します。
 政府は、今月一日に持続可能な医療制度の構築を図るとして、医療費抑制策などを柱とする医療制度改革大綱を決定し、年明けそうそうの国会に提案するとしています。
 その内容は、高齢者に容赦なく負担を求めるものとなっています。
 70歳から74歳では現行の医療費一割負担を2割に増やし、窓口での支払いを2倍に増やす。70歳以上で現役並みの所得がある高齢者は生涯3割負担を求めるとしています。また新たに75歳以上の高齢者は独立の医療保険に強制加入する事となり、一人当たり年7万円以上、介護保険とあわせて一ヶ月約1万円ほどが年金から天引きされる事となります。保険拠出が増えると介護保険と同じく保険料も値上げする事となります。
 入院でも大変な負担が盛り込まれています。療養病床では70歳以上の入院患者に食費・居住費負担を増やします。厚生省のモデルでは月6万4千円の負担が9万6千円にと一ヶ月3万2千円もの負担が増えるとしています。今年10月から介護保険施設での食費・居住費の値上げによって、11月からの請求額の大きさに介護を受ける高齢者や介護者の家族がびっくりしこの先払いきれるのかなど不安の声が出ています。また施設管理者や職員ケアーマネージャーになど福祉関係者にも計り知れない苦悩を与えている現実をこそ政府は直視し、「持続可能な値上げであったのか」立ち止まって検証すべきではないでしょうか。
 さらに自己負担額の上限の引き上げ、一定額を保険適用から差し引く「免責制度」も盛り込まれており、高齢者の疾病状態や年金額・生活事態を配慮しない過酷な負担増ばかりの内容となっています。
 12月10日長野県医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会の4師会が主催で「国民皆保険制度を守る長野県民集会」が呼びかけられ、保健・医療・福祉・介護関係団体や連合婦人会、老人クラブ連合会など49団体が協賛し、700人が集まりました。私も来賓として参加させていただきました。
 呼びかけの趣旨はー厚生労働省が発表した「医療制度構造改革試案」や経済財政諮問会議の意見は、患者と家族に更なる負担を強いるものであり、わが国の世界に冠たる国民皆保険制度を崩壊させかねないものであります。だれでも、いつでも、どこでも安心して平等に医療が受けられる国民皆保険制度をまもり、高齢者や弱者を思いやる心と更なる国民の結束が必要となることから、県民集会を開催するーとしています。
 
 当日の決議では、
高齢者の患者負担増に反対する
高額医療・人工透析の患者負担増に反対する
入院時の食費・病床代自己負担増に反対する
保険免責制による患者負担増に反対する
医療の安全と質の低下を招く医療費総枠管理制度に反対する
など決議され、衆参議長、総理大臣ほか国会議員に送付されました。

 今の日本は、効率優先経済と「小さな政府論」によって、高齢化に伴う必要な社会保障費の予算も容赦なく削減され、本来人間らしい暮らしの支えになるべき福祉制度が反対に人間の尊厳をふみにじるものに変質されています。貧富の格差が広がっており、OECD(経済協力開発機構)の調査では、日本の貧困率は15.3%で加盟25カ国中5位で先進資本主義国ではアメリカについで2番目に高い貧困率となっています。
 特に高齢者の実態は年々深刻になっています。
 県内の福祉事務所で扱う生活保護申請は、年々高齢者世帯の比率が増えています。平成16年度の長野県の生活保護世帯の49.6%が高齢者世帯となっています。厚生労働省のH14年度の「国民生活基礎調査」によりますと、高齢者世帯では290万人もが生活保護基準以下の年金等の収入で暮らしており、何と高齢者世帯の40.4%を占めています。また、平成15年度の県内市町村の国民健康保険実態調査によりますと、旧豊野町を除いて、すべての市町村で所得125万円の3人世帯では国保料と介護保険料の負担が所得の1割を超えています。高齢者と生活弱者にとっていよいよ生活を圧迫する状況となっています。
 今ご高齢となられた方々は、戦前戦中戦後と国策によって人生を翻弄され筆舌に尽くされないご苦労をされたみなさん方です。苦労に苦労を重ねられた体が、医療を必要とするときに、お金の心配なく安心してよい医療を受けていただけることが、県民の願いであり親を大切に心ではないでしょうか。国内総生産(GDP)に対する総医療費の割合を比較してみると、わが国は17位(7.9%)で、国民医療費は先進諸国と比較して決して高いとはいえません。
 わが国の平均寿命は世界一、長生きすれば医療費は増加します。単純に医療費を抑制する政策は、わが国の医療の質とシステムを破壊し、病気の重症化を招き平均寿命を縮めることになります。
 よって国においては、安易に高齢者に負担を求めるのではなく、広く国民の合意を得ながら安心して受診できる質の高い医療体制を確立するよう強く求めるものです。議場の皆様におかれましては、多くの県民の皆様の声をうけとめられ、ご賛同くださいますよう心から訴え、提案とさせていただきます。


top back