1.障害者自立支援法について
障害者自立支援法について知事並びに部長にお伺いします。障害者に過酷な応益負担を押し付ける障害者自立支援法がスタートして3ヶ月になろうとしています。制度が始まる前からこの影響を心配し、問題点を指摘しながら対策を求めてきましたが、いまその矛盾があちこちで噴きだしております。
今年3月福岡市で53歳の無職の母親が27歳の障害のある次女を殺害した事件は、検察側が懲役7年を求刑しましたが、自立支援法が始まれば夫の遺族年金と、娘の障害年金だけの暮らしの中から1割の利用料を出さねばならず、金銭的負担が重くなり生活に窮することを心配した結果起こった出来事でした。
検察側は論告のなかで、「障害者自立支援法の施行と言う障害者福祉行政の節目を迎えるにあたって、障害者を抱える家庭の間に法の運用に対する漠たる不安がひろがっていた。」と述べています。
これらは決して対岸の火でなく長野県下で起こっても不思議ではありません。
2月議会の代表質問の中で高村京子議員の質問にたいし、県はまず実態調査を行って実情把握に努めるといっています。
そこで実態をどのようにつかみ、どう分析しているのか社会部長に伺います。
田中社会部長
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お答えいたします。4月に導入した原則1割の利用者負担につきまして、影響を把握するため5月に県内すべての地方事務所管内におきまして105名の利用者と入所・通所施設及び居宅サービスの30事業者に対して、職員が現場に出向きまして話をお伺いしてきております。
その結果、利用者につきましては、回答のあったほぼ全員の負担額が増えておりました。1割負担と食費を併せた月額負担額で平均約1万5千円の増加でございます。なかには3月まで負担がゼロであった方が、4月から負担が3万9千8百円の負担となった例もあり、最も増加額の多かった方は4万4千円の増加でございます。この増加分は年金の節約や、生活費の切り詰めで対応している方が過半でございます。一方、ホームヘルプ、通所授産などのサービスをやめたり、回数を減らしたり、4月から実費負担となった施設での食事をやめた方などが、回答のあった76名中17名ございました。また、働いている作業工賃よりも利用料の方が高いのは納得がいかない、減免制度が不十分であるといった不満の声が寄せられております。
一方、事業者につきましては特に通所系の施設が大きな影響を受けております。4月から月額定額払いというものから日額報酬による実績払いに変更されたことにより日ごとの利用者の変動が多い通所者の施設で10%前後減収となっております。また、本年10月から導入される新体系の報酬単価では3割程度の減収になるという試算をしている事業所もあります。新体系への移行には5年の経過措置があるものの、移行後の事業運営を危惧している事業者が多く見られました。いずれにしましても利用者負担増の影響、事業者の収支問題につきましては、さらに詳しく実態を把握していく必要があると考えております。以上でございます。 |
ただいまの社会部長の答弁のように、自立支援法の影響は通所系サービスに顕著です。この間いくつかの施設を訪問してお話を伺って参りましたが、従来はほとんどが無料であったものが一気に1万数千円から2万数千円の負担となり、工賃を大幅に上回るものになっています。わずか数千円の工賃しか収入にならないのに2万も3万も払ったのでは足が出て、働く意欲も無くしてしまいます。
「働きに行くのにどうして収入の3倍もお金を払はなくてはならないのか」「障害者はただでさえハンデイキャップをおっていて、家族は介護などで重い負担を強いられているのに、その上生活に必要なサービスにお金を払えと言うのが間違い」「給食費が払えないからお昼はありあわせのものを持っていく」「利用者によっては滞納になっている人もいるが来てはいけないとはいえずどうしようか困っている」など悲痛な声が寄せられました。
そこで知事に伺います。
国の低所得者に対する軽減措置もありますが、所得要件が厳しすぎるために実質的な負担軽減になっていない事例もあり、全国的には利用料や医療費にたいし、8都府県243市区町村で独自の軽減策を設けています。
東京都では住民税非課税世帯のホームヘルプ利用料に対し7%の補助を行っていますし、京都府では福祉サービス、ほ装具の利用料について所得段階を細分化し、月額上限を国の半分にする措置を講じています。
そこで、ぜひ長野県としても利用料の軽減のために食事代の補助など、独自の補助制度を設けて欲しいと思いますがいかがでしょうか。
また、今度の自立支援法のもとでは事業者の運営が非常に困難になり、このままだと施設によっては3割から4割の赤字が予想されるといいます。必死で自己資金を作り、親の協力も得て、やっと開設できたと思ったら報酬単価がさげられ、あわせて報酬が従来の月額制から日額制になったので、利用者がその日の気分や体調で休めば即、収入に響き、減収になります。その不安定さを補うために利用者を増やした場合定員の5%を越えれば報酬が70%になるということで、利用者と施設が相反する役割を果たす本当にひどい制度です。
このまま続けていけばやっていけなくなる事業所も出てくることになり、結果として障害者が利用できる施設がなくなることにつながり、社会参加からも遠ざかることになります。
県としても個人の利用料の軽減と合わせ、事業所にたいしても何らかの援助を検討して欲しいと思いますがいかがですか。
そもそもこのような法律はあまりに矛盾が大きく問題も深刻なので、早急に見直すべきと思います。国に対し応益負担の廃止や矛盾解決のための手立てを求め、知事としてきちんと意見を上げていって欲しいと思いますがいかがですか。
田中知事 |
以前から障害者自立支援法というのは言葉と違う「羊頭狗肉」ではないか、という懸念なり、批判なりがですね、数多く満ち溢れております。実は障害者自立支援法は、本県におけるグループホームであったり、地域移行というものを、評価をした上で、そうした地域生活と就労支援することをめざしたのだという風に厚生労働省の側はおっしゃているんだそうでございますが、いま議員からもご指摘があられたように、あるいは党派を超えてこうしたご指摘があられますように、あの現場での障害をお持ちの方々の生活からは、極めてかけ離れた、単なる国の財政破綻を先送りするがための社会保障費削減を主目的となってはいまいかと、私は非常に懸念をいたしております。
3点、とりわけ障害者自立支援法をめぐる本県での取り組みと、国の認識の違いを述べさせていただきたいと思います。
まず1番目の地域生活移行の取り組みでございます。国においてはですね。いわゆるグループホーム等の施設整備の補助というものが一切ございません。本県は4人定員で新築の場合に、わずかな金額かもしれませんが735万円を補助させていただいております。このようにグループホームを地域生活移行するなかで、整えていく上ではですね。こうした具体的な施策、これは垂直依存の形ではない意味でですね。極めて必要であろうと思いますが、残念ながら国は掛け声としての地域生活移行の推進ということは掲げておりますが、具体的な支援策には極めて乏しいという風に感じております。
2番目に就労支援の取り組みなのでございますが、本県では企業への就労を促進するために、独自に就業支援ワーカーを9名配置させていただいて、また、授産所と、この名称は、私は何か産業を授けると、当初私は知事になります前は、授産施設とは、お産婆さんがいらっしゃる場所かと思ったくらいでありまして、しかしながら多くの方にとって、授産施設という言葉は非常に何か障害者の支援ということとはですね、違う言葉のように思いますが、こうした場所の「労働の対価」としての工賃アップと新しい事業体系への移行を支援するために、授産活動活性化支援員を4名配置いたしております。
これはありがたくもNHKの全国の放送等でも本県の取り組みは高い評価をいただいておりますが、国では一般就労の移行促進に力を入れるという掛け声のもと、施設体系の再編ということを行ってはおりますが、具体的な人的配置等の移行促進策はないわけでございます。先ほどらい申し上げているようなグループホームの施設整備等への助成はないわけでございます。
3番目に障害の重い方への対応でございますが、本県では障害の重い方のために、国に先駆けて重症心身障害者グループホームの制度を創設させていただきました。障害者自立支援法に伴って国でも障害の重い方のためのケアホームを創設はいたしておりますが、この単価は一番重い方であっても月額172,462円に留まっております。この単価では医療的なケアの必要な重症心身障害者を支えることは極めて困難でございます。本県は現行で補助といたしまして、さらに1人当り月額257,630円を補助させていただき、看護師等による手厚いケアというものの実現を行っております。
こうしたなかで議員からもさまざまご指摘がございましたが、このような現場の実情というものに即してない、あるいは障害者の生活というものへの想像力が結果として欠けているですね、制度の問題点や、具体的に地域で自立した生活をめざす方々や、その支援をする事業者へのどのようなサポートが必要であるかをですね、把握をしながら、障害者の皆様が地域で安心した暮らしができるようにですね、サービスの実施主体でまたあります市町村とも水平協働、水平補完をですね、行う中でですね、支援を検討しても行うということが肝要であろうかと思っております。
ぜひとも具体的なですね、まさに現場でですね、さまざまな想像力に結果として欠けた制度のはざまで悩まれている方々の実情、またそのなかでぜひとも皆様から、ここをこのようにですね改善したらいいのではないかということがあれば、市町村とも水平協働でですね、本県から行うとともに、これは国全体のですねより人間味のある制度、その上でのサービスの享受につながるようにですね、まさに信州から日本を変えていくひとつの大きなテーマであると思っております。
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ただいま知事からご答弁いただきました長野県がですね、国基準を上回って独自の施策を設けたり、事業所に対する入所型の利用者に対しては、事業主に対して補助しているというお話は、それはそれとして私は評価したいと思います。
しかし、先ほど私申し上げましたように通所系の事業所サービスなどでは、本当に個人の負担が重くて、このままでは続けられないという状況があります。例えば健常者の場合を考えてみて下さい。20万の月収をもらってる人が、30万、40万払って仕事に行かなければならないということが果たしてありうるでしょうかということであります。
私が求めているのは、この1割の応益負担によって本当に利用者が困っているわけですから、これについて県が市町村と連携をとりながらすすめていただくことは良いわけですけれども、県としてどうするかという姿勢がなければ、一般の相談をしていただいてもなかなかいい道は見出せないと思います。全国では2割の県がですね、何らかの利用者負担に対する方策をもっているわけですから、このことについて改めて、再度、知事にお考えをお伺いいたします。
この問題の最後に社会部長に伺います。いま、市町村では来年の3月までに、「障害福祉計画」を策定するために取り組んでいます。この計画をどれだけ充実させることができるかどうかが大事です。県内を見ると東信、北信は比較的事業所の数もサービスの内容も充実していますが、地域的に見ればアンバランスな状況があります。県民等しくどこに住んでいても必要なときに必要なサービスがきちんと受けられるようにすることが求められています。県としてどのような構想を持って策定にあたるのか、ご所見をお聞かせください。
田中知事 |
すでに先ほど述べさせていただいた所でございますが、これは県単独だけではなく、それぞれの、まさに地域移行でありますから、リージョナルコモンズの一員であります市町村のですね、深い理解や意欲やご協力というものがあって初めて水平協働となってまいります。無論そのことは各リージョナルコモンズであります市町村における、この問題に関してのですね認識ということにもそれは結果として、サービスを受けられる方々、サポートする方々の状況はですね、少なからず差異が生じようかと思います。
私たちは先ほど申し上げたように県としてですね、国の自立支援法と呼ばれるものが極めて中身が希薄ななかでですね、それぞれの現場で困難な状況にあられる方々に独自の支援を行っております。ですから先ほど申し上げたように、さらに必要なことに関してですね、具体的にお教えいただきたいですし、またそれは同時に教育も福祉もこれは市町村のご認識というものも大変大事であるということであります。
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田中社会部長
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お答えいたします。ご指摘のとおりですね、現在の障害福祉分野におきます地域の資源というものにアンバランスがあるということは十分承知しております。そしてまた今年度ですね、市町村では自立支援法に伴いまして、障害福祉計画というものを作成していくことになっております。障害福祉計画のなかにおきまして市町村が各地域、地域におきます十分なサービス量というものを積み上げていく作業にいま入っていただいております。
県では圏域ごとに設置されております市町村や障害者団体等の関係者で構成する調整会議を定期的に開催しておりまして、市町村の計画の策定に助言あるいは支援を行っております。計画の策定につきましては、特に障害者が地域生活を送る上で必要となります就労支援、移送支援並びに権利擁護の分野というものが重要な視点と考えているところでございます。
今後地域ごとの特性を踏まえまして事業者、地域の皆様のご意見をお聞きしながら全市町村におけます今年度中の計画の策定めざしてすすめていきたいと考えております。以上です。
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個人負担の軽減などは私たちも、ぜひ積極的な提案をさせていただきますが、県としてもぜひこれに応えていただくような積極的な施策を講じていただくことを強く求めておきます。
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