1.青年の雇用問題について
私たち共産党県議団はさる11月17日、村井知事に対し2007年度の長野県当初予算の編成にあたり、暮らし、福祉・医療、教育、環境、産業・雇用施策の前進を中心にすえた200項目に迫る予算要望を行いました。これにあたり私たちは全県に「県民何でもアンケート」を実施し、現在3000通近くの返信が寄せられています。この中で、介護や医療などの負担増により「生活が悪くなった」との回答が8割を超え、国の悪政が暮らしを破壊していることを多くの県民が感じ、県政へは「高齢者支援の充実」、「医療制度の充実」などを望む切実な声が上位を占めています。
県の「来年度当初予算編成方針」では、「地方交付税は毎年削減されてきており、来年度の動向については、新型交付税の導入などなお不透明な状況にある」と安倍自民・公明政府による地方自治体へのひき続く財政攻撃を危惧しています。私たちは予算の重点化についてはこれまで築きあげてきた福祉・医療、教育分野の事業が後退しないよう、住民福祉の増進を図るという地方自治体の本来の役割を発揮した予算編成を願うものです。
そこで今回私は、現在大きな社会問題になっている青年の雇用問題について伺います。
11月19日、松本市内において、長野県青年雇用集会が開かれました。県内各地から青年が集まり、「人間らしく働きたい!まともに生活できる仕事を!」と青年をとりまく雇用実態を暴露し、その違法、無法な状態を一掃し、企業に対し、人間らしい働き方のルールを守らせることを求め、集会のあとデモ行進も行いました。
青年の労働実態は過酷です。集会のアンケートなどでも「12時間交代で働く青年が次の交代メンバーが来ないからと、さらに12時間働かされてもタイムカードは8時間で押され、残業代はいっさい出されない」とか、旅客列車の社内販売に関わる仕事をしている青年は、「従業員はほとんど非正規やパートばかりで、朝7時からなんと午前0時半まで働き、翌朝7時に始業ということもある」という驚くべき勤務実態です。各種社会保障制度も未加入だとも言っていました。これはほんの一部です。先日、国会でも安倍首相はわが党の市田書記局長の追及に、「ワーキングプアを前提にした働かせ方は大きな問題だ」と答弁しました。この問題では、8月、トヨタ系の光洋シーリングテクノが請負労働者を直接雇用したり、10月には大阪労働局が、京都のクリスタルグループのコラボレートに対し、偽装請負で業務停止を命令。さらに松下電器のプラズマ工場にも偽装請負で是正指導が入り、11月には青色ダイオードの日亜化学工業が、請負労働者1600人を直接雇用に踏み出すことが発表されました。このように、いま日本では、正社員を非正規社員に置き換えて大企業が儲ける、儲けのためなら違法、無法も許されるという企業のあり方が厳しく問われ、この問題を解決することが大きな流れになっています。
そこで知事に伺いますが、このように無権利状態で働いている青年労働者がいることをどうお考えか伺いたいと思います。先日の上田市での車座集会で知事にこれらの集会を企画してきた民主青年同盟の代表の方から、青年の労働実態が綴られた「青年黒書」が手渡されたと思いますが、知事はこれをご覧になられたかと思いますが、これも含めてどうお考えか伺いたいと思います。
村井知事
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経済のグローバル化を背景に企業間競争が激化している中で、企業における雇用形態ですけれども派遣ですとか、パートタイム雇用ですとか非常に多様化がすすんでいることは私も認識しているところでございます。
先日の、いま備前議員御指摘のように、上田で催しました車座集会で若い出席者の方から非常に深刻な青年の非正規労働の状態というものをお伺いしました。私からはそのような問題について、ぜひ長野労働局の様々な協力を得て、これは基本的には労働基準監督署という、労働警察というべき立場、ここで扱っていただく問題でありますが、県としても連携を保ちながらやっていきたいという趣旨のことはお答えいたしました。
会合が終わりました後、ご指摘の「労働黒書」を頂戴いたしました。その他、私も報道で承知しておりますが、他の地域における様々の事例、これにしましても承知しているところでありまして、本当にここまでひどい状態なのかということを改めて、なんと言いましょうか、困った状態になっているものだなと思うわけでありますけれども、やはり、こう申しては何なんですけども、非常に激しい競争の結果、それでもまあ働く人が来るということに企業が甘えているということはあるんだろうと思います。
しかし、一方ではきちんと取り締まるところは取り締まってもらわないといけないことでありまして、私は折をみまして長野労働局にもきちんとそういう面での取り締まりの強化も働きかけたい、県としましてはこういう協力を関係当局としてまいりたいと思っております。
なお、平成17年度に長野労働局が労働者派遣法に基づく指導監督を実施した事業所が県内85ございますが、このうち許可を受けないで行う労働者派遣や、事業の請負であると偽装した派遣行為など法律に違反する事業所は59あったということも御報告しておきます。 |
ぜひとも長野労働局とも共同していただきたいということと、偽装というか違法な状態も語られたわけであります。
このことについて次にですね、ワーキングプア、「働く貧困層」といわれる労働者の置かれている状態について伺います。この間NHKテレビでも2回の特集番組を放送していましたが、国税庁が発表している値でも、一年間を通じて民間企業に勤務した給与所得者で年収300万円以下の人は2000年で1507万人でしたが、2005年には12%、185万人増えて1692万人になっているといわれます。これらの実態は長野県ではどうなっているのでしょうか。松本のハローワークで伺うと、求人倍率は上昇してはいるが、内訳は、派遣など非正規社員の増加で、正社員の比率が下がってきているのが目立っています。松本での派遣労働の新規求人数は2005年7月の302から今年10月の856へと2.8倍、月間有効求人数では860から1868へと2.2倍とうなぎのぼりになっています。
一方のこれらの方々の年収についてはハローワークでも中信労政事務所でも実態はわからないと言われましたが、先ほどの青年アンケートの年収についての設問では、年収100万円未満が10%、100から200万未満が37.5%、200万から300万未満が37.3%などと、300万円未満が83%にも及んで、極めて低所得の青年が圧倒的です。しかもいつ解雇されるかわらない不安定雇用におかれています。この問題を解決するために、正社員採用を増やし雇用の安定を図ることが大きな課題であると言えます。
青年たちの多くは、望んで不安定雇用を選んでいるわけではありません。同アンケートでは正社員になりたいと望んでいる青年は73.3%に上っています。そこでこのような働く貧困層(ワーキングプア)といわれる非正規雇用の労働者の実態はどうなっているのか知事に伺います。
村井知事 |
ただいま備前議員がおとり上げになりました年収300万円以下の勤労者が2000年に1500万人いたが、2005年1692万人でございますか、増加していると、これは国税庁がやっております給与階級別給与所得者数構成比と、民間給与実態統計調査という統計によるものだと思いますが、全体の表を見ておりますと約4500万人位の規模と思いますが、要するに源泉徴収をされている人をとらえた数字でございます。源泉徴収でございますから、その年に例えば途中で職を離れたというような、会社をやめたというような場合でありますと、例えば予定された年収が数百万ありましても、逆に300万以下になるわけであります。
こういう状態はいつでもあるというたぐいの統計でありますが、ただこれを全体2000年から2005年まで5年間を横に見ておりまして、私も気がついたことは、実は300万円以下も増えているんでありますが、同時に2000万円超というサラリーマンとしてはめちゃくちゃ高給な階層という年収ですね、それが17万8千人から、この間、21万人に増えている、他はすべての職階層、2000万円以下1500万円、1000万円以上1500万円以下といった階層もすべて率が下がっているという状況であります。非常に豊かな人が極わずかできてきて、全体にずうっと下がってきているということがサラリーマンについてはいえると、これはひとつのいなめない現象だと理解しています。
それを申し上げましたうえで、長野県につきまして県内ワーキングプアと呼ばれる非正規雇用者の実態がどうなっているのかというお尋ねでございますので、できるだけ答えさせていただきます。
平成16年に総務省が実施しました事業所企業統計調査によりますと、長野県では民営事業所全体の雇用者約77万人のうち正社員以外のパートタイマーやアルバイト、嘱託、臨時雇用者は約27万人です。全体の35.2%を占めております。また平成8年度の正社員以外の雇用者は25.2%でございまして、9.7ポイントの増加になっています。一方、長野県が実施しております平成17年の賃金実態調査ではパートタイマーを除く雇用者賃金の月額は28万3千円に対しまして、パートタイマーは11万5千円でありまして約4割にとどまっています。
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約2000万円以上ということは非常に比率としては0.1%増えていてですね、非常に小さい、そして二極化がすすんでいるということをおっしゃられたわけですが、やはり長野県としてもですね、こういった非正規が多くなっていることをどうするのかということを伺っていきたいと思います。
先日、塩尻志学館高校の進路担当の先生に伺いましたが、最近は高校生の求人も回復してきてはいるが、派遣労働などの非正規社員の募集が新卒者にも来ていることが最近の特徴だと語られました。新卒者が応募することは今のところないそうですが、ニート・フリーター対策とともに、不安定雇用である派遣労働などへは行かないよう、正社員になるように指導しているとのことです。
そこで知事に伺いますが、こうした派遣など非正規の青年労働者の実態を調査し、特に増え続ける派遣業者と派遣先企業に対して、長野労働局と連携し、青年の使い捨てを許さないという立場から、一定期間以上継続して働く派遣労働者の直接雇用を申し入れる義務を企業に果たさせるような特別の体制をとって調査・指導すべきと考えますがいかがでしょうか。
村井知事
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始めに実態調査につきましてお答えします。長野県では毎年継続して賃金や労働時間、休暇について調査を行ってきています。今後は調査項目を充実させまして、パートタイマーやアルバイトなど非正規社員の労働条件につきましても調査してまいりたいと考えております。
次に派遣労働者の直接雇用に対する派遣先企業への指導についてですが、派遣労働者につきましては労働者派遣法によりまして、派遣労働者の保護の観点から一定期間を超えて受け入れる場合、派遣先事業所で雇用するべきであるという努力規定は設けられております。
一方、政府の経済財政諮問会議では、このような法律の規制が派遣労働者の短期間での契約打ち切りにつながり、雇用の不安定化をもたらしているという指摘もあり、派遣期間の見直しなどが現在議論されています。また、厚生労働省の労働政策審議会におきましては技能を高めて就職に結びつける、非正規雇用の減少をはかるために雇用保険に加入していない派遣労働者の職業訓練の対象とすることを検討しております。県といたしましても政府の対応を見守りながら、長野労働局と連携いたしまして直接雇用の促進や、職業訓練の充実に努めてまいりたいと考えております。
なお若者の就職支援専門機関であるジョブカフェ信州でございますが、ここではできる限り常用雇用での就職先を紹介しておりまして、平成17年度の就職確認者数988人のうち99%にあたる978人の常時雇用を実現していると認識しております。また労働者の権利を守るのは、労働組合の果たす役割が私は大変大きいと考えておりますので、労働組合との密接な意見交換を行ってまいりたいと考えています。 |
先の議会での私の代表質問で非正規雇用労働者があふれる三重県のシャープ亀山工場の事例を紹介しましたけれども、本県が企業立地の補助金を出す企業や工業団地などに立地する企業に対して、そこで働く労働者の雇用安定のため、「雇用計画書」の提出など正規雇用の拡大を求めるべきだと考えますがいかがですか。
村井知事
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立地企業の雇用でありますが、県営産業団地の分譲の際には立地希望企業から工場等の建設計画と共に毎年度の雇用計画書の提出をいただいています。企業立地の助成金を交付する場合には、新規常勤雇用者が10人以上であること、事業申請時6ヶ月前から事業終了後交付決定時までに県内で解雇を行なっていないこと、この2点を雇用に関する条件として設けておりまして、また、助成金交付後も5年間、雇用実績も含めた事業成果報告書の提出を義務付けています。今までに助成金を認定した18企業につきましては新規常勤雇用者数は432人、うち地元雇用者数は377人が見込まれています。 |
実はこの質問を準備する段階でですね、青年労働者にとっても違法状態にあっても、それが違法とわからないことも多く、また違法と知っても告発することが難しいということがよくわかりました。それだけに行政の取り組みが大変重要です。そこで、本県として青年に開かれた労働者相談窓口の設置、青年労働者むけの冊子の発行をはじめ、長野労働局や市町村と連携し、違法一掃の取り組みを進めることが必要と考えますがいかがですか。社会部長に伺います。
また特に労働者の権利とこれを守る法制度を労働者にも企業にも徹底し、高校生をはじめ教育機関で労働者の権利をきちんと身につけさせる必要があると思いますが、高校現場へは県社会部労働福祉課のつくった「職場で必要なルールブック」という冊子が作成されていますが、これをすべての高校や中学校の就職希望者などへも普及し活用させるべきであると考えますが、これについて社会部長、そして教育長のお考えを伺います。
板倉副知事(社会部長事務取り扱い者)
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労働者相談窓口の設置等についてのお尋ねであります。労働条件や労働安全に関する問題につきましては数多くの法律によって規制されておりますので、一般の労働者にとってはわかりにくい状況になっていると考えます。
県としましては労政事務所に労働相談員を配置いたしまして、青年労働者はもとより全労働者から職場に生じたトラブルについての相談を受けています。またより専門的な相談につきましては弁護士や社会保険労務士を特別労働相談員にお願いをいたしまして相談に応じています。何よりも大事なことは相談したい人に労働相談の窓口を知っていただくことでありますので、県のホームページですとか、広報誌への掲載、市町村への広報の依頼によりましてひき続き周知に努めてまいります。
卒業期を迎えました高校生や専門学校生に対しましては、労働法の基礎知識を内容と致します「職場で必要なルールブック」を作成いたしまして、新社会人ワーキングセミナーとして学校訪問により講義を行っています。それに加えまして青年労働者についても労働教育講座の場を設けて啓発に取り組んでまいります。
次にルールブックの活用についてですが、高校生、専門学校生を対象に平成17年度には36校2726名にルールブックをテキストに新社会人ワーキングセミナー事業を行っています。セミナーにつきましては教育委員会などの協力を得まして、すべての県立高校と私立高校に対しまして開催をお願いしています。新社会人として仕事をしていくうえで労働関係の知識をつけることは大変重要でありますので、卒業後就職する生徒の多い学校を中心としてセミナーの開催を強く働きかけ、できるだけ多くの学校で開催できるよう積極的に取り組んでまいります。中学生につきましては労働教育の内容や方法について教育委員会と研究をしてまいりたいと考えています。 |
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山口教育長
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お答えいたします。働くものの権利に関する学習につきましては、中学校では社会科の公民的分野で、職業の意義と役割、および雇用と労働条件の改善などについて学んでいます。また高等学校では公民科の現代社会または政治経済の教科や、進路指導のなかで雇用と労働問題等につきまして学習しています。
議員御指摘の「職場で必要なルールブック」についてですが、昨年度は県内の18の高等学校で、社会部の事業である新社会人ワーキングセミナー事業が実施され、テキストとして活用されています。その他、25の高等学校におきましても進路指導に活用しています。今後、社会部と連携いたしまして、この冊子の周知と活用をすすめてまいります。
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ただいまご答弁いただきました。今、このように労働法制の規制緩和、特に2004年の派遣法の「改正」によりまして非人間的な働かせ方が横行し、しかも青年をこういった状態で働かせることは社会保障の支え手を土台から崩すことにもなり、技術などの継承やものづくりに否定的な影響を与え、本県経済や社会の発展にとっても重大な問題となります。人間らしい働き方のルールを確立し守らせる。このことが県政の役割でもあることを強く指摘させていただき質問を終わります。
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