2006年12月県議会

12月15日 石坂ちほ議員

一般質問
  1. 浅川の治水対策について
  2. いじめ対策について
1.浅川の治水対策について

 それでは浅川の治水対策についてお伺いします。
最初に確認させていただきますが、この「穴あきダム」という表現は、いわゆるコンサルト案の河道内遊水地をさしていると思われますが、そもそも、当初計画の浅川ダムそのものが穴あきダムではないのでしょうか。土木部長にお伺いします。

原土木部長
 当初計画の浅川ダムについてお答えいたします。ダムには様々な部類の…がございます。まず構造的な分類といたしましては、コンクリート重力式ダム、あるいはロックフィルダム等ございます。また、洪水調整の方法に関する分類といたしましては、ゲート施設などにより人為的な洪水調節をいたしますものと、常用洪水吐けからの自然放流による洪水調節を行うものがございます。当初計画の浅川ダムは常用洪水吐けからの自然放流により洪水調節を行うタイプのものでした。穴あきダムという用語の定義は、一般的に確定したものではないようですが、自然放流により洪水調節を行うものを総称して穴あきダムということがあります。ちなみに先般の一般質問で柳平議員のお示しされた益田川ダムのように常用洪水吐けが河床部にあるもの、これは河床部穴あきダム、あるいは流水型ダムなどと呼ばれております。


 「穴あきダムも選択肢」という言い方が、あたかも当初計画の浅川ダムは、ゲート操作で流量調節できるダムであるかのような印象を与えたり、混乱を招くことにもなりかねません。私は、11月18日に豊野老人福祉センターで開かれた「浅川に関して流域の皆様の意見をお聞きする会」に参加して本当に驚きましたが、ある人が、「浅川の上流で土砂や流木を止めるものが必要だ。大規模なもの程よい。450トンといわず500トンでも600トンでもいいから造ってほしい。」と発言していました。この人は、治水ダムと砂防ダムを混同しているだけでなく、基本高水450トンと言うのは浅川と千曲川との合流点での瞬間ピーク流量であるにもかかわらず、ダムで450トンを溜めるのだと思い込んでいるのです。
 県としては、「穴あきダム」という表現も含め、もっと正しい情報発信につとめていただきたいと思いますが土木部長いかがでしょうか。


原土木部長
 計画の概要等につきまして正確にということでございますが、私どもも昨年来から資料に基づきまして、また説明会ではパワーポイントなどで説明してございます。しかしながらまだまだ説明会等に参加いただいている方々が多くない状況でございます。今後も内容につきましては、きめ細やかに住民の方々にご説明し、正確な資料をもちまして説明をしてまいります。

 今年7月の雨でも、湯谷団地内では、斜面の土砂がガレージを埋めたお宅や、新たな地割れや湧水が発生しまして、私も現地を見て、長野建設事務所にお願いし、水抜きなどをはじめとする対策工事をやっていただいています。ループ橋にさしかかる浅川右岸では、平成7年、一昨年、今年7月と3回にわたり地すべりブロックが発生していますし、ダム建設予定地には地すべり防止区域もあります。このような場所に、治水対策としてのダム、または河道内遊水地などの構造物を建設した場合、地すべり対策などの予算の増額がさらに必要となるのではないでしょうか。土木部長にお伺いします。


原土木部長
 地滑り対策に関する予算でございますが、一般的に地滑りが発生する原因、これは素因に分けることができます。素因としましては、地形や地質、これが滑りやすい状態にある。また誘因としましては主として水の供給によって、そのような滑りが発生するものでございます。地滑り対策については、こうした原因や発生のメカニズム、これを明らかにした上で、適切な方法を選定することとなります。現在、ダムありからダムなしまで広い範囲を選択肢として検討をすすめている段階でありますので、地滑りに関してのお答えは説明する段階には至ってはおらないと思っております。

 9月議会の代表質問で備前議員も紹介いたしましたけど、地域住民が地すべり地の危険を訴えていたにもかかわらず、国直轄で総工費3500億円をかけて完成した奈良県川上村の大滝ダムは、平成15年3月に試験湛水を始めた直後に、ダムの4キロ上流にある白屋地区に多数の亀裂が発生し、大滝ダム亀裂現象対策検討委員会の意見を受けて白屋地区住民はさらに上流の仮設住宅などに集団移転を余儀なくされ、試験湛水は中止、水抜き後自然放流、ゲートは全開で、3年以上たった今なお、その状態が続いています。白屋地区の地すべり対策工事は今年の4月、78億円で落札され、工事が始まりましたが、水抜き後の再調査で、新たに5ヶ所の地滑りの可能性がわかり、そのうち白屋地区の移転先の一つでもあった大滝地区を含む2箇所は、さらに100数十億円の対策工事を進めるとのことです。住民の安全を守るはずだったダムが、多額の税金を使い続け、住民の安全を脅かし続けていると言う現実がここにあります。
 地すべり地への人工的な構造物の建設が、大滝ダムのように、将来にわたって際限なく対策工事を必要とし、肝心のダムは機能を果たさないということにならない保障はありません。決して、技術的に可能だからと技術過信、技術偏重に陥ることなく、安全性の問題については、是非とも、真剣に取り組んでいただきたいと、私、思っております。土木部長の見解はいかがでしょうか。


原土木部長
 施設の計画あるいは、設計を行う際におきましては様々なケースを想定してやります。と同時にそれに基づきます必要な調査も当然データとしてとらなければならないと思っております。当然、施設をやる場合におきましては説明責任を果たす資料を十分に整えてまいります。

 説明責任と共に結果責任もぜひとっていただくよう、お願いしておきます。今後のスケジュールの見通しについてお伺いします。浅川の治水対策として、何らかの構造物を建設する場合は、今もお願いいたしましたが安全性の調査が必要となりますし、公聴会も実施されます。それらを経て、河川整備計画が認可される時期はおおよそいつ頃になるのでしょうか。


原土木部長
 認可がいつ頃になるかというお尋ねでございます。これにつきましては昨日、西澤県議の質問にもお答えいたしましたが、昨年の11月の22日に浅川の河川整備計画に関する基本的な考え方、これを公表した際にお示ししました長野圏域河川整備計画の目標スケジュール、これがございますが、これに従いまして認可が得られる河川整備計画の策定に努力してまいります。また、認可後の計画実施、これにつきましてはまだ…決まっておらない段階でございますので、お答えはできない状況でございます。いずれにいたしましても一日も早く地域の皆様に河川整備計画が得られる案、これを早くお示しできるよう務めてまいります。

 さて、下諏訪ダム、蓼科ダムなどの計画されておりました諏訪圏域の河川整備計画は、基本高水やダム計画は変えないまま、当面の20年間は50年確率で河川改修優先の整備を進める計画が国の認可を得て実施をされております。
 県議会開会日前日の12月6日に、日本共産党県議団は国土交通省河川局の担当者と懇談を行ないまして、長野圏域河川整備計画を諏訪圏域河川整備計画と同様の基本的考え方で策定することも可能であることを確認してきました。同じ国土交通省の方針の下で、同じ長野県内の河川なのですから、当然のことですが、つまり、浅川の治水対策の方針として、100分の一、450トンを将来の整備目標としてかかげながら、当面20年間で優先すべき課題として、河川改修と内水対策や、遊水地、二線堤、排水機場の能力アップなどで下流域の洪水被害を減らし安全度を高めると言う、ダム建設に賛成の人も反対の人も誰もが一致できる計画にすることを提案させていただきます。知事の見解をお伺いします。


村井知事
 度々申し上げていることでございますが、長野圏域河川整備計画に含まれる浅川に関しましては、治水対策の目標である治水安全度100分の一、450トンパーセコンド、いうことに対応する対策を前提としてすすめてまいることに致しておると、これが河川管理者としての私の立場でございます。

 質問にきちっとお答えいただいてないんですけど。
 先日の「意見をお聞きする会」では、「浅川の治水対策を決めるのには、水害にあった人だけの意見を聞いてほしい。」という意見が出て、私は本当に悲しい気持ちになりました。水害にあった人の気持ちももちろん、地滑りで家や財産を失った人の気持ちも、安心して暮らしたいと願うお互いの気持ちを、立場は違ってもわかりあうことこそ大切ではないでしょうか。浅川問題は、上流と下流の対立で解決するものではなく、おたがいの理解と協力で解決していく問題です。知事には、是非、異なる立場の県民の様々な思いに耳を傾けていただき、納得の行く結論をお願いしたいと思います。もう一度100分の一、450トンの整備目標を掲げながら、お互いが納得できる方法、最優先課題をまず優先する、その計画ができるはずですが、その提案についてはどんなご見解でしょうか。


村井知事
 まあ率直に申しまして、いろいろなご意見があるなかで、ございます。国土交通省それから関東地方整備局等々ともいろいろ調整をしている段階でございますけれども、様々の制約、条件のなかで、この問題を解決しなければならないということでございまして、ただいまの石坂議員のご意見は、ひとつのご意見として承らせていただきます。

 諏訪圏域でやったことを長野圏域でもと、本当に当然の提案をしているつもりですので、よろしくお願いいたします。
 浅川ダムは2000年8月、かねてからの談合情報や内部告発の事前情報どおりの前田建設に落札率96.3%で発注され、その後、談合が認定されました。ここに知事にも事前にお渡ししてあるんですけれども、ダム工事に使う骨材製造メーカートップの大阪砕石工業所が作り、複数のゼネコンが全国ダム工事の「本命」を確認するために使っていた「ダム情報一覧表」があります。98年4月の支店ごとの作成です。
 これによりますと、浅川ダムは前田建設、佐久の余地ダムは本命が鹿島。実際に本命企業が99.8%で落札しているのをはじめ、「治水利水ダム等検討委員会」の検討対象河川9流域のダムすべての本命企業が、まだ入札もされていないのに記されています。まことに驚くべきことですが、このような情報が作られ、使用されていたことに対する知事の見解をお伺いします。


村井知事
 あの談合ということでございますが、私は談合というのは、いずれにいたしましても自由な競争を阻害し、結果として落札額が高止まりになり、県民からお預かりしている公金を無駄使いするということでございまして、大変、何と申しましょうか、許すことのできない、私は犯罪だと考えております。長野県におきましては、御案内のとおり平成14年度から入札制度の改革に取り組みまして、談合がしにくい現在の受注希望型競争入札を導入してまいったわけでございまして、私がこれを評価し、何と申しましょうか、あまり、これを変えるという御議論は確かにありますけれども、そこに慎重な所以もまさに、ここにでるものでありまして、透明性、競争性、公平、公正性の高い入札制度を維持していく、これは非常に大事なことだと考えております。いま議員、御指摘になりました9件のダムにつきましての談合情報のお話しでございますが、浅川ダムにつきまして談合情報が寄せられまして、長野県が設置いたしました長野県公共工事入札等適正化委員会におきまして調査を実施し、その結果、談合が行われたものと判断するという報告を受け、それを受けて公正取引委員会にも通報したという経緯があることは承知しております。

 談合は犯罪と知事の御決意を聞きましたので、どうかダム工事が談合の温床とならないよう今後ともよろしくお願いしたいと思います。



2.いじめ対策について

 それでは、いじめ対策について教育長にお伺いをいたします。
 長野県では、過去に、いじめが原因の自殺は何件報告されているでしょうか。

山口教育長
 いじめが原因の自殺件数についてのお尋ねでございます。国の文科省から調査が来ますけれども、その文科省への問題行動の調査における報告の件ですが、県の過去5年間の報告には、いじめを主たる理由とした自殺はございません。県教育委員会では、市町村教育委員会、高等学校、盲、ろう、養護学校から提出されたものを、県として集計しまして文科省へ報告しております。この調査による自殺の理由別の項目でございますが、家庭不和などの家庭事情で4項目、学業不振やいじめなどの学校問題で6項目、その他に病弱等による悲観、厭世、異性問題、精神障害、その他5項目の計15項目の理由区分がございまして、そのなかから主たる理由と思われるものをひとつ選択して記入することとなっているところでございます。主たる理由をひとつ選択できない場合、また、理由が不明の場合には、その他の欄に記入することとなっております。従いましてはっきりとした理由を特定できないものもありますが、その他として報告せざるをえない事例もありました。以上でございます。


 過去5年間、その以前もたぶんゼロと思いますけど、全国的にもいじめによる自殺の事実を認めようとせず、ゼロと報告してきた教育委員会の姿勢が問題とされています。解決のためには、教育委員会自身がいじめの事実を隠さず、事実から逃げないことが大切だと思います。教育長いかがでしょうか?

山口教育長
 いま国への報告のことで申しました。報告についてですね、国の方でも、これ実態とちょっと違うんじゃないかというふうな問題意識をもっておりまして、いま私共の方といたしましても、申し上げたとおり、この調査がですね、主たる理由としてひとつに絞るというふうな形、あるいは理由が不明な場合にはその他というふうな形での分離となっておりますので、先ほど申し上げたような形になっております。実態を正確に把握してですね、それがいじめを主とする原因にあるということになればですね、それをきちっと把握するような調査方法、これがまずなければいけませんし、その調査を基にしていじめの原因を究明してですね、いじめの解決に向けて対応していくことが基本でありますので、そういう問題意識は持ってやっていきたいと思っております。


 11月15日付の教育長通知では、いじめを行なう生徒に対して、特別な指導計画等によって、毅然とした指導を行なうとなっています。特別な指導計画の具体的な内容についてお伺いしたいと思います。

山口教育長
 特別な指導計画には、その生徒のですね、あるいは子どもの、児童・生徒の年齢、あるいはどんな事例か、あるいは家庭の環境等々の配慮をしないといけないわけでありますが、一般論として申し上げますと、別室での指導でありますとか、あるいはいろんな形での個別指導でありますとか、あるいは時には状況さえ許せば、いろんな社会的な形での奉仕活動とかですね、そういったものも例としては含まれてくるだろうと、こんなふうに思っております。


 村石議員の質問でも紹介されていましたが、12月の8日、子どもの人権を守る学習会が開かれまして、県議会からも西沢文教委員長をはじめ何人かの議員が出席し、私も、現在県教育委員会の人権教育支援センターの派遣講師としてみずから受けたいじめの体験を語ることによっていじめ克服の力になっている4人の若者のお話を聞く機会をいただきました。何回もシーツを血で染めるほどのリストカットを繰り返し、長い不登校を続けていた子が、教員の叔父が「お前はお前でいい。」と言って見守ってくれたことに救われ、「どんなことがあっても命だけは捨てないで。」と語るその話や、階段から突き落とされたり、いわれのない命の危険さえ感じる数々のいじめの中で、信じられるおとなや友人との出会いでいじめを乗り越え、社会人となって福祉の仕事をしている若者の話などなど、いじめの残酷さとともに命の大切さを痛感する学習会でした。そして、彼らの全員がいじめる子への対策として、「いじめる子にはいじめにいたる心の葛藤がある。教育再生会議の提言のように、登校させないとか、隔離して罰するという方法では、いじめの再生産になるだけだ。」と主張しました。押し付けの社会奉仕を機械的にやらせても、解決にはなりません。
 いじめが人間として恥ずべき残酷な行為であると心からの反省ができて、相手の人権の尊さがわかった時に、いじめは無くすことができると思います。
「特別な指導計画」の内容が、ゆきすぎた処罰主義ではなく、子ども達の心を開く内容となることを心から願うものですが、教育長いかがでしょうか見解をお伺いします。

山口教育長
 処罰に関するお尋ねでございます。いじめの様態はひやかし、からかい、仲間はずし、もちもの隠し、言葉でのおどし、暴力、恐喝など(略)処罰という考えはありません。