1.農業の振興策について
最初に長野県農業の振興策についてお尋ねします。長野県農業はその大多数が、小規模農家によって構成され、認定農家、農業法人化などの政府が進めている小規模農家切捨て政策によって深刻です。その上、農産物の輸入自由化による価格の下落、統計情報センターの資料では、平成16年の長野県の水田作経営農家一戸当たりの農業所得は17万円と前年度比49%減少、水田だけの経営ならばワーキングプア水準以下です。さらに機械の導入や圃場整備・土地改良事業による農家の負担の増大も経営を圧迫しています、私が一般質問でも取り上げた西天竜土地改良区の水路、毎秒5.7トンの水が流れているトンネルが老朽化し、耐震性が低下、トンネルの上に住む皆さんは毎日マグマの上に暮らしている思い。下段の人は土石流に、いつ襲われるか心配している。一方、農家の皆さんは農業収入から見て、これ以上の負担は限界と言っています。中山間地の多い中川村では圃場整備の事業費は、この30年間に総額で66億円にもなり、受益者負担は20億円、農家の負担は1へクタール当たり796万円もの負担の事業もあり、この返済に農業収入だけでは足りず、他の収入をつぎ込まざるを得ず疲れ果てています。これでは後継者も育たず農業(者)は減るばかりです。知事は、こうした長野県農業をどのように認識されているのかまずお聞きします。
また、「県食と農業・農村振興の県民条例」の趣旨を生かしてどのように計画を策定しようとしているか知事にお尋を致します。
村井知事
|
長野県は約12万7千戸と全国一位の農家戸数を有し、全国有数な農業県でありますが、一方、農家1戸当りの耕地面積が90アールで全国32位、非常に規模の小さな農家の御努力によって多様な農業生産が支えられていると認識しています。国が公表しました新たな食糧農業農村基本計画では、国際化への対応、食糧の安定供給、担い手の確保などをすすめ、農業農村の健全な発展をめざすために担い手の明確化と支援の重点化をすすめていくことになっております。県といたしましては、将来の長野県農業を担う認定農業者の育成をすすめるとともに、長野県農業の特徴でもある規模の小さな農家につきましても集落営農に参加していただくなど、いろいろな配慮をいたしまして、きめの細かな施策の推進が大切であるとこのように認識しています。
食と農業農村振興の県民条例について、どういうような像を描くのかというご指摘がございました。この条例は、長野県の食と農業農村の持続的な発展をはかるためにめざすべき方向性を適格にとらえた大変素晴らしい理念条例であると認識しております。ここで条例に基づく食と農業農村振興計画の策定をいただくということでございまして、11月に設置いたしました食と農業農村振興審議会での御審議のほか、多くの県民の皆様から幅広くご意見をいただくこととしております。条例の基本理念にのっとりまして長野県の農業と農村の持続的発展をはかるために地産地消の推進や、あるいは元気な農山村づくりに向けまして実効性のある計画を策定していただきまして、それを県としても積極的にバックアップをしてまいりたいこのような見解でございます。 |
長野県の農業の実態は先ほどお示ししたわけであります。認定農家にしていく、集約化をしていくということが、長野県農業の実態から大きくかけ離れているのではないかと、このことをしっかりと認識した上で、長野県農業の対策をやっていただきたいと思います。
次に国が進めている品目・横断的経営安定対策事業についてお尋ねします。
この制度が国の農業政策の柱になってくると、長野県のような中山間地で、一律規模拡大化は不可能です。小規模農家が切り捨てられることは目に見えています。我が県の農業を守るうえで家族農業の振興策が極めて大事な点であると思いますが農政部長はどのように考えているか所見をお尋ねします。
この制度の対象から外れた小規模農家をどう守っていくのか。
また、この品目横断的経営安定対策の品目に、長野県で多く作られているソバが入っておりません。そのソバも入れるよう国に求めるべきと思いますがいかがでしょうか。
次に農地、水、環境保全向上対策事業が対象地域ですべて取り組まれれば、全県下で38億8千万円が地域の環境整備の費用として還元されます。この事業に対する県の位置づけと指導のあり方、取り組みの現状について農政部長にお尋ねします。
白石農政部長
|
家族農業を守る為の振興策についてお尋ねでございます。中山間地域を抱えます長野県におきましては小規模農家が多いということで、品目横断的経営安定対策の対象にならない農家につきましては、米価の下落対策として新たに稲作構造改革促進交付金が創設されておりますので、このような制度を充分活用しながら、小規模農家対策を講じてまいりたいと考えております。また、小規模農家でありましても、地域で農作業受委託や機械の共同利用を推進することによりまして経営基盤の強化をはかることができますので引き続き集落営農の組織化に向けた支援を実施してまいりたいと思います。
次にソバを経営安定対策の対象にするよう国に要望すべきとのお尋ねでございます。県と致しましてもソバを品目横断的経営安定対策の対象とするよう国へ要望してきたところであります。しかし、国は食糧において国民のカロリー供給に占めるソバの割合が少ないこと、国産ソバの評価が高く、輸入品と比べて高価格で取引されている実態があるため、諸外国との生産条件の不利合性(?)対策をとる必要性がないとの判断でございます。しかし、ソバにつきましては信州を代表する特産物でございますので、産地づくり交付金等を活用いたしまして生産振興をはかってまいりたいと考えてございます。
次に農地・水・環境保全対策につきましてお答え申し上げます。この施策につきましては、農林水産省が今年7月に決定した経営所得安定対策等実施要綱におきまして助成にあたっての予算措置や運用等の措置が示されました。県では8月下旬に発表されました農林水産省の概算要求の考え方を参考に9月から市町村、JA等に対し説明を行うとともに、市町村と協力をしながら地域への啓発、普及をはかってまいりました。この農地・水・環境保全向上対策事業の交付金は、農地や農村環境の保全のため地域が一体となって意欲ある協働活動を行う場合に交付されるものでございます。県といたしましては市町村を通じて地域の状況を把握をしながら、適切な対応をとってまいりたいというふうに考えてございます。
なお、交付金の交付要件、地方財政措置などまだ決定していない部分もございますので、今月下旬の政府予算案決定状況など、国の動向をみながら県として取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。 |
いま品目横断的事業や農地・水・環境保全事業などの状況をお尋ねいたしましたが、長野県農業が大規模化や中小の農家の切捨てというこの政治の流れに呼応していくには、本当に農家の、家族農業の振興だとか、中小零細の農家の振興がなければ守っていけないことはまちがいありません。そういう点で、知事にもう一度お尋ねします。この条例を制定していく段階で、農家の本当の声を、農家のみなさんの声をどう聞いていくか、そこが私は大変大事な部分だと思いますので、その辺をどのように対策を講じていくか、また、農政部長に農地・水・環境保全事業、まだ政府が決定していないというお話しがありますけれども、しかし来年度から実施する事業であります。政府にこのことをしっかり求めて、今から説明を十分やって、地域のみなさんが今までも本当に地域の環境を守るためにがんばっている。それに一定の補助がでるわけですから、真剣な取組をどう構築していくかもう一度お尋ねします。
村井知事
|
私の理解しているところでは長野県食と農業農村振興県民条例、これはまさに県議会の皆様方の発意によりましてできた条例でございますし、また、構成メンバーにつきましてもいろいろと県議会のご意見を十分に反映してできた、そのような経過があると、承知をしている次第でありまして、まさに県民を代表する皆様のお声によってできた、そのような組織でもございます。そういうところで私の期待したいのは、まさに計画をつくるのは県民の意見をよう〜く聞いて、それを反映したものにしていただくことを期待したい。それにそって私どもとしましても農政の運営をはかってまいりたいと、このように考える次第でございます。 |
|
白石農政部長
|
農地・水・環境保全向上対策に対しましては、先ほど申し上げましたように今月下旬の政府予算案の決定の時にですね、全容がですね、見えてくるというような状況もございます。一早くですね、国からの情報を市町村にお伝えするなかで、市町村の把握してます現状とですね、すり合わせしながらですね、市町村とともにこの事業を推進してまいりたいというふうに考えてございます。 |
環境保全事業でありますけれども、すでにいろんな説明が地域にされているわけです。現在。そういうなかで例えば上伊那の段階では、農振地域はどうなるのか、また、減反が100%実施されなければ対象にならない。しかし、県の説明では農振地域は当然ですけれども、減反の100%完遂は条件にはいっていないという説明もあるわけです。そういう混乱が現在起きているわけで、もっと正確な説明をきちっとやっていただきたいということを申し添えておきたいと思います。
|