昨年改定されて以来、利用者の負担増とサービスの取り上げなどの強行で、介護現場で様々な混乱を引き起こしている介護保険についての県の対応について質問いたします。
訪問介護の生活援助(調理、洗濯、掃除など)は、原則として一人暮らしか、同居家族のいる場合は、家族が障害や病気及びその他やむを得ない事情と一定の制約はありますが、必要性が認められる場合は受けることができるとされています。
しかし、国の冷たいサービス抑制政策はもちろん問題ですが、国の基準にも無いサービス規制を、自治体が勝手に実施するローカルルールという問題が深刻になってまいりました。
当県においても利用者やケアマネージャーなど介護の現場からの指摘をいただき、私もその実態を目の当たりにしてきました。
そのうちの2例を紹介します。
1例は要介護度4の63歳の女性のケースです。
同居家族は早朝から夜まで就労している妹さんです。利用者は統合失調症と糖尿病。常に幻聴があり、一人では何も行えない。調理されたものがあるとみんな食べてしまう。調理の作り置きができない。掃除、洗濯、買い物は妹が行っているが、入浴介助など身体介助のほかに調理の生活援助を受けてきました。しかし、この7月から同居家族がいるからという理由で介護給付は認められなくなりました。
妹さんは姉との生活を支えるために朝7時30分のバスで通勤、午後8時過ぎでないと帰宅できません。妹さんは「仕事の上に姉の世話と家事とで本当に疲れてしまいました。もし生活援助が打ち切られれば施設に預けるしかない」といっています。
しかし、施設そのものが不足ですぐ入れる状況にないのはご承知のとおりです。
2例目は妻が週4回県外で仕事をしている要介護3の歩行不全の男性ですが、同じく調理など生活援助が打ち切られました。理由は「不在時間が少ない」というものでした。この利用者は「一人暮らしならサービスが受けられるということは離婚したほうが良いというのか」と怒りをぶつけています。
ケアマネージャーも生活援助を切ってしまえば悲惨な状況になると心配している2例ですが、県下ではこのような事例が多く起きています。
利用者と家族にとって、介護保険による介助は日々の暮らしを支え、家族の負担を軽減するとともに、高齢者の人権を保障する役割を持つものであり、生活援助は同居家族がいるからという理由だけで一律に切ってしまうことは、介護の社会化という本来の介護保険法の理念、趣旨からも逸脱するものではないでしょうか。
国も、2003年7月16日の衆議院厚生労働委員会で中村秀一厚生労働省老健局長は「ご家族がたとえ心身がご健康であって家事ができる状態でも勤務されておられて、日中、要介護の高齢者の方がお一人のような場合については介護保険の給付の対象になる」と明快な答弁をしておりますし、今年5月のNHKの「みんなで話そう介護のこれから」という番組に出演された厚生労働省大臣官房審議官の御園信一郎氏は、「介護保険を作った平成12年の3月にその障害や疾病が無い場合でも、同様にやむを得ない事情である場合は、家事が困難である場合については家事サービスも受けられると言っていますので、一律な切り方をして受けられないというのであれば、それはもう制度の趣旨に合わないわけですよ。要するに我々は個人の利用者を見て本当に必要であれば、必要なサービスを提供するっていうのが介護保険の制度なんだからそうやってもらいたいと思っていますから」とこれも明確に表明をしています。
以上の国会答弁や厚労省の見解からも一律な切捨ては介護保険制度の趣旨に反するものであり、必要な人には必要なサービスが提供できるということは明確であるということと、行過ぎたサービスの抑制のためのローカルルールに対しての見解を併せて社会部長に伺います。
また、県下の実態の把握と、同居家族がいても必要な場合はサービスは提供されるという正しい情報と指導を、保険者である市町村やケアマネージャー、事業者に徹底すべきと思いますが、どうか伺います。
社会部長さんからは、やむをえない場合は給付は提供できる、一律に規定するものではないという明確なご答弁をいただきましたし、また、実態の把握と正確な情報提供、指導についても対応していただくというご答弁を頂きましたので、ぜひ積極的にお願いを申し上げたいと思います。
なお、その際に一言申し上げておきたいのは、ケアマネージャーの会議の中でも、同居家族がいる生活援助は基本的にはできないという自主規制が働いているという様子もうかがっておりますので、必要であっても潜在化してしまっていることも考えられます。その点も汲み取っての実態把握に努めていただくことを要望しておきます。
最後に知事に伺います。
私はこれまで、市町村と県との関係についての対応を求めてまいりましたが、生活援助をはじめとする保険給付の削減は介護保険制度の矛盾から発生しています。給付を増やせば、保険料の引き上げにつながっていくという保険制度は利用者のみならず自治体自体の苦しみも生み出しているのです。
必要な人には必要なだけの給付を提供するためには国の財源措置は不可欠であります。
介護保険導入時にそれまで50%負担していた財源を半分の25%に削った国の負担を5%戻すだけでも介護保険料は値上げせずにすみますし、国としての減免制度も作ることができます。
この財源復活は全国市長会、町村会も要求している全国民共通の声であります。当県議会としても充実を求める意見書をもって国に要請しているところであります。知事は県民と市町村を代表し国に財源措置を強く求めていただきたいと思いますが所見を伺います。
村井知事答弁
介護保険制度における国の財政措置に関してご質問がございました。介護保険制度は平成12年4月の導入依頼、在宅サービスを中心にサービス利用が急速に拡大するなど、高齢者福祉を支えるしくみとして定着してきていると意識しております。制度の定着とともに、しかしながら、介護保険の総費用というのは、政府導入時のおよそ2倍に増大しておりまして、これにともないまして、国、県、市町村の財政負担もたいへん増高しているのは事実でございます。このため持続可能な制度にすることを目的として、昨年4月予防を重視した事業の導入など、さまざまな見直しが行われていることは、ご案内の通りであります。
しかしながら、団塊の世代が2010年に高齢期に到達しまして、さらに2025年には、これが75歳以上になるなど、今後も高齢者の増加は見込まれる、そういう状況でございます。
したがいまして、国、県、市町村がそれぞれの責任に応じた適切な財政負担を行い、制度を安定的に運営していく事が重要であると考える次第でございまして、来年度は平成21年度からの国の第4期計画に向けて制度の見直しが予定されているところでございますので、県としましては、国の動向を注視しまして必要に応じて国に提言をして参りたいと存じます。
国に必要に応じて提言をしていかれるということでございますので、ぜひ今の現状を国に伝えていただいて、財源措置をしていただくようにお願いをしたいと思います。
財源のことで言いますと、介護保険料の軽減の問題、国保税の軽減の問題等、また子どもの医療費の問題等は、約1兆円でできるとされています。
この財源は財界への4.4兆円の減税、グアムへの新しい(軍事)基地を作るための米軍への3兆円の支援、財源が無いのではなく、政治のあり方の問題です。どこを向いて、誰のために政治をするのかが問われる問題です。
知事は、郵政民営化の時、ご自分の政治生命をかけて国に立ち向かわれました。私は知事とは、政治的立場は異なりますが、心の中で拍手をした一人でございます。今度は県民のために誠心誠意努力をいただくよう求め質問終わります。