議第７号 自衛隊の国民監視活動の中止を求める意見書につきまして提案説明をさせていただきます。
陸上自衛隊の情報保全隊が国民のあらゆる活動を系統的に監視し、記録していた事実が内部文書によって明らかになりました。監視対象は市民運動、労働運動、政党、文化人、知識人、宗教者、ジャーナリスト、国会議員、地方議員、地方議会、マスメデイアなど、あらゆる国民の活動に及んでおり、衝撃と怒りがひろがっています。情報保全隊は2003年にそれまでの調査隊を改編・強化してできたものですが、主な任務は「自衛隊の機密情報の保護と漏洩の防止」とされています。
しかし、これに反して、国民を監視するのが情報保全隊の仕事だったことを明白にしました。
彼らは身分を隠し、参加者のふりをして集会やデモに紛れ込み、参加者をチェックし、発言内容をメモし、氏名を特定して記録するなど、情報を収集していました。情報収集は「イラク派兵反対」の活動について記載するとともに医療・年金・消費税・春闘など自衛隊とは関係ないあらゆる分野に及んでいます。
また、写真を隠し撮りするなどプライバシーに対する権利の侵害も行なっていました。いったい何のための国民監視なのでしょうか。警察が情報を収集する場合でも犯罪捜査のためという目的があります。しかし、自衛隊の国民監視活動には国民を納得させる理由がみあたりません。「集会に出ただけで監視されるなんて気味が悪い」、「こわい」そんな声があがっています。
自衛隊の監視活動それ自体が憲法で保障された集会・結社・言論・出版等の表現の自由を保障した憲法21条、個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利を保障した憲法13条、信教の自由を保障した憲法20条に違反することは明白ではないでしょうか。
監視活動の中身に立ち入ってみてみると、自分たちのめがねにかなわないものはすべて監視の対象とされています。たとえば民主党のある国会議員が自衛隊ＯＢの集まる席で「自分はイラクの派兵には反対です」といったことが反自衛隊活動として記録されています。
朝日新聞の記者が自衛隊の駐屯地前でイラク派兵について隊員に質問し、市民に賛否を尋ね、それを「賛否分かれる」と記事に書いただけでも反自衛隊活動とされてしまっています。「幸せの黄色いハンカチ」の山田洋次監督がイラク派兵を応援する市民運動「黄色いハンカチ運動」について批判的な意見を述べたことも反自衛隊活動。自衛隊演習場周辺の住民が射撃訓練の騒音に対し、「うるさくて、なんとかなりませんか」と苦情の電話を入れたことも反自衛隊活動。高校生が行なうピースウォークも反自衛隊活動。元社民党衆議院議員の山口わか子氏の街頭演説や新左翼と類別された松本市内での市民の「街頭ウォーク」も監視対象とされています。今、私がここで提案させていただいていることも監視の対象になるのかもしれません。
これではまったく国民を守るはずの自衛隊が国民を敵扱いしていると批判が広がるのも当然で、さながら戦前の憲兵隊と同様の活動をしています。
情報保全隊の活動は憲法にも、自衛隊法にも違反しているのに、いまなお続いています。
いまこそ、国民の自由と民主主義にとっても重大な蹂躙を行なっている情報保全隊の活動の全容を明らかにするとともに、違法ないきすぎた監視活動を直ちに中止することが必要ではないでしょうか。是非、議員の皆様のご賛同をよろしくお願いいたしまして提案説明とさせていただきます。