2007年9月議会 10月5日 高村京子

議第4号 後期高齢者医療制度に関する意見書(案) 賛成討論

 来年4月から始まる予定の後期高齢者医療制度の内容を知った県民の皆さんや当事者である高齢者の方々から大きな不安の声があがっています。
 実施主体は県下81市町村加盟の長野県広域連合があたり、16人の連合議員も決まりました。この制度の対象となる75歳以上の高齢者は約31万人で、65歳以上の障害認定を受けている一級から三級の方は14,000人、併せて32万4,000人がこの制度の対象と成ります。来年の4月からスタートする予定ですが、いまだ詳細が決まらず、県民や当事者には何ら具体的なことは、説明されていません。
 
 厚生労働省が示す新制度は、75歳以上のすべての高齢者が今の医療保険から脱退させられ、新たに負担となる医療保険料を死亡するまで毎月払うことになります。
 年金が1ヶ月15,000円以上の高齢者は介護保険料と同じように、年金から自動的に天引きされ、それ以下は普通徴収となり、それぞれの都道府県連合会で決める事となっています。今、厚生労働省は保険料の平均を月額6,200円・年額74,400円が平均と示しましたが、東京都では月額12,900円・年額15万5,000円と厚生省の示した平均額の2倍です。埼玉県では月額7,800円・年額94,000円と試算されました
 国民健康保険料と比較して2倍から3倍にもなり、介護保険料とあわせると月平均一万数千円が天引きされる事になります。しかも保険料は2年ごとに見直されるので、高齢者人口が増え、医療費が増えるに従い2年ごとの大幅な引き上げが懸念されます。
 
 また医療内容も、75歳以上の高齢者医療は病気によって医療費の上限が決められた包括支払い制度とされ、治療や入院の制限があり、医療機関側の持ち出し、自費負担など、ご本人や家族・医療関係者の願いである「病気を全力で治したい」ことを保障する制度ではなくなります。そうでなくとも今の時点で、高齢者が入所できる療養病床が大幅に削減され、深刻な医師不足によって、地域医療の崩壊現象が進んでいます。
 
 また保険料滞納者には、保険証の取り上げも可能としています。国民年金の平均額は約5万円です、少ない年金から一割以上もの保険料を強制徴収するなどは、高齢者の暮らしを脅かし、高額保険料負担の上、実際の医療は逆に受けられない、深刻な実態が発生するのではないでしょうか。
 昨年と今年6月の住民税の負担は、さらに高齢者世帯の暮らしを直撃しました。

 前安倍首相の退陣を受けて新たに就任された福田首相は、初心表明で「高齢者医療制度のあり方についての検討を含め対応に勤めてまいります。生活者の視点で政治や行政のあり方すべてを見直し、国民の皆様が真に安全安心に暮らせるよう発想を転換する」と決意を述べられました。
 当初総裁選挙で述べられた70歳から74歳の一般的な所得者の医療費を一割から2割への負担引き上げ凍結と、75歳以上の一部高齢者からの新たな保険料の負担の凍結が表明されましたが、この2点の凍結に留まらず、世界に例のない高齢者いじめの制度としてスタートすることのないよう、抜本的な制度の見直しが求められています。
 
 戦中戦後と大変なご苦労をされてきた高齢者が安心して暮らし、お金の心配なく必要な医療が受けられる制度へと見直されるよう長野県議会として国に要請できますよう賛成討論と致します。


議 第 4 号

後期高齢者医療制度に関する意見書

2007年10月5日

 衆議院議長
 参議院議長
 内閣総理大臣   あて
 厚生労働大臣

議 長 名

地方自治法第99条の規定により、下記のとおり意見書を提出します。

 医療制度改革の一環として、来年4月より75歳以上のすべての人が加入する後期高齢者医療制度が導入される。
 一連の制度改正に対しては、高齢者に新たな負担が生じること、低所得者への配慮に欠けること等について様々な問題点が指摘されている。
 また、保険基盤安定制度への新たな公費支出等、市町村の財政的負担が多大となることが危惧されている。
 よって、国においては、高齢者の窓口負担の引き上げや新たな保険料徴収を凍結するなど、高齢者に過度な負担を求めることなく、いつでも誰でも平等に医療が受けられる持続可能な医療制度とするよう強く要請する。