今、お菓子から学校給食まで輸入汚染米の被害はひろがるばかりですが、現在、日本の食糧と農業は新たに深刻な危機に直面しています。
歴代政府は国民の食料を際限なく海外に依存する策をとり続け、わが国の食料自給率は世界でも異常な39%にまで低下してしまいました。
農業生産高が96年の10兆3千億円から2006年の8兆3千億円とわずか10年間に20%も減少しました。95年からはもともと100%自給可能な米まで農家には減反を押し付ける一方で大量輸入することまで行われています。
国は画一的な「規模拡大」を押し付ける一方で、どの国も力を入れている農産物価格保障対策や経営安定対策をも放棄してきた結果、米価は60キロあたり94年の2万2千円から07年には1万3千円と40%以上も低下し、その原因を「米の作りすぎが原因だ」などと米作減反面積をさらに大幅に拡大し強制させています。農水省資料でも日本を除く先進11カ国の平均自給率が103%ですのでその異常さは明白です。
耕作放棄を余儀なくされた農地は全耕地の1割近くで埼玉県の面積に相当するといわれています。しかも農業者は45%が70歳以上と高齢化し、農産物価格は暴落を続け、政府がモデルとする大規模農家でさえ「やっていけない」のはこの間の議会でも多くの議員が異口同音とりあげているところです。
今回の汚染米の問題は業者とこれを見過ごした農水省の責任は免れるものではないのですが、この汚染米の背景にあるのはミニマムアクセス米であることがわかっています。汚染米の8割は海外からの輸入米、このミニマムアクセス米です。ミニマムアクセスとは「最低輸入機会の提供」という意味で、「義務」でもなんでもないことは国会でも明らかとなっています。それにもかかわらず、政府は米は国内で自給できるのに、アメリカや財界・大企業の言いなりに無理に米を輸入し、WTO協定に基づく輸入を「義務だ、義務だ」といい、国内消費量の1割近い約8.4%、北海道や新潟県の生産量を超える77万トンも毎年輸入してきました。
ミニマム・アクセス米の輸入の発端は、歴代政権が93年ウルグアイラウンド合意を受け入れ、交渉を始め、翌年WTO協定を批准したことがその根源ですが、さらに2004年に小泉内閣が規制緩和で米の流通を自由化し、主食である米の国の管理責任を放棄したことが、今回の事件を引き起こした原因でもあるといわれています。
いま、日本の穀物自給率は27%でWTO協定以降輸入が増えています。これらの検査体制は検疫所での届出件数が185万9000件でそのうちの19万8000件と約1割しか検査されず、約9割は書類だけでパスしている状況です。
しかも現在さらに深刻なことに、食料・穀物をめぐる国際情勢が激変し、トウモロコシ、大豆、小麦などの輸入穀物を原料とする食品や飼料が相次いで値上がりしています。背景には地球の気候変動による生産の不安定化、途上国の経済成長、人口増にともなう需要の急増、バイオ燃料への爆発的な需要増のうえに、投機マネーが穀物市場に流れ込んで異常な高値を引き起こしています。
このほどFAO・国連食糧農業機関のディウフ事務局長は、イタリア上下両院議会で証言し、世界の飢餓・貧困人口が07年から08年にかけて8億5000万人から9億2500万人に急増し、世界の約7人に1人が飢餓・貧困になっており、わずか1年間で実に7500万人増加したことを強調したと報じられています。
この世界的な危機状態も考慮し、日本は主食の米は輸入に頼るのではなく、今こそ減反の強制を廃止し、自給率を向上させて国民への安心安全な食料の確保のために国が取り組むよう、そのためにミニマム・アクセス米の制度を見直すことを求め本意見書を提案するものです。議場の皆様におかれましては、このような実態をふまえられ、ご賛同いただきますよう訴え提案説明とします。
ミニマム・アクセス米の見直しと、食の安全に関する意見書(案)
年 月 日
衆 議 院 議 長
参 議 院 議 長
内 閣 総 理 大 臣
外 務 大 臣 あ て
財 務 大 臣
厚 生 労 働 大 臣
農 林 水 産 大 臣
経 済 産 業 大 臣
議 長 名
地方自治法第99条の規定により、下記のとおり意見書を提出します。
記
米粉加工会社が工業用として買い入れたいわゆる汚染米を食用として販売していた問題により、消費者の食の安全は又もや脅やかされ、まじめな食料品製造業者等の風評被害も拡大している。
悪質な手法を用いた販売業者の責任は厳しく追求されなければならないが、そもそも農家に米の減反を押し付ける一方で続けられている米の最低輸入量(ミニマム・アクセス米)制度の存在が、汚染米の大量在庫の原因となり、今回の事態を招いたと言える。
よって国においては、早急にミニマム・アクセス米の制度を見直すとともに、農家への減反の強制を廃止して、国民への安心・安全な食料の確保を急ぐよう強く要請する。