戸草ダムは昭和63年に着手された、治水・利水の多目的ダムです。その規模はダム提の高が140m長300m、提体積が133万立方m、総貯水要量が6100万立方m、これは諏訪湖の貯水量6200万立方mとほぼ同量の貯水量、建設費は(昭和63年度価格)で1080億円、現在では2千億とも、3千億円とも言われる超大規模なダムです。
此の計画には長野県も利水事業者として参加していたが、2001年に「工業用水の需要の伸びが期待できない」「発電しても当初計画の単価では売電が困難」として、ダムの発電と工業用水の使用権を取り下げたものです。その結果、当初の多目的ダムとしての計画が変更され、それに伴い建設を見直してきたダム計画でした。
国土交通省はその後7年の歳月をかけて検討してきた結果を、本年6月に天竜川水系整備計画では次のような計画を発表。「天竜川の社会経済上の重要性、財政の制約、治水事業の早期かつ広範囲な効果発揮、並びに現在の技術レベルでの環境負荷の大小等を勘案し、戦後最大規模相当の洪水(昭和58年9月の洪水、平成18年7月の洪水)を目標流量とし、河道整備と美和ダム等既設ダムの洪水調節機能の強化を行い、戸草ダムの建設を見送る。」としたものであります。
計画してから20年経過した中で様々な面から検討した結果、早期の治水安全度を高めるためにも、河道整備と美和ダム等既設ダムの洪水調節機能の強化が、財政的にも300億円程度で実現できるとして、限られた予算の中で早期に効果を出す選択としたものであり、国土交通省の判断は極めて妥当なものと評価できます。
よって今後慎重に検討して最良の治水整備実現を目指すべきものです。
又、地元の皆さんの中からは南アルプス全体が深刻な鹿の食害で国有林の崩壊が進み、災害を誘発している事態は一刻も放置できないとして、ダム建設より先に鹿被害を解決する施策を強く求めています。
今、全国各地でダム計画の見直しが進められ、長野県下でも大仏ダム、下諏訪ダム、蓼科ダムなどの計画も中止が決定、全国でも川辺川ダムや淀川水系の3つのダムも中止及び見直しが始まっています。現在の財政状況、ダムによらない治水技術の進歩、環境に対する評価などから見てもダム建設事業の推進には大きな疑問です。
本年度の県税収入の落ち込みも、190億円と深刻です。こうした中で県の負担も大変大きい大型事業は見直すべきです。国も戸草ダムによらない治水計画を検討しており、計画が具体的に示されていないこの時期にダム推進の意見書の提出には反対せざるを得ません。
皆さんのご理解を求めて討論といたします。