農村振興についてお伺いします。
知事と当該市町村長との意見交換会「ボイス81」が7月28日に上田合同庁舎にて行われ、配布された資料から上小地区及び県内農業の実態に私は顎然としました。1995年から2005年の10年間の農業の落ち込みの大きさに目を疑いました。
1995年を100とした場合の2005年の変化は、農業産出額では上小は県下最大の65%、県平均は77%にまで落ち込んでいました。
パネルをご覧下さい。県全体の産出額で見ますと、3,596億円から2,759億円と、837億円も減り、77%へと落ち込んでいます。農家戸数は約150,000戸から127,000戸と、約23,000戸、85%に落ち込んでいます。農家人口は約63万人から48万人で、13万4千人、80%に減っています。そして耕作放棄地は9,548haから1,517ha、115.9%も増えて約11,000haにもなっています。放棄率は県平均で17.5%、上小地域はさらに22.3%にもなっています。全国平均で9.7%ですから、長野県の耕作放棄地の増加は、深刻な事態にまで陥っています。面積で見るとおよそ東御市の面積に匹敵する事態です。
主食である米はどうでしょうか。水稲の収穫量は125,000トンから87,000トンと、37,000トンも減り、10年間で88%に落ち込んでいます。農業産出額は全国5番目の位置にありましたが、2005年度は全国11位にまで落ちています。
どうして、このような事態になってしまったのでしょうか。政府の農業政策が農民の皆さんを苦しめてきた結果と考えますが、知事はどのようにお考えでしょうか、まず伺います。
<村井知事>
長野県は従来から、国の施策を活用して、全国有数の農業県として、発展したわけでございまして、国は平成17年3月に今後10年程度を見通して、重点的に取り組む課題を明らかにした「食料・農業・農村基本計画」を策定し、担い手の明確化と支援の重点化、食料自給率の向上、農地の有効利用などを進めることにしております。
長野県としましては、これまで通り、国の施策を活用しながら、昨年策定いたしました「長野県中期総合計画」を、「長野県 食と農業・農村振興計画」に基づきまして、農業の担い手育成と農産物の高付加価値化を進めるほか、規模の小さな農家にも集落営農に参加していただくなど、十分な配慮をし、極めの細かな施策を推進してまいるつもりでございます。
政府によって40年近くも強制されてきた減反政策は、現在全水田面積の4割にも達しています。その一方で、1995年のWTO農業協定で「ミニマムアクセス」による外国産米を受け入れ、毎年77万トン、国民消費量の約8%も輸入を拡大し「米の過剰」を作ったうえ、価格保障を廃止し、流通を自由化したため、農家は生産経費も出ない米価の暴落に生産意欲を失い、離農や耕作放棄地が増えているのです。規模を拡大した農業者ほど借金が増え、農業資材の高騰に苦しんでいます。
農林水産省が最近明らかにしたところに拠ると、2006年の米価は60kg約13,000円、一時間の労賃にすると256円、それが2007年度の米価はさらに60kg約11,000円に下がり、時給は77円下がって、179円と長野県最低賃金680円の約4分の1のレベルです。これでは農業はやって行けません。
日本は食糧の6割を海外に依存する、先進国の中でも異常な国です。諸外国は自国の国民を守るために、輸出の制限と備蓄に力を入れ始めており、世界的規模での食糧危機、もはや安全で安い食料を海外から買い付ける事はできない時代に入っています。ミニマムアクセス米の輸入が、不衛生で危険な事故米を発生する事となり、農水省と大手食品メーカーによって、保育園や学校・病院・介護施設、一般のスーパーにまで不正に出回り、多くの人々の口に入ってしまい取り返しのつかない事態となっています。国民の不安と怒りはピークに達しています。
そこで村井知事に伺います。政府は安全が保障されていない「ミニマムアクセス米」の輸入を当面凍結することを決めましたが、県としても、もう農業破壊を進める農林水産省の下請け県行政は止めて、強制減反の推進は止めるべきではないでしょうか。米を作りたい農家すべてを応援し、再生産できる価格60kg17,000円以上が農家の収入として保障できるように国に働きかけることをはじめ、自給率向上のための長野県農政の転換が必要ではないでしょうか。再度、知事に伺います。
<村井知事>
米の生産調整につきまして、お尋ねを頂きました。米の食料自給は消費量の減少や生産調整に参加しない農産者の過剰作付けの増加によりまして、全国的になお供給過剰状況であります。このため19年度産米によりましても、当初米価は大幅に下落し、将来の稲作を担う生産農家の経営に悪影響を与えているところであります。中長期的には、水田を守っていくことは大切であると考えておりますが、短期的には需給のバランスに見合った米の生産を行う事で、米価の大幅な下落を防ぎ、生産者の経営安定させることは重要でありまして、生産調整の推進は、現時点では私はやむを得ない措置だと考えております。
小泉内閣によりまして、国の食管制度、こういったものをやめて、いよいよ市場経済へといった中で、先ほど申し上げましたように、農家のみなさんは最低賃金の4分の1にも、こういう状況に下がっておりまして、本当に希望がありません。考えを改めて頂きたいと思います。
長野県農政部の予算を見てみますと、1995年度7,900億円、予算に占める割合は8.2%ですが、農業予算の中の公共事業費を除くと2,670億円余での割合は2.8%です。そして2005年度の予算を同じように見ますと、1,635億円で1.9%、今年は1370億円で1.6%と農業支援予算と割合は年々削減されています。
実質的な農業支援予算の割合は公共事業の半分以下に抑えられてきた中でさらに額も率も削減されています。これでは長野県が、村井知事が農業再生、自給率向上に真剣に取り組んでいると、その姿勢は見えません。
重油・肥料・農業資材高騰にあえぐ農家の救済支援、また8月末の豊丘村をはじめとする下伊那地方の降雹被害農家の救済など、所得保障など生活支援を含めまして、いっそう強化して頂きたいと思いまが、農家支援のための予算増額について、再度知事に伺います。
<村井知事>
農業関係の予算の増額ということでありますが、昨今の燃料高騰、それから飼料の高騰、雹害、こういったものによりまして、経営状況は大変厳しいことは、よく認識しているところであります。長野県としましては、相談窓口を設置、技術・経営指導を行います他、国が実施する燃料高騰、飼料高騰等に関わる緊急対策事業支援を有効に活用し、対応しているところであります。また、雹害につきましては、緊急防除に関する、要するに農作物の災害緊急対策事業の経費として、この議会に補正予算を提出しているところであります。所得保障につきましては、国レベルでの議論でございますけれども、個別農家に対する県独自の所得保障というのは、率直に申し上げて、財源の問題がございます。なかなか難しいものがあると思います。長野県としましては、これまで通り、野菜や畜産などの各経営安定対策事業などを実施してまいりたいと思います。
次に進みます。酪農畜産農家も廃業する農家が後を絶ちません。
1995年から2005年の10年間の畜産農家の変化を見ますと、乳用牛は1,350戸から704戸へ、約半分に減っています。さらに肉用牛では、2,020戸から924戸へ、半分以下に落ち込んでいます。養豚は360戸から134戸へと、6割にも落ち込みです。養鶏も90戸から37戸へと農家が激減しています。
最近の急激なえさ代の高騰は、酪農畜産農家の経営をいっそう圧迫しております。トンあたり2006年には約4万円が、昨年は5万円台に、そして今年は6万円台へと大幅な高騰が続き、前年度の値上がり額を補填する基金も既に枯渇していると聞きます。来年度は、農家負担がいっそう過酷となる事が予想されます。2,000頭を飼育している養豚農家のお話しを伺いましたが、売り上げに占める餌代が昨年は45%だったが今年は65%にもなり、畜舎近代化設備に要した借り入れの返済にまわせるお金が消えてゆく、暮らしていけないと経営の厳しさを訴えておられます。
農政部長にお伺いいたします。今後のえさ代高騰の補填額はどうなるでしょうか。厳しい畜産農家に県独自に直接的な緊急経営支援策を講ずるべきではないでしょうか。農政部長お願いいたします。
<白石農政部長>
飼料価格の高騰に対する県独自の対策についてのお尋ねでございます。県と致しましては、飼料高騰によりまして、畜産農家の経営が大変厳しくなっていると認識しております。そのため飼料高騰対策連絡会議を設置致しまして、関係機関、団体とも協調して自給飼料の増産や生産効率化、疾病予防策の対策を推進するととともに、相談窓口を開設し、個別に支援をしております。また国におきましては、本年2月、6月に飼料価格の補てんや肉内価格等の政策価格の引き上げ、所得補てんのための交付金、飼料利用のための機会整備への補助、飼料購入資金の融通など、緊急対策予算として、2609億円の予算が措置されております。県と致しましては、国の緊急対策を最大限に活用して、農家の所得、経営資金等を確保することとしておりまして、県内の畜産農家にたいしましては、本年4月から6月までの配合飼料の補てん金として約5億3200万円が補てんされ、また経営安定、経営改善のための農家への交付金などといたしまして、約4億1600万円が今後交付されることを見込んでおります。されに、6月の追加対策分につきましても、これらに加えまして、交付されるように努力しておるところであります。なお、自給飼料の確保につきましては、飼料用稲、飼料用米など水田を活用致しました、21年産自給飼料増産に向けた行動計画を策定いたしまして、平成21年度の大幅な増産に向け準備を進めており、食品製造残差の利用などと合わせて取り組んでまいりたいというふうに考えております。
北信地域で30頭の乳牛を飼っている酪農家ですけれども、今までは大体年間80万円ほどの収入があったと、しかしこれだけえさ代が上がるともうやっていられないし、融資と言われても、借り入れる体力はない、こういう風に言っておりました。国の緊急支援対策もありますけれども、農家のみなさんに実際に具体的な支援策が講じられなければ、畜産農家は大変で、崩壊する事態と、こういう状況ではないかと思います。よろしくお願いいたします。
今年は農業改良普及事業60周年の記念の年に当たります。農業改良普及事業は、昭和23年、戦後の混乱した農村社会の復興のため、農業改良普及員が県下各地に配置され、食糧増産と近代化農業の確立、農業青年の育成、農家生活の民主的改善、農業婦人自らの主体的自立と社会参加、農家経営の安定と豊かな村づくりなど、農業振興に向けた多岐にわたる活動を行い、県の農業振興に多大な役割を果たしてきたことは、知事・農政部長もよくご存知のとおりです。
ところが、1966年になりまして16普及所と16支所に充実されたものの、その後からは、普及職員の削減とセンター・支所の統廃合が行われてきました。1968年には更科、篠ノ井支所を廃止、1984年には小諸、茅野、塩尻など7箇所の支所を廃止、1997年にも丸子、白馬などの支所を廃止。上高井、埴科、下水内は、須坂・更埴・飯山支所へとそれぞれ縮小されました。
パネルをご覧下さい。全体の普及職員数も1966年当時は400人以上おりましたが、1980年代から急激に職員数を削減され、今年度は203人。この内市町村派遣が4人いますから、実際の県の現場には199人となっています。農業改良普及活動の本来の役割は、各地にきめ細かく普及センターが配置され、専門性を備えた普及員が日常的に農家の支援に関わることによってこそ果たせるのではないでしょうか。先日ある普及センターに伺ったところ「農家の皆さんが長靴履きで気軽に寄ってくれるんですよ」ということでした。これが大変重要なことだと思います。
県行政機構審議会はこの9月に答申を出し、農業改良普及センターの8箇所の支所のうち、6箇所を廃止しセンターに統合する方針が打ちだされました。これに対し、須坂市長、小布施町長、高山村長から、「須坂支所の存続及び充実」を求める陳情が県議会農政林務委員会に寄せられています。また千曲市をはじめとした19市長からも同じように存続充実の要望が県に寄せられていると思います。
知事は常々「81市町村の意見を尊重する」といわれていますが、これらの要望に心を寄せていただけないでしょうか。
また、中期総合計画では、平成24年度の農業総生産額は3,000億円、内、農産物産出額は2,800億円にするとしています。普及センターの事実上の撤退・縮小で、中期総合計画に掲げた目標どおり農業や農家の支援が出来るでしょうか。農政部長、お答えをお願いします。
<白石農政部長>
普及センター、支所等の統合と中期総合計画についてのお尋ねでございます。農業改良普及センターにつきましては、先に行われました行政機構審議会の答申におきまして、小人数が分散配置されている体制を集約し、効率的な組織とすると共に、地方事務所等との連携を図るため、支所を本所に統合することが適当とされております。昨日、村石議員の質問にお答えしたとおり、中期総合計画の施策を推進するためにも、職員の集約化によりまして、普及センターに求められております、高度化する技術・経営への対応、集落営農組織作り、農産物・農産加工品のブランド化の推進、さらには野生鳥獣害対策等の施策を進める上で、より専門性を発揮しながら組織として取り組んで行くことが可能となるという風に考えております。いずれにいたしましても、中期総合計画で掲げた施策の推進を図るため、今後とも鋭意努力していく所存でございます。
埴科農業普及センターが千曲支所に移動するときに、その時職員は11人でした。しかし今4人でございます。また南木曽センターにもたった2人、所長と含めて2人しかいらっしゃらない。こういう事態を進めてきた長野県行政が少ない人数では支援できないんだと、だから統合だと。これは私は改めて頂かなければいけないと思っております。
今、21世紀が求める農業振興は、扇の要として普及センター、普及所の職員の活動強化が求められています。長野県農業の衰退は危機的事態にいま落ち込んでおりますけれども、6箇所の支所の廃止統合方針は撤回して、普及事業充実のために普及員の増員、体制強化が必要であることを指摘し、強く要望いたしておきます。
それから、農業問題ですけれども、日本共産党は「農業再生プラン」をこの3月に発表いたしました。農家の皆さんの所得保障・価格保障を応援することによって、農業の再生を進めて行こうという提案です。そして、新規就農者がなかなか自立できない、収入が得られませんので当然ですけれども、1か月15万円を3年間、石の上にも3年間、所得保障をすることで農業の自立を図って応援する。こういうことを提案しております。これを受けまして、日本共産党では県下各地で「農業再生プラン」を中心に据えながら、いろんなみなさんと農業のことについてシンポや集会で話し合いを重ねてまいりました。こんな中で、農業の果たしている役割は本当にいろんなことがあるね、そんなことが語りあわれております。農業は水田という事で、国土保全や環境、地球温暖化防止策にもなりますし、それから地産地消を推進する、こういうなかで、フードマイレージという外国からの輸入、たくさんの燃料をかけて輸入している、こういう問題にも解決が図られる。たくさんの話し合いが行われております。農業の再生に向けて、もっと多くの方と話し合いを進めながら、長野県農業が発展するように、農業改良普及所の活動も強化さるように願うところでございます。
次に地域医療の再生についてお伺いいたします。
病院医師の確保困難がきわまり、悲しいかな地域医療の崩壊現象が県内各地で進行しています。特に上田地域では、独立行政法人長野病院は、常勤麻酔科医の不在が続く中、産婦人科の体制は9月から一人医師となり、婦人科診療しか扱えません。年間約450人分のお産、特にリスクのあるお産や婦人科治療はできなくなりました。また上田市産院においても、常勤医師一人となり、お産の予約制限をせざるを得ない事態です。リスクが予想されるお産や緊急事態では上田地域では治療が受けられません。篠ノ井、小諸、佐久、松本の病院に行かざるを得ず、手遅れの悲しい事態も発生しています。
上田市産院では助産師外来が行われており、丁寧でゆったりした対応がお母さんがたに評判です。さらに助産所の開設を願うところですが、医師一人体制の現状では困難です。また緊急事態の時、頼みの長野病院が受け入れられない事態では、なおのこと助産所の開設は望みがありません。
日本共産党と県議団では、井上哲士・小池晃参議院議員の協力を得て4月15日に長野病院と上田市産院での現地調査をもとに、4月17日には厚生労働省と独立行政法人病院機構に対して、長野病院の麻酔科医師と産婦人科医師の確保について要請を行いました。厚生労働省の担当者は「全国で深刻な事態7つの病院の一つと認識しております」ということでした。「文部科学省、防衛省とも連携して対応したい」との確約がされました。
また「上小の地域医療を支える会」では7月23日、長野病院の充実を求める署名を、舛添厚生労働大臣に直接手渡しました。大臣は「長野病院は地域医療支援病院として承認されている。地域の中核病院でこそ大事。地域の実情を踏まえてしっかり守って行かねばならない」と言われました。
しかし現実には、来年度からは一人の産婦人科医師も引き上げるとの危惧がされており、充実どころか更なる縮小の方向です。お母さんが命がけで命を生み出すときに、安心してお産をするところがますます無くなって行く。2箇所の民間医師への負担も重くのしかかっています。この危機的事態に県はどのような努力をしていただいているのでしょうか。
上小地域で、安心してお産ができるような仕組みについて、どのように取り組んでいただいているのか、衛生部長に伺います。
続きまして、長野日赤病院について伺います。今年4月から診療所となり、250床あった病棟は閉鎖されました。戸倉上山田温泉の観光地でもあるのに、夜間診療はありません。また長野日赤は診療所を来年3月末をもって閉める計画が示されています。
しかし千曲市において現在後医療を受け入れてくれる病院組織を捜していただいていますが、今のところ、どのような病院組織か、どのような規模の病院にいつからなるのかなど、市民には情報の公開がなく、地域住民は不安な中におかれています。願わくは、現在の長野日赤病院において、再度病院再建の方向が切り開かれないものでしょうか。現在は千曲市において、別の病院組織との交渉を重ねておられるようですが、千曲市民や隣接の坂城町町民の合意の上に、後医療が構築される事を願っております。
県はこの上山田病院から診療所へさらに後医療の問題についてどのように対応して頂いているのか、衛生部長に伺います。
<渡辺衛生部長>
上小地域の産科医療体制の対応についてお答えいたします。長野病院における産科医につきましては本年7月までに派遣元大学であります昭和大学が全員引き揚げる予定でありましたが、厚生労働省が国として対応が必要な医療機関に選定したことから、県は国と連携しながら、昭和大学に繰り返し派遣要請を行ってまいりました。その結果8月以降、来年3月までは常勤医師1名の派遣が継続されることとなりました。こうした中で、上田保健所が主催いたします「上小地域医療対策協議会」におきまして、上小地域の三つの分娩取扱施設における分娩受け入れ可能数の確認、あるいはハイリスク分娩については、隣接する二次医療の5病院に受け入れを要請するなど、地域の産科医療を確保するために対応しているところでございます。
その他、本県出身の県外に勤務しております、医師1,300人以上に、お手紙を差し上げまして、協力を依頼しました。特に産科医師は40人おりましたので、個人的に長野病院の窮状を伝えながら、再度協力を依頼したところでございます。いずれにいたしましても、県としては長野病院における分娩再開を含め、上小地域の安定的な産科医療体制の確立に向けまして、県、地元自治体等とも連携を図りながら、引き続き信州大学等へ産科医派遣要請をしていくとともに、医師個人への訪問活動を強化するなど、粘り強く医師の確保に取り組んでまいります。
次に、長野赤十字上山田病院の後医療問題についてお答えいたします。後医療機関としては、県内外の4医療法人が名乗りを上げておりまして、現在千曲市において選定作業が進められております。来月3日には千曲市議会が決めました選定基準を踏まえまして、千曲市が後医療機関を選定し、長野赤十字病院に伝えると聞いております。また、長野赤十字病院は地元の意向を尊重すると聞いておりまして、来月上旬には後医療機関が決まるものと認識しております。なお、ここに至るまでの間、県と致しましても、千曲市や長野赤十字病院と頻繁に情報交換をしてまいりましたし、必要に応じ助言もしてきたところでございます。今後も地元の意向を尊重しながら、必要な対応をとってまいります。
全国的な医師不足、特に産婦人科の医師は、本当に確保が困難という事態は把握しておりますが、ご努力いただいていますが、住民は「一体何をやっていただいているのだろう」「国、県は何をしてくれているのだろう」ということで、ご努力いただいているんですが、それがかえって不信になるというような状況もありますので、住民も巻き込んで一緒に県とも、上田市とも、近隣町村とも力を合わせる。情報公開しながら、住民も一緒に取り組んでいく。こういう環境づくりをお願いしたいと思いますし、私どももともに力を合わせたいと思います。助産師外来とか、助産院の開設とか、助産師への活動支援も県はしていただいておりますので、一人医師の所でも、なんとか助産所への開設に向かえないものなのか、このことにも改めて衛生部長に強く関わって頂きたいと思います。あとのご答弁の中で、含めて頂ければと思います。
次に進みます。後期高齢者医療制度のついてお伺いたします。
「世界に例を見ない、年齢で高齢者を差別するこんな制度は廃止するべきだ」という世論と運動の共同がひろがり、600万筆からの反対署名、655の地方議会からの反対等の意見書が国に向けて出されました。そして国会を動かしました。
制度発足から2ヶ月たった6月の参議院で廃止法案が可決されました。今衆議院で継続審議の状態です。政府は、廃止はせずに一部の低所得者の保険料を7割減免から9割減免へ、また年金からの天引きでなく本人及び家族の口座からの振込みでもOKと制度を変えました。ところが、これがまた大変です。7月から8月、制度変更の通知が届いてから、長野県後期高齢者医療制度連合会や市町村担当者は問い合わせや苦情が殺到し対応に追われました。長野県内後期高齢者は約30万人、その皆さんに一度通知を出すと約2,400万円もかかります。8月15日の終戦記念日に2回目の年金からの天引きがされました。高齢者の皆さんはあらためての怒りの声です。
衛生部長は、4月からの制度発足から現在までの事態に医師としてどのような感想をお持ちでしょうか。高齢者と市町村行政にこの間与えた影響はどのようなものであったとご認識でしょうか。ご所見を伺います。
村井知事にも伺います。舛添厚生労働大臣や新総理になられた麻生氏までもが「この制度は評判が悪いので抜本的見直しをせざるを得ない」と、一時ではありますが表明するにいたっています。「後期高齢者医療制度は見直しではなく廃止すべき」これが圧倒的国民・県民の声です。知事はどうお考えでしょうか。衛生部長、知事にそれぞれのご所見をお伺いいたします。
<渡辺衛生部長>
先ほど、医師一人でも院内助産ができないかというご質問でありますけれども、院内助産につきましては、県が強制するべきものではございません。医師一人と勤務している助産師がやると言えばできると考えております。それは柔軟的な対応でいいと思います。
次に後期高齢者医療制度についてでございますけれども、先ほど特別対策が行われました。後期高齢者医療制度というのは、国民皆保険を将来にわたり維持していくために、現役世代と高齢者でともに支えあう制度として設けられたもので、県と致しましては、この制度の趣旨や必要性を分かりやすく説明し、またご理解いただけるよう努力を重ねる必要があると考えております。
こうした中で、政府・与党におかれましては、本年4月からの制度の施行状況等を踏まえまして、高齢者のおかれている状況を十分に配慮し、制度のより円滑な運営を図るために、今回の特別対策を実施したものと認識しております。この特別対策によりまして、高齢者によりましては、所得の低い方に対する保険料の軽減措置が拡充されるほか、年金からの保険料の徴収につきましては、口座振替の対象者の拡大が図られております。また市町村にとりましては、20年度における減額した保険料相当額が、広報やシステムなどの経費について全額国費で財源措置をすることとされております。いずれにいたしましても、特別対策については、円滑に実施されますよう、高齢者のみなさんに十分理解していただく必要がございますので、様々な広報活動を通じまして、十分に周知を図ってまいりたいと考えております。
また、廃止すべきという県民の声があるということでございますけれども、実際のところこのシステムの構築だとか回収にかかった金額というのは、国保連合会あるいは市町村、広域連合あわせて15億円かかっております。これだけの経費と人手をかけた、ある程度手間暇かけた制度をすぐになくすというのは、現実問題としては非常に難しいことではないかなと考えております。今後政府がどのような対策をとるのか、見極めながら県としても対応してまいりたいと考えております。
<村井知事>
いわゆる後期高齢者医療制度について、私がどのように考えているかというお尋ねでございます。私はこの制度は要するに、日本社会の高齢化の進展に伴いまして、医療費が増大する中にありまして、世代間で負担について納得しやすい医療制度にするために、制定されたものだと理解しておりまして、これを廃止した場合、また新しい負担につきましての利害、特質の問題が発生してまいりまして、これまたこれで大変な問題になるのではないかと思います。いろんな経緯があって、今回のようなことになったわけですから、新制度の運営、運用というのは、要するに国民皆保険、これは本当に大事な制度でありまして、これを維持しながら、医療制度を将来にわたって持続可能なものにしていくという観点から導かれる、私は一つのあり方だとこのように認識しているものであります。
現在、麻生首相が制度の抜本的な見直しを表明され、連立政権の合意の中で、「高齢者の心情に配慮し、法律に規定してある4年後の見直しを前倒しして、より良い制度に改善する」ということが記述されております。これは国民の多くの声を受け止めた上での方針変更と考えられるわけでございまして、当面国の動向を見守ってまいりたいと存じます。
上山田日赤病院の後医療のことは県も日赤病院と話し合いを重ねまして、千曲市ともよく連絡をとってやっていただいているんですけれど、地域の皆さんは医療を中断していただきたくないという不安があります。いま診療所規模ですけれども、診療所でも次の医療機関にバトンが渡されるまでは、日赤病院でしっかりと診療所を守って欲しい、続けて欲しいという要望がありますので、このことをお願いいたします。
医師不足、看護師不足で地域医療の崩壊が進んでおります。療養病床閉鎖など医療環境が悪化しておりますけれども、この10月からはさらに65歳から74歳の人が国民健康保険料を年金から天引きされます。さらに政府への怒りの声が日本中に満みちる事となるでしょう。先進国の中では医療費の支出が低い日本です。更に2,200億円の社会保障予算を削減するという政治の問題があります。みなさんと力を合わせて、健康で文化的な生活が実現できる、そういう取り組みを進めてまいりたいと思います。ありがとうございました。