2009年6月定例会 一般質問 6月25日 もうり栄子

1、長野県地球温暖化防止対策について

2、諏訪湖のヒシ対策・カワアイサ対策について

3、 教育問題について

1、 長野県地球温暖化防止対策について

(1)目標達成のための取り組みについて

<毛利県議>
 長野県地球温暖化防止対策について知事並びに環境部長に伺います。
地球温暖化防止はもはや猶予できない人類的な課題です。京都議定書で、日本は90年比で温室効果ガスを6%削減する目標を掲げながら逆に6.2%増やしており、世界から強い批判が向けられています。そのうえ2013年以降の国際的枠組みに向けて2020年までの中期目標を求められていましたが、「対策費用が高くなり、経済活動が悪化する」という財界の意向におされ、05年比で15%とごまかし、基準の90年比ではわずか8%にとどまりました。先進国の責任が25%以上と求められているのに、とうてい国際社会には受け入れられない数字です。
 県の温室効果ガス排出量は90年比15.3%増えており、全国の伸び率7.8%の倍にもなっています。一方、京都議定書の約束期間2012年度までの削減目標は国と同じ6%です。現状で目標を達成するには20%以上減らさなければならず、大きな乖離があります。
そこで、環境部長に伺います。改定された、「地球温暖化防止県民計画」で改めて6%削減目標が確認されていますが、今の取り組み状況ではたして目標達成ができるのか、今後達成のためにどの様な取り組みを行っていくのか伺います。

<白井環境部長>
 温室効果ガス削減目標達成のための取り組みについてのご質問でございます。県内の温室効果ガス排出量は最新データである2005年度で、ただいま議員からもお話がございましたが、90年比15.3%の増加となっておりまして、6%という削減目標は今後の人口推移や経済見通しなどを踏まえて設定したものではございますが、高いハードルであると認識しております。
 しかしながら、この削減目標は、環境技術の開発や省エネ機器の普及促進などがこれまで以上に進むとともに、県民、事業者、行政等が連携して幅広い分野には様々な削減行動に取り組むことによって削減が可能な目標値であるものと考えております。
 今後県と致しましては、県民計画に盛り込まれました各部門の施策を部局横断的に実施するとともに、今回の長野県新経済対策に位置付けられました新たな施策についても積極的に推進して目標達成に向けた取り組みを充実してまいりたいと存じます。

(2)普及・啓発活動について

<毛利県議>
 県民満足度調査によると重要度の高い項目の1位が「地球温暖化の防止」、3位が「水環境及び大気環境の保全」、4位が「循環型社会の形成」となっており、環境問題に対する県民の関心の高さがうかがえます。これは地球温暖化問題を考える上で大きな財産ではないでしょうか。住民と行政、事業者が一体となった本格的な取り組みが大事だと思いますが、たとえば「レジ袋辞退率80%」にもなっている南信州の取り組みや国の「環境モデル都市」に指定された飯田市などに学び、「地域協議会」などの設置を推進し、長野県環境保全協会と協力して普及・啓発活動をさらに強化すべきではないか環境部長に伺います。

<白井環境部長>
 地域での温暖化防止活動のための強化についてのご質問でございます。温暖化対策を効果あるものにするためには、県市町村といった行政がしっかり取り組むことが、当然でございますけれども、県民・事業者・NPO等、各種団体の自主的積極的な地域発の活動が大きな推進力になるものと考えております。
 県と致しましても、こうした動きが各地に広がるよう、全県で221名に委嘱されております地球温暖化防止活動推進委員や行事ごとに集まって業務部門の温室効果ガス削減に取り組む病院宿泊施設・商業施設の協議会、あるいは企業の自主的な取り組みから出発した信州省エネパトロール隊などの活動を支援しているところでございます。
 また地球温暖化防止活動推進センターを通じた地域の環境保全活動にたいしても助成を行っております。今度ともこのような取り組みと合わせて先進事例の紹介・表彰や県政出前講座の活用などによって地域発の活動がさらに充実拡大するよう、努めてまいりたいと考えております。

(3)太陽光発電の助成制度について

<毛利県議>
 低炭素社社会を目指す上で、排出削減の努力とともに、再生可能エネルギーの活用促進がもう一つのポイントです。ここでは太陽光発電について知事に伺います。今回補正でも諏訪警察署に太陽光発電を設置することになっていますが、県有施設に率先して導入していくことは大いに歓迎します。
国のキロワット当たり7万円の住宅への設置補助の再開もあり、また来年からは電力会社の買い取り価格を今の倍にする方向が示されている中で、10年前には一般家庭で発電システムを設置するのに4キロワットで400万円ほどかかり、20年くらいしなければ元が取れないといった状況があり導入に躊躇もありましたが、今では230万円余で設置できるようになりました。
また、県内で31自治体が独自の助成制度を設けており、国と合わせれば、たとえば飯田市ではキロワット当たり7万円、限度額20万円ですので、合わせて48万円の助成を受けられます。そこで、さらなる導入を促進するためには、県としての助成もぜひ検討していただきたいと思いますがいかがでしょうか。

<村井知事>
 住宅用太陽光発電の設置に対して、県として助成をしたらどうかという、こういうお尋ねであります。補助事業の実施は、太陽光発電の設置を促す大変効果的な施策の一つであることは事実でありますが、県が実施します場合、ひとつは財政負担が大変重いということや、個人の資産になるわけでありますから、このあたりは少し慎重に検討する必要がある、このように考えているところであります。
 県と致しましては、国の補助事業が広く県民の皆様に周知されるように説明会を開催致しましたり、また信州エコポイント事業でございますが、ここにおいて太陽光発電の購入をポイントの対象とするなどの形で普及・啓発に努めておりますとともに、今回の経済対策として、県有施設に太陽光発電を率先導入しまして、2020年までに現状の10倍を目指すと、こういう目標を立てて進めているところであります。

<毛利県議>
 国の「経済危機対策」のメニューの中でも民間住宅への太陽光発電の導入がうたわれており、全国では19の都府県が、直接補助や市町村への助成など、県としての助成を導入しています。この設置工事を地元の中小業者が行えば新たな仕事おこしにもなることを考慮し、ぜひ知事にはトータルでとらえて、援助の方法などを前向きに検討していただきたいと思いますが、先ほど個人の資産に対しては慎重にしたいということをおっしゃいました。この間生活再建支援法の問題で岡谷市の災害時にも、住宅への補助ということを申し上げたときにも、そのようなことをおっしゃっておりました。しかし、今回国の「経済危機対策」の中で、個人が所有するべき自動車に対して、25万減税するだとか、そういう話が具体化していますが、そういう問題を勘案しても、知事は今もなお「個人のところに住宅の設置はできない」と、「太陽光発電の援助はできない」というふうにお考えなのかどうか、改めてお考えをお尋ねいたします。

<村井知事>
 そのあたりは、政策をどのように構築するかというお話でありまして、たとえば信州の木材で住宅を建てるという場合に、県が相当の負担をしている制度を維持していることはご案内のとおりであります。自動車の購入に税をまける等々という措置がありますのも、今回の不況の一つのポイントが、自動車産業における極度の不振というような問題があることは否めないということでありまして、そのあたりでおそらく資産に対する支援であるけれども、あえて対象にしたということだと思います。
 ですから、これは私が申し上げていますことも、「絶対にだめだ」と申し上げているわけではなくて、要するに政策としての線を先にするか後にするか、どういう順序でやるかというときに、ちょっと考えさせていただかないということで、今消極的なお答を申し上げたというふうにお受け取りいただければありがたいと思います。

2、 諏訪湖のヒシ対策・カワアイサ対策について

(1)ヒシ対策について

<毛利県議>
 続いて諏訪湖のヒシ対策・カワアイサ対策について建設部長・農政部長にお伺いします。諏訪湖の浄化は昭和44年以来、湖底のしゅんせつや下水道の普及、減農薬の取り組みや水辺整備を続けてくる中で、CODが水質目標及び環境基準を達成していないものの、全窒素で水質目標達成、全リンで水質目標・環境基準を達成し、徐々に改善されてきました。

 浄化が進むとともにかつて異常発生していたやっかいもののアオコが99年以来激減してなくなり、半面、生態系に大きな変化が出てきました。7〜8年前から下諏訪高浜沖と諏訪市の豊田沖を中心に浮揚植物のヒシが繁茂し、06年には諏訪湖の面積の20%を占めるようになり、年々広がっています。
 水中の栄養分を吸収して水質浄化に役立つとはいうものの、5月頃に湖底から茎を伸ばし、最盛期には湖面いっぱいに葉を広げ、光合成で酸素を空気中に放出する一方、びっしり葉にさえぎられた湖中には光が届かず、湖中は低酸素状態となり、水質も悪くなり、魚も住めず、貝類はほぼ全滅と言われています。そのまま放置しておけば8月中には枯れ、見た目も悪いうえに、腐食して大変な悪臭を漂わせます。
 漁に出るにも、スクリューに葉が絡みつき航行に支障が生じ、下諏訪漕艇場がありますが、漕艇協会はボート競技もできないため、中高生などにも協力してもらいながら昨年は100人体制で2時間に及ぶヒシの抜き取り作業を行ってコースの維持をしています。
 何回も何回も船で往復しても沖合300mと広範囲に群生しているため、とても除去できる量ではなく、抜き取ったヒシも膨大なかさになり、今はたい肥化の取り組みが始まっていますが、乾かして焼却しなければならず、その費用もばかにならないものとなって関係者の頭を悩ましています。

 除去しなければ実が付き湖底に落ちて茎は腐ってヘドロ状になりますが、実は翌年には芽を出してさらに増えるため、適切な時期に抜き取ることが必要と思われます。「このままでは死の海になる」と心配する関係者もいるほどです。「ボイス81」でも湖周3市町の首長さんから除去とその後の始末について切実な訴えが出されたところです。
 管理者の県はこの事態にどう対応し、どの様な対策を講じようとしているのか建設部長の所見を伺います。

<入江建設部長>
 諏訪湖のヒシ対策についてのお尋ねでございます。
 ご質問のヒシは、ヒシカに属する一年草で一般的には水中の窒素・リンなどを吸収することなどから、水質浄化に対して、一定の効果があるとも言われておりますが、いま議員のお話がありましたように、異常に繁殖いたしますと、腐敗した葉や茎が大量に湖の中に残り、水質に悪影響を及ぼすほか、悪臭や景観、船の運航に支障きたすなど多くの問題の原因となっています。諏訪湖におきましては、すでに漁協の皆様をはじめ、地域の皆様による除去活動が行われており、そのことに対しまず敬意を表するところでございます。
 県と致しましても、これまでしゅんせつなど、水質浄化のための対策に取り組んできておりましたが、今回地域の皆様からのご要望も踏まえ、ヒシの刈り取りにつきましては、緊急雇用創出基金を活用した「諏訪湖クリーンアップ事業」として実施するべく、今県会で補正予算をお願いしております。県と致しましては、今後とも地域の皆様と連携を密にし、協力しながら諏訪湖の水質浄化・環境整備に取り組んでまいりたいと考えております。

<毛利県議>
 今回の緊急経済対策の中で緊急雇用対策という事で、クリーンアップ事業をなさることについては、歓迎を致します。しかしながら、先ほども議論がありましたように、この方針は期間限定という事もありまして、継続的な取り組みを是非求めたいと思いますので、以後そのような形でご努力を頂きたいと思います。


(2)カワアイサ対策について

<毛利県議> 諏訪湖の問題ではさらにもうひとつ厄介な問題があり、カワアイサというカモ科の魚食性の渡り鳥が、近年、冬になると多量に群れを作って飛来し、ワカサギ、コイ、フナなどを手当たり次第に食べて、ワカサギの漁獲や採卵に致命的な被害をもたらしています。
 平成17年には53羽でしたが平成19年には2,333羽と、冬の気候にもよりますが爆発的に増えています。諏訪湖漁協の資料ではワカサギの漁獲量は30年前は300tを超えていたのにいまではそのおよそ10分の1、平成20年は25tしか捕れず、カワアイサのせいでははいにせよ、大変な事態です。
 漁協では対応策として船による追い払いをおこなっていますが、これがまたとても大変な仕事で、年末年始も関係なく朝8時から夕方4時まで漁協組合員が中心となり毎日追い払いを続け被害防止対策をとっているのです。
 議場でも取り上げられたことのあるカワウは平成19年から狩猟鳥獣に指定されていますが、カワアイサは非狩猟鳥獣で、かつ諏訪湖は禁猟区にもなっています。ワカサギの卵は全国に供給されていますし、観光土産にもなっており食文化としても貴重な役割を担っていて、何らかの対策が急務です。
 そこで農政部長のお聞きします。カワアイサの食害の現状と効果的な対策及び、県の援助の充実を求めますがいかがでしょうか。

<萩原農政部長>
 カワアイサの食害の現状と対策についてのお尋ねでございます。
 諏訪湖に冬飛来致します、カモ科のカワアイサにつきましては、議員ご指摘の通り、平成16年から急激に増加をしている状況でございます。水産試験場諏訪支所の調査でカワアイサがワカサギを捕食していることは確認されております。カワアイサの食害が近年のワカサギ採卵減少の大きな要因の一つであると考えております。しかし、カワアイサは捕獲時に胃の内容物を吐き出す防衛本能がありますので、具体的な被害量や被害額が把握できないのが現状でございます。
 食害防止につきましては、カワアイサは鳥獣保護法により捕獲することが禁じられておりますので、現時点ではボートによる追い払いが有効であると考えております。ちなみに諏訪湖漁協が追い払いを行いました、平成19年、20年にはワカサギの卵を計画どおり確保することが出来ております。
 県と致しましては、諏訪湖漁協が行う追い払いに対しまして、平成19年度から外来魚と食害防止対策事業によりまして支援しているところでございまして、今後もこの支援を継続するとともに、関係機関・団体と連携いたしまして、さらに効果的な被害防止対策についても調査・言及してまいる予定でございます。

<毛利県議>
 ご苦労なさっております関係者の皆さんに、しっかり援助していただきたいと思いますが、この問題では、いまご答弁を頂きましたけれども、関係者のみなさんの追い払いの努力の皆さんに依っているのが実態だと思います。この問題でも先ほどありましたヒシと同じように緊急雇用の対象に出来ないかということを合わせてお尋ねしたいと思います。

<萩原農政部長>
 緊急雇用対策で追い払い等の支援が出来ないかと、こういうことでございますが、現在諏訪湖漁協で行っております、成果等を深めながら、現地の皆様と協議をしてまいりたいと考えております。時間を頂きたいと思います。

3、 教育問題について

(1)保護者に心を寄せる相談窓口を

<毛利県議>
 次に、教育問題について、教育委員長ならびに教育長に伺います。
 未曾有の経済危機のもと、就学援助の受給率や高校授業料の減免は年々増加し、この10年間でほぼ3倍に増えています。保護者の就労環境の悪化、病気、離婚などで子どもたちをめぐる状況は厳しさを増しています。この2月に県高教組が経済危機の影響をまとめたところによると、「父リストラで職なし。雇用保険なし。母親病弱で就労不可。生活費・教育費ねん出に困窮」、「母子家庭。収入大幅減。電車賃だせず学校休みがち」などなど。まさに、子どもたちの貧困をめぐる状況が教育権すら侵される事態を作り出しています。
 問題は、この様な状況がすべて家庭の自己責任にされ、どこへ相談していいか分からないまま、ずるずると滞納したり、種々の制度も知らないまま困難を拡大したり、学校に行きにくくなったりして孤立する状況になっていることです。
 そこで教育委員長に伺います。「困ったことがあったら何でも相談を」とまず校長が保護者の困難を何でも受け止め、窓口となる発信をすべきではないかと思いますがいかがでしょうか。

<矢崎教育委員長>
 経済的に困窮している家庭への学校の対応に関するご質問でございます。いま、議員ご指摘のように、経済的に困窮している家庭、大変今難しい状況になっているわけでありまして、その厳しさはご指摘のとおりだと思います。
 お話がありましたように、高校における授業料の減免、これは10年前に比べて3倍になっている、こういう現状がございます。公立の中学校におきましては、経済的な理由により、就学が困難と認めた場合には、学用品費や学校給食費などを援助する就学援助制度によって各家庭に周知するとともに、家庭訪問などによって家庭の状況を把握に努め、保護者の申し出や相談に応じているところでございます。
 また特別支援学校及び小中学校の特別支援学級では教科書の購入費、給食費、通学費などの経費に関し、保護者の経済的負担を軽減するため、特別支援教育就学奨励費の制度について、保護者に周知し、説明をしてきたところであります。
 さらに県立高等学校では、就学な困難となった生徒に対しする授業料の減免、奨学金貸与の制度について、周知をしているところであります。なお、ご指摘をいただきました、学校長窓口に「困ったことがあったら何でも相談に応じる」、そういう発信につきましては県教委を通じて、改めて校長会、各校長に相談窓口の先頭に立つよう、そんなことを徹底してまいりたいと思います。

<毛利県議>
 南信地方のある学校の校長は「学校だより」で保護者の失職で食事もままならない子どもたちに心をよせ、「学校はお金のあるなしで差別されるところであってはなりません」と憲法と教育基本法をひき、「ひとりで悩まないで困ったことがあったら何でも相談を。福祉的な対応が必要なら橋渡しをします」と呼びかけ、ポルトガル語でも知らせています。この様な対応がどんなに保護者の心の支えになるでしょうか。
 先ほど教育委員長から、すべての学校長に対しても要請をしてまいりたいというご答弁がございましたけれども、すべての学校で配慮ある温かい対応を望みます。


(2)学校徴収金の見直しについて

<毛利県議>
 続いて教育長に伺います。「公教育なのになんだかんだとお金がかかり、負担が大きい」は保護者の実感です。平成19年度の学校徴収金は小学校で75,227円、中学校で116,658円、高校全日制で51,032円です。本来義務教育は無償の原則からすれば中学校で月1万円はあまりに負担が大きすぎはしないか。
 学校徴収金の中には当然、教育予算で賄ってもいいはずの教材費やテスト印刷代なども含まれています。この機会に学校徴収金の適正化、さらなる減額の検討をすべきと思いますがいかがでしょうか。また、学校徴収金以外にも算数セット、習字セット、ピアニカ、笛など、あっせんがあり購入していますが、なければいけないものなのか、再利用ができないか検討すべきではないでしょうか、お伺いいたします。

<山口教育長>
 公教育に係る保護者の負担の軽減についてのお尋ねでございます。
 公立小中学校の学校徴収金につきましては、設置者である市町村教育委員会の指導もと、各学校において、負担軽減に努めてきております。また県立高等学校及び、特別支援学校では、校長会、事務長会などの場におきまして、保護者負担軽減の観点から、学校徴収金の見直し、効率的名執行を指示しております。
 ご指摘の補助教材の再利用につきましては、いくつかの先進事例もありますので、少し紹介申し上げますと、家庭内や知人の間で再使用できるものは可能な限り、使用するよう呼びかけている学校、あるいはPTA活動を通じて、セルフケア運動員を回収し、再利用する「リユース活動」を始めた学校、あるいはカバン、スケート靴、スキー用品などを譲り合う場を設けている学校等、こういった場を各学校で様々な工夫によって保護者の皆さんの負担軽減に努めている事例があることは承知しております。
 しかし、ご指摘の通り、経済状況が悪化するなかで、学校徴収金に対し保護者の民様の負担感が増していることもございます。今後は校長会の場でこのような工夫された取り組み事例を紹介したり、市町村教育委員会には引き続き徴収金額の見直し、効率的な執行で学校を指導していただくとともに、個人所有でない教材に関しては可能な限り、公費で支出していただくよう、お願いしたりするなど、保護者の負担軽減が図られるよう、努めてまいりたいと思っております。 

<毛利県議>
 再利用などについては、ぜひ学校としても大いに議論を重ねて頂いて、保護者の負担が増さないことを求めたいと思います。
 また、つい先日、松本市は一人5,000円になる中学校のテスト印刷代を学年費でなく行政の予算で賄う方向が示されたところです。
前年踏襲でなく公教育の原点に立ち返って工夫しながら負担軽減の知恵を出していただきたいことを強く要望します。



(3)併設型中高一貫校について

<毛利県議>
 次に併設型中高一貫校について教育長に伺います。
 中高一貫校設置の動きがにわかに強まっています。98年衆参両院の学校教育法改正時の付帯決議として中高一貫校の「受験エリート校」化をさせないことが確認されていますが、その後の全国で作られた中高一貫校はエリート校化している事実があります。県教委としてどう把握しているか。また、この様な現状についてどう考えるか所見を伺います。さらに、中高一貫校の設置により周辺中学校の「空洞化」される懸念はないのか、お考えを伺います。

<山口教育長>
 併設型中高一貫についての現状の把握と所見についてのお尋ねでございます。中高一貫教育は、6年間の計画的・継続的な教育によりまして、ゆとりある学校生活を送るなかで、個性や創造性の伸長を図るものと旨とするものであります。第1期高等学校再編計画におきましては、弾力的・系統的な教育課程の変遷が可能なもので、個性の伸長、学力の向上が期待できる併設型を導入するとしたところでございます。全国的に学力向上に成果をあげている中高一貫校の多くは、コミュニケーション能力や国際的な視野を育てる学習、実験・観察を重視した探究活動などを通し、様々な分野で先頭に立って活躍できる人材の育成を目指して教育活動が行われておりまして、大学等の受験準備に偏したものではないと考えております。本県に併設型を導入するにはあたりましては、高校からの意見を踏まえまして、長野県にふさわしい中高一貫教育の在り方を検討してまいる所存であります。
 次に周辺中学校の空洞化されるのではないかというお尋ねでございます。併設型につきましては、県立中学の設置をともなうことから中学校が少ない地域におきまして、ご指摘のような周辺中学への影響が考えられます。そのため第1期高等学校再編計画においては、できるだけ広域から通学できることが望ましいとしたところでございまして、広範囲にある多くの小学校から入学できるよう、設置場所に配慮してまいりたいと考えております。以上でございます。

<毛利県議>
 平成19年12月の文教企業委員会で関高校教育課長(当時)は、「中高一貫はすべてバラ色ではなく様々な問題点がある。高校入試がないので中学で勉強をしなくなる。学力維持で非常に問題がある。6年間が長く人間関係が固定化し、生徒間の力関係から抜け出すことが難しい」とデメリットを上げ「慎重に考えてまいりたい」と答弁しています。この考え方と今回の県内に2か所をモデル的に実施する導入方針には大きな転換があります。デメリットはクリアされたのか伺います。

<山口教育長>
 いま議員から中高一貫教育のデメリットの部分とずいぶんかけ離れているのではないかというご指摘でございます。この併設型中高一貫及び連携型中高一貫につきましては、およそ10年ほど前に外部者を含めた検討委員会を立ち上げまして、そして一年間の実験校的な実践も積み上げまして、13年の3月に実施する旨の報告書を教育委員会として出したわけであります。こういった議論を踏まえて、現在の再編計画のもとになりました、平成17年の3月の「高等学校改革プラン」の検討委員会の報告書においても、引き継いで位置づけられたわけでございましてそういった線の中で今回の再編計画を決定していると、こういう歴史的な流れと言いますか、今までの積み重ねの議論の上での流れがございます。
 そういう点で、指摘されたデメリットについてはもちろん十分注意をしながら、この制度的な特徴を効果的に発揮できるように、先ほど申し上げたように、長野県らしいものを設計していくと、こんな風に考えております。

<毛利県議>
 全国では小学生に数倍〜10数倍の競争となっている公立中高一貫校が一般的になっています。小学生にこの様な負担を強いて、人間性の発達に支障がないか大いに心配されるところです。どんなに詰め込んでみても、子どもは子どもなりにしか育つことができません。拙速な導入はぜひとも避け、始まったもののわずか6年で募集停止になっている香川や愛媛、徳島、高知などでの定員割れの例もあるのですから、慎重な検討をすべきと申し上げ私の一般質問を終わります。