2009年11月定例会 一般質問 12月7日 石坂千穂
1、公契約のあり方について
<石坂県議> まず最初に、県の発注する公共工事や委託事業、指定管理者への委託などにあたっての、県と受注業者の契約のあり方、いわゆる公契約のあり方について、知事および関係部長にお伺いします。
先の見えない不況や深刻な雇用情勢を反映し、地方自治体の財政状況も、いまだ厳しい事態にあります。このような地方自治体財政の悪化を背景に、経費削減を優先しての業務の民間委託や臨時職員への置き換えが進められれば、公共サービスの質の低下にもつながりかねません。
「安ければよい」と言う風潮が放置されれば、仕事欲しさに業者の側にも行き過ぎた低価格競争が生まれ、税金を使って行う公的な事業やサービスが、こともあろうに「その収入だけでは生活できない」低賃金労働者を作り出し、格差拡大を助長することにもなります。逆に、県民への行政サービスの質を確保するためには適正なコストが必要である点を踏まえ、自治体が地元企業へ適正な価格で事業を発注し、適正な賃金での雇用を保障することは、地元企業の経営や労働者のくらしを安定させ、その結果、消費購買力を高め、自治体の税収が増えると言う形で還元されることにもなります。
そこで、建設部長にお伺いします。県の公共事業の入札制度については、その都度改善が検討され、一般競争入札の拡大や地域貢献などを考慮する総合評価方式の採用などの改革が進められてきましたし、県議会でも入札制度改革研究会がさまざまな議論を進めています。しかし、業者の皆さんからの相つぐ失格基準価格の引き上げに応えていくだけでは、もう限界であり、繰り返し指摘される実態に合わない労務単価の問題は解決されず、業務に従事する労働者や下請け業者の賃金の低下を招く事態が解決されません。予定価格と入札価格の乖離があればあるほど、結局その工事に携わる労働者の賃金にしわよせがされているのが実態ではないでしょうか。
県の発注する公共事業等の受注に当たり、下請けや孫請けの業者にいたるまで、その事業の従事者が一定水準の賃金が保障されることを明確に盛り込んだ契約を、県と事業者で交わすことを定めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
総務部長には、同じ趣旨で、県の発注する委託事業や指定管理事業等の受注業者と、同様の契約を交わすことを定めるべきと思いますが、見解をお伺いします。
<入江建設部長> 一定水準の賃金が保障されることを盛り込んだ契約を交わすことを定めるべきではないかとのお尋ねでございます。
民間における賃金などの労働条件につきましては、労働基準法や最低賃金法に基づき関係の労使間で決定されるべきものと認識しており、こうした契約を県と事業者間で交わすべきものではないと認識しております。
しかしながら、公共事業や委託事業などの実施にあたっては、事業従事者の適正な労働条件の確保を図る必要があることから県では入札契約制度におきまして、さまざまな取り組みを行っているところでございます。議員のご質問の中にもございましたが、この5月および10月には県議会入札制度研究会からのご提言も受けまして、賃金を中心とした労働条件の改善に向けて適正な価格での応札を促すために失格基準価格の引き上げなどの入札制度の見直しになったところでございます。また施工体制の適正化を図り、下請負人の保護を目的として低価格での入札にたいして下請けへの支払い状況などを確認する契約確認調査や、大規模な工事の入札につきましては、入札時に下請けに関する資料の提出を求める下請け要件付一般競争入札を実施しております。さらに公共工事における建設労働者の適正な労働条件の確保のために、雇用保険、健康保険、厚生年金保険などの加入の有無などを総合評価落札方式で評価しているほか、労働安全衛生マネジメントシステムの認証資格など、労働環境に関する企業の取り組みを入札参加資格における県独自の客観点数によって評価しております。
いずれにしましても、厳しい経営環境のなかでも、労働福祉に適切に対応する企業を評価することなどにより、賃金を始め労働環境の向上に資するところでございます。
<浦野総務部長> 一定水準の賃金を保障されることを盛り込んだ契約を交わすべきではないかとのご質問です。私どもにとっても、建設部長が答弁したところと同様でございます。ただ、公共工事以外、その他の工事、委託業務などの実施にあたっても、事業者におかれまして、その従業員の適正な労働条件を確保することができますよう、県としても出来る限り取り組んでまいっております。
例えば、県庁舎の清掃業務委託においても、平成22年4月から最低制限価格制度、あるいは低入札制度を試験的に施行することを検討しておりますし、また総合評価落札方式の研究もいたしております。
指定管理者の選定にあたっては、応募者から提出されました事業計画の審査の中で適正な水準の人件費が設定されているか、審査をしているところでございます。いずれにいたしましても、賃金はじめ事業従事者の適正な労働環境が確保されますよう、引き続き努力してまいりたい、このように考えております。
<石坂県議> お答えいただきました通り、様々ご努力いただいていることは、評価しているんですけれども、建設部長から契約確認調査のお話もありましたが、契約通り実際に賃金にしわ寄せしないで、その給与が保障されているかどうか。それが契約後の実施状況においても確実に調査できることを事前に契約する、そういう調査の考え方を言っているんですけれども、いままでよりも踏み込んだ、そういう制度を、改めて総務部長と建設部長にお伺いします。
<入江建設部長> 先ほどもお答えしました通り、入札・契約制度の改善のなかでいろいろと検討してまいりたいと考えております。
<浦野総務部長> 先ほど申し上げましたように、入札・制度改革を来春から施行を予定しております。そうした試行の結果を踏まえて、また検討をしてまいりたいと、このように考えております。
<石坂県議> ILO(国際労働機関)は、1949年に「公的な機関が発注する事業について、適正・公正な賃金・労働条件の確保を契約に明記し、その水準についても、同一の産業・同一の業種で確立している労働協約や最低賃金などの法令よりも有利な水準にすること」を義務付けた第94号条約を採択し、すでに世界60カ国が批准していますが、日本政府はまだ批准していません。
本来はひとつの自治体では解決できない問題であり、国が公契約に関する法律を速やかに整備してほしいとしながらも、千葉県野田市で、今年の9月市議会に市長提案された全国初の野田市公契約条例が全会一致で可決されました。野田市では、2005年に、市内の建設業関係の労働組合の陳情を受け、議員発議の公契約法制定を求める意見書が採択され、続いて千葉県市長会で野田市長提案の意見書が採択、全国市長会を通じて国へも要望してきたのですが、今回、まず野田市が条例を作り、その動きを他の自治体に広げていくことで国を動かしたいと、議会での可決後、根本崇市長がマスコミに語っているのを、私はテレビのニュースで聞き、先日、野田市に調査にお伺いしました。
成立した野田市公契約条例は、公平で適正な入札を通じて、公契約にかかる業務の質と労働者の適正な労働条件が確保されることを目指して、市が発注する公共工事や委託業務に従事する労働者の賃金水準を守るため、受注者は市長が定める最低額以上の賃金を下請け、派遣労働者にいたるまで支払わなければならないとするもので、守られなかった場合に市は受注者との契約を解除することができるというものです。
野田市では、この条例の来年4月からの実施を目指し、新年度は国の公共工事設計労務単価基準額などを考慮し、千葉県の最低賃金より101円高い時給829円を市長が定める最低額の賃金とし、管財課の職員を1名増員して業務にあたるそうです。また、条例成立後の10月1日、全国805自治体に国の対応による解決への協力を要請する文書を発送したとのことです。
少なくとも、県から受注する業務では、一定額以上の賃金が保障されるよう、長野県としても公契約条例の検討を考えていただきたいと考えますが、知事の見解をお伺いします。
<村井知事> 公契約条例の制定についてお尋ねを頂戴いたしました。県の発注する公共事業や委託事業などについても適正な労働環境の確保を図ってまいりたいということは私は大切なことだと思っております。先に建設部長、総務部長それぞれ答弁申し上げました通り、現時点ではしかし契約の実施に際して、いろいろな留意をしておりますので、公契約条例を制定するまでの必要はないのではないかと、とりあえず感じておりますが、今後も国の動向は注視してまいりたいと思います。
<石坂県議> 建設部長、総務部長からそれぞれ今後の検討の中で、考えていきたいというご答弁もいただきました。新しい課題ではありますが、この後質問いたします官製ワーキングプアのことにも関わるんですけれども、税金を使って行う仕事、この仕事に携わる人を基本的にはワーキングプアにしない、人間らしいくらしができる給料をきちんと保障していく。これが本当に大事なことだと思いますので、ぜひ新しい課題として踏み込んだ検討を知事にもくれぐれもよろしくお願いしたいと思います。
2.官製ワーキングプアの改善について
<石坂県議> 次に、県自身が雇用している県職員の非正規雇用者の処遇改善についてお伺いします。
私は、昨年の12月県議会と今年の2月県議会でも繰り返し、県の手話通訳士や消費生活相談員はじめ行政嘱託員などの非正規雇用者の処遇改善について質問してきました。
昨年8月、人事院が国の機関で働く非正規職員に対する均等処遇を進める一歩として、「国の非常勤職員に対する給与の支給についての指針」を定めたことを背景に、国と地方で任用形態の違いはあるが、この「指針」を参考にして、県の正規職員と非正規職員の格差是正や処遇改善を検討してほしいと総務部長、人事委員会委員長にお願いしました。人事委員会委員長は12月議会で、「管轄外ではあるが、要請があれば、人事課とのすりあわせや意見交換会をする用意はある」、2月県議会では、「人事委員会と致しましては、早急に任免権者と事務レベルでの意見交換を是非開きたいと、こんなふうに考えております」と答弁されました。その後の検討はどうなっているのでしょうか。人事委員会委員長職務代理者にお伺いいたします。
<小柳人事委員会委員長職務代理者> 県の非常勤職員の処遇に関わるご質問にお答えいたします。県議会2月定例会における石坂議員のご質問に対しまして、本委員会の市村前委員長から県の非常勤職員の処遇のあり方につきまして、検討するため任免権者と事務レベルでの意見交換を早急に開きたいと答弁をいたしました。これを受けまして、任命者の事務レベルでの意見交換を実施いたしました。主として県の非常勤職員の業務の実態の把握に努めたところでございます。その結果国と異なり非常勤職員のほとんどが常勤職員の行う業務を補助する業務に従事していることが明らかになりました。
2月定例会での議員のご指摘の通り、国においては昨年の人事院勧告の中で、常勤の職員の行うべき業務を非常勤職員が代替されていることが報告され、それを受けて昨年8月非常勤職員の給与、手当に関わる人事院の指針が示されております。
本県においては、先ほど申し上げましたように、非常勤職員の業務の実態が国と異なることから、非常勤職員の報酬等についてただちに人事院の示す指針と同様に取り扱う状況にはないと、その旨本年11月の人事委員会勧告にあたってご報告に盛り込んだところでございます。
本委員会としましては、非常勤職員の処遇については、引き続き関心を持っていかなければならないと考えております。今後人事院の示した指針の取り扱いについて、他の都道府県の状況などを注視してまいりたいと考えております。
<石坂県議> 人事委員会としても答弁を踏まえて、意見交換の場を持っていただいたこと、それから実態把握に努めていただいたということで大変感謝をいたします。ただ、ご答弁の中で、実態把握の認識においては私どもと少し認識が違う部分があるのかなと思います。
と言いますのは、地方公務員法・地方自治法によれば、自治体の恒常的・本格的業務は正規職員が行なうとしていますが、長野県の実態は、住民サービスに欠かせない本格的・恒常的業務にも非正規職員が配置されておりまして、これらの臨時・非常勤の非正規雇用者は、法的には、公務員の権利を守る保護法制からも、民間の非正規労働者を保護する法制度からも除外され、法の谷間となって、労働条件や権利を保護する法律がありません。また先ほど、知事や建設部長、総務部長へのご質問の中でも触れましたが、その給与だけでは、生計を維持できないワーキングプアに近い給与・処遇の方もいらっしゃいます。
今回の県職員の期末手当・勤勉手当の検討にあたっても、私は本当に地方公務員法の趣旨に沿う、先ほども他県の状況も考慮して勘案してとおっしゃいましたけれども、そういう総合的な検討が真にされたのか、人事委員会が、団体交渉権等を制限されている公務員労働者の権利擁護のための第三者機関としての役割を果たしているのかについて、今回は残念ながら私自身は疑念をぬぐい去ることはできませんでした。県人事委員会がその意味で、政令市等ではかなり非正規職員と正規職員の処遇格差を埋めるための踏み込んだ検討が始まっていますので、それらも参考にしていただきまして、官製ワーキングプアと言う事態を作り出すことの無いように、真にその役割を果たしていただきたいと思いますが、改めて職務代理者のご決意のほどをお伺いしたいと思います。
<小柳人事委員会委員長職務代理者> 今後とも常に研究し、検討いたす所存でございますのでよろしくお願いします。私もわずかな任期でございますけれども、今日まさかこのような壇上でお話しする機会は毛頭なかったわけでございまして、石坂議員からご質問をいただきまして、心から感謝申し上げる次第でございます。
<石坂県議> ぜひただ今のご決意のほど、お辞めになるにしても、お続けになるにしても、受け継いでいただくよう、お願いをしておきたいと思います。
3.浅川ダム建設について
<石坂県議> 浅川ダムについてお伺いします。
3日にスタートした「今後の治水対策の在り方に関する有識者会議」は、来年夏ごろまでに「できるだけダムによらない治水」を実現するための新たな治水方針をまとめ、これを基準に今後の事業継続の可否を判断するとされており、前原大臣はこの新しい方針を「道府県にできるだけ採用してもらいたい」としています。
平成9年の河川法改正のポイントは、環境への配慮と共に治水への住民参加にあります。知事は、新政権による見直し作業がどうあろうとも、浅川ダムについては「粛々と進める」と繰り返していますが、流域住民をはじめとする県民の中には、必要性、安全性に納得できない思いが広がるばかりです。
10月の長野市長選挙の告示直前に信濃毎日新聞が行なった世論調査では、浅川ダムを「見直す必要がある」63.2%、「見直す必要はない」27.2%で、投票日当日のテレビ信州の出口調査では、「投票の決め手となった点は?」のダントツの1位が浅川ダムで、その回答者の50.7%が見直しを掲げた新人の高野登氏に投票しています。
浅川ダムの建設に納得しない世論が広がる中で、この世論にそむいて建設を進めることを知事はどのようにお考えでしょうか。
<村井知事> 浅川ダムについてご質問を頂戴いたしました。まず第一に、浅川ダム建設事業につきまして、様々な意見があるということはよく承知をしております。ただ浅川ダム建設事業に納得しないという世論が県民に広がっているというふうには私は認識しておりません。認識の違いなんでしょう。
浅川の治水対策につきましては、長野県が平成12年にダムをいったん中止しまして、総合森林整備でいこうと。遊水地でため池貯留で 様々な治水対策を立案し、住民参加による検討を行ってきた経過がございます。その結果、確実性、経済性、効率性に優れて、自然と調和する最善の治水対策として治水専用ダムと河川改修とを組み合わせた対策をすすめることが最も望ましい、このような判断に至った次第でございます。浅川ダムの流水型ダム、あるいは穴あきダムというのは流れを遮断しません。普段は川となって流れるものであります。魚は遡上をするでしょうし、土砂は下流に流されます。ダムの環境に対する というものが、およそ解消されるそういうようなものであります。それで治水の目的は果たされるこういうことでございます。環境への影響がダムが抱えるいろいろな影響をうまくカバーするそういう治水構想だと私は理解しております。従いまして、県民のみなさまに十分ご理解をいただけるものと確信をいたしております。
前原国土交通大臣も「すべてのダムが悪い」わけではなく、「ダムでなければできない治水もある」と答弁もしているところもご留意いただければと思います。
<石坂県議> 先日、日本共産党県議団は、八ッ場ダムの現地へ調査に行きました。地質の専門家からは、数万年前に急激に隆起したもろい地盤であり、とても首都圏の巨大な水がめにするようなところではないとお聞きしていたのですが、なんとダム湖予定地は国交省も認める22箇所の地滑りがあり、大きく陥没した法面に、今もひずみ計がついて観測しているという現状でした。全国各地で、地滑り地へのダム建設後、試験湛水時に地滑りが起こり、対策工事費がかさみ、安全を脅かしています。2002年8月に完成した奈良県大滝ダムは、試験湛水後に繰り返される地滑りで追加対策工事費がすでに308億円、2013年3月まで工事が続き、ダムはいまだに使えません。2005年9月完成の埼玉県滝沢ダムでも二度にわたって同様のことが起こり、追加対策工事費75億円をかけたにもかかわらず、2007年8月の試験湛水後、複数の斜面で亀裂が起こり、現在調査中、ダムは使えずにいます。
知事は、以前の私の質問に、「大滝ダムは大滝ダム、浅川ダムは浅川ダム」とお答えになりましたが、全く説明になっていません。建設部長に、浅川ダムで同様のことが起こらない根拠を示していただきたいと思います。
<入江建設部長> 浅川ダムの地滑りに関するお尋ねでございます。浅川ダムでは、これまで貯水池を包含する範囲でボーリング調査を実施するなど、貯水池内の斜面に対する十分な調査を実施してきております。それらの調査により、ダムの基礎岩盤である裾花凝灰岩層には大規模な地滑りはないこと、また貯水池上流部の地すべり地内における貯水により不安定化が想定される斜面の規模などを確認されております。対策が必要と判断された斜面には、水位の低下を含む貯水の影響を考慮した押さえ盛土工や抑止杭などの対策を講じております。これら県の検証結果に踏まえまして、第三者で構成された浅川ダム地すべり等技術検討委員会でご検討いただきました結果、県の検討は妥当との意見書をいただいております。
<石坂県議> ただいまの建設部長のご答弁を聞いていまして、さきほど2,3のダムのことを紹介させていただいたんですけれども、今回の八ッ場ダムにも行きまして、危険な地滑り地にダムを建設するところの当局のセリフってみんな同じだな、ということを改めて確認することが出来ました。そして地滑りや亀裂が起こりますと、予想を超えたことであって、「事前に分かることは困難だった」とよそのことはわからないこともありますけれども、ここで、長野市で、長野県で繰り返してもらっては困るんです。
あわせて心配になるのは、すでに入札が行なわれた浅川ダム本体工事の落札候補者が大林組など3社の共同企業体であることです。なぜかと言いますと、予定価格を約30億円も下回る低入札ですが、大林組は2007年6月にダンピング問題で独禁法違反の不当廉売のおそれがあるとして公正取引委員会から警告を受けています。また、今年の10月26日、愛知県企業庁から廃棄物最終処分場の地盤改良工事を受注した大林組など3社の共同企業体が、設計書と異なる資材で高炉水砕スラグを砂と偽る工事をして愛知県に損害を与えたとして、愛知県から撤去工事費など42億2,500万円の損害賠償を求めて提訴されています。
あの危険な地滑り地帯で、仕様書と違う資材や材料で手抜き工事をされたら、どうなりますか。このような業者が、あのような低価格で、危険な地すべり地帯へのダム建設を果たして安全に行なえるのでしょうか。私は非常に心配です。建設部長いかがでしょうか。
<入江建設部長> 浅川ダムの入札手続きに関するお尋ねでございます。先日の高島県議からのご質問にもお答えしたところですが、石坂県議からのご指摘の通り、今回の落札候補者の入札は予定価格の約63%と低入札の価格調査の対象となる価格となりました。従いまして、県の低入札価格の事務処理施行要領に基づきまして、入札価格の積算内訳書や、技術者などについて、調査分析を行って、その入札価格で必要な工事の施工が可能かどうか現在調査を行っているところでございます。
<石坂県議> 愛知県から提訴されている例をご紹介しましたが、調査にあたりましてはですね、大林組は仕様書と違う資材を使って平気なことをつい最近やった業者なんですね。部長はもちろん私以上にご存知と思いますけれども、公取からの警告も、今回だけではありません。何度も受けている。指名停止も何度も受けている。その期間をすぎれば、ほとぼり冷めればいいよというわけに、ここの工事はいかない、どこもいかないんですけど、とりわけここの工事は、そうして欲しくないと思いますので、ぜひ厳正な審査をお願いしたいと思います。私は少なくとも、現時点でこの業者が落札業者になることには絶対納得できないことを申し上げておきたいと思います。
最近、長野市内の建設業関係者に幾度となくお会いする機会があり、お話をお伺いする中で、みなさんからは「われわれの方から浅川ダムが必要だと県に要求したことは一度も無い」「浅川につく予算に比べれば、楠川や鳥居川をはじめとする他の河川につく予算があまりにも少なくて残念でならない」「仕事があまりにも無く、浅川ダムは後回しにしても、地元の業者の仕事になる身近な公共事業をもっと優先してほしい」と口々に訴えられる現状です。これらは事実です。これらの声に応え、公共事業や治水対策、税金の使い方の優先順位を真剣に見直していただきたいと、強く要望しておきます。
4、長野地裁判決について
12月4日、長野地裁は、2003年、大町市立しらかば保育園を改築する際、実際の設計と異なるダミーの設計図で入札し市に損害を与えたとして、腰原前市長ら当時の市の幹部3人と設計業者の責任を認め、3,173万円余の損害賠償を求めるよう牛越市長に命じる判決を下したとの報道がありました。腰原前大町市長は、現在公共事業担当の県の副知事であり、事実であれば、県の公共事業のあり方への信頼性も揺らぎかねません。腰原副知事の見解をお伺いします。
<腰原副知事> お答え申し上げます。率直に申し上げて、全く予想だにしなかった判決で驚いているところでございます。詳細を見たうえで、しっかりと対応してまいりたい。このように考えているところであります。
<石坂県議> 地裁の判決が下った直後ということで、私も今後の成り行きについては注視をさせていただきたいと思いますが、くれぐれも県政の信頼性を損なうことのないように、また今のお答えに違いないことを信じて、これらかの県政運営にあたっていただきたいことをお願いしておきたいと思います。
5. 県短期大学の4年制移行について
<石坂県議> 長野県短期大学の4年制移行問題についてお伺いします。
県議会での請願採択や包括外部監査人からの提言を受けて、今年初めて企画部内に県短大の4年制移行について検討する対策部門が設置されたことを歓迎します。すでに様々な情報収集や近隣県で、最近県立短大から4年制に移行した新潟、山梨、静岡の県立大学の視察などもしていただいたようですが、創立80周年の歴史を持つ県短期大学を4年制に移行する場合のメリット、デメリットについて、どう検討されているのか、企画部長にお伺いします。
<望月企画部長> 県短期大学の4年制移行に関するお尋ねでございますけれども、2年制から4年制に変わるということで、変わったとすればということで、メリットとかデメリットという形で、単純に明確に比較できるものではないと思いますけれども、今年4月に立ち上げた庁内検討会で論点設定を行ってきましたところ、4年制大学に仮に移行した場合には、今後多様化する社会のニーズに対応した人材の育成といった観点、あるいは県内高校生の進学の選択肢が拡大されると。それから就職に生かせる資格の取得、もうひとつ教育・研究活動を通じた地域活性化の貢献、こういったものが今まで以上に期待されるというような整理になっています。
ただ一方、厳しい財政状況の下で、新たな財政負担、それから大学間競争が激化するなかで、どれだけの魅力ある教育内容を打ち出していくか、そしてそれを担保する優秀な教員とかスタッフ、それをどういった形で確保できるか、それから県内の他の大学とのいわゆる役割分担、こういったものが課題となると思っておりまして、引き続き検討を重ねているところでございます。以上です。
<石坂県議> 県の調査でも明らかになっていますように、全国の大学・短大数と学生数を平成元年度と平成20年度で比較してみると、少子化の時代であるにもかかわらず、大学は20年間に266校増え、学生数は約77万人増えているのに比べ、短大は167校減り、学生数は約29万人減っています。そのうち公立大学は39校から75校に増え、学生数は5.7万人から12.9万人に増えていますが、公立短大は53校から21校に減り、ピーク時の平成8年の3分の1となり、学生数は2.2万人から1万人に激減しています。進学率を含め、全国的に大学志向が高まり、短大志向は低下しています。
長野県の大学進学率は20年間一貫して全国平均を下回り、一方、短大進学率は全国平均を上回っているものの平成20年度の短大進学率は県で9.7%と10%を切り、もはや短大の時代が終わりつつあると感じられます。
知事は、西沢議員の質問に対し、「長野県短期大学は志願倍率、就職率が高いが、資格取得に限界も出ている」と答弁されましたが、高い就職率を誇っていた長野県短大も、今年の就職内定率は現時点で昨年より1割低く、雇用情勢の厳しさに合わせて、時代にふさわしい資格取得が困難になっていることの反映とも報告されています。
今年4月から4年制に移行した新潟県立大学では、4年制に移行する意義として、「(1)高度な専門的知識・技術を身につけるためには2年間では短すぎる。(2)4年制大学志向が高まり、卒業後3割前後が4年制に編入している。(3)教員免許、幼稚園教諭免許が2種しか取得できないこと、管理栄養士の国家試験受験資格が得られないなど、免許・資格取得が不充分。(4)銀行や証券会社など従来の正社員採用の道が狭まり、契約社員やパートの採用が多くなっている。」などをあげています。長野県でもほぼ同様のことが言えると思います。男女共同参画社会を迎え、県短期大学が長野県の女子教育を支えてきた歴史に持つ意味は大きいものの、女性は短大でよいとする時代も終わりつつあるのではないかと言う意見もあります。
時代のニーズにふさわしい人材育成の観点から、長野県教育と県立短大の将来像の積極的検討をしてほしいと思いますが、知事のご見解を伺います。
<村井知事> 県立短期大学につきまして、お尋ねを頂戴しました。いま企画部長から、お答えしたところの様々な問題がございます。そういうことを押さえまして、少子高齢化、国際化など、急激に進みまして、産業や社会の構造が大きく変化する中で、高等教育に対する社会や学生のニーズは大変多様化している。こういう認識を私ももっております。
先週西沢議員にお答えしたところでございますが、県短期大学の将来像につきましては、長野県の未来をになう人材をどのように育成するのかと、大変大きな課題でもあるところから、年明けにも設置する予定の有識者による検討委員会におきまして、長野県の高等教育の中でどのような役割を果たすべきかも含めまして、幅広く様々な観点から、議論を深めてまいりたいと、このように考えているところでございます。
<石坂県議> 長野県内に4年制大学が少ないための、いわゆる他県への流出率は全国6位、短大と合わせても全国14位、そして受け入れ率は長野県で他県から4年制を目指す学生を受けられる率は全国47位、最下位なんですね。教育県と言われて久しい長野県ですが、高度専門教育の人材育成では他県に頼らざるを得ない、この現実をどうしても改善してほしいと思うんです。
企画部長からお金がかかると、これが課題と、簡単に言えばそういうお話がありました。かつて米100俵というお話もあったんですけれども、教育県長野にふさわしく教育にもお金を、厳しい財政ではありますが、温かく配慮を求めまして、時代にふさわしい発展方向、ぜひとも構築していただきたいと思います。
以上で私のすべての質問を終わらせていただきます。