<もうり県議>
第54号「治水ダム建設事業浅川ダム建設工事請負契約の締結について」日本共産党県議団を代表して反対討論を行います。
この議案は、住民の間で安全性や効果に疑問があるとして大きな問題になっているさなかに、浅川ダムについて、本体の建設着工を21年度内に強行するため、大林組・守屋商会・川中島建設の共同企業体に対して請負契約を締結するための議案です。浅川ダム建設に関しては以下3つの点で大きな問題点があり到底認めるわけにはいきません。
その第1は地滑り地帯への建設で安全性が保障されず、治水専用ダムといいながら、浅川でもっとも必要とされている内水災害にほとんど効果が無いということです。
県はダムサイトや貯水池周辺で十分な地質調査をしてきており、ダム建設上支障となる活断層はないといっています。しかし、「地すべり等技術検討委員会」では浅川ダム建設地は長野盆地西縁部活断層の集中する危険な場所であり、技術的に可能だというだけでダムを建設すべきでないと警鐘を鳴らした学者の意見もありました。
今議会の質疑の中では、請負契約52億円中、10億円は地滑り対策にあて、さらに30億円を地滑り対策に充てることが明らかになりました。洪水時に水がたまる範囲には「地滑り防止区域」があり、押さえ盛土や崩落防止のために6か所もの杭うち工事をし、さらには水抜きを行うなど、本体建設とほぼ同程度の費用が地滑り対策に充てられなければならないというダムです。この様な対策をしてでも無理、無理強行しなければならないことに、住民のみなさんはいっそう不安と怒りをつのらせています。
浅川で予想される水害は、中下流域と千曲川合流点での内水災害によるものであり、過去50年間に発生した26回の浸水災害はすべからく内水災害です。中流域は河川改修によって天井川が解消したことにより、水害の危険性はなくなってきています。県が最も心を注がなければならない有効な対策は河川改修と内水対策であり、抜本的な内水対策をこそ強く求めるものです。
第2は民主主義の問題です。
長野市民のみなさんは安全性と治水効果に疑問のあるダム建設に6割以上が反対の意思表示をしています。また、この間県政史上最多の3,400人を超える住民監査請求が起こされ、国でも全体のダム建設について検証を始めるとしる矢先に、住民運動や民意を無視してダム建設を強行することは民主主義への挑戦であり、住民参加を進めてきた県政の後戻りと言わざるを得ません。
第3は提案されている契約議案があまりに低価格入札となっており、品質がきちんと確保されるのか、下請けいじめにならないかという問題です。
予定価格82億円に対して30億円も低い63%での低価格入札は、今議会でも少なくない議員が、「大丈夫か」と問題点を指摘してきたところです。
県は、請負業者の監理技術者を3人追加して、専任で常駐配置させ、県の職員をダム現場に常駐させて監督させたうえに、ダムや地質の専門家を含めた「施工監視委員会」まで設置して対応するとしています。なぜ、そこまでして発注しなければならないのか大いに疑問です。
また、ゼネコンの大林組は全国各地で談合による指名停止を受けている経緯があり、昨年10月には愛知県から手抜き工事を行い、損害を与えたと訴えられている業者で、長野県で同様のことをしない保障はありません。
県内業者への仕事もまわらず、建設業者も望んでいない危険なダムに180億円も使うなら、1月臨時議会で対応していただいたように、住民が願っている老朽化した橋の改修や、生活道路の整備、高校や養護学校など教育施設の改修、病院や公的施設の耐震補強など地元業者に100%仕事をやっていただける生活密着型の事業に、もっと大胆に予算を使っていただくよう強く要望いたします。
以上申し上げ、本議案に対する反対討論といたします。