<備前議員> 厚生労働省は9月27日市町村が運営する国民健康保険について、都道府県に移行する「広域化」を全国一律で実施する意向を表明しました。
また、政府は2013年度に導入を図ろうとする高齢者医療の「新制度」については対象年齢を75歳以上とする方針を示し、75歳以上の高齢者の8割を占める1200万人が、都道府県単位で財政運営する国保に加入し、市町村単位で財政運営する現役世代と別勘定になるといいます。その次の段階で、全年齢を対象にした国保の「広域化」を行うとされています。
これに先立ち国会では5月、改正「国保法」を成立させ、厚労省は都道府県に「広域化等支援方針」の策定を促すように制度改変が行われました。そして県はこの間二回にわたり国保広域化検討委員会を開催しています。そこで現在の長野県内の国保の運営情況はどういう状況にあるのでしょうか。また、この国保の「広域化」の目的はどこにあるのかお尋ねします。また「支援方針の策定」は義務ではないはずですが、長野県で着手しているのは何故なのでしょうか。健康福祉部長にお聞きします。
また、現在、多くの市町村が、高すぎる保険料を低く抑えるためや、独自の給付事業等を行うために一般財源を国保会計に繰り入れているわけですが、この市町村国保における法定外一般会計繰入金の総額とその推移についてはどうなっているのでしょうか。また、この法定外一般会計繰入は、広域化によってどうなるのでしょうか。健康福祉部長にお聞きします。
また、広域化によって法定外繰り入れができなくなると聞いていますが、そうした場合、保険料はどのようになると推計されているのでしょうか。
日本共産党の調査では、全国では市町村国保への都道府県の「独自支出金」が10年間で約4分の1に落ち込んでおり、2000年度には約322億円であったものが2010年度当初予算では84億円余りと著しく減額しており、過去最高だった1996年度の540億円6334万円に比べると2010年の水準はわずか16%になっていることが判明しています。
この独自支出金は都道府県が独自に市町村国保の特別会計に支出して、国保料の住民負担を抑えたり、給付事業の独自施策などを実施する役割を果たしてきているのですが、削減によって市町村の負担が増すか、国保料の値上げにつながっていく恐れがあります。そこで長野県のこれまでの市町村国保に対する独自支出金の推移はどうなっているのでしょうか。健康福祉部長に伺います。
≪健康福祉部長≫
まず市町村国保の広域化の支援方針についてお尋ねを頂きました。最初に長野県の市町村国保の状況についてお答え申し上げます。平成21年度の収支状況について申し上げますと、単年度経常収支は、県全体ですが3億5千万円の黒字でございます。個々の市町村で見ますと、赤字の保険者が37となっています。国保税の収納状況についてですが、本県の現年度分は以前から全国よりも高く推移していますが、平成21年度の収納率は91・38%となっています。一方滞納額は136億円あまりでして、昨年度と比較しますと、3億6千万ほど増加しているような状況です。
保険者規模の状況でございますが、長野県は特に小規模保険者が多く、被保険者3千人未満が41保険者で、県全体の53・2%と半数を超えている状況です。全国と比較しますと、高齢者の加入割合が高いこと、低所得者の加入割合が逆に低いこと、一人当たりの保険料の市町村格差が大きいといった状況にあります。いずれにしましてもその運営は非常に厳しいものと考えております。
広域化の目的と支援方針の策定について、理由をお尋ねいただきました。広域化の目的につきましては、先ほど議員のご指摘ありましたが、本年5月に国保法の改正がございまして、国では広域化支援方針策定要領を定めまして、そのなかでただ今のような市町村国保をめぐる様々な課題を改善するためには、これまで行って参りました国、県、市町村による公費投入や市町村国保間での財政調整などではまだ十分だとは言えないため、まずは市町村国保の運営に対し都道府県による広域化を推進することが必要であるとされています。
着手した理由でございます。あくまでもこれは、支援方針を策定するかどうかも含めて検討に着手したということでございます。都道府県による支援が求められるか、あるいは求められるとすればその役割は何かとなどについては、市町村の主体的な議論と合意が大前提と考えているところでして、そのためには広域圏代表の市町村長からなる国保広域化等検討委員会が設置いたしました。これは8月です。また、そのもとに市町村実務者レベルのワーキンググループを設置し、様々な推計やシミュレーションを行い判断材料を整えているところです。
次に、法定外の一般会計繰入の状況についてお答え申し上げます。平成21年の度法定外一般会計繰入額の県総額は約21億7千万円となっています。最近の状況は各年度の市町村ごとで個々でいろいろと増減ございますけれども、おおむね20億円程度と推移しています。
次に、広域化による法定外一般会計繰入と保険料への影響についてのお尋ねですが、仮に市町村国保が都道府県単位の運営主体となった場合、一般的には保険料も統一されることになると思いますので、市町村によって現行保険料と(比較して)上がるところもあれば下がるところもあるというようなことだと思います。しかしながら、一般会計の法定外繰入がどうなるかについては、これはまだ国の公費負担の在り方や、市町村相互の格差是正のための調整の仕組みなど、まだまだ不確定な要素が多く、現時点では具体的なことはなかなか申し上げにくい状況にあります。
市町村国保への県独自の支出金についてのお尋ねです。その状況ですが、本県では、昭和49年度から平成13年度まで国保診療所施設への医療機器整備等に対する助成を行っています。その額は200万円から300万円で推移していまして、平成13年度は148万円でございました。それ以降はございません。
<備前議員>
ただ今ご答弁いただきましたが、5月の法改正後の厚労省通達では、広域化等支援方針の策定についてでは「一般会計繰り入れによる赤字補てん分については、保険料の引き上げ、収納率の向上、医療費適正化策の推進等により、できる限り早期に解消するよう努めること」と明記され、都道府県下の国保税を均一化するため、市町村の一般会計繰り入れは解消し保険料値上げに転嫁せよといっていることになります。ただ今の答弁でいくとまだ不確定という話ですが、政府与党がこの方向で打ち出しているというなかにおいて、長野県の準備状況はまだ県民に見えていない状況があろうかと思います。
私もホームページ上で資料を見させていただきましたが、例えば現在でも高い保険料という声があります。平均的な所得168万円で一人当たり8万5千円というのは家族4人になれば所得170万円未満で34万円と実に所得の2割にも及ぶ保険料となり、住民負担を強いているわけです。そして、ただいまの答弁では長野県は国保への県独自の支出金が現在では行われておらず、行われても国保診療所等の医療機器整備ということでありますので、県は市町村の独自努力に運営を任せているということであり、そもそも低所得者が急増している国保は、「広域化」することは、この通達にもあるように保険料の増額になるのは明らかではないでしょうか。その場合には県が補うなどの手立てとともに、国に対し国保の財政難を作り出した国庫補助金の削減、80年代には50%の補助金があったものが、2007年度には25%まで半減させられたことに対して、まず復元させることを広域化の前に先ず国に求めるべきではないでしょうか。知事に伺います。
≪阿部知事≫
市町村国保の広域化の関係のお尋ねでございます。さきほど部長からもご答弁申し上げましたが、国保が広域化、都道府県単位になることでそれがただちに保険料の増減に直結するということではないだろうというふうに考えております。国の公費負担がどうなるか、あるいは低所得者への配慮をどうするか、さまざまな要因で保険料は変わってくるものと考えております。現時点では、広域化した結果、どのような制度設計をするかという形が見えてきておりませんので、保険料への影響あるいは県の対応などについて申し上げられる状況ではありませんが、国保運営の安定が図られるような議論が必要と考えております。
私自身は、本来だれが主体になるべきかということをしっかり議論尽くしたうえで
保険料負担含めた財政問題についても議論していくことが重要と考えているところです
<備前議員>
民主党は野党時代、2008年ですが、市町村国保に9000億円程度の予算措置を、政権をとった暁にはさせていただくと衆議院厚生労働委員会で言っています。今年に至っては40億円くらいしか増えていないということです。知事には、県民の医療をやはり充実させていく立場にたっていただくように、国に対して強力に申入れをしていただくことをお願いしたいと思います。
また、広域化について情報公開と住民参加について伺いますが、県ホームページには検討委員会の資料や議事録はありますが、素案を検討するという「作業部会」の中身が全くわからないわけです。広域化等支援方針は、県市町村、国保連の担当者で議論と市町村からの事情聴取で、議決も経ることなく知事が決めることになっております。住民の命と健康にかかわる問題で議会はほとんど参加できない状態にあります。福祉医療費の検討のことも同様ですが、当事者、被保険者を入れるよう求めますが、知事に伺います。
また、情報公開を率先しておこなっていくという阿部県政では、公開が原則ではないでしょうか。公開を求めますが、知事の答弁をあわせて求めます。
≪阿部知事≫
まず国に対して申入れというお話です。私は、今現在、国において国保の問題だけに限らず、後期高齢者医療の話を含めて様々、医療保険制度をめぐる議論がされていると認識しております。
県としても地域の立場で意見を言っていくことが重要だと思いますけども、先ほども申し上げましたように、財政論の見地から議論をすると、本来の制度設計を誤ってしまうんじゃないかと考えております。本来だれが責任を持つべきかをしっかり考えたうえで保険料負担をどうするか、そして誰が、どこから財源を持ってくるかという検討が必要ではないかと考えております。
国保広域化支援方針の策定にあたって当事者をいれてはどうか、入れてほしいということ(質問)です。これは今現在の進め方は市町村長がいいと、お入りいただいてご議論いただいていると聞いております。市町村長の意見の中で、住民の代表としての立場の意見もお伺いしているということになっていると思いますが、何か具体的な課題とか具体的な支障があれば検討する必要あると思いますけども、現時点で私自身そこまでの認識は持っておりません。
議論の公開につきましては、県のいろんな委員会とか審議会とかありますが、そうした全体をどうしているかと考えるなかで検討してまいりたいと考えております
<備前議員>
これにつきましては次の子どもの貧困問題についても非常に関連性がありますので、ぜひとも県民が医療を望む、所得の上がらないなかで20%、2割も保険料に消えていってしまうというなかで、やはり当事者を加えて意見を聞くということが非常に大事だと申し上げておきたいと思います。
<備前議員>
今、子どもの貧困が重大問題となっています。国際比較で日本の貧困率は15.7%(2007年)OECD加盟30か国中ワースト4位で、メキシコ、トルコ、アメリカに次ぐと発表されました。また子どもの貧困率は14.2%と7人に1人であり、さらに1人親家庭では一層深刻で、貧困率は54.3%にもなっており、OECD加盟国中ワースト1という驚くべき事態です。貧困による一番の犠牲者は子ども達です。
貧困は、人格形成期の憲法25条で保障されている「健康で文化的な生活」を破壊し、26条「教育を受ける権利」をも奪っています。
先月23日、松本市で「子どもの貧困を考えるシンポジウム」が県弁護士会、反貧困ネットワーク信州などの共催で行われ、私も参加しました。このシンポで子どもの貧困は深刻に進行しており、格差と貧困が子どもの教育権を脅かし、親の収入の多寡によって受けられる子どもの教育にも大きな格差が広がっていることが報告されています。特に日本は所得の再分配前と後で、他の国々が税の還元で貧困率が改善されているのにもかかわらず、税の還元がなされても救済されるよりも、むしろ貧困率が上昇している逆転現象に陥っていることが明らかにされ、制度改善は急務です。
そこで義務教育について文科省は平成21年度の子どもの学習費調査を公表しましたが、これには給食費もかかりますので、長野県ではこれらをあわせると小学校で7万5036円、中学校で11万4819円となります。これに加えて入学時にはランドセルや運動着などさらに数万円の出費が父母負担になり、決して義務教育は無償でないことがわかります。
現在不況によるリストラ等で職を失う中、雇用状況も若干改善されつつあるとはいえ、以前のような雇用は望めず、依然、不安定雇用とリストラが常につきまとっており、とくに子育て世代はいっそうの生活の困難を抱えています。
義務教育においては就学援助制度がありますが、その推移は全国で生活保護法の対象になる要保護児童生徒で13万1032人(08年度)、そして要保護者に準ずるほど困窮している準要保護児童生徒は、10倍の130万5099人にのぼり、09年度の最新データでは、148万8000人を突破したことが報道されています。長野県でも2000年の9891人から09年度1万8942人と10年間で1.91倍に急増しています。
就学援助は憲法で規定され、生活保護の要保護家庭に対して、また学校教育法では「経済的理由によって就学困難と認められる児童生徒に対して市町村は必要な援助を与えなければならない」として、援助の主体は市町村としながら就学援助法で国が市町村に対し、予算の範囲内で補助するとしています。
しかし、05年度から国からの補助は要保護者に対する就学援助に限定され、準要保護者にたいする就学援助への国からの補助はなくなり、交付税で措置することになりました。そのため準要保護者にたいする支給基準や支給内容、支給単価はそれぞれの市町村によって異なってしまっています。これについて県教委はどのようにつかんでおられるのか教育長にお聞きします。
また就学援助は子どもの学ぶ権利を保障するためにも重要な制度ですが、保護者負担に地域格差が生じてしまっていることは問題ではないでしょうか。市町村任せで良いのでしょうか。義務教育は無償といいながら、実際には学校に関わる費用が家計を圧迫していることからも、県教委としてこの問題にどのように対処していくのか教育長に伺います。また、就学援助は国において今年はクラブ活動費や生徒会費等が加えられたとは聞きますが、制度の周知や徹底や支援のメニュー等の市町村格差について、支援をより強める方向での是正に県として支援を行うべきだと思いますが、教育長はいかがお考えかお聞きします。
≪教育長≫
就学援助の支給基準や内容、単価についてのお尋ねでございます。
昨年11月に市町村の就学援助制度について文部科学省の調査がありました。その中で支援対象者の認定基準や小中学校別の就学援助費の単価等を調査し、県教育委員会としても把握しているところでございます。その一部を申し上げますと、支援対象者の認定基準につきましては、これは複数回答になっていますが、児童扶養手当の支給を対象世帯とする市町村が74団体、市町村民税の非課税世帯が73団体、生活保護基準額に一定係数を乗じたものが26団体などそれぞれ基準を定めています。支給内容について小学校を例にとりますと、学用品や給食費はすべての市町村で援助しているものの、新入学児童の学用品費では76団体、数学用品費では55団体にとどまりました。また、支給単価について小学校の学用品を例にとりますと、実費とする市町村が2団体、上限を設けているところが11団体、一定額とする市町村が64団体となっています。ちなみに一定額とする市町村の平均額は年額1万1455円でした。
次に、保護者負担の軽減についてお尋ねがございました。県では修学旅行費や副教材費などの個人負担について、4月に各市町村教育委員会に学校徴収金の基本的な考え方として以下の3点を依頼し、保護者の負担軽減に努めております。一つとして、保護者への説明を十分行うとともに、保護者の負担軽減を可能な限り図ること。二つとして、同一市町村内の小中学校にあっては保護者負担に著しい差が生じないように努めること。三点目として、リデュース、リユース、リサイクルをいっそう推進すること等でございます。現在市町村教育委員会では、社会見学時などの市町村バスの利用であるとか、あるいはテスト印刷費の市町村負担などの取り組みが見られます。また各学校においては、修学旅行の経費節減、ワークブック等の副教材の精査、学用品のリユースなどを進めているところです。多くの市町村教育委員会や学校で、保護者の負担軽減にむけて問題意識を持った取り組みが見られますので、市町村教育委員会と連携してこういった取り組みが進むように、努めてまいりたいと考えています。
次に市町村ごとの格差是正にむけての県の支援についてのお尋ねでございます。就学援助につきましては議員ご指摘の通り、学校教育法で市町村の責務とされ、その財源もいわゆる三位一体改革により平成17年度から国庫補助が一部廃止されたものの、税源移譲と地方交付税により市町村に財政措置されているところです。県の財政的な支援は難しいと考えておりますけれども、支援に要する対象が増加していますので、市町村が必要な就学援助を行えるよう国に十分な財政措置を行うことを引き続き強く求めてまいりたいと考えております。
また、保護者の負担に関する市町村ごとの格差是正につきましては、市町村や小中学校が地域性を踏まえ負担軽減にむけた取り組みを進めていくことで、保護者負担が必要最小限になっていくことが重要と考えています。
<備前議員>
次に小児医療からみた子どもの貧困について伺います。
先のシンポジウムでは医療の面でも報告がなされました。喘息を兄弟で発症しているが、予防的治療が必要なのに定期通院が金銭的な理由からできず、突如の発作で時間外受診、入院が必要だが他の子どもの面倒も見なければならないと、外来点滴で改善させて帰宅、お母さんは「喘息の薬を続けなければならないのはわかっているが、医療費があとから返ってくるとはいえ、それが何人もの子どもの分となると一度に1万円にもなり、夜間の受診でタクシーを使わざるを得ず、支払うことができないため、通院できなくなった」事例や、また、中耳炎を患う3歳の児童の例で、父親が新しい仕事に変わったが、「3ヶ月働いてもらわないと保険証は出せない」といわれ、雇用状況の悪さから「会社との関係を悪くしたくない」と自費診療したが、支払いは「給料が出たら払います」と言って帰られたが、その後受診が途絶えてしまった。
これらの事例では「子どもの医療費は戻ってくるからいいと思っていた。が、その場で払う金がない」ということであり、現場医師からは「窓口無料なら通院できる。経済的な貧困が子どもの体を蝕んでいる」と報告されています。
わが党の石坂団長の代表質問でも取り上げましたが、福祉医療費の窓口負担1レセプト500円は、いまだかつてない格差と貧困が広がるなかで、このように子育て世代の生活に重くのしかかり、医療が必要な子どもの受診を抑えてしまっています。
山梨県では08年度から福祉医療費を改善し、子どもの医療費等を償還払い方式から窓口支払いをゼロにする制度に変えました。窓口無料で国から科されるペナルティ分を支援するために、県は市町村国保に対する独自支援金を大幅に増額しています。被保険者1人あたり山梨県は、今年は1715円、制度導入前の前後では約1000円増やしています。一方の長野県は0円です。この違いは大きな隔たりが生じているわけです。
知事は公約で、教育・子育て先進県をめざすとしています。わが党の代表質問でも質しましたが、このように国保への支援が0円と、これが一段と他の都府県に遅れをとっています。そこで国保への支援を行って子どもの医療費をせめても全国の趨勢に合わせ、窓口無料化を実施していくおつもりはあるかお聞きいたします。
≪阿部知事≫
子どもの貧困問題に関連して、乳幼児医療費の窓口無料化というお尋ねでございます。先般も石坂議員の代表質問にお答えをしたところですが、現時点では国民健康保険の国庫負担金の減額などが生じるということで、窓口無料化をとっていないわけです。私は、社会保障制度の根幹にかかわる問題はやはり国の責任でしっかりと措置するべきだと考えております。福祉医療制度は自治体間で非常に競争すると、あるいは首長の選挙公約の中で一番わかりやすい公約という形になって、ここをどんどん膨らますことによって頑張っているという感覚になりがちですけども、本来は国全体の制度として、私は、もっとしっかりと厚生労働省なりで検討してもらう必要があるだろうと考えております。そういう観点で、私としては、国に対して福祉医療制度についての取り組みを強く要望していきたいと考えております。また、いろいろお話いただくなかでやはり貧困の問題、これは県としても十分認識して取り組まなければいけない課題だと考えております。どうしても各部局、縦割りで発想してしまうとなかなか解決しづらい問題かと思いますし、例えば医療費の問題は国、県、市町村それぞれに関わってしまっているので、なかなか誰かが一歩踏みこんでいこうと発想しても進んでいかないという構図になってしまっていると考えています。個々の制度から発想するのではなく、それぞれのお子さまなり家庭においてどういう支援が必要かというところからスタートしないと、制度論になってなかなか進まなくなってしまうのかなと、お話を伺って感じました。
貧困問題は内閣参与の湯浅誠氏も一生懸命取り組んでおられます。近々お目にかかる機会もありますので、国での考え方、あるいは地域でどんなことができるのか、そうした意見交換もしながら、県としても子どもを取り巻く貧困にどう対応していくか検討していきたいと考えております。
<備前議員>
ぜひともお願いしたいと思います。先のシンポジウムでの出席者のアンケートでは、「本当に日本に貧困なんてあるんだろうかと思っていたので、話を聞いて驚いた。『見ようとしないと見えてこない』という言葉は本当だと思います。もっと視点を変えて仕事に取り組まなければならないと思った」と教育関係者が答えています。また行政に対してはもっと、現場を見て欲しいことが出され、子ども達を取り巻く特に教育現場や医療現場等のネットワーク化と情報の共有と対応が必要と思いますが教育長はいかがお考えか伺います
≪教育長≫
子どもの貧困についてのお尋ねでございます。議員ご指摘のように、今学校で子どもたちのなかに、極めて厳しいものを背負っている子どもたちがいることは承知しております。そういった子どもたちに対してどういった支援ができるかというときに、学校だけでは限界がありますので、今までの議論のなかでもいくつかのご答弁させていただいていますが、少なくとも知事部局での連携を強めていく、あるいはそれぞれの具体的な学校ごとにその地域の方々や首長部局とどういったふうな具体的な対応が可能か、精一杯やっていかなればならない、そういう時代にきているという認識は持っております。
<備前議員>
今年の夏は例年に増して猛暑であり、農作物にも大きな影響を及ぼしたといえます。中信地域でも「リンゴの日焼け」とともに、出荷最盛期を迎えたお盆以降には高温障害が発生しました。そこで今年の猛暑による農産物への影響はどうであったか、また対策はどうなっているのか副知事に伺います。
≪副知事≫
今年の猛暑による主な農作物への影響ですが、レタスでは塔立ちや葉のふち枯れの障害が発生いたしまして、品質低下を招いたほか、出荷量は例年を1割程度下回る見込みです。果樹では多くの品目で果実の着色の遅れ、日焼け、果肉が乱下するなどの障害が発生しました。また水稲では田植えが早い地帯等において元苗が白く濁る「白未熟粒」や水分が減少して亀裂が入る「胴割米」の発生がみられています。県では猛暑による影響を回避するため、7月中旬以降、農業改良普及センターを通じて4回にわたり、農作物の生育ステージに応じた栽培管理技術を関係団体、生産者等に指導してきたところでございます。
<備前議員>
塩尻ではレタスは日長と温度により抽台、開花するため、今年の夏のような高温状態が続いたため、葉の成長が止まり、早くから芯が伸びてしまい(抽台)半結球や、分球してしまうため、規格外のものとして出荷ができないものが圃場の4割にも及ぶ畑もあり、農家は「値段は良くても出荷ができない」「春先には過剰生産によりせっかく手間暇かけたレタスを価格調整のために圃場廃棄を大量にしている。これでは農業はやっていけない」と話されました。これは春先の天候不順から成育の遅れが産地競合を招き供給過剰となったため、圃場廃棄に陥ったことになります。
塩尻の野菜花卉試験場調べでは、レタスの高温障害が出るという積算温度1500℃の到達日は7月15日播種したもので、平年よりも8日も早い9月12日に超えており、いかに暑い夏であったかわかります。そこでレタスのように農業共済の制度外であり、また、採算性が取れなくなる値段に下がれば、価格安定基金からの補てんもあるのですが、今回のように価格の暴落は起きていないが高温障害で4割も出荷できない、このような場合への救済策は考えられないでしょうか副知事に伺います。
また、農業予算が著しく下がってきていることは代表質問でも指摘しましたが、こうした時に、品種改良などの試験研究が重要であると思いますが、試験研究予算の増額をすべきであると思いますが知事のお考えを伺いし、すべての質問を終わります。
≪副知事≫
救済制度についてのお尋ねでございます。異常気象等で収量あるいは品質が低下した場合の収入源に対応する補償制度というものは、野菜等についてはないわけですが、価格低落時あるいは出荷調整を行った場合に補てん金を交付する野菜価格安定制度がございまして、一定の農家経営の下支えにはなっています。一方国では新たな食糧農業農村基本計画のなかにおきまして、野菜については経営安定の観点から新たな支援策を検討しているとしておりまして、現在収入補てん的制度を検討していると聞いております。今回のような状況に対応できるかは現時点では不明ですが、野菜農家の経営安定対策は非常に重要と考えておりますので、国の検討状況を注視しつつ、必要に応じて国に提言してまいりたいと考えております。
≪阿部知事≫
農政部関係の試験研究予算についてのお尋ねでございます。
農政関係試験場の試験研究予算は平成16年度以降、毎年5億円程度で推移をしてきております。全体の農政部予算、かなり減ってきているなかで試験場の研究予算は、若干前後しますが、毎年ほぼ同額ぐらいは維持されてきているところです。農政関係試験場におきましては、現在レタスの根腐れ病でありますとか葉のふち枯れなどの障害を回避できる品種等の開発に取り組んでいるところです。今後さらなる温暖化の進行に対応できる品種の開発につきましては、大学や他の研究機関と連携して、まずは研究課題を整理し早急かつ計画的に進める考えです。そのための予算についても配慮してまいりたいと考えております。