2010年9月定例会 一般質問 10月1日 藤沢のり子

  1. 難聴者のための集団補聴システム整備について
  2. 平和行政について
  3. 徹底した情報公開について

1、難聴者のための集団補聴システム整備について

<藤沢県議>
 知事が提案しようとしている障害のある人も無い人も共に安心して暮らせる長野県条例(仮称)については昨日石坂県議も代表質問の中で県民と力を合わせてよいものにつくりあげましょうと申し上げましたが、成立に当たっては実効性あるものに発展させていくためにも取り組んでいただきたい難聴者のための集団補聴システム整備について質問いたします。
 私は先日地方議員と高齢の難聴者の方から集団補聴システムを設置、普及してほしいとのご要望をいただきました。
 そこで状況を調べて見たのですが、年齢と共に聴こえが衰える老人性難聴は70歳以上で約半数、全国では1千万人に及び、国民10人に1人は高齢難聴者ということに大変驚きました。
 聴こえの衰えは人との会話がうまく行かず、コミュニケーション不足を生みだします。
 とりわけ難聴の皆さんは補聴器をしていても補聴器が雑音を拾って騒音の多い屋外や人の集まる場所では音声を正確に聞くことが困難であり、外に出ることや集会や講演会、文化行事などへの参加を敬遠しがちになってしまうといわれています。
 そこで磁気ループに代表される集団補聴装置で聴こえを補うことができれば難聴者を社会から孤立させることなく、自立した社会生活を送っていただけるというものです。
 磁気ループはアンテナとして、発生させた磁気を、専用の受信機で受信して音声に変える装置で声に近い周波数で磁気を発生させるので、雑音の少ないクリアな音声を聴く事ができ、聴力障害者などの「集団補聴システム」として、20年以上前から実用化されています。
 我が国での整備はまだまだ不十分の状況にはありますが、東京都のように福祉の街づくり条例に施設の新設や改修の際には集団補聴システムの設置を義務付けたり、知事もご承知のことと思いますが、横浜市は「福祉のまちづくり条例」の「施設整備基準」の例に「磁気ループ」を挙げているなど、普及のための措置が取られてきています。
 そこで長野県内での設置状況をどのように把握されておられるでしょうか。
又県としてのこれまでの対応はどのようになっているでしょうか。健康福祉部長に伺います。

≪健康福祉部長≫
 難聴者のための集団補聴システムの設置状況および県の対応についてお尋ねを頂きました。補聴器はホールなどの広い空間や周囲の雑音が多い場所では音声が聞き取りにくい場合がございまして、それを補うものとして磁気ループ等の集団補聴システムというものがございます。磁気ループは現在、県営施設では長野県障害者福祉センター、サンアップルでございますが、長野ろう学校、松本ろう学校の3施設に設置しておりまして、長野県聴覚障害者情報センターには、貸し出し用の携帯型磁気ループも設置をしております。それから県では、これまで聴覚に障害のある方が多くご利用をされる県営施設に磁気ループを設置してまいりました。その他、県内の公共施設では松本市民芸術センターに設置されています。松川村役場や市立大町総合病院には県の障害者自立支援対策臨時特例交付金によりまして助成事業を活用しまして、携帯型の磁気ループを配置しているところと承知しております。

<藤沢県議>
 集団補聴装置につきましては県としても一定のご努力はいただいているものと思いますが、聴覚障害者には手話通訳の支援もあるわけですが、先天的聴覚障害者は手話を学習しているので、理解できますが、多数を占める後天的聴覚障害者は手話を理解できない人が大半を占めていると言われています。とりわけ加齢による難聴者はほとんどの方が理解できないといわれていますし、聴覚障害のある人と、ない人のコミュニケーションを保障するためには、「視覚で伝える」方法だけではなく、「より聞き取りやすい環境を作る」ことも大切です。
 磁気ループには建物の施行時に、ループ用配線を床下に埋め込んでおく「常設型」、これはかなり予算がかかるということですが、持ち運びできる「移動式」がありますが、常設型は予算との関係で既存の施設にすぐに取り付けることは困難でありまして、どこの自治体も新築や改修時に設置をされていますが、床用などの移動式のものはかなり価格も安いということで設置もしやすいものです。ぜひ先ほどお話がありました施設のほかにまだ未設置の公共施設がたくさんありますので、ぜひその数を増やしていただきたいと、強く要望申し上げておきます。
 県民の間ではこの装置の存在や役割についての認識はまだ高くない現状にあります。活用の促進と周知についてはぜひ御取組みを強めていただきたいと思います。東京台東区では福祉のまちづくり条例の促進の立場から障害者の手引き、高齢者の手引きにループ設置のお知らせを記述し周知していてかなり効果を挙げているとのことですので参考にしていただければと思いますが、促進と周知徹底について、健康福祉部長にお伺いいたします。

≪健康福祉部長≫
 磁気ループの利用の促進と周知についてお尋ねを頂きました。携帯型の磁気ループを配置した市町村では、地域の障害のある方の介護で使用されましたり、あるいは病院で患者さんの要望に応じて使用できるなどの有効に活用された事例もございます。一方設置施設からは補聴器をお使いの方、お一人お一人の聞こえ方に合わせた磁気ループの音量を調整するということはなかなか難しいと、そういう課題もあると聞いております。しかしながら、聴覚に障害のある方の社会参加と情報を得やすい環境づくりを推進するためには、やはり磁気ループの普及というのは一つの有効な手段と考えております。今後は利用の促進も含めまして、県のホームページや県の障害者施策を紹介する冊子に活用事例を掲載する等、この磁気ループの利用促進を含めた周知を図ってまいりたいと考えております。

<藤沢県議>
 集団補聴装置につきましては、これはもちろんその場で聞き取りができるようなことも必要ですが、先ほど貸出という装置があるとお話もありましたが、ぜひ貸出についても積極的に推進していただきたいということも申し上げておきたいと思います。

2、平和行政について

<藤沢県議>
昨日の石坂議員の質問に続き、平和に対する知事並びに教育長の見解を質問させていただきます。
8月末に阿智村で満蒙開拓歴史展が開催されました。
私は満蒙開拓の歴史とそこから汲み取らなくてはならない教訓について語られた4人の講師によるリレー講義を拝聴してまいりました。
上条宏之県短期大学学長の資料によると終戦直前の長野県の開拓団員数は2位の山形県を大きく引き離した全国トップの31264人で全体の14%に当たります。
又全国で10万人余の満蒙開拓青少年義勇軍のうち長野県は都道府県の平均2160人に対し、全国トップの6595人という少年を送り出しています。
講師の皆さんからはこのように開拓移民と青少年義勇軍を全国トップで送り出し、多くの犠牲者を出した長野県が、戦争政策、植民地政策により忠実に加担していった過去の歴史を検証し、その教訓の上に立って平和を築いていくことの大切さが強調されました。
満蒙開拓移民は国の植民地政策のもとに中国に送り込まれた国の戦争政策の犠牲者であり、多くの人が再び故郷に帰ることも出来ずに命を落としました。生きて帰った人たちもその苦しみを戦後ずっと背負ってきたといわれています。
当日のリレートークでも青少年義勇軍だった方から自決を迫られた開拓団の人々が、いたいけな子どもたちに手をかけた悲惨な状況が語られ、私も胸の詰まる思いをいたしましたが、私にも移民として満州に渡り、終戦の時、足手まといになるからと幼子二人を死に追いやられた身内がおります。その時の話を語ってくれたのは一度だけでしたが、今思えば話すことすらつらかったのではないかと思います。
 講師の一人であった岡庭阿智村村長は、私たちは国家的犯罪とも言える満蒙開拓の歴史を振り返ることによって現代をどう生きるか学ばなくてはならない。と結びました。
 知事も知事選の最中にこの歴史展に立ち寄られたとのことで、この満蒙開拓の歴史に思いを深められたと思いますが、歴史に学び、その教訓を未来に活かしていくことは過ちを再び繰り返さない確かな保証でもあります。
 昨日石坂県議が高森町の平和事業を紹介いたしましたが、我が国唯一の悲惨な戦地となった沖縄県は悲惨な沖縄戦の教訓を後世に正しく継承していくことは、私たちの責務であるとして軍司令部壕を保存し平和学習等に利活用する検討を始めています。
 又平和を守り推進していくために平和、男女共同参画課平和推進班という組織体制を確立し、平和事業に取り組んでいますが、私は沖縄県がその事業の一つに平和憲法を普及啓発する事業を実施していることに驚くというか感動しました。
 事業の趣旨には日本国憲法は、その全文と第9条により、世界に誇れる平和憲法として、アジアの平和と安定に貢献してきた。今後、我が国が国際社会の一員として、諸外国と交流を深め、これまで以上に人類の平和と繁栄に貢献していくためにも、県民一人ひとりがこの平和憲法の精神を尊重し、その具体化を図らなければならないとの文言が明記されています。
 県はこの趣旨に基づき平和憲法の大切さについての県民への普及啓発を図り、5月3日の憲法記念日には、知事がマスコミ等を通して平和のメッセージを発信しています。
 又滋賀県でも県民の戦争体験を基点に、戦争の悲惨さや平和の尊さを学び、平和を願う心を育むための拠点施設として、平和祈念館(仮称)を整備し、平成23年度末開館を目指し取り組んでいます。
 阿部知事は昨日の石坂県議の平和のために何をしてくれるのかという質問に対して、平和をテーマに語り合う、戦争体験を次世代に伝える、子どもたちの平和学習の機会を提供し、平和意識の啓発をしていきたいとその決意を表明され、長野県政の平和への取り組みが一歩前進すると期待をするものです。
 そこで、一歩踏み出す取り組みとして現在満蒙開拓平和記念館の建設をはじめ松代大本営地下豪跡、松本市里山辺の地下豪跡の保存運動などを通して次世代へ平和を継承していこうとがんばっている県民の平和啓発運動を励まし、出来る限りの支援を開始していくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
又戦争遺跡保存は現在住民の皆さんの保存運動などによって支えられていますが、担当部局としての教育委員会でも予算措置も含め、共同して支援をしていくべきと思いますが教育長に伺います。
そしてもう一点 、知事が子どもたちに平和学習の機会を保障したいと答弁されておりますが、教育委員会として後世に平和を語りつぐ資料の一つとして県下各地の戦争遺跡のマップを作成し、平和学習に活用していただければとご提案申しあげますが教育長いかがでしょうか。

≪阿部知事≫
 平和への取り組み活動に対する支援ということでございます。平和を維持して守るということは人類の幸せの基本だというふうに考えています。私も満蒙開拓歴史展、阿智村で開かれていたときに拝見をさせていただきました。本当に戦争体験あるいは歴史の教訓というものを次の世代へとしっかりと引き継いで平和の尊さ、そうしたものを子どもたち、地域の中に浸透させていくことは大切なことだと考えております。県民の皆様さまざまなお取り組み、様々な地域でされてらっしゃいます。財政状況厳しいなかではございますが、県としてどのような支援が出来るのか、関係部局とも検討してまいりたいと考えております。

≪教育長≫
 平和に関する行政に関わって2点お尋ねを頂きました。最初に遺跡保存への県の支援についてのお尋ねでございます。遺跡の保存に関する支援につきましては、国や地方公共団体の史跡に指定されますと、保存整備事業に対する補助制度が活用できます。国や地方公共団体の史跡に指定されていない遺跡に関しましても市町村等から保存に関する問い合わせがあった場合には、保存のための調査や修復につきまして、助言指導などの支援を行っているところでございます。遺跡を保存するということにつきましては、何よりも地域住民のみなさま方のご理解とご協力が欠かせないものでございます。県といたしましても、県内の文化的、歴史的遺産を確実に後世に継承できるよう、引き続きともに文化財の保護活用について取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、戦争遺跡のマップを作成し平和教育等に活用してはどうかというお尋ねを頂戴しました。国では平成8年度から平成15年度にかけて近代の歴史を理解するうえで欠くことのできない重要な遺跡について全国調査を実施いたしました。この調査には戦争遺跡も含まれていまして、本県においては市町村から報告をなされた9か所の戦争遺跡のうち松代地下壕が詳細調査の対象になり、平成15年に現地調査が行われたところです。現在国において調査報告書の作成中と聞いておりまして、文化財としての価値が明確にされることと思いますので、その評価を踏まえ、市町村の意向に十分配慮しながら、戦争遺跡に関する資料の作成等を検討してまいりたいと考えております。

3、徹底した情報公開について

<藤沢県議>
 阿部知事は知事選挙のマスコミの紙上討論会で県民の県政への関心をどう高めるのかという質問に対し、徹底した情報公開が必要だと、提案説明でも県民との情報の共有化を表明しています。私はぜひこの信念を貫いていただきたいと期待をするものであります。
 そこで現在情報公開の在り方を巡って県と住民との間で信頼関係を喪失した事案への対応について伺います。
 松本市中山の解体事業者の産業廃棄物の処理を巡って長年にわたり、その不誠実な対応に対し地元住民からは健康被害や環境汚染など生存権にも関わる問題として県に対して取り締まりの徹底を求めてきました。
 しかし、その指導を巡り県と住民との間に信頼関係が損なわれる事態が生まれました。この指導の内容、経過の開示を求めた公開請求に対し、県は公開とは名ばかりのほとんどが黒塗りされた資料を公開したため、住民の怒りは頂点に達し、住民有志による県を相手の訴訟に持ち込まれました。この現状をつくりだしたのは村井前県政の時でありますが、住民と情報の共有化、公開の徹底を政治姿勢として打ち出した阿部知事は住民の納得する情報を公開して住民との信頼関係を取り戻すための努力をすべきと思いますし、訴訟に対しても和解に向けての努力など最善を尽くすべきと思いますが、知事いかがでしょうか。ご見解を伺います。

≪阿部知事≫
 ご指摘の在りました訴訟案件となっております情報公開に関しましては、廃棄物処理の関係でありますが、住民の皆様の不安を払しょくし理解を得ていくという観点からも出来る限り公開していく必要があると考えております。非常に黒塗り部分が多いというのは事実だと思います。現在見直しの作業を行っているところであります。公開決定にあたりましては客観性を確保したいと考えておりますので、弁護士にも十分相談したうえで行っていきたいと考えております。この案件、裁判で係争中ということでございますが、判決をそのまま待つということではなくて、すみやかに公開決定を行って出来る限り中身を公開されたものにすることによって、訴訟の相手方の皆様の理解が得られるように努めてまいります。

<藤沢県議>
 情報公開の問題につきましては、知事から積極的に善処ができるような対応していきたいというふうにご答弁いただきまして心強く思ったわけですが、長野県情報公開条例に基づく公開請求は個人情報保護の立場から個人を識別するモノや個人の権利、利害を明らかに害する恐れのあるものは非開示とする部分開示となることもありうることは承知しています。
 しかし、今回の非開示部分は事業者の利害を著しく損なうような内容でないものまで対象にして、黒塗りにしているわけです。私もなぜこういう結果としたのかはなはだ遺憾に思っているところですが、先ほど知事のご答弁ありましたように早急な是正を求めておきたいと思います。
 県民の知る権利を保障し、県民に開かれた県政を進めてほしいと多くの県民が願っています。知事が目指す県民が主役の県政を大きく前進させることにもつながります。それぞれの担当部局に置かれましても県民が求める情報開示には積極的な対応をしていただきたいと思いますし、知事はその先頭に立って県民に希望をつくりだしていただきますよう、強く求めておきたいと思います。
 さて平和の問題に関してですが、それぞれご対応をしていただけると思いますが、知事は平和を語るテーブルの設置もされるということでございますので、平和を次世代につなぐ運動、また遺跡の保存運動、がんばっておられるみなさんとの意見交換ができる場をぜひつくっていただきたいと思いますが、その点について改めて伺いたいと思います。

≪阿部知事≫
 県政運営を行うに当たりまして、できるだけ多くのみなさんの声をうかがいながら進めていきたいと思います。平和についても語り合う場を作りたいと思っておりますので、今ご提案あった件も含めて今後考えてまいりたいと思います。

<藤沢県議>
 私が質問させていただきました3点は、知事の打ち出された政治理念に基づくものでございます。知事がこの政治理念に基づいて県民のための県政をしていただきたい、その私は後押しをしたと思っております。どうぞ、県民のためにしっかりお仕事をしていただきますように要望しまして、私の質問を終わらせていただきます。