<石坂県議>
私は、阿部新県政のスタートにあたり、日本共産党県議団を代表して知事の政治姿勢をはじめとするいくつかの課題について質問させていただきます。
知事は、提案説明で、県政運営の基本姿勢として新しい課題、難しい課題への挑戦、現場の重視、県民との情報共有化、県民参加と協働の推進、県議会や市町村との対話の5点を掲げ、政策の4本柱として、「教育・子育て先進県の実現」「産業力、地域力の強化」「暮らしの安心確保」「県民主役の自立した県政の実現」を提案されました。この基本方向については、私たち日本共産党県議団もその実現を期待する立場です。
そこで、まず、厳しい県財政の現状と見通しに対する認識についてお伺いします。
長引く景気低迷に一昨年来の世界的不況、最近の円高が追い討ちをかけ、県内経済の見通しも厳しく、なかなか増えない地方交付税や税収減で、県財政も厳しい現状にあります。村井知事が就任当初に掲げた県債発行残高の縮減方針、つまり県の借金を確実に減らしていくと言う方針は、就任2年目にして破綻してしまいました。今年度末には県債残高は1兆5600億円に膨らみ、村井知事就任時から約500億円増える見通しとなっています。県債残高の増加は、後から地方交付税で穴埋めするという臨時財政対策債ができたことにもよりますが、臨時と言いながら、もう10年も続き、借金であることには変わりがなく、地方交付税削減が続く最近では、ますます交付税措置の保障のない不透明感が増すばかりです。
知事自身も提案説明で述べられていますように、自立した県財政の確立のためにも、臨時財政対策債の比重を減らし、地方交付税の増額、安定的な財源確保と充実を国に強く求めるとともに、行政改革推進債の活用はやめるべきではないかと思いますが、知事の見解をお伺いします。
また、安定した財源確保のためには、何よりも県内経済の活性化や県民生活の安定が重要であることから、県内地場産業、中小企業、農林業への支援強化で県内経済の体力を強化するべきではないかと思いますが、知事の見解をお伺いします。
≪阿部知事≫
石坂議員のご質問にお答えをさせていただきたいと思います。
まず財政の問題でございます。臨時財政対策債ならびに行政改革推進債についてのお尋ねでございます。臨時財政対策債、これは国の制度として作られているわけでありますけれども、私の認識としては地方の財源不足を補うという部分を過度に臨時財政対策債に依存しているというのが今の地方財政制度であると考えております。これは決して望ましい姿ではないというふうに思っておりますので、交付税の法定率の引き上げなどにより地方交付税の増額を図るなど地方税財源の充実については国に対して強く求めていきたいというふうに思っております。行政改革推進債につきましては現行の行財政改革プランにおきましては臨時的な財源の活用策の一つということで掲げられていると承知しています。今年度の当初予算においては計上していないところでありますので、できればこのまま活用しないということで取り組んでいきたいと考えております。
次に県税収入を確保するため県内経済の体力強化というご指摘でございます。9月の補正予算におきましても切れ目なく経済雇用対策を行うと、そのための経費を計上いたしたわけであります。まずは一刻も早くこの経済の危機的状況から脱出して県内経済が回復安定していくということを目指して取り組んでまいります。そのうえで県税収入を確保し安定的な財政構造のもとに、持続可能な財政運営ができますように、中長期的な観点から長野県経済の活性化に取り組んでいきたいと考えています。具体的な政策の構築にあたりましては、信州経済戦略会議、これから設置していきたいというふうに考えておりますが、広い視野に立って長野県の特色、健康長寿県であったりあるいは豊かな環境に恵まれていると、そういった特色も生かしながら、地域に根ざした産業力の強化を図ってまいりたいと考えております。
<石坂県議>
行政改革推進債につきましてできる限り使わない方針ということですので、ぜひその立場を貫いていただきたいと思います。村井知事は当初、5年間で500億円の行政改革推進債の活用を計画しました。そのため、大幅な事務事業の見直しで数々の県の独自サービスが切られ、県職員の1550人削減などの行政改革を引き換えにしました。しかしこの行政改革推進債は公共事業にしか使えない借金で、交付税措置もないものですので、この活用は県政を大きくゆがめる結果にもなっております。結局今年度当初予算にも組まなかったように、使えない、使わないほうがいい、こういう借金になっているわけですので、ぜひ今後もこういう立場で頑張っていただきたいということをお伝えしておきたいと思います。
<石坂県議>
障害者の権利を守るための施策について知事に伺います。知事は今回の知事選挙にあたって発表された基本政策の中で、新しい信州を築くための条例の制定を4つ掲げられ、中小企業振興条例や、子どもの権利条例の制定とともに、障害のある人も、ない人もともに安心して暮らせる条例(仮称)の制定を掲げられており、特に後の2つはわが国が国際条約を批准しながらも度重なる国連からの勧告を受けても、歴代政府は国内法が整備してこなかったことから、地方自治体が率先して条例を制定する動きが始まってきています。条例制定については昨日の倉田議員の質問でのやり取りもありましたが、私からも改めてお伺いします。
国連の「障害者権利条約」は2008年5月に正式に発効し、日本でも早急の 批准が求められ、先の6月議会でも日本共産党県議団はとりあげましたが、千葉県では「誰もがありのままにその人らしく 地域で暮らす」を実現するためには、県民全体で不利益の解消に取り組むよう、共通理解の醸成やルール作りをしようと2006年、全国に先駆けて、「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」を制定・施行しました。先般、日本共産党県議団として千葉県庁にうかがい、条例制定の経過や条例施行3年を経た成果などについてお聞きし、長野県での同条例の制定は非常に重要であると再認識をしてきました。そこで知事は長野県での障害者を取り巻く状況をどう認識され、この条例の制定で何をめざすのか、制定に向けてどのように進めていくお考えなのか、その決意とスケジュール等も含めてお伺いいたします。
≪阿部知事≫
障害者への差別をなくす条例の制定についてのお尋ねでございます。私は、障害のある人もない人も誰もが尊厳を重んじられ心豊かに地域で安心して暮らすことができる社会を作っていきたいと考えております。そのためには障害者への差別をなくす条例、ひとつの有効な手段であると考えております。現在国においても、障害者制度改革推進本部を設置して制度改革を進めているというふうに聞いております。障害者差別の定義を盛り込んだ障害者基本法の改正案を国会に提出する予定と。障害を理由とする差別禁止法についても平成25年に法案提出を目指しているというふうに聞いております。国の取り組みは取り組みとして、やはり地域としてしっかりと考え方をまとめていく必要があると思いますので、差別のない長野県を実現していくために、まずは障害者のみなさま方などから広くご意見をお伺いするなかで課題を整理して本当に安心して障害者の皆様方が暮らすことができるような社会を目指して、実効性ある条例づくりに取り組んでまいりたいと考えております。
<石坂県議>
次に、同じく知事の掲げられている「子どもの権利条例」の制定、「教育・子育て先進県の実現」についてそれぞれお伺いします。
「子どもの権利条例」でめざすものは具体的に何でしょうか。また、制定に向けての進め方について、さきほど障害者の差別をなくす条例について具体的な進め方、スケジュールについてお答えがなかったかとおもうんですけど、あわせて、具体的な方針をお伺いします。知事の描く「教育・子育て先進県の実現」の具体的なイメージ、内容についてもお伺いします。
さて、「子育て先進県への挑戦」は現在の長野県中期総合計画の挑戦課題にもなっており、知事が掲げる「教育・子育て先進県の実現」は多くの県民の願いでもあると確信しています。
私は、教育先進県をめざすうえで、現在小学校6年生まで実施されている30人規模学校を中学生にまで拡大することを提案します。長野県の子ども達の不登校が多いことや、学力低下の問題などが多くの県民の心を痛めている課題になっています。だからこそ、こどもからおとなへの成長を遂げる思春期の大切な時期であり、高校入試の問題も抱える中学生が、ひとりひとりに行き届いた教育の環境を保障されるように、小学生時代の30人規模学級が中学生になっても継続できるようにという願いは切実です。是非、実施を検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
また、子どもの貧困が社会的な問題となり、親の経済力が子どもの教育を受ける権利や学力に与える影響も指摘されるようになるなかで、日本でも高校授業料無償化が始まりました。憲法や教育基本法がうたっている原則に反し、教育への保護者の経済的負担が重い現実があります。県教育委員会として、いわゆる学校徴収金の実態調査も行なっていただいていますが、いっそうの保護者の経済負担の軽減、改善の取り組みをお願いしたいと思います。知事の見解をお伺いします。
子どもの医療費の窓口無料化についてお伺いします。他県から長野県に転勤などで引っ越してきた子育て世代の皆さんが、異口同音に驚いて言うのは、子どもが病気になって病院へ行った時、「えっ、長野県って、お金がいるの?」という言葉です。少子高齢化が叫ばれるなかで、子育てを社会全体で支援していくことが重要になっている時、いまや、子どもの医療費の窓口無料化は大きな流れとなって、全国36都府県が実施しています。長野県の近県でも、群馬、山梨、新潟、富山、岐阜、静岡、愛知と窓口無料になっており、いったん病院の窓口で支払って、後から銀行口座に振り込まれる自動給付方式の評判の悪さに加え、診察や薬局で薬を受け取るたびに支払わなければならない1レセプトあたり500円の自己負担金は、「長野県のこどもの医療費は無料じゃなくて有料制度だね」と言われ、慢性的、継続的な治療が必要な子どもさんを持つある母親は、他県の医療機関で治療を受けても窓口無料が適用される実家のある県に、住民票をそのまま置いて長野県に来ていると言います。子どもの医療費の窓口無料化でお給料日の前でも安心して病院に行けると言う点では、長野県はすっかり後進県になってしまいました。長野県では、こどもの医療費の窓口無料化や自己負担金の廃止はかなわぬことなのでしょうか。「教育・子育て先進県の実現」をめざす、知事の見解をお伺いします。
≪阿部知事≫
教育子育て先進県に関連しての何点かのお尋ねでございます。
まず、子どもの権利条例に関するご質問でございます。これは、子どもは、私から申し上げるまでもなく地域社会の宝、未来社会の担い手ということであります。その一方で地域社会の崩壊とか格差の拡大、いじめや児童虐待の増加といったことで、非常に環境が良くない状況に置かれている子どもたちが多くなっております。1989年に国連で採択されました子どもの権利条約、生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利、4つの子どもの権利が規定されています。こうした権利の大切さを県民共通の認識として、未来を担う子どもたちが将来に希望を持ってのびのびと健全に育っていく環境を提供するための政策や取り組み、そうしたものを総合的、体系的に位置付けていきたい、そうした条例にしていきたいというふうに考えております。制定にあたっては関係者の意見を聞く場を設けるなど、中身的にも実効性のあるものにしていきたいと思っております。スケジュールということであります。さきほどの障害者の条例を含めて、これから関係部局と私の考えをしっかりすり合わせするなかで、これからの取り組み方について、スケジュールもあわせて考えていきたいと思っています。
それから、子育て先進県の具体的な内容ということでございます。私は基本政策集のなかで今申し上げた子どもの権利条例の制定をはじめとして、児童虐待の防止であるとか、あるいは多様な保育サービスの提供、さらには放課後週末等の学習、遊び、生活の場の提供支援といったような取り組みを進めていきたいと提示をさせていただいております。私はこの子育ての分野はとりわけ市町村との連携が重要であろうと思っておりますし、また地域で行政の支援を受けながら、あるいは行政とは別の形で子どもたちのさまざまな活動を応援しているNPO、市民団体の皆様がいらっしゃいます。そうした皆様方と十分に相談しながら、本当に長野県で子どもを産んで育てて良かったと思えるような県になれるように取り組んでいきたいと考えております。
それから、教育の関係で、30人規模学級の中学校への拡大、あるいは学校徴収金に関してのお尋ねでございます。県におきましては児童生徒一人一人にきめ細かな指導を行うという観点から、現在、小学校については県の負担で30人規模編成を行ってきている、これはかねて、私がいたときからやっていたわけでありますけれども、この中学校への拡大という課題につきましては、中一ギャップへの対応という観点から要望が多いということは承知しております。財源が潤沢にあれば取り組んでいくべき課題だというふうに思いますが、他方で推進するには多額の経費がかかってくるということも事実でございます。現在文部科学省第8次の定数改善計画案のなかで、26年度から順次中学校の学級編成を35人としていく案を公表したところでございます。中学校の拡大につきましてはこうした国の動向をしっかり見据えて、国がどう取り組んでいくかということを見ながら、教育委員会の考え方も踏まえて対応していきたいと考えております。
それから、学校徴収金のお話でございますが、これは保護者負担の軽減の観点から、3月に教育委員会において基本的な考え方をまとめて、県立学校あるいは市町村の教育委員会を通じて、小中学校に基本的な考え方を通知して指導しているところと承知しています。私も、学校教育においてこうしたさまざまな徴収金が保護者の負担になっているんじゃないかというお話は伺っておりますので、知事として教育委員会の予算にも関わるという立場でもございますから、学校徴収金の現状、在り方の考え方について教育委員会から十分状況を聞いてまいりたいと思います。
次に乳幼児等医療費の窓口無料化、受給者負担金の廃止についてのお尋ねでございます。これはかねてから議論されているところだと思いますが、窓口無料化を実施した場合には市町村が本来負担する必要のない国民健康保険の国庫負担金の減額等が生じて、財政上妥当性を欠くということで現行方式を長野県とってきていると承知しています。また受益者負担金については、ともに制度を支えていただくという趣旨で負担をいただいているということでこれまで取り組んできています。基本的に私は、福祉医療の制度は社会保障政策全体のなかで位置づけられるべきものと考えています。すなわち現在、市町村、あるいは自治体間でのある意味競争みたいな形でサービスの充実強化を図っているわけでありますが、これだけある意味普遍的な制度になってきているというなかでは、国がさらに踏み込んで対応していくということが必要だと私は考えておりますので、そうした観点に立って、これまでも全国知事会等でも要望してきたというふうに聞いておりますけれども、本県単独でも国に対して強くしっかりと課題を受けとめて対応していくことを要望してまいりたいと思います。
<石坂県議>
条例づくりの進め方とスケジュールの考え方は、知事も関係者の意見をまず聞いてということで進めていただくということですので、先日私たち伺いました千葉県のいわゆる障害者の差別をなくす条例は、3年くらいの時間をかけて、まず実際に差別を感じている事例を具体的に出してもらって、かなり丁寧な時間をかけた条例づくりをしていることが、条例が制定したあとsに生きていると思うんです。そういう意味でぜひ丁寧な条例づくりの進め方をしてほしいという点では、私たちがお願いしたい、考えていることと一致しているかと思いますので、ぜひそこのところを丁寧にお願いしていきたいと思います。
そのうえでなんですけれども、それぞれ最初に申し上げましたように、国連の子どもの権利条約、障害者の差別をなくす条約などにも連動していくわけで、特に子どもの権利条約は全てのベースになっていく非常に重要なものと思われますけれども、意外にその正確な中身はまだまだ日本が批准しているにも関わらず、多くの国民の皆さんや行政関係者に知られていない、徹底されていないということが現実にあると思います。そこで、長野県としても条例づくりに取り組むからには、「子どもの権利条例」「障害のある人もない人も暮らしやすい長野県づくり条例」をつくるにあたり、国連「子どもの権利条約」、「障害者の権利条約」の内容を県としても広く県民の中に普及、啓蒙する努力を具体的に強めていただきたいと提案したいと思いますが、いかがでしょうか。
そのうえで、子どもの権利条例を長野県でつくっていく場合に、非常に考え方として関わることと思いますが、私たちは、猛暑の夏を冷房設備のない学校で勉強しなければならなかった子ども達の環境改善を求めて、9月県議会前に阿部知事に申し入れを行ない、県下の実態調査を行なった上で、先日、県教育委員会との懇談も行いました。例えば、長野市の小中学校あわせて81校中、コンピューター室には56室、音楽室には25室クーラーが入っているのに、保健室には6校しかなくて、教室には一台もありません、扇風機もありません。子どもたちはコンピューター室よりも音楽室の楽器よりも、そして保健室よりも、ある意味日常毎日使う教室なのに、何の冷房設備もない。幸い亡くなった子はいませんが、早退、保健室対応、救急車で運ばれた、倒れて前歯を折った、などの事例が報告されています。環境の変化の中で、まさに人権問題といえる事態です。財政問題はありますが、地球環境の変化の中で、子どもたちが安心して学べる権利を保障する問題として、計画的な改善を検討して欲しいと思います。
福祉医療費等の窓口無料化、給付制度の問題が、実は長野県が事実上の後進県になっている、こんな制度になっているのも、制度の検討委員会に、市町村長や医療機関の代表、学識経験者などは加わっておりますけれども、子育て世代の代表が、私たちは再三要望したけれども、入ってこなかった、その結果ではないかと思います。ぜひ当事者の代表を入れていただいて、十分な検討をしていただきたいことを要望いたしますが、知事のお考えはいかがでしょうか。たしかに窓口無料化にした場合のデメリットはさまざまありますが、さきほど申し上げましたように、そのデメリットを乗り越えて全国36都府県がすでに窓口無料を実施しておりますので、その意味で非常に長野県が遅れてしまった。あえてこれを質問しましたのは、知事が掲げる基本政策のなかで、教育子育て先進県を実現するとおっしゃっていますので、「先進県」が例えばこの医療費給付問題ひとつとっても、大きく後れを取っている現状がこのままでいいのだろうかと非常に疑問を感じた立場からご質問をさせていただいたところです。もちろん、根本的には知事がおっしゃったように、私たちも、国の制度としてこれはぜひ実現してほしいと思いますので、その意味では国に協力に働きかけていただくという知事の姿勢を非常に心強く思っておりますけれども、ぜひ当事者を加えた検討委員会で検討を、長野県としてどうするのかという検討をしてほしい、それから、国連の条約を、県として徹底を強めてほしい、この点のお答えをお願いしたいと思います。
≪阿部知事≫
まず冒頭先ほどの私の答弁に対して追加的にお尋ねがあった件についてお答え申し上げたいと思います。まず、子どもの権利条約、広く周知していく必要があるんじゃないかということでございます。私もこの条約の趣旨、非常にいい内容ではないかと思っておりますので、具体的にどういう形で周知できるのかということはありますが、少し担当部局と相談して考えていきたいというふうに思います。
それから、子育て世代の代表が福祉医療の議論のなかに入っていないのではないかということで、私も構成メンバーをちゃんと見ているわけではございませんが、一応検討に際しては、意見は聞いているというふうに伺っております。この問題は私自身もいろんなところに転勤するたびに非常に制度がまちまちになってしまっているということで、ご質問の中にもありましたように、お子さんをお持ちの保護者のみなさまがたには非常に目につく制度であるということは事実だろうというふうに思います。ただ基本は先ほど申し上げたように私は、国において対応するべきものというふうに思っていますが、今後県において必要な検討を行う場合にあたりましては、どういう形で当事者を選ぶかというのは難しいところでございますけれども、当事者のご意見が十分に反映できるようにメンバーの構成も含めて考えたいと思います。
<石坂県議>
医療・福祉施策の充実についてお伺いします。
長野県世論調査協会が行なった県民世論調査によれば、阿部新県政に力を入れて欲しい政策は1位が「産業振興と雇用」で49、4%、2位が「高齢者福祉や医療」で48、9%とほぼ並んでいます。少子高齢化の加速により、75歳以上の高齢者の人口が長野県では、15歳未満の子どもの人口よりも多くなりました。今年度予算では100ヶ所を超える特別養護老人ホームなどの整備がされることになったものの、それでもいわゆる待機者は3000人が残されることになります。介護で泣かない長野県にするための施設整備、介護人材育成への支援策をどう考えているか、知事の見解をお伺いします。
先日、「第7次長野県看護職員需要見通し」が報告され、平成23年には、県内の総需要数に対し、729人の看護師不足になるとの厳しい見通しが示されました。全国的にも深刻な医師、看護師をはじめとする人材不足の嵐の中で、長野県の県立5病院は今年から地方独立行政法人として船出をしたわけですが、県立病院の関係者からは、テレビコマーシャルも出し、随時募集も行なうなど、看護師確保に大変ご苦労されているとのお話を伺っています。9月5日には木曽町で「地域医療をともに考えるシンポジウム」が開催され、県の医師確保対策室長からは長野県の医師数が人口10万人あたり196.4人で全国平均の212.9人を下回る全国33番目に位置し、中でも木曽は全国平均の約半分の114.9人に過ぎず、関係者からは、現状では病棟閉鎖も起こりかねない木曽病院の現状も報告されました。病棟勤務看護師は、3交代制に比べて拘束時間が長く、疲労度が増し、集中力が弱まるとされている二交替制を試行実施してきた木曽病院、須坂病院、子ども病院で正式導入に踏み切らざるを得ないともお聞きをしています。県民の皆さんからは、果たして県立病院は大丈夫だろうかと言う心配の声も聞こえてきます。
地方独立行政法人化により、職員の確保が容易になると言うことをお聞きしていたわけですが、県立病院機構における看護師をはじめとする人材確保に向けた取り組みをどのように受け止めているのか、健康福祉部長にお伺いします。
≪阿部知事≫
医療介護関連の施設整備、人材育成の支援策に関するお尋ねでございます。介護保険、制度創設以来10年ということで利用者が2・2倍ということで、制度的には一定程度定着してきたと言える反面、一人暮らしの高齢者、あるいは特別養護老人ホーム入所希望の方々もそれぞれ1・5倍、2・3倍に増加するということで、非常に介護環境、厳しい状況にあるというふうに考えております。このため、しっかり対応していかなればならないわけですが、特別養護老人ホーム、平成23年度末までの第4期高齢者プランの目標である1110ベッドに対して22年度時点で1068ベッドの整備を見込むなど、プランを超える整備も認めながら、しっかりと整備を進めてきたわけであります。高齢者の方々が安心できる居場所を地域に確保し、一人ひとりの状況に応じて選択できる環境を整備することは、セーフティネットの観点からも重要だと考えております。今後、市町村の実情、要望はさまざまございますので、特別養護老人ホームや認知症高齢者グループホーム、宅幼老所などのサービス基盤の充実を積極的に支援して、24年度からの第5期高齢者プランにつなげていきたいと考えております。
それから、人材支援でございます。介護職員数、介護保険制度の施行当初とくらべると倍以上の職員数になっています。国の推計によりますと、平成37年度、今から15年後ですか、さらに倍程度必要になると見込まれています。介護分野、離職者も多いという現状のなかでさらなる人材確保が必要な分野であります。県といたしましては介護人材育成のため、国の経済対策によって基金をつくりまして、働きながらのヘルパー2級取得を支援したり、あるいはキャリアアップのモデルと対応した研修体系の構築などによって、介護分野への就労定着を促進する支援策を行ってきました。また労働環境の改善、特に他産業に比べて低い給与水準、これは現場のみなさんとお話しすると必ずその話が出てくるというのは十分承知しておりますので、そうした処遇の改善ともなる安定した制度の確立を国に対して要望していきたいと考えております。介護職場が魅力ある職場となることが安心して暮らせる社会につながるという視点で、これからも長野県の介護人材育成、積極的に取り組んでまいります。
≪健康福祉部長≫
県立病院機構における人材確保に向けた取り組みについてお尋ねを頂戴いたしました。
地方独立行政法人化によりまして、公務員の定数管理という制約がなくなりましたので、医療サービスの提供に必要な人材確保にむけた採用活動を強化いたしまして、看護師を除くところがちょっと残念でございますが、看護師を除くコメディカルについては人材確保が比較的順調に進んでいると承知してございます。看護師につきましては理事長先頭に県内外の看護師養成機関を訪問いたしましたり、テレビコマーシャルや新聞広告の積極的活用、それから採用専門のホームページの立ち上げなど積極的に取り組んでいるところでございます。議員ご指摘の県内の看護師不足の状況がございまして、看護師の必要人数の確保はなかなか、今現在苦労しているというふうに聞いてございます。こうした状況を踏まえまして、県立病院機構では看護師業務の見直しをすすめ、確保が見込まれる保育士や介護職員など、他の職員で対応が可能な業務については役割分担をしていただくなど、病院全体で医療サービスの水準を維持できるよう取り組みも実施しているというふうに承知してございます。いずれにいたしましても県立病院機構が発足して半年でございますけれども、中期目標が指示した医療サービスの提供には人材確保がなによりも大切であると考えてございますので、今後機構が中期計画や年度計画を実施していくうえで人材確保についての的確な取り組みがなされますよう注視してまいる所存です。
<石坂県議>
さて、かつては全国トップクラスだった県内の有効求人倍率は、上向いたと言うものの0.62と依然低い水準にあり、非正規雇用労働者の雇い止めは1万人を超えて、愛知、東京についで全国3番目であり、内製造業が96%を占めています。昨年の県内企業の倒産は前年比2割増の226件、負債総額は880億円で過去3番目、生活保護世帯は7562世帯で保護率4.6‰で97年度比で2倍、一人当たりの県民所得はこの10年間に30万円から40万円減少するなど県民の暮らしと雇用はかつてなく深刻な事態です。
県の「新卒未就職者等人材育成事業」は、3月末時点の未就職高卒者数117人を上回る153人の求人を生み出し、51人が採用されるなど、一定の雇用を生み出しました。しかし、育成事業はあくまで緊急措置であり、足元では産業の空洞化も進行しています。長野経済研究所の県内製造業調査では、海外に工場などを持つ企業に5年後の見通しを聞くと、3割の企業が県内の雇用を「減らす」と答えています。
閉塞感の漂う現状の打開のためにも、知事提案の「信州経済戦略会議」の設置にも期待するものですが、その具体像はどんなものでしょうか。雇用の確保と地域経済の活性化、中小零細企業への支援策、中小企業振興条例についての知事の見解をお伺いします。
≪阿部知事≫
地域経済の活性化に対するお尋ねでございます。中長期的な観点では、経済戦略会議をつくって議論していきたいと思っております。私ども行政側と経済関係者、広く農業林業の将来も含めて議論する場にしていきたいと思いますが、諮問して答申を頂くということではなく、もっと機動的な会議にならないかと考えております。中小企業に対しましては、事業所数で長野県全体の99%、従業者数で全体の84%を占めているということで地域経済のいわば主役ともいえる存在だと考えております。この中小企業の活力が地域経済の活性化、それから雇用の創出、確保ということをもたらすと考えております。特に小規模の事業所にありましては資金、人材、経営資源の確保が難しいという課題も抱えていると認識しております。こうした観点から技術開発、受発注取引、販路開拓のほか、制度資金、経営指導などさまざまな観点から中小企業の支援策を講じてきております。これからもさらにこうした取り組みを進めて、中小企業の振興を図ってまいります。中小企業振興条例につきましては現在15道府県を含む多くの自治体で同様の趣旨の条例が制定されてきております。地域社会において中小企業が担っている役割、あるいは、支援にあたっての基本的な考え方を示した条例でございます。私も中小企業の役割ということからぜひこういう条例が必要だろうとかんがえておりますので、具体的な内容、効果等を含めて、今後調査研究して、条例化にむけて取り組んでまいりたいと考えております。
<石坂県議>
知事の答弁でもありましたけれども、全国各地で中小企業振興条例の制定や、地域おこしの取り組みが始まっています。そこで、例えば、地方事務所単位に、「信州経済戦略会議」の地域部会的な性格のものを作って、事業者、行政、教育関係者、学識経験者、住民が同じテーブルで知恵を出し合う議論を深め、地域力を生かした仕事おこし、雇用の確保、市場や販路の開拓を一体に進める取り組みなどはいかがでしょうか、提案させていただきます。知事のご見解をお伺いします。
≪阿部知事≫
経済戦力会議の地域版というご提案がありました。これはまず経済戦略会議をどうするかというところを立ち上げてから地域ごとの必要性を考えたいと思いますが、現在市町村でも経済の問題取り組んでいる自治体もあると思いますので、そうしたところとのかねあいも整理しながら考えなければならないと思います。
<石坂県議>
農業支援策についてお伺いします。
長野県の農家戸数は12万6800戸で全国1位、野菜、花卉、果樹などは全国有数の産地で、「園芸王国長野」を誇ってきました。しかし、農業従事者の77%は60歳以上、耕地面積は1ヘクタール未満が83.6%、農家1戸あたり約90アールで全国33位、耕作放棄地率は17.5%を超え、一人当たり生産農業所得は全国41位となっています。県の農業産出額は2008年で全国11位の2714億円、ピークだった91年の66%に落ち込んでいます。全国平均は78.5%ですから、長野県の落ち込みが目立っています。2009年はさらに2625億円と89億円も落ち込んでいます。いまや、りんご農家は「時給350円」とも言われ、米価の暴落も深刻です。安心・安全の取り組みや原産地呼称管理制度をはじめ、努力は見られるものの深刻な事態を打開できていません。長野県農業への強力な支援策を是非とも検討していただきたいと思います。
県が緊急雇用対策事業で実施した失業者対象の農業研修事業は、私も何人かの皆さんからのお問い合わせを受けましたが、早期に予算の枠が終わってしまうほど好評だったとお聞きしています。雇用情勢の厳しさが続くなかで、また、担い手確保のためにも、この事業を県の事業として確立できないかと考えますが、いかがでしょうか。
そして、なんとしても検討をお願いしたいのは、農業予算の抜本的な増額です。2000年に県の予算の7%を占めていた長野県の農政予算は、残念ながら毎年確実に減り続け、今年は、なんと県の予算の中で3%となってしまいました。しかも2000年当時の長野県の予算は1兆円規模、今年度は8600億円規模ですから、金額でも2000年度の農政予算が709億円であったのに対して今年度は258億円と言う激減ぶりです。もちろん、予算の価値は、その金額だけで評価できるものではないとしても、農業県長野のこの現実は、あまりにも厳しく寂しい限りです。食糧自給率の向上、主な農産物の価格保障や再生産可能な所得補償、担い手の育成等をはじめとする多面的な角度からの検討で、是非とも長野県らしい元気の出る農業予算を編成していただきたいものです。知事の見解をお伺いします。
今年は全国的に生産者米価の暴落が大問題になっています。農業生産者団体がまとめた今年の米価の概算額の平均は1俵60キロ9,688円、前年比16%、2,287円の落ち込み。長野県では1俵10,000円前後で、前年比1,800円の落ち込みと試算されています。さらに、今年は猛暑の影響で、米どころ新潟のコシヒカリも、例年7〜8割の1等米が今年は16%程度で、実際はもっと安くなるとも予想されています。
そもそも、ここまで米価が暴落した要因は、自民党政府時代に米の流通を完全に自由化して市場任せにし、市場に米が過剰に出回って価格が下がり続けていること、政府が備蓄米の買い入れなど米価安定のための必要な対策を講じてこなかったことにもあります。
政府は、「米の戸別所得補償事業で対応できる」と言う姿勢ですが、満額補償しても1俵1万3,000円程度で、全国平均の生産費1万6,500円にも満たない状況です。長野県のような中山間地、小規模農業の多い条件不利地では、さらに厳しい事態です。農家からは、「米を作って米が食えない」「今年の生産資材の支払いもできない」「このままでは年が越せない」などと悲鳴のような声もあがっています。
このような事態の中で、米の需給や流通の安定に政府が責任を果たすよう県からも強く求めていただきたいと思います。JA全中の試算によれば、現段階で価格対策のために過剰米40万トン買い入れにかかる予算は約850億円、米価が昨年より2,000円以上下落したまま、戸別所得補償制度で補填した場合は2000億円から3000億円とされています。国に対し、過剰米の買い入れなどの対策を早期に講ずるよう求めることをはじめ、阿部知事には、県としても、米価暴落対策を国に働きかけていただきたいと思いますがいかがでしょうか。
≪阿部知事≫
緊急雇用対策での農業研修事業に関してのお尋ねがございました。現在国の緊急雇用創出基金を使って新規就農住美研修事業を実施しております。現在99の農業経営体で129人が働きながら研修を実施しているという状況でございます。私としては今この状況をしっかり検証して、今後の在り方を考えていくことが必要だと考えております。したがって現時点で県単の制度として同様な制度を考えてはおりませんが、就農支援、重要な視点だと思いますので雇用対策という観点からだけではなくて、もう少し広い観点から取り組みの在り方を考えてまいりたいと考えております。
それから農業予算の増額についてお尋ねでございます。さきほど石坂議員のほうからお話ありましたように、これまでの農政部予算のなかでは、圃場整備あるいは農道農業集落排水施設、農産物集出荷施設など、農業生産基盤を新たに整備するハード事業のウエイトが比較的高く推移してきました。県予算に占める割合も高かったわけですが、近年は予算総額減少のなかで、新規投資が少なくなっているということもあって、減少してきております。現在の農業予算のうち、特に農業、水利施設の多くが、改修更新時期を迎えておりますので、農業生産を確保するために、最低限の経費は厳しい財政状況でございますが、なんとか確保できないかと、そのために努力していきたいと考えております。私は元気な農業の発展のために限られた予算のなか長野県としての創意工夫を凝らしながら、しっかりと予算措置を講じていきたいと思いますし、その一方で予算、財政全体、それから農業予算についても国の取り組みの影響が非常に大きいわけでありますので、地方財源、あるいは農業予算の確保について国に対して要請をしてまいりたいと考えております。
次に米価の暴落防止対策ということでございます。最近の米価の下落は著しい状況でございまして、対策が必要な状況であります。下落の要因、在庫量の増加、あるいは22年産米の作柄予測、新しく所得補償制度等が導入されてきていると、様々な要因があると言われております。米政策が従来の需給調整と価格対策から需給調整と所得補償に転換される時期でもございます。政府の買い上げによる価格対策を行うことにつきましては、私は慎重な検討が必要だと考えております。国に対しましては、業者に過剰な先安観を持たせない正確な情報の早期提供や所得補償の交付金を前提とした価格の引き下げを防止する対策を求めてまいりたいと考えております。
<石坂県議>
いずれにしても本当に元気の出る再生産可能な長野県農業のために、頑張っていただくことをお願いしたいと思います。そこで、これはご紹介ということになるんですが、今、農業分野の新しい可能性として、マスコミ報道によりますと、高齢化と担い手不足に悩む農家の側と、不況の中で就労先確保に悩む障害者の支援に自治体が乗り出し、農業の現場で知的障害者や精神障害者を雇用する動きが全国各地で広がっています。
鳥取県では、今年度から、繁忙期の農家に障害者を派遣する「農福連携事業」を始めました。県内3ヶ所にマッチングセンターを置き、農家と障害者の双方の希望を基に紹介する仕組みで、7月末までに97人の方が22件の農作業に携わったとされています。
岡山県では、昨年度、農水省中国四国農政局が、農家に障害者を紹介する組織を立ち上げています。山形県でも、農作業に障害者を派遣する「農業応援作戦」が取り組まれています。取り組まれているそれぞれの現場では、課題はまだ多く残されているものの、「農作業は楽しく、作業のリズムが障害者に合っている」「飲み込みの速さは健常者と変わらず、大変なのにまじめにやってくれる障害者のひたむきな姿勢がまわりにも良い影響を与えている」と、農家、障害者の双方から大変好評のようです。長野県でも、個別の取り組みはありますが、新しい可能性に県としてもいっそうの関心と支援を検討していただきたいと思います。
≪阿部知事≫
農業に障害者のみなさま方の雇用の場としての活用の余地があるのではないかという点については、要望として受けたまわって今後検討してまいりたいと思います。
<石坂県議>
次に信州型事業仕分けについてお伺いします。知事の公約である信州型事業仕分けについて何人もの方からご質問がありました。事業仕分けについては、世論調査でも約8割の県民が「積極的に進めるべきだ」と期待が高くなっていますが、これは、県政の現状を変えて欲しい、無駄をなくして欲しいという県民の思いの表れとも見ることができます。
知事ご自身が行政刷新会議の事務局次長として、民主党政権のもとで行なわれてきた事業仕分けが、莫大な軍事費や政党助成金をはじめとする本当の無駄遣いのおおもとには切り込まず、ハード事業への支援は見直すべきと、深刻な鳥獣被害対策の防護柵予算を7割も削ったり、条件の困難な地方への支援であるべき地域公共交通再生交付金を、何の財源保障も無く半減させるなど、手放しで歓迎できるものではないだけに、知事の主張する「信州型」の部分に期待するものです。実は、昨日の倉田議員とのやり取り、それから午前中の宮本議員とのやりとりもお聞きしておりましたが、私はかえってわからなくなってきてしまいました。「信州型事業仕分け」の「信州型」の特徴について、改めて、国との違いを含め、わかりやすく具体的にご説明いただきたいと思います。「事業仕分けは手段であって目的ではない」との答弁でしたが、それでは信州型事業仕分けの目的は何でしょうか。県民参加の開かれた場での議論で、対象事業は県民からの提案も含め、国との役割分担や事業の必要性を精査するとのことですが、仕分け人に一定のルールでの共通認識がなければ、議論そのものがスタートできないのではないでしょうか。
また、提案説明では、「本年度中の実施を目指して、準備を進めてまいります」とのことでしたので、私は、来年度予算編成に反映できるように実施することと理解いたしましたが、昨日のご答弁では、予算編成とは必ずしも連動しないとのことですので、そうなると、今年度中に実施する事業仕分けは、当面、何を目的に、どんな種類の事業を対象に、どんなメンバーで、いつまでに仕分け作業を行うということになるのでしょうか。実際の仕分け作業の開始はいつ頃になるのでしょうか。
<石坂県議> 続いて浅川ダムの建設についてお伺いします。
知事は、既に、浅川ダムの建設に反対する住民、賛成する住民双方の意見を聞く機会を持ち、来年度予算編成までに知事が納得する結論を出し、説明責任を果たすと表明しています。既にダムサイトでは本体周辺掘削工事が始まっていますが、その現状を承知のうえで、多くの県民は、この事業に今なお納得しておらず、阿部県政に望む世論調査でも、「一時中断して再検証すべき」が43.1%、「工事を中止すべきだ」が18.3%で、中止や再検証を求める声は6割を超えています。「本体工事を進めるべきだ」は26.7%です。
来年度予算編成までに知事が結論を出す間、工事はいったん止めておくのが民主主義の原則ではないでしょうか。既成事実を進行させて、後戻りができなくなる事態をつくるのは、「しがらみのない県政」に逆行すると思いますが、いかがでしょうか。
同時に、浅川ダムの建設については、河川法上の一応の手続きは全て踏んでいるものの、巧妙で重大な民主主義の欠落があります。8月27日付「朝日新聞」で紹介されているように、ダム建設賛成の立場の流域協議会副座長の関茂男さんさえ、浅川ダムを穴あきダムとして建設する結論が流域協議会の意見も聞かずに決定された不透明な決定過程に疑問を投げかけています。
また、治水・利水ダム等検討委員会および浅川部会の報告では、「今後浅川にダム等の構造物をつくる場合には、安全性の充分な調査、検証をする」ことが全会一致の確認事項であるにもかかわらず、穴あきダム建設の決定にあたっては、従来の調査の確認をしたに過ぎず、新たな調査、検証は行なわれていません。
以上の経過から、私は阿部知事には、知事が結論を出すにあたっての重要な判断材料として、浅川ダムの安全性について、納得のいく検証を行なっていただきたいと考えます。
一つは、新たに国土交通省の有識者会議が計画中の84ダム事業について検証するためにまとめた検証基準案です。国交省は「できるだけダムに頼らない治水」への政策転換を決めており、新基準はこれを進める第一歩として、ダムに頼らない治水事業とダムを建設した場合の維持管理費を含めたコストの比較をするものです。
浅川ダムは堤体のコンクリート体積1?あたりに貯水する水の量はわずか8?です。浅川ダムの総貯水容量は110万?ですが、全国の総貯水量100万トンから120万?の浅川ダムと同水準の重力式コンクリートダム25のうちコンクリート1立方メートル当たりの貯水量で、浅川ダムは悪い方から2番目です。地すべりの対策の追加でさらにたくさんのコンクリートを使うことも予想されます。
コンクリートはたくさん使うけれど貯水効果はあまりないという傾向が顕著になってきているなかで、国土交通省がコストの比較を新基準に入れたことは厳しい財政状況から見れば当然のことです。
さらに最近大きくクローズアップされている深層崩壊の問題があります。過日国土交通省が発表した「深層崩壊」の危険性を表すマップでは、長野県は県土の約半分、全国一危険性が高く、長野市も西南側一帯が「危険性が高い地域」となっています。
先日のNHKスペシャル「深層崩壊が日本を襲う」では、昨年の台湾のある村で起きた、村が全滅した災害が報道されました。地球温暖化の影響による猛烈な豪雨によって、山が深いところから一挙に崩れていくという「深層崩壊」の実態が生々しく報道されました。このような災害は人ごとではなく、すでに日本各地で起きていました。この番組では深層崩壊を起こす可能性のある山の地形について、「岩盤クリープ」の存在が指摘されていました。
実は、吉村知事時代に設置された「浅川ダム地滑り等技術検討委員会」で、最後まで議論になっていたことの一つが浅川ダムサイト下流両岸に確認されていた線状凹地やゆるみゾーンをどう解釈するのかという問題でした。当時委員会のメンバーだった奥西一夫京大教授(当時)は「岩盤クリープ」の可能性を指摘し、詳細な調査を要求しましたが、多数の意見で却下されました。今あらためて大災害を引き起こす深層崩壊が世界的にも注目され、国土交通省も危険性を推定するマップまで発表し、注意喚起を促している中で、あらためてこの角度からの再検証は浅川流域に暮らす市民の切実な願いです。地附山地すべり災害を目の前で見てきた流域住民には、ダムの安全性への懸念が募るばかりです。
深層崩壊を含む安全性の検証についてどうするのか、ぜひ行って頂きたいと思いますが、知事の見解を伺います。
≪阿部知事≫
事業仕分けについてお尋ねがございました。信州型事業仕分けの特色ということですが、なかなか説明が分からなくなってしまったというお話もありましたが、事業仕分け、これは何度も繰り返し申し上げておりますけども、自治体が行っている行政サービスを現場に通じた外部の人に入って頂いて、公開の場で、事務事業レベルで作成した事業シートに基づいて、そもそも必要なのか、必要だとすれば誰がやるのか議論して、担当職員が説明して、仕分け人との間で議論をして、最終的に、基本的なパターンとしては不要であるとか、民間であるとか、国、市町村、県がやるとした場合には要改善、あるいは現行通り、そういう形で当該事業について仕分けていくのが事業仕分けでございます。長野県、信州型として考えておりますのは、これは昨日もお答え申し上げましたけれども、昨年の国の事業仕分けは予算編成プロセスのなかでおこなったわけでありますが、長野県の場合は、これから予算編成の一環ということではなくて、事業を考える一貫として行っていくということで、予算削減自体が目的ではないと。それから市町村や県民の皆様方から対象事業について提案募集していきたいと。それから長野県広いわけですので、長野県庁だけ、長野市だけではなくて各地で開催をいたしたいと。さらには仕分け人には、公募の県民のほか、市町村のご協力が得られれば市町村の関係者も参加してもらいたいと、さらには、事務事業評価制度の成果を活用していきたいと考えております。議会等への報告、市町村など関係機関への調整というような、仕分け結果が出たときにはしっかりとやってまいりたいと思いますし、仕分けの結果は国への要望、あるいはものによっては予算を編成するときの議論に活用していきたいと考えております。そういう意味で長野県としての特色をもった事業仕分けを行ってまいりたいと思っております。仕分けの時期についてお尋ねでございましたけれども、これは来年度予算編成に間に合うように実施したいと。予算編成プロセスとして行わないというのと予算に反映する、しないというのは別の話でありまして、予算編成プロセスで行うというのはすべて予算を編成するために行うということでありますけれども、必ずしも制度的な問題点等につきましては予算に関係しないものもありますし、私はそういうものも含めて事業仕分けの対象にしていきたいと思います。しかしながら今回、予算編成に間に合うようにしたいというのは、仕分けの結果当然予算に関連してくるものも出てくると思っておりますので、その場合には適切に予算に反映できるように予算編成に間に合うような時期に実施していきたいということでございます。
次に浅川ダムの問題についてのお尋ねでございます。浅川ダム工事については一時中断すべきではないかというお尋ねでございます。この浅川の治水問題については長い年月をかけて議論されてきたわけでありますし、浅川ダムの本体工事契約については、今年の2月議会において県議会の議決がなされて着工がされているという状況であります。そういう現状に対しまして中断するということになりますと、いくつかの点で追加的な費用が発生してくる可能性があるわけでありまして、現時点でそこまでの費用を発生させて中断するという判断は、私はしておりません。現在庁内で副知事を中心として実務的な論点確認作業を行っているところでございますので、この作業結果を踏まえてできるだけ早い時期に判断をして説明責任を果たしてまいりたいと考えております。
それから浅川ダムの安全性の検証ということでございます。浅川ダムの計画にあたりましては、深層崩壊といった現象という可能性も含めて調査を行って、浅川ダム地すべり等検討委員会で安全性を確認してきていると私は聞いております。一方で安全性について、先般も流域の住民の皆様方と意見交換しましたが、安全性について不安を感じているという意見が現時点でもあるということも事実だと思っております。こうした地すべり等に関する安全性の検討も含めて論点再確認作業のなかで確認を行って参りたいと考えております。そのうえで結論をだしてまいります。
<石坂県議>
改めて信州型事業仕分けについていくつか確認をさせていただきたいのですが、仕分けのメンバーは現場に通じた外部の方と公募の県民などというお話です。その点で私は懸念があります。と言いますのも、もともとこの事業仕分けを主張し始めた「構想日本」が、すでに全国のいくつかの自治体で実施した事業仕分けの結果があまり良くないからです。非常に危険なものも感じています。自治体の事業は、必ずしもコストや効率だけでその優先順位を決めることができないものも多いわけです。事業化されていく過程で、住民の切実な要望や生活実態を反映して事業化してきたそれぞれの事業の背景にある歴史があります。「しがらみがない」の一言で、その事業にこめられた住民の切実な願いや歴史が、ばっさりと切り捨てられたり、無視されて、効率のみが優先された各地の恐ろしい事例も「構想日本」の行なった事業仕分けの傷跡として今なお残っています。仮に、「信州型事業仕分け」が、そのようなものであるならば、県民の皆さんの理解は到底得られないでしょう。利害関係者を入れないということも含めまして、その点実は非常に難しい問題にもなっていくわけですので、メンバーの選定の考え方について、何を目的にどういう仕分けの仕方をしていくのかということについて、今のこの懸念も含めて再度お考えは確認をしておきたい、お聞きをしておきたいと思います。
それから、予算編成の一環としてやるんではないということはよくわかりました。仕分けの結果、予算編成に生かすものがあれば生かしていくということですので、それはぜひそのようにお願いをしたいし、せっかく仕分けをするわけですから、行った場合には施策や予算に反映していただくというふうになると思うんですけれども、そういうことになりますと、仕分けの対象をだれが決めるのか、いつ決めるのか、仕分けのメンバーが決まってからその人たちが議論して決めるのか、それとも最初に対象事業が決まっていてそのことにたいして公募して仕分け人が決まるのか。ここのところも非常に重要になってくるように思います。どちらでも可能だよというのならそれでもいいんですけれども、その辺の関係についても知事のお考えを確認をしておきたい、お聞きをしたいと思います。そして、そういうことになりますと、もし行う場合には、やはり誰もが納得している問題のない事業は仕分ける必要がないわけですから対象にならない、逆に多くの人が納得しない事業は当然仕分けの対象になっていくと考えてよいのでしょうか、その辺についてお答えを頂きたいと思います。
≪阿部知事≫
事業仕分けについて、メンバー、対象事業についてのお尋ねでございます。
構想日本、いろんな自治体で事業仕分け行ってきておりますが、私も事業仕分け、構想日本と一体というか、自治体の事業仕分けです、仕分け人として参加したことは何回かあります。ご懸念の点は、地域の実情が分からないままに結論がなされてしまうんではないかということでありますけれども、基本的にそういうご懸念がないような人選をしていきたいと、先ほど来も申し上げておりますように、公募の県民を入れていきたいと考えておりますし、事業仕分けの結果については私自身が責任をもって仕分けを実施していくわけでありますから、仮に長野県の実態にあわないと、そのことが対外的に、県民に対しても合理的な説明ができるということであれば仕分け結果を覆すということも場合によっては有り得ると思います。そういう意味でご懸念のような点はないというふうに考えております。対象事業をどう決めるかということについてはいろいろな考え方ございますけれども、現在わたくしども考えておりますのは、必ずしも予算に関わらない、国と地方の関係の役割分担の在り方で議論があるような分野でありますとか、あるいはこれまでの政策評価のなかで有効性等について問題点が指摘されているようなものを中心に選んでいきたいと考えております。最終的には、事業を実施するわたくしどもが責任を持って決めていくということになるわけですけれども、そうした事業の選定、あるいはメンバーの在り方等について、さらに詳細を固めてうえで対応してまいりたいと考えております。
<石坂県議>
信州型事業仕分けについては県民の皆さんの期待は大きく、そして知事の目玉公約の1つでもありますので、やはりルールをよく理解して実行されなければならないという点で、今さまざまお答えいただきましたけど、例えばそれを明文化したものとか、そういうルールを職員のみなさんと改めて練ったうえで近々私たちを含めて県民に提示していただくということになるのでしょうか。当然といえば当然かもしれませんけれども、確認をさせていただきたい。さきほど対象事業については最終的に知事の判断、また県民からの提案も受けるということなんですけれども、その性格として、多くの人が納得しないものは当然仕分けの対象になりますねと、そのへんはどうでしょう。
≪阿部知事≫
まず今、明文化して提示していくのかということでございますが、これは議会の皆様方、市町村の皆様方にはしっかりとご理解を頂いたうえで進めていきたいと思いますので、その方向でしっかりと対応してまいります。それから多くの県民がおかしいと思っている事業は対象にするのかということでありますけれども、これは程度の問題とかもあるわけでありますけれども、具体的に何事業対象にするか、そのなかで仕分けの対象として優先順位の高いものから切っていきますので、基本的に疑義が多くの方から呈されているものは対象にしていきたいと思いますけれども、具体的にはその時点の判断ということにさせていただきたいと思います。
<石坂県議>
ご説明をいただくたびに分かったり分からなかったりするのですが、ぜひ理解して長野県政の改革に役立つものであってほしいという立場でお聞きをしておりますのでご理解をいただきたいと思います。私はその点で、新しい知事になりまして県政が閉塞感を打ち破って変わってほしいなあと、こういう期待があるなかでの事業仕分けであってほしいと思うんです。そういう点で言いますと、一度始めたことだからやめることはできないとかそういうことではなくて、やめるべきものは引き返すこともできる、やめることもできる、見直すこともできるというために本来仕分けはあると、多くの県民の皆さんもそう理解をしていると思います。
そこであえてお伺いをしたいと思います。浅川ダムの問題ですけれども、知事ご自身も来年度予算に間に合うように、知事自身が納得のいく結論を出して説明責任を果たすとおっしゃっております。そうしますと来年度予算までに間に合うように結論出すにあたり、浅川ダムにつきましては、あえて申し上げたいんですが、どの時期に、どのマスコミや組織が行なう世論調査でも、これは事実として、ダム建設に賛成したり評価する意見よりも、ダム反対や評価しない意見が大きく上回っています。
○昨年10月の長野市長選挙を前に長野市民を対象にした信毎の世論調査では、見直すべき 62%、見直さなくて良い 23%
○年が明け、今年4月 村井県政を評価するにあたって行った県世論調査協会の県民世論調査では、浅川ダム建設を評価しない 58.3%、評価する 24.8%
○今年8月3日 知事選を前に、県世論調査協会が行った県民世論調査で、浅川ダム建設を評価しない 52.1%、評価する 26.1%
○知事選挙が終わり、阿部県政へのさまざまな希望調査を行った今年8月末の県世論調査協会の世論調査結果では、浅川ダム工事は一時中断して再検証すべきだ 43.1%、 工事を中止すべきだ 18.3%、本体工事を進めるべきだ 26.7%、こうなっています。
いくつかの去年から今年だけの世論調査だけご紹介したんですが、これは民放番組が流域住民に行った調査では、もっと、8割くらいの方がやめるべき、見直すべきと答えています。多くの県民が今なお、工事が始まっても納得していない浅川ダムの建設について、知事ご自身が来年の予算編成までに結論を出すとおっしゃっているのですから、県民参加の開かれた場所で、信州型事業仕分けの対象とするべきではないでしょうか。
あわせて、知事がさきほど、賛成反対の両方の意見を聞き、現時点ではどちらの立場にもたつことなく判断をしていきたいとおっしゃっています。であるならば、工事が進めば進むほど、これは工事を進めることに有利になることは明らかですから、手戻りが大きくなることは誰にでもわかります。だから今、やめるんじゃなくて中断、お休み、それは民主主義の最低限の原則だと思いますけどいかがですかとお聞きしましたけれども、それはさまざまなコストの問題でできないというふうにおっしゃいました。どんなコストが、今ここでやめればかかるというふうに知事はお考えなのか、それはいくらくらいなのか、あわせてお伺いをしたいと思います。
≪阿部知事≫
まず浅川ダムについて仕分けの対象にするかということでございますけれども、基本的に個々の公共事業については公共事業再評価のプロセスでの見直しをしております。事業仕分けは、基本的に現在進行中の事業というよりは、むしろ、結果が出た決算ベースでやるということが本来は基本的な考え方であると私は考えておりますので、そうした観点で、仕分けの対象になじまないと思っています。今現在、この浅川ダムの問題は、政治的なプロセスとしては、一定の方向性、一定の結論は出ているというわけでございますが、しかしながら住民の中には賛否両論あるということで、私は選挙中から申し上げておりますように、この浅川ダムの問題は、広く行政に対する信頼度の問題でもあると思っております。そうした意味で、住民の議論ということではなくまず私がどう考えるかということをしっかりとお示しをしたうえで、必要があれば議会の皆様方ともしっかりと話し合いをしていくと、そういう課題であると考えております。
中断をしてはどうかということのコストでありますけれども、石坂議員もご覧になっているように今さまざまな工事を進めているところでございます。掘削途中で中断するということになりますと、斜面崩落対策など現場の安全対策、今のまま何もせずにいるというわけにはいかなくなります。また現場詰め所等の借地料などの維持費用、あるいは今現在従事いただいている労務所の配置転換等に要する費用、そうした費用がかかってくるというふうに考えております。現時点で詳細な金額については算定しておりませんけども、いずれにしても一定の税負担が必要になってくるという状況でございます。
<石坂県議>
信州型仕分けがまた分からなくなったんですけれど、進行中の事業は対象にしないということになれば、どんなにムダと分かっても、どんなに県民の支持がなくなっても、始まったものはもう仕分けない、これからやることだけ対象というのでは、県民の抱いている事業仕分けの抱いている事業仕分けのイメージからもかなり違うものになってくるんじゃないかと、私はそこが分からなくなりました。進行中のものであったとしても納得のいかない事業、改めるべき事業は信州型仕分けの対象にむしろするべきじゃないかと。県民の皆さんが期待している、しがらみのない県政といわれる中身、ムダをなくしたり予算編成を県民に開かれる場所にしながら、納得のいくものに、役立つものであってほしいという立場でお聞きしてきたわけですが、もう始まった事業ではだめよというのでは、何のための仕分けと、改めて大きな疑問がわいてきました。進行中の事業はいっさい対象にしないというお考えで、本当に知事のおっしゃっている、開かれた議論で納得のいく県政に役立つ仕分けになるのでしょうか。私は到底そう思えませんが、その点についてお答えを頂きたいと思います。
それから、今中断した場合のコストの問題ですけれども、それは民主主義のコストですよね。たしかに周辺掘削が今年度中に終わるという事態で削られておりますので、途中で中断すればそれが崩れてこないようにしなければならない、それはもう素人でもわかることです。そのコストを民主主義のコストとして払っても、例えば深層崩壊、地附き山地すべり災害のお話をしましたけれども、そういう今なお安全に不安を抱えている住民が、仮にあの地すべり地帯に際限無い地すべり対策のコンクリートを打ち込んで、将来使い物になるかならないか分からないダムにコンクリートとお金をかけつづけていく、それだけならよいけれども、大きな予想しない被害が起こったらどうするだろう、地震が起こったらどうするだろう、こう思っているときに、結果責任を果たすということの中身は、それでは、安全性を含めて将来の結果責任も負っていただくということでしょうか。結果責任を負っていただくという意味の説明責任なんでしょうか。その2点について。進行中の事業を仕分けしないのはおかしいという私の意見について知事はどう思われるのか、そして納得のいく結論を知事自身が出して説明責任は果たすといっている浅川ダムに必要な民主主義コストと手立てをどちらの立場にも立たずやってほしいと言っていることが駄目ってことですから、それでは説明責任を果たすその延長線上には結果責任も負っていただけるんですね、ということについてお答えいただきたいと思います。
≪阿部知事≫
まず事業仕分けの方でございますけれども、進行中の事業というのは一連の継続的な公共事業ということで、例えばさきほどの福祉医療みたいな毎年毎年やっている事業は当然仕分けの対象になじむと思っています。ただ個別の公共事業の、なおかつ、公共事業評価監視制度があるなかで、個別の継続中の公共事業について仕分けの対象にするということは、私はなじまないと考えております。従いまして浅川ダムだけを別に対象にしないといっているわけではなくて、同様の事業についても私は対象にしないと考えております。
それから、コストは民主主義のコストではないかということでありますけれども、私は年度途中で知事に就任したわけでありまして、私自身、自分自身納得のいく結論を導き出したいというふうに説明しているわけであります。私自身の結論はどういう結論になるのかというのはまだこれからでありますけれども、当然そのあとの判断としては、民主主義のコストといわれるものが場合によったら必要になってくる場合もあるというふうに考えておりますけれども、現時点では私はまだその判断には立ちいたっていないということであります。私自身できるだけ早く結論を出して、しっかりと説明責任を果たしていきたいと考えております。
<石坂県議>
あえて浅川ダムの問題でたまたまお伺いをいたしましたが、私は無駄をなくしなり、納得できないことを納得のいく形で県民と開かれた議論をしながら、県政を改革していくための手段としての、信州型事業仕分けであるならば、浅川ダムをどうするかは個別に判断していただければいいんですけれども、たとえ進行中の個別の公共事業であっても対象にすべきときはすべきと考えます。
国の事業仕分けを私は歓迎していないんですけれども、でも国は、ハードは基本的に切るという立場で、主要地方道という名の国道を国がやることないでしょうということで進捗中のものもいくつも切りましたよね。そういう情け容赦ない事業であってほしくないわけですが、ただ、本当に進行中のものでもまずいと思ったものはその時点で止める、そういう事業仕分けであってほしいということを要望しておきたいと思います。
浅川ダムの問題でもう少しお伺いしたいことがあります。先ほど工事を一時中断していただくことと、今まで一応の手続きは踏んでいる形はとっているけれども実は手抜きがあるっていうことの中で、安全性の調査は文献確認くらいで、新しい調査は一切、もう数年間やっていないということについて、知事の判断材料の重要な部分を構成するものとして最低限の安全調査をやってほしいとお願いしたわけですが、はっきりやりましょうというお答えではなかったと思います。しかし、先ほどお話ししましたように吉村知事時代の地すべり等技術検討委員会で、却下されたとはいうものの、奥西先生が当時の地すべり等技術検討委員会で川上委員長に意見書を、岩盤クリープの危険性の問題で出していますし、その後も、信州大学の小坂共栄先生も繰り返しこういう意見書を出して、心ある学者が何度もその危険性の問題について安全性をきちんと検証する調査を求めていたことが、一切採用されずここまで来ているんです。阿部知事になったにも関わらず、またそこに蓋をして、今までの調査だけを鵜呑みにして判断するというのであると、大変県民は失望する、私は少なくとも大変がっかりしてしまいます。なぜできないんですか、安全性の、今わかる最新の国土交通省の方針などにも示されている基準とか、深層崩壊の危険性、国が危険マップも出しているんですから、そういうことに対して住民の不安にこたえる調査、それはやりましょうと、判断材料にしましょうというふうにぜひ阿部知事には頑張っていただきたいと思っているんですけれども、その辺の見解についてお伺いしたいと思います。
≪阿部知事≫
安全性の再検証したらどうかということでございますけれども、私自身、先ほど申し上げているように、そのこと自体を現時点で排除しているつもりはありません。これまでの検討を再確認したうえで、仮に今までのプロセスに問題があるとかあるいは安全性の確認が十分じゃないんじゃないかということがあれば、当然そういうプロセスを踏むことも考えなければいけないというふうに思いますが、まずはその前の確認作業をしているという状況でございます。
<石坂県議>
確認作業をやっていただければ、普通にしていただければお分かり頂けることですけれども、この浅川ダムについてはダムサイトを決めるのに二転三転した当時に行った横抗調査やボーリング調査の後はほとんど、調査らしい調査はされていないんですよね。もう数十年が過ぎています。そういう状態の中で、住民がこれだけ不安を指摘しているわけで、地すべり対策だけでもかなりのお金がかかることが明らかなダムですし、全国的には、今の技術は地すべり地でも安全なダムが造れると、住民の声や心ある専門家の声を押し切って造られた国直轄のダムなどが結局大丈夫ではなくて、次々に試験湛水後時すべりを起こして、新たな地すべり対策を追加して、当初予算の何十倍というようなムダな税金を使っているわけですから、そういう事実を私たちは何度も提起しているわけですから、阿部知事におきましては、やらないと言っているわけではないということで安心しましたけれども、ただ、来年度予算までに結論を出すということになりますと、時間が極めて限られているわけでありますので、ぜひ積極的に確認検討していただきまして、ぜひとも安全性の調査は最低限行っていただくことを強く要望しておきたいと思います。
<石坂県議>
県は、来年4月から県と全市町村の参加で構成する広域連合で、地方税の徴収共同化事業を開始する準備を進めています。県と市町村の共同事業で、負担金、職員を出し合い、当面、年間1000件を目標に滞納困難者の解決にあたるとされています。もちろん、厳しい財政状況にあるだけに、「支払能力があるのに払わない」一部悪質滞納者の解決や、滞納整理の努力で税収を確保することは重要なことです。
しかし、その一方で、地方税等の滞納が増えている背景の一つに、厳しい経済・雇用情勢の中での失業、倒産、非正規雇用労働者やワーキング・プアの拡大に合わせ、平成17年度の配偶者特別控除の廃止、平成18年度の老年者控除の廃止および定率減税の縮減などにより、それまで非課税だった低額所得世帯、高齢者世帯が新たに納税義務者となり、実の課税強化で「払いたくても払えない」深刻な事態が進行していることも見逃してはなりません。「払いたくても払えない」滞納者の多くは、地方税の納税だけが滞っているわけではなく、倒産や失業、事業不振による収入減、家族の病気などで生活困難に陥っている場合も多く、多重債務対策、就労支援、生活保護や公的融資制度の活用などの公的支援につなげる仕事を、滞納整理を通じて自治体職員が行なえる場面でもあります。
その意味で、広域連合による徴収共同化方式は、県民の暮らしの実情により沿った丁寧な解決がやりにくくなる、「顔の見えない行政」になる恐れは無いのでしょうか。全国的には、必ずしも広域連合での共同化方式をとらず、様々な形態での取り組みがあり、神奈川県などでは、一定期間、県の職員を市町村に派遣して滞納整理のノウハウを支援する方式もとられているとお聞きします。滞納整理の方法として、広域連合での共同化方式が最良の方法なのでしょうか。知事の認識をお伺いします。
私たちは、かねてから、税金や公共料金は、滞納を増やしてしまってから解決にあたるのではなく、滞り始めた早い段階で、SOSのサインをいち早くキャッチし、減免制度の適用や分割納入の相談にものりながら、県民の暮らしの困難が始まる、その入り口で、心の健康相談も含めた公的支援につなげていくゲート・キーパー研修を県の職員に実施して欲しいと提案してきました。今年から長野県の税務課職員にも始まったゲート・キーパー研修を強化するなど、地方税の滞納整理にあたっては、「取り立て、差し押さえ先にありき」ではないとりくみをいっそう強めていくべきではないかと思いますが、知事の見解をお伺いします。
≪阿部知事≫
地方税徴収の共同化についての認識ということでございます。市町村、県ともに徴収率の低下が大きな課題となっております。市町村によっては徴収職員の専門性の不足に加えて住民との距離が近すぎるがゆえに、滞納整理がなかなか難しいといった状況もあって、徴収対策の強化は喫緊の課題というふうに認識しております。こうしたなかで将来にわたって効率的な徴収体制として広域連合を市町村と県が共同で構築していくことは、私は有効な手段だと考えています。税の賦課徴収業務につきましては、一定の時間をかけて課題のある納税者の皆様方とは相対して相談して進めているところでありますし、広域連合におきましては、こうした市町村における一連の納税者等とのやり取りを経たうえで、再三にわたる納税催告等にも関わらず引き続き滞納になっており、市町村自らは対応が困難と判断された案件について、滞納整理を行うものということでございますので、私は、議員がご懸念されているような顔の見えない行政になるということには必ずしもつながらないのではないかと思っております。広域連合では税の公平性確保の観点から、滞納者の生活状況、財産状況の調査等により、客観的な納税資力の把握に努めて、資力がありながらも滞納となっている案件については厳正に対応してまいりたいと思います。一方で、滞納整理を進めるなかで生活困窮等の実態が明らかになった場合におきましては、その実情に応じて、滞納処分の執行停止が適当ではないかといった意見を付して構成団体に通知するなど、納税の猶予制度の適正な運用についても他方で図っていきたいと考えております。広域連合では構成団体の徴収団体の職員への研修も行うこととしておりまして、今後具体的な研修内容を計画するなかで、納税相談等の場で、例えば自殺予防とか生活保護等について適切な対応が出来るように工夫してまいりたいと考えております。
<石坂県議>
長野県短期大学の四年制移行問題についてお伺いします。
既に、全国の同時期に設立された公立短大のほとんどは、時代の流れの中で四年制大学に移行しており、長野県短期大学は、短大として残っている数少ない存在となってしまいました。かつては可能であった資格の取得も、現在短大ではなかなかかなわない状況にもなり、時代にふさわしい現状の打開は、何よりも長野県の人材育成の立場から急務になっていると考えます。長野県の大学入学定員数は約3300人で全国最下位です。大学進学希望者の8割が県外に流出している現状では、とても「教育県長野」とは言えません。
県議会での全会一致の請願採択を受けながら、様々な事情で遅々としてすすまなかったこの課題が、ようやく企画部への専任の担当職員の配置、検討委員会での検討へとすすみ始めたことは多くの関係者から歓迎されているところです。阿部知事には、是非とも、この長年にわたるとりくみの積み重ねの歴史の上に、その蓄積を尊重し、生かしていただく立場で、早急に、現場に足を運んでいただき、県短大学長をはじめとする関係者の声を良く聞いていただき、ご判断いただきたいと思いますが、県短期大学の四年制移行についての知事の認識を改めてお伺いします。
≪阿部知事≫
長野県短期大学の4年制化についてのお尋ねでございます。長野県短期大学の将来構想に関する検討委員会における議論、4年制に移行すべきという意見がある一方で、慎重に検討すべきという意見もあるというふうに聞いております。私自身、11月に開催されるこの委員会に直接参加して、意見交換をしていきたいと思っておりますが、私は、長野県の高等教育を充実していくという、充実の方向性自体は重要なことであると考えております。県短期大学の在り方についてもそういう大局的な見地から検討してまいりたいと考えております。
<石坂県議>
県の短大の四年制移行の問題につきまして、検討委員会の11月開催されるものには自ら参加していただけるということで大変うれしく思っております。前村井知事も、私質問したりお願いしたり、他の議員からもいろんな意見要望がありましたなかで、実際に短大の現地に足を運んで、学長はじめ関係者の話を聞いていただきました。それは現場主義を貫いている阿部知事としてはもっと当然至極のことと思うんです。ですから、11月の検討委員会の前でも後でもけっこうですけれども、ぜひ現場にも直接足を運んでいただきまして、ぜひやっていただけるようお願いをしたいと思います。多分行っていただけると思うんですけれども、いかがですか。
≪阿部知事≫
できるだけ早期にお伺いして、現場の考え方を伺うなかで私自身も判断をしたいと思います。
<石坂県議>
県立短大の4年制移行を考える上では、午前中宮本議員も指摘をしておりましたけれども、何よりも県の企画部自身が行なった、主人公である高校生のアンケートに示されている思いをぜひ重視していただきたいと思います。当事者の子どもの立場にたって考えることが一番大切ではないでしょうか。このアンケートは、県内の全日制、定時制、多部制の全高校を対象に行なったアンケートです。県内に公立の4年制大学の設置を希望する高校生は6割を超え、「希望しない」は1割、希望する理由の2位が「経済的負担が軽くなるから」となっています。また、高校卒業後、大学進学を希望しないで就職を希望する生徒の理由の2位が「家計を助けるため」、3位が「進学のための経済的負担が大きいから」、つまり、お金がなければ最初から大学進学は諦めなければならない長野県ってことになっていると、ここのところがとても悲しいと思うんです。少子化のなかで、私学の学生確保も大変な状況ともお聞きしていますが、この問題は、狭い意味の学生の争奪戦と言う性格のものでは決してなく、全体としての人材育成を充実していくという、そういう問題ですので、現実に私学と競合するものでもないことを県としても、県民や関係者に正確に発信していただいて、現場に行っていただくことも含め、ぜひご判断を頂きたいということをお願いしたいと思います。
<石坂県議>
核兵器廃絶と平和の課題についてお伺いします。
プラハでのアメリカのオバマ大統領の演説をひとつの契機に、今年5月のNPT核再検討会議では核兵器廃絶のための各国政府の具体的な計画策定を求める決議が採択されました。各国政府に手紙が送付されたのをはじめ、今年の広島、長崎の平和祈念式典には、初めてパン・ギムン国連事務総長が出席し、核保有国の代表も参加するなど、世界政治の新しい流れの中で、今、核兵器廃絶が現実の課題となってきました。
高森町議会は今月27日の議会最終日に、町側が提案していた「高森町平和へのかけはし条例」を原案通り可決しました。この条例は3条で構成され、1条では、町民が一体となって世界の恒久平和の実現に貢献することを表明。2条では〈1〉広島、長崎の原爆忌の式典に参加するための平和バス派遣、〈2〉平和市長会議と日本非核宣言自治体協議会への参加――などの継続推進。3条では高森町平和推進会議を設置し、平和事業の円滑な実施と推進に協力するとしています。高森町では平和拡大委員会を設置して1989年から広島平和バスなどの事業を推進してきました。今年1月に再選された熊谷町長は、事業を継続するため、平和推進条例を制定すると公約に掲げていたもので、この条例は10月1日から施行されます。「高森町平和へのかけはし条例」という名称は、高森中学校の生徒から公募し、301点の中から選ばれたそうです。
先の戦争で、全国的にも有数の満蒙開拓団や青少年義勇軍を送り出し、尊い犠牲を経験して、とりわけ平和への強い願いをもつ長野県民の思いに答えて、阿部知事には、長野県知事として何を行動していただけるでしょうか、知事の認識を伺います。
≪阿部知事≫
知事として平和に対する取り組みをどう進めるのかというお尋ねでございます。平和、人類の幸せの基本、基盤であろうと思います。地方自治にとっても重要だと思っております。長野県におきましても世界の恒久平和に関して、かねてから県議会でも何度か決議がされているというふうに承知しております。世界全体で核兵器廃絶の動きがオバマ大統領の演説を契機に高まっているということは、唯一の被爆国としても喜ばしい、望ましい方向だと考えております。私、いろんなところでタウンミーティング、あるいはランチミーティング行いたいというふうに申し上げておりますけれども、そうしたなかで例えば、平和をテーマに語り合うというようなことも今後考えていきたいなというふうに思いますし、また、長野県は多くの県民の皆様が満蒙開拓団ということで送り出された県でもあります。戦争体験をきちんと次の世代に伝えていくということで、子どもたちが学ぶ機会も提供していくことが重要だと思っています。さらに、いろんな形での国際交流協力事業をやっておりますので、そうした国際的な取り組みの中でも長野県から平和を訴える、あるいは全体で平和意識の高揚を図る、そうした取り組みを通じて平和社会の実現に貢献していきたいと考えております。
<石坂県議>
阿部知事就任にあたりまして、私ども日本共産党県議団は就任初日の9月1日、控室で公務以外のメンバーでお迎えし、3項目の申し入れを行いました。そして、9月議会にむけましては、6項目の申し入れを行い、また議会での論戦は今日私が初めてさせていただいたということになります。
多くの県民が、県政を県民の立場にたって前に進めて変えていってほしい、そう願っていると思います。その角度から今日はいくつかのことを限られた時間ではありますが、ご質問をさせていただきました。納得のいったこと、いかないこと、多々ありますが、最初に申し上げましたように、知事が掲げている基本政策、基本的な目指す方向について、私たちは期待をする立場であることに変わりはありません。特に子どもの権利条例、障害者の差別をなくす条例、中小企業振興条例などかねてから私たちも願ってきたものでありますし、ぜひ多くの県民を巻き込んで、丁寧な検討の舞台で良い条例を作っていただき、条例はつくることが目的ではなく、実際の県政の施策にいかしていただくことが目的ですので、ぜひ県政を前に進めていく大きなエネルギーになることを心から願っております。そして、見直すべきこと、やめていくべきことは勇気を持って決断してほしい、そのことを浅川ダムの問題をひとつの題材に、今日は質問をさせていただきましたが、前県政から継続していくべきもの、そして断ち切っていかなければならないもの、発展させるもの、さまざまな課題があるかと思いますが、常に県民の利益を基準に、阿部知事には健康に気をつけてご活躍されますように期待をいたしまして、日本共産党を代表しての質問を終わらせていただきます。