2010年11月定例会 一般質問 12月3日 毛利栄子

  1. 保育問題について
  2. 住居・生活困窮者に対する年末・年始の支援体制について
  3. 松本消費生活センター岡谷支所の閉鎖問題について
  4. 新規学卒者の就職支援について

1、保育問題について

<毛利県議> 保育問題について知事に伺います。
 政府が来年の通常国会に法案提出をめざす「子ども・子育て新システム」に保育園の保護者や関係者、国民から公的保育を壊さないでほしいという反対の声が広がっています。本県議会でも今日一般質問終了後、反対意見書が提案され、全会一致可決される見通しになっています。長野県では歴史的には「ポストの数ほど保育所を」ということで全国に先駆けて公的保育の充実をはかってきました。格差と貧困が拡大し、子育て環境も厳しさを増すもとで、なおいっそうの充実が求められているところです。
 しかし、財源措置のないまま、規制緩和の名のもとに、公的保育を後退させ、保育をサービス産業化させて儲けの対象にし、保護者から利用に応じた保育料を徴収し、個々の家庭が必要な時間だけ保育するということで集団保育が成り立たなくなる懸念があり、どの子にも健やかな成長を保障していくうえで大きな問題があります。
 知事はこの新システムについてどの様な見解をおもちか伺います。
 また過日全国知事会が23項目にわたって特区申請を行いましたが、長野県も保育所最低基準の緩和、設置主体を市町村とすること、3歳未満児の給食の外部搬入を可能にすることなどで共同提案に加わっています。どの様な考え方のもとに提案に加わったのか、知事のご所見を伺います。合わせて、今後のスケジュールについてうかがいます。

<阿部知事>
 子ども子育て新システムについてということであります。これはまだ具体的にどういう制度設計なのかということが必ずしも明らかではない部分が正直言ってありますけれども、国におきましては幼保一体化も含めて、次世代育成支援のための包括的一元的な新システムの構築について、子ども子育て新システム検討会議、制度の具体的な内容については検討しているところと承知しております。このシステムにつきましては、負担方法によっては保護者の負担が増大する懸念、応益応能の考え方それぞれあると思いますけれども、そうした懸念がある。あるいは営利企業が参入することによる、保育や教育の質の低下が懸念されるという声があるということも承知しております。
 また、他方で、幼稚園保育所問わず、全ての子どもが身近な地域で幼児教育保育を受ける機会が保障される、そして指定制度の導入で一定の基準を満たした認可外施設も公費の財政支援対象となり、小規模保育や事業所内保育といった多様なサービスの提供が可能になるといったことで利用者の選択肢が広がるといったメリットもありまして、そうした方向性においては、妥当なものと思っております。新システムにつきましては、平成25年度の施行を目指すということを聞いておりますが、具体的な制度設計にあたりましては全ての子どもに質の高い幼児教育、保育を保障し、社会全体で子どもの成長、発達を支えるという理念に基づいて、地方自治体、国民住民も含めて地方の意見が十分反映された上で仕組みづくりが行われることが必要だと考えております。
 全国知事会が特区申請した23項目、知事会において賛同できる県は特区の共同提案ということで行いました。7月15日16日に和歌山県で開催されました全国知事会において、この旨討議されて、各都道府県で実際に計画の認定申請をするかどうかには関わらず、提案内容に支障がない場合は共同提案とする旨、合意されたというふうに認識しております。その後、11月15日に国に対して特区の共同提案を行いまして、現在各省庁で対応を検討中ということでございます。
 スケジュールでございますが、各省庁の認定を経たうえで来年2月頃を目途に一定の結論が出されると承知しております。共同提案を行った保育関係の項目、その理由でございます。待機児童解消のため、保育所の人員設備、運営基準、これについては参酌すべき基準を弾力化するということについては、本県、現在、待機児童いないことから、これについて特段の影響は生じないと考えております。また最低基準の制定権限などを市町村へ移譲することについては、これは地方分権の観点から市町村の裁量と創意工夫により、地域の実情に応じた保育施策が可能になると、私としては住民の皆様の声も一律なものよりは反映されやすくなるのではないかと思います。
 3歳未満児の給食の外部搬入については、現在認められておりますのは特区における公立保育所のみでございますが、私立の保育所においても可能になるということで、経営の自由度が増すということでありまして、提案の内容は地域のニーズがより的確に反映されるものと考えており、賛同したところでございます。

<毛利県議>
 子ども・子育て新システムにつきましては、最大の問題は今まで行政が措置をするということで、保育に欠ける子どもたちに対して手立てをしてきたことについて、その部分について後退をしていくということで私は大変問題があると思っているところでございます。
 また特区申請の中で先ほど知事は、最低基準について地分権方の裁量や住民の声を反映していきやすいものにしていきたいということでございましたけれども、国の標準以上にということであれば、長野県ではすでに職員配置を1歳児、国が6:1の中で4:1にして手厚く保育ができるようにしてきています。そういう中であえて基準の部分で特区を求めるということは、さらに基準を引き下げるということにつながるのではないか、ということが危惧されているわけです。そういうことについて知事はいかがでしょうか。標準以上だったら、今でもいくらでも国の基準以上にできるわけですけれでも、あえてやるってことではそういうことが懸念されますがいかがでしょうか。あわせて、今、「子ども・子育て新システム」については国民的議論のないまま拙速に進めていくということに私は問題があると思いますけれども、きっちり住民の意見を聞いていくようにと国に意見を挙げていただきたいと思いますがいかがですか。

<阿部知事>
 保育の基準の関係について、これは規制緩和という、国ではなくて地方に権限委譲されると基準の引き下げが行われるのではないかというご指摘でございます。これは地方分権される上では、基準の引き下げということも当然あり得るものと思います。その自治体の判断としては、私はあり得るものと思っています。しかしながら、国が住民から非常に遠いところで基準を決めて、しかも、例えば横浜市と長野県、保育の在り方、幼稚園の在り方が本当に同じでいいのかと、先般ここの場でも森の保育園とか森の幼稚園とかお話を申しましたが、長野県においてもそういう取り組みも県民の活動の中で出てきているわけでして、そうしたものもひっくるめて全て国が基準を決めていくということが本当に私は望ましいのかということを考えたときに、より自治体が責任を持っていくことが重要だというふうに考えております。従いまして先ほど申し上げたように、この点については特区を共同で申請することが私は望ましいと思います。
 また、子ども子育て新システムですが、先ほどもご答弁申し上げましたけれども、私も全て今検討されている中身が明らかではありませんし、私ども地方の意見がしっかりと反映された上で仕組みづくりがなされなければならないと。実際に現場で保育あるいは幼稚園の業務に携わっておりますのは自治体であり、現場の保育所、幼稚園でありますから、そうした地方の意見が十分に反映された上での仕組みづくりが重要と考えております。

2、住居・生活困窮者に対する年末・年始の支援体制について

<毛利県議>
 住居・生活困窮者に対する年末・年始の支援体制について健康福祉部長に伺います。
 リーマンショックから2年。9月の県下の有効求人倍率は0、62倍です。最低を記録した21年8月の0、39倍からは回復しているというものの、1年1カ月ぶりに前月を0,01ポイント下回り、円高の影響が懸念されるところです。総合支援資金の貸し付け状況をみても09年度は前年比12倍、生活保護の受給世帯数も過去最高の伸び率で、25年ぶりに1万人をこえています。
 党県議団が不特定多数にお願いしている「県民なんでもアンケート」でも切実な声が寄せられています。
「ようやく再就職先が見つかったシングルマザー。家賃も半年滞納。…10月、仕事が見つからずに社協にいったら市役所で生活保護を申請しろといわれた。市役所では自立のために申請は受けさせない、社協で何とかしろといわれた。この11月の生活費を何とかできないのか」
「48歳ですが仕事を失ってしまい探していますが仕事もなく、1日1食で暮らしています。・・・失業者がどんな思いで暮らしているかみてみろよ」など1500通以上も届いています。
 昨年以上に県民の生活が好転状況にあるとはとても思えません。そこで県として年末・年始の住居・生活困窮者に対する支援について少なくとも昨年並みの対応をとってほしいとおもいますが、どの様な対応を検討されているのでしょうか。
 困っている皆さんはどこに相談に行ったらいいのか、往々にしてわからないというのが実態です。そこで、態勢の周知についてラジオ、テレビ、インターネットなどを使った媒体やコンビニへのチラシ配置などを通じて情報提供をしていただきたいと思いますがいかがでしょうか。
 住居の確保などでは友人宅などに身を寄せている人も正月には家族が集まるということで、移動しなければならないケースもあります。不測の事態に備えるためにも、緊急の宿泊施設などを事前に確保するなど、すべての福祉事務所で態勢がとれるよう協力を求めてほしいと思いますがいかがでしょうか。

<健康福祉部長>
 住居生活困窮者に対する年末年始の支援体制についてお尋ねをいただきました。
昨年は閉庁日でございます12月29日から30日にかけて県下10ヵ所の保健福祉事務所を開庁いたしまして、生活福祉健康相談を実施し、また市町村でも11市が開庁して生活相談等を行って参りました。期間中の来庁舎は、保健福祉事務所が9人、市が45人でございましたが、この時期に相談に来ていただきましても年内の生活福祉資金の貸し付けが行うことができないなど、課題が明らかになってきたわけです。このため、今年は生活福祉資金の貸し付けが可能となる時期に早期に相談に来ていただけますように、県市及び社会福祉協議会等が連携いたしまして、今月の13日月曜日から17日金曜日までの5日間にわたりまして、生活支援強化キャンペーンといたしまして、生活相談、健康相談、生活福祉資金の貸付相談、住宅相談を実施するとともに、期間中の2日間ですけれども、ハローワーク、長野県弁護士会とも連携いたしまして、ワンストップサービスも計画をしております。相談体制の周知ですが、議員のご指摘の通り、ハローワークなどの関係機関への周知を徹底するほか、メディアや県のホームページ等を活用いたしましてPRを徹底していくとともに、民間の支援団体等にも周知活動への協力を依頼しております。
 それから、宿泊要請等への緊急事態に対応するための態勢ですが、昨年は全ての市において、安価なホテルや旅館について把握いたしまして一部の市では福祉住宅などの公的な施設を一時宿泊用に確保しておりました。ただ、利用した方は1人と聞いておりますが、今年も引き続き同様の対応を求めてまいりたいと思っております。また、県の保健福祉事務所においては、年末年始の休みの間も宿泊要請など緊急事態に対応できるよう連絡網の整備による支援体制づくりを図っておりますので、市町村にも同様の対応を依頼してまいりたいと考えております。

<毛利県議>
 前倒しで、5日間にわたって、住居や生活困窮者に対する相談に応じていただけるということで、そのことについては大変ありがたく思っているところでありますし、広報をしっかり充実させていただいて、年越し年始、大変厳しくなりそうだという方については早めに相談に応じていただくということを徹底していただきたいということとあわせて、それでもなおかつ緊急な事態というのは生じる可能性がありますので、先ほど連絡網をとっていただくということでございましたけれども、そこの充実についてもお願いをしておきたいと思います。

3、松本消費生活センター岡谷支所の閉鎖問題について

<毛利県議>
 岡谷駅前のララオカヤにある松本消費生活センター岡谷支所を今年度末で閉鎖する意向ということで、諏訪地方にはいま、大きな衝撃が走っています。国でも消費者行政を強化している矢先に、市町村への技術援助やより専門性の高い相談に応じ、地域の熱心な要請に応じて開所わずか5年しかたっていないのに、あまりに唐突で一方的なやり方は到底理解をえられません。関係する市町村も困惑しています。
 拙速な閉鎖でなく、ぜひ存続してほしいと思いますがいかがでしょうか。

<企画部長>
 松本消費生活センター岡谷支所についてのお尋ねでございます。ご案内のとおり、県の消費生活センター、県内4ブロックの拠点センターと松本には岡谷支所と、5つの体制で行っているところでございます。岡谷支所につきまして少し経過を含めてお話させていただきますと、平成17年当時、地域の皆様方の要請を受けまして17年の11月に設置をしたところでございます。当時から相談業務を中心という形で、3名体制で行っているわけでございます。そうしたなかで平成20年に行政機構審議会において県の現地機関の見直しといったものがされたわけですが、消費生活センターに関しましては、当時国におきまして消費者行政の在り方の検討がなされていることから、審議会として具体的な方向性は示さず、市町村としっかり役割分担を考えて県として的確な方向性を出すようにということで、ひきつづき検討することとされていたものでございます。
 その翌年、昨年ですけれども、9月になりまして消費者庁設置と同時に試行された消費者安全法におきまして、これまで市町村の努力義務であった、いわゆる消費者相談業務が、市町村の実施義務としてはっきり位置づけられまして、これによりまして、まずは一番身近な市町村が住民の相談に応じなさいよと、県はそのバックとして主に広域的専門的な相談に対応するほか、市町村への指導ですとか事業者指導、こういったものを行うのが適当ではないかということで、県と市町村の役割が法律的にははっきりとさせたわけです。
 県ではこうした経過を踏まえまして、現在ご案内のように平成21年から作っております「消費者行政活性化基金」これが3億弱ございますけれども、こういった活用等を通じまして市町村の消費生活窓口の充実強化に努めてきたところでございます。
 他の市町村でも充実してきておりますけれども、こうしたなかで現在の諏訪地域の6市町村の相談窓口の状況について申し上げますと、専任相談員を配置しているのは、岡谷市、茅野市、下諏訪町。岡谷市と茅野市は国でいいますセンター基準を満たしております。看板は掛けておりませんけれども。残りの3市町村は職員が他業務との兼務ではございますけれども、県と連携していただいて適切に対応していただいているということでございます。それぞれの市町村で、窓口充実強化が図られつつある状況だと思います。
 そこで、県全体の消費生活センターへの相談件数を見てみますと、実は平成16年がピークでございました、4万4千件ほど。現在その3分の1ということで、平成21年度には1万6千件と、こういった相談状況になっています。高止まりしているわけでございますけれども、そこで、昨年度の一日当たりの県の消費生活センターの相談件数を見てみますと、岡谷支所以外の4センターは、平均で15.6件、多いところでは一日当たり20件、少ないところでも12件、こういった状況になっています。岡谷支所につきましては、一日当たり4.9件、これは電話と面談を含めて4.9件でございまして、来所していただく面談相談にいたっては一日当たり1件を下回ると、こういう状況になっておりまして、他のセンターと比較して非常に少ない状況、こういった現実はご理解いただきたいと思います。
 このような状況を踏まえまして、現在相談業務の在り方を検討しなおしているところでございますけれども、県といたしましてはこういった現状、それから法の主旨にのっとりまして、岡谷支所については、その機能を本所である松本に統合することによりまして、松本の機能を高め、主に専門的広域的な相談に対応するほか、市町村への支援、あるいは事業者への指導を行うということが適当ではなかろうかと考えているところでございます。統合したからと言いましてその地域をおろそかにするということではなく、諏訪地域におきましては市町村の相談体制を強化するため、長野に1つ置いてあります、市町村消費生活支援、こういったものを新しく配置しようと考えておりますし、巡回相談、あるいは市町村の生活相談のいろんな形での支援を今考えて検討しているところでございます。
 内容全部お話しましたけれども、こういう内容について事務レベルで、先月諏訪地域の6市町村の皆様方、消費者団体の皆様方に説明いたしまして、協議を開始したばかりでございます。当然のことながら地元の皆さんの意見とすればぜひとも存続してほしいという意見もございますし、その一方で現状を見ればやむを得ないではないかという意見もございます。もうちょっと県として、市町村の態勢を整ってからやってほしいと、そういう様々な意見が実際出ております。
 そこで、岡谷支所の基本的な在り方は先ほど申し上げたとおりでございますけれども、引き続き県の考え方を説明させていただきますとともに、地元の皆さん、あるいは消費者団体の意見を十分にお聞きしながら、慎重に考えてまいりたいと思っております。3月というお話がありましたけれども、それは行政効率とか費用対効果の点で3月というのもありますけれども、統合の相談体制の在り方、地元の調整、そういったことを十分市町村と相談しなければいけないと思いますので、そういったうえで適切な着地点を今後模索させていただくということでございます。

<毛利県議>
 閉鎖の方針があまりに唐突であって、しかも拙速であるという点では、なかなか住民の皆さんや関係の行政の皆さんも納得しがたいものがあるわけでして、このことについてはぜひ丁寧に対応していただきたいと思います。件数だけで先ほどご報告ありましたけれども、非常に複雑多岐にわたっておりまして、多重債務などの場合には1件に対して2〜3月かかるということもあるということで、電話だけの書類では応じられず実際に書類を持って相談していただきながら解決していかなければならない問題も増えていると言われておりますので、そういうことも勘案して決めていってほしいと思います。

4、新規学卒者の就職支援について

<毛利県議>
 厚生労働省と文部科学省の調査によると、来春卒業予定の大学生の就職内定率は前年同期比マイナス4、9ポイントの57、6%で「就職氷河期」と言われた03年を下回り、過去最低の「超就職氷河期」となっているとのことです。過日私のところにも「東京の4大工学部を来年3月卒業するが、まだ就職がきまらない。どうしたらいいか」との相談も入っていますが、20社、30社応募するのは当たり前の状況が広がっています。
 11月27日に民主青年同盟の皆さんが長野駅前で労働実態アンケート調査を行ったときの報告によると調理の専門学校の生徒さんの話として「求人が少なく、80人の卒業生のうち数人しか内定が出ていない」。また、大学4年の女子学生の話では「就職内定がきまったが、1年間臨時雇用であり、そのあとは正社員になれる可能性があるというものの、どうなるか不安」という状況です。
 一方では再来年春の採用活動がすでに大学3年生を中心に始まっているもとで、まだ内定のとれていない4年生や保護者の焦りは頂点に達しています。
 そこで商工労働部長に伺います。県内大学生の就職内定率の現状はどうなっているか。また、学んでも職にありつけない現状をどう認識しているか所見を伺います。
 
 国ではこの事態を重く見て、9月10日、閣議決定ですべての都道府県労働局に「新卒応援ハローワークの設置」や「新卒者就職応援本部」の設置をきめました。9月24日、長野労働局は県や県教委、産業界や労働団体、大学等も加わった「新卒者就職応援本部」を設置し、取り組みを開始しはじめましたが、最大の問題は大企業がこの1年間で内部留保を11兆円も増やし、自動車・電機をはじめとして生産も収益も回復しつつあるのに、派遣や期間社員等の非正規雇用を増やすことで対応し、正社員を増やそうとはしていないことです。
 正規雇用は1994年から30%も減っています。大企業の求人や採用数そのものが増えなければ、対策といっても、なかなか解決の道はみえてきません。設置された「新卒者応援本部」が実効性あるものとなるために、県としても当面の対応だけでなく、製造業への派遣は原則禁止するという派遣法の改正や、3年次の夏から就職活動がはじまり、落ち着いて研究・勉学できる状況にない就職活動の早期化、過熱化、長期化の問題、また就職活動のために長野から、毎週土日に上京し、月8万円もかかり、それが半年間以上も続いて費用負担が膨大になる問題など、国へしっかり意見を挙げていくことが必要ではないかと思いますが、商工労働部長の見解を伺います。

 また、就活している学生の話によると、ハローワークの求人情報がリアルタイムで更新されていないために、申し込むとすでに求人は終わっているということがしばしばあり、就職活動にいっそうの徒労感が覆いかぶさってきているとのことです。県としてぜひ実情を把握し、実態を伴わないものは求人情報からおとしていくなど、ハローワークに対して改善を求めていただきたいと思いますが商工労働部長いかがですか。

 学生にとって就職活動をしようにも、求人の情報がなかなか届かないという状況もあるようです。縁あって長野県で学んだ学生たちが、できうる限り長野県の企業に就職して、長野を支える有能な人材に育っていっていただくために、就職説明会や面接会は有効なものです。
 県下の就職説明会も地域的なアンバランスがあるので、ぜひ、県が主催して就職面接会や説明会・相談会をできれば地方事務所単位、少なくとも東西南北4か所でやってほしいと思いますがどうでしょうか。さらに、面接会に人を送るほど余裕のない中小企業も少なからずあります。中小企業の求人開拓について県はどの様に考えているでしょうか。

<商工労働部長>
 新規学卒者の就職支援ということで4点ご質問を頂戴しました。まず大学生の内定率、それから現状認識ということでございますが、長野労働局の抽出調査でございますが、県内の大学等、等というのは大学、短大、高専、専門学校、こういったものを含んだものですけれども、平成22年3月に卒業した者の就職内定率は90.9%で前年度を1.9ポイント下回ったということでございます。それから来年ですが、平成23年3月新卒者の10月末現在の就職内定率でございますけれども、45.6%ということで前年同期を0.5ポイント上回ってはおります。しかしながら、水準としてはまだまだ厳しいところであると認識しているところでございます。
 一般的に申し上げまして、若い人が学校を卒業してもなかなか就職できないという状況は、本人にとっても、将来のキャリア形成であるとかあるいは経済的自立という長期的な影響を及ぼすということはもちろんですが、地域産業の将来についてもやはり大きな影響があるということで大変憂慮しているところです。労働局ともしっかり連携を密にしまして就職支援に取り組んでまいりたいと考えております。
 それから新卒者の就職応援本部に関わる国への要請ということでありますが、議員ご指摘の通り国では、新卒者雇用に関する緊急対策ということによりまして、いくつか政策を講じております。ひとつがお話のありました、労働局単位に新卒者就職応援本部を設置すること、2つとして大学等の卒業後3年間は新卒扱いにするという「青少年雇用機会確保指針」の改正、3つ目として3年以内の既卒者トライアル雇用奨励金をつくったということ、さらに3年内既卒者採用拡大奨励金を作ったということ、等々が行われてきたところです。また10月には文部科学大臣が日本商工会議所、日本経済団体連合会のトップに大学生の就職活動の早期化、長期化の歯止めを直接要請しておりまして、現に商社の業界団体であります日本貿易会では大学新卒者の採用活動の開始時期を遅らせるような見直し、そういった案を決定するなどの動きがみられるようになってきました。今後もこういった国の動向を注視いたしまして、新卒者就職応援本部をはじめとして様々な機会を通じまして必要な事柄は国に要望してまいりたいと考えております。
 それから3つ目の、ハローワークの求人情報についてでございますけれども、利用者の声としてそのような実態があるとすれば、そうした状況を労働局に伝えてまいりたいと考えております。
 それから説明会の開催でございます。本年度における就職面接会、企業説明会、これは国が中心になってやっているわけですが、ハローワークでは8圏域でのべ16回、すでに実施されております。県でもこれにジョブカフェ信州が若者用ということで参加をして一緒にやっているという状況でございます。長野県ではその他に、県内の進学者の多くが県外へ進学していると言った状況もございますので、東京での合同企業説明会あるいはふるさと信州学生Uターン事業、これにおきまして協定を締結した大学での学内出張合同企業説明会を開催いたしまして、県内中小企業の人材確保を支援しているところでございます。この他民間もかなり頻繁にやっておりまして、民間の就職支援会社等の主催する企業説明会も、例えば来年2月、私どもも調べてみますと、開催される予定のものを見てみますと20回ということで、ほぼ毎日県内各地で数多く実施されているという状況でございます。したがって積極的に人材を確保しようという県内中小企業におきましてはこういった機会を活用していただければ可能ではないかと考えております。
 いずれにしましても、最近は学生の就職活動はどうもインターネットを活用した活動というのが主流になっているという現状もございます。支援の方法については今後一層研究してまいりたいと考えております。

<毛利県議>
 今、商工労働部長さんからお答えいただきましたけれども、長野県の場合ハローワークが本当に一生懸命やっていただいていることは先ほどお話あったとおりでございますし、また企業や地域のロウタイキョウなどで一生懸命やっていただいている事例も見られますが、県がそこに主導的に加わってやっていただくという点では、私は少し腰が引けていやしないかなと思います。
 先ほどの大卒等の新卒者の就職内定率も、全国が57.6%のなかで長野県は45.6%ということですから、マイナス12%です。そういうことを見てみても、本当に長野県で頑張っている学生たちがどうやって就職していくかということで、県としてしっかり踏み込んで対応していただきたいとお願いしたいと思います。

 続いて教育長にうかがいます。高校卒業生の就職にかかわる直近の内定状況はどうなっていますか。高校生の場合は大学生と違ってエントリーシートを何十枚も書く状況ではありません。進路指導をされている現場の先生のお話では、生まれて初めての就職活動で1回1回に自分の将来像を夢見て、前向き、積極的にその仕事に向き合っていこうと決意して、何日もかかって考えぬき、就職の動機を丁寧に仕上げ、履歴書を書く。結果として試験に落ちて1回、1回涙を流す。10月16日から併願できるようになるが、そうとう精神的にタフだと思っていた生徒でも4〜5回落ちるとたちあがれず、1カ月沈みっぱなしでその後の就活ができなかったりするそうです。精神的に病んでしまって卒業式にも出られなかった生徒もいたそうです。決して子どもたちのせいではないのに、こんな状況に追いやっている現状について教育長はどう考えていますか。認識を伺います。

 就職活動支援員について伺います。平成20年から配置され、当初は戸惑いもあったようですが現場では非常に熱心に活動されており、高校現場としても進路指導の先生と連携を保ちつつ実をあげられており、とても歓迎されています。緊急雇用ということで短期間で代わるのではなく、また、基金事業が終わったらおしまいということではなしに、継続した配置を求めますが教育長の見解を伺います。
 
 また、大卒のところでも申し上げましたが、高校の場合も7月の求人票解禁になると企業の情報が冊子になって各学校に送られてくるようですが、その後採用が決まって求人が無くなる場合でもその情報が届かないので先生方は、連絡を取っては、求人が終わっていることを知るというケースも多いようです。ハローワークに対してリアルタイムで求人情報が提供されるよう改善を求めてほしいと思いますがいかがですか。また、求人情報をネットで見る場合、学校でパスワードを入れてからみる場合が多いようですが、高校生の場合自宅で保護者と、どの企業が向いているか相談しながら受験できるようにアクセスフリーにしてほしいという要望があります。システムの改善をハローワークに働きかけてほしいと思いますがいかがでしょうか。

<教育長>
 来春卒業する高校生の就職内容状況とその現状認識についてのお尋ねでございます。
 昨日倉野議員にもお答えいたしましたけれども、教育委員会の直近の調査では、公立高等学校卒業予定者の就職内定率は、10月末時点で65.8%でございます。これは前年度を3.1ポイント上回っているものの、一昨年と比較しますと6.9ポイントのマイナスでありまして、依然として厳しい状況が続いております。
 この状況は経済のグローバル化、産業構造、雇用環境の大きな変化により、学校から就労へのつながりの輪が切れたことに根本的な原因があると考えております。したがいまして、社会全体でつなぐ仕組みづくりが必要であり、また持続的、安定的な社会の形成といった観点からも喫緊かつ重要な課題であると認識しております。このような観点から、学校におきましてもキャリア教育の視点に立って学校教育全体を見直すことが必要であると考えております。
 次に、就職活動支援員の雇用についてのお尋ねでございます。就職活動支援員は国の緊急経済対策として県に設置されました緊急雇用創出基金を用いて実施している事業でございます。この基金事業には失業者を雇用の対象としておりまして、新規雇用が6カ月未満の基幹雇用に限定、更新に関しては1回に限りできるものとするという条件がありますことから、支援員の短期間での交代はやむを得ない実情があります。議員ご指摘の通り、基金は来年度をもって終了することになっておりますけれども、教育委員会といたしましてはこの事業が高校生の厳しい就職状況を支援するために、大変必要性、有効性の高い事業であると捉えておりまして、今後の国の動向を注視してまいりたいと考えております。
 次にハローワークから学校に提供される求人情報の改善につきましてのお尋ねでございます。これは全体としますと先ほど商工労働部長からお答えした通りでございます。なお高校生の就職につきましては縁故就職でない限り、全国共通の取り決めとしまして、ハローワークから提供された求人情報を学校が責任を持って生徒に紹介あるいは相談体制を取りましたり、さらにケースによっては校内調整をする必要もありまして、そういったプロセスを経て企業に応募書類を提出すると、こういう仕組みになっております。また、議員ご指摘の通り、9月中旬、16日に解禁された以降、1か月までは一人一社制度、それ以降は併願も可という形で、できるだけ機会の確保と、一人ひとりの就職希望を学校として責任を持って実現すると、こういう仕組みに現在のところなっております。
 こういった過程の中におきまして、企業からの求人情報につきましては学校が生徒やその保護者にそれを提供しまして検討する機会を取っておりますけれども、議員ご指摘のようなイメージの活用につきましては、労働局に伝えて研究してまいりたいと考えております。

<毛利県議>
 今お答えいただきましたけれども、特に高校生の場合は、本当に学校の進路指導の先生や就職支援員の先生が熱心に、その子がどういう性格や持ち味があって、その子にとって将来どういうふうな生き方をしていくかということも含めて、本当に熱心に相談しながら情報に基づいてどうかということで選択をしていくということで、キャリア教育という点で言えばすごいことをやっていただいているということで感謝するところですが、ある担当の先生がおっしゃっておられましたが教師が学校で子どもと相談する場合に、学校の目で見て子どものことをよく理解している。ただやはり、最大の理解者は保護者で、小さい頃からどういうふうに育ってどういう特性があってということでは保護者が一番よくわかっているところがあるので、保護者の目から見てということでご自宅で、あれはどうかこれはどうかと選べるような機会をぜひ持ってもらえれば、なおいっそう子どもたちが企業で生きがいを持って長く勤めていける一助になるのではないかとおっしゃっておられます。
 先ほど労働局とも相談をということでございましたが、見たからすぐそれで子どもが決めていくというわけではないので、選択できる幅を広げていただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

 高校新卒者の内定状況は昨年より改善傾向にあるように一見見えますが内実は、厳しい就職環境のなかで、急遽進学に変えた子どもさんもおられます。より深刻なのは定時制や多部制・単位制高校の卒業生ではないかと思いますが、定時制・多部制などの実態と対策について教育長にうかがいます。
 最後に知事に伺います。高校での未就職者は一人も出すわけにはいきません。平成21年度は「新卒未就職者等人材育成事業」を活用することで最終的には、卒業後でも対応できたと伺っています。全国的に見ればいくつかの県で基金事業を使い、県が直接事務員として雇用しながらスキルアップを応援しているというところもあります。ぜひ長野県としても社会への第一歩が無職といった悲惨な状態においやらないために、卒業時期が近付いても就職の決まらない生徒のために、直接雇用の対応も検討していただきたいと思いますがいかがでしょうか。

<教育長>
 先ほど申し上げた10月末現在で定時制のことを取り上げてますお話させていただきます。本年度10月まで定時制の就職希望者の就職内定率が28.4%、昨年同期と比べまして4.6ポイントのプラスでございます。しかしながら全日制同様、あるいはこの定時制、多部制単位制同じでございますけれども、特に厳しいという実態はご指摘の通りでございます。
 現在この定時制につきましては、入学した生徒さんに対して特別の事情がない限り、原則的に仕事、これは正規というわけになかなかいきませんけれども、アルバイトも含めて仕事を持って生活のリズムを作るとかあるいは将来に備えるとか、そういった観点での指導はしておるところでございます。特に卒業後の正式な修了につながるような形でのインターンシップ、あるいは現在のパート的な仕事であっても、それが将来につながるような形での様々な取り組みをとるようにお願いしているところでございますし、これは全日制含めまして、特に普通科の生徒の内定率が非常に厳しいものがございまして、これは私もいろんな機会にお願いしてるわけでありますけれども、普通教育における広い意味でのキャリア教育、そういったものを学校教育とすると系統的にやっていく必要があるだろうという思いでございます。
 また、如何せん、実際の就業につながるには多くの求人がなければいかんともしがたい部分がありますけれども、そういうなかで精いっぱいやっていきたいと思っております。

<阿部知事>
 若者の就職の問題、非常に厳しい状況の中でなんとか一人でも多くの若者がしっかりと職を得ていただくということが重要であると思っております。高卒新卒未就職者対策の関連でございますが、本年度、緊急雇用創出基金を活用して新卒未就職者人材育成事業で高校新卒未就職者の研修雇用を民間企業に委託して行いました。こうした対応、あるいは様々な関係者のご努力で平成22年3月の高校新卒者の最終就職率は99.3%ということで前年を0.4ポイント上回るという形になりました。また23年3月高校新卒者の本年10月末における就職内定率は65.6%ということで前年同期をやや上回ってはおりますけれども依然として厳しい状況であると認識しております。
 ハローワークへの高卒ジョブサポーターの増員でありますとか、教育委員会における県立高校の就職支援員の1ヶ月前倒し設置、あるいはジョブカフェ信州の高校への出前講座、そうした対応をしてきております。県としての直接雇用というご提案ありましたけれども、私は今年度、22年3月、99.3%の就職率まで持っていったということもありますので、ぜひ100%の就職目指して、引き続き関係機関と連携しながら、全力で県として取り組んでいきたいというふうに思っております。

<毛利県議>
 高校を3月に卒業して4月からすぐ就職が決まらないという生徒さんがおられて、最終的には99.3%というお話ございましたけれども、卒業から次に仕事に就くまでにタイムラグがあるわけでして、意気込んで卒業して社会人と思って見ても先がないということは本当に子どもたちにとって不幸ですので、その穴をぜひ埋めていただくということで、全国的に見ますと和歌山、京都、山形では子どもたちを60人、100人と雇用しつつ、そのなかで介護や農業体験を通じて職業選択をしていく上での幅を広げるプログラムも組まれているようですので、全国的な対応状況なども調査していただいてしっかり対応していただきたいと思います。