<和田県議>
TPP(環太平洋経済連携協定)に関してお聞きします。
今年も、春先の天候不順、夏の猛暑、豪雨災害という厳しい天候のなかで農業者は大変ご苦労されて実りの秋を迎えました。しかし、米価の暴落、野菜・果樹も価格が安定しないなかで、最後の収穫・出荷作業に追われています。
米価の暴落に歯止めをかけるために40万トンの備蓄米の買い上げを求めていることに対し、政府は戸別所得補償制度で対応するという立場で米価を市場まかせにしています。農家にしてみれば戸別所得補償と言ってもちっとも所得補償になっていない、これじゃあ生産費補てんにもならないと民主党政権の農業政策に不満をいだいています。そんな中、菅総理はTPP参加を前提に協議開始を表明しています。
TPPに参加したら日本の農業・食料は壊滅的になるとの危機感から、長野県では全国に先駆けてJA長野中央会などが呼びかけて、11月1日にTPP交渉参加に断固反対の集会を行ったことをはじめ、県下各地でTPP参加に反対する動きが広がっています。この動きをどう受け止めているのか。農政部長にお聞きします。
例外なき関税撤廃による影響について、特に農業、林業など一次産業の影響はどうか。農政部長、林務部長にお聞きします。
TPPで開国することと農業の再生を両立させるということはできるのか、農政部長の所感を伺います。
<農政部長>
TPP参加に反対する動きについてのお尋ねでございます。11月1日に行われました反対集会のみならず、農業者や生産者団体等との会議などでもTPPに対します不安感など多くの声をいただいておりまして、生産現場の思いを重く受け止めておる状況でございます。貿易の自由化につきましてはWTO交渉など、従来から様々な議論を経ながら進められたところでございますが、原則として関税撤廃の措置を認めないとされておりますTPP問題に関しては慎重な国民的議論が必要と考えております。このため、国の基本方針が示されました翌日11月10日に、知事要請いたしまして、私も副知事とともに国に対しまして本県農業者等の不安の声を届け慎重な対応を要望してきたところでございます。引きつづき県内農業の予想される影響だとか生産者等の思いを十分に踏まえまして対応してまいりたいと考えております。
次に関税撤廃によります県内農業への影響についてのお尋ねでございますが、国内の主要農産物につきましてただちに関税撤廃が行われ、なんら対策が講じない場合を前提にした農林水産省の影響試算をもとに、県内農業への影響が特に懸念されます米や畜産など7品目につきまして試算をいたしましたところ、本県農業産出額の約4分の1に相当いたします680億から700億円が減少をするという風に推定をしております。また中山間地帯等の耕作放棄地や離農にともないます地域経済や集落機能の低下も懸念されるところでございます。
次に農業再生との両立が可能かとのお尋ねでございます。本日国において首相を議長といたします「食と農林漁業の再生推進本部」の初会合が開催される予定となっておりまして、今後持続可能な力強い農業を育てていくための対策を検討するということにされていますが、関税撤廃された場合は先ほど申し上げましたように、米や畜産など品目によっては大きな影響が出ることが懸念されております。このため、仮に貿易の自由化が加速した場合を想定いたしまして、農業の体質強化をどう図っていくかなど、中長期的な農業のあり方をしっかりと議論していただいて明確な方向性を示した上で財政的な課題も含めまして対応していかなければ両立は難しいという風に考えております。今後県といたしましても国の動向を注視しながら具体的な対応策など政策提言してまいりたいというふうに考えてございます。
<林務部長>
関税撤廃による林業への影響についてのお尋ねでございますが、現在日本の林産物の関税は丸太やチップ、ベイマツ、ベイツガの製材品につきましては無税となっていますが、その他の樹種の製材品や合板、修正材などの関税率は2.6%から10%となっております。これらの関税が撤廃された場合、修正材や合板などの工場の生産量が減少することにより、県産材需要も減るなど、本県の林業木材産業にも影響が生じると懸念されます。県内の影響について、農林水産省で行った手法に準じて試算しますと、県産材生産が5300立方メートル程度減少すると推定されます。
<和田県議>
APEC加盟21カ国・地域のうちTPP参加交渉国は9カ国であり、中国・韓国もはいっていません。9カ国のうちチリなど5カ国と日本はすでにEPA(2カ国間の経済連携協定)を締結・合意しています。
菅総理は「平成の開国」というが、農産物の平均関税率は韓国62.2%、EU19.5%、などに対して日本は11.7%で日本農業は決して鎖国状態ではありません。
JA全中の茂木守会長は、TPP参加について「開国と農業再生は両立できない」と反対を表明するなかで、アメリカやオーストラリアなどが交渉に参加しているTPPに加わった場合「大規模農業国との競争にはどんな改革をしても勝てない」。農家への所得補償を強化しても「輸入量を抑えることはできず、国内農業は崩壊する」と述べています。
林業関係者は、すでに木材輸入自由化で日本の中山間地域が疲弊したことを事実をもって訴えています。農林水産業は国土の保全、環境、景観の保持、文化の継承など多面的な機能・役割を果たしています。
食料自給率50%を目標にしても、TPPに加わればどういう影響があるか、農水省は、自給率は現在の40%から13%に減少。農業生産額は4・5兆円。関連産業への影響は国内総生産で8・4兆円。の減少。農業の多面的機能は3・7兆円喪失され、雇用では350万人の就業機会が減少と試算しています。まさに「亡国の政治」をすすめる国に対し交渉参加にきっぱり反対という意見をあげるべきではないでしょうか。農政部長いかがですか。
<農政部長>
反対の声をというお尋ねでございます。我々といたしましてはやはり国の動きを十分これから見定めながら対応を含めてまいりたいと考えております。そういう意味で慎重な上にも慎重ということで国に対して要請をしているところでございます。
<和田県議>
農政部長が慎重なうえにも慎重にということで残念でございますけれども、アメリカ主導で進められるTPPは、例外なくすべての品目の関税をゼロにする完全な貿易自由による影響は、農林水産関連産業だけでなく、金融、保険、介護など多方面にわたることを考えると、TPP参加はすべきではないと思います。今進めているTPP参加は結局、2国間のFTAが進まないアメリカ、オーストラリアという農林水産物輸出大国に門戸を開くことです。知事も慎重ということではなく反対の立場で国に意見をいっていただくよう要望いたします。
<和田県議>
景気が悪いなかで今、「景気にすぐ効く」、地域経済の活性化になる事業と仕事おこしとして注目されている「住宅リフォーム助成制度」についてお聞きします。
県でも、信州・環の住まい助成金制度があり、今年度と来年度で180件の新築・購入とリフォーム15件が活用され、すでに「新築・購入」は10月半ばで募集件数に達し終了になりました。
環の住まいは、信州型エコ住宅という環境の視点や、県産材の活用を目的にした助成制度で、このこと自体は大事なことで、この制度もさらに拡充されればと思います。
そして、私は経済対策という角度で提案します。
全国の約170の自治体で地域経済の活性化、景気にすぐ効くと実施されている「住宅リフォーム助成金」を長野県でも行ってほしいと思います。
景気が悪くて、お正月から3月までひとつも仕事がなかった。しかたないからコンビニの深夜のバイトに行って何とか生活したという、地元でアルミサッシなどの仕事をしている職人さんから話しを聞いて、腕のいい職人さんがもったいないことだと思いました。
住宅関連の仕事は私がいうまでもなく、裾野の広い産業だといわれています。地元の大工さん、工務店さんはじめ、水回り、屋根、外壁、インテリア、タタミなど幅広い関連産業の仕事づくりになる住宅リフォームですが、秋田県では50万円以上の工事費の10%、上限20万円までの助成に今年当初予算で7千件分、12億6000万円でスタートしたところ、8月には予算が足りなくなり、8月に臨時県議会で8億4600万円、8千件分の予算を追加補正したそうです。10月末で約1万1700件の申請で、まだ年度途中ですが、7ヶ月でこの事業がもたらす経済波及効果は実に15倍の約512億円にのぼるそうです。
今回、11月補正予算も経済対策の予算が大半を占めていますが、今後はぜひ、全国の状況を研究していただき、また、県内の関連事業者の要望もお聞きしていただき、ぜひとも実施していただきたいとおもいます。建設部長におききします。
<建設部長>
住宅リフォーム助成制度に関するお尋ねでございます。住宅産業は裾野が広く、県内経済への波及効果が大きい産業だと考えております。議員のご質問の中にありました秋田県の住宅リフォーム緊急支援事業は工事の内容を限定せず全ての住宅リフォームを補助の対象とするものであり、このような助成制度は個人資産の形成に一律の税金が使われることになるため、慎重な対応が必要と考えております。このため多くの県では、例えば地域木材の利用、それから省エネなどを促進するリフォームなどに対し補助を行うなど、社会的な課題に応じた助成制度を実施しているところであります。また国におきましても、二重サッシへの取り替えなど省エネリフォームに対し住宅エコポイント制度を実施しているところです。本県におきましても、ふるさと信州・環の住まい助成金により県産木材を使用し十分な環境性能を備えた良質な木造の住宅のリフォームの費用に助成をしているほか、耐震改修や、高齢者や障がい者の住宅のバリアフリー化への補助など、住宅施策上の重要な課題に限定し支援しております。住宅のリフォームは地域の事業者が担い手の中心となっていることから、引き続きこれらの施策を積極的に進め、足元から県内経済の活性化が図られるよう関係部局とも連携を図りながら取り組んでまいりたいと考えております。
<和田県議>
建設部長は、個人資産の形成にあたるということで、いろいろなくくりで県はやっていると言われておりますけれども、本当に県内経済が疲弊しているなかで、地域経済を活性化させるという観点で今回思い切ってやっていただきたいということでありますが、その点いかがでしょうか。もう一度お願いいたします。
<建設部長>
おもいきってやってはどうかという再質問でございます。先ほどの回答とも重なりますが、現時点におきましては、住宅リフォーム、非常に経済波及大きいと考えておりますが、やはり省エネとか地域木材の利用、耐震化、バリアフリー化など社会的な課題に対応するものについて税金で対応させていただきております。個人資産の形成についての対応は慎重に対応させていただきたいと考えております。
<和田県議>
経済波及効果は大きいと部長も認めていらっしゃいます。そこを専門の皆さんの知恵を出し合って、本当に使い勝手のいい制度にして、経済波及効果、地域経済活性化のために、なんとしてもこれを具体化をしていただきたいと思います。知事には新年度予算編成のなかで、長野県内の景気が大変に低迷しているなかで景気にすぐきく経済対策として検討していただきたいということを求めておきたいと思います。ぜひ部長もそういう角度でさらに検討を進めていただいて提案を知事にしていただきたいと思います。要望しておきます。
<和田県議>
昨日、2ヶ月にわたって和田副知事を責任者として浅川ダムを検証する論点再確認作業の報告書が知事に出され、この報告を受けて知事は建設を「中止すべき瑕疵は見いだせなかった」として建設を継続するという最終判断をしました。知事は「県民主権」といいながら、最終判断されるまでの論点整理作業にあたる庁内メンバー、および意見を聞かれた専門家の選定のしかたに疑問があります。また、検証作業の情報は県民に公開されず、途中で県民の意見を聞く機会もない、この間の論点整理の報告に至る経緯は、知事が常々いわれる開かれた県政とは反対に「ブラックボックス」のままで、県民の期待に対する裏切りです。昨日のダム容認の報道を見た多くの方々から、さっそく阿部知事に失望したという声が私たちのところにとどいています。
知事は、論点再確認作業にあたり、ダム建設の続行から、中止まで予断を持たずに確認作業を進めて欲しいと指示されたといいますが、そもそも、庁内メンバーでの論点確認作業の事務局が建設部であるということが、予断を持たずに進められるということを担保できたのでしょうか。中立性や客観性にかけるのではないでしょうか。
論点は地すべりや、内水災害、基本高水の設定など、「反対派」が指摘する疑問点について、河川課が従来の県の立場や根拠となるデータを説明し、他のメンバーは疑問点を質すという流れですすめられたようですが、建設部河川課の説明に庁内メンバーがどのくらい疑問を質すことができたのでしょうか。知事に伺います。
<阿部知事>
浅川ダムの建設に関するご質問でございます。
昨日私は浅川ダムに関連して和田副知事に対して再確認作業を指示しておりましたが、その報告を受けて私、知事といたしまして浅川ダムにつきまして最終的な判断をさせていただきました。さまざまな思いはございますが、ダム建設を中止すべき重大な瑕疵は見出されなかったということで、私の判断として浅川ダムの建設を認めるという形で決めさせていただきました。今お話がございました、論点再確認作業の事務局について、客観性が欠けるのではないかということでございますが、これは県の組織で言えば建設部の河川課がこれまでダム関係の事業をやってまいりました。今回は建設部長、河川課長というラインではなくて、私からは和田副知事に対して再確認作業をするようにということで指示を出しまして、さらに副知事の判断でメンバー、これは建設部に限定されず、農政部、あるいは林務部の技術系の課長も含めて参画をしてもらった上で、さらには事務局も河川課ではなく建設政策課と、これは建設部ではありますけれども、浅川ダムの建設推進に直接的に関わっているポジションではないわけでありますので、そこを事務局にして検討を進めるということで、これは副知事の方からそういう提案がありましたので私としてもその方向性を了解したわけであります。私は論点再確認作業について、質問の中でも引用していただきましたけれども、建設推進から中止することまで含めて予断を持たずに検討するように指示をいたしました。今回の確認作業につきましては客観性があると私は考えております。
それからダムの安全性の関係でございます。今回の浅川ダムの私自身の意思決定、長野県という組織としての意思決定は、これは河川整備計画を国に認可してもらい、そして県議会の議決のもとでダム建設が始まっているわけでございますから、長野県としてはその段階で、県としての意思決定されているものと思います。しかしながら私としては、県民の皆様のなかに本当にさまざまなご意見もあるし不安視される方もいらっしゃるということで、改めて再確認作業を行ったということであります。私自身納得できる結論を出して県民の皆様に説明責任を果たすということを選挙中から訴えてきておりましたので、その私の発言について誠実に果たしたいという思いでこれまで取り組んできたところでございます。
断層、あるいは地すべりの話がございます。これについても、反対派の皆様を含めていろいろご指摘がありました。今回副知事を中心とした論点再確認作業におきましては、地質の権威であります、土木研究所地質監の脇坂安彦氏、そして地すべりの専門家である信州大学名誉教授の川上浩氏、お二人からご意見を聴取しました。これは昨日ご提出した対外的に全て情報は公開せよということで公開されていると思いますけれども、論点再確認の報告書のなかにも、これはダム建設に対する異論ということで長野県治水利水ダム等検討委員会の答申では、FV断層の活動性と下流部への延長を確認し、F9断層と線状凹地について再調査を必要とするとされていたが調査されていないんじゃないかという点もあえて論点に含めて専門家に嫌がられるほど、本当にそうなのかということで確認をしてもらったところであります。FV断層につきましては、これは活断層の第一人者の文献上もFV断層というものは載っていないということ、独自の調査でも活断層ではないと確認しているということを改めて把握、確認しておりますし、F9断層につきましてもこれは活断層であれば断続的にくぼ地があるはずであるけれどもそうしたくぼ地がないということで、これは活断層であるということの関係はないという確認を取った上で安全性を確認しているところであります。
また地すべりに関連いたしましても、地震時の斜面の安定問題ということについては議論が学会の中でも進められております。普通に地すべり対策工事をやっておけばそういうところはすべらないと、新しく地すべりブロックを描いて地滑りの想定をする必要がないというのが結論であるというご意見を頂戴したところであります。また近年、深層崩壊ということが言われています。これは用語として新しく出てきたわけでありますが、概念的には必ずしも昔なかったというものではないわけでありまして、国土交通省の簡単な定義では2メートル程度の表層より深い岩盤が崩壊するものが深層崩壊であるとされていますが、この定義に基づけば、地すべりも深層崩壊でありまして、浅川ダムに関連してそういう観点での調査もすでに行っているところということで報告を受けております。こうしたことから、専門家の皆さんがご自分の名前も出して安全であるということを断言されているわけでありますし、今回私も、取りまとめの報告書についても詳細にやり取りを記載をさせていただいているところであります。私は、この結論については重く受け止めなければいけないというふうに考えております。10年間の変化を含めて、また住民の皆さんの声を含めて改めて現場の調査が必要なのではないかということでございますが、先ほど来申し上げておりますように専門家の意見としては充分安全性の確認がされているということでございますし、またダムあるいは地すべり等について新たな学説知見が出てきていないというふうに考えております。そうした観点から改めて調査する必要はないということを確認させていただきました。
なお、地すべりにつきましては本体ができあがった後にしっかりと湛水試験を行ったうえで最終的な判断をしていくことはもとより重要でございますし、これからも住民の皆さんの不安に対してはできるだけきめ細かく丁寧にご説明させていただくことは心がけていきたいというふうに思っております。
<和田県議>
知事がいくら疑問を呈して検証していただいたといっても、あくまで机上の検証であった、確認であったわけです。なぜ県民が安全性に不安、疑問を抱いているか、全く根拠なく反対のために調査を求めているわけではありません。
地附き山地すべりで大災害で生命を奪われ、住宅を飲み込まれた、こういう実際の体験をしている本当に知事に対して安全性、再調査を求めているのです。これをどう受け止められるのですか、もう一度お答えください。
流域住民が浅川ダム建設に反対している大きな原因は、浅川ダム建設予定地周辺の地質、断層、地すべりなどにたいする安全性の問題があることは、繰り返し議会で言ってきました。9月議会でも、石坂議員の代表質問で深層崩壊を含む安全性の検証を是非行っていただきたいと求めたことに対し、知事は、
「浅川ダムの安全性の検証ということでございます。浅川ダムの計画にあたりましては、深層崩壊といった現象という可能性も含めて調査を行って、浅川ダム地すべり等技術検討委員会で安全性を確認してきていると私は聞いております。一方で安全性について、先般も流域の住民の皆様方と意見交換しましたが、安全性について不安を感じているという意見が現時点でもあるということも事実だと思っております。こうした地すべり等に関する安全性の検討も含めて論点再確認作業のなかで確認を行って参りたいと考えております。そのうえで結論をだしてまいります。」
と答弁されましたが、結局、安全性の検証は机上で、いままでのデータに対して、10年前、吉村知事時代に設置された「地すべり等技術検討委員会」で委員長を務めた川上浩信大名誉教授、ならびに土木研究所の脇坂氏への意見聴取であったわけです。
この10年間、新たなボーリング調査は結局一度も行われていません。「地すべり等技術検討委員会」の委員としてただ一人、奥西一夫京都大学名誉教授が深層崩壊を起す可能性のある「岩盤クリープ」の可能性を指摘し、ボーリング調査を求めたが却下されました。奥西先生は、「10年前と比べ、地すべりの研究は進み、固い岩盤でも崩壊する可能性があることがわかってきた。再検証というのであればボーリング調査は不可欠で、新たに調べることもしないのでは再検証とはいえない」と指摘しています。
知事がダムに賛成・反対の県民の意見を聞く会を開いたときも、ぜひとも再調査をしてほしいと切実な県民の声を聞いたわけです。県民の生命・財産を守るというのであれば、追加調査をすべきと思いますが、知事いかがですか。
知事は、治水はダムだけではできないといわれ、今後内水対策を進めていくということをいわれました。この点は、ダム建設に対して賛否が分かれていた浅川の流域協議会でも、ダム建設促進を求めていた浅川改修期成同盟会でも内水対策は一致して要望がありました。この要望を含むかたちで浅川河川整備計画に内水対策が明記されました。そういう経過であり、実際に起こっている洪水が内水被害であることからも内水対策の提案は歓迎です。
しかし、現実に毎年のように起こっている浅川の水害は内水災害であること、内水災害にはダムは効果がないことを知事も認めているわけですから、外水対策のためのダムは事実上必要ないのではありませんか。何故、ダム建設を優先しなければならないのか、今この時期に、充分な再検証もしないまま、ダム建設継続の結論を出す根拠にはならないと考えますが、知事、いかがでしょうか。河川整備計画に位置づけられている、ダムの賛否を超えてすべての住民が望んでいる内水対策こそ、来年度の予算に計上して、最優先で進めるべき課題だと思いますが、いかがでしょうか。ポンプの増強はじめ、内水対策の具体化と今後の進め方について建設部長にお聞きします。
<阿部知事>
住民の皆様方の安全性に対する懸念に対して再調査を求めているということでございます。これは私は、住民の皆様方のところにお伺いして今回の私の判断についてしっかりとご説明をしていきたいというふうに思っております。また、これは和田議員には私からお願いでございますが、今回ダムについて賛成反対さまざまなご意見あります。しかしながら今回、報告書も含めて全て私どもの考えを明らかにさせていただいておりますので、本当に安全性についてどの点がどのように問題であるのかということをぜひ、議員であれば責任を持ってご指摘をいただいて、その論点について議論をしなければ、いたずらに住民の皆様方に不安をあおるということがあっては、私はいけないというふうに思っておりますので、ぜひそういうスタンスで議論をさせていただければというふうに思います。
また、内水と外水の関係では、浅川ダムについてはこれは外水対策のためのダムということであります。これまでの県の説明が、かつては必ずしも外水判断と内水判断を明確に区別することなく説明してきたのではないかという点については、これは私は県の今責任ある立場として、その点については率直にお詫びをさせていただかなければいけない部分はあると思います。しかしながら、内水対策だけを行えば外水対策に対しては対策は不要なのかと考えたときに、それは私としては外水対策は不要だというふうには考えておりません。しかしながら浅川の問題を考えたときに内水対策も併せて重要であるということは間違いない事実でありますから、これは昨日も会見の席でも申し上げましたが、住民の皆様方のご理解が得られれば、ポンプの増強について早急に着手をしていきたい、概略設計から来年から始めていきたいと思っておりますし、また千曲川の狭窄部の改修についても私は国土交通省に対して強く求めました。一定程度前向きな方向でご検討いただいているんじゃないかと思っておりますが、ぜひ引き続きこうした総合的な対策を、私はダムの問題、ダムを作るかダムを作らないか、そういう問題になってしまったことが私は浅川の治水問題の不幸なところだと思っております。ダムを作る作らないということだけではなくて、ソフト面の対策も含めて、そして浅川だけでなく千曲川の改修、拡幅も含めて、そうしたことを総合的に考えるなかで住民の皆様の安心感、安全を確保していきたいと思っています。
<建設部長>
浅川の内水対策に関するお尋ねでございます。浅川の内水対策につきましては、外水対策と同様に重要な課題であると県も認識しております。実は浅川の内水対策につきましては、平成18年2月、一度地元に説明をさせていただきました。今のダム計画を決めたのが平成19年2月ですから、それより1年も前に浅川の内水対策につきましては県が基本的な考え方を決定いたしまして地元に説明いたしましたが、地元の了解が得られず、再検討を余儀なくされたという経緯もございます。現在、内水の既往最大被害の昭和58年の同規模の洪水に対しましておおむね宅地部での浸水被害を防止することを目標として排水機場のポンプ増強や遊水地などを組み合わせた、より有効で効率的な内水対策の全体計画を策定しているところでございます。
今回の論点再確認作業におきましても、内水対策を前倒しで進めることが必要とのご報告がございました。これまでは地元の皆様方には、ダムの完成までには内水対策に着手すると説明してきたところですが、できるだけ内水対策を事業化できるよう、前倒ししての実施を検討してまいりたいと考えております。具体的には、本年度検討しております全体計画につきまして、地元の皆様のご了解が得られるならば、来年度には排水機場のポンプ増強への概略設計に着手してまいりたいと考えております。
また、併せて内水被害防止のためにはソフト対策も重要でございますので、長野市、小布施町、地域の方々と連携し、例えばハザードマップを活用した避難訓練の実施などについても実施していくべきだと考えております。
<和田県議>
平成18年の内水対策について地元に説明をされたということですけれども、このときは田中知事「脱ダム」の時代であって、住民とこういうことを協議するという状態ではなかったと思います。今本当にそれを受け入れるということになると思いますので、ぜひ地元との説明会、また話し合いを行っていただきたいと思います。ポンプの増強だけにとどまらず遊水地をはじめとして総合的な対策を検討されるように要望しておきたいと思います。
知事は、はじめから結論を持って臨んだのではない。「ダムありきでも、ダムなしでもない、県政への信頼回復の問題だ」と言いながら、すでに国の認可、議会の議決、ダム工事が始まっていることを踏まえ「白紙」からの検討はできないと、矛盾に満ちたことを会見でいわれていました。知事は県のいままでの説明がわかりづらいと言っていますが、知事の言われることもなかなかわかりづらいと思って会見をお聞きしました。
県民は住民参加でダムに拠らない治水のあり方の議論を重ねている最中で、知事が代わり、村井前知事が穴あきダム建設に方針転換しました。それにそってダム着工に至るまで国・県が一体になって進めたのですから手続き上に「重大な瑕疵」が生じるはずはないわけです。それを、今回、知事が追認する「納得」するための検証をした。果たして、これで県民が納得するのか、はなはだ疑問です。
昨年10月の市長選前に長野市民を対称にした信毎の世論調査で見直すべき62%、見直さなくて良い23%。今年4月、県議会で浅川ダムの本体請負契約を承認した後の県世論調査協会の県民調査、浅川ダム建設を評価しない58.3%、評価する24.8%。さらに県知事選挙前の県政世論調査はダム建設を評価しない52.1%、評価する26.1%。知事選挙後、浅川ダム工事は一時中断して再検証すべき43.1%、工事中止すべき18.3%、本体工事を進めるべき26.7%。この、常に6割前後のダム中止・見直しを求める県民が「浅川穴あきダム」建設継続・村井県政の継承ではない、阿部知事に期待したからではないでしょうか。今回の庁内だけの論点整理の報告で「重大な瑕疵」はないと結論付けたからとしても、それだけで知事が判断されるべきだったのでしょうか。
この見直し、中止を求める世論をどう受けとめているのですか。県民の世論に背を向けて重い決断に至ったのは何故なのかを知事に伺います。
<阿部知事>
県民世論に背を向けて決断をしたというご指摘は、私はそのつもりはありません。県民の皆様のなかに本当に様々なご意見があるからこそ、私自身も大変悩んだ部分もありますし、事務方には非常に細かいことを言うやつだと思われたかもしれませんけれども、しつこい指示、確認をさせていただいたりしました。また、さまざまな皆さんからはもっと早く決めろというご意見もありましたけれども、私自身が納得できる結論を出す前に、私がやりますと、進めます、認めますということは言えないということで、そうしたことについては私は言わないでまいりました。そういう観点で私自身は中止することも含めて、本当に問題があれば中止もあり得ると思って取り組んできたわけでございます。しかしながら、先ほどお話ございました、私の判断の前提というのは、これからまさに浅川にダムを作ろうか作るまいかという議論する問題ではありません。また、これまで多くの皆さん、関係者の皆さん、流域住民の皆さんも含めて議論が行われてきたわけでございます。そうしたものを全部ご破算にして私が判断をするということは、これは行政に対して責任を持つ知事として取るべき立場ではないというふうに私は思っております。そうした観点で浅川ダムの問題はとくに、あまり例が良くないかもしれませんけども、住民の公民館を作るとか住民の利便性を高める施設を作るとか作らないとかいう問題ではなくて、住民の生命あるいは財産を守ると、そのためにはどういう手法がもっとも望ましいのかという話でありますので、私としては現時点では判断するに際しては、これからの未来の可能性ということではなくて、現時点での法律の考え方、あるいは技術的な知見、そうしたものに基づいて判断をしていくという立場を取ったわけであります。そうした観点で、私としては浅川ダムについて、これまでの経過も含めて、建設の継続を認めていくという判断に立ち至ったところでございます。
<和田県議>
長野県内では、佐久市の文化施設建設計画が住民投票で中止になりました。長野市でも市民会館問題で鷲沢市長が示した案が市民の世論に押され、市議会も動かし計画が二転三転しています。
浅川ダム計画ができて以来30年、何故、ダムができなかったか、本体工事は3度延期し、全国でもまれに見る県民参加で検討をしてきました。本体工事の契約がされてもなおダムは中止になりました。県民がダムの必要性がないと言っている、造ることで危険が増すと感じている。だからこそ、ここまで本体ができなかったということを知事は観るべきではないでしょうか。
知事は、「私が納得して、説明責任を果たす」と繰り返しいわれています。12月9日には知事が県民に対して説明をすると日程もお聞きしています。実は、住民団体が実行委員会形式で広く県民に呼びかけて浅川ダムを再検証する集会を12月18日(土)に予定しています。知事の日程調整はかなり厳しいようですが、ぜひとも日程調整をしていただいて、知事自ら集会参加者に説明責任を果たしていただきたいと要請します。