<毛利県議>
日本共産党県議団を代表し、代表質問を行います。
知事が進めようとしている県政上の問題、および国政上の重要問題で見解を伺います。
まず、最初は地域戦略会議についてです。地域戦略会議の果たす役割とは何か。昨日の代表質問を聞いていてもなかなか理解できません。何をやるのかという昨日の代表質問に対する答弁の中で、知事は県と市町村が対等な立場で話し合い、市町村の取り組みの支援や、専門性を有する職員が必要な場合は職員を確保する。協議の中で必要があれば国へ意見を挙げていく。地域主権を推進していく場だと説明されました。
今、地域には広域連合があり、共同で実施しなければいけない事務は市町村の枠を越えてそこで実施しています。協議調整の場ということになれば、いま「県と市町村とのあり方懇談会」があります。そのほかに「県と市町村との協議の場」をあらたに作るとの方針も出されています。どうしてその上に地域戦略会議が必要なのでしょうか。
地方から分権改革の発信をという知事の意図がわからないわけではありませんが、屋上屋を重ねて、市町村を引き回すニュアンスが強いような気がしてなりません。それこそ地方の自主性を生かす地方自治に反するのではないでしょうか。知事の明快な説明を求めます。
<阿部知事>
毛利栄子議員のご質問に順次お答え申し上げます。
まず地域戦略会議の設置についてです。これは屋上屋でないかということでありますが、これは、広域連合は市町村が自主的に作られているわけでございます。私は広い長野県、本当にそれぞれの地域ごとに特色や実情がかなり異なっていると思っております。長野県は面積的に広い県の範疇でありますし、また広いだけでなくて地域地域の個性がいい意味で強い自治体だと私は考えております。
その反面、県の組織を見ると非常にシンプルな組織でありますが、地域政策を考える部署が必ずしもはっきりしていないと私は思っております。地方事務所ごとの予算というものもないわけでありますし、これまで県としてそれぞれの地域に対しての目の向け方、あるいは県全体ではなくてそれぞれの地域ごとの課題、あるいは市町村の取り組みに対する支援といったものにたいする向き合いかたを、私はこれまで以上に強めていくことが重要だと思っております。
もとより、地域戦略会議、広域連合であるとかあるいは市町村が行います固有の事務の決定とか実施とか、そういうことに関与するためのものではありません。県の現地機関と市町村とが連携、共同して、広く地域振興や当面する課題に対して広域的な政策を検討する場と考えております。私としては長野県においてこうした会議の場をつくるということは重要だと思っておりますし、もとより今現在行われている広域連合、それぞれの地域によって取り組みのあり方とか議論の中身とかさまざまありますけれども、一律に押し付けるということではなくて地域ごとの取り組みを尊重しながら、こういう地域戦略会議というものもつくってまいりたいというふうに考えております。
<毛利県議>
次に開かれた県政について伺います。情報公開、県民主権、県民の中に入って現場の声を県政にという知事の政治姿勢には共感もし、理解もするのですが実際行われていることに疑問符が付く問題がありますのでお伺いいたします。
「浅川ダム論点再確認報告書」に添付されている資料を拝見させていただきますと基本高水流量について専門家とのやりとりの報告があるのですが、3日間にわたって3時間30分意見を求め、疑問を投げかけた方の報告は要旨のみでわずか1ページ、一方県の意図に沿った話をする専門家は1時間の話し合いで6ページも使って詳細に報告しています。また、ダムの安全性について、専門家と質疑を行った報告の中で、別の専門家の名をあげて建設容認の立場から論じている資料がありますが、名指しされた本人から報告書の中には誤解や偏見があると知事に要望書が出されている状況もあります。
「予断を排し可能な限り客観的データーと資料に基づき再確認した」というには余りに客観性と公平性を欠いていると思わざるを得ません。開かれた県政を望む県民の期待を裏切ることにはならないか見解を伺います。
<阿部知事>
次に浅川ダムの再確認報告書の専門家からの意見聴取、県民に開かれた県政と齟齬(そご)があるのではないかということでございます。まったくそういうことはないと申し上げたいと思います。
副知事を中心とした論点再確認作業におきまして、土木研究所の脇坂先生、それから信州大学名誉教授の川上先生、同じく信州大学名誉教授の富所先生から専門家としてのご意見をいただきました。それぞれの専門家のみなさんのご意見を踏まえて論点再確認作業をあらためて、これまで明らかにしていなかった点についても報告書に記載をするという形で、よりいっそう公開性、透明性を高めたところです。
ご指摘いただいているのは、宮本博司さんの件だと思いますが、宮本博司さんに対しては、私どもは論点整理の仕方でありますとか、県民への説明の仕方、テクニカルな話ではなく論点整理の仕方、そういう全般的なアドバイスをいただいたという形になっておりますので、他の皆様方とは報告書での記述の仕方は異なっておりますが、これはやりとり、私どもの期待している趣旨がほかの専門家の皆さんと違っているということによるものでありまして、決してなにか都合の悪いところを隠そうということではまったくありません。
昨日森田議員のご質問にもお答えいたしましたが、建設継続を表明したあとも、できる限り情報を公開して、流域の皆さん、一般の県民の皆さんに対しての説明もさせていただいてきております。また、浅川流域協議会の皆様方にもご説明をしてきているところであります。今後とも引き続き説明責任を果たすべく、努力してまいります。
<毛利県議>
次に消費税増税に対する知事の見解をうかがいます。小泉構造改革で国民生活がズタズタにされ、毎年の社会保障費の2200億円削減で、国民から見放された自民党政権は野に下りました。期待を集めて登場した民主党政権は、転換どころか同じ様な道をあゆんでいます。ばらまきを続けた結果、社会保障の財源不足を補うためには消費税の増税しかないと大合唱を繰り返しています。新年度の税制でも一握りの大企業には減税、庶民には増税と冷たい対応です。そのうえ、生活弱者には重くのしかかる消費税増税で、税金はもうかっているところ、収入の多いところから徴収するという累進課税の原則からも外れています。知事の見解を伺います。
<阿部知事>
消費税の関係でございます。社会保障関係費は国も地方も増加の一途をたどっているというなかで、行政が安定的にサービスを提供していくための財源というものは、そのなかでも地方消費税あるいは消費税は現在貴重な財源になっていると思っております。
社会保障のあり方、それからその財源につきましては、私は、新しい負担を国民に対して求めるのであれば国においてもこれまで以上の行財政改革をまずはしっかりと行っていただく必要があると思っております。また、仮に消費税の引き上げということになる場合にも、今、世の中全体が本当にこれからの社会は安心して暮らせるのだろうかという不安感が蔓延しているのではないかと思います。税負担を引き上げるということであれば、本当に安心できる社会保障制度になるのか、安心して暮らせる日本になるのか、そういうビジョンを明確に示していただいたうえで、そのための財源ということで国民に対しての理解と説明を国が求めることが重要ではないかと思っております。
<毛利県議>
次にTPPについて伺います。知事は農業・農村への影響が大きいこと、情報がよく伝わってこない中では全体がわからない、慎重の上にも慎重にということを繰り返し述べられておりますが、4割近い世帯が農林業に従事する中川村では、20日村民の1割近くが参加してデモを行い、農業の疲弊と地域社会の崩壊を起こすと反対の声をあげています。
TPPは農業だけでなく金融や人的交流、医療にも大きな影響を与える問題です。医師会も儲け主義の企業の参入、自由診療の増加で混合診療に道を開く、国民皆保険制度が崩れると懸念を表明し、長野県医師会から全県議に対し、ぜひご理解をとの文書も届けられています。TPPは農業はもちろん、多方面にわたって影響を与える重大な問題です。改めて知事の見解を伺います。
<阿部知事>
TPPに関する見解ですが、これは何度も申し上げておりますが、慎重に対応するということを基本にしております。TPPのルールづくり、3カ国により進められているところでありますが、日本にとっての、そして長野県にとってのメリット、デメリットに関する情報が必ずしも十分ではないと考えております。そうした情報が十分共有される中で国民的な議論が行われなければならないと思っております。
とりわけ中山間地域を多く抱える長野県にとっての農業のありかた、あるいはほかの分野、医療の話もありましたが、そうした分野についてはこれからの地域社会を考えるうえできわめて重要な論点がさまざまあると思っておりますので、国においては慎重な対応を行ってもらいたいと思っているところです。
<毛利県議>
県財政と県債について知事にうかがいます。
阿部知事初の総額8464億円の通年予算が編成されましたが、対前年度比151億円、マイナス1、8%の緊縮予算です。歳入面では、リーマンショックの影響で、県税は08年度から10年度までは3年連続で落ち込み続け、07年と比較すると788億円も減少を続けていましたが、今年は4年ぶりに対前年度で84億円の増を見込んでいます。県税の中で、法人2税の増額が見込まれていることが県税全体を増加に転じさせるなかみとなっていますが、それでもリーマンショック前の半分にも届かず、少しずつ明るさを取り戻してきつつあるとはいえ依然として県経済は厳しいことを示しています。
一方で一般会計における県債をみてみると、田中知事時代の03年度以降、全国的に見てもまれにみる減少を続け、07年度までは減り続けてきましたが、08年度以降、村井知事は「県債は元利償還の範囲内」といいつつ、臨時財政対策債は実質的な地方交付税との認識で、大幅に増やしてきたため、2010年度の累積借金は過去最高の1兆6615億円となりました。11年度はこれをさらに更新して年度末には1兆6971億円になる見込みです。
この様な財政状況もと、阿部知事は昨年11月の部局長会議における予算編成方針で「財政見通しは見ただけでくらくらするくらい厳しい」との認識のなか、臨時財政対策債が通常債を大きく上回っていることは異常事態とし「臨時財政対策債も借金に変わりはない」と、今回、発行を前年度比でマイナス17%、142億円おさえ、県債総額で167億円減らした予算編成をされました。
国の借金は「後は野となれ山となれ」式で増え続け、1000兆円の大台に乗ろうとしているいま、私たち党県議団は、臨時財政対策債も借金だ、安易に増やすことは大問題と警鐘を鳴らしてきた立場から、子や孫の世代に可能な限り多額のつけ回しをしないという阿部知事の考え方は大いに共感でき、借金減らしにズバリ切り込んだ今回の予算編成のあり方については意を同じくするものです。
また、借りることによって行政改革を強いられてきた行政改革推進債は07年度91億円、08年度75億円、09年度21億円と活用されてきましたが、10年度以降活用されていないことも歓迎いたします。
長寿県長野は誇るべきことですが、高齢化が全国より10年早いスピードで進み、少子化が進行し、県人口も平成12年の222万人をピークに近年では毎年1万人を超えて減少をつづけている現状があります。
国の政策もあり、県内でも若年労働者は非正規雇用が2人に1人、さらに雇用さえ確保されずに失業を余儀なくされている若者が少なからず存在するなかで、地方自治法に規定された自治体が本来果たすべき医療・福祉・教育など県民要望に応えていくためには、県財政の健全化は喫緊の課題になっていると思います。
(1)、そこで、知事に県財政と県債の現状をどの様に認識されているのか。
(2)、県財政の健全化のためにどの様な対策をとっていくのかについて伺います。
<阿部知事>
(1)、県財政と県債の現状認識ということでございます。高齢化の進行に伴います社会保障費の自然増、あるいは公債費が依然高い状態にあるということで、義務的経費が政策的経費を圧迫する、極めて硬直的な財政構造にあると考えております。今のままの予算の形態を続ければ、24年度以降も財源不足も生じると見込まれておりますので、このまま何も手立てを講じないという選択肢はありえないと思っています。
県債につきましては新年度の当初予算におきまして可能な限り次世代に、子どもたちに多額のつけ回しをしないという観点から、県債発行額一般会計で前年度当初予算から167億円縮減という形を取らせていただきました。平成13年度から国の財政地方計画に沿って国の臨時財政対策債の多額な発行が続いているということで県債残高は今後も、今の状況が続けば増加していく見込みでございます。ぜひ中長期的な視点にたって県全体の債務を減らすように努力を行って参りたいと考えております。
(2)、それから財政の健全化でございます。これは不断の事務事業の見直し、行財政改革ということはもちろん重要だと思っております。現行の行財政改革プランは平成23年度末で終了いたしますので、新年度早々に行政財政改革推進本部をたちあげて、全庁挙げて財政健全化に向けた新たな方針を検討して、具体的な取り組みを行うよう検討してまいります。あわせまして、地方の財源不足の補てんを過度に臨時財政対策債などの起債に依存しないような制度の確立、あるいは本来の趣旨の地方分権を実現して、権限に見合った財源がきちんと確保されるように引き続き国に対しては求めてまいります。
<毛利県議>
信州型事業仕分けについて知事にうかがいます。仕分けそのものは住民の期待も高く常に前向きに見直さなければいけないことは、税金を使っている以上、仕分けという形をとるにせよ、とらないにせよ必要なことなので異論があるわけではありません。事業の選定内容や構想日本のメンバーを入れる問題、また議会のチェック機能や監査、政策評価との関係などに課題があると思われますのでお聞きします。
知事は、信州型事業仕分けを行っての反省点として課題はあったが成果があったとして (1)外部・現場・地域の視点 (2)多数の県民から関心を持ってもらった (3)職員の意識改革、説明能力の向上に役立った (4)短期間の取り組みで県民の仕分け人が少なかった (5)現場視察ができなかった等が述べられていましたが、まず事業の選定は適切だったのかという点でお伺いします。
私は1月16日に行われた仕分けを傍聴させていただきましたが、ジョブカフェ信州運営事業ではジョブカフェの事業とハローワークの事業、若者自立塾の事業の違いがわからないまま議論されていました。ジョブカフェで相談したらどれだけ就職に結び付いたのかと短絡的な質問がされたり、どんな職業を選択していいかわからない若者に懇切丁寧に対応しているジョブカフェの役割を理解しないままのやりとりがあったりで、判定結果は要改善ということでしたが、乱暴な議論をやっているとの印象を持ちました。
福祉就労強化事業等も含め、費用対効果で論ずるにふさわしい事業なのかどうか選定に課題があると思います。継続中の公共事業は仕分けになじまないということは理解できません。また、知事が交代して前任者の執行したものを仕分けする意味はわかりますが、新年度予算で自分が予算化してやっている問題を改めて仕分けするというのはいかがなものかと思います。極端なことを言えば、仕分けに依存するようになれば議会や監査はいらないということになり、地方自治の否定にもつながります。これらの問題で知事はどの様な見解を持っておられるか伺います。構想日本ではなく当事者を含め県民でやったほうが現実性があるのではないでしょうか。
<阿部知事>
まず事業仕分けの関係でございます。パイロット事業をおこなっての反省点ということでありますが、パイロット事業の実施にあたりましては、関係の皆さんのご協力のもと、一定の成果を上げることが出来たと思っております。しかしながら限られた時間で実施いたしましたので、市町村補助事業を除外するなど対象事業の選定に限定をかけたということや、あるいは県民からの仕分け人の募集あるいは対象事業の提案募集について、募集期間が短かったというような課題がございます。こうした点については、今年度は改善をしてまいりたいと思っております。
議会や監査、政策評価との関連ということでありますが、議会や監査、これは地方自治法に基づいて、それぞれ二元代表制という立場、あるいは知事から独立した立場でその役割を担っていただいているところであります。事業仕分けは県における事業見直しの一つの手法ということで、完全公開、県民参加で実施しているわけでございまして、監査や議会の役割と重複する、相反するというふうには考えておりません。
また政策評価につきましては中期総合計画に掲げた44の主要施策の進捗状況について評価を実施しているわけでありまして、これも今後、中期総合計画を検討していきますが、政策評価のあり方についてはあわせてそうしたなかで考えていきたいと思っております。
事業仕分けについては、事務事業についてその事業の必要性あるいは実施主体のあり方、そうしたものについて広く県民のみなさんの参加も得ながら点検を行っていくわけであります。県の事業の点検のためのPDCAサイクルの一環であると考えております。
事業仕分けの見直しでありますが、先ほど申し上げたように様々な課題も踏まえて来年度においてはいくつか見直しをしてまいります。県民判定人方式ということで、県民参加、県民目線の視点をより明確にしていきたいと思っています。対象事業については、できる限り現地視察を実施するなど仕分け人の皆さんにも事業の内容等について出来る限り理解を深めていただくようにしていきます。また、仕分け人の発言時間についても十分確保できるようにより深まりのある議論になるように仕分け班の構成についても変更をしてまいります。
構想日本の是非ということでありますが、私は日本全体、どうもこういう、モノに対するお金はかけるのですが、知的財産とかノウハウ、そういうものに対しての評価は非常に全体的に低いんじゃないかと思っております。長野県内の市町村でも、構想日本の入った自治体入らない自治体とあるわけでありまして、これは主観的な判断になるかもしれませんが、何人かのお話を聞くと、構想日本がはいったところの議論のほうが、非常に論点が明確で引きしまった議論になっていたということも聞いております。私としては構想日本については今回も引き続きお願いをしていきたいと思っております。
しかしながらいろいろご議論いただいておりますので、構想日本から来てもらう精通者については1名減らすという形で、より県民の皆様の声を反映させるようにしていきたいと思っております。事業仕分けの効果がしっかり反映されるよう、成果があげられるよう取り組んでまいります。
<毛利県議>
まず、最初に地域経済と雇用の現状について知事の認識を伺います。リーマンショックの影響に加えて、円高も追い打ちをかけ、長野県内の景気は依然として厳しい事態が続いています。1人当たりの県民所得は平成12年の313万円から平成20年は272万円と41万円も低下し、私どもが行なった「県民なんでもアンケート」は1800通余が返って来ていますが、失業や低賃金、少ない年金生活を強いられるうえに、国保料や介護保険料、教育費や医療費が高すぎて払えないという叫びが切々と訴えられています。
有効求人倍率は依然として0、61倍と低迷を続け、若者の雇用は特に深刻で23年3月卒業の大卒就職内定率は61、6%で全国水準から7、2ポイントもさがる超氷河期です。高校卒業生の就職内定率は88、2%、いまだ就職が決まらない生徒は300人と、まさに深刻な事態です。知事はこれらの現状をどう認識されていますか。
これらの大本には大企業がこの10年で、内部留保を244兆円もためこみ、預貯金など手元資金だけでも64兆円という空前の金余りになっているのに、下請けや労働者に還元しないために、内需が冷え切っているという問題があります。
こうした深刻な事態を県として少しでも前向きに改善するには、どうしたらいいのか。以下3点にわたって提案させていただきながら、知事の考え方を伺います。
1つは官公需発注を県内業者中心に行なって中小企業を応援すべきではないかということです。「官公需法」では工事や物件の納入に際し、「予算の適正な使用に留意しつつ、中小企業者の受注の機会の増大を図るように努めなければならない」と定められています。手元の資料によれば、本庁における印刷物の発注状況は平成17年度は県内業者が92、9%だったものが平成21年度は97、8%と増加しています。中小業者は仕事がなく、大変な時だからこそ、他の官公需発注も、購入は出来る限り地元業者から、工事の請負契約も分離分割発注などで出来る限り地元業者に行なっていくよう配慮すべきではないかと考えますが、知事いかがですか。現状はどうなっていますか。
<阿部知事>
次に地域経済と雇用の現状認識です。内閣府の月例経済報告によれば、我が国の景気は持ち直しに向けた動きが見られ、足踏み状態を脱しつつあると。ただし、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にあるということであります。県経済に目を向けますと、ゆるやかに回復しつつあるものの、改善の動きに一服感がみられるという状況にありますし、有効求人倍率についても緩やかに改善していますが、依然として低水準ということで、引き続き厳しい環境にあると思っています。
こうしたなかで、海外経済の改善や各種の政策効果などを背景として、景気が持ち直していっていただくことを強く望みたい、期待しております。県としてもそのための取り組みを引き続き行って参ります。海外景気、為替レート、原油価格の動向といったものによっては景気下振れのリスクもまだあるわけでありますので、デフレの影響あるいは雇用情勢の悪化懸念、そうしたものが残っているなかで引き続き経済雇用情勢を注視してまいります。
官公受発注による県内中小企業の支援についてということです。一般論としては、県内の企業の皆さんになるべく受注機会を持ってもらって元気になっていただくということは大事なことだと思っています。特に官公需、国や地方公共団体の工事発注、物品購入と、金額も大きいわけありますので、中小企業の受注機会増大という観点からは有効な手段だと思っております。長野県においては、工事等の発注において分離分割発注を推進しております。また、適正な納期の設定、銘柄指定の廃止等、中小企業の発注に配慮した措置を講ずるように努めております。また市町村等関係機関に対する協力要請も行っております。
21年度に長野県が発注した官公需総額が1056億2千万円でありますが、そのうち中小企業向けの契約額は946億4千万円ということで、率にして約9割という形になっております。あわせまして、予算執行方針におきましては県内経済活性化の観点から県内企業への受注機会の確保や県産品の積極的な活用などきめ細かな対応に努めるということにいたしております。
県の財政状況は引き続き厳しい状況であります。官公需総額の大幅な増額というものはなかなか難しいわけでございますけれども、さらに中小企業者の皆様方への発注機会の増大に努力してまいります。
<毛利県議>
2つは公契約条例を制定すべきではないかということです。
先行き不透明で閉塞感が漂う中、地方自治体の財政状況も厳しい事態が続いています。この様な中で県が発注する公共工事や委託事業、指定管理者への委託にあたって、発注する側では経費節減が優先され、受注側では仕事がない事による低価格入札が行われることによって、税金を使って行なう事業やサービスでありながら、生活出来ないほどの低賃金労働者を生み出し、行政サービスの質の低下を招きかねない事態が進行しています。
行政サービスの質の確保や地元企業の経営の安定のために、低価格・低賃金のマイナスの連鎖を打ち破り、適正な価格で事業を発注し、適正な賃金で雇用を確保することが求められています。
昨年11月議会では国に公契約基本法の制定を求める意見書を全会一致であげたところですが、国への制定を求めつつ、党県議団は官製ワーキングプアの改善のために、かねてから公契約条例の検討をお願いしてきているところです。千葉県野田市、神奈川県川崎市などではすでに実施しています。
阿部知事は選挙公約で公契約条例の制定を検討するとしていますが、検討状況はどうなっていますか。早期に策定をしていただきたいと思いますがご所見を伺います。
<阿部知事>
公契約条例の検討状況でございます。昨日もお答えいたしました通り、庁内の研究会で検討を進めているところでございます。具体的には条例に関する課題の整理や建設業関係団体の皆さんとの意見交換を行っております。23年度半ばを目途に中間とりまとめを行うという予定にしております。具体的な条例の制定の判断については、その状況を踏まえて考えてまいります。
<毛利県議>
3つは経済波及効果が大きい住宅リフォーム助成制度を創設すべきではないかということです。
新設住宅着工戸数は景気のバロメーターでもありますが、昨年一年間の着工戸数は全国的には、住宅ローン金利優遇などもあり、2年ぶりの+3、1%になりました。しかし、長野県は前年度比で、−3%と落ち込み、統計上比較可能な1965年以降最少です。
現下の経済・雇用状況では新築住宅への意識付けはなかなか高まらないものがあります。しかし、一方で「床をバリアフリーにしたい」「トイレをなおしたい」「手すりをつけたい」などの要望は強いものがあります。また、住宅関係の仕事は、かかわる関連業者が10〜20社と、多いため、地域でお金がまわる内需拡大の仕組みに直結し、経済波及効果も予算額の10〜20倍で仕事がない工務店の仕事確保にもつながります。
全国的に住宅リフォーム助成制度は普及し、現在では180を超える自治体が実施となっています。長野県でも、すでに15を超える自治体が実施するようになりました。利用者の申しこみを受け付けると数日で当初予算額がいっぱいになるという状況があちこちで起きています。上田市では昨年12月、20万円以上の増改築や修繕、模様替え等の工事に10万円を限度に20%を補助する制度をつくったところ、1月20日からの受け付け開始後わずか5日間で120件の申請があり、1000万円の予算はすぐに達成したとのことです。
そこで知事にうかがいます。
1月の臨時議会で和田あき子議員が、経済対策と位置づけて是非実施をと求めたところ、知事は「建設部のみならず、関係部局上げてどうした対応が求められるか十分検討していきたい」と答えられております。また、2月議会に向けて各派代表者との懇談の中で石坂議員の質問に対し「関係部局に検討するよう指示を出した」と言っておられたと報告を受けています。
新年度予算に反映されるかと期待しておりましたが、予算計上がなかったことは残念です。秋田県では市町村が実施した場合に上乗せ支援を実施しています。これが促進剤となって、県下の自治体でリフォーム助成制度が広がっているとのことです。
県の検討状況はいま、どうなっているのか伺います。経済不況が深刻な今だからこそただちに決断して実施すべきと思いますがいかがでしょうか。
<阿部知事>
住宅リフォーム助成制度の検討状況ということです。現在、ふるさと信州環の住まい助成金等によりまして、住宅リフォームの支援を行っております。住宅の省エネ化など県の施策目的、政策目的をさらに明確化していく必要があるということで、ご質問にもありましたように関係部局挙げて検討していくというふうに答弁申し上げているところであります。
23年度当初予算におきましては、信州の木と住いの総合対策事業を創設いたしまして、林務部と建設部が連携して住宅リフォーム等の支援に取り組むことといたしております。しかしながら、この住宅リフォーム、なんでも補助金を出せばいいというものではないだろうと私は思っております。具体的、明確な政策目的が必要だと思っております。
先般、県庁内の関係各課からなる住宅エコリフォーム等促進ワーキンググループというものをつくりました。重点的に取り組む政策等について部局横断的な検討を行い始めたところでございます。住宅産業はすそ野が広く、一定の住宅リフォームへの支援は地域経済への波及効果も期待できるという部分もあります。今後、このワーキンググループを中心に検討してもらって、効果的、県としての政策目的にかなうというものが具体化できれば、効果的な展開を行って参りたいと思っております。
<毛利県議>
男女共同参画社会について知事にうかがいます。
長野県では平成16年、議員提案による「男女共同参画社会づくり条例」が知事部局と共同で制定されて以来、関連施策の推進に向けて取り組みが行なわれてきました。しかしながら、女性就業率や女性議員の割合など全国的には高い水準のものもある一方、内閣府が男女共同参画の推進度を示す、指標10項目中、半数が全国平均を下回っています。
平成21年実施の「男女共同参画社会に関する県民意識調査」の結果をみても、「世の中は男女平等」だと感ずる女性の割合はわずか6、8%で、全国平均の3分の1でしかなく、意識面でもかなり低い状態にあり、男女共同参画社会づくりにはまだまだ課題が多い状況を示しています。
取り組みの現状に対し、平成20年11月には議員連盟が精力的な調査・研究を重ね、「男女共同参画施策の推進に関する提言」を前村井知事に対して行ない、指導者のリーダーシップの重要性を強調したところです。
今回、阿部知事は選挙公約に従い、副知事に長野県で初の女性を提案されており、おおいに歓迎するものです。
一方、現在「第3次長野県男女共同参画計画」の策定が行なわれていますが、条例25条で、県の職場における女性の登用を促進することを規定しているにもかかわらず、女性の管理職は平成22年は前年の3、3%からも減少し、全国平均の半分以下、2、9%にとどまっています。条例制定時の3,8%からも後退している現状はゆゆしき事態と言わざるを得ません。しかもあれだけ議員連盟が管理職の登用についても具体的な数値目標を持って取り組むよう提案させていただいているにも関わらず、数値目標も掲げられていないのはいかがなものかと思います。
そこで知事に伺います。
知事は議会の提言内容をどう受け止め、第3次男女共同参画計画にどのように反映しようとしたのか。また、県職員への管理職登用を進めるために具体的な数値目標を持つ事が大事だと思いますがいかがですか。
あわせて、行政職員に占める女性の割合は22、5%とほぼ4分の1ですが、6級の課長級以上になるとその割合は極端にすくなくなり、4%、7級では0、8%、8、9級の部長級はゼロと言う状態です。女性の昇任格差を是非是正すべきであると思いますし、副知事に女性の登用を考えていただいている阿部知事には期待も集まっています。女性の能力を活かすために公正な人事政策を行なうべきだと考えますが、知事のご所見を伺います。
<阿部知事>
次に男女共同参画の観点でございます。男女共同参画社会づくり議員連盟の受けとめと第3次男女共同参画計画の反映というお尋ねでございます。提言でご提案いただいております女性人材の積極的な登用という点、これは女性の活力を県政に反映するという観点で必要なものと思っております。また、新しい視点や発想を導入していくという観点からも必要だと思っております。また、男性も女性もいきいき暮らせる社会をつくるという視点で、ワークライフバランスも重要だと思っております。
現在策定をしております第3次男女共同参画計画におきましては、女性の活躍支援、ワークライフバランスの推進と、これを重点プロジェクトと位置付けて政策展開を図るということにしております。女性の活躍支援では、審議会委員や公立学校の女性校長、教頭への登用促進、またワークライフバランスの推進では、年次有給休暇、育児休業の取得率や男性の家庭生活への参画促進、子育てをサポートする態勢の充実などに重点的に取り組んでまいります。
県職員の女性登用についてであります。第3次長野県男女共同参画計画においても重点政策の1つと位置付けております。私としては女性職員の登用に意を用いていきたいと思っておりますが、どうも長野県全体の人事配置を見渡すと、まだまだ女性職員のすそ野を広げるというか、いきなり管理職員に登用する人をどんどん増やすという環境には、正直言ってまだまだなっていないのかなと思っております。これまでも多様な分野への女性職員の配置による職域の拡大、あるいは自治体学校での研修や国への研修派遣と、そういう分野での女性の皆さんにもどんどん活躍してもらうということも進めてきております。性別による固定的な役割分担意識を払しょくする職員の意識改革も必要だと思っております。
数値目標という点については、私としてはまずは、数値目標を定めることも必要な部分もあるかもしれませんけれども、まだまだすそ野が非常に狭いという状況にありますので、まずは今申し上げたような取り組みを着実に進めていくということに十分意を用いつつ、成果があがるように努めてまいります。
<毛利県議>
1級河川の治水対策について建設部長にうかがいます。県管理の1級河川は県下に735本あり、総延長は4812,9キロメートルで、うち改修済みは約4割と承知しております。そのうち100分の1確率で整備しているのは21河川とのことですが、近年のゲリラ豪雨の影響で時間雨量が過去にはあまり観測されなかったような降り方をする場合もあります。たびたび取り上げさせていただいている岡谷市の塚間川などは年に3回も4回も浸水を繰り返しています。100年確率どころか治水安全度は3カ月です。今、政治的な焦点として浅川が問題になっていますが、県下の河川の全体を把握して、優先度を決めて整備をすることが必要ではないでしょうか。
橋梁は長寿命化修繕計画ということで1029橋全部のチェックをしながら「緊急に対応する修繕工事」「損傷拡大を防ぐ修繕工事」「軽微な損傷の修繕工事」と状況に見合った対応がされています。道路についても策定計画がはじまりました。河川についてもその様な対応が必要だと思いますが、ぜひ全体を把握したうえで優先度の高いものから率先して整備してほしいと思いますがいかがですか。
<建設部長>
県管理一級河川の治水のあり方についてご質問を頂きました。
河川整備の優先順位につきましては、河川改修の状況、過去の水害発生状況、沿線の土地利用状況や災害が発生した場合の想定被害状況などについて、県内一律の基準で評価を行い、優先的に整備を行う河川を決定しております。浅川につきましては流域内の人口試算などの観点から重要度の高い河川であり、ひとたび氾濫が起こると人的な被害を含め甚大な被害が想定されると踏まえれば、早期に改修する必要があると考えており、河川改修、ダム建設及び内水対策を総合的かつ着実に進めることとしています。
また浅川と同様に、奈良井川や天竜川など重要度が高い河川や、近年の災害により被災した諏訪湖周辺の河川や上田市の矢出沢川などの河川について、早期の治水安全度の向上が必要であり、現在整備進めているところでございます。
毛利議員ご指摘の岡谷市の塚間川においても、局部改良事業や流域貯留浸透事業を実施しているところであり、また支線大川でも改修事業を実施しているところであります。今後も河川の重要度や災害の発生状況を勘案した計画的な河川整備を着実に進め、県下全域の治水安全度の向上を図ってまいりたいと考えております。
<毛利県議>
市町村国保事業について知事並びに健康福祉部長に伺います。
今、高すぎる国保料が全国的に大問題になっています。長野県の場合、高齢者の加入割合が3分の1と高く、所得200万円未満の世帯の加入者は全体の65%をしめ、100万円未満では所得の1割以上も保険料となっていて、低所得者層ほど負担が重い状況で、払えない世帯も増え、収納率は低下傾向にあります。
一方医療費も増える傾向にあるため、それぞれの保険者は国保料の値上げに直結させずに、少しでも抑えて欲しいという住民の声にこたえ、基金の取り崩しや一般会計からの法定外繰り入れなどを行なって負担軽減に努めています。しかし、それもなかなか大変になり、新年度では国保料の値上げを打ち出す自治体が増えています。
市町村の国保財政は財政難だから保険料を上げる、保険料を上げれば払えない人が出て滞納が増える、滞納が増えればさらに上げると悪循環に陥っています。
これに対して国は国民健康保険法を改正し、財政改善、収納率向上、医療費適正化を盛り込んだ「国保広域化等支援方針」を策定するよう都道府県に求めてきました。最大の狙いは法定外繰り入れをなくすことです。
県は昨年12月国保広域化等支援方針を決定し、さしあたって収納対策の共同実施をすることにし、困難事例は「地方税滞納整理機構」で対応するよう方針を決めたところです。今後検討課題とされた問題について引き続き検討していくとしています。問題の本質は国が国庫負担を従来の半分に減らしてきたことにあるわけで、広域化によって国保問題が解決できるとは到底思えません。
そこで、健康福祉部長に伺います。
(1)国は「国保の広域化はスケールメリットがある」と盛んに言っていますが、財政難の保険者をあつめた、国保の広域化で市町村国保の運営が安定するのですか。(2)高すぎる国保料は広域化すれば解消できるのでしょうか。(3)さらに、市町村の法定外繰り入れがなくなれば国保料はどうなるのでしょうか。お答え願います。
<健康福祉部長>
市町村国保に関連いたしましていくつかご質問を頂戴いたしました。
(1)まず、市町村国保の広域化、つまり財政運営の主体を都道府県とすることで国保の運営が安定するのかというお尋ねでございます。現在の国保の運営状況を見ますと、平成21年度の収支状況については赤字の保険者が37団体で、赤字の総額が約19億円となっています。また、本県の収納率は91.38%で全国平均より高いわけでございますけれども、前年度と比べて0.7ポイント低下していると。また、長野県は小規模な保険者が多く、その年の保険給付の状況によりましては財政運営が大きく左右される保険者が多いという状況でございます。
市町村国保をめぐるこのような課題は、広域化のみによって解決するというふうには考えませんけれども、例えば国の公費負担の在り方ですとか、あるいは市町村相互の格差是正のための財政調整の仕組みなど、国保制度の構造そのものに踏み込んだ本質的な議論が必要ではないかと考えております。その上に立って、市町村国保の広域化ということも検討すべき選択肢の1つではないかと考える次第です。
(2)国保の広域化による保険料への影響についてお尋ねを頂きました。一般に国保が広域化されると保険料も県単位で統一されることになりますので、現在より保険料が下がる市町村もあれば上がる市町村もあるということでございます。かりに広域化となった場合、保険料はまず医療費の見込みを把握し、そこから広域負担分を差し引いて算定することになりますけれども、その場合でも、例えば所得割と均等割りをどのような比率にするのかとか、あるいは低所得者への配慮をどのようにするのかとか、さまざまな要素がございます。広域化という要素だけではなかなか保険料がきまるわけではないということです。広域化の方向性を検討する際にはこのような点も踏まえて議論してまいりたいと考えております。
(3)最後に、広域化によって一般会計からの法定外繰り入れがなくなった場合の保険料への影響についてです。仮に市町村国保が都道府県単位の運営となった場合、一般的には市町村の一般会計からの繰入はできない仕組みになることでございます。ただ、このことが保険料の上昇に直結するというわけではなく、国の公費負担のあり方ですとかあるいは低所得者層への配慮の仕組みなど、様々な要素で保険料は決定すると考えております。現時点では全国知事会が国保制度の根本的議論を厚生労働省に申し入れ、国と都道府県の協議の場が設けられていることになってございまして、制度設計の詳細がまだ固まっておりませんので、保険料への具体的な影響についてはなかなか申し上げられないという状況です。
<毛利県議>
次に知事に伺います。国民健康保険事業は社会保障としての事業であり、国民皆保険を支えていくための制度です。保険者は市町村ですが、県は「国保事業の健全な運営に向けて必要な指導」をしていくことが求められています。国は医療費の増大を問題視し、削減ばかりを強調していますが、日本の公的医療費はGDPの6、7%で先進国では最低レベルです。
国保運営の責任は国にあることが4条で定められていますが、国が国庫負担金を増額していくことを求めつつ、健全な運営のために県としても何らかの援助をしていくことが必要ではないでしょうか。小規模市町村がおおく、乏しい財政力の中でも住民に密着して頑張っている保険者がおおいからこそ、独自支援を検討していただきたいと思いますがいかがですか。
<阿部知事>
次に国保の関係です。まず市町村国保への財政支援という点です。都道府県から市町村国保へは法令にもとづくさまざまな交付金等がありますが、それらに加えて県独自で市町村国保への財政支援を行っていくということについては、現下の厳しい財政上を踏まえるとなかなか難しい部分が多いと思っております。
現在国においては社会保険と税の一体改革の議論が進められているわけです。国民健康保険制度というのは社会保障制度の根幹をなすものと考えております。これは、ぜひ全ての国民が安心して医療サービスを受けられる制度となるように、まずは市町村国保制度の問題というのはかねてから問題になっているわけでありますから、国において今回の改革の議論とあわせて、しっかりと責任を持って支えられる体制を、財源も含めて検討してもらう必要があると考えております。
これは、県と市町村が財源をお互い出し合うということによっては、たぶん本質的な問題は解決しないと、むしろ国民健康保険を含めた社会保険制度、健康保険制度の在り方全般をどうするかということをしっかりと考えていただくことがまずは重要ではないかと思います。
<毛利県議>
子供医療費の問題では、県下ではすでに中学卒業まで実施している自治体が70%を超えており、新年度からは私の住む、岡谷市・下諏訪町・諏訪市・茅野市でも中学卒業まで実施する予定になっています。県として現在の入院で小学校3年まで、通院で就学前までの給付をさらに引き上げて、市町村を応援して頂きたいのは山々ですし、500円の受益者負担金についてもやめて欲しいと思いますが、今回は償還払いでなく窓口で払わないでも済む現物給付について取り上げさせていただきます。
若い子育て家庭の経済状況が大変な事は、不安定・低賃金という劣悪な労働環境にさらされていることが物語っていますが、中には夫婦とも派遣社員というご家庭もあります。アンケートに寄せられた切実な声を紹介させていただきます。
「不景気で夫が転職したが、収入が激減。子供が生まれ、私もパートをやめたため、生活が苦しい。収入が減ったのに支払うものは多くなり、生活していくのがとても大変。医療費、受給者証で戻ってくるが3カ月も後に入ってくるので微妙。戻ってくるなら窓口で払わなくてもいいようにしてほしい。お金がないときは受診を控えたりもあるので」
「窓口無料大賛成です。以前北海道に住んでいる頃は手数料も無料だったので、全く医療費はゼロ円でした。そうなって欲しいです。」
「就学前の小さな子供が3人います。一度に3人が医療機関へかかる事がありますが、急な時や続けて受診しなくてはならなくなると、手元にお金がなく、思うように受信できない時もあります。窓口負担がなくなるととても助かります」
今、全国的には34の都府県で窓口無料を実施しています。県外から越してきた方々は口々にいったん医療費を全額払うなんて長野県は遅れているとびっくりされます。
そこで知事に伺います。
少子化のなか、子育てにやさしい長野県づくりのために、いまこそ子供医療費を窓口で無料にするために一歩を踏み出して頂きたいと思いますがいかがですか。
今の施策の中に子育て世代の声が果たして反映されているか疑問です。
私どもはかねがね「福祉医療費給付事業検討会」に当事者を加えるよう求めてきましたが、開かれた県政・県民参加を掲げている知事ですので、その一歩として、まずはアンケートを実施して要求の把握をして欲しいと思いますがいかがでしょうか。
<阿部知事>
次に、子ども医療費の窓口無料化の話でございます。本県の福祉医療制度におきましては、今さらここで申し上げるまでもないわけですが、自動給付方式、受給者が医療費の自己負担分をいったん窓口でお支払いいただいて、後日市町村から負担金を差し引いた給付金を口座に振り込むという形になっています。
この福祉医療、子ども医療費のあり方というのは様々な議論があると思いますが、私は今この地方自治体が競うような形で窓口無料化だ、何年生までだ、入院もどんどん拡大しようということが本当にいいことなのかという点は、やや疑問を持っています。
とりわけ、例えば、長野県の場合は近隣の都道府県と日常生活圏が一体というのは極めて少ないわけですが、都市部の自治体はこれが自治体の競争で、いわば選挙公約で、みんなでこれを競いあうというような形で、どんどん税負担が増えていくと。これは、本当に地方が自立していれば、税負担も当該住民に求める一方でこういうサービスもやっていくということで、これはこれとしてひとつの議論としてありうるわけですが、今の現状を見た場合に、財政的に余裕のある自治体はどんどん先に進んでいるというような形でありまして、私としては、これは、本来は自治体が独自に政策を進めていくというよりは、むしろここまで普及していれば逆に国の社会保障制度が、基本的な社会保障制度として位置づけてもらうということが重要ではないかと思っております。
今国は逆の方向を向いているわけで、市町村が本来負担する必要のない国庫負担金の減額ということを、窓口無料化にした場合行っているわけでございますから、国の考え方は、私の申し上げていることと全く別の方向のベクトルを向いているとしかいいようがないわけであります。私はこれまでも、国による助成制度の創設、あるいは減額措置の廃止ということについて要望してまいりましたけれども、今後とも様々な機会をとらえて強く要望していきたいと思います。地方分権というのは、地方が何でもかんでもやればいいというのではなくて、本来国が国民全体に対してやるべきことは国にしっかりやってもらうということが重要だと思っております。そうした観点も踏まえつつ、国に対しては求めていきたいと思います。
また、教育子育て先進県を目指すと言った観点からは、中期総合計画のなかで、子育てはそういうところが県として取り組むべきなのかといったことはしっかりと検討してまいります。
また、窓口無料化にかかる子育て世代からの要求の把握ということでございます。福祉医療制度の改正にあたりましては、これまでも住民の声を直接把握している市町村の代表者、それから県からなる検討会の場で検討してきた経過があります。今後検討する場合にあっては、私としては当事者の声を聞くということは非常に重要なことだと思っておりますので、検討委員の構成、あるいは公募制の導入、そういったものも含めてメンバーのあり方については考えてまいりたいと思います。できるだけ率直な意見が反映されるような形を検討していきたいと思っております。
<毛利県議>
介護保険について健康福祉部長に伺います。
政府は2012年施行に向けて介護保険法の改正案を今国会に上程しようとしています。介護保険を巡っては実施当初から保険料・利用料がたかすぎる、認定制度が実態に合わない、特養・ショートステイなど介護基盤整備が不足している、在宅介護の負担が重すぎる、介護労働者の待遇が悪く、足りないなど多くの問題点が指摘されてきたところです。
政府は国庫負担割合を引き上げないまま、高齢化に伴う介護給付費の増大を抑制しようと一方では要支援1、要支援2の家事援助などを保険から外そうとし、一方ではかかる費用は被保険者に上乗せしようとしているため、介護保険事業計画が改定されるたびに保険料の値上げがされてきました。高い保険料を徴収しておきながらいざ使おうとすれば、特養にも入れず、利用も出来ない状況は各所で「保険あって介護なし」の深刻な事態を生んでいます。
寄せられている声を紹介します。
「介護保険のサービスレベルを要介護1から要支援2にダウン認定された。その結果前から東京在住のせがれが介護に来てくれていたが、せがれがいては介護サービスは利用出来ない旨、ケアマネさんに断られて困っている。私は80代でせがれのほかに家族はいない」
「現在、母が祖父母の介護に疲れ、うつ病になり入院してしまいました。私や兄妹達が少しでも母を助け、介護うつにならないようにしようと思うのですが、それぞれに家庭があり、共働きの上育児もあり、すべてが母に任せきりになってしまっています。祖母は認知症ですが介護度は低く、祖父は半身不随の障害者です。もっと、行政が、認知症を介護する家族の苦労を理解してほしい」
「ショートステイ・デイサービスを併用利用して、自宅で介護しています。ショートでは一日の食事代が1400円前後となっていますが非常に高額だと感じています。介護している私達にも持病があり、いつ具合が悪くなるかわかりません。不意に緊急の事態が起きた場合に年寄りを預ける所もなく不安になります」「親の介護をしながらの生活なので、定職には就けず、59歳のフリーターです。先々も不安だらけだけれど悩んでいるヒマもない。」
紹介し始めればきりがないほど県民の皆さんの苦悩の声がたくさん届いています。知事や部長にはこの皆さんの本当に困り切っている声をしっかり受けとめていただきたい。
そこで健康福祉部長に伺います。
(1)1つは介護保険の見直しにあたり、軽度者を除外しないよう国に求めて欲しいと思いますがいかがでしょうか。
(2)2つは、介護保険料がせめてこれ以上あがらず、下がるよう、国庫負担の増額を国に求めるべきだと思いますがいかがでしょうか。
(3)3つとして、過日、詳細で大掛かりな高齢者実態調査が行われました。この結果は新たな介護保険事業計画にどのように生かされていくのでしょうか。
(4)4つとして、在宅で介護されている皆さんの慰労のための現金給付の検討をしていただきたいと思いますがいかがでしょうか。
在宅での特養待機者は5100人をこえていると報告されていますが平成22年度はグループホームも含め1300人の受け入れが出来る施設整備をしていただきありがたく思っているところです。今年度は第5期プランの前倒しも含め、990名増やすことが予定されているところですが、それでも要望に追い付かない実態があります。
施設整備などをもっと増やすと同時に、様々な事情で在宅で介護しなければならないケース、在宅を望むケースも多々あります。先ほど紹介させて頂いたように、在宅で介護する場合には、家族が仕事を辞めて看るなど、経済的にも精神的にもまた大きな負担を背負いつつ介護する事になるわけで、介護給付費という点から考えれば、在宅は施設の半分程度しかお金がかからない仕組みです。
在宅で担っていただいている皆さんに慰労のための現金給付の検討がされてもいいのではないかと思います。かつて、長野県は介護保険が導入される前は介護慰労金を年3万円支払っていた経過もあります。市町村によっては現在でも19の自治体が慰労金・支援金の名目で援助しています。是非県として支援の検討を求めますがいかがですか。
<健康福祉部長>
介護保険に関連いたしましていくつかご質問を頂戴いたしました。
(1)まず見直しにおける軽度者の除外についてでございます。平成24年度の介護保険制度の見直しにつきましては厚生労働省において介護保険法等の改正作業が現在行われておりまして、そのなかで軽度者に対して切れ目のないサービスを提供するという観点から、今まで介護保健制度で行われておりました予防給付と、市町村独自の事業で行われておりました生活支援サービスとを一体化することが議論されております。この改正の具体的な内容はまだ示されておりませんけれども、これまで受けられてきたサービスが削減されることのないように、あるいは利用者の希望や状況を十分踏まえた適切なサービスの提供が可能となるような改正となることが必要であるものと考えております。県としてもその動向に十分注視するとともに、必要に応じて当事者やあるいは現場の意見を踏まえて、適切な措置がなされますように国に要望してまいりたいと考えております。
(2)国庫負担の増額についてです。介護保険制度の負担と給付につきましては、高齢化の進展ですとか、あるいは介護保険サービスの充実、介護基盤整備の推進などにより、公費負担は年々増加しておりまして、制度創設以来この10年間で2.2倍になっています。来年度における県負担額も今年度決算見込みに比べまして8億円増でして、229億円を見込んでいるところでございます。一方介護保険料につきましては、県内の現在の平均月額は4039円、全国は4160円となっておりますけれども平成24年からの第5期計画においては、介護サービスの充実やサービス利用者の増加等によりまして、全国的には5000円前後まで引きあがるのではないかと懸念されているところです。このように費用が年々増加している中で、現行の保険料と公費負担の割合や、あるいは国・県・市町村の負担割合等については、適切な給付と負担のあり方について総合的な検討を行いまして、国民に対して方針を示したうえで、国の責任において適切な財政措置を行うよう必要に応じて要望していきたいと考えております。
(3)それから、高齢者実態調査の活用について、お尋ねを頂戴しました。県におきましては介護保険支援事業計画の改定に合わせまして、3年ごとに市町村と協力して元気な高齢者の生活や健康等の状況、要介護高齢者の介護サービスの利用状況や今後の希望等の調査を実施しております。第5期計画の策定につきましては、介護医療予防、生活支援サービスの切れ目のない一体的な提供がされ、地域全体で支える仕組みが求められております。
そのために新たに日常生活圏、これは30分で駆けつけられる、いわゆる中学校圏をイメージしておりますが、そうした単位での介護保険サービスやあるいは配食等の生活支援サービスのニーズを把握するための調査を実施しております。また、介護事業所の経営状態、介護従事者の処遇実態等の調査も実施しているところでございます。第5期計画において、これらの調査結果等も活用いたしまして、必要な在宅サービス、施設サービス等の種類、あるいは量を見込んで県・市町村としての事業目標を定めてまいりたいと考えております。
(4)施設設備と在宅の介護者への現金給付についてお尋ねを頂きました。特別養護老人ホームについては平成24年度から始まる第5期計画において位置付けられる分の前倒し分も含めて、第4期計画の目標、9807名を562名上回る定員、10369名の確保を見込み、36億円余りの予算を計上しているところでございます。今後の施設整備につきましては、要介護認定の将来予測や、あるいは入所待機者の状況等をもとに市町村が見込むサービス量を踏まえて第5期計画を策定し、計画的な整備に努めてまいりたいと考えております。
また、介護保険制度に位置付けられておりますけれども、地域支援事業では市町村はその実情に応じて、在宅介護を行っている家族等に対して、精神的・経済的負担の軽減を目的とし、介護慰労金を給付することができるようになっています。議員ご指摘の通り、現在19の市町村で給付がされております。県といたしましてはこうした市町村に対して引き続き地域支援交付金を交付することにより支援をしてまいりたいと考えております。
<毛利県議>
農業問題について農政部長に伺います。
2010年農業センサスによれば長野県の農業経営体の数は平成17年度比で16,6%のマイナス、農業就業人口でマイナス23、2%、3万人と過去最大の落ち込みです。また、平均年齢は66、8歳となり初めて65歳を超え、65歳以上の就業者は全体のほぼ7割になろうとしています。
長野県の農業は四季の変化にとんだ自然環境の中でたゆみない農業者の努力によって狭い農地を知恵と工夫で耕し、全国有数の農業県として今日を築いてきました。県土の保全、水源の涵養、美しい景観、すんだ空気など人間生活を送る上でかかせない重要な役割も果たしてきました。しかしながら、この15年間を見てみると、かつて4000億円あった農産物産出額は2800億円まで低下し、農業就業人口も高齢化して減少し、よほどの努力をしない限り、長野県の農業は後10〜15年で担うべき人がいなくなると言っても過言ではない状況となっており、憂慮すべき事態です。
そのようななかでも、農家戸数全国1を誇り、高原野菜やきのこ、カーネーション、トルコキキョウ、アルストロメリアなどの花卉栽培でも全国トップの地位を築き、ぶどうやリンゴなどの果樹も山梨、青森に続いて全国2位です。国言いなりに集約化をはかり減反政策に従うだけでなく、農業県長野の農業を基幹産業にきちんと位置付け、新規就農者を確保する取り組みを積極的に行なわなければ農村集落の維持すらできなくなるのではないでしょうか。
そこで農政部長にうかがいます。
(1)長野県農業の高齢化と減少の現状をどうとらえ、新規就農者をどう確保していくおつもりかご所見を伺います。
(2)また、農業の担い手を確保していくうえで、県として農家に対し今後の営農の意向や後継者がどうなっているのか、富士見町で行ったように、実態調査をすべきではないかと思いますがいかがですか。
<農政部長>
担い手の現状認識と新規就農者の確保についてお尋ねをいただきました。
(1)農業センサスを分析いたしますと、本県の農業人口の減少と高齢化は、ご指摘の通り全国水準を上回っておりまして、依然として厳しい状況におかれていると認識しております。一方農政部の調査でございますが、40歳未満の新規就農者は農業以外からの新規就農者によりまして平成20年度以降増加に転じておりまして、若者が農業を職業として選択する傾向が認められ始めております。これらの状況を踏まえまして新規就農者の確保につきましては、農家子弟はもちろんですが、新規参入者はあるいは農業法人への就農など、多様な担い手が農業に従事できる受け入れ態勢や技術経営に対する支援を充実させまして、就農しやすい環境づくりに努めてまいりたいと考えております。
(2)次に、後継者の実態に関するお尋ねでございますが、農家の今後の営農の移行や後継者の状況につきましては、国が5年ごとに実施しております農業センサス調査や、市町村農業委員会などが行う特別調査などに基づき、地域の全体状況を把握いたしまして、これをもとに担い手となる農家への農地集積や集落営農を推進させていただいているところでございます。ただ果樹につきましては永年作物という特性から農地の流動化が進みにくく、まだ生産可能な樹園地が担い手に円滑に引き継がれない事例が各地で発生しております。このため、新規事業の果樹農業振興戦略推進事業のなかで、県下の70歳以上の果樹農家を対象として経営の継続や樹園地の継承の以降調査を行うこととお願いしておりまして、この結果を踏まえまして、担い手への樹園地の集積やその仕組みづくりを行って参りたいと考えております。
<毛利県議>
どんなに新規就農者を増やそうとしても、生活出来なければ魅力のないものになってしまいます。政府の戸別所得補償政策は、名ばかりで期待はずれだったという声を耳にしますが、きちんと所得補償しながら就農して頂く道筋をつけていくことが大事ではないでしょうか。近くは長野市農業公社で1人月10万円を最長5年間15人分援助していくと伺っていますが、私ども県議団はかつて「新潟版所得補償モデル事業」を伺ってきた経緯があります。
中山間地で新規就農者を雇用した農業生産法人などに、販売経験を有する者には年間500万円以内、農家子弟等の雇用をする場合には300万円を3年間継続するというものです。県の予算は3年間で4000万円とのことでした。是非、長野県としても新規就農者に対して思い切った所得補償を検討していただきたいと思いますがいかがでしょうか。
<農政部長>
新規就農者の所得補償についてのお尋ねでございます。新規就農者の研修や営農に必要な経費につきましては、県・市町村・JAグループで設置しております、社団法人長野県農業担い手育成基金によりまして、研修費だとか住宅費などの助成を行っておりまして、さらに県では本年度から雇用された研修生の賃金を助成する事業も開始しておりまして、資金面での支援を実施しております。近年、県内の市町村におきましても、新規就農者への支援を創設する動きがみられますし、国におきましても食と農林業再生推進本部におきまして、新規就農者に対する支援施策の充実が検討されていると聞いております。
県といたしまして農産物の価格低下などの経営環境が激しさを増している中でございますので、新規就農者の経営が安定するまでは一定の期間を要するというようなこともありますので、国・県・市町村・農業団体がそれぞれの役割を担いながら連携して支援していくことが必要であると考えております。
<毛利県議>
最後に、教育問題について教育委員長並びに長沢教育次長に伺います。
最初に教育委員長に中学校における30人規模学級の実施について期待するものは何か伺います。
様々なやりくりのご苦労のなかで、新年度に中学1年で30人規模学級を実施するための予算が盛られた事は、保護者や学校関係者の長年の切実な要望だっただけに心から歓迎いたします。昨日も議論になりましたが、決定が遅れたことで、現場では混乱している状況もありますが、だから問題なんだということではなく、今の困難をどうすれば前向きに解決できるか、知恵を絞って可能な限り目的が達成できるよう調整を図りつつ、努力をしていただきたいと願うものです。何が生徒にとって最善の利益につながるかが基本です。
中1ギャップが問題視されるなか、思春期で心揺れ動く多感な生徒達にきめ細やかに対応できる条件が出来た事はありがたいのですが、来年度以降全学年で実施して頂けるよう早期の決断を強く求めたいと思います。拡充していただく考えがおありかどうか伺います。
<教育委員長>
30人規模学級の中学校導入に期待するものと、今後の拡大の方向性についてのご質問にお答えいたします。
現在中学校では、全国学力学習状況調査の結果にあらわれた学力の課題をはじめ、中一ギャップ等による不登校、また増加している発達障害のある生徒への対応など、さまざまな課題に直面しております。
中学校30人規模学級導入にあたり、本県の35人以下の学級と35人を超える学級について比較しましたところ、学力面や不登校、生徒指導の面でいずれも35人以下学級で良い結果が見られているわけでありまして、中学校が抱える課題に対する有効な方策になるのではないかと期待をしているところです。
今後の拡大の方向性につきましては、昨日代表質問で木内議員にお答えしたとおりでありまして、繰り返しで恐縮でございますがお答えをしたいと思います。県教育委員会として、学年進行により中学校2年、3年へも段階的に導入していきたいと考えているところですが、非常に多くの予算がかかるわけであります。国が進めている小学校3年生までの35人学級の推進、その次年度以降の動向も注視させていただいて、あわせて中学校1年の新年度始める取り組みの成果の検証を行うなかで、県民の皆様のご理解をいただきながら進めてまいりたいと考えているところです。
<毛利県議>
続いて長沢教育次長に併設型中高一貫校について伺います。
平成24年4月開校を目指して、屋代高校付属中学校の適性検査の試行が昨年12月に実施されました。適性検査1は主に「文章や資料をもとに必要な情報を整理、選択して、思考し、判断する学習の状況が見えるようにする」適性検査2は「図やグラフなど複数の資料をもとに、必要な情報を選択処理する中で、見通しを持ち、筋道たてて思考、判断、表現する学習の状況が見えるようにする」との作成方針のもとに行なわれたということです。
総勢274人が受検されたそうですが、その結果が公表されました。
100点満点で適性検査1は51、7、適性検査2は20、9との事で、私も解いてみましたが落ち着いて良く考えなければわからない問題で、小学生にはかなり難しいのではないかとの感想を持ちました。
そこで長沢教育次長にうかがいます。県教委が言うように小学校で普通にやる事をみるものだったとすればあまりに、普通が理解されていない事になり、中高一貫校どころの問題ではなく、小学校段階で、学力の定着をもっと本腰を入れて優先的にやらなくてはならない事になると思います。
もし、難しすぎたという事になれば、施行と云いながら50分混乱させられて、わからなかった子供たちは大きく傷つき、結果を知らされた保護者はますます塾通いをしなければ付属には入れないと思うようになったのではないでしょうか。
全体像が分からない中で平均点だけで考察するのは拙速すぎるかと思いますが、この様な適性検査は果たしてやるべきなのかというのが私の感想です。
(1)得点分布の状況なども踏まえて、第3者の視点をいれた分析が必要だと思いますが、長沢教育次長は今回の施行結果をどのように分析しておられるのか伺います。
さらに、「県立中学校入学者選抜要綱」が公表され、選抜の方法は適性検査1及び適性検査2としてそれぞれ100点満点とする、小学校からの報告書は5年生と6年生の評定を合計し48点満点とする、面接結果はA・B・Cの3段階で評価するとのことです。合否は適性検査と報告書の評定合計点に報告書の記載事項及び面接結果を加味して総合的に判定するとされています。
(2)そこで長沢教育次長に伺います。適性検査と報告書の比率は8:2となり、適性検査というものの学力重視になっています。東北信地域ではすでに付属中学校の入試をにらんで、小学5年生の塾通いが増えていると言われていますが、受験競争の激化を招くことにはならないでしょうか。児童のアンケートでも受検者の66%が、なぜ付属中学校を受検したのかという理由に「高校受験がないから」と答えています。高校受験がない分、受験競争が3年スライドして下がってきただけと言えるとも思いますが、受験競争の低年齢化にどう歯止めをかけていくつもりなのか伺います。
<教育次長>
(1)まず適性検査の結果の分析についてお答えいたします。教育委員会では試行の結果を貴重なものと受けとめ、検査に取り組んだ受験者の様子や問題への回答状況から、問題冊子等の様式や設問数、検査の内容等について分析をしております。
まず、問題冊子と回答用紙がわかれた形式や文字の大きさ等の様式につきましては、受験した小学生がとまどうことなく取り組めていたことから、適正であったととらえております。
また、設問数につきましては他県に比較して平均的な量で試行し、50分の検査時間で全ての問題に取り組もうとする姿が見られたことから妥当であったと分析しております。
次に、検査内容としては適性検査1と2の問題の回答状況から、総合的な問題をとおして、県立中学校入学後に求められる思考力、判断力、表現力等を見る検査がつかめたととらえております。なお、議員ご指摘の、適性検査2の平均点の問題につきましては、今回の試行におきましては本番と同様に小学校6年生のおおむね2学期までの内容をもとに出題いたしました。そうしたなかで、受験者274名中196名の5年生にとって、未履修である算数の「割合」であるとか「立体」といったような内容を含むものがあったことが影響しているのではないかととらえております。
いずれにいたしましても、今後外部の専門家等の意見もお聞きしながらさらに分析を加えまして、今後のより良い適正検査の作成にいかして参りたいと考えております。
つづきまして、適正検査と報告書の比率についてお尋ねでございます。報告書の内容は5,6年生のものに限定されますが、適性検査は長い間に培ってきた力を客観的総合的にみることができます。また、報告書の比率を高くすると小学校側の負担が重くなること、評定が3段階の絶対評価であり志願者の差がつきにくいことといったような観点から、比率がさほど高くないほうが良いと判断したところでございます。他県の例でも報告書の比率を極端に高くしているところはございません。
(2)さらに、受験競争の低年齢化についてのご質問でございます。単なる知識の量や高度な計算力を問う検査ではなく、中学校入学後に求められる思考力や判断力、表現力等を見ることができるものとして、塾通い等の特別な準備をしなくても小学校までの積み重ねが正しく評価される適性検査の作成に努めてまいりたいと考えております。
<毛利県議>
住宅リフォームの助成事業につきましては、1月28日に参議院の本会議で、わが党の市田忠義書記局長が国の支援を求めました。菅首相は社会資本整備総合交付金を活用することができ、今後ともこのような活動を支援していくと答えておられます。
交付金の額は算定対象事業費の45%のようですが、投資した費用の10倍以上も効果のある事業は、他にはないのではないでしょうか。ですから県としてもこのような国の支援制度などをぜひ研究していただいて、使っていただくようにお願いをしたいと思います。
それから、子どもの医療費の窓口無料化の問題ですが、阿部知事は県民主権ということをずっと掲げておられまして、先ほど当事者を加えて検討していきたいというふうにおっしゃっておられますので、この問題ではぜひ宜しくお願いしたいと思います。
教育問題については、ぜひこの問題では知事にお願いしたいところなんですが、さきほど教育委員長のほうから35人規模学級以上、35人規模学級以下ということで、成果についていろいろ検討させてもらったところ、学力の面でも生徒指導の面でも大変効果があがっているというふうなご報告がありました。ぜひこの教育委員会の状況をしっかり受けとめていただいて、来年度以降、中学2年、3年というふうに広げていっていただきたいと思います。今年該当になった子どもたちが、来年度県の財政の都合でまたひっくり返るということになれば、子どもたちにとっても混乱が広がるだけと思いますので、ぜひこの問題では、先ほどの成果の問題についてもしっかり受けとめていただきたいことを重ねて申しあげ、私の代表質問を終わります。