<和田県議>
今日まで、行政事務の電子化を進める「電子自治体」の目標は、事務費の圧縮、効率化でありましたが、逆にシステムの開発・管理費の負担が大きく財政を圧迫するという矛盾が起きてきました。
そこで新たに「クラウドコンピューティング」を電子自治体の基盤構築に導入することにより、情報システムの効率的な整備・運用や住民サービスの向上を図る目的で「自治体クラウド」を活用する方向で、総務省は自治体と協力して全省を挙げて自治体クラウドに取り組むため(2010年7月30日)自治体クラウド推進本部を設置しました。自治体クラウド推進本部内に、自治体クラウドの全国展開に向けた取組を推進するとともに、住民サービスの向上のための電子自治体の確立に向けて、取り組み状況の把握、課題の抽出・検討および必要な助言を行なうことを目的として、有識者懇談会が設置されています。
この有識者懇談会が今年6月に出したとりまとめは、検討項目が多岐にわたり、課題も多く残されています。
一つとして、クラウドサービス導入環境の整備。2つとして、相互運用性を確保する取組。3つ、情報セキュリティの確保。4つ、クラウド導入効果に係る検討項目の整理。5つ、クラウド導入に向けた共同化の計画策定、移行、基盤構築に対する財政支援などであります。
特に、自治体が住民の個人情報など重要なデータを扱っており、プライバシー流出などの不安が現時点では完全にはぬぐえません。そして全国のIT企業12社が当面ソフトの提供をするとされているようですが、この12社のなかには外国資本の企業もあるわけであります。また、セキュリティトラブルによる被害規模も責任も不明で、対策も保障も「雲の中」と厳しい指摘をする専門家もいます。
また、クラウドサービスを導入し、情報システムの集約と共同利用を進めることは、費用削減や業務改革等の効果が期待できる一方で、現状の庁舎内などに構築した電算システムをデータセンターに移すなど、クラウドサービスの導入にあたっては情報通信基盤を刷新・構築するための経費が発生することも事実であります。
さらに、情報システムの共同利用は、各自治体の電算業務等におけるローカルルールを見直し、情報システムの共同化に向けた計画策定など自治体間の調整が必要であります。各自治体がバラバラに入力しているデータ様式の統一も課題であります。その一つに地方公共団体が独自に管理する外字の存在もあるわけです。
よって、「自治体クラウド」のソフトを共用するためには、自治体をまたいで事務処理を標準化していかなくてはならず、IT面の推進よりむしろ業務改革に取り組まなければならないと考えられることとなり、何よりも個人情報の取り扱いを慎重にするべきであるという立場から、自治体クラウドへの移行は慎重なる検討を求めたいと思い、自治体クラウドの推進を求める意見書には賛同できないことを申し上げ、討論とします。