<両角議員>
日本共産党県議団の両角友成です。私は発言通告にそって一般質問を行ないます。
先立って一言。定例会初日、知事の議案説明の中で、30人規模学級を来年度から中学2年生、3年生へと順次拡大していく方向が示されました。6月定例会初質問で、私も「拡大」をと、取り上げた議員として実現することになったことを歓迎するものです。
さて、私ども、県議団は去る11月18日、阿部知事に対して「11月長野県議会定例会開催にあたり申し入れ」を行ないました。それは、TPP(環太平洋連携協定)交渉問題から、教育現場の冬期暖房にいたるまで、6項目に及びました。全て、県民の願いとして重要な項目ばかりですが、私は今回この中の、緊急に経済・雇用対策に効果の高い、「住宅リフォーム助成制度」について、長野県として早期に実現していただきたく質問項目といたしました。
知事は昨日の答弁の中で「県民が利用しやすい制度を構築していきたい」と。そうであるならば、使い勝手のよい制度になるよう、切り口を変えて質問いたします。
全国の先進例からみても、この助成制度が確実に地域経済の活性化に結びつくことは明らかです。ひとつ、県の取り組み例を紹介します。秋田県です。
秋田県の住宅リフォーム助成制度は、2010年(H22年)3月から「緊急支援事業」としてスタート、リフォーム助成制度の内容は、県内の建設業者に工事を施行してもらうと工事額50万円以上で、施主に工事代金の10%、上限20万円を県が助成する内容で、市町村の支援制度に単純上乗せの制度です。1年と6ヶ月が経過しての今年9月の発表数字ですが、リフォーム助成申請戸数は、なんと2万4千件、県の補助交付額は33億円あまり、工事総額は497億円にのぼったとのこと、直接的には県の補助額の15倍の効果があったことになります。そして、県内経済波及効果は780億円に達すると試算され、補助交付額の23・6倍になっています。
この秋田県の制度は、工事を地元業者に発注すること以外の難しい条件をつけず、地元の仕事を増やし、年金暮らしの人でもリフォームに踏み切りやすくする点にメリットがあります。単純な経済対策が大きな効果を上げて喜ばれ、県の支援が始まる前は県内3市町村の取り組みであったものが、今では実施していないのが 県内3市町村のみと急速に広がりをみせたものです。
長野県建設業協会の皆さんと懇談した折も、本当にいま景気が悪い、落ち込んでいる今、この制度、県が実施の方向ならありがたいとのお話でした。
すでに長野県内、私たちの調査では、12月議会に長和町も提案する予定とのこと、これで県内77市町村のうち48市町村が独自にこの制度をはじめている、あるいは準備をしていることになります。すでに24・25年度も継続をする市町村もあります。
これに県が後押しするかたちではじめれば、県民はどんなに歓迎するか。秋田県の例で100万円の工事を行なう場合10万円を県が、20%を市町村が補助すれば30万円になります。それぞれの自治体で補助率や補助額は違いますが、相乗効果で申請件数増加を後押ししているとのことです。
住民の暮らしている地域の業者を利用することによって上乗せできるのが 最大の魅力。
「地域の仕事は地元の業者に」と、補助が確実に地域経済の活性化に結びついていくことは明らかです。利用者が喜び、建設業者が元気になり、地域が活性化し、自治体の予算の効果があらわれる。まさに生きた「お金」。あらためて使い勝手の良い助成制度の実施を強く求めます。
私どもは、この項目、今回も含め何回か事例を示し提案型で質問を行いその答弁は「検討する。」でありました。あれから1年、長野県としての、現在までの検討の到達点と実施時期を含め、知事に答弁を求めます。
<阿部知事>
住宅リフォームの関係、たびたびご質問いただいているわけでありますが、わたくしはやはり限られ財政財源の中で実施していくという場合に、単に経済対策ということだけでなく、やはり施策目的というものもしっかりもつ必要があるというふうに思っております。
そうした観点で、いま検討中であるわけでありますけれども、たとえば県産材の利用拡大であるとか、あるいは住宅の省エネルギー化、バリアフリー化、そして地元の工務店のみなさんに仕事が増えるようにと、そういう課題、県としていろいろあるというふうに思っております。
昨日、続木議員にお答えいたしましたとおり、新たなリフォーム助成制度については現在の助成制度の課題を整理したうえで、県産材の活用を基本として、省エネルギー化、あるいはバリアフリー化などもふくめて、さらに市町村がすでにさまざま助成をおこなっておりますので、そうした市町村との連携協働ということも視野にいれながら来年度予算にむけて、県民の利用しやすい制度を構築してまいりたいと考えております。
<両角議員>
6月30日に発生した松本市を中心とした「長野県中部地震」をうけ、松本市では独自に「住宅リフォーム助成制度」に加え「地震(じしん)被災(ひさい)住宅(じゅうたく)修繕(しゅうぜん)助成(じょせい)制度(せいど)」を10月1日よりスタートさせました。それは、6月30日の地震による被災住宅を修繕するための工事費が、1工事5万円以上の住宅本体に関わる工事に助成金が支払われる制度です。10月以前7月でも8月でも9月でも工事が済んでいても認める。助成金額は、対象工事費の20%で上限は10万円。被災された皆さんにとって、歓迎される制度だと思います。
制度をはじめた松本市役所に10月3日から11月25日までの間に問い合わせが、来所と電話で約4000件。受付件数リフォーム138件に対し、地震修繕1148件とのことです。災害を受けましたとの罹災証明書の市への提出が約3000件とのことですから、県としても松本市の制度を参考にして松本市と一緒になって緊急に地震被災者を支援する。住宅リフォーム制度に加えてこのことを行なうことは、これからでも遅くはないと思いますが、いかがでしょうか。
今回松本市では、地震修繕に関係しては松本市以外の業者も対象とのことです。松本市内の被災内容ですが85%が瓦屋根とのことです。瓦屋根を扱う業者さんの数を考えれば、早く雨漏りから解放されたいとの思いから市外の業者に依頼した方がいる。この方たちにも平等に支援する。これがこの制度の中身です。
私は、本当に困っている方たちを少しでも行政が手助けをする。行政の本来の姿だと思います。県内市町村が、住民の暮らしを応援し、地域の景気をどう良くするか、また、被災した方の復興のためにどのような手を打つか、それぞれ工夫を凝らして頑張っている今、この時、県がそれぞれの地域で試され済みの制度を自らも実行し市町村を助け一緒になって住民生活を支える。これはあたりまえのことと考えますがいかがでしょうか。
また、県として将来にも制度として、利用可能なように、松本市の制度を参考に「県・災害復興助成制度」の構築を望みますがいかがでしょうか。被災された皆さんを助ける意味からも、再度前向きな住民にとって希望のもてる答弁を知事求めます。
<阿部知事>
まずは自助公助、地域的な災害であれば市町村の支援、そして大規模なものになれば県や国が応援していくという、そういう形が基本だというふうに思っております。
県では災害救助法の適用をうける規模の災害が発生した場合について、住宅金融支援機構の災害復興住宅資金融資、この金利の一部を補助する災害復興住宅建設等補助事業があります。これで個人負担の軽減を図っておりますし、栄村に対しても仮設住宅の提供をはじめ、さまざまな支援策を講じたところであります。
また、一定規模以上の災害については、半壊以上の被害をうけた住宅を対象にした災害見舞金制度というものがございます。今回、松本、長野県中部の地震においても、県の見舞金の対称になるご家庭もあるわけであります。こうしたさまざまな制度を活用しながら災害の規模等を勘案して、適切な支援をこれからもつとめてまいりたいと考えております。
<両角議員>
ぜひともしっかりとした制度となるように要望しておきます。
<両角議員>
自然エネルギーの本格導入と低エネルギー社会をすすめることで、原発に依存しないでもやっていけるエネルギーと経済の仕組みをつくることは急務だと考えます。自然エネルギーの活用は、小水力、太陽光、熱、風力、バイオマスなど、地域の土木建設業者・農林業者を含めて仕事起こしにも結びつく産業として多くの可能性を持っていると考えます。自然エネルギーはどこでも同じやり方でなく、地域住民、地元事業者が中心になって、もっともその地域にあった方法を活用することが大事だとも考えます。
前回6月定例会のおり、大町市の小型水力発電の有効性を紹介し、県の積極的な取り組みを求めました。今回、わたくしは、松本市は波田地区に出向いてまいりました。豊かな水源があることを確認しましたし、古く波田地区にはたくさんの水車があったことも聞いてきました。水力発電に取り組む様子がよくわかり、全国からバスによる視察もあるということでありました。
長野県内各地に多くの可能性を持っている自然エネルギーの活用について、数値目標も含め、このことに取り組む県の戦略と姿勢を知事に伺います。
<阿部知事>
県の自然エネルギーに対する取り組み姿勢ということであります。
わたくしは地域の資源、さまざまなエネルギー源があるわけでありますので、そうしたものを十分長野県の中で活用することによって、これまでの大規模集中型、そして住民から手の届かないエネルギー供給体制を、地域分散型そして住民が自分の身近なところでエネルギーを調達できる。そうした地域分散型、自立型のエネルギー供給体制に転換していくということが重要だというふうに思っております。
本年度、地球温暖化対策戦略再構築事業を実施しております。自然エネルギーの数値目標、あるいはそれを達成するための方策を盛り込んだ自然エネルギー需給戦略、来年度中に策定をしてまいりたいというふうに考えております。
また、自然エネルギーの普及、これはあらたな産業や雇用を生み出しうるものというふうに考えております。産官学民共同で自然エネルギー信州ネットをつくっておりますけれども。その中でエネルギー種別ごとの部会の立ち上げもなされてきております。事業化に向けた自然エネルギーの普及モデル、あるいは資金調達の手法等の検討を具体的におこなっていきたいというふうに考えております。
また、これらの取り組みをつうじまして、幅広く、いわゆるエネルギー関係者という狭い意味ではなくて、たとえば小水力の関係であれば、農業者のみなさま方も関係してきます。また、建設業者のみなさんのノウハウも活用できる部分もあるというふうに思っております。そうした観点で県内の産業振興、あるいは地域社会の活性化にもこの自然エネルギーの普及拡大というものがつながっていくように、県として舵取りをしていきたいというふうに考えております。
<両角議員>
いま、全国各地で、雇用をつくり地域経済でお金が回転する仕組みづくりがめざされています。そのさい自治体の役割は大変大きく、みずからが公共施設等に設置をするとともに、さまざまな支援の方法に知恵をしぼることが求められています。
太陽光発電では、6月定例会で今こそ、この時期だからこそ、個人住宅補助の創設を迫りましたが、この設置時補助金のほかに、融資や発電電力量に応じて電力買取価格に上乗せするかたちで支援している自治体もあります。出資を募って2%ほどの利回りを実現しているNPO法人の共同発電。地域の信用金庫が自然エネルギー活用にエコ・ローンを準備それに県が預託をするなどの支援といろんな方法が行なわれ、あるいは考えられているが、この点に対する県の考えを環境部長に伺います。
<環境部長>
自然エネルギーの導入に対する施策についてのお訪ねでございます。
まず、県有施設への自然エネルギーの導入につきましては、本年8月26日に成立いたしました「再生可能エネルギー特別措置法」が、来年7月から施行されまして、発電された電気の全量を国が定める固定価格や期間で、電気事業者が買い取る制度がスタートいたします。
このため、今後、県の自然エネルギーの導入につきましては、こうした動向をみながら、従来からのように、みずから設置する場合、さらには、土地貸し、屋根貸しといった手法もふくめまして、効果的な方策を検討してまいりたいと考えているところでございます。
また、自然エネルギーの導入の普及につきましては、多大な初期投資が必要であることから、自然エネルギー信州ネットにおきまして初期投資をゼロとして、毎月一定額の支払いにより導入を可能とする太陽光発電等の技術モデルを県内で普及するための検討をすすめているところでございます。議員からいくつかの例示がございましたけれども県といたしましては、さきほど申し上げました、今回の「全量買取制度」の動向、それから県内の自然エネルギー信州ネットの取り組みをみながら、財政面、情報面をふくめましてどのような支援策が有効か、検討してまいりたいと考えているところでございます。
<両角議員>
自然エネルギー普及にとって、いま部長答弁にもありましたが、通常国会で「再生可能エネルギー固定価格買取法案」が成立したことは一歩前進と考えます。固定価格買取制度は自然エネルギーの飛躍的推進のためには欠かせないものです。制度施行は来年7月で、普及の規模と速度に大きく関わる買取価格や買取期間の設定は、今後「調達価格等算定委員会」の意見を聞き、経済産業大臣がきめるとされています。
県として固定価格での全量買取や買取期間が適正なものとなるよう国に対して要請していただきたいが、いかがでしょうか。
そしてさきほど質問の中にも入れました。太陽光発電について、6月のときにも伺いましたが個人住宅への補助、これを県としても創設すべきと考えます、この点に付きましても知事より答弁を求めます。
<阿部知事>
再生可能エネルギーの拡大にとって、今回の「再エネ特措法」の買い取り価格、買い取り期間、どういう形になるかというのは、わたくしも大変重要だというふうに思っております。
長野県としては、これまでも関東地方知事会、あるいは全国の道府県で組織しております。自然エネルギー協議会をつうじて、発電事業者が、安定的かつ長期的に発電が可能となるよう適切な価格期間を設定することを、国に提言をしております。
12月に国の施策予算にたいする要望ということで、国に対してさまざまな項目を要望してまいりますけれども、そのなかにも、この事項については盛り込んで積極的な要請活動をおこないたいというふうに思っております。
また、個人の住宅への、太陽光発電等への補助だと思いますけれども、個人の住宅への補助、これは、固定価格買い取り制度ができるまえの制度としては、非常に有効な部分もあったと思いますけれども、いまや流れは、ちゃんと電力自然エネルギー再生エネルギーを、しっかり買い取ってもらうということのほうが重要な施策だと思いますので、個人の住宅への補助ということを現時点で行なうという考え方はありません。
<両角議員>
太陽光の個人住宅については「やらない」というような答弁ですが、やはり買い取りの前に初期投資をして各家庭がその恩恵をうけるといいますか、設置ができるという援助をするということが県としても非常に大事だということをもうしあげておきます。
これまで電力会社が地域独占のかたちで一括して担ってきた発電・送電・配電部門を分ける「発(はつ)送電(そうでん)分離(ぶんり)」も重要な課題となると考えます。特に送電網は、国道・県道・市町村道と同様に公共インフラとしてだれでも利用可能になれば接続拒否という問題は起こりません。必要に応じておこなわれる生活道路の整備のように、小規模・分散型の再生可能エネルギー発電の拡大に応じて送電網を整備していけるようになれば、新たな社会づくりにもなると考えますが県の姿勢を、そして、「発送電分離」の推進について、国に強く要請していただきたいが、いかがでしょうか。知事に伺います。
<阿部知事>
自然エネルギー普及拡大をどんどんすすめていかなければいけないというふうに思っておりますし、先ほど個人向けの補助というのもわたくしは単にお金を出して広げるというよりは、むしろこれからは知恵を出して、もっと仕組みをつくっていくということがより重要だというふうに思っております。
こうした観点で「発送電分離」についても、これまでの制度をもっとすすめていくということで、電気事業者の接続義務を、今回特措法も成立いたしましたので、これを徹底していくということが重要だというふうに思っております。
この接続義務については、具体的な内容が法律上明記されずに政令運用等にゆだねられているものがあるわけでありますので、それについてきちんとした規定をおいてもらうということが重要だと思っております。
さきほど申し上げました自然エネルギー協議会、全国組織でありますけれども、ここにおいても系統接続を円滑にすすめるための効率的で、透明性、公平性の高い接続ルールの構築と再生可能エネルギーの拡大に対応するための送電網の増強について、国へ提言をしたところであります。
特に分散型電源の大規模導入に対応できるよう発送電分離をふくめた電力システムの改革などについて、抜本的かつ実効性の高い措置を国にひきつづき要請していきたいと考えております。
<両角議員>
省エネや電力以外のエネルギー転換など時間をかけずに実現できることはたくさんあります。低エネルギー社会は、「我慢の社会」ではなく、人間らしい暮らしと働き方の実現と同時に追求されるものです。そうした方向にすすめていけば、必ず、持続可能な新しい日本のエネルギーと地域経済の道が開かれると確信します。
国が原発撤退の道にただちにすすもうとしない一方で、原発ゼロへの世論と運動は各地の集会の成功に見られるように大きな広がりを見せています。県内にもいくつか動きがあります。「原発撤退・自然エネルギーへの転換」への道は、日本の政治・経済・地方社会のゆがみを正し未来を切り拓く道であり、そこには大きな展望があるのではないでしょうか。
以上申しあげ私の質問を終ります。