2012年9月定例会 9月27日 一般質問 和田あき子

  1. 浅川ダムについて
  2. 県立4年制大学について
  3. 貧困・格差が深刻な状況での県行政としての支援の在り方について
  4. 教育について

1、浅川ダムについて

 <和田議員>
 知事は、「東日本大震災の発生ということもあって、F-V断層について不安を感じている方もおられると思っていますので、説明責任を果たすべく改めて掘削を行いましてF-V断層の安全性の再確認を行っていきたい」と調査を実施しましたが、知事の依頼を受けた産総研の研究員の意見でも「不安は残る」として、活断層ではないとの断定はできませんでした。
 浅川ダム周辺の現地調査を繰り返し行ってきた小坂共栄信大名誉教授、日本地質学会名誉会員の松島信幸氏は、専門家として明確な活断層であると言われています。様々な意見があるにもかかわらず、ダム建設に支障がないと判断した知事自身が、住民説明会をもって説明責任を果たすよう求めている県民に対して、説明会はいまだ行われていません。知事は説明会で説明責任を果たすべきと思いますがいかがでしょうか。
 浅川ダム周辺部の地質は脆弱、地すべり指定地であります。そして常用洪水吐きの穴は1.3m×1.45mと異常に小さく、流木・ごみや土砂による閉塞はない、ダムはつまらないと言われても誰もが不安を抱いている設計の、穴あきダムという構造上の問題点も残されたままです。
 ダムが建設されなければ、洪水によって甚大な被害が発生するとされた根拠についても、県側が出した以前の資料は河川改修前の浅川の氾濫解析であり、改修済みの河川による氾濫解析の資料の提出を求め、新たに出された資料で行った解析では、県が出している費用対効果1:4.1ではなく、実は1:0.12であると指摘されています。ダム建設のよりどころが足元から崩れるものです。まさに危険を冒してまで造る必然性はないダム建設に税金を使うことも見逃すことはできません。
 9月県議会開会日前日、浅川ダム定礎式をおこない、知事は「一日も早い完成を祈念する」と言われました。これでダム建設の是非に「一区切り」をつけ、既成事実として完成をめざし進めていくということでは、ダム直下の住民のなかにある不安を払しょくすることはできません。将来に禍根を残すことになるのではないでしょうか。
 住民の疑問と不安が残る浅川ダムは、大震災後の新しい視点で見直しを行うべきだと考えます。このまま造り続けてよいのか。知事の見解を伺います。

<阿部知事>
 浅川ダムについてのご質問にお答えいたします。
 浅川ダムの安全性については、私自身もしっかりと確認をする必要があるということで、ご質問にありました、F-V断層の安全性の再確認を行なったわけです。再確認の結果につきましては専門家の見解も踏まえて、私からは会見の場において、その考え方、経過をご説明させていただきましたし、また、これまでの県の見解と同様に安全性が再確認されたということで、担当部である建設部のほうから、住民の皆様方に対して説明会を、これは1回だけでは足りないということで、2回にわたり開催をさせていただきまして、また予定した時間を大幅に延長して、延べ7時間にわたりまして、出席者の皆様方からのご質問に丁寧に対応させていただいたところでございます。
 従いまして、県としては十分住民の皆様方にこの点、説明させてきていただいていると考えております。
 
 それから、税の無駄遣いではないかということでございます。これは、浅川ダムは治水の安全性を向上させるという観点で必要なダムだと考えております。
 さる9月19日に関係する議員各位並びに国土交通省、地元の関係者の皆様方、多数の方々のご出席のもと、定礎式を行いました。関係の皆様方、様々な立場からご協力、ご尽力をいただきました。大変感謝をしております。
 長い年月をかけて、必要性、そして安全性について、様々な議論が重ねられたわけであります。これまでの公共事業には例のないほどに十分な議論と、そして私どもとしては丁寧にご説明をさせてきていただいていると考えております。
 昨年以来、F-V断層の安全性についても、これは念には念を入れて再確認を行ないまして、その過程や結果についても公開をさせていただいております。
 引き続き安全性に十分意を持ちながら、事業を進めてまいりたいと考えております。

<和田議員>
 知事は、住民報告会は、FV断層の安全性については質問がなくなるまでちゃんと、途中で区切ることのないように、時間がかかってもやるようにということまで指示をして、県としての説明責任は十分果たしたとしています。しかしこれは知事自身のすべきことではないでしょうか。職員にさせて済ませるということは大変残念です。知事、問題のすり替えをしないでいただきたいと思います。説明責任を果たすと知事自身が議場で答弁されたことです。住民は納得していないと申し上げておきます。

2、県立4年制大学について

<和田議員>
 知事は提案説明で新たな県立4年制大学について具体的に基本構想の素案の内容を提案しました。
 現在までの検討と議論の経過を見れば、県立短期大学を発展的に改組することが議論のベースにあり、時代の変化により現在のカリキュラムでは資格取得が困難な状況から、四年制化により資格取得ができる大学が求められています。
 また、県立四年制大学には、保護者や学生の経済的負担の軽減や、県外への人材流出を防ぎ県内で人材育成することが期待されています。
 今回提案された素案は、この大切な部分に全くこたえていないのではないでしょうか。
 9月19日の準備委員会は議論百出で、あくまで素案だからと、この素案に対するパブコメを求めることにたいして認めたのであって、基本構想という段階ではないというのが準備委員会の委員の認識ではないでしょうか。県議会の超党派の懇談会でも異論が続出しています。素案がまるで基本構想のように扱われるのは議会を軽視していることと思われます。
 私は、知事がいうようなビジネス経営や公共経営について学ぶ学科。先進的・専門的なこども教育を研究、実践するとともに地域でマネジメントできる人材を育成する。またグローバル社会への対応をすることを否定するものではありません。しかし、県立短大の発展的改組を願い、長野県の発展に寄与する大学をと願っておられるみなさまの意見が反映されない。県民の意見が集約されたとはいえないまま、基本構想素案を示して開学を急ぎ過ぎないようにと危惧しています。
 素案に対する意見が様々あります。パブリックコメントも寄せられます。それらをいかすことが必要であれば、素案を大幅に見直しする余地があるのか。知事に伺います。

<阿部知事>
 県立4年制大学の素案につきましては、これは設立準備委員会での議論を取りまとめて事務局から提示をしたものと考えております。素案のなかには私としては必要な要素が盛り込まれていると考えております。
 ただ、先日も御答弁申しあげましたが、素案の段階ということで、細部までは固まったものではないと考えております。県民の皆様方からご意見をいただき広く議論を行なうなかで、長野県の将来、本当に50年後100年後を見据えて、どのような形の高等教育、そして新しい大学像を描くのかということはしっかり考えたうえで成案を得ていきたいと考えております。

<和田議員>
 知事、これは素案まで細部まで固まっていないと言われているのですから、くれぐれもボタンの掛け違いのような状態で開学を進めることがないようにと願っています。ぜひ再考を求めておきます。

3.貧困・格差が深刻な状況での県行政としての支援の在り方について

<和田議員>
 生活保護利用者が211万人を超え、保護費が年々増加していることが取りざたされています。増加する背景には、不安定・低賃金の非正規労働者が全労働者の三分の一を超え、失業率が高止まりしていることや、高齢化が急激に進んでいる一方で年金制度が生活保障の役割を低下させていることなどがあげられます。
 タレントの親が生活保護であることに端を発した生活保護バッシング報道は、不正受給でないケースを不正受給のごとく扱われ、扶養義務は保護要件ではないのに、小宮山厚生労働大臣が扶養義務強化について発言するなど生活保護の抑制が懸念されます。
 政府は、2013年度予算の概算要求基準のなかで、徹底した歳出の効率化を図る。中でも「特に財政に大きな負担となっている社会保障分野についても、聖域視することなく、生活保護の見直しをはじめとして、最大限の効率化を図る」として、生活保護予算を名指しで見直し、削減しようとしています。生活保護は社会保障制度の大事な柱であり、最後のセーフティネットとして重要な役割を果たしています。現状を踏まえ生活保護の役割、あり方をどう考えておられるか健康福祉部長に伺います。

<健康福祉部長>
 生活保護のあり方に関するお尋ねです。
生活保護については、議員ご指摘の通り、扶養義務や支給水準など様々な課題が指摘されているところでございますが、現在厚生労働省では、制度の見直しや生活保護基準の水準等について検討しているというところですが、このなかでも、今後も支援が必要な方には適切に保護を実施していくという生活保護制度の基本的な考え方に変わりはないというふうにしているところです。
 本県の生活保護の状況ですが、ちょうど昨日厚生労働省から発表がありましたが、全国の保護率は16・6‰(パーミル)ですが、本県はこの16・6‰に対して5・3‰でして、全国のなかでも低位でありますものの、一方で増加傾向にあります。これは全国も同様です。また、世帯類型別に見てみますと、高齢者世帯及び障害傷病世帯で全体の約8割を占めております。逆に、働いて収入を得ることができるであろう、その他世帯は17・5%でして、その数は増加しているということです。
 県としてはこうした現状を踏まえまして、今後とも多様化していく生活保護受給者に適切に対応しまして、生活保護が真に必要な方には適切にちゃんとした支援を実施してまいりたいと考えております。

<和田議員>
 部長から、生活保護の基本的な考え方に変わりはない、適切な支援に努めるという答弁でございまして、それにつけても経済・雇用情勢に明るい兆しもなく、雇用や年金等の改善がなされないまま予算を削減することがあってはならないと思います。国に意見を上げていただきたいと思いますが、健康福祉部長にお聞きします。

 格差社会の広がる深刻な状況で、県としての貧困、生活困窮者への支援として、地域での居場所や具体的な支援を受けることができるようにするために、国の補助を活用しながらパーソナルサポート事業や絆再生事業を実施してきました。これらの事業は全国に先駆けて生活困窮者に寄り添う伴走型の支援として行われているものですが、それぞれ取組の現状と課題について、商工労働部長、健康福祉部長に伺います。

<健康福祉部長>
 先ほどのご質問に続きまして、生活保護の基本的な理念について国にもちゃんと要望していくべきではないかというご質問、それから絆再生事業の現状に関するご質問を承りました。
 まず先ほどの生活保護について、これは議員ご指摘のとおり、最後のセーフティネットでございます。この最後のセーフティネットの機能をきちんと発揮されるということはとても大事なことだと思います。これまでも私どもとして国にはいろんなトンネル通しましてご要望しているところですが、今後もその姿勢を続けて参りたいと考えております。
 次にお尋ねいただきました生活困窮者の絆再生事業の現状と課題についてお答え申しあげます。生活困窮者の絆再生事業でございますが、これはホームレス等の生活の支援を行なう事業でございまして、今年度は昨年度から1団体増えた、支援ネットワークを形成している8つの民間団体に事業の実施をお願いし、就労や生活など様々な悩みの相談、生活困窮者のつどい、情報を交換する居場所づくりを行なっていただいているところです。
 実績を申しあげますと、昨年度、相談会は102回、631名の方を対象に。そして巡回相談は42回、54名の方が参加されております。また居場所づくりは68箇所で開催され322名の方の支援につながっているところです。
 県としては、さらにより多くの民間団体に参加していただきたいと思っていまして、さらに呼びかけを行なうとともに、引き続き各団体と連携を図りながら、ひとりでも多くの生活困窮者を支援してまいりたいと考えております。

<商工労働部長>
 パーソナルサポート事業の現状と課題についてお答え申しあげます。パーソナルサポート事業につきましては、就労等自立を希望しながらもそれを阻む様々な課題を抱える方々に対しまして、制度横断的に寄り添い型で支援を行なうものでございます。
 昨年3月にこの事業の中核的拠点となる長野パーソナルサポートセンターを長野市に設置いたしまして、その後サテライトセンターを松本市、上田市、飯田市に順次設置して全県的な支援体制を構築きたところでございます。
 実質初年度になります昨年度は、全県で777名の方から相談が寄せられております。相談の約6割は就労に関するものでして、その他、生活に困窮する相談が2割弱、メンタルヘルスの相談が7%程度という状況でした。就労を希望する相談者503名のうち、ハローワーク等と連携して206名の方々の就労が決まったところです。
 今年度は8月末現在で新たに392名の方から相談が寄せられていまして、120名の方の就労が決まったところです。
 これまでの事業を通じて官民を超えたサポート連携が着実に広がっておりまして、地域の支援ネットワーク体制の構築ができつつあると考えております。また、相談者と地域社会や周りの方々とのつながりの回復にも一定の貢献ができたものと考えております。
 一年余のモデル事業から見えてきた課題ですが、一般就労から距離がある方々を受け入れる場あるいは支える場が少ないことがあげられます。一般就労から距離がある方々と申しますのは、未就労の相談者のなかには障害者認定まではいかないけれども一般就労にはなじまず、メンタルケアが必要で社会的に排除されやすそうな方々がいらっしゃいます。
 こういった方々のために今年度、就職希望者の短期雇用と指導員サポートを組み合わせた新たな支援事業をNPO等に委託して、受け入れる場の確保に取り組んでいるところです。
 今後もこのような連携事業を強化することによりまして、多様な受け皿機能の充実を図るなど、官民の壁を越え、また業種の縦割りを排したパーソナルサポート事業を推進してまいりたいと考えております。

<和田議員>
 それぞれ課題もありますが、ようやく全県に支援のネットワークができつつあります。いっそう必要性があり、拡充してほしいと考えます。来年度以降も確実に国の予算付けがされるよう県から要望していただくようにお願いします。
 
 次に生活保護に関連して健康福祉部長に伺います。
 埼玉県では、生活保護受給者チャレンジ支援事業・アスポート事業を行っています。明日への港、明日へのサポートの意味があるそうです。
 生活保護申請の一人ひとりに寄り添い、翼を休めることができる港になろうと「教育・就労・住宅」を三本の柱に総合的な自立支援を行なっています。各分野で専門知識を持つ支援員116名を配置し、チームで、相談に来るのを待つのではなく、支援が必要な人のところへ自ら出向いて、教育・就労・住宅の支援をしていく、そのために県と社会福祉法人、学校法人、NPOや民間団体・民間企業と県民が力を合わせるというものです。

 北海道釧路市では保護率55‰で、長野県の10倍の保護率です。釧路市だけでは経済や雇用情勢をどうにかすることはできない。生活保護が必要な人には利用してもらう。と福祉事務所は腹をくくって取り組んでいます。「あなたの笑顔が私の元気」をキャッチフレーズに、多様な自立支援プログラムを用意して、生活保護利用者が社会とのつながりを持ち続け、日常生活を立て直し、自己肯定感をもてるような支援をおこなう。この取り組みを通じて釧路市の一人当たり平均扶助費は11万9千円。北海道内主要都市の平均額より約2万円ほど低くなっています。
 長野県でも、福祉事務所と様々な地域の力を合わせた、寄り添い、伴走型の自立支援を進めてはと思いますがいかがですか。
 
 生活保護世帯の子どもの学習支援について伺います。
 埼玉県の高校進学率は98%ですが生活保護世帯の子ども達はこれを10%近く下回っていることを憂慮し、アスポート事業の柱の教育支援に力を入れています。支援員を中心に学生ボランティアの力を借りて福祉施設などに場所を提供してもらい勉強を教えるという取組です。平成22年度5か所で始まり、今年度は17か所。支援スタッフ57名、ボランティア470名。勉強に通う中三の子どもは500名から700名。ほぼマンツーマンです。子ども達は通い始めるとほとんど休まないそうです。支援を受けて高校進学した子が今度はボランティアに来る子もいるそうです。
 貧困の連鎖を断ち切るため、生活保護世帯の子どもの学習支援は厚生労働省が予算を組んでいます。県として具体化できないでしょうか。健康福祉部長に伺います。

<健康福祉部長>
 自立支援プログラム及び貧困の連鎖の防止についてお答え申しあげます。
 県としましては現在、ケースワーカーや就労支援員がそれぞれ個々の人の状況に応じた自立のためのプログラムを策定しています。それにより対応しているところですが、本年度ハローワークに増員されました就労支援ナビゲーターという方がいらっしゃいます。こういった方々と連携を図りながら、議員ご指摘の通り、経済的な自立だけではなく、日常生活それから社会生活、そういったところの自立についても、よりいっそう生活保護受給者に寄り添うような姿勢で支援していくように行なって参りたいと思っております。
 次に、議員ご指摘の通り、生活保護世帯のこども達の貧困の連鎖の防止のため、親子への養育相談や学習支援などを行なう社会的な居場所づくり支援事業というのが国で予算化されていまして、現在県内では松本市で実施されています。国においては来年度からこの事業を積極的に展開していくという姿勢でございますので、県としても実情を踏まえつつ検討してまいりたいと思っています。

<和田議員>
 前向きなご答弁をいただきました。また、貧困の連鎖を断ち切るために松本市では始まっている経験を全県的に広げていただきたいと思います。

 さらに、福祉医療について、経済的支援という観点からお尋ねします。
 福祉医療の窓口無料化の実施を繰り返し求めてきましたが、いまだ県として実施されないでいます。国のペナルティがあっても、全国37都府県で実施しており、この点ではおよそ子育て先進県とは言えない状況です。
 知事の決断で中学3年生まで所得制限なしで子ども医療費窓口無料化を始めた群馬県で、今年7月、高崎市内の保護者2500世帯にアンケートを実施。回答は809件。子ども医療費助成制度はどのような点で生活に役立っているかの問いに、複数回答で、「子育て家庭の経済的負担が軽減される」95.7%、「安心して早期に治療が受けられ、子どもの健全な成長が促進される」89.4%となっています。
 子どもの受診にあたり、どのようなことに気を付けていますかの問いに、「熱を測るなど状態を確認して、軽度な症状の場合は様子を見守る」89.5%と、無料化しても過剰受診はありません。
 実施主体の市町村や医療機関の意見・利用者の声を聞く場を設けてほしいと6月県議会でも求めましたが、その見通しはどうでしょうか。
 子育て世代を経済的に支援する立場から福祉医療・子どもの医療費の窓口無料化を、子育て先進県長野にふさわしく窓口無料化を実現していただきたい。健康福祉部長に伺います。

<健康福祉部長>
 窓口無料化を含めた福祉医療の見直しについてお答え申しあげます。福祉医療は、医療保険の患者さんの自己負担に対して助成するものでございます。
 議員ご指摘の通り窓口無料化もあれば、長野県では自動給付方式をとっていまして、窓口でいったん自己負担分をお支払いいただいて、後ほど自動的に差額が、一部自己負担分を除いて給付を行なう方式をとっています。
 この福祉医療ですが、今、国の社会保障制度改革の国民会議において、この医療保険制度自体の改革が議論されるというふうになっています。福祉医療の今後の見直しにあたっては、まずはその動向を見定める必要があるようになってきたと考えております。これに加えまして、社会保障と税の一体改革による地方財政への影響等、福祉医療を取り巻く増税を鑑みますと、直ちに見直しを行なうという環境にはないとかんがえておりますけれども、福祉医療のあり方を検討する際には、幅広くご意見をお聞きすることが必要と認識しております。
 また、子育て支援ということですが、そうした観点から平成18年度には所得制限を一部廃止した経過がございます。来年度からの新五ヵ年計画においても、子ども・子育ては引き続き重要なテーマの一つとなっており、計画策定の過程でも、子育て環境全体について議論していく必要があると考えております。

<和田議員>
 「検討する際」と先送りせずに、ぜひ検討を始めていただきたいと思います。子育て支援、経済的に進めていく。これは最終的に決断するのは知事です。今回知事のご答弁は求めませんけれども、来年度に期待をしておりますので、ぜひ前向きにご検討を進めていただきたいと思います。

4、教育について

最後に教育に関連して、教育長にお伺いします。
 就学援助の受給率は2009年10%、2010年10.6%、2011年度10.6%と経済的に大変厳しいなかで子育てをしている世帯が増えていることを示しています。
 就学援助でない世帯も学校徴収金が負担になっていることは明らかです。長野市内のある中学校では給食費、旅行積み立て、教材費で毎月13,500円の集金とお聞きしました。親は子どもに持たせるお金は何とかしようとしてもどうにもならないことも多々あるようです。教育委員会に保護者負担の軽減を幾度も求めてきました。改善が図られているのでしょうか。教育長にお伺いします。

<教育長>
 学校徴収金の軽減についてのお尋ねでございます。
 県教育委員会では平成22年4月に学校徴収金の適正な運用と保護者の負担軽減を図ることを目的としまして、「学校徴収金の基本的な考え方について」を取りまとめ、それを基に、市町村教育委員会に対して小中学校における学校徴収金の見直しについて指導・助言するよう依頼したところでございます。
 そのなかで、学校徴収金の基本的な考え方としまして、保護者への説明を十分行なうとともに、保護者の負担軽減を可能な限り図ること、同一市町村内の小中学校にあっては保護者負担に著しい差が生じないよう努めること、学用品等の有効利用や再利用の立場からリデュース・リユース・リサイクルをいっそう推進すること等を示したところです。
 各学校では、副教材の精査や修学旅行等の経費節約などを行った結果、22年度の教科活動費、修学旅行費、給食費等の総額は、前年度比、小学校で99.7%、中学校で99.3%と、微減ではございますが、それまで増加傾向でありましたがその増加傾向に歯止めがかかりました。この状況が23年度以降も続いているのかどうか、注視していきたいと考えております。
 さらに今後は、それぞれの学校で例えば保護者の方を交えて負担の軽減について意見を交換する機会を設けるなどの取り組みが進むように、市町村教育委員会や校長会に働きかけていきたいと考えております。

<和田議員>
 学校教育の中でどの子にも確かな学力をつけてほしい。これは当然のことです。しかし、同じ教室で勉強しても子どもの理解も早さも同じではありません。さらに、新しい学習指導要領にそって学習を進めなければならず、先生方は多忙を極めています。現場の先生方に頑張れと言っているだけでは確かな学力の保障はできないのが現実ではないかと考えます。
 富士見町では教育委員会が、どの子にも確かな学力を保障する責務があると考えて、学校の後方支援をしたいということで「無料塾」を夏休みに実施しました。私たち県議団は先日、富士見町にお伺いし、教育の町富士見の小林町長、小林教育長からお話をお聞きしてきました。町内外にボランティアの講師を募集し27名が講師をされ、78名の中学3年生が受講したそうです。講師・生徒の双方からのアンケートを拝見すると、好評だったことがうかがえます。
 地域の教育力を活かして、子どもたちの学力を保障していくことは大変良いことだと思います。県教育委員会ではどう考えておられるのか、地域に暮らす専門的な知識・経験を持つ方々と連携して、その方々の力を借りて子どもたちの学習意欲を高める教育機会を作り出してほしいと思います。教育長にお伺いします。

<教育長>
 次に学校の外での子ども達の学習の機会の保障についてお尋ねでございます。
県教育委員会では平成20年度から学校支援地域本部事業に取り組み、地域で学校を支援する仕組み作りを推進して参りました。
 議員からお話のありました富士見町の無料塾については、学校の授業に加えて、どの子にもさらに確かな基礎力、応用力、発展力を身につけさせるため、地域の皆さんのご協力を得ながら、学校の後方支援として実施したものと聞いております。
 また、富士見町以外にも、この学校支援地域本部事業を活用して伊那市や辰野町などで、放課後や土曜日あるいは夏休みなどに地域の方々による学習支援が行なわれるなど、それぞれ独自の取組みが始まってきています。
 今後も市町村が主体となり学校と地域が連携する仕組みが作られて、地域の方々によって、学校支援活動が県内の広い地域に全域に広まっていくよう、教育委員会としましても引き続き先進事例の情報提供や人材養成のための研修等を通して支援して参りたいと考えております。

<和田議員>
 それぞれ教育委員会でもご努力をされておられます。
 学用品や運動着、ユニホームなど費用がかさみます。武道必修によっても負担が生じています。買えない子どもが学校でどんな思いになるのか、配慮が必要です。いっそう実効ある負担軽減をお願いします。
 埼玉のアスポート、教育支援は「奇跡のきょうしつ」としてドキュメンタリーになりました。母子家庭、生活保護の子が中一で、ほんのわずかなきっかけで、不登校・ひきこもりになり、中三までの2年間に家の外に出たのは2回だけ。この子に支援員は7回家庭訪問して、アスポートに通うようになったのが高校入試まで2か月の時点でした。ほとんど歩かなかったため、通い始めて膝が痛くなりましたが、足をひきずっても通いました。
 「なんでも聞いていいよ」と大人に言われ、心を開き、中学校に戻ることもできました。 この子は「アスポートがなかったら、自分はどうなっていただろう。先が見えなくて不安だった」と本音を語りました。
 どの子にも教育を保障する、大変なことではありますが、「希望」をつなぐ取組が教育・福祉をこえて実現されることを願って質問を終わります。