2013年2月定例会  代表質問 和田あき子

  1. 安倍政権に対する知事の政治姿勢について
  2. 新年度予算案について
  3. 中期総合計画について
  4. 自然エネルギー産業に進出する企業の支援について
  5. 社会資本の整備について
  6. 使いやすい住宅リフォーム助成制度と県産材の活用について
  7. 長野県保健医療計画について
  8. 県民の生活困窮について
  9. 警察の不祥事防止対策について
  10. 教育の問題について

1、安倍政権に対する知事の政治姿勢について

<和田議員>
 日本共産党県議団を代表し、代表質問をおこないます。
 安倍政権発足後に行われた県民世論調査で、安倍政権に一番やってほしいことは、震災復興75%、第二は景気・経済対策68%です。
 
○まず震災復興についてお伺いします。

  1. 東日本大震災から間もなく2年を迎えます。いまだに32万人もの方々が避難生活を余儀なくされています。私は1月30・31日、福島県いわき市で緊急に開催された「小さくても輝く自治体フォーラム」に参加した際、東電福島第一原発の立地自治体の隣町、富岡町へ防護服を着て視察することができました。震度6強の地震と21mの巨大津波での大災害の後の原発事故から2年、1万6千人余の町民は福島県内はじめ46都道府県に避難生活を余儀なくされ、一時帰宅には防護服で放射線測定器が離せません。町は5年間戻れない宣言をしています。東電の賠償、除染、震災によって壊れたインフラの復旧などなど、復興の道のりも見えない状態です。浪江町長や富岡町長から、2年経って忘れられるのが怖い「福島を忘れないで欲しい」原発は「福島が原点で考えて欲しい」との言葉を胸に深く刻んできました。「原発ゼロ」への政策転換を強く願うものです。
     震災復興への長い道のりです。原発事故によって、放射能による子ども達の健康被害の不安がいまもあります。屋外で思い切り体を使って遊ぶことや運動をすることもできません。内部被ばくも大変心配です。福島の子供たちは、日々、見えない放射線にさらされて遊ぶ場もままなりません。数日間でも放射線の心配がない地域で過ごせば、被曝線量は下がります。春休み、夏休みなど長期の休みに子ども達を受け入れる取り組みを民間や市町村と連携して、長野県として継続的に行ってほしいと思います。知事はいかがお考えでしょうか。

  2. いまだ先の見通しが全く持てず避難が長期化しているにもかかわらず、今年度末で高速道路無料など支援の打ち切りがあります。もう忘れられてしまうのではないかと不安を抱いておられます。県内への避難者の方々に寄り添っての支援など、県として今後どのように支援をしていくのか。また、国には支援策を縮小しないように要望してほしいと思いますが、いかがですか。

  3. また、東日本大震災翌日未明に震度6強の大地震に見舞われた栄村は、昨年末までに震災復興住宅が完成し、仮設住宅や村外に避難されていた30世帯が入居しました。その他、農地復旧への手厚い補助など様々な支援は東日本大震災の復興に先駆ける取組になっています。知事は提案説明で、栄村復興基金や国の復興交付金を効果的に活用しながら、住宅の自力再建や生活支援を行うとも言われ、大変心強く思います。震災復興のカギは住宅再建であり、栄村での取組を生かすように、被災者生活再建支援制度の拡充を国に求めるとともに、県でも独自の支援制度の実現を図ることが必要と思います。震災復興への知事の所見をお伺いします。

<阿部知事>

  1. 被災地の子ども達の受け入れについてです。
     東日本大震災、まだまだ復興途上ということで、引き続き私どもも被災地支援、被災された皆さんの思いに心を寄せた取り組みをしていかなければいけないと思っています。東日本大震災の発生後、東日本大震災支援県民本部を設置して子どもリフレッシュ募金、私も募金活動させていただいて、県民の皆様方からの支援のなかで福島県を中心として被災地の子ども達に、長野県にお越しいただきました。今後、県内の団体NPOの人たちが新しく子ども信州ネットという組織を立ち上げて、これは日本チェリノブイリ連帯基金を中心としていくつかの団体が協力する形になっていますが、福島県の子ども達の受け入れを支援していこうという活動があります。これは、私も先般ビデオメッセージを収録させていただきましたけれども、こうした民間団体あるいは市町村のみなさんと連携した支援、これからも行っていきたいと思います。

  2. それから、県内への避難者への支援ということで、2月5日現在で1277名の避難者を長野県受け入れております。県外からの被災者については被災県からの災害救助法に基づく応援要請を受けまして、県として借り上げ民間賃貸住宅あるいは県営住宅の提供をしてきているわけですが、避難生活が長期化しているということを踏まえてこうした住宅の入居期間については最大3年間ということで既に延長させていただいたところです。
     また、昨年3月に東日本大震災避難者生活支援方針を定めましたが、これに基づいて信州絆プロジェクトで市町村、社会福祉協議会等と連携して総合的な生活支援を行ってきております。また、信州だよりと言う情報誌を発行して支援情報の提供あるいは相談窓口の設置をしてきております。こうした取り組みは継続していきたいと思っております。
     なお、東日本大震災から2年が経過しようとしている状況で、避難している方の状況とかニーズとかも変化しているのではないかと思いますので、こうしたニーズを把握して支援の充実に努めていきたいと思っています。被災者・避難者の支援は全国的に取り組むべき課題ですので、国に対しても必要な要望をしていきたいと思いますし、知事会で災害救助法に基づく救助の適用範囲の拡大等の要望もこれまで行ってきています。これからも全国の力を結集して支援していきたいと考えています。

  3. それから、被災者生活再建支援制度の拡充と県の支援制度の実現ということです。被災者生活再建支援法は、被災者の生活支援のため、家屋全壊または大規模半壊した被災者に対して300万円を上限に支援金を給付するという制度です。
     今回長野県北部地震におきましては、この支援金の対象にならないケースについても県単独で災害見舞金の上乗せをさせていただきました。半壊家屋の皆さんは対象にならないわけですが、そういう皆さんにも災害見舞金を支給して対応させていただきました。国に対しては支援金支給額の増額あるいは支給対象を今申しあげた半壊家屋に拡大する改善措置を要望しているところです。
     生活再建支援制度、これまで何回も改正されてきておりまして、現在国において検討会を開催して総合的な被災者支援、被災者の生活支援のあり方が議論されています。その動向に注目していきたいと思いますし、本県で災害があったような場合には、今回の栄村も先ほどあったように杓子定規の対応ではなくて災害の態様によって柔軟に県としても取り組んでいくことをしっかりやっていこうというスタンスで取り組みましたので、今後ともそういう姿勢で被災者の暮らしを守っていこうと考えています。

○経済政策について
<和田議員>
 安倍総理の経済対策「アベノミクス」は「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」を「3本の矢」といい、「円高・デフレ不況から脱却し、雇用や所得の拡大を目指す」と繰り返し言われています。
 安倍政権発足から2か月、株高・円安に動いていますが、株高・円安が進行している状況を景気回復ととらえていいのでしょうか。現在進行している株高は投資部門によるものです。先月25日までの2か月間の株式売買で約58兆円の売りに占める海外投資家の割合は約34.6兆円と6割で、週末に利益を確保する売買が中心です。さらに、急激な円安で輸出関連企業は利益を確保したと言われていますが、逆に多くを輸入に依存しているエネルギー・食糧・資材などの高騰を招き、国民生活や企業活動を直撃しています。
 アベノミクスでデフレを克服するとしていますが、10年以上にわたってゼロ金利政策を続け、日銀が大量の国債を買い入れる量的金融緩和を行ってもデフレ不況を克服できずに今日に至っています。公共事業については経済波及効果は1.63倍程度にとどまっています。国庫補助事業は県も県債の発行が伴い厳しい県財政に拍車をかけることにつながりかねません。成長戦略の具体化はこれからのようでありますが、大企業への減税や、海外進出企業への支援などで実効ある経済政策といえるのか疑問です。景気・経済対策において、アベノミクスが景気浮揚に結びつくのか疑問であります。
 
 「デフレ不況から脱却し、雇用や所得の拡大を目指す」には、デフレの原因をつかんで対策することが必要です。
 昨年の勤労者の平均賃金は、1990年以降で最低になり、ピーク時の1997年より年収で70万円も減っています。総務省が発表した2012年の労働力調査で非正規雇用労働者は35.2%と過去最高になり、年収200万円にも満たない労働者が1000万人を超えています。10年余りの間に、平均でも月給2か月分程度収入がなくなったことになり、ローンや教育費などが家計に重いものになっています。労働者の暮らしの悪化は深刻です。賃下げ、非正規雇用の拡大がデフレ不況の悪循環をつくりだしている最大の要因と考えます。デフレ脱却のためには、賃上げと安定した雇用の拡大が重要と考えます。知事の所見をお伺いします。

<阿部知事>
 賃上げと雇用の拡大についてのご質問です。長引くデフレのなかで企業の売り上げが減少、収益率が低下するなかで人件費が抑制されてきた状況が続いてきたわけです。今後、長野県経済の成長を確かなものにして、安心安全な県民生活を実現していくという上では、デフレからの脱却は喫緊かつ重要な課題だと思っています。そうした観点で今回国の経済対策を最大限活用した経済対策をとったわけですが、くわえて新しい産業づくりあるいは雇用の創出、中期計画のなかでも貢献と自立の産業構造への転換を掲げていますし、女性や若者、障害者あるいは高齢者の雇用と社会参加、これは部局横断的に推進していきたいと考えております。こうした取り組みを総合的に行うなかで県民の暮らしを守っていきたいと考えています。

○消費税について
<和田議員>
 安倍内閣は、日銀と共同して、インフレ目標を2%に定めて、金融緩和と財政出動によって2%目標を達成しようとしています。しかし、デフレ不況にたいする「処方箋」をあやまれば一層、格差と貧困を拡大してしまいます。
 現状では、内需を下支えする国民所得が上向く要素はありません。円高によりじりじりと物価は上がり始めていますが、賃金も年金も下がるばかりです。さらに社会保障の給付の削減、負担の増加で可処分所得は減るばかりです。こういう状況のまま、2014年4月から消費税8%に引き上げられれば景気の底が抜けてしまうのではないかと危惧しています。消費税増税は中止すべきと思います。知事のご所見を伺います。

<阿部知事>
 消費税の増税についてです。この場でも何回も申しあげておりますけれども、県においても社会保障費の増加は毎年毎年多額なわけです。日本全体、将来にわたって国民が安心して生活していける社会をつくっていく上では、この社会保障制度の安定は不可欠であります。そのための方策として広く国民の皆様方にご負担をいただく消費税の増税というのは、私は避けて通れないと考えております。ただ、消費税法の改正においては、増税を行うという最終的な判断は経済状況の好転を条件にしていますので、導入にあたっては政府において経済情勢の見極めをしっかり行っていただきたいと思います。また、消費税は低所得の方ほど負担感が大きいということで、低所得者の皆さんへの十分な配慮、国においても検討されておりますが、しっかりと行っていただくということが必要だと考えています。

○公務員の給与について
<和田議員>
 国家公務員と同様に地方公務員の給与引き下げを国が地方に求めることは地方自治法違法ではないかと思います。しかも、国家公務員の給与削減は東日本大震災の財源の一部にあてるためとして2年間限定で引き下げられるというもので、これに連動させて地方公務員の給与削減を国が求めるのは二重三重に通らない話であります。
 長野県では、すでに行財政改革によって職員を減らし、給与・手当等を引き下げてきました。
 国が地方公務員の給与削減の手段として交付税を減額するようなやりかたは交付税の補助金化だと指摘されるように交付税の趣旨からも逸脱しています。
 また、長野県では直接影響はありませんが、退職手当債の発行可能額を圧縮して国主導で地方公務員の退職にまで国が踏み込むのは地方分権に逆行するものであり、地方の裁量権が著しく奪われるものとして看過できません。地方公務員の給与引き下げは、デフレ不況に拍車をかけるものです。国が交付税減額によって強引に押し付けることは、地方自治の根幹を壊すものではないでしょうか、知事のご所見をお伺いします。

<阿部知事>
 地方公務員の給与の引下げです。これもこの場でお答え申しあげてきているわけですが、地方公務員の給与は、給与条例主義でありますが、地方公共団体が独自に、最終的には県議会の皆さんの条例の議決をもって定めていく、地方自治体が主体的に判断すべき事項だと考えています。今回交付税の削減とセットで国から地方への給与削減要請ということは、地方自治の根幹に関わる問題だと私は考えております。ただ、現実の問題として交付税が削減されるなかで、現実の財政運営をどうしていくかということについては、しっかり考えなければいけないと思っています。今後本県としての対応を検討してまいります。

○憲法に対する知事の姿勢について
<和田議員>
 安倍首相が国会質問で憲法問題について問われ、憲法96条をまず改定すると答弁しています。憲法96条は憲法改正の手続きを定めた条項で、「この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない」としています。この3分の2以上から2分の1にハードルを下げる、発議要件の緩和をすることで、改憲を進めようという狙いは明らかです。
 安倍政権は6年前の第1次政権のさい、国民投票の手続きを定めた改憲手続き法の制定を強行しました。発議要件の緩和は、それに続くものです。第1次安倍政権で改憲手続き法の制定から、憲法9条を含む改憲に突き進もうとしたことに対し、国民的に改憲を望まない世論のなかで憲法9条を守ろうと9名の著名人が呼びかけて「九条の会」が全国津々浦々に広がり、第一次安倍政権は改憲を断念しなければならなかったという経験をしています。
 日本国憲法は、第二次世界大戦でアジアの人々2千万人、日本国民310万人が尊い命を亡くしました。こんな悲劇を繰り返さないため、憲法9条を含めて制定されました。
 特に、長野県は満蒙開拓団や青少年義勇軍に3万人を超える人々を送り出し、その数は全国一です。およそ半数の人々は祖国に帰れませんでした。
 そういう歴史がある、長野県民は平和への思いは強く、長野県内では200を超える憲法9条を守る会がつくられ、県民過半数署名にとりくみ、講演会や憲法学習会など様々な活動が行われています。県民世論調査の結果で安部政権にやってほしくない政策の一番は改憲です。知事の所見をお伺います。

<阿部知事>
 憲法96条の改正についてです。私もずっと公務員をやっておりましたので、日本国憲法を順守ということで宣誓等重ねてきております。今の法体系、憲法に基づいて構築されてきているわけでありますし、国民の間に定着してきていると考えております。憲法96条は憲法改正の規定であります。私は、憲法の改正規定というのはある意味で憲法の本質的な部分だろうと考えております。そういう観点で、ぜひここの部分については国民的議論のうえで慎重の上にも慎重な議論を行なっていかなければいけない部分ではないかと考えているところです。国民の間にも様々な意見もあるわけですので、国会においてはぜひそういう部分をしっかりと反映した検討が必要だと考えております。

2.新年度予算案について

<和田議員>

  1. 2013年度当初予算案は、総合5か年計画(中期総合計画)の初年度に当たります。予算規模8,299億円、対前年度113億円減(−1.3%)で、3年連続の緊縮財政の様相です。しかし、実際は同時に発表された2012年度2月補正予算案(経済対策分)450億円と一体で見ると、予算規模は8,749億円となり、対前年度337億円増(+4.0%)と積極予算になります。
     歳入面では、地方公務員給与の削減を前提とした影響額58億円を含め地方交付税が102億円の削減です。地方交付税の大幅な減額などに対応するために基金の取り崩しがされます。当初予算で見る限り、県債全体が縮小しているのに、臨時財政対策債は今年度を23億円上回り、713億円にも上ります。県債の57%を占めるという異常事態になっています。知事も臨時財政対策債は国に廃止を求めているわけですが、使わなければ予算編成ができない状況で県債残高は、普通会計でみても、25年度には1兆6115億円になり、目的別歳出に占める公債費は17%と民生費13%、土木費11.9%より大きな割合になっています。このような財政状況について知事のご所見を伺います。
     
  2. 交付税の大幅な減額、県税収入は若干の伸びを見込んでいますが、県財政は今まで以上に硬直化し、地方自治体の独自の施策ができないということにならないかと危惧しています。阿部知事の下で、今後5か年の総合計画と予算をリンクさせる施策の実施や、新年度中学3年まで実施される30人規模学級など県独自の政策、さらに長年、県民からの要望がある「子ども医療費の窓口無料化」なども実現させていただきたいわけですが、平成25年度予算と2月補正予算を併せると、県債発行額はさらに増え、国からの交付税は減らされ、臨時財政対策債を使わなければならず、ゆがんだ財源の構造になっています。このような自由度のない硬直した予算では、県民の要望に基づいた県独自の施策を展開することができないのではないでしょうか。自治体の独自裁量を生かすためにどのような工夫をされているのか知事にお伺いします。安倍政権の進める経済対策として、今後公共事業の増加が見込まれますが、国の補助事業には県債の発行が伴います。くれぐれも慎重な検討をと思いますが、知事の所見をお伺いします。

<阿部知事>
 まず予算の関係のご質問です。

  1. 公債に伴う県財政の硬直化についてです。平成25年度当初予算、2月補正予算経済対策分における県債発行によりまして25年度末の県債残高、前年度に比べて110億円増と1兆6115億円の見込みであります。財政健全化、中長期的には取り組むべきとは思いますが、現下の厳しい経済雇用情勢においては財政出動により景気を確実な回復軌道に乗せていくという観点で今回の補正予算をお願いしたところです。ご質問にもありましたが、臨時財政対策債と通常起債との関係が完全に本末転倒というか、交付税が足りないから発行せざるを得ない臨時財政対策債の発行額が非常に多い状況になっています。これは地方財政の在り方としては極めて不健全な状況と思っています。この臨時財政対策債については国に改善を強く求めていきたいと思っています。他方で通常債については、当初予算ベースの発行額については抑制をしてきておりますので、トータルとして見たときには財政健全化の指標は改善する見通しです。引き続き財政規律に配慮した対応をしていきたいと考えております。
     
  2. 裁量をいかした予算編成の工夫ということです。地方自らの判断と責任において行政を運営していくといううえでは、まだまだ国と地方の税財源の配分は分権型になっていない状況が続いているわけです。とはいえ、現行制度の中で遣り繰りをしながら、県として取り組むべき施策に配分していかなければいけないわけですので、例えば今回の予算においても未利用資産の売却といった歳入確保の努力あるいは庁舎管理業務の発注を一括発注・複数年契約化というようなことによって財源を確保して、さらには国の財政対策等も活用して必要な部分に資金を回しているところです。限られた財源をしっかりと県民生活の向上に向けて使う努力をこれからも続けていきたいと考えています。

3.中期総合計画について

○人口減少に対する認識と対策について
<和田議員>
(中期総合計画)総合5か年計画について伺います。
 今後20年間に県内で30万人もの急激な人口減少が見込まれております。
5か年計画の現状認識、時代の潮流で、到来した人口減少社会とされており、「人口減少」は避けて通ることができない「宿命」のように記載されています。
 我が国の総人口の伸び率は、未婚化・晩婚化の進展などに伴い昭和49年以降の長期的な出生率の低下により、徐々に鈍化してきた、と状況分析があります。それは、結婚・出産に対する価値観の変化によるものであり、個人的な理由に基づく、結婚に対する意識の変化と、個人の価値観に置き換えてしまおうというものです。
 しかし、いま若い世代の2人に1人は非正規雇用で、不安定な雇用とワーキングプアが1000万人といわれるように低所得に置かれています。親の元に居れば何とか暮らせるという状態から抜け出せない状況に置かれています。とても結婚して家庭を持つことができない状態ということが大きな要因として挙げられます。
 結婚・育児をとりまく環境の悪化など人口減少に至る現状認識を持っておられるのでしょうか。要因の分析がされてこそ、有効な対策を講じることができるのではないでしょうか。知事に伺います。

<阿部知事>
 中期計画の関係で人口減少抑制するというご質問です。
 人口政策、極めてこれからの長野県にとって重要な課題だと思っています。要因というご質問ありましたが、国立社会保障人口問題研究会2010年の出生動向基本調査に基づくデータだと、未婚者の方にどうして独身なのかということを尋ねた調査によれば、男女とも「適当な相手に巡り合わない」と「出会いの機会がない」ということが半数近くを占めております。かつてのようにお見合いという形態が著しく減少して、友人あるいは兄弟を通じてあるいは学校でという形の出会いが増えております。そういう観点で私どももまず男女の出会いをサポートしていく必要があるだろうということで、活動人口増加プロジェクトのなかで「出会いサポーター制度」仮称ですが、こういった制度の創設で出会いの機会を充実していきたいと考えています。
 また、近年夫婦でもうける子どもの数が減少しているということで、2人目、3人目の子育てを支えるという観点で、休日保育など多様なニーズに応える保育サービスの充実、あるいは男性の家事・育児参加にむけた取り組みを進めてまいります。
 また、若者の雇用の不安定化というものも未婚者の増加に影響を与えていると考えておりますので、雇用社会参加促進プロジェクトで、若者を対象としたキャリアコンサルティングなどを行うジョブカフェ信州の充実等によって、若者の雇用の促進にも引き続き取り組んでまいります。こうした施策を総合して進めるなかで長野県の人口が少しでも減少基調が抑制されるよう取り組んでまいります。

○男女共同参画について
<和田議員>
 5か年計画の男女共同参画社会の実現の達成目標として数値目標が明記されました。
 県職員の係長以上に占める女性の割合を、現在9.4%から28年度12%(5か年計画ですが、H29年度の目標値は次期長野県男女共同参画計画の策定に合わせて検討するということで4か年間の目標がしめされています。)
 また、公立学校の女性校長・教頭の割合は、H29年度目標で、小中学校で12.7%から15%。高等学校で6.2%から7.0%と数値目標が明記されました。
 ちなみに、民間企業の課長相当職以上に占める女性の割合はH22年度9.1%からH29年度は13.0%と目標が記されています。
 県が次期の男女共同参画計画の策定との関係でH28年度までの目標12%になっていますが、12%を着実に28年度までに達成し、民間企業がH29年度までの目標値13%をめざしているのですから、県職員の目標は29年度には民間企業以上の目標を実現していただきたいと思いますがいかがでしょうか。
 3年前の私の代表質問に対して、当時の県警察の女性警察官の警部・警部補などへの昇任についていただいたご答弁では、県警察は男女の如何を問わず、競争試験によって昇任が行われていること。県警察の女性警察官の採用は、平成元年から開始し、平成21年度女性警察官は180名、その比率は警察官の5.3%、またその平均年齢は約30歳であり、男性警察官の約40歳と比較して、若いが、女性警察官180名のうち、巡査部長に36名、警部補に4名を登用しております。また平成21年3月には、警察署の課長として、実働部門の指揮官となる警部が女性警察官から初めて登用されます。とご答弁をいただき、その後も着実に進んでいると思われます。それは、実効性を担保する人事制度になっているからだと考えます。
 5か年計画には、男女共同参画で達成する目標を盛り込んで、県自ら率先して目標を達成していくために、実効性を担保することが肝要です。その方策はあるのか。総務部長・教育長にそれぞれお伺いします。

<総務部長>
 男女共同参画について、目標達成の実行ある方策はというお尋ねをいただきました。
 男女共同参画社会の実現にむけては、県ではご指摘の通り、県職の係長級以上に占める女性の割合を平成24年度の9.4%から28年度12%に引き上げるという目標を掲げているところです。目標の達成にむけては、女性職員が多様な経験を重ねていくことが必要だと認識しておりまして、例えば、国、市町村、民間企業への派遣研修派遣を行って能力開発に努める、あるいは政策や方針などの意思決定過程に参画する、企画や事業部門への配置をして職域を拡大していく、こうした具体的な方針をもって取り組んでいるところでして、今後ともこうした女性職員の人材育成着実に進めて、意欲と能力のある職員の役職者への積極的な登用に努めていきたいと考えています。

<教育長>
 男女共同参画社会の実現のための実効性の確保についてのお尋ねです。
 この男女共同参画社会の実現にむけて、公立学校における女性校長・教頭の割合は、大変重要な指標であると思っています。現行の中期総合計画の目標達成のため、女性教員を教務主任あるいは副主任等の指導的な立場に任用するよう、市町村教育委員会や校長会等に働きかけるとともに、学校組織マネジメントにかかわる研修講座へ女性教務主任等の参加を促すなどして、管理職として必要な資質の向上に努めてまいりました。こうした取り組みの結果、女性管理職の割合は、平成24年度には小中学校で12.7%、高等学校6.2%まで高まりまして目標を達成したことから、新たな総合5ヵ年計画では29年度の目標を小中学校15%、高等学校7.0%としたところです。新たな目標達成のため、これまでの研修等の取り組みを充実させるだけでなく、国の中央研修等への女性教員の派遣割合の拡大、あるいは勤務地と自宅の距離を考慮した配置の推進等に取り組み、男女共同参画社会の進展に努めて参りたいと考えております。

<和田議員>
 男女共同参画の目標を達成するうえでも、先ほど3年前に県警本部のご答弁いただいたことも参考にさせていただいたわけですが、人事の面では公正といいますか、試験を通したりして誰の目にも明らかになって、男性・女性の違いなく上がっていけるような、そういうシステムの構築も含めて、担保していただきたいと思っておりますので、ぜひ検討をお願いしたいと思います。

○子どもの医療費窓口無料化について
 子育て先進県と言われますが、経済的な子育て支援も必要と知事は認識されておられると思います。県民の要望も多く、県内の自治体では県の対象年齢に上乗せして独自の努力をして対象年齢の引き上げをして頑張っておられます。子ども医療費の窓口無料化を繰り返し求めてきたが、いまだ実現に至らず大変残念であります。厳しい財政ではありますが、中期総合計画の策定や新年度予算編成の際は何らかの検討されたのかどうか、健康福祉部長にお伺いします。

<健康福祉部長>
 私には子育て支援としての子供医療費の窓口無料についてのお尋ねです。
 子どもを含め国民が安心して医療サービルを受けられる環境の整備は社会保障政策のなかで国の責任において行われるべきものと考えております。県としましてはこれまでも国による子供医療費助成のそういう制度の創設と、窓口無料化を行った場合に国が行っている国保の減額調整措置の廃止を繰り返し求めてきたところです。しかしながら、現状では受給者の実質的な経済負担は変わらないにも関わらず、国保の減額調整措置により市町村に新たな費用負担が生じるという状況には依然変化は見られないということでして、現段階で計画や予算に反映できる環境が整ったとは言えないと考えております。
子育て支援ということで、安心して子どもを産み育てることができる環境づくりは、単に子どもの医療費の給付方式変更だけではなくて、県としましては今後も産科あるいは小児科の医療提供体制の整備や子育て支援体制の充実など、そういった施策を総合的に進めていく必要があると考えております。

4.自然エネルギー産業に進出する企業の支援について

<和田議員>
 自然エネルギー分野は、ものづくりの観点からも市場として、特に内需拡大が期待でき、有望な分野のひとつと位置付けて、長野県ものづくり産業戦略プランにおいても、今後の産業振興の重点分野の一つとして環境分野を位置づけています。
 工業技術総合センターで企業から様々な相談を受け、具体的な技術的助言をされていますし、長野県テクノ財団においても、ものづくり産業の優れた超精密加工技術などを活用して進出すべき分野を選んで、地域産業への指導や研究活動を展開されているところです。自然エネルギー産業の振興に積極的に取り組んでいただいております。
 長野県の製造業は、全国的に製造業の集積地といわれている東京都大田区や大阪府東大阪市と比較しても、諏訪地域や上伊那地域は、従業者数や製造品出荷額は上回り、引けを取らない実力があります。「ものづくり信州」が裏打ちされています。製造業の集積した力と、部品製造の実力はいくつもの指標で全国トップレベルを占めています。
 自然エネルギーに関連した産業を県としても産業振興の重点分野と位置付けているわけです。さらに、5ヵ年計画には自然エネルギーによる発電設備の容量でみるエネルギー自給率を平成22年の58.6%から、70パーセントという目標が明記されています。
 この目標を達成するために、県内に多く存在する技術力の高い製造業の技術を集積して、大企業の下請けではなく成長分野である自然エネルギー分野での産業と雇用の創出、県内製造業が主体的に関わっていけるように県が積極的にコーディネートを行うべきと考えますが、商工労働部長にお伺いします。

<商工労働部長>
 自然エネルギー産業に主体的にかかわっていけるコーディネートについてのご質問です。長野県ものづくり産業振興戦略プランにおいて、自然エネルギー分野を県内企業の部品製品の高付加価値化をもたらす有望な成長分野のひとつと位置付けているのは議員ご指摘の通りです。
 県では、県内中小企業がこうした成長産業分野に進出するために必要な研究開発やその成果の早期事業化を支援する様々なコーディネート活動を積極的に展開しているところです。
 具体的には工業技術総合センターにおいては、例えば高効率の蓄電池充電システムの開発、また企業で応用可能な技術進出の提案から研究開発の実施に到るまでの一貫したコーディネートを行っております。長野県テクノ財団においては信州大学等と連携して例えば畜産系廃棄物の熱分解によるガス化技術の開発など大学の先進的な知見を活用した産学官共同研究開発のためのコーディネートを行っております。
 さらに長野県中小企業振興センターにおきましては、自然エネルギー関連機器等の販路開拓を促進するため、エネテックジャパンなどの国内外の環境エネルギー分野の展示会への企業の出展支援を行っているところです。これらに関わる県内中小企業は、自然エネルギー分野に進出し、他にない新しく高度な製品や部品を生みそうとしている意欲のある企業でもあります。
 今後も自然エネルギー分野への進出に意欲的な企業のニーズに応じて、さまざまな支援メニューを効果的に活用したコーディネート活動を展開し、本県の自然エネルギー産業の振興に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

5.社会資本の整備について

<和田議員>
 すでに、全国各地で問題が表面化している公共構造物の老朽化への対策について伺います。
 社会資本の老朽化対策の必要性は以前から言われていましたが、道路・橋梁など建設には補助金がついても、維持管理費は地方自治体が負担するということで、維持管理・改修は遅れているなかで、昨年12月に起きた中央自動車道・笹子トンネルの天井板崩落事故をきっかけに社会インフラの老朽化の対策が差し迫った課題になっています。高度経済成長期に大量に造られた道路・トンネル・橋梁はじめ県有施設などがいっせいに寿命を迎え、安全に使い続けるためには維持管理や改修にかかる莫大な費用をどう確保するのか、国・地方自治体に迫られています。
 安倍政権は、経済対策に老朽化対策を含めて公共事業に重点的に投資をするとしていますが、県は社会インフラの老朽化の全体像を把握し、維持管理や改修の長期計画をもって進めていかなければなりません。社会資本の長寿命化対策をすでに検討されてきましたが、全体の状況を把握しているのか、お伺いします。
 東京の府中市は、インフラの老朽化状況を詳しく調べたうえで、比較的短いスパンで定期的に修繕など計画的な維持管理を行って少ない予算で寿命を伸ばすという、「インフラマネジメント計画案」をまとめたとお聞きしています。社会資本の老朽化対策について、国の経済対策に社会資本の重点的な整備と適切な修繕が盛り込まれていますが、長期計画をもって進めていくために、老朽化している社会資本の情報を整理・把握し、改修と計画的な維持管理を図るための制度の構築と、県が管理する社会資本の改修工程表を整備して、確実に改修を進める必要があります。あわせて、そのための財源の保障が必要です。
 維持管理が地方任せになっている国の体制、補助制度の見直しを国に求めるべきと考えますが、建設部長に伺います。

<建設部長>
 老朽化する社会資本への対応についてのお尋ねです。県民の生活を支える道路河川などの各種施設の高齢化・老朽化は、現代社会の抱える大きな課題であり、今後さらに顕著となっていくことが懸念されております。一方、抜本的な整備が必要な箇所も多く残されている当県にあっては、老朽化した社会資本、特に高度成長期に集中的に整備された多くの構造物について、建設から将来の維持管理を見据えたライフサイクルコストを踏まえるなかで、改修や更新、また計画的な維持補修を行うことにより、既存の社会資本を有効に活用していくことが必要でございます。
 そのため、各施設の点検等を行うことにより、施設の老朽化や損傷の状況を把握し、また、施設の重量等を勘案するなかで各施設の長寿命化計画等の策定を進めております。
 昨日風間議員のご質問にお答えしたとおり、この計画で定める工程に従い、適切な時期に的確で効率的な修繕を行うことにより、改修、更新を含め、維持管理費を平準化し、ライフサイクルコストの縮減を図るよう、引きつづき努力して参りたいと考えております。
 また、策定された計画につきましても定期的な点検や効果の検証結果を反映し、さらに新技術の活用なども踏まえ、適宜見直しを行なうマネジメントサイクル手法を取り入れ、長期的な視点からその効果をより確実なものとしていくことが重要であると認識しております。近年は国においても河川施設や公園施設を含め、維持管理に関する補助制度が拡充されてきておりますが、計画に沿った事業を実施するため、必要な予算が確実に確保されるよう、補助制度の拡充や財源の確保について機会をとらえて国等への働きかけを行うなかで適切な維持管理を行い、県民の皆様の安全安心な暮らしの確保に努めてまいりたいと考えております。

<和田議員>
 社会資本整備のことでは、国の制度の拡充を求めているということでありました。こういうことで身近な公共事業、これが地元の業者の仕事として確実に増えるわけでありますし、県民の安全も確保されるわけでありますから、いっそうご努力をお願いしたいと思います。

6.使いやすい住宅リフォーム助成制度と県産材の活用について

<和田議員>
 共産党県議団は、繰り返し知事に対し経済対策としての住宅リフォーム助成制度の実現を求めてきました。しかし、知事は「単なる経済対策だけでなく、明確な政策目的を持って実施することが必要」とのべて、県産材の利用拡大を柱として制度を構築し、今年度実施されました。住宅リフォーム助成制度の予算額5000万円の執行状況はいかがか。建設部長にお伺いします。

<建設部長>
 住宅リフォーム助成制度に関するお尋ねです。信州型住宅リフォーム助成金につきましては県産材の利用拡大を柱として今年度制度を創設してものです。
 各種媒体を使った広報等により制度の周知を図ってきたところですが、1月末現在で当初予定していました助成件数の約4割の83件の利用となっております。
 そこで地域の工務店さん等から意見を聞く等して県民の皆様がより使いやすい制度への見直しについて検討してまいりました。
 平成25年度については昨日の竹内議員のご質問に知事が答えたとおり、これまでの県産材の使用量に応じた助成から工事費用総額の20%の助成に変更するとともに、構造材の使用要件を20立方メートルから1立方メートルに引き下げるなど要件を単純化し活用しやすい制度となるように見直しを行なったところです。

<和田議員>
 今年度5千万円の予算で組んで執行状況を今お聞きした所、大変残念な執行状況に留まっておりまして、これはやはり政策的に残念な、失敗してしまったのではないかという印象を拭えないわけです。
 そういう点で今私たちは、使い勝手の良いシンプルな、利用条件を様々つけないと。対象新年度は制度のリフォームをされるようですが、もっとシンプルなものにして運用ができることを望んでいるわけですので、もう一度建設部長に伺います。
 また一方で、住宅への県産材利用促進も重要な課題であると思いますので、この新たに県産材を活用した住宅への支援ということについては、林務部長に伺いたいと思います。

<建設部長>
 もっとシンプルな制度というご質問ですが、25年度においての変更については先ほどご説明した通りでございます。
 しかしこの住宅リフォームにつきましては経済活性化と県産材の利用促進という柱を持ってやったものでございますけれども、しっかりとした、限られた予算のなかで単なる経済対策ではなくて明確な施策目的をもって実施することが必要と考えております。新年度においても県産材の利用促進と併せて既存住宅の省エネ化による温暖化防止策を進めることを明確な施策目的として、一層の利用促進拡大に努めて参りたいと考えております。

<林務部長>
 県産材を活用した住宅等への支援策についてご質問をいただきました。住宅分野は県産材の需要先の約6割を占める重要な分野ですが、住宅等への支援策については先ほど建設部長からお答えしたとおり、政策目的を明確にして実施していく必要があると私どもも考えております。
 林務部の住宅分野への取り組みとしては、これまで3年間かけて工務店・建築士等の方々に県産材等の良さ等を理解していただくための研修会を開催してまいりました。
 来年度については県産材の利用促進等に具体的に取り組んでいただける方を信州ウッドマイスターとして登録する取り組みを行い、県産材の認知度向上や確実な販路拡大を図ってまいります。
 また平成25年度の国の補正事業のなかに木材利用ポイントが、これは国の直接補助事業として計画されています。これは地域材を活用した木造住宅や木製品についてポイントを付与し、地域の農林水産物との交換を行うことで地域材の需要を喚起する事業です。この事業については現在国において細部を調整中ですが、こうした国の事業を積極的に活用し、建設部と連携しながら住宅等への県産材利用拡大を図りたいと考えております。

<和田議員>
 住宅リフォーム助成制度の質問はこの間何度かさせていただきまして、その際、幾度かご紹介してきた秋田県の施策でありますが、すでに秋田県は今年度まで3年間実施してきました。秋田県の制度は、工事内容を特定せず、工事費の10%、限度額20万円、ただし一世帯につき20万円以内であれば制度を何度も利用できるというものです。秋田県内の25市町村で22市町村が定めた制度との併用ができます。この結果、制度開始から34カ月で、3万9,539件の申請があり、合計補助額は53億6778万円。工事額は790億1522万円。補助効果は14.7倍。経済波及効果は23倍、1240億円にもなっています。
 この制度を通じて、秋田県知事は○県民の住環境が改善された。○中小工務店の受注で県内経済の活性化に寄与した。○全国から注目され(視察も多い)全国各地に制度が広がった。と「一定の成果を上げた」と言われ、4年目になる2013年度も13億9000万円の予算を計上し事業の継続を提案されました。
 知事は、住宅リフォーム助成制度と県産材の利用促進を今一度整理して、それぞれ効果の高い制度として進めていこうという考えはないのか、改めて知事にお伺いいたします。

<阿部知事>
 住宅リフォームのご質問はかねてからずっと頂戴しているわけですが、さきほど質問のなかにも引用していただきましたように、私としてはここは単なる経済対策に留まらない施策として取り組んできていますし、これからもそうしていきたいと思っています。
 来年度においては県産材の利用拡大ということに加えてエネルギー戦略もつくりましたが既存住宅の省エネルギー化の促進ということも目的に加えて、そうした利用をよりしやすいように要件の単純化もして利用促進を図っていこうと考えております。秋田県の取り組みは秋田県の取り組みとして、長野県は長野県でしっかりとした政策目的を持った施策を推進していきたいと考えています。

<和田議員>
 県産材の利用促進という政策目的をもって進めていかれるということでありましたが、今新築着工件数を軒並み下がっておりまして厳しい状況です。また、住宅リフォームということについてはニーズが大変大きいわけです。このように実際の住宅リフォーム助成制度が活用されているところでは、それに伴って県産材も相当量が使われることは明らかです。こういう点も踏まえて、知事にはもう一度ご検討いただきたいと思います。実は長野県建設業協会のみなさんが行われたアンケートでは、県下の自治体で行っている住宅リフォーム助成制度を活用した際感じておられることは、助成制度の拡大と手続きの簡略・迅速化、これが今一番求められている、圧倒的な方がそう思ってらっしゃいますので、やはり制度・予算の拡大と簡略な手続き、迅速化に踏み込んで検討していただきたいことを要望しておきます。

7.長野県保健医療計画について

<和田議員>
 従来は7つの個別の計画であったものを、今回一体化して「信州保健医療総合計画」として取りまとめ、示されました。「長生き」から「健康で長生き」へと目指すべき姿も示されました。
 長野県は、全国トップクラスの長寿県であります。それは、地域に根ざして、生活改善活動や予防医学まで取り組んできた地域医療や保健補導員や食生活改善推進員の方々の活動によるところが大きいものがあります。今後もその力によるところを県として再確認して、支援を強めていただきたいと思います。
 また、計画案では、がん、脳卒中、心疾患といずれも療養は、在宅療養を打ち出しています。さらに、患者の生活を支えるため、医療保険サービスと介護保険サービスを連携させ一体的にサービスを提供する、地域包括ケア体制の整備も打ち出されました。これらのサービスは患者の立場にたって充実させることが肝要であります。しかし、現実には、社会保障費の抑制のため、医療機関の基準病床の削減ありき、医療費の削減ありきではないのかと懸念するものであります。
 地域包括ケア体制を整えるとのことですが、今以上にマンパワーの拡充が必要になります。県下各地の医療機関では医師・看護師の絶対数は不足しており、医師・看護師の確保に大変ご苦労されています。介護の現場も介護職員の慢性的な不足に悩まされています。
 地域的な偏在の問題も含め、人材の育成と確保を、県として今後どのようにされるのか健康福祉部長にお伺いします。

<健康福祉部長>
 私には2つおたずねいただいてございます。順次お答え申し上げます。
まず、来年度から長野県の保健医療計画の中の医師・看護師の人材の確保のおたずねでございます。医師確保につきましては、医師の絶対数が不足しているとこういう認識でございます。あるいは診療科ですとか、地域間の偏在があるということ、これも認識してございます。これを何とか解消していくことが大事だろうと思ってございまして、一昨年の10月に発足いたしました信州医師確保総合支援センターを中心にドクターバンク事業ですとか医師研究資金貸与事業、医学生修学資金の貸与事業こういったことによりまして、総合的に解消に取り組んでいきたいと思ってございます。

 また、看護師対策でございますけれども、看護職員の新規養成数の確保に努めるとともに、ナースバンク事業をおこなってございまして、再就業等の支援等に取り組んでおります。地域的な偏在の解消ということに向けましては看護職員の修学資金貸与という制度がございまして、これによりまして過疎地域の病院ですとか、中小規模の医療機関への就業の誘導を図っていくところでございます。
 さらに、ご質問の中で在宅医療というご指摘ございましたけれども、こちらを担っていく人材育成ということでございますけれども、県では今年度、長野県医師会と連携いたしまして地域から選出されました郡市医師会の役員の方々、在宅療養支援診療所や病院の医師の方々、市町村の地域包括支援センターの介護支援専門員等を対象に在宅医療の地域リーダーとして活躍していただくための養成研修を実施しているところでございます。
 今後これらの方々を中心にそれぞれの地域におきまして、多職種の人材育成を図ってまいります。その連携によって在宅医療を面的に展開していく仕組みづくりを推進してまいりたいと思っております。

8.県民の生活困窮について

<和田議員>
 生活困窮者支援と生活保護について伺います。
 はじめに昨年度、今年度と実施していただいた生活困窮者の「絆」再生事業は来年度も継続していただくことになりました。先日、私たち共産党県議団が主催するかたちで「ストップ!格差・貧困 生活支援ネットワーク交流集会」をおこないました。
 反貧困ネットワークの活動は、リーマンショックで多くの派遣労働者が職を失い、住まいもないという事態をうけて、2009年末に東京日比谷で年末派遣(テント)村に始まって、県下各地で生活困窮者支援の相談会や年末絆村などにとりくまれてきた活動の交流会であります。県の絆再生事業も活用してがんばっていることやパーソナルサポート事業も大変大事な事業であることを再確認しました。県が事業の継続をすることは地道な活動をしているみなさんに大きな支えであると思います。さらに、新年度は自立のための寄り添いサポート事業で、寄り添いサポーターがアウトリーチで支援することになり大変うれしく思います。
 しかし、国は生活保護予算を削減する方針を決めたことは、憲法に謳われている「最低限度の生活」が際限なく切り下げられるのではないかと懸念しています。
厚生労働省は、生活保護の生活扶助を2013年度から2015年度まで3年間かけ、現行基準から6.5%引き下げるというのは、生活保護制度が始まって過去2回の引き下げ2003年0.9%、2004年0.2%と比較にならない大幅な引下げです。

 削減する670億円のうち580億円は08年から11年までのデフレ分を反映させるということで、削減額は
 低所得者にとって食費や水光熱費、灯油など基本的な生活費はデフレどころか円安の影響で値上がりが心配されるところです。
 生活保護基準は、最低賃金、課税最低限、就学援助制度はじめ様々な基準を定める際にも用いられており、国民の最低生活を守る岩盤として、社会保障制度の要です。

 低所得者世帯の消費水準と比較して生活保護基準が高いからと、生活保護基準を引き下げれば、国民の最低生活を守る岩盤の意味を失い、際限なく国民の生活水準を引き下げるデフレスパイラルに陥る状況をつくりだすものです。
 社会保障と税の一体改革の「社会保障改革推進法」では、自助、共助が前面に打ち出され、国による生存権の保障である憲法25条を解釈改憲するものであるともいわれていますが、厚生労働省が示した生活保護基準の引き下げの方針はまさにそのものではないでしょうか。
 国に対して、県から生活保護削減の方針を見直すよう要請してほしいと考えます。健康福祉部長に伺います。

<健康福祉部長>
 次に生活保護の見直しについてお答え申し上げます。
 議員ご指摘のとおり国では生活扶助基準につきまして、社会保障審議会・生活保護基準部会の検証結果をふまえまして、平成20年以降の物価下落を勘案いたしまして、平成25年8月から3年程度で段階的に見直しをおこなうとしているところでございます。
 県といたしましても生活保護制度が国民の信頼にこたえうる制度であり続けるためにはその時々の社会情勢を反映させた見直しというものはある程度必要なものと考えておりますが、生活保護自体は最後のセーフティネットとしてそれを必要とする方には確実に保護なされるということが重要であると思ってございます。
 また、見直しにあたりましては、昨日竹内議員のご質問に知事からお答えしたとおりでございまして単に財政的な視点だけではなくて、併せて生活保護受給者の実態をふまえて生活困窮者の自立、就労支援等を強化するための対策に総合的かつ速やかに取り組むことが重要と認識してございます。
 なお今回の生活保護制度全般の見直しにあたりましては、全国知事会を通じまして、国に対しまして国と地方の役割分担を維持したうえで扶助の適正化と自立の助長をいっそう促進するとともに最後のセーフティネットとしての機能が十分に発揮されるよう要望したところでございます。

9.警察の不祥事防止対策について

<和田議員>

  1. 不祥事根絶、防止対策について
    長野県警察においても、今年度、残念ながら警察官の不祥事が相つぐ事態となりました。県警は、県警本部長を責任者とする対策本部を設置し、新たに50数項目に及ぶ対策を検討し、再発防止に取り組んでいます。本来、県民に規範を示すべき職務に携わる警察官の不祥事は、大変残念なことですが、問題は、再発防止のための自浄能力がどれだけ発揮されるかにかかっていると思います。その意味で、新たに検討された対策の効果に期待するものですが、当事者である警察官自身の受けとめをはじめ、検討後の対策は、どのように警察業務に生かされているのか。県警本部長にお伺いします。

  2. 犯罪のない、安心して暮らせる長野県であることは県民すべての願いであり、そのために県警察が果たすべき役割と責任は大きいと思いますが、今年度の犯罪認知件数や検挙率などをはじめとする警察業務に、不祥事根絶のための新たな対策によるとりくみは良い効果をもたらしていると言えるのでしょうか。昨年中は、犯罪検挙率・解決率の向上、交通死亡事故の減少など成果は上がっているとのことです。不祥事による警察への不信を払しょくし、防止の検討をうけて、職員の意識改革がなされた結果、職員のモチベーションを上げるような対策であったかお伺いします。

  3. 不祥事の再発防止のための自浄能力を発揮していくためには、研修などのいっそうの充実が必要と思われますが、いかがでしょうか。長野県警では、警察学校の研修で、実際の犯罪被害者の遺族の体験談を聞く取り組みがされており、警察業務のあり方を考えていくうえでも貴重なとりくみだと思われます。今後も継続されるのか。お伺いします。

<佐々木警察本部長>

  1. まず、不祥事の再発防止策をどのように警察業務に生かしているかご質問にお答えいたします。昨年は4月以降警察官による非事案が相次ぎ3名の現職警官が逮捕されるなど、県民の警察に対する信頼を大きく揺るがす事態を招いてしまいました。こうした事案の発生をふまえ同じ過ちを繰り返さないよう昨年8月に非事案防止のための総合対策を策定し、県警を挙げて現在取り組んでいるところです。この対策は警察内部の委員会等において真剣に議論し、また公安委員会委員の助言をいただきながら策定したものでありまして、組織的な力の充実、個々の職員の倫理意識の向上、働きやすい職場環境の醸成、この3つを三本の柱とし具体的には52の項目を掲げております。
     対策の具体的な例をいくつかあげますと、昨年ありました不適正な車両紹介を教訓と致しまして幹部がそうした不適正紹介をチェックしやすくするためのスクリーニングシクテム等を構築し導入しております。また職員へのアンケートや投書、業務改善発表会などの場を通して職員の意見や要望を広く吸い上げ組織運営に生かしていくなどの活動を進めております。これらの総合対策の進捗状況については、毎月公安委員会に報告しご意見をいただきながらより効果的な取り組みとなるよう必要な見直しを今後もはかってまいります。

  2. 次に、職員のモチベーションを上げるためどのような対策を講じているかとのご質問です。昨年は非事案が相次いだという環境の中ではありましたが、刑法犯認知件数を前年に比較して約13%減少させることができ、また交通事故死者も97名と昭和31年以来56年ぶりの人員におさえることができました。非事案が相次いだ中でこのような結果を残すことができましたのは、県民の方々のご支援とご協力のたまものでありますとともに、県警職員が危機意識を持ち県民の立場に立った警察活動を意欲的に行った結果であろうと認識しております。
     このように職員が高い意識を持って職務に打ち込むことができるよう非事案防止のための総合対策では県民やあるいは県外の方から寄せられた警察に対する感謝や激励の手紙・メール等こうしたものを全職員に披露したり、先ほど説明したとおりアンケートや投書、業務改善発表会などの場を通して職員の意見や要望を広く吸い上げ組織運営に生かしていくなどの活動を活発に進めております。非事案を防止し士気を高揚するため、これだけやればいいという特効薬はないかもしれませんが、考えられる様々な対策を確実に実践するとともに、効果を確かめながら見直しを図っていくということが大切であろうと考えております。今後も引き続き県民の声に耳を傾け、また県議会議員の皆様からもご意見を賜りながらより力強い警察、より正しい警察に向けて前進してまいりたいと考えております。

  3. 最後に警察職員の研修における犯罪被害者遺族の講和の実施に関するご質問です。平成24年度中では警部補、巡査部長への昇任予定者や交通事故捜査を担当する警察官に対する学校での教養、および被害者支援を担当とする職員を対象とした研修会において交通死亡事故被害者遺族の方に講師をお願しまして、その方のご理解とご協力を得て計5回の講演を開催しております。
     また、昨年11月に開催されました犯罪被害者週間国民のつどい長野大会においても被害者遺族による講演が実施されたことから、職員に広く聴講を呼び掛けるなど被害者の心情を理解するための教養に配意したところであります。
     被害者の心情を理解するということは警察職員としての使命感の醸成につながり、犯罪被害者やご遺族の方の声を直接聞く機会は職員の心に響く研修として大変効果的であると考えておりますので、今後も引き続き実施してまいりたいと考えております。

10.教育の問題について

<和田議員>

  1.  教育は、子どもの発達と人権が保障されることであり、学校は子どもたちにとって安心・安全な場所であること。これはだれもが願っていることであります。
    教員の不祥事に心を痛めているのは、大人だけではありません。子ども達も心を痛めているのではないでしょうか。

    昨年7月、知事部局と教育委員会が共同で設置した「教員の資質向上・教育制度あり方検討会議」で、外部の視点から教員の倫理向上策や教育制度のあり方等について議論をしてきたところですが、検討会の専門部会での議論も保障されているのでしょうか。議論が途中なのに結論をまとめようとしているのでないかという委員の声も聞かれます。
     知事は来月、年度内には検討会議から提言を受けて、具体的な行動計画を早急に策定する。有識者による委員会で行動計画の進捗状況を確認して、教育の再生に向けた取り組みを着実に実行していく。としていますが、検討会議の議論を十分保障することが大事ではないかと思います。

  2. また、行動計画は庁内のみで策定するのでしょうか。学校現場や保護者を含め、県民的な議論をする機会を設けるべきではないでしょうか。教育長にお伺いします。

<山口教育長>

  1. 「教員の資質向上・教育制度あり方検討会議」での議論についてのおたずねでございます。
     度重なる不祥事の発生を受けまして、昨年の7月に外部の有識者からなるあり方検討会議を知事部局と共同設置いたしました。不祥事再発防止の観点から幅広くご議論をいただき24年度末に提言をいただく、こういったスケジュールで進めてまいったところでございます。
     あり方検討会議ではまず倫理向上専門部会で不祥事に関する様々な課題を抽出し、その課題解決のための方策を検討する研修・採用人事・評価の各専門部会を設置しまして、これまでに本体と専門部会を合わせまして22回の会議を開催し、議論を重ねていただきました。とりわけ、倫理向上専門部会からの報告に関する議論では、提言の方向性については委員の考え方は一致しているものの具体的な方策やその記載方法につきまして、それぞれのお立場から様々なご意見をいただき、議論を尽くしていただくために本体会議の開催回数を増やすことといたしたところでございます。
     この間、専門家だけでなく、現場の教員の方、公募委員や市町村関係者など幅広い分野の委員の皆様にご自身の知見に基づき不祥事を防止する組織体制や教員の置かれている環境などについてご意見をいただき、熱のこもった議論が行われたものと感じております。

  2. 行動計画の策定についても、おたずねございます。行動計画はあり方検討会議からいただく提言を受けて教育委員会として施策の実施に向けた行程などを策定し、進捗状況を外部有識者にご確認いただきながら実施していくものでございます。
     提言のうち不祥事再発防止策など具体的な施策に関するものにつきましては、早期に実施し、評価とかあるいは採用人事の在り方などの施策の方向の基本的なものにつきましては、現場や保護者あるいは市町村教育委員会などから広くご意見をいただきながら具体的な施策を検討してまいりたいとこのように考えております。

<和田議員>
 教育委員会は、この年度内に、あり方検討会議からの提言を受けて、具体的な行動計画を早急に策定するとしているが、あり方検討会議の議論の経過も知事は教育委員会から聞いているのでしょうか。検討会に拙速な結論を求めず、もっと十分な議論を尽くすことも必要ではないかと考えるものですが、知事はいかがかお伺いします。

<阿部知事>
 あり方検討会議での十分な議論というお話でございます。昨年7月に検討会議設置して以来、今の山口教育長の答弁にもありましたが4つの部会で本体会議と合わせて22回開催してきております。私も途中で参加をさせていただいたり、議論の内容を聞いていますが、かなり本質的なご議論をしていただいていると考えています。
 あり方検討会議でも私も申し上げましたけれども子どもを中心に考えてくれと、確かに学校の先生大変だっていうことはよく出てくるけど、それはそれとして私はそんなことはないとは思いませんけれども、やはり子どもたちのことをまず第一に考えて欲しいと委員の皆様方にお伝えをして、その方向でご議論をいただいてきていると思っております。
 長野県の教育、私は危機的な状況だと、本当に学校の信頼回復しっかりやらなければいけないと思っておりますので、さまざま議論の過程で課題が出てきているものを放置しておくことはできないと考えています。そういう意味で着実に、かつ迅速に不祥事防止対策というのは待ったなしでやっていかなければいけないと思っておりますので、あり方検討会議の提言は予定通り是非年度内には取りまとめていただきたいと思いますし、また、それに基づいた行動計画策定は早急に策定して改善すべき課題については速やかに対応していくことが必要だと考えております。

<和田議員>
 今、検討会議で出された提言に基づいて行動計画を策定していくということでありまして、その部分の評価や採用・人事については学校現場や保護者などの議論も踏まえて続けていくということであります。広く県民的な議論を保障するように求めたいと思いますが、答弁をお願いします。

<山口教育長>
 まず、最初にあり方検討会議の提言を受けた後の行程表にかかるご質問でございます。これはですね、提言を受けた後、それをどう具体化していくかということが最大の課題でございますので、当然のことながら関係する方の参画、そして見えるところでの議論、有識者の方はもちろんでありますけれども、今申し上げたように教育の関係者の方を交えた議論を県民の皆さんの見えるところでやっていくとこれが大原則であります。

<和田議員>

  1. 次に体罰について伺います。
     教育に体罰は絶対にあってはならない。こういう立場で取り組んでおられると思います。
     部活動で体罰がある。このことが、大阪市の桜ノ宮高校の事件でクローズアップされています。その桜ノ宮高校で文部科学省の義家弘介政務官が視察した際に、「強くなるための部活の体罰は一定ある」「ありうる体罰とそうでない体罰の線引きが必要」などの発言をされたそうです。体罰を容認する根深い体質に私は驚きます。
     学校教育法では懲戒としての体罰を明確に禁止しています。
     政府が1948年に示した体罰のガイドラインでは、殴る、蹴るはもちろん、長時間の正座や立たせることなど、生徒に身体的苦痛を与えることを体罰として禁止してきました。しかし、1981年、東京高裁は口頭の説教で生徒に訴える力に乏しいときは、教師は「有形の力」を行使してもよい主旨の判決を出し、体罰を容認してしまいました。
     2007年に、文部科学省は教育再生会議の意を受けて、学校教育法の体罰禁止を骨抜きにする通知を全国の教育委員会に出しました。ここでも、体罰禁止といいつつ「有形の力」の行使を認めるという矛盾したものでありました。これらの経緯があったとしても、教育長は、体罰は許されないという認識でおられることと思います。様々な形で繰り返し、一定の体罰は仕方がない。という考え方を一掃しなければならないと思います。当初の理念に立ち返って、改めて体罰の定義を明らかにして、先ほど言ったように、立たせるということは体罰にあたらないのではないかということではなくて、きちんと最初の理念に立ち返って、体罰の定義を明らかにして、教育の現場はもとより社会的にも意識改革をする必要があると考えます。教育長のご所見と決意をお伺いします。

  2. 体罰の問題が報道されるなか、元巨人軍の桑田真澄投手がどんな体罰も絶対にあってはならない。体罰でスポーツ選手が強くなることなどない。とキッパリ発言され、私は大変感動しました。桑田・清原選手の甲子園の活躍を同年代でテレビ観戦していましたが、高校一年のときから野球の名門校でエースピッチャー、巨人軍の投手として活躍された時以上に、桑田選手が素晴らしいと思いました。
     スポーツを通して心身共に成長し、競技の技術も向上させるためには、学校の部活の見直しと、指導者の養成が必要と考えます。教育委員会では子供の成長・発達にあわせた部活動の改善を図ることについて、現在検討を進めていると思いますが、どのような検討をされ、今後どのように具体化していくのか、教育長にお伺いします。

<山口教育長>

  1. 体罰の根絶についてのご質問いただきました。体罰につきましては学校教育法におきまして、校長および教員は懲戒として児童生徒および学生に体罰を加えることはできない、こう規定されております。体罰の定義につきましては、殴る、蹴る等の身体に対する侵害や正座、直立等特定の姿勢を長時間保持させる等の肉体的苦痛を与えるものとされておりますけれども、このほかの「有形力」の行使と呼ばれる身体的接触については具体的に個々、別々のどういった状況でどういうふうなことがなされたかということをきちんと把握することが前提でございます。それぞれ、個々具体的なものを適切に判断していくことが必要だとこんなふうに考えております。また、人格を傷つけ相手が恐怖感を抱くような暴言もその内容や程度によって体罰となりうるとこういう考え方でございます。現在、県下のすべての小・中・高、特別支援学校の教職員、児童・生徒および保護者を対象に体罰に関する実態把握調査を実施しております。この調査のそれぞれが改めて体罰根絶に向けて意識を高めていく大事な機会になるものと考えております。児童・生徒への指導の名の下に体罰が行われることは決してあってはならないことでありまして、学校教育はもとより社会体育等あらゆる場面から体罰がなくなるよう様々な機会を通して社会全体の意識変革を図ってまいりたいと考えております。

  2. 次に、中学生期の運動部活動の改善についてのおたずねでございます。運動部活動はより高い水準の技能や記録に挑戦する中でスポーツの楽しさを味わいながら、健康を増進し責任感や連帯感を育て、好ましい人間関係の育成に資するものでございます。しかし、一部にみられる長時間に及ぶ活動や過度の練習は、生徒・保護者および指導者の負担の増加でありますとか、あるいは中学生らしいバランスのとれた生活への影響のほか、必ずしも体力や競技力の向上に結びついていないという指摘もされております。また、あってはならない体罰の事案も発生しております。このため、県教育委員会では今年度、スポーツ医科学の専門家や部活動関係者で構成します「中学生期のスポーツ活動検討委員会」を設置いたしまして、心身の成長あるいは生涯に及ぶ健康づくりなど運動部活動が中学生期の成長に果たす役割といった観点から現状分析や今後の方向性について検討してきたところでございます。これらについては今後関係者からの意見を伺いながら指針として取りまとめまして、運動の上達や成功体験から生まれる自信、運動有能感といった言い方をしますが、そういったものを高める指導でありますとかあるいは休養とか家庭生活のバランスを考慮した活動等につきまして指導者研修や市町村教育委員会の  を通じまして心身の発達段階に応じた適正で効果的な運動部活動の推進に取り組んでまいりたいと考えております。

<和田議員>
 体罰のところで「有形力」ということで、ここが微妙なニュアンスでご答弁があったかと思いますが、これも含めて、これは体罰というふうにみなすのかどうかが鍵なのではないかと思います。この点についてもう一度ご答弁をお願いします。
 部活の指導については、先生方は大変に、時間的にも経済的にもご苦労されております。部活動と社会体育と分けて、社会体育を入れることによって先生方の負担が軽減されるかと思ったけど実際にはそうならなかったということではないかと思います。いずれにしても部活動のあり方を今いろいろな分野の専門のみなさんの力も借りながら改善をしていくことを期待しますが、現場で部活動を指導されている先生方が本当に苦労された上に、「勝つために」が至上命題として様々なご苦労をされていると思いますので、「結果が求められる」ということが最大の目的ではないということも含めて、子ども達の成長・発達段階に沿って部活動が進められるような、そういう点も引き続きすすめていただきたいと思いますのでよろしくお願いします。

<山口教育長>
 「有形力」の行使と呼ばれるものが体罰にあたるかどうかということは、私は極めて難しいと思っております。なぜかと言いますと体罰というものこうであるということを文字で定義してそれがすべての現実的な教育指導が判別できるかというと、それはできないと思っております。そういう意味で申しあげました。実際に判例も現実を踏まえての判例だと理解しております。

<和田議員>
 今、大変に難しいということでしたが、体罰ということは絶対にあってはならないという立場でこれからも進めていくわけでありますので、曖昧なところも含めて現場や社会的にも保護者にも意識改革が進められていくような取り組みがしていただくことを要望しておきたいと思います。
 長野県内にはいくつものプロスポーツチームができ、大変活躍しています。スポーツ振興にこのスポーツチームが地域活性化などメリットがあり、将来の自分を重ねて子ども達も夢を抱いてスポーツに取り組んでいます。
 しかし、体育施設が不足しているために、プロクラブチームに練習グランド、体育館が占有され、既存の地域のクラブ活動を充足できないという声もままお聞きします。
 地域クラブで長年にわたって地道な活動をしている指導者は、スポーツを通して、心も体も一流の人を育てたい、そういう思いで小中学生を中心に地域クラブの指導に熱心に取り組まれておられます。地域クラブから卒業していった子たちが、成長してやがてまた地域に戻って一緒にクラブの指導者になるという循環の中にやりがいを感じて地道に取り組んでおられる方が県内にもたくさんおられます。勝利至上主義ではなく、いろんな個性があるから、いろんな個性を大事にしながらの指導をされます。
 しかし、施設の不足や高すぎる利用料などに苦慮されていることも現実にあります。スポーツ文化をはぐくみために県として施設の拡充などしていただきたいということもお願い申しあげて、質問を終わります。