<藤岡議員>
日本共産党長野県議団、藤岡義英です。順次質問してまいります。
(1)旧中込学校保存への県の支援についてお聞きします。旧中込学校は、長野県佐久市にある日本最古級の現存する洋風学校建築であります。明治8年に建築された擬洋風建築物で、同じ擬洋風建築では松本市の旧開智学校校舎が有名ですが、旧中込学校が県内最古、日本最古級ということであります。1966年に長野県宝に指定、1969年に国の重要文化財と国の史跡に指定されています。この旧中込学校の入館者数は毎年8,000人以上ということで、佐久地域にとって大変貴重な歴史的財産だと言えます。
この旧中込学校について、県はその文化価値をどのように評価しているのか。教育長お答えください。
(2)この旧中込学校、現在の建物は昭和48年に復元工事をされたものだそうですが、建築から140年近く経過していることもあり、ベランダの床や手すり、外壁塗装がはげているなどの傷みが出てきていました。佐久市は文化財保護事業を3ヵ年で建物の傷みの修繕と耐震対策を進めていくとお聞きしております。ただこの事業について、国からは50%補助があるのに対して、県は3%の補助しか行わないとのことで、地元からも県の補助率を上げてほしいという要望が寄せられています。建築を勉強している学生や、教育に携わった人なども多く訪れる。長野県にとっても大変貴重な財産だと思いますが、こうした重要文化財の保存にかかる費用に対して、県の補助率をもっと上げるべきだと考えますがいかがでしょうか。教育長お答えください。
<教育長>
旧中込学校の評価についてのお尋ねでございます。
(1)旧中込学校校舎は明治8年に完成した、国内の学校建築のうち現存する最古級の木造2階建ての擬洋風建築物でございます。昭和41年に県宝に指定され、昭和44年3月には屋上の八角塔を持つ洋風校舎の初期遺構として貴重であるということで国の重要文化財に指定されました。さらに、同年4月には校舎及びその敷地がよく明治初年の旧態を留めているということで、史跡にも指定されたところでございます。
また、建設に当たりましてはその工事費のほとんどを村内全戸の寄付で賄ったというふうに承知しております。
以上から、建造物、史跡としての評価はもとより、地域住民の教育に対する情熱を感じる非常に重要な文化遺産であると評価しております。
(2)続きまして、文化財保護事業補助金の補助率についてのお尋ねでございます。
文化財の保護は一義的には所有者の責務でございますが、しかしその負担が大きい時に、国指定文化財であっても、国の補助に加え、県としても事業費の一部に補助をしているところでございます。文化財保護事業補助金につきましては、県の厳しい財政のなか予算が年々減少するとともに補助率も下がり、県議会や市町村から増額の要望を多々いただいてきた所でございます。このため昨年度、財政力の弱い個人や集落などが所有者の場合の負担を軽減し、国・県・市町村が一体となって文化財を安定的・持続的に継承していくという視点から、県の補助率を引き上げる見直しを行なうとともに、平成25年度の予算額は平成24年度の1・5倍に増額をしたところでございます。
旧中込学校は佐久市、自治体が所有していることから、今回の見直しの対象にはなっていないわけでございますけれども、今後とも県民にとって貴重な文化財を確実に後世に引き継いでいくために、佐久市とも十分連携を取りながら必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えております。
<藤岡議員>
さて、この貴重な歴史的財産である旧中込学校を、地元の皆さんがボランティアで保存会を組織し、定期的に草刈などの庭の手入れをされています。この保存会もまもなく発足50年になるそうです。こうした地元の長年の活動で守られてきたわけですが、地元住民のみなさんはさらに、旧中込学校の観光的な価値を高めていきたいという思いをもたれています。
県では本県を舞台とする映画やテレビドラマなどの効果的・効率的なロケ支援の環境整備を推進し、地域の活性化及び観光振興を図るというフィルムコミッションの取り組みが行われていますが、例えばこうした取り組みに重要文化財を活かすなど、県として文化的価値のある建築物の活用について、どのように考えているのか、観光部長お答えください。
<観光部長>
旧中込学校など文化的価値のある建築物を映画・ドラマのロケ地として活用を促進することについてお尋ねでございます。
県では昨年3月に41団体の参画をいただきまして、佐久市も含まれるわけですが、信州フィルムコミッションネットワークを設立いたしまして、今年の2月には都内の映画・ドラマ制作会社、東宝スタジオ、東映スタジオなど、8社を訪問するなど、ロケ撮影の誘致に積極的に取り組んでいるところでございます。
いうまでもなく、自然や文化に恵まれました長野県は、映画・ドラマのロケーション撮影の適地が多く、作品が全国公開されるとファンが実際の撮影地を訪れてみたいということになりまして、観光面で非常に大きな効果につながるものでございます。ロケを誘致するためには、その作品背景と同時期の歴史的建築物が現存することが非常に重要な要素でございます。
旧松本高等学校、軽井沢の三笠ホテル、諏訪市の片倉館など、度々ロケが行われた実績もございますので、制作会社からのロケ地の問い合わせがあった折には、旧中込学校を始めとする文化施設を、地元関係者の皆さんと一緒になって積極的に紹介していきたいと思っておりますし、また良い原作がある場合にはロケ誘致を制作会社のほうに働きかけてまいりたいと考えております。
<藤岡議員>
この旧中込学校には、開校翌年の明治9年に植えられた樹齢約140年の藤があります。この藤の手入れも地元保存会で行われています。
このように地元から長年愛されてきた、価値ある歴史的建築物、そして観光資源として可能性を秘めた重要文化財は県内各地にたくさん存在しているのではないでしょうか。県として是非戦略を持って観光振興に活かしていただきたいと思います。保存と管理を担っている市町村に対し、県として支援を強める意味でも、保存への補助率をもっと引き上げていただくことを強く要望して次の質問に移りたいと思います。
<藤岡議員>
長野県地球温暖化対策条例は、2006年3月に、事業者や県民と共同して地球温暖化対策を推進するために制定されました。しかし、長野県の温室効果ガス総排出量は、増大傾向を示したこと、また東日本大震災及び福島第一原発事故に伴って国全体及び長野県のエネルギーをめぐる情勢が大きく変化している中で、2013年3月に大幅に改正されました。この改正された長野県地球温暖化対策条例には、建築物自然エネルギー導入検討制度等が規定されていますが、他県と比べて先進的な部分はどのようなものなのか。個人住宅向けの自然エネルギー導入は、この改正された条例によってどのように改善されるのか。環境部長お答えください。
<環境部長>
条例改正による自然エネルギーの普及促進についてのお尋ねでございます。
持続可能で低炭素な環境エネルギー地域社会づくりを推進するため、平成25年3月に「長野県地球温暖化対策条例」を改正し、建築物への自然エネルギー設備の導入検討義務等を導入したところでございます。同様の制度は東京都、神奈川県、京都府の3都府県が導入しております。しかし導入している東京都など3都府県の制度は、マンションなど大規模建築物に対象を限定しており、本県のように対象を戸建て住宅まで広げ、新築しようとする原則全ての建築主に自然エネルギー設備の導入検討を義務付けている制度は全国で初めてとなります。また、本制度の実効性を高めるため、建築事業者が建築主に対して導入検討に必要な情報をスムーズに伝えられるよう、地域の中小工務店も含めた県内建築事業者を対象とした講習会を今後開催して参ります。本制度により建築主が自然エネルギー導入の効果を必ず検討するようになることから、自然エネルギー制度のメリットが広く理解され、更なる普及につながるものと考えております。
<藤岡議員>
この条例の建築物自然エネルギー導入検討制度に沿って、自然エネルギー設備の導入を誘導・促進していくという答弁でございましたが、これが本当に促進されれば大変評価されるべきものと考えます。併せて、すでに多くの県で導入されている個人向け太陽光発電設備への助成制度を設けることで、より効果を高めることができると考えます。助成制度を設けないのはなぜでしょうか。環境部長お答えください。
<環境部長>
住宅用太陽光発電への助成制度のお尋ねでございます。
昨年7月に導入された国の固定価格買取制度における住宅用太陽光発電の買取価格はシステムの設置費用や国の補助金等を考慮して、初期費用を10年間で概ね回収できるよう設定されております。また県としましては、初期費用を軽減しながら導入を可能にするビジネスモデルの構築支援を通じて、住宅用太陽光発電の普及を図ってきたところです。
経済産業省は固定価格買取制度に基づく設備認定について、平成25年2月末現在の状況を公表しております。それによりますと、本県の10キロワット未満の太陽光発電設備の認定件数は、世帯あたりでみると全国3位となっております。
以上のとおり、住宅用太陽光発電は固定価格買取制度の導入等により十分普及の効果を上げているとの認識をしており、従って県として新たな助成制度の創設について、現段階では検討する状況にはないものと考えております。
<藤岡議員>
長野県環境エネルギー戦略では、「地球温暖化対策等による地域への期待と効果」というところに、地域の富が海外へ流出するのを抑制できる、省エネ・自然エネ設備投資の増加で消費・投資が拡大できる、エネ利用効率化・エネ供給力の向上によって海外リスクへの耐性が強化される等あります。個人住宅むけ太陽光発電の設置が加速されることは個人資産が増えるというだけでなく、こうした地域への効果が加速するともいえます。またエネルギー戦略では目指す具体的な姿として「2030年にはほとんどの建物の屋根に、太陽光発電パネルや太陽熱温水器が設置されています」と書いてあります。しかし、温暖化対策条例による誘導だけでは、こうした目標に届かないのではないか。やはり県の助成制度がセットで導入されてこそ近づけるのではないでしょうか。
太陽光発電協会が発表した太陽電池の2012年度の国内出荷量が、前年比2.7倍の380万キロワット、これは発電能力ベースでありますが、過去最高だったそうです。これは原発4基分に相当します。内訳は、メガソーラーなど非住宅用が190万キロワットで約原発2基分。住宅用が186万キロワットでこれも約原発2基分に相当する需要拡大がすすんでいます。
2013年度中に日本の市場規模は世界一位になると予測されておりますが、こうした全国の早い動きに対して、長野県のとりくみはどうなのでしょうか?すでに助成制度を行なっている市町村もあるなか、県民からは依然として県の助成制度創設を望む声があります。自然エネルギー先進県を目指している長野県として、3位ではなく1位を目指すくらいの決断する時ではないでしょうか、知事お答えください。
<阿部知事>
住宅用太陽光発電への助成についてということで、再三藤岡議員からはご質問いただいてきているわけでありますが、私も住宅用太陽光発電を普及していくことは重要だと考えております。ただ、新たな助成制度の創設ということについては先ほど環境部長が答弁したとおり、それとは違う手法で広げていく必要があるんじゃないかと思っております。
固定価格買取制度が出来る前は補助金をどんどん出して、それで普及させていこうという考え方が一般的だったと思いますが、先ほど部長からも答弁申しあげましたが、初期投資は概ね国の補助金等合わせれば固定価格買取制度のもとで概ね10年で回収できると形になっているわけです。
そういうなかで私どもとしては他の県とは違う観点で取り組んでいこうということで、先般もご説明いたしましたが、地球温暖化防止条例のなかで建築物自然エネルギー導入検討制度を導入したわけです。
先ほども申しあげましたとおり、住宅を全般に広げているのは長野県だけでありまして、今後こういうものをしっかり、着実に進めていきたいと思いますし、自然エネルギー信州ネットということで、全国的には官民共同で地域ごとにきめ細かく、様々な自然エネルギー普及の取り組み応援していく組織をつくっておりますけれども、例えば初期投資を軽減していく取り組み、例えば上田のNPOの方が「あいのりくん」ということで非常に斬新なアイデアのなかで住宅用太陽光発電設備を進めていこうとしています。
私どもも自然エネルギー信州ネットを通じてこういう取り組みをしっかり応援していきたいと思っております。住宅用太陽光発電の普及については我々も積極的に取り組んでまいりますけれども、単純な助成制度ということについては現時点では考えておりません。
<藤岡議員>
現時点ではまだ検討されていないということでしたが、ちなみにビジネスモデルで、知事が以前答弁された0円システムという飯田市の補助制度があるというのを調べさせていただきました。飯田市によりますと、この0円システムによりまして初期投資がなかったけどもチャレンジしようという方がいて良かったという半面もありますが、実際それによって申し込んだ件数は、0円システムは平成21年度から平成24年度は73件、一方で、同時に飯田市で導入されていた補助制度で申し込んだ件数は1297件あったということで、やはりいくつかのニーズがあっても圧倒的に効果を上げているのは市町村が行ってきた補助制度によるものだということも、よく研究していただきたいと申しあげたいと思います。
<藤岡議員>
(1)次の質問にうつります。安倍政権によるアベノミクス効果が大いに期待され、日本の景気が回復するのではといった報道などもありましたが、しかし県内では一向に景気回復の波がこないといった声が多く、むしろ事業閉鎖のニュースが相次いでいます。最近では茅野市のsuwaオプトロニクスや、伊那市の長野ケンウッドがほぼ全機能を東京のグループ事業所に移転させ、県内から事実上撤退、全従業員約120人を異動することが明らかになっています。
御代田町では企業の業績悪化によりシチズンファインテックミヨタとシチズンマシナリーミヤノの全従業員1400数十名を対象に希望退職者を募り、275人が応じたという報道もありました。大変な状況だと言えます。こうした事業所閉鎖やリストラが相次ぐ状況に県としてどのように対応するつもりか。商工労働部長お答えください。
(2)つづいて平成24年11月定例会の一般質問でも取り上げました、佐久市にありましたスペースエナジー長野事業所閉鎖のニュースは記憶に新しいところですが、退職を余儀なくされた従業員219人のその後の再就職状況はどのようになっているでしょうか。これも商工労働部長お答えください。
<商工労働部長>
県内の事業所閉鎖に対する県の対応についてのご質問でございます。
(1)県内の経済情勢は全般的に上向きつつあるというものの、雇用情勢や賃金など実体経済を反映した部分は依然として厳しい状況が続いているものと認識しております。
ご指摘の事業所閉鎖やリストラに対する対策につきましては、今年1月に開催いたしました、長野労働局緊急雇用対策会議で、国・労働局・県・市町村および関係団体が密接に連携し速やかに緊急雇用対策を実施することを確認しており、その実行についたところでございます。具体的には企業説明会や就職面接会の開催、離職を余儀なくされた方々の求めに応じました個別相談、ハローワークと県が連携した求人開拓、技術専門校における職業訓練などを実施しておりまして、これを引き続き実施して参りたいと考えております。
最近の地域的な状況をご説明申しあげますと、佐久地域におきましては先月16日にハローワーク、県、地元関係者計16団体によります雇用対策推進会議を開催いたしまして、情報の共有化と支援策の確認を行ったところでございます。県としましては、佐久地方事務所に設置いたしました佐久地域経済雇用対策プロジェクトチームによります、再就職先の掘り起こしや、ジョブカフェ信州によります再就職に必要な相談・セミナーなどを実施しているところでございます。また、諏訪地域におきましては、来月5日にハローワーク、地元市、地域経済団体、県諏訪地方事務所によります、諏訪地域緊急雇用推進協議会を開催しまして、支援策の確認をすることとなっております。
いずれにいたしましても、長野労働局、ハローワーク、県、地方事務所、地元市町村、経済団体等一丸となりまして、こういった問題に対する対応を目指し、強力に支援してまいりたいと考えております。
(2)次に、スページエナジー長野営業所の閉鎖に基づく再就職の状況でございます。これまで県はスペースエナジーからの離職者の皆様に対し、県及び関係機関と連携いたしまして、様々な再就職支援を行ってまいりました。
具体的には、昨年の12月と今年の1月、2回の企業説明会を開催し、さらに今年の2月には合同就職面接会を開催いたしまして、求人企業44社、求職者103名が参加しました。また、通常の職業紹介のほかにジョブカフェ信州によりますキャリアカウンセリングや模擬面接、佐久技術専門校によります民間の教育訓練期間を活用した職業訓練など、再就職に必要な技術やスキル習得にも支援を行ってきたところでございます。
また、地元企業に対しては、商談会の開催や制度資金の活用を通じまして、新たな取引先の開拓や受注の拡大などにも努めまして、地元の雇用拡大を図ってきたところでございます。
その結果、再就職を希望し、佐久・小諸・上小の各ハローワークに求職登録をされました190名のうち、6月20日現在で100名の方が再就職された状況でございます。今後も、関係機関・団体と連携をとりまして、全員の方が再就職できるよう一人一人の再就職活動を支援したいと考えております。
<藤岡議員>
ぜひ引き続き、取り組みを続けていただきたいと思います。
未だに、多くの労働者の方が再就職できずにおられることは、大変辛い状況かと思われますし、県としても大きな損失だといえるのではないでしょうか。私は、11月定例会の委員会でもこの問題を取り上げ、商工労働部長から「最後の一人まで再就職を支援する」との答弁をいただいたと記憶しておりますし、今もご答弁いただいたと判断しております。そうした立場でひきつづき支援をつづけてほしいのですが、知事も「最後の一人まで」という立場に立たれているという考えでよろしいでしょうか。お答えください。
<阿部知事>
お答えします。今般策定した「しあわせ信州創造プラン」のなかでも、雇用の確保、私どもとして一番重要な柱の一つだと考えております。そうしたなかで、スペースエナジーの閉鎖に伴う再就職支援、さきほど商工労働部長から対応についてご答弁申しあげましたけれども、私も一人ひとりに寄り添った積極的な支援を行うなかで、支援を求める方が一人でもいらっしゃる限りは全員の再就職を目指して県としても全力で取り組んでいきたいと考えております。
<藤岡議員>
県民の所得を増やす政策の実現でこそ本格的な景気回復につながると確信しております。一人ひとりの労働者の雇用支援、家族と幸せに生活していけるだけの賃金の保障、そして地域でがんばる中小企業支援など、長野県でできる政策はないか。いっしょに考え、具体化し、実現していきたいという決意を述べさせていただきまして、私の質問を終わります。