2013年9月定例会 9月27日 一般質問 和田あき子

  1. 県立4年制大学について
  2. 生活保護基準の引き下げの影響、審査請求について
  3. 地域生活定着支援センターについて
  4. 長期入院中の精神障がい者の地域移行について
  5. リニア中央新幹線について

1.県立4年制大学について

<和田議員>
 はじめに、県立4年制大学について伺います。
 今県議会に、新県立大学基本構想の見直しを求める請願が9万数千筆の署名を添えてだされました。その請願には今回発表された基本構想は県内の3私立大学と競合するような学部・学科構成となっており・・・、私立大学の経営を圧迫し、県内高等教育全体の活力の低下につながるものと危惧するとまで記され、基本構想の見直しを求めています。
 しかし、私は、本県の進学状況と大学の設置数を見れば、少子化が進んでいるとはいえ、基本構想の内容が私学を圧迫し、競合するものになっているのかについては、請願の趣旨に疑問を抱いております。県としてどうとらえておられるのか、高田総務参事に伺います。

<高田総務参事>
 基本構想の内容が私学を圧迫し競合するものになっているかについてのお尋ねでございます。昨日知事が清沢議員にお答えしましたとおり、長野県の大学収容力は平成25年速報値では全国最低であり、大学進学者の8割以上が県外の大学に進学している状況です。
 新しい県立大学はこのように県外に進学している学生の県内大学の進学を選択肢に提供するものでもございます。また、管理栄養士に関してまず就職状況について県内の給食施設だけを見ましても平成23年度で837名が配置され、平成18年からの5年間で150名以上が増加しています。県としても食の重要性を認識しており、しあわせ信州創造プランのなかで食育の推進を、また食育推進計画のなかで栄養教諭の配置推進をそれぞれ記載しております。さらに食品関連企業では相当数の管理栄養士が活躍しているという状況もございます。高齢化が進み健康長寿社会を実現していくことが求められているなか、食の専門性を持った人材は一層必要になると認識しております。

 一方、現在長野県短期大学には40名の栄養士養成課程があり、栄養士として就職した者のうち最近5年間では毎年平均10名程度が管理栄養士となっているという現状がございます。新県立大学の設立と同時に県短期大学は閉学いたしますので、40名の栄養士養成課程もなくなるわけですが、新県立大学では定員40名の健康文化学科のなかに設けます2つのコースのうち1つのコースで管理栄養士受験資格の取得を可能とする予定でございます。食の専門性を持つ人材の現在の県内の状況を減少させないことが必要であると考えております。
 さらに健康文化学科はグローバルな視点を持ち地域にイノベーションを起こすことができる人材育成という大学の理念に基づき、広い教養を持った食の専門家を育成してまいります。そのため実践的英語力の養成、海外プログラムの履修などを含め、志を下げることなく具体的なつくり込みを行なってまいりたいと考えております。

 こうしたことから、新しい県立大学が設立されることにより新たな競合関係が生まれるものではなく、食や健康に関する人材育成を既存の私立大学とともに担い互いに発展していくことが重要であり、そうした方向をぜひ目指してまいりたいと思っております。

<和田議員>
 ただいまのご答弁の趣旨を県民の皆さんによくご理解していただけるように、また請願を出されたみなさんにご理解していただけるように周知をしていただく、この点でのご尽力をお願いしたいと思います。

2.生活保護基準の引き下げの影響、審査請求について

<和田議員>
 生活保護費の削減は、生活扶助は、2013年度に初年度分151億円の削減を手始めに、2015年度まで3年かけて670億円、現行基準から6.5%の削減。さらに年末に支給される「期末一時扶助」は2013年度に一気に70億円分の引き下げをおこない、生活扶助と期末一時扶助を合わせると3年後には年間740億円、7.3%の引き下げを行うという、いまだかつてない大改悪です。

 今回の生活保護費の削減は、すでにおこなわれてきた老齢加算廃止など対象が一部に限られた削減ではなく、食費や水光熱費など日常生活費にあてる「本体」ともいうべき生活扶助基準の削減であり、これによってほとんどすべての受給世帯に影響が及びます。
 そして、この生活保護基準の引き下げは「物価が下がっている」いわゆるデフレを口実にしておこなわれましたが、現実にはアベノミクスの経済対策によって電気代、ガス代など光熱費の値上げや、小麦・大豆など輸入原材料が値上がりしたことで食料品も高くなって生活を直撃している中で、8月支給分から生活保護費が削減された影響について、県はどのように把握しているのか。健康福祉部長に伺います。

<健康福祉部長>
 生活保護基準でございますが、これは生活保護法第8条の規定によりまして、厚生労働大臣が定めることとされておりまして、今年の8月から見直しをされているところであります。主な見直しの対象であります生活扶助費、これは食費、被服費、光熱費などの日常生活に必要な経費について見てみますと、県が保護を実施する、これは郡部の対象の方々ですけれども、これ等約1,100世帯のうち8割の世帯が減額ということになっています。
 また、それ以外の19の市の生活保護世帯におきましても、約7700世帯のうち、把握している範囲では概ね7〜8割の世帯が減額という影響をうけているところでございます。各世帯の受給額でございますが、世帯構成や居住地域、収入の有無により異なりますけれども、郡部と市でも差がありますけれども、例えば標準的な世帯で言いますと、30代夫婦と4歳の子ども一人、こういう3人の世帯は郡部では2500円程度、市部では4800円程度の減額となったところでございます。

<和田議員>
 反貧困ネットや生活と健康を守る会など、生活保護の受給者に寄り添った支援活動をしている団体から呼びかけられ、今月17日、全国一斉で審査請求がされました。その件数は、全国で約7000件、県内では52世帯62名です。
 今215万人の生活保護受給者がおられますが、審査請求を呼びかけられた方々はわずかですし、実際に呼びかけに対しても、肩身が狭い思いをしているのにそんなことはできないとか、ある方は、自分自身が障がいを抱え小学生の子がいる家庭で今回1万3千円も減額になったが「生活をみてもらっているのにたてつくことはできない」といって審査請求されない方がおられます。そういう状況のなかで、やむにやまれず審査請求されたということを汲み取っていただきたいのです。
 審査請求に県庁まで来られた方の生の声をご紹介いたします。
 「私は、生活保護費が削られる前でも大恩人の葬式に顔をだせなくて、まして父親の葬式に顔を出せませんでした。その時の私の気持ちを是非、心に感じてください。そのうえ、子どもたちにも何もしてやれない。一食や二食、食べられないのは本当につらいけど、我慢できる。だけど心に負ったすまないという気持ちは死んで墓場まで持っていくしかない。
 小さい子どもたちがいる家庭は親が自分は食べなんでも子どもに食べ物を食べさせてあげるが今年、来年、再来年と減額されれば、今度その子どもたちにも食べるものをあげられなくなるんです」
このように、ご紹介したのはほんの一部の声です。審査請求の申し立てをした方々の切実な声を県はどのように受け止めたのか。健康福祉部長に伺います。

<健康福祉部長>
 審査請求についてお答えします。8月に施行されましたこの改定に基づきまして、各福祉事務所において受給者に対する生活保護の変更決定が行なわれました。この決定に不服があるといたしまして、知事に対して審査請求が提出されております。9月25日現在で62件の審査請求を受け付けているところでございます。審査請求を提出されている皆さんからは、困窮している生活の状況などについてお聞きしました。例えば一つ紹介申し上げますけれども、現在仕事をしていますけれども先天性の疾患がある為思うように仕事ができないことがある、将来的に生計を立て直す事が難しい面もあるなど、こういった切実な声は重く受け止めなければならないと思っているところでございます。
 審査請求に関しましては、審査庁として法決定の適法性・妥当性については、適正に審査し決裁してまいりたいと思っております。

<和田議員>
 生活保護は、最後のセーフティネットであり、生活保護受給者が215万人と過去最多にのぼったことは年金や雇用保険など社会保障制度が脆弱であることと、雇用情勢の悪化の顕れです。根本の問題の解決なしに、政府は生活保護費の大幅削減を実施しました。
 今年の削減にはじまり、来年、再来年とさらに生活保護費を削減する方針です。このまま実施することは生活保護世帯の生命にかかわる状況をつくりだすことが危惧されます。県として生活実態の現状をとらえ、今回の削減と、来年、再来年の更なる削減を見直すことを国に求めるべきと思います。健康福祉部長いかがですか。

<健康福祉部長>
 国に削減を見直すよう求めるべきというお尋ねでございます。
 生活保護法では、保護の基準は最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつこれを越えないものでなければならないと規定されているところでございます。
 今回の生活保護基準の改定は、国のほうの審議会のなかの生活保護基準部会が、保護の水準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているかどうかを検証した結果を踏まえている、また平成20年以降の物価の動向を勘案し実施されたものと承知しております。さらに激変緩和の観点からは、減額の幅ですが、見直し前の10%が限度となるよう調整いたしまして、今年の8月から3年間をかけて段階的に実施するということにされているところです。
 なお来年度以降の基準額でございますが、これは今回の見直しとは別に国民の消費動向、社会経済情勢を総合的に勘案し予算編成過程において再度検討するとされているところです。この基準自体につきましては法令等に基づき国が定めるものであります。
 県といたしましては、この生活保護が最後のセーフティネットとして十分機能するよう、今後もその適正な実施に一層努めてまいらなければならないと思っております。
 なお、本年7月には全国知事会を通じまして国に対して、生活保護制度については扶助の適正化と自立の助長を一層促進するとともに、最後のセーフティネットとしての機能が十分に発揮されるよう不断の見直しを行なうことなどを要望したところでございます。
 今後も生活保護を取り巻く動向を注視してまいりながら、国に対して必要な要望を行なってまいりたいと思っております。

<和田議員>
 今回の削減の中心は低所得世帯との均衡ということよりもむしろ、デフレの口実が大きかったと思いますので、来年度以降の見直しにそれが反映されるように臨んでいただきたいと思います。
 審査に当たっては、請求者の声と実態をつかんでいただき、法律の精神に基づいて適正に審査をしていただくよう要望しておきます。

3.地域生活定着支援センターについて

<和田議員>
 法務省の「矯正統計年報(2011)」によると、約7万人が受刑中で、このうち新規受刑者が2万6千人、その約58%が再犯といいます。また、帰る場所のない満期釈放者の中には高齢者や障がい者が1,000人ほど含まれています。帰住先のない人の約57%が、1年未満で再犯をしているというデータもあります。
 刑務所などの矯正施設には、福祉サービスが必要な高齢者や障がい者が数多く入所しており、その人たちが犯罪に至った背景に、低学歴、学力不足、家庭崩壊、職業能力不備、コミュニケーション能力の欠如、不安定雇用など身体的、経済的、社会的な問題が複雑に絡み合って、自立生活を阻害する多くの課題が隠されています。
 そうした課題を抱えた人は、これまで矯正施設を退所しても、誰も迎えに来てくれない、お金もない、行くところもない、仕事もない。自力では必要な福祉サービスにもたどり着けない高齢者・障がい者が多く、再犯、矯正施設を繰り返し、窃盗など軽微な犯罪を繰り返し、通算して何十年も刑務所で暮らして80歳を超える人もいる状況です。
 このような矯正施設を退所後、行くあてのない高齢者・障がい者の方に対して、入所中から本人の意向を聞き、地域で生活できる支援体制を関係機関と事前に調整し、支える機関が必要ということで国は各都道府県に「地域生活定着支援センター」を設置しました。
 昨年度から業務を委託された長野県社会福祉士会は、福祉士会の事務所内に地域生活定着支援センターを置いて、手さぐりで業務を始められました。所長さんから、私たち県議団にもセンターの活動を知ってほしいと話がありました。
 センターの事業費は10分の10、国からの補助金で運営しており、昨年は1700万円で約3人で業務をしているが、コーディネイト業務・フォローアップ業務・相談支援業務や満期出所者の迎えなど多忙を極めて、3人ではとても回らないとお聞きし、昨年9月県議会前の知事への申入れで予算と体制の拡充を要望したところ、今年度は、2500万円に補助金を増額し、6.5人態勢でセンターの機能の充実をしていただきました。この取り組みを県はどうとらえているのか。健康福祉部長にお伺いします。

<健康福祉部長>
 地域生活定着支援センターの取り組みについてお答え申しあげます。
 この制度ですが、刑務所に入所する高齢者や障害者等が出所後必要となる福祉サービスの利用調整を行なう機関でありまして、県では平成22年度に設置したところでございます。平成24年度からは議員ご指摘のとおり、長野県社会福祉会へ運営を委託しております。社会福祉会でございますので、福祉サービスに係る専門性を発揮したきめ細かやな支援を実施していただいていると思っております。今年度も予算を増額いたしました。それによりまして、地域に配置する地域生活定着支援員の支援員の方々を4人体制から6人体制へと拡充いたしまして、入所中から出所後まで一貫した支援を行なっているところでございます。
 実績としましては、昨年度は24人、今年度8月末までに16人に対して受け入れ施設の調整、そしてまた、相談助言等の支援を行なっているところでございます。
 この事業でございますが、刑務所等出所者の社会復帰を支援することで再犯の防止に寄与していると承知しております。セーフティネットを構築する大変重要な取り組みであると思っております。
 今後とも、保護観察所等と連携しまして適切な支援を続けてまいりたいと思っております。

<和田議員>
 予算の増額によって人員を増やし、すでに今年度は8月末で昨年度実績かそれ以上の実績を上げている業務もあるということでありますし、また今言われたとおり、必要なサービス、地域定着を図っていく福祉のサービスを提供すれば、再犯を繰り返さなくて済む、こういう重要な仕事を担っているわけであります。
 ところが、地域生活定着支援センターの委託料に充てている国の補助金について、国は、9月11日付で「平成25年度セーフティネット支援対策事業費補助金の内示について」という厚労省社会・援護局保護課長名で通知がだされました。
 その通知では、生活困窮者支援モデル事業、生活保護基準改定に伴うシステム改修等に局内の予算を優先配分した結果、優先配分以外の事業については、総額で約3割の不足が生じることとなった。
 「セーフティネット支援対策事業費補助金」は予算の範囲内で国庫補助を行う事業であり、現在のところ、これを超える内示の見込みはないため、優先事業以外は約9か月分の内示を行うこととする。という、にわかには信じられない内容です。
 地域生活定着支援センターの事業は補助金10分の10で、今年度2500万円の3割、750万円減額です。
 これについては、県が予算措置すべきものではないと考えます。県は、この年度途中で減額により不足するセンター事業費をどう財源手当てするのか。お伺います。
 また、セーフティネット支援対策事業費補助金を活用しているほかの事業費もセンターと同様に3割減額になるわけですが、どのように補うのかもお聞きします。
 あくまでも国に今年度分補助金予算の満額の執行を要求すべきと考えます。健康福祉部長に伺います。

<健康福祉部長>
 国のセーフティネット支援対策事業費補助金の減額に伴う対応につきましてお答え申しあげます。
 厚労省より9月11日付で、今年度の補助金について予算が大幅に不足している、当初内示額は優先配分事業の、それ以外の事業については要望額の約7割とするという旨の事務連絡があったところでございます。
 ご質問のありました、地域生活定着促進事業の経費の内訳でございますが、地域生活定着支援員の人件費、退所者支援のための移送費などでございまして、年度途中で事業を縮小するということは非常に困難であると思っております。このため、本事業につきましては出来る限り事業費を減額しない方向で対応してもらいたいと思っています。
 次に、セーフティネット支援事業費補助金を活用している他の事業ですが、事業内容の見直しによる実施や、他の財源の活用の可能性ということについて、今技術的な検討をしているところでございます。しかしながら、この削減によりまして、事業実施に大きな支障を来たすことは想定されております。このため県といたしましては、国に対して必要な予算の確保や追加内示などを行なうことによりまして、事業の円滑な実施に支障を来たさないよう要望してまいりたいと思っております。

<和田議員>
 今部長のご答弁では、この事業については減額しない方向で検討するというご答弁がありましたので、ぜひ強力にその方向で進めていただきたいと思います。
 厚生労働省は、通知の最後に「なお、既存事業の実施について、職員の人件費等事業の実施に最低限必要な経費については確保するなど、事業実施に支障がないようお願いしたい。」と無責任な態度です。本来、国が財源手当てすべきものとだけ言っているわけにはいきません。県としても検討はしていただきたいということも申し添えておきたいと思います。

4.長期入院中の精神障がい者の地域移行について

<和田議員>
 県は、全国に先駆けて精神障がい者の地域移行に取り組んできました。10年前から4病院でモデル事業を実施し、平成18年から精神障がい者退院支援事業に、翌19年から県単独事業で退院支援コーディネーターを置き退院支援事業を行ってきました。国は県より1年遅れて事業を開始したように県は先進的な役割をはたしてきました。
 とはいえ、精神科病院の入院期間は、1年以上5年未満が約60%、そのうち2年未満が30%ですが、最長の方は45年9カ月で、平均入院期間は7年7ヶ月。長期間にわたって入院しているため、退院することは容易なことではありません。
 ご本人や家族、病院、行政や地域の支援者や支援団体などを、きめ細やかにつないでいく地域移行コーディネーターの役割は大きなものがあります。
 退院を躊躇している人も、支援をしっかり行えば地域で暮らせる方が多く、「退院してよかった。退院後もヘルパーやグループホームの世話人がケア会議をしながら支援してくれて安心」「43年間入院していましたが、退院支援で退院することができました」というように、地域の生活に喜びを感じておられる方が圧倒的です。
 まだ、多くの方が精神科病院の中で退院を諦めて暮らしています。県には病院との連携を強め、地域移行支援の充実を図ってほしいわけですが、支援に当たるコーディネーターが大事な役割を果たしていることについて、どうとらえているのか伺います。
 
 県が全国に先駆けて精神障がい者地域移行を行ってきたわけですが、昨年度まで補助事業で県下5か所に配置されていたコーディネーターが、障がい者自立支援法への移行の過程のなかで今年度のコーディネーター配置は4エリアとなりました。今後は市町村事業として位置付けられるということですが、市町村で体制が整うのでしょうか。小規模な自治体では体制を整えるのは厳しいと思いますが県としてどう支援していくのか、また、市町村の体制が整い、市町村でコーディネーターが育つまで県として支援をしてほしいと思います。健康福祉部長に伺います。

<健康福祉部長>
 精神障害者の地域移行に関するお尋ねでございます。長野県では国のモデル事業として、平成15年度から全国に先駆けて精神障害者の地域移行に取り組んでおります。平成19年には県内4箇所、翌年度20年度からは5箇所にコーディネーターを配置いたしまして、24年度までの6年間で429人の退院を実現するなど、実績としては全国有数でございますけれども、そういう実績をあげてきたところでございます。これはコーディネーターがお一人お一人の精神障害者に対して粘り強く丁寧に相談支援にあたるとともに、医療機関などとの地域連携体制の推進を図ってきた成果でありまして、精神障害者の地域移行においてコーディネーターは本当に大きな役割を果たしていると思っております。
 そうしたなか、平成24年度から精神障害者の地域移行に関する個別の相談支援が、自立支援法に基づく市町村の障害福祉サービスに位置づけられるとともに、地域生活を支える体制整備にあたる人材の配置も市町村事業となったところでございます。
 しかし、個別の相談支援に関する経験とかノウハウも十分に有していない障害福祉サービス事業者も多い、また精神科医療機関との連携など、地域生活支援体制の推進に関わる人材の確保についても時間を有することであると思っております。
 こうしたことから長野県では県独自の事業として25年度県内4箇所に引き続きコーディネーターを配置いたしまして、市町村や生涯福祉サービス事業者に対する支援助言などを行なっている所でございます。
 また、保健福祉事務所などにおきまして障害福祉サービス事業者の相談支援専門員などに対する研修会を開催するとともに、自立支援協議会と連携いたしまして地域生活の体制整備にあたる人材の配置を市町村に働きかけているところでございます。
 県といたしましては、精神障害者の地域移行が滞ることのないよう、市町村や障害福祉サービス事業者に対するこれらの支援や働きかけを通じて、新制度の円滑な移行に努めてまいりたいと思っております。

<和田議員>
 長野県が全国的にも大きな役割を果たしてきたということが分かる中身でありますけれども、補助金によって精神障がい者地域移行・地域定着支援事業が行われてきましたが、障がい者自立支援法・総合支援法へと移行して、個別給付に代り、実施主体が市町村へと移行していくなかで必要な支援が継続していくことを、県として見守り保障してほしいと思います。
 また、来年度の精神保健福祉法改正に伴っても地域移行コーディネーターの充実した配置を望む声があります。引き続き、県の役割は大きいのでよろしくお願いします。

5.リニア中央新幹線について

<和田議員>
 18日にJR東海がリニア中央新幹線の路線や駅位置も示された環境影響評価準備書を公開し、20日から準備書の閲覧が始まりました。また、10月2日からは、リニア沿線の12カ所でJR東海による準備書の説明会があり、11月5日までは県民がJR東海に意見を寄せる期間ということです。
 今日までの県議会でリニアに関連しては、2027年リニア中央新幹線開業に間に合わせるには「残された時間は多くない」といわれた牧野飯田市長の認識にみられるように、リニア駅の整備と周辺整備やアクセス道路の整備、さらにJR飯田線とリニア中央新幹線が交差する付近への駅整備、それらも含めた都市整備をどう進めていくのか、だれが主導していくのか、どう調整するのか、かかる予算を国・県・地元自治体はどう負担するのか。リニアで東京・名古屋が時間的に近くなることで変わると思われる観光や経済活動をどうするのかという質問が目白押しでした。
 しかし、県は準備書に対する知事意見を作成するため10月下旬には動植物や地質などの専門家によって県環境影響評価委員会を開くことをはじめ、準備書の内容について審議を行うわけです。南アルプスを貫く長大トンネル建設など巨大開発や中央構造線を横切る工事など、環境に及ぼす影響は厳しい審議を尽くすことが必要だと思います。
 また、JR東海から出された準備書に県民の意見・地域住民の総意を反映させることが大事ではないでしょうか。
 路線や駅の地点が示された今、県として、県民に情報を周知すること、県民の意見をJR東海に伝えることにも力を入れて欲しいと思います。知事にお伺いします。
 2027年開業。このゴールに向かって、環境への影響の不安、周辺整備への不安。財政負担等の不確定要素を多く残したまま、建設へ見切り発車。一部には2020年東京五輪までに一部区間だけでもなどという強引な声も聞かれますが、建設を前倒し、強引に進めることがないよう、国やJR東海に働きかけるべきと考えます。知事にご所見を伺います。

<阿部知事>
 リニア新幹線の整備についての、県民への周知等についてのご質問でございます。
 リニアに関する情報提供、県として県民に伝えるべきものと、環境影響調査の結果のように事業主体としてJR東海が県民にしっかり伝えていただくべきものとがあります。このうち、JR東海からの情報につきましては、私が会長を務めておりますリニア中央新幹線建設促進長野県協議会において、地域において十分かつ丁寧な説明を行なうこと、環境影響調査終了後には説明責任を確実に果たすこと、こうしたことをJR東海に対して求めてきたところであります。
 今後、環境影響評価準備書について沿線地域で住民説明会が開催されますが、JR東海に対しては丁寧な説明を行なって県民からの意見質問に分かりやすく回答するよう求めていきたいと思います。そして、環境影響評価準備書に関する県民意見につきましては、法に基づいてJR東海に直接提出することになっていますが、これ以外に県に寄せられた意見についてもきちんとJR東海に伝えていきたいと考えています。
 一方、県としての情報、例えばリニア活用基本構想などについては地域の将来に影響を与えるものでありますから、策定過程において十分情報発信に努めてまいりたいと考えております。
 また、建設の前倒しという議論がありますが、建設スケジュールありきということではなくて、環境の保全、安全・安心を確保する万全の措置をとるよう、今後準備書の審査等を通じてJR東海に求めていきたいと考えています。

<和田議員>
 リニア中央新幹線が夢から現実になってまいりまして、目の前に多くの課題が見えてまいりました。早くと言う声もありますが、不安が広がっているのも事実であります。県は地に足をつけて課題に向き合っていただきたいと申しておきたいと思います。


 今回は生活保護受給者や矯正施設からの退所者の地域生活定着支援、精神科病院に長期入院されている方々の地域移行ということを中心に質問をさせていただきました。いずれも自分から声をあげていくことができない、困っていることを訴えられない、どうしたら自分に必要な支援を受けられるかわからない、こういうさまざまな支援があることすらも知らないというなかで、より困難な状態になっていく人に対して、本来は支援が届くためもっと予算の拡充が求められる分野であります。ところが国は社会保障予算が増大し続けていることから予算を削減する。受けられる支援をはずしていく。
 それなのに、「税と社会保障の一体改革」の名で収入のない人にも「公平」に消費税増税をするといっているのでありますから、やることが逆さまであります。
 弱者を切り捨てるようなやり方に強い憤りを感じております。国のやり方に対して地方自治体が防波堤の役割を果たしていただきたいと申しあげまして、全ての質問を終わります。