<藤岡議員>
日本共産党県議団の藤岡義英です。順次質問をいたします。
まず、特定秘密保護法案ついて質問します。衆院での採決前日、福島市で行われた地方公聴会では、意見を述べた全員が廃案や慎重審議を求める声だったにもかかわらず、政府与党とみんなの党の賛成により強行可決されました。審議入りからわずか2週間あまりであり、「国民の『知る権利』を侵害する心配など、問題をはらむ法案としてはあまりにも拙速だ」と、信濃毎日新聞社説でも厳しく批判されています。法案の中身が知れるにつれて反対世論が広がる中、こうした国民世論を無視した暴挙であります。
みんなの党や日本維新の会との密室での修正協議では、部分的な手直しがされただけであり、秘密の指定は政府のその時々の裁量に委ねられること。厳罰で漏えいを防ぐ仕組みは全く変わっていません。
さらに、この法案の問題は、その矛先が公務員だけでなく、全ての国民に向けられていることです。問題点はいくつかあります。
まず第一に「何が秘密かも秘密」であることです。「原発事故が心配だ」と写真に撮ってブログにアップした。「長野県の農業が心配だから、TPP交渉の内容を調べたい」とネットでアクセスした。ある日突然、警察がやってきて「秘密保護法違反だ」と、逮捕ということになりかねません。このように国民のあらゆる自由な活動が制限・弾圧されます。
第二に「秘密を漏えいする人」「秘密を知ろうとした人」だけでなく、秘密を知ろうと話し合ったり(これは共謀にあたります)、公務員に何度も取材したり、説得したりする(これは「教唆」にあたります)、集会などで「情報を公開せよ!」と訴えるなど、大勢に呼びかけたりする(これは「扇動」にあたりますが、)というだけで、実行犯でも未遂犯でもないのに、処罰されるということになります。
第三に「特定秘密」を取り扱う人のプライバシーを調査し、管理する「適性評価制度」というものが規定されています。調査項目は、外国への渡航歴や、ローンなどの返済状況、精神疾患などでの通院歴…など多岐に渡ります。国家公務員だけでなく、一部の地方公務員、政府と契約関係にある民間事業者、大学等で働く人も含まれます。その上、本人の家族や同居人にも調査が及ぶこととなり、広い範囲の人の個人情報が収集・管理されることになります。すでに、自衛隊では隊員から「身上調査」として、本人・家族だけなく、趣味でつながった知人の情報まで報告させています。なんと、知人本人にはその情報を報告したことを知らせずにです。秘密保護法案が成立すれば、こうしたプライバシー侵害の調査が制度化されます。憲法違反の悪法であります。
さて、この秘密保護法案が仮に成立したら長野県はどうなるのか。11/26信濃毎日新聞では、特定秘密の対象に、「テロ防止」が含まれるため、自治体側が拡大解釈の恐れがある「テロ対策」を理由に、情報公開を「自主規制」しかねないと報道しています。例えば、浅川ダムが自主規制される可能性があるとしています。
もう一点事例を紹介します。今月23日正午ころ、北アルプスで低空飛行する戦闘機が目撃されました。目撃者から次のような証言をいただきました。『いきなり爆音が聞こえた。南側に見えていた鹿島槍の北壁が全部崩れたかと思った。爆音の次の瞬間、戦闘機が北へ向かって爆走、機体の上面が見えたから、高度2000b以下。雪崩を誘発するぞ。10分後、今度は二機編隊で東に向けて爆走。音が聞こえて飛び去るまでわずか2秒だった』とのことです。25日に危機管理部に戦闘機の所属を聞きましたところ、米戦闘機だと判明しました。長野県は山岳観光を位置づける観光県です。観光地上空で戦闘機が我が物顔で低空飛行をしています。佐久でも群馬県方面から米戦闘機が飛行してくる時があります。もし秘密保護法案が成立すれば、戦闘機の所属が特例秘密に指定されるのではないでしょうか。市民や新聞記者などが、危機管理部に問い合わせること自体が犯罪になる可能性のある危険な法律です。
このように、この法案は、長野県が進めている情報公開の理念に反すると思いますが、知事はこの法案の成立を支持されるのでしょうか。またこの法案によって、県の情報が特定秘密に指定されるおそれや県の情報公開制度への影響はないのか。知事にお聞きします。
<阿部知事>
特定秘密保護法案についてのご質問でございます。
法案に関する考え方については先ほど鈴木議員にお答えしたとおりでございます。複雑な国際情勢の中で国や国民の安全確保を図る上では特に秘匿の必要性の高い安全保障に関する情報についてはその漏洩防止を図る法整備は必要だと考えます。しかしながら国民の知る権利との関係において、慎重の上にも慎重に検討されるべきものと考えております。その際、特定秘密の指定等が行政機関の恣意的な運用とならないようにするため、何が特定秘密に該当するかの基準の明確化や特定秘密の指定等を独立した公正な立場で検証等行なう機関のあり方などを含め、引き続き国会において十分かつ慎重な議論を期待しています。
県の情報が特定秘密に指定される恐れについてご質問です。特定の新聞社の情報でご質問いただいているわけですが、私どもそうした間接情報でお答えするわけにはいかないわけでありますので、法案を所管している内閣官房情報調査室にも必要な範囲で問い合わせ等いたしました。この法案、防衛や外交等国の安全保障に関して国が保有する情報を対象としたものということでありまして、法案のなかに特定秘密を都道府県警察が保有する場合に関する規定は置かれておりますが、県が保有するそれ以外の情報が特定秘密に指定されることは基本的にはないと考えております。
ただし、たまたま国と県が同じ情報を保有していたときに、国が当該情報を特定秘密に指定するということはあり得るところであります。ただ、この場合当該情報はそれぞれ別個に管理され、また県としては当該情報を特定秘密に指定したことを知りうる立場にありませんので、特定秘密保護法の影響を受けることはないと考えています。
また、県の情報公開制度への影響についてでありますが、法案の10条2項では条例により設置された情報公開審査が、これは県の審査会ですけれども、県の審査会での審議に当たっては当該特定秘密を提供できる旨の規定がおかれております。情報公開制度にも一定の配慮がなされていると考えております。
現在、法案が国会で審議中でありますが、十分私どもに対して今の時点で説明はありません。従いまして、法案の中身、詳細に渡って知りうる状況にはないわけではありますけれども、情報公開制度、県民の知る権利を尊重するものであると同時に、県の諸活動を県民に説明する責務を果たしていく上で重要な制度でありますので、特定秘密保護法によって後退することがあってはならないと考えております。
<藤岡議員>
国民の理解が得られるように十分かつ慎重の上に慎重な審議をすすめることは一般論・ごく当然の話なわけです。強く指摘したいのは、知事がなんら反対や懸念の意見表明ができないことです。県民の人権を擁護する責任を持つ知事として無責任ではないですか。
国民の理解を得るどころか、不安と反対世論ひろがっているではありませんか。ある世論調査では8割が、「今国会での成立は見送るべき」と回答しています。21日には東京で行われた反対集会は平日夜にもかかわらず1万人が集まり、昨晩の佐久の反対集会でも250人が参加しています。
他の県の知事の会見のコメントも紹介しましょう。愛知県知事は18日「強行採決で衆院で通過となりますと、今後のことを考えると、よろしくないんじゃないかと」、滋賀県知事は12日「誰が、どういう状態で、これを公開しないと判断するのかというところの基準が大変曖昧。大変危惧をしております」と。静岡県知事は25日の定例記者会見で、特定秘密保護法案について「悪法だ」と述べ明確に批判しています。
一方、阿部知事は15日の記者会見で、政府与党が臨時国会中の成立を目指しているのは拙速では、との記者の質問に「(早いか遅いか)責任をもって申し上げるような状況ではない」と答えています。知事、県民の人権擁護のために、「秘密保護法案の今国会での成立は見送るべきだ」とハッキリ表明すべきと思いますが、いかがですか。お答えください。
<阿部知事>
藤岡議員のツイッターで私の会見についてのコメントされているのを私も拝見しておりますが、私は責任ある知事という立場で、不確定な情報のなかでコメントするのは適当でないというふうに考えて、会見の場でああいう話をさせていただいたわけであります。特定秘密保護法案につきましては、先ほど申しあげたとおり、国民の不安・懸念、そうしたものを払拭していただくように国会において十分な審議を行なうことが必要だろうと思っておりますし、例えば総理も衆議院の委員会の場で第3者機関を設置すべきだと考えているとご答弁されているわけでありますから、そうしたものをこれからどう具体化するかということも含めて、きちんとした方向付けを国会においてあるいは政府においてしていくということが必要だろうと思います。
そういう観点で私の考え方先ほど来申しあげているとおりでありますし、先ほど情報公開制度の関係で申しあげましたが、私が先ほど答弁して申しあげたようなことがなかなか国民のなかに共有されてないんじゃないかと私は感じています。
もとより、私は知る権利の保障はしっかり国会の場で確保してもらうということが必要だと思いますが、その反面この法案の本当の姿というものは一人ひとりの国民にしっかり伝える努力ということも政府においてはしてもらうということは必要だと思いますし、先ほど特定の新聞社の報道から引用されての質問もありましたけれども、私は新聞社のいろんな新聞、報道を見ておりますけれども、社によって当然報道スタンス違っているわけでありますし、私が見る限りでこの法案の正確な内容についてなかなか報じられていない部分もあるんじゃないかというふうにも思っております。そういうものをしっかりと一人ひとりの国民が理解し判断した上で進んでいくということが民主主義社会においては必要だろうと思っています。
いずれにしてもこの法案については、私は知る権利との関係において十分な審議、まだ参議院に回されたわけでありますから、参議院においてしっかりと国民の理解が得られるような審議をしてもらいたいと考えております。
<藤岡議員>
ハッキリお答えになりませんでした。大変残念です。
この秘密保護法案は世界の流れにも逆行しています。国連の団体や国際人権団体なども反対声明を出し、国内でも俳優さんや、TVキャスターなど勇気を持って、信念にもとづいて立ち上がっています。一方で知事の答弁は勇気と信念がない、危機感のなさに大変失望しました。もうすでに、萎縮されているのでしょうか。無責任な態度であることを厳しく指摘して次の質問に移ります。
<藤岡議員>
県の再生可能エネルギー戦略について質問します。
東日本大震災と原発事故後、再生可能エネルギー普及促進は強く願っていますが、しかし無秩序な乱開発(新たな利権として)環境破壊が進むことは問題だと考えています。地域に存在する再生可能エネルギーは、地域の固有の資源・財産であり、「地域の資源を地域で活かす」という、エネルギーの地産地消という考え方に基づいて導入を進めていくべきと考えます。
飯田市の「再生可能エネルギーの導入による持続可能な地域づくりに関する条例」の中に、「自然環境及び、地域住民の暮らしと調和する方法により、再生可能エネルギー資源を再生可能エネルギーとして利用し、調和的な生活環境の下に生存する権利」として「地域環境権」が規定されています。大変素晴らしい理念と思いますが、県は「地域環境権」を規定している飯田市の条例をどのように評価されていますか。環境部長お答えください。
<環境部長>
飯田市の再生可能エネルギーの導入による持続可能な地域づくりに関する条例についてのお尋ねでございます。
初めに議員ご指摘のありましたエネルギーの地産地消、地域主導の自然エネルギーの普及につきましては、県におきましても「しあわせ信州創造プラン」また「長野県環境エネルギー戦略」共通の基本理念としているところでございます。この基本理念に基づきまして、1村1自然エネルギープロジェクトや地域主導型自然エネルギー創出支援事業をはじめといたしまして、自然エネルギー普及・拡大にかかる支援策を講じているところでございます。
お話のありました飯田市の条例につきましては、単に市が自然エネルギー事業を支援していくだけでなく、特色ある環境政策をさらに育て地域経済の活性化にもつなげる持続可能な地域づくりをねらいとした条例でございます。この点が特徴的でありまた先進的な取り組みであるものと県においても認識しており、本年4月に開催いたしました県内市町村との担当者会議におきましても、本条例を飯田市から紹介・説明していただく機会を設けたところでございます。
<藤岡議員>
答弁いただきました。さて、この「地域環境権」の理念に沿った、再生可能エネルギー施設が長野県内に順調に普及が進んでいくことが望ましいわけですが、規模の大きなメガソーラー施設の建設をめぐって、県内にいくつかの地域で住民との間でトラブルが生じています。伊那市では、景観や環境に及ぼす影響に不安を抱く一部住民が反対しているとの報道が8月にされました。
最近では上田市生田地域でも山林にメガソーラー計画が進められ、地元自治会が反対運動を起こしているとの話を聞き、地元の高村県議とともに現地調査に行ってまいりました。この計画は、広葉樹中心の山林約20ha(東京ドーム4個分)を伐採したあとに、太陽光パネル4万4千枚を設置するもので、発電量は10メガワットを見込んでいるそうです。
このメガソーラー計画の問題はテレビ報道でも紹介されています。地元の自治会は「この計画の場所は、地形的な問題からゲリラ豪雨等、予測できない大量の降雨が発生した場合、樹木の伐採で、保水効果が無くなった森林から土石流などが流れ出す危険性がある」と、建設計画に断固反対しています。この地域は「上田市洪水ハザードマップ」ですでに土砂災害警戒区域・特別警戒区域に指定されており、また下流域は保安林であります。一方、業者側は大規模な山林伐採を行うため、必要な県林地開発許可の申請手続きの準備を進めていると聞いております。
この建設にともなう林地開発許可についての所見を林務部長にお聞きします。
もう一つの事例として、南木曽町に計画が上がっている、木質バイオマス発電事業について質問します。開発業者から南木曽町に発電出力は12,000kwで、木質及びPKS(ヤシ殼)を使ったバイオマス発電との説明会が9月に地元地域で行われたそうです。地元住民は「輸入ヤシ殼PKSの大量の内陸搬入は農薬汚染物質の飛散や外来動植物の移入の懸念があると。この地域の森林整備計画と調和した産業としての位置づけがされているのか。そもそも発電規模が適正なのか。といった心配の声が出されています。「こうした木質バイオマス発電事業などを環境アセスの対象事業にしてもらいたい」との要望もいただいています。県はこの南木曽町での木質バイオマス発電計画をどの程度情報を把握されているのでしょうか。また、仮に発電出力12,000kwの木質バイオマス発電施設が南木曽町にできてしまうと、この発電施設が県内から燃料を調達する場合には、同じ中信地域のF・POWERとの競合も心配されますが、この点の問題はないのかどうか。これも林務部長にお聞きします。
<林務部長>
再生可能エネルギー戦略について2つご質問をいただきました。
まずメガソーラー建設に伴う林地開発についてのお尋ねでございます。上田市生田地域におきまして大規模なメガソーラーの設置が計画されていますが、現在この計画につきましては、事業者が地方事務所へ事業の事前相談を行なっている段階であり、林地開発にかかわる許可申請書がまだ提出されていない状況でございます。
今後事業者から正式に林地開発許可申請書の提出がありましたら、森林法に基づきまして、当該開発行為により災害を発生させる恐れがないか、水害を発生させる恐れがないか、水の確保に著しい支障を及ぼす恐れがないか、環境を著しく悪化させる恐れがないか、これら4点の要件について審査いたします。この審査の過程で住民の方々が懸念されている防災対策などの必要な措置がしっかり計画されているか等、厳正かつ慎重に審査しまして許可・不許可の判断を行なってまいります。
次に木質バイオマス発電所の発電施設のお尋ねでございます。
南木曽町の発電施設の計画につきましては、昨年末から現地機関において、事業者や地元からの相談に応じるなどし、助言および情報収集に努めているところでありますが、現在事業用地の確保等を含めまだ具体的な状況に至っていないと理解しております。当初の計画におきましては、一部未利用材を燃料として利用し、これらを半径50キロ圏内から調達する構想であるとお聞きしております。信州F・POWERプロジェクトの未利用材の調達とは、ごく一部でありますが重複することが予想されます。このため今後も計画の動向に注意しつつ、情報把握に努めるとともに、必要に応じ相談にのるなど対応してまいりたいと考えております。
<藤岡議員>
上田市生田地域の方が、私たちが現地調査に行ったときに怒りながら話されました。開発のためには森林法に基づき4つの基準があり、それらがクリアされれば「県は認可するしかない」と担当の方に説明されたと。では、想定外の豪雨などに見舞われ、さらにメガソーラー設置によって災害が発生し、下流地域の被害が起こった場合、事業主はもちろん責任がありますが、開発認可した県にも責任があるのだから、一筆「責任をとる」との約束を書いてほしいとの要求に対して、「それはできません」との回答があったと聞いています。それでは地域の不安は払拭できません。そうした地域の不安を払拭するために県はどのような対応をとっていかれるのか。もう一度林務部長にお聞きします。
<林務部長>
林地開発許可の申請書の提出をまだ受けていないのですから、内容について想定で論ずるのはまだ早いと思われますけれども、いずれにしても林地での開発行為は本来森林が持っている土砂流出防止機能、水源涵養機能など、公益的機能を損なう機能であります。したがってその代替措置がしっかり計画されているか否か、また計画が確実に実行されるか否かという面で慎重に審査してまいります。
<藤岡議員>
メガソーラーの下流に流れている大沢は昔から「暴れ沢」と先祖代々恐れられていたとお聞きしました。ですからこの計画を地元地域の長老さんや歴代区長さんが知ったとき、直ぐ様、「それはダメだ」と反対されたそうです。こうした長年その地域に暮らしてきた住民の経験に耳を傾けていただきたいことと、この地域は過去に「廣華園」という産業廃棄物業者が産廃施設を設置し、大量の産廃を持ち込み、その後事業が頓挫して、そのまま大量の廃棄物が放置されたままで、懲り懲りされています。繰り返しになりますが、地元住民のみなさんの不安払拭のために、県として誠実に、また飯田市の「地域環境権」のような理念にたったスタンスで対応されますことを強く要望いたします。
また、木質バイオマス発電設備についてですが、これまで議会でも指摘してきましたが、各圏域に適正な規模の施設をF・POWERも含め、適切に設置されていくよう、県としてもぜひ先進性を発揮していただくよう要望しておきます。
さて、再生可能エネルギー開発を巡るトラブルに対して、県外から業者が参入してきて、エネルギーも利益も県外に持って行かれ、地元に環境破壊だけが残るようなことがないように、住民合意に基づく一定のルール作りが必要だと考えます。風力発電については、県は総出力1万kw以上のものについては、アセスの対象に追加されています。このように再生可能エネルギー設置についての新たな条例制定も含めて検討すべきだと思いますが、知事にお答えいだきます。
<阿部知事>
再生可能エネルギーの開発にかかるルールづくりについてのご質問でございます。
自然エネルギーの開発をめぐるトラブル、いくつか生じてきているということは聞いておりますし、現在県内において具体的にどのようなトラブルが発生しているのかということ、あるいはまたどのように対応されているのかといったことについて、市町村との意見交換を通じて情報の収集・共有に努めているところでございます。
また、庁内におきましても関係部局が集まって所管する法令等の対応状況についてどういう問題があるのかと、市町村ではどのように対応しているのか、またそうした問題は既存の法令で対応できるのかどうか、こうしたことについて課題の整理検討を行なっているところであります。庁内・市町村との連携を密にし、情報の収集・課題の整理を行なったうえで、必要な対応を検討してまいりたいと考えております。
<藤岡議員>
再生可能エネルギーについて、住民合意のない開発を抑止するため、例えば県が水資源保全条例で土地の取引等の事前届出制を定め、業者が県の勧告にも従わない場合に公表できるように、開発情報を収集し県が適切に関与できるようなシステムを定める条例の制定について研究を始められたらいかがでしょうか。また、国にも必要な立法措置を求めていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。もう一度知事にお聞きします。
<阿部知事>
条例制定の研究と国への要望をということでありますが、まず水源保全条例、これは法令のある意味では空白域になっているような状況でありましたので、県として条例で対応しようと考えたわけであります。自然エネルギー施設の設置を巡る問題、様々な課題があろうかと思いますが、例えば街づくりや景観等そうした観点から解決できる場合もあるんじゃないか。また、これは施設の設置ではあるわけですが、再生可能エネルギーとか自然エネルギーという切り口だけで特別な規制をしていくということが本当に適当なのかどうかとか、あるいは様々な規制も今分権の中で、国から県へ、県から市町村へ、どんどん様々な権限が委譲されてきている中でどの主体がどういうものに対応していくのかと、また自然エネルギー、半面で普及拡大していこうということで規制改革の提案等もしているわけですけれども、規制に偏った検討だけでいいのかということで、様々な課題の整理検討をしていく論点があろうと思っております。
こうした観点で、先ほど申しあげたように市町村との意見交換を踏まえ庁内での情報共有を行なっているところであります。こうした取り組みを通じて地域主導の自然エネルギー事業を発展させるとともに、先ほど地域の皆さんの懸念とかそうしたものにも県としてできるだけ対応していかなければいけないと思いますので、幅広く検討を行なったうえで県としての対応を考えてまいりたいと思っております。
<藤岡議員>
県には、今後も心配される再生可能エネルギーの設置を巡るトラブル解決のためにも、ぜひルール作りの先頭に立たれることを強く要望しまして、次の質問に移ります。
<藤岡議員>
県の観光戦略について質問します。
新幹線の金沢延伸に伴い、新たな誘客が可能になると考えています。これまでの関東圏からの誘客に力をいれることはもちろんですが、新たに富山県や石川県からの誘客にも力を入れていくことが求められています。私たち長野県民が、金沢まで新幹線がつながるなら、行ってみたいと考えるように、金沢の方からも、長野県に行ってみたいという話を耳にしています。北陸地域や関東圏にお住まいの方の観光ニーズを調査など行い、把握されているでしょうか。
また、北陸地域にはない魅力が、例えば山岳観光などが、長野県にはあると思います。そうした魅力を押し出しながら、金沢・富山と長野県をセットにしたツアー商品など開発を促す必要があると思います。こうした県の新たな観光戦略はどのようなものがありますか。観光部長お答えください。
また、日本の山岳観光はアジアでも注目されています。アジアへの定期便がある小松空港などを利用する観光客を、新たに長野県に誘客する取り組みが必要だと思いますが、いかがでしょうか。これも観光部長にお聞きします。
さて、長野県観光部の発展とともに、知名度も人気もアップしてきた長野県観光PRキャラクター、アルクマ君についても質問します。ぜひ、アルクマ君には熊本県の「くまもん」に追いつけ追い越せで頑張ってほしいと願っていますが、このアルクマ君を活用したキャンペーンの予算が、毎年毎年減額されていることを知りました。そんなことでは「くまもん」どころか、これまで築いてきたアルクマ君効果が弱まってしまうのではと、大変危惧しております。この状況はどうなっているのでしょうか。
また、アルクマ君の著作権については、JR東日本が有しているということですが、JR東日本には企業として社会的責任を果たす立場から、地域との共存と地域発展の方向で、速やかに県に権利を譲渡すべきだと考えます。アルクマ君の著作権譲渡についての交渉の進捗状況についてはどうなっているでしょうか。これも観光部長にお聞きします。
<観光部長>
県の観光戦略について3点ご質問をいただきました。
まず新幹線金沢延伸に対する観光戦略でございます。ニーズを把握しているかどうかと言うことでございます。新幹線沿線に伴う観光移行につきましては、平成23年度に三大都市圏と北陸地域におきまして、県において調査を行いました。
北陸地域では、長野といいますと自然・景観、代表は軽井沢というイメージを持つ方が多く、まだ認識が限定的であるという分析でございます。
一方首都圏では、長野県を訪問したいという方が延伸開業後は現状より30%以上増加するというデータが出ております。
その上で、長野で何をしたいかと言う設問では、温泉、食事、自然体験、町並み・歴史等幅広く上げられており、このことは逆に新しい素材の打ち出しが必要であると考えられるところでございます。このため北陸地域におきましては長野県の多彩な観光素材ですとか、観光地の認知度をまず高めるPRを行ないまして、首都圏におきましては新しい素材として、山岳方面の魅力を生かしたアクティビティの魅力打ち出しなどターゲット地域にあった戦略を展開していきたいと思っております。
北陸地域では昨年、今年と2年連続で旅行会社向けの商談会を開催いたしまして、旅行会社からは大変高い関心を示していただいているところでございます。首都圏向けでは、石川、富山とは連携会議をもっておりまして、そのなかで北陸の海の幸と長野県の高原温泉を一度に楽しむ2泊3日の旅行を首都圏の旅行会社に売り込むことなどを共同して実施していきたいと思っております。
この他、今週始めには旅行商品化に向け、県と17市町村が連携を致しまして、首都圏大手旅行会社を飯山市にお招きしまして、それぞれの地域の観光素材のPRと現地案内を行なったところでございます。
2点目、石川県の小松空港等を利用した海外からの誘客促進についてでございます。小松空港、富山空港の国際定期便就航先、韓国、中国、台湾、東アジアにございますけれども、欧米に比べ団体旅行の割合が高いことから、長野県でも今まで両空港を利用する団体ツアーの誘致に取り組んできたところでございます。人気のあるツアーは小松空港、富山空港とも、立山黒部アルペンルートから長野県に入りまして、大王わさび農場や松本城、上高地、諏訪地域等に滞在して、高山市白川郷に迂回、到着した空港から帰る、3泊から5泊のルートでございます。立山黒部アルペンルートには年間約10万人の外国人旅行者が団体ツアーを利用して訪れますが、いずれも現状全工程をバスで移動している状況でございます。今後はアジアにおいても個人旅行者の増加が見込まれることから、長野経由の北陸新幹線沿線各県と連携いたしまして、個人旅行者が鉄道を利用しながら兼六園・善光寺・軽井沢などを周遊できる旅行商品の造成、ガイドブックの作成に取り組んでいきたいと思っております。
3点目の、アルクマのキャンペーン費用と著作権の県への譲渡についてでございます。アルクマは多くの要望にできるだけ応えたいということでキャラバン隊を編成いたしまして活動を行なっているところでございます。このキャラバン隊でございますが、平成23年の東日本大震災及び長野県北部地震の影響による観光需要の落ち込みからの回復と長野県の魅力を県内外でPRするために、緊急雇用創出基金事業を活用いたしまして、実施をしているところでございますが、その費用は平成23年度、3チーム編成で3860万円余、24年度は2チーム編成で2470万円余、今年度は1チームで1430万円余となっております。チーム編成は減っておりますけれども逆にファンは増えておりまして、ファンの皆様とともに盛り上げているところでございます。
アルクマの著作権でございますけれども、現在JR東日本にございますけれども、関連商品の販売には著作権使用料が発生しましたり、ポーズやデザインの加工には制限もございます。また印刷物への使用も観光に関するものに限られているのが現状でございます。長野県を連想させるアイコン・シンボルとして情報発信の強化、物産振興などへと活用範囲を広げていく為、県が著作権を買い取る方向で現在協議を行なっているところでございます。
<藤岡議員>
私は大阪出身ですので、初めて長野県に訪れたときの感動は今でもわすれられません。アルプスが空に浮かんでいるような景色を眺めながら、心がおどり、大学生活を満喫し、長野県内の会社に就職し、今に至っています。他県にはない長野県の良さを強く押し出しつつ、同時に金沢・富山といっしょに連携し相乗的に観光を盛り上げていく戦略をと、要望いたします。
それからぜひ、アルクマ君の予算の増額を強く要望したいと思います。
最近、信濃毎日新聞に掲載された「日本一のおもてなし県へ」というフルカラーの全面広告をみました。また、おもてなしプロジェクトのCMも見ました。この広告についても質問いたします。どちらも私の大好きなアルクマ君の露出度は低く、阿部知事が前面に出てくるものでした。ちなみに15秒のCMですが、15秒のうちアルクマ君が前面に登場する時間は3秒でした。知事が前面に登場する時間は10秒でした。さて、この「ずくだし!知恵だし!おもてなし」プロジェクトのカラー全面広告とテレビCMの費用はどれくらいかかっていますか。観光部長にお聞きします。
動画コマーシャルや新聞全面広告などで、知事が前面にたった「おもてなしキャンペーン」でありますが、私はこれを見て率直に感じたことは、おもてなしの心がアップするよりも、知事のイメージがアップしそうだなあ。と思ったこと。そういえば、来年は知事選もあったなあ。ということも思い起こすことができたことでした。これらの広告によって、県民のおもてなしの心が高まると思いますか。県民に訴える効果についてどのように考えられていますか。知事にお聞きします。
<観光部長>
おもてなしに関する新聞・テレビによる広報の費用でございます。「ずく出し!知恵出し!おもてなし」プロジェクトにかかる業務は旅行者満足度調査やホームページの制作など、一式で委託契約を締結しておりますため、個別業務の経費は契約相手の見積書などをもとに推計した金額になりますけれども、お尋ねの11月7日の新聞朝刊の広報と県内民放テレビ4局で11月7日から22日まで放送したスポット広報の費用は、合わせて概ね400万円でございます。
<阿部知事>
知事が出すぎだというご意見でございますが、この企画は有識者による懇話会、それから信州キャンペーン実行委員会おもてなし向上部会で議論されたうえでスタートさせたものです。今回のテレビ、新聞広告についてもそうしたなかで検討がされて、県民によく知られている知事が自らの言葉で先頭に立って呼びかけけることが運動を盛り上げるために効果があるというご意見をふまえ、結果的に私が出演するという形になりました。県民の代表であります私が日本一のおもてなし県ということを宣言することで、県全体本気でおもてなし向上の取り組みをスタートさせたということを多くの皆様に知ってもらうことができたと思っております。このプロジェクトにつきましても、まず私も率先して取り組んで、県組織をあげておもてなしの向上に努めていきたいと考えております。
<藤岡議員>
仮に私がCMを作るなら、せっかく知名度や人気の上がってきたアルクマ君を前面に登場させ、長野県の様々な場所にアルクマ君が出かけさせ、そこで温かい県民のおもてなしに出会い、最後に「長野県にきてよかったなあ」と、実感するような作品に仕上げると思います。今後は県民のおもてなしの心が効果的に高まる取り組みを期待いたします。
最後にツワネ原則というものをご紹介します。
国家機密の保護を巡る規定は各国様々ですが、ひとつの指針として今年の6月にまとまった50項目の国家安全保障と情報への権利に関する国際原則が注目されています。発表の場が南アフリカの首都プレトリア近郊ツワネ地区だったため、ツワネ原則と呼ばれています。70か国に及ぶ人権や安全保障の専門家が議論し6月に南アフリカのツワネで公表されたものです。ツワネ原則は、国際人権・人道に反する情報は秘密にしてはならない、秘密指定の期限や公開請求手続きを定める、すべての情報にアクセスできる独立監視機関を置く、情報開示による公益が秘密保持による公益を上回る場合には内部告発者は保護される、メディアや市民など非公務員は処分の対象外とする、としています。
秘密保護と知る権利との調和性を図る国際的な立法指針、このツワネ原則と比較しても、秘密の指定範囲が広すぎるなど明らかに世界の潮流に背いていると多くの識者が批判しています。国際的な流れに逆行する秘密保護法案に県としても反対の立場を表明されることを強く求めまして、私のいっさいの質問を終わります。