2014年2月定例会 和田あき子 3月5日 

領土等に関する学校教育の充実に関する意見書(案) 反対討論

<和田議員>
 日本共産党は、竹島、尖閣諸島いずれも日本の固有領土であると言う立場から、領土問題の解決のために積極的な提案を行ってきました。
 戦後の日本の政治は、侵略戦争と植民地支配への反省において不十分さを抱えたまま今日に至っていることが、日本が正当な主張をし、真の意味での日本の国の利益を守る上でも妨げになっています。領土問題の解決のうえで何よりも大切なのは、歴史的事実と国際法上の道理に立った交渉を行うことと思います。
 文部科学省は1月、沖縄県の尖閣諸島と島根県の竹島について、学習指導要領の解説書を改訂し、「我が国の領土」と明記しました。下村文部科学相は閣議後記者会見し、今後学習指導要領を同内容に改める意向を示しました。解説書は約10年ごとに行われる指導要領の改訂に合わせて変更されるのが通例で、次回は中学が2016年度の予定で、前倒しは異例のことであり、安倍政権がすすめる教育への政治介入の危険性があらわとなってきました。
 学校教育は基本的な知識を学ぶ場であり、領土問題に関する基本的な知識と軍事的でなく平和的解決の大切さを、子どもたちが発達段階に即して学べることが期待されます。領土問題は、個々の経過は複雑なだけに、限られた時間でどう教えるかは、教員や教育関係者の意見をよくふまえて検討し、かつ教育の自主性を大切にする必要があります。

 ところが今回の解説書の改訂は、上から政府の方針を子どもに教えようというものです。
 竹島問題は、日本による領土編入に歴史的根拠がありますが、その編入時期は日本が韓国を武力で植民地化する時期にあたり、韓国の外交権が当時奪われていたことも踏まえ、韓国側の主張も検討して冷静な話し合いで解決する必要があります。改訂前は「我が国と韓国の間に竹島をめぐって主張に相違があることなどにも触れ、北方領土と同様に我が国の領土・領域について理解を深めさせる」としていましたが、改訂では「竹島については韓国に対して累次にわたり抗議を行っていることなどについて的確に扱い、我が国の領土・領域について理解を深めさせる」と、日本政府の対応をそのまま教えるような記述です。
尖閣諸島に初めて言及しましたが、その内容も「解決すべき領有権の問題は存在していない」という歴代自民党政権の立場を子どもに教え込もうというものです。 しかし、この「領有権問題は存在していない」という立場こそ、関係国や世界各国に日本の正当な主張を避けて、日本政府の消極的な対応の原因となってきたものです。

 政府の対応をそのまま子どもに教えるようなことは、教育を政治に従属させるものであり、民主主義の社会では許されません。今回の改訂は、教育への権力介入を強めようとしている安倍政権の姿勢のあらわれの一つといえると思います。
 竹島、尖閣諸島はいずれも日本の固有領土ですが、冷静な話し合いと道理にもとづく解決が求められ、一層の外交努力が重要です。そうしたなか、日本の側からの一方的な主張を教科書に反映しようとすることは問題解決を複雑にしてしまいます。県議会においては冷静な対応を求めまして、意見書に賛同できないことを申し上げて反対の討論とします。