日本共産党長野県会議員団

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議会質問

2014年2月定例会 和田あき子議員一般質問と答弁

「長野県子ども支援条例」について

和田議員
長野県子ども支援条例」についてお聞きいたします。  「長野県子どもの支援条例(仮称)骨子(案)」の段階では、基本理念はどういう理念なのか、「こども」はどういう位置づけなのか、どういう条例を目指しているのか、骨子案にいたるまでの3年近い「子どもの育ちを支えるしくみを考える委員会」の提言はどういかされたのか。条例案はどうなっているのだろうと思っていました。
ようやく、2月県議会前に要綱案を示し、知事はより良い条例とするためさらに議論が必要と言われました。私もその通りだと思います。
要綱案 制定の趣旨は、 「子どもは、社会の宝であり、一人一人がかけがえのない存在である。  子どもは、一人の人間として、その命や人格が大切にされ、社会の一員として豊かに育つことができるよう、その人権が守られなければならない。
子どもが、生まれた時から持っている育つ力を発揮して能動的かつ自立的に活動し、自らを大切に思う気持ちを持って自分らしく成長していくことができるよう、大人は、子どもの力を信じ、支えていく必要がある。
長野県には、地域で子どもを大切に育んできた伝統と取組があり、多くの子どもは、大人に見守られながら健やかに成長している。
一方、人間関係が希薄になり、経済格差が広がるなど社会環境が変化する中で、いじめや虐待の増加等子どもを取り巻く環境は厳しさを増しており、問題を抱え我慢している子どもや誰にも相談できずに悩んでいる子どもがいる。
このような子どもを支援するため、その抱えているつらさ、悩み等に寄り添いつつ、相談に応じ、救済する仕組みが必要である。また、子どもへの支援は、乳幼児期から青年期まで成長段階に応じて継続的に行うとともに、子ども支援は、保健、医療、福祉、教育等様々な領域で、県はもとより、国、市町村、民間団体等が連携協力して、重層的かつ総合的に取り組んでいかなければならない。
ここに、子ども支援に関わる全ての者が連携協力して、子どもと子どもの育ちを支える人を支援することにより、未来を担う子どもの最善の利益を実現し、ひいては全ての子どもが将来に夢と希望を持ち、伸び伸びと育つ地域社会を実現するため、この条例を制定する。」 と、「こどもの人権」について明記されたことを歓迎するものです。子ども支援条例にどんな思いを込めて制定をしようとしているのか。知事にお伺いします。
阿部知事
「子ども支援条例」への思いということでございます。  ただいま制定の趣旨をお読みいただいたわけでありますが、制定の趣旨の文章についても私が手を入れさせていただいておりますので、私の思いが入った文章だということでご理解いただければと思います。
人間関係の希薄化、経済格差の拡大等、社会環境が変化する中で、子ども達を取り巻く環境は厳しさを増してきております。困難な状況におかれている子ども達がいると認識しております。さまざまな困難に悩み苦しんでいる子ども達をしっかりと支え、また自らのことを大切に思って、自己肯定感をしっかり高めて成長していく子ども達を社会全体で応援していきたい、そういう思いでございます。多くの皆さんのご理解が得られるより良い条例にしていきたいというふうに考えております。
和田議員
今の制定の趣旨にも、知事の思いが込められているということで、期待をしております。
和田議員
こども人権条約が1989年採択され、1994年、日本もようやく批准国になりました。この条約は、こどもの人権について、人間の尊厳と人格を認めることが世界の自由・正義・平和の基礎であることを前文の冒頭で確認し、差別の禁止、こどもの最善の利益、生命への権利および生存・発達の確保、意見表明権など子どもに関する諸権利を定めています。子どもの権利の世界基準ともいうべきものです。
これらに照らして、長野県の子どもの置かれている現状は、長野県子どもアンケート調査のまとめでみると、毎日が楽しい約9割 自己に対する肯定感63.8% まわりから大切にされているという実感79.5% 自分の意見を受け止めてもらえる86% と、自己肯定感は全国に比べても高いという内容が表れております。けれども、自己肯定感は小学5年生で8割から高校2年では4割まで落ち込んでいるという結果も表れております。
また、個別には、貧困、児童虐待、いじめ、体罰、不登校、非行、薬物、性非行、障がいなどによって権利を侵されている現実があります。  こういう現実がありながら、不安や心配ごとを誰にも相談できない、どうやって解決していけばいいかわからない。自己肯定感の弱い子どもは「がまんする」とあきらめている実態があり、どんなことでも、うまく言えなくても相談できるところがあれば、寄り添って問題を解決してくれるところがあれば、と思います。
子どもの育ちを支えるしくみを考える委員会において、重ねられた議論と7,000人に及ぶアンケートなどの努力を無にしないためにも、制定ありきでことを急がず、子どもの現状認識を共通の土台にし、条例制定の必要性についてもっと県民参加の開かれた議論を重ねる機会をつくり、県民意識の醸成をはかるべきではないかと思いますがいかがですか。健康福祉部長に伺います。
健康福祉部長
子ども支援条例案につきまして、県民の共通意識とするための周知に努め議論を広めてはどうかというお尋ねです。まず要綱案をお示しするまでの経過について若干触れさせていただきます。
子どもの育ちを支えるしくみを考える委員会、2年余りに渡りまして13回の議論を公開の場で行なってまいりました。その後、最終取りまとめを昨年7月にいただいたところでございます。それ等をもとに骨子案を策定いたしまして、昨年の11月にパブリックコメントを実施いたしました。1ヶ月の間に653件という多くのご意見をいただいたところでございます。  また本年1月には、11月の健康福祉委員会での指摘を踏まえてということもございますけれども、県内の方々の多くの意見を意聴するべきだというご意見をいただきましたので、長野市と松本市におきまして意見聴取会というものを開催しまして、さらに、教育関係団体等への説明も行なってまいったところでございます。
今後、このパブリックコメントや意見聴取会等でいただいたさまざまな意見、今議会でのご議論をいただきまして、これらを踏まえまして、多くの皆様のご理解をいただけるより良いものとなるよう検討を進めてまいりたいと考えております。
またもとより、県民の皆様への周知は重要と考えております。そのため、要綱案におきましても、県は基本理念に関する県民の理解を深めるため、広報活動の充実、その他の必要な措置を講ずるという規定をおいているところでございます。今後も必要に応じまして周知に努めてまいりたいと思っております。
和田議員
骨子案がだされてから、(県は、骨子案に対しての)パブリックコメントの募集、県民意見を聞く会をおこなう、またさまざまな団体への説明をおこなう、それとは別に子どもの育ちを支えるしくみを考える委員会の委員も加わり子ども支援条例について考える集まりなどもありました。  知事は提案説明で、「(「長野県子ども支援条例」につきましては、より良い条例とするためさらに議論が必要と考え、今定例会には条例案を提出せず、先般、要綱案をお示しいたしました。今後多くの皆様のご理解を得て条例案を提出してまいりたいと考えておりますので、議員各位におかれましては、)幅広い観点からご議論を賜りますようにお願い申しあげます」と言われております。やはり条例制定の必要性については、もっともっと県民参加の開かれた議論を重ねる機会、これをつくっていくことが必要だと思います。「子ども支援条例」で総合的窓口と、救済をする子ども支援委員会が盛り込まれています。
すでに、児童相談所、教育委員会、医療機関、警察署、チャイルドラインなど相談窓口はいろいろあり、さらに相談窓口はいかがかということも言われております。しかし、不安や心配、悩みがあっても、どこに相談していいかわからない、相談しても何も解決しない。相談してもっと状況が悪くなると思っている場合。実際に何をどのように話せばいいのか不安や心配があるが言葉で十分に説明できない、他人に話すべきかどうかわからないと言う場合など成長段階の子ども特有の困難さがあります。どんなことでもじっくりと考えながら話を聞き、悩みを発見し、サポートする総合的な相談窓口を設けることと、現実に解決する救済機関は必要ではないかと考えます。
条例によらなくても相談窓口・救済機関を設けることはできる、ということも考えられますが、条例によってこそその仕組みが担保されることが安定性・継続性を保障することとなると思います。この点について健康福祉部長はいかがお考えかお聞きしたいと思います。
健康福祉部長
「子ども支援条例」におきます総合相談窓口そしてまた救済機関の設置に関するお尋ねでございました。
この議論を進めていく中で、この総合窓口でございますが、先ほど和田議員がご指摘されたとおり、県内にたくさん相談機関はございます。ですが、そういう相談機関の中心となる、また相談機関がたくさんありますところをより共に相談の質を向上させていけるような、ハブ的な役割を持たせた総合相談窓口にしたいと思っております。また、相談だけでは解決できない案件につきまして、やはり安定的に救済を行なっていくという観点から、私どもはこの要綱案では現在条例による設置を目指しているものです。
和田議員
この要綱案に示された内容についても、この議会の中でもさまざまな議論・意見があるわけでございます。「子ども支援条例」を制定するため、県民への周知、意見表明や議論をする機会とあわせて、県が果たさなければならない役割が大きくなります。知事部局はじめ教育委員会を含め、行政としてかなりの覚悟で取り組まなければなりません。条例の理念と必要性を語り、県民の議論を重ねてこそより良い条例ができるのではないでしょうか。知事に再度決意を伺います。
阿部知事
「子ども支援条例」、私どもとして要綱案お示しをさせていただいているところであります。私どもとしては要綱案に示した考え方をぜひ大勢の皆さんにご理解いただきたいと思いますが、今ご指摘のあったようにさまざまなご意見があると言うところも事実であります。私とすれば、条例をつくるからには安定的な条例にしていかなければならないということで、この議会でもしっかりご議論いただいたうえで成立を目指していきたいというふうに思っております。住民の皆さん、県民の皆様方へのアピール、問題意識の共有化ということはもとよりご指摘のとおりだと思っております。子ども達がさまざまな困難に直面している状況を大勢の県民と共有して、子ども達を支援していく仕組みをしっかりと長野県において根付かせるものにしていきたいというふうに考えております。
和田議員
自分自身思い返して、親らしいことをしてきただろうか?と考えることもあります。むしろ子どもの育ちと共に親にさせてもらった。まわりの多くの方々に支えられてようやくここまでくることができたというのが正直なところです。 格差と貧困、常に競争にさらされている、自分が世の中で必要とされているのだろうかなどなど、生きづらい社会の中で子どもも苦しみを抱えています。親もつらさを抱えています。本当に支援を待っている人がいます。支援するために頑張っている方々がいます。より良い条例を共に生み出していきたいと思います。

浅川ダム契約変更について

和田議員
浅川ダム本体工事における施工方法等について「浅川ダム施行技術委員会」からの助言等によって、過去3回、契約額の変更を伴わない変更契約を行ってきたというが、変更点はどういうものだったのかお聞きします。
ダムの安全性の確保のための施工方法等の変更が必要になり12億7,500万円の増額を行うこととなったとの説明でありますが、当初から技術的に高度な工事が予想されておりました。ここまで見込み違いになったのはなぜなのか。進捗70%で12億7,500万円の契約変更、工事費を増額したが、今後どの程度の工事費が見込まれるのか、建設部長に伺います。
建設部長
浅川ダム本体工事におけるこれまでの契約変更に関するお尋ねでございます。過去3回の契約変更における主な変更点としましては、まず基礎掘削工におきましては、土砂掘削の一部が岩掘削に変更となったことや岩盤清掃方法の変更による増額、堤体コンクリート工では、コンクリート内に鉄筋を増設したことによる増額がございます。また、仮設工を簡易な構造に変更したこと、また地すべり対策工の押え盛土表面の本コンクリートの厚さを減らしたことによる減額がございます。
このように過去3回の契約変更は、増額が必要となる工事がある一方で、設計見直し等によりコスト縮減に取り組むなど減額した工事もあったため、契約額は変更とならなかったものでございます。  次に、今回の変更契約の理由と、今後の見込みについてでございます。  今回の契約変更は、物価の変動に伴う労務費や資材費の増額の他、岩盤清掃方法の変更、ダムの基礎岩盤の遮水をする為のグラウチング工の本数の増加、ひび割れを防ぐ効果の高いコンクリートの使用、地滑り対策の押え盛土材料の変更などが主なもので、契約額を増額するものでございます。ダム等の地山を掘削する工事においては、地質状況を慎重に確認しながら工事を進める必要があります。今回の内容変更は、何れも着手後に掘削等の工事が進み、現場における大型機械による試験施工の結果等に対応するもので、施工方法や数量、使用材料の変更をおこなうものであります。なお、ダム設計の基本であります基礎岩盤の状況は、事前の調査とほぼ一致し、十分な強度を有しておりました。
次に、今後の工事の見込みでありますが、現在工事が約70%進捗し、大方の工事において施工方法や数量等の見込みが立っております。今後変更が考えられるものとしては、さらなる物価の変動やグラウチング工の数量・施工量の増減等がありますが、現時点では大きな変更となるものとは考えておりません。
和田議員
岩盤は固かったといわれておりますけれども、浅川ダム建設地の地質が悪いことは、工事を始める前から十分に承知していたことにもかかわらず、今回12億7,500万円の増額の契約変更が生じた訳でございます。改めて危険で無駄なダムであると思ったところでございます。

内水対策について

和田議員
次に、内水対策について伺います。  浅川の内水対策は、長野県と関係機関で構成する「浅川総合内水対策協議会」を設立し、具体的な対策案の検討を進めるとともに、パブリックコメントや住民説明会で意見を伺い、昨年5月に計画を策定したと言われております。その計画は排水機場の増設や流域の貯留施設の設置などハード対策と内水想定区域図の作成、避難体制の確立などのソフト対策、概ね5年間で実施する短期整備と、中長期に実施するもので、計画に位置付けたすべての対策を実施して、既往最大の被害となった昭和58年9月の台風10号と同規模の洪水に対して、住宅部での床上浸水被害をなくすことができるというものです。  しかし、豊野地区と長沼地区での住民説明会に私も出席しましたが、県の策定した内水対策案には議論百出で住民合意が得られたという状況ではありませんでした。  ダムは100年に一度の洪水を想定し建設をしながら、内水対策は既往最大被害を当てはめたうえに、住宅部での床上浸水被害をなくすという計画の目標であるため、毎年のように起こっている農地への冠水被害などは被害とはみなさない。どうにも釈然としない対策であります。  部長。確認ですが、排水機場の増強も21トンの計画のうち当面14トンと言われていますが、ダム完成までに7トンということではないかと記憶しています。14トン増強、いつまでにするのでしょうか。
ダム建設だけが進捗し、内水対策は後回しになっているように思えてなりません。少なくとも、前回の住民説明会では、県の計画に納得できないまま今日に至っています。再度、内水対策について住民と話し合う場を設けるべきと思いますが、建設部長いかがですか。
建設部長
浅川の内水対策についてのお尋ねでございます。  浅川の内水対策につきましては、既往最大被害となった昭和58年9月、台風10号と同規模の洪水に対して、床上浸水被害を防止することを目的とする浅川総合内水対策計画を策定しております。この計画は、ハード対策として排水機場の増設の他に、雨水調整池や学校校庭貯留施設の整備等の流出抑制対策を、またソフト対策として、内水浸水想定区域図の公表や避難体制の確立等を位置づけたもので、これら総合的に進める内水対策計画となっております。
計画の策定にあたっては、国・県・長野市・小布施町の関係機関で構成されます浅川総合内水対策協議会を設置して、対策案を検討するとともに、パブリックコメントや住民説明会で意見を伺った上で、昨年の5月に取りまとめております。なお、住民説明会等でご意見いただきました遊水地設置については、広大な土地が必要であるということに加え、遊水地への導水方法などの技術的な問題、あるいは工事に要する費用の問題、多くの問題があることから困難であると考えておるところでございます。
今後計画に引き続きました対策を、浅川総合内水対策協議会におきまして、随時進捗管理をおこないながら、着実に進めるとともに事業効果が早期に発現されるよう、流出抑制対策を担う長野市とも連携して取り組んでまいります。  なお、浅川の内水に対する排水ポンプにつきましては、計画21トンに対して14トンの計画を平成28年度を目途に整備をしていくという予定にしております。
和田議員
ダム建設までに7トンプラス7トンの14トンということで、若干改善が図られるということのようでありますが、浅川総合内水対策協議会というところの議論だけでなく、やはり住民との説明会等もって戴くように繰り返し要望しておきたいと思います。よろしくお願いします。

教育委員会制度「改革」について

和田議員
最後に、教育委員会制度「改革」について伺います。  昨年12月に示された、中教審答申の教育委員会制度改革は、教育委員会に対する首長の権限が強まる内容で教育の中立性が保てるのかと危惧を抱かせるものでした。さらに、今月19日に政府自民党内(文部科学部会)で大筋で了承したとされる教育委員会制度「改革」案は、首長が大綱方針の策定や教育条件・人事方針などを決定し、さらに国による介入・干渉を強化するなど首長と国による教育支配・介入を抜本的に強化する内容となっています。
国の教育委員会制度「改革」案は、教育委員会制度の根幹を変えるいまだかつてない大改悪と思われますが、教育委員長・教育長の見解をそれぞれうかがいます。
教育委員長
教育委員会制度改革についてのお尋ねでございます。  改革案の詳細についてはまだ定まっていないと承知しておりますが、学校を始めとする教育環境が未来の主役である子ども達にとって安心して学べる場となり、これを安定的に提供していくためには、教育の政治的中立性や継続性、安定性を確保していくことが必要と考えております。
本県ではこれまでも知事と意見交換をし、知事部局と連携しながらさまざまな教育課題に取り組んできており、どのような制度になるにしても、子ども達を第一に考え、課題にしっかりと対応できる教育行政を行なうことが必要であると考えております。
教育長
教育委員会制度改革案への見解についてのお尋ねでございます。  現行の教育委員会制度は、教育の政治的中立性の確保や多様な民意の反映等の利点を有する一方、責任の所在が不明確であることや、問題が生じた際の迅速な対応が困難等の課題が指摘されているところでございます。
「改革案」の詳細は必ずしも明らかになっておりませんし、また現在与党間で協議がなされているところでありますが、報道されております自民党がまとめた改革案を見ますと、教育の政治的中立性を確保する為に、教育委員会を執行機関とする制度の根幹を残しながら、教育行政の責任の所在を明確にするという観点で、さまざまな点で見直しをおこなおうと、このような形になっていると承知してございます。
先ほど委員長から申しあげましたとおり、さまざまな教育課題に対し、本県では知事部局と連携をしながら取り組んできておりまして、どのような制度になるにしても、教育行政の必要性・重要性はなんら変わりございませんので、子ども達を第一に考え教育の充実が図られるよう取り組んでいくことが重要であると考えております。
和田議員
それぞれご答弁いただきましたが、本当に中立性を担保できるのか、大変危惧されるところでありますので、今後も注視していただきたいと思います。
また、国の教育委員会制度の見直しとは別に、いじめ、体罰や教職員の不祥事など現在の教育の抱える様々な課題を解決するためには、教育委員会が自浄能力を発揮し、こども、保護者、住民、教職員の声をきちんと受け止め、教育行政に反映させるように改革をすることが求められていると思います。教育長は就任以来、開かれた学校ということを言われていますが、めざしている教育の姿はどういうものなのか改めて伺います。
教育長
開かれた学校についてのお尋ねでございます。
社会が複雑化多様化する中で、学校が社会の期待に応え、質が高い教育をおこなっていくためには、学校以外のさまざまな方からのご協力が必要だと考えてございます。そのためには、まずは課題や成果を含め学校の情報を積極的に発信し、地域住民に学校の活動に関心を持っていただくことが、地域に開かれた学校づくりの前提条件、第一歩というふうに考えてございます。また、そうしたことを踏まえまして、保護者や地域の方々等多くの人たちに学校への支援に参画していただく中で、学校の運営についてより良くするための提言をする方もでてまいります。
学校がそうした提言に真摯に向き合いながら学校運営の改善を図っていく。このような形で保護者や地域の方の主体的な学校運営への参画を通じ地域全体で子どもを育み、地域住民の声が学校の届くことによって、学校と地域との間の信頼関係も構築をされていくという関係が望ましいと考えております。このような関係が私が目指してございます学校と県民の共同による地域に開かれた信頼される学校ということを認識しております。

阿部知事の教育委員会制度「改革」に対する考えはいかがか

和田議員
阿部知事にお聞きします。安部知事は先ほども小池議員の質問にも答えておられましたが、全国知事会文教・環境委員会副委員長という立場で色々なところで意見を述べられております。
その中で知事は、教育委員会制度の見直しについて、教育行政、地方教育行政は自治事務であり、国の関与は極力最小限にとどめていただく必要があると言われております。一方で知事は、「①地方教育行政の責任者は選挙で選ばれた、住民の意向を反映できる首長とすべきである。②教育長は、住民に対し直接責任を負う首長の下で実務的に教育事務をつかさどる機関とすべきである。③教育委員会は首長と教育長に対する監視機能、あるいは教育基本方針等に関与する法的な権限を持った付属機関とすべきだ。」と述べておられます。
いま政府与党が行おうとしている「改革」は、国が教育委員会に「是正要求」を行うことなど教育への権力的介入・支配につながるおそれがあるものになっています。それらの問題について知事はどのような見解をお持ちなのか伺います。
阿部知事
教育委員会制度の改正についてのご質問でございます。現在国において進められております教育委員会制度の見直し、先ほどもご答弁申しあげたところでありますけれども、権限と責任の所在が不明確であり、住民や保護者の意思が反映されていないのではないか。また、非常勤の教育委員会委員では迅速な対応はできないのではないか、こうした問題点の指摘から議論が始まってきているというふうに考えております。
ご質問のなかにもありましたが、私は昨年11月に中央教育審議会の教育制度分科会で、全国知事会の代表として出席をさせていただきました。その際申しあげたことは、地方教育行政の最終的な責任者は、選挙で選ばれた住民の意向を反映できる首長とすべきこと、また教育に関する国の関与は最小限であるべきことといった意見を述べさせていただいたところであります。
知事を務めさせていただくなかで、現状以上に国が教育行政に関与する必要性は、率直に言って感じていないところでございます。  また全国知事会としては、先ごろ2月24日付で政府与党に対しまして意見提出を行なっております。地方分権の観点から、国の関与は最小限のものとする必要があるという形で意見を出させていただいているところでありまして、国においてはぜひこうした地方の意見を十分踏まえた上で制度設計を進めていただきたいというふうに考えているところです。
和田議員
知事に再度お尋ねいたします。首長と教育委員会の関係、距離感について知事に伺います。
教育は、子どもの健全な成長発達のため、学習期間を通じて一貫した方針のもと安定的に行われることが必要であります。また教育は、結果が出るまで時間がかかり、またその結果も把握しにくい特性があります。教育は、個人の精神的な価値の形成に直接影響を与える営みであり、その内容は中立公正であることが求められるものであります。国民として共通に必要なものを身に付けさせる学校教育については、学校の基本的な運営方針の決定や、教育に直接携わる教職員の人事についても中立性の確保が求められます。
先の戦争の大きな惨禍を二度と繰り返さないことを誓って制定された現行憲法と一体のものとして、教育の政治的中立性が位置付けられ、教育委員会が独立の機関として設置されたことの意義は忘れてはならないことです。 教育の安定性、継続性、中立性を確保するために、学校などの教育機関を管理する責任は、首長から一定の独自性を持った機関、現行では教育委員会で責任を持って行うことが望ましいと考えられます。
教育長が開かれた学校と言われるように、教育委員会としても、こども、保護者、住民、教職員の声をきちんと受け止め、教育行政に反映させることは大事なことです。さらに、世論は首長が教育行政にもっと関わるべきだとしています。(昨年4月に朝日新聞が行ったアンケートでは6割を超える)住民の代表たる首長が教育にモノを言うのは変なことではなく尊重されるべきで、ただしそれは話し合いであり、さいごに判断するのは教育委員会という、教育と政治の距離感を持つことではないかと思われます。  この点について再度知事の考えをお伺いしたいと思います。
阿部知事
教育行政についてのあり方、さまざまな立場でさまざまな考え方があるところでありますが、私の感じていることを申しあげれば、先ほど国との関係がございました。私は、教育行政は極力自治が貫徹されるべきであると思っておりますし、学校運営については各学校、あるいは市町村の教育委員会がしっかり責任を持っていくべきということが、今の制度の中では重要だろうというふうに思っております。
しかしながら、責任の所在ということで考えたときに、よくこれも申しあげてきておりますけれども、例えば小中学校の教育を考えたときに、教員の配置については最終的に予算と関連しますんで、私が考えなければいけない、責任を持たなければいけない。しかしながら教育内容は教育委員会、小中学校の設備は予算が関係しますので市町村長の皆さんが関わって、さらにその内容については市町村の教育委員会ということで、非常に教育行政の仕組みというのは複雑であります。
そういう意味で私は、責任の所在がはっきりするような形にするべきだと。何も、例えば県知事が全て右だ左だと差配できるようにしろということを申しあげているわけではなくて、最終的には選挙で選ばれた人間が責任をとれる態勢にすることが、ひいては地方自治を貫徹することができる道だと私は思っております。
国の関与は、私は必要最小限にするべきだと考えておりますけれども、国に対してやはりしっかりものを言っていく上では、住民の皆さん、県民の皆さんの後押しというものが大変重要だと思っております。そういう観点で、最終的に責任を持つのは首長である必要があるのではないかというのが私の問題意識であります。したがって、全ての教育の中身まで-政治的中立性の議論もあります-一から十まで首長が差配することが望ましいということを私が主張しているわけではございません。しかしながらいろんな課題があります。教員の配置をどうするか、学校の設備をどうするか、子どもたちに大きな枠組みとしてどうした教育をしていくか、こうしたことについてはやはり首長が県民の皆様方から付託を受けるなかで、しっかりと責任を持って取り組んでいくことが必要というふうに考えております。
和田議員
教育の中立性、継続性、安定性を担保しながら、やはり知事も言うべきことを言う、こういうことは大事でありますので、その距離感を持ちながら最後の責任は私というふうに知事は繰り返し言っておられますけれども、やはり教育委員会を重視していただきたいということを再度申しあげたいと思います。たとえば、教員の不祥事が続き有識者による教育の資質あり方検討会議がおかれましてその中でいくつかの改善の提言がされました。その一つに児童生徒保護者に匿名性を担保した評価制度が導入する。こういうことも求められたわけでありますが、評価制度の必要性、有効性については多くの疑問が投げかけられてもこれをこの検討会からの提言と言うことで、実施をしようとしている、この様子を見るにつけてもすでに教育委員会の独自性について疑問が感じられ、そのいささか窮屈な状態にあるというふうに私は感じています。今回のこういう国の制度改革も含めて改めて教育委員会自身の改革も求めますし、また教育委員会が安定して独自性を持って教育に当れる様にそのためにも行政としてもきちんと予算付け、人事等をして頂きたいということを求めておきたいと思います。
安倍政権によりまして、教育委員会制度「改革」の動きは、解釈改憲による集団的自衛権行使容認など、「海外で戦争する」国づくりと一体のものと言わざるを得ない状況になってきております。昨年12月、臨時国会最終盤の特定秘密保護法制定、NHKの経営委員会人事に見られるような公共放送を自らの支配下におく、ついには教育制度の改革によって教育への無制限の権力介入・支配の道を開く、これらの全体が「戦争する国づくり」という動きが強まっているように感じてなりません。長野県の子どもたちのために、知事、教育委員長、教育長それぞれの立場で、子ども達のためにご奮闘いただきたいということを申しあげまして質問を終わります。

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