「長野県の未来を担う子どもの支援に関する条例(案)」賛成討論
6月県議会本会議において「長野県の未来を担う子どもの支援に関する条例(案)」の審議がおこなわれ、条例案は賛成多数で可決されました。本条例案は、当初「子どもの権利」条例として構想されていたにも関わらず、「子どもの保護」条例へと別物ともいうべき内容変更がされ、2月議会で提示された要綱案からも重要な変更があるにも関わらず、6月県議会直前に提案されたものです。また、議会会期中に検討が公表された「いじめ防止条例」との整合性も不明です。県議団は今議会での成立にこだわらず、幅広い県民の意見を聞いて慎重に条例案の審議すべきであると主張しましたが、採決されるに当たっては、悩み苦しんでいる子どもを人権侵害から守る体制を整備すること自体は必要であると判断し、条例案に賛成しました。審議においては、藤岡議員が賛成討論をおこないました。
- 藤岡議員
- 第6号「長野県の未来を担う子どもの支援に関する条例案」に賛成の討論をおこないます。
「長野県の未来を担う子どもの支援に関する条例案(子どもの支援条例案と略します)」は、虐待やいじめ、不登校など問題を抱え我慢している子どもや、誰にも相談できずに悩んでいる子どもに対応するために、「子どもの育ちを支えるしくみを考える委員会」での検討を通じて先の2月県議会定例会で条例要綱案を示し、「幅広い観点から議論してもらった」と、今議会初日に知事の議案説明の中で述べられました。実際に2月県議会では、大変幅広い議論が交わされたと思います。しかし、条例案そのものが6月にはいっても示される気配が無かったので、今議会では提出されないだろうと思い込んでおりました。
ところが、条例案を提出するとの意向を3日に受け、大変驚きました。私たちが条例案そのものを拝見したのは13日、今議会が始まったのが19日ですから、非常に直前の提出でありました。条例案そのものに対して、県民の皆さんから意見を聞く機会が無いまま議会の中で通してしまって果たしてよいのか、率直な疑問であります。更にここにきて、一般質問が始まった24日、突然伊藤教育長から「いじめ防止条例」の制定に向けた検討をするとの表明が出されました。「子どもの支援条例案」と今後制定を検討される「いじめ防止条例案」との整合性をどう取るのか、それぞれの分担、役割をどう整理するのか、その全体像が見えないのに「支援条例」の制定だけを急ぐのは理解に苦しみます。
さて、「子どもの支援条例案」ですが、4年前の県知事選挙のときに阿部知事が掲げた「子どもの権利条例」を制定させたいとの公約から議論が始まったと認識しております。ですので、多くの県民は、子どもの権利型の条例ができることを前提に議論をしていましたし、実際、子どもの権利型の条例制定を希望される方もたくさんおられました。一方で、子どもに権利を与えるとわがままを助長するのではないか、といった議論もございました。そうした幅広い意見を通じて今回の条例案は、子どもの権利を保障する条例ではなく、子どもの人権侵害にどう対応するかに限定した条例案になったと認識しております。議論に参加してきた方々からは、権利を保障する内容にならなかったことは残念との声が聞かれます。実際、県民文化委員会での議論では、権利という言葉は盛り込まれていませんでしたが、子どもたちには安心して生きる権利、豊かに育つ権利、自分らしく生きる権利、参加する権利、意見を表明する権利など、この条例のなかには子どもの権利を保障しようというそうした精神が盛り込まれているのではないですかと質問いたしました。また、松本市の「子どもの権利条例」についてどう考えるかとも質問いたしました。「権利を保障した条例案ではない。松本市の条例と県の条例案は別物」と答弁をいただきました。つまり今回の「子どもの支援条例案」は4年前に知事が制定を公約した「子どもの権利条例」とは全く別物の条例案であると認識をしております。
私たちは今議会での成立にこだわらず、県民の望む条例とするために、しっかりと県民的議論の時間を確保すべきであると考えておりますが、子どもの人権侵害の問題解決のために、さまざまな問題で悩み苦しみ、そしてそれを相談できずに我慢している子どもたちのために、新たな相談できる体制を早急に整備されることや、人権侵害に対応する機関が条例で担保され、設置されることは必要だと考えます。よって、まず「子どもの支援条例」の制定をスタートとし、長野県の子どもたちの人権が保障され、更に子どもたちの権利も保障される第一歩となるよう私たちも協力してまいりたいとの趣旨を申しあげさせていただきまして、賛成討論といたします。