2014年11月定例会 藤岡義英議員一般質問と答弁
1.国民健康保険について
- 【藤岡議員】
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国民健康保険について質問いたします。
住民の支払い能力をはるかに超える国保税が、全国各地で大問題となっています。高すぎる国保税を完納できない滞納世帯は加入世帯の約2割にのぼり、滞納制裁として保険証を取り上げられた生活困窮者が医者にかかれず重症化・死亡したり、生計費を差し押さえられた滞納者が、餓死や自殺に追い込まれるなどの事件も多発しています。
そうした事態を引き起こした元凶は、国の予算削減です。1984年の国保法改悪で国保の国庫負担を引き下げたのを皮切りに、国保の財政・運営に対する国の責任を後退させてきました。1984年度から2010年度の間に、市町村国保の総収入に占める国庫支出金の割合は50%から25%へ半減し、それと表裏一体に、一人当たりの国保税(料)は3.9万円から8.9万円へと2倍以上に引きあがりました。
国保財政を危機に追いやっている、もう一つの要因は、加入者の所得減・貧困化です。かつて国保加入者の多数派は自営業者と農林漁業者でしたが、今では国保世帯主の4割が年金生活者、3割が非正規労働者です。国保の加入世帯の平均所得は、1991年の260万円から2010年度は145万円へと激減しています。加入者が貧困化しているのに、保険料が上がり続けるのでは、滞納が増えるのは当然です。国保制度の抜本的な改革はもはや避けられません。
ところが、この間、政府は、国保の根本問題の解決に背を向けたまま、国保「広域化・都道府県単位化」を言いだし、そのための制度改変を繰り返しています。市町村の独自繰入をなくして国保税をさらに引き上げ、保険証のとりあげや差し押さえなど無慈悲な滞納制裁がいっそう強化されるのでは、住民の苦難は増すばかりです。
①この国の国民健康保険に対する責任及び国が負担を減らしてきていることに対する県の見解を健康福祉部長にお伺いいたします。
②国民健康保険税について、例えば佐久市では平成27年度から1世帯平均で17%引き上げる案が、小諸市でも来年度から12%値上げする案が、それぞれ12月市議会に提案されるとのことです。このような国保税の値上げは、家計に深刻な影響を及ぼし、「医者にいけない」「税金が払えない」など、安心して医療にかかれない人がますます増えることになります。県ではこうした実態をどう受けとめていますか。これも健康福祉部長にお伺いいたします。
③被保険者の高齢化や貧困化により、国民健康保険財政がひっ迫しています。他の府や県では、市町村に対する独自の支援を行っているところもあります。大阪府では、約3億円の予算で国民健康保険事業費補助金を行い、健全な財政運営を図るとしています。長野県でも支援策を検討すべきと考えますがいかがですか。知事にお伺いします。
- 【健康福祉部長】
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国民健康保険についての質問に順次お答え致します。
①まず、国保に対する国の責任及び負担についてでございます。議員ご指摘のとおり、国民健康保険の国の補助率は昭和57年度の国民健康保険法の改定で医療給付費の50%とされたところでございますが、国保は退職被保険者の受け皿であることなどから、同時期に退職者医療制度が創設され、被用者保険が国保の退職者医療費の一部を負担することとなってございます。
また、平成17年度には都道府県調整交付金の導入に伴い、定率国庫負担の廃止等が為されているところでございます。
こうした制度改正に伴う国の定率負担の見直しがある一方で、国は保険者の財政基盤を強化するための保険者制度や高額医療費共同事業を恒久化して実施することとしております。
国においては、国民健康保険の財政基盤を強化・安定化するため、国の定率負担を引き上げるとともに、引き続きこうした取り組みを責任を持って実施していくべきというふうに考えております。
②次に、国民健康保険税の税率の引き上げについてでございます。国民健康保険税は、保険者が国民健康保険の医療給付費等について見込みをたて、それに見合う保険税収納必要額を算出の上、税率等を設定して被保険者から徴収することとされております。近年の医療費は高齢化や医療の高度化等の要因により毎年3%前後増加しており、今後も増加が見込まれるなかで、保険者が適正な受益者負担を求めることはやむを得ない措置と考えております。
議員ご指摘の保険税率の引き上げについては、佐久市は平成20年度以来、小諸市は平成17年度以来の改定であることや、両市のこれまでの保険税額が県下でも比較的低い水準であったことなどがその背景にあるものと考えております。このように、保険税の改定はそれぞれの保険者の判断によりますが、県としても引き続き必要な助言等を行いまして、長期的な視点にたった国保財政の安定的な運営が行われるよう、市町村とともに取り組んでまいりたいと思います。
- 【阿部知事】
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③国民健康保険についてのお尋ねでございます。私は知事としていつも国・県・市町村、そういう役割分担、責任分担、そういうものを意識して、県政執行あたらせていただいております。県としては、この国保については国と協調して本年度、調整交付金、低所得者支援策、高額医療費対策、こうしたことを約161億円負担して、市町村国保の安定的な運営を応援させていただいております。
国民健康保険、被保険者の年齢構成が高い、医療費水準が高い、保険料負担が重いと、構造的な問題を抱えています。これは国が、全国的な制度として抜本的な対策をとるべきと考えておりますし、こうした点については知事会等でも議論されて、国に対して強く対応を求めてきているところであります。
したがって、お話にもありましたが、他の県の事例ということでありましたが、私が調べる限りでは独自の助成というのはほとんど、例えば福祉医療の国庫減額分とかあるいは診療所への助成ということでありまして、本来的な国民健康保険制度を改善するとか、本質的なものでは必ずしもないと思っておりますので、念のため申し添えておきたいと思います。
- 【藤岡議員】
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ぜひ、県として市町村に対する何らかの財政的手立てを検討されることと、「国保の都道府県単位化」に反対されることを強く要望いたします。国の責任による国保税の抜本的引き下げを求めること、国庫負担増と貧困打開による制度の再建などを国に求め、また生活困窮者に対する保険証とりあげや機械的な滞納制裁の中止を行うよう、市町村への助言をしっかりしていただくことを強く要望しまして、次の質問に移ります。
2.景気浮揚策について
- 【藤岡議員】
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①「アベノミクス」の2年間で「経済の好循環」が生まれ始めたと言われていますが、実際は国民生活にもたらしたのは格差の拡大です。大企業・大株主がますます「豊か」になる一方、庶民の生活は悪化しております。
大企業(資本金10億円以上)の2013年度の経常利益は史上最高の34.8兆円。トヨタ自動車の場合、13年度だけで2.3兆円の営業利益であります。株価も大きく上昇しました。アベノミクスの2年間で資産が100億円以上増えた大株主は分かっているだけでも100人以上にのぼり、資産増加額は合計7.6兆円に達しました。
他方、庶民には円安による物価上昇が襲いかかっています。働く人の実質賃金は16カ月連続で減少し、昨年10月からの1年間で平均年収が8万4400円目減りしました。
高齢者が受け取る年金額も実質的に6%以上目減りしました。年収200万円以下のワーキングプア(働く貧困層)は13年に史上最多の約1120万人にのぼり、12年と比べて30万人も増えました。円安関連倒産企業も大幅増加しています。
また、消費税の増税の影響もあり、GDPも2期連続マイナスとなっています。認識を改める必要があるのではないかと考えますが、アベノミクスに対してどう評価していますか。知事にお伺いします。
②また安倍総理は消費税率の10%への引き上げを2017年4月に延期しましたが、8%へ引き上げただけで大きな影響が出ているわけです。これまで知事は消費税増税に賛成してきましたが、県民生活へ大きく影響する10%への引き上げにははっきり反対すべきであります。昨日、下沢議員からも質問がありましたが、2017年4月に10%、初めての二桁増税になりますが、賛成されるのですか。知事にお伺いいたします。
③この状況の中で、今後の県の経済対策はどうしていくのか。方向性と具体的な取り組みについても、知事にお伺いします。
④平成26年第4回東京都議会定例会での知事所信表明で、舛添知事が「安定した仕事に就きたいと望む非正規の方々への就労支援を今後の都の重要政策に」「都が積極的に動いて非正規の方の正社員への転換を強力に推し進めていく」と踏み込んだ表明をされました。
若年層の雇用問題ついては9月議会でも質問いたしましたが、「非正規社員の正社員化」について、県では実施した調査を元に「事業所への文書による依頼」「経済団体への協力要請」などをするに留まっています。この問題については、本県でも舛添知事のように踏み込んだ姿勢で臨む必要があると考えますがいかがでしょうか。これも知事にお伺いいたします。
⑤売れぬ注文住宅…「『給付金30万円』に見向きもしない消費者、失政の感強く」。これは産経新聞 12月1日の記事でありますが、戸建て注文住宅の受注低迷が長びいているそうであります。そこで、住宅建築関連産業への県独自の経済対策として、私たちは従来から雇用・経済対策としての住宅リフォームへの助成を提案しております。経済対策効果を高めるために、現在の制度の条件を緩和、予算を増額し、秋田県では平成26年度は予算額11億5千万円だそうですが、使い勝手の良い制度にすべきと考えますがいかがでしょうか。これも知事にお伺いいたします。
また、高崎市では、「まちなか商店リニューアル助成金事業」という制度を平成25年度から創設しました。事業費は4億4千万円、経済波及効果は約10億円を超えるそうであります。申請件数738件。この制度の目的は「市内における商業等の活性化を図るため、市内の店舗等で商売を営む業者が競争力をつけるため、店舗等を改装もしくは改修又は店舗などと一体となって機能を果たす備品の購入費用の一部について補助する」としています。
「売上がのびた」「商店を続ける気力がわいた」といった喜びの声が寄せられているそうです。リフォームに関係する分野への効果の他に、商店そのものへの効果も出ているとのことです。長野県でもこうした助成制度を行うことを提案したいと思いますが、いかがでしょうか。知事にお伺いいたします。
- 【阿部知事】
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経済関係のご質問について順次お答え申し上げたいと思います。
①まずアベノミクスに対する評価ということでございます。わが国の経済情勢、個人消費等に弱さが見られるものの、緩やかな回復基調が続いており、また本県経済についても生産の一部に弱めの動きが見られるものの、緩やかに回復しつつある現状であります。アベノミクス、現在も進行中ということでありますので、確定的な評価をできる段階ではないと思っております。ただ、これまでのところ、例えば有効求人倍率の上昇であるとか、あるいは輸出関連企業を中心とした事業収益の改善、あるいは企業や個人の景況感の回復といった効果が見られております。今後、円安などの影響も含めて効果を見極めていく必要があると考えております。
②それから、消費税率の引き上げについては再三申し上げておりますけれども、地方財政を預かっている立場とすれば、消費税だけではなくて地方消費税も含まれているわけでありまして、そういう観点で、これから安心して暮らせる長野県をつくっていく上で、消費税率の引き上げというものもやむを得ないものというふうに考えております。ただ、現下の経済情勢におきましては、引き上げ時期の延期ということは致し方ないのではないかというふうに思っています。今後、人口構造が大きく変化するなかで、持続可能な社会保証制度をしっかり作り上げること、そしてその一方で持続可能な財政構造をつくっていくということが、国・地方通じて求められていると考えています。
③それから、今後の経済対策の方向性と具体的な取り組みということでございます。知事就任以来、
県内経済の下支え、景気回復の動きを確実なものにしようということで、切れ目のない経済対策・雇用対策、長野県としても実施をしてまいりました。この間、国の取り組みとも相まって、雇用情勢の改善あるいは企業の景況感の回復等、県内経済は相対としてはよい方向にきているというふうに考えております。
今後も、成長期待分野の参入、新たな創業の支援、戦略的な企業誘致等、貢献と自立の経済構図への転換に向けた施策をさらに進めていきたいと考えております。
なお、引き続き県内の景気動向に注意しつつきめ細かく対応を考えていきたいと思っております。
④それから正社員化についてであります。企業の将来見通しの不透明さ、あるいは節減等を理由として非正規社員が増加しております。県の調査によりますと、子育て世代であります35歳未満の非正規社員の約4分の1が非正規の選択を余儀なくされたものということであります。そういう意味で、長野県に取りましても正規社員への転換は大きな課題だと考えております。県としては、雇用社会参加促進プロジェクトの柱として具体的な取り組みを進めておりますし、私も経済団体の集まりがあるたびに雇用の確保、特に若い人たちの雇用について、今人口減少社会のなかで、県としても取り組むけれどもぜひ企業の皆様方にも一緒に考えてもらいたいというお話をさせていただいております。
こうしたなかで、事業所訪問によります短時間正社員制度導入の働きかけでありますとか、若者未就職者等人材育成事業等で、正規雇用の拡大を県としても図っているところでございます。労働局等とも連携しながら、正規雇用が増えるよう取り組みを強化してまいりたいと考えております。
⑤それから、住宅・商店のリフォームであります。これも何度もここで申し上げておりますけれども、限られた財源の中で最大限の効果を上げていくには、単なる経済対策という観点だけではなくて、明確な施策目的が重要だというふうに考えております。長野県としては、既存住宅の省エネルギー化、あるいは県産木材の活用による温暖化対策の推進等を施策目的として取り組んできているところでございます。
高崎市の例がありましたが、冒頭も申し上げましたが、私は常に国と県と市町村との役割というのを意識して取り組んできております。是非、事例として引用される際には、都道府県の取り組みというの挙げていただくとありがたいというふうに思います。県内の市町村でも商店のリフォームについては助成を始めたところがあるというふうに承知しております。
- 【藤岡議員】
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知事が2017年4月からの消費税10%に賛成されることを理解しました。それはそれとして、住宅リフォーム助成制度については、市町村でも県でもやっている事業ということでご紹介させていただきます。
それからもう一つは、県職員の正職員化を進めることもぜひ、経済団体に要請しているのであれば、まず自分の県がお手本として、やっていただきたいなと思います。
3.特定秘密保護法について
- 【藤岡議員】
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続いて次の質問にうつります。
ちょうど一年前に質問しました、特定秘密保護法について質問します。
この法律に対し、多くの国民の猛反対があったにも関わらず強行成立させ、その強権的な政治手法で批判を受けた安倍首相は、「説明不足」を認めざるをえませんでした。ところが、その後の国会でもまともに説明も審議もせず、法律の施行のための政令や運用基準を一方的に作って、施行日を12月10日とすることを決めてしまいました。問答無用のやり方です。運用基準をめぐっては、法の廃止を求めるものを含め、「秘密の範囲があまりにも広範」など制度の根幹に関わる約2万4000通のパブリックコメントが殺到しています。しかし、政府は根幹にふれない微修正だけで施行へと踏みきりました。
独立した公正な立場で検証等を行う機関ですが、秘密指定・解除の”重層的チェック機関”として、「内閣保全監視委員会」「独立公文書管理監」という機関を設けています。しかし、保全監視委員会は首相が指定した秘密を首相自身がチェックするのを、指定官庁のトップが補佐するもの。独立公文書管理監は首相が指定した秘密を首相が任命する部下がチェックするものでしかありません。監視機関は法改正を経ずに設置されるため、不正を是正させる権限を持ちません。「これでは首相が首相自身をチェックするに等しい」と、国会でも追及されています。
この様な実態で施行されようとしていますが、知事は国会で「充分かつ慎重な議論」がなされたと考えますか。お伺いします。
これまでも、この法律は、共謀、教唆、扇動の観点から、県の情報を公開しようとする県民の知る権利や言論の自由を制限することになると指摘してきました。知事は、県の情報公開制度への影響については、「国会の審議中であり、まだ十分な説明がない状況であるが、情報公開制度や県民の知る権利を尊重するものであると同時に県民に説明する責務を果たしていく上で重要な制度であり、法の成立により後退はあってはならない」と答弁されました。その後1年が経ちましたが、国から十分な説明はありましたか。知事にお伺いいたします。
- 【阿部知事】
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特定秘密保護法についてのご質問でございます。国会での議論は国会でしっかり議論してもらいたいというのが、私の基本的な考えでございまして、何度もここで、国・県・市町村というお話を申し上げていますが、市町村長が県議会にちゃんと議論しているかとご質問されているのと同じようなご質問ではないかなと思います。
今回、185回国会では法案自体、そして186回国会では国会の監視機関に関する国会法の改正等について、それぞれ議論されたものというふうに承知しております。
それから、国からの説明ということであります。特定秘密保護法、外交・防衛等国の安全保障に関して国が保有する情報を国の行政機関の長が特定秘密として指定して、その取り扱いに関して規定した法律であります。法律のなかには、特定秘密を都道府県警察が保有する場合に関する規定が置かれてはいますが、県が保有するそれ以外の情報を特定秘密に指定することは想定していないということを、国から説明を受けているところでございます。したがって、県の情報公開制度の対象となる情報に関して県民からの公開請求があった場合、この法律によって影響を受けることはないと考えております。
- 【藤岡議員】
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県民の人権に関わる問題です。国から説明があったとお答えになりました。そうであれば、いつ、どこで、誰から、どのような内容で説明があったのかというわけであります。文書としてその説明をちゃんと受け付けたのでありましょうか。県民に説明の内容を、むしろ公開して説明して、県民の不安払拭に努めるのが知事の責任では待井でしょうか。ぜひもう一度お聞きしたいと思います。
11月20日の参院国家安全保障特別委員会。「特定秘密と知らずに近づいた一般国民が被疑者扱いされる可能性があり、言論や表現の自由が萎縮する」との質問に、安倍首相は、「一般国民が特定秘密を知ることは、まずあり得ない。特定秘密の保護に関わる事態に巻き込まれることは通常考えられない」と答えました。
同じようなやりとりが、戦前の貴族院特別委員会で行われていたそうであります。1937年、軍機保護法での審議で、「軍事上の秘密は軍の独占的解釈による。世間の不安を除去できないか」との質問に、陸軍少佐は「一般的な方が、知り得るような軍事上の事項は機密である、秘密であると恐れられるようなことはほとんどない」と答弁。「人民の権利義務をいたずらに脅かすことはない」とも強調したそうであります。
しかし、41年に同法違反の摘発は149件あり、多くは軍用施設の写真を撮ったり、軍用工場での仕事を話したりした一般国民。秘密は日常生活の中にあって、実際には多くの市民を摘発いたしました。
この軍機保護法によって、1941年12月8日、アジア・太平洋戦争が始まった日でありますが、に北海道帝国大学工学部電気工学科の学生が軍機保護法違反の疑いで検挙・拘束されました。この学生が旅行中に見聞したことを大学の英語の講師だったアメリカ人に話したことの中に軍事機密が含まれていたというのです。検察が各種軍事機密を探り提供したと決めつけたわけですが、そのひとつに挙げられた根室の海軍飛行場の存在は、31年リンドバーグの太平洋横断後の着陸地としてすでに世界中に報道されていたそうであります。この日から敵国人になった者に話したというので重い懲役15年の刑を言い渡され、網走刑務所に収監されました。敗戦で軍機保護法は廃案となり、学生は釈放されますが、刑務所生活で体が弱っており、肺結核となって27歳で亡くなりました。話を聞いた英語講師夫妻も懲役12年の刑に処せられました。
人々はスパイの嫌疑をかけられることを恐れて、社会は萎縮していったのであります。
国内ではこれまで、弁護士やジャーナリストらが3件の違憲訴訟を起こしています。米政権中枢の要職を歴任したモートン・ハルペリン氏は、「同盟国や緊密な関係にある国々の中で最悪の法律」「何を秘密に指定してはいけないかとの指標が欠けているのは致命的」と鋭く指摘しています。この法律に関する国民的議論は一年間で成熟し、県民や有識者の間でも、県民の知る権利、言論の自由の侵害であり、情報公開も後退するとの意見がほとんどであります。このまま施行を許しては絶対にいけないと考えますが、知事の所見をお聞きいたします。
- 【阿部知事】
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お答えいたします。まず、先程ご答弁申し上げた、いつどこで聞いたかと。それは担当者に聞かなければ分かりませんけれども、内閣官房情報調査室から私どものほうで県の情報公開制度等との関係でしっかり確認しておく必要があるということで、聞き取りに対して回答いただいているところでございます。
それから施行についての所見ということであります。私は平和国家、当然維持されるべきだと思っておりますし、日本が国際社会の中でしっかりとした地位をこれからも確保していくということが当然重要だと思っております。ただ、国際情勢の中で国民の安全確保を図っていく上で、テロの問題、防衛の問題、安全保障上秘匿性の高い情報に対する法整備ということは必要ではないかと思っております。
今後、政府内部におかれます監視機関としての保全監視委員会、あるいは独立公文書管理監、国会の両院に置かれる情報監視審査会、こうした機関がしっかりと責任を果たすかどうかというのは、まさに国会であったり我々国民がしっかりとチェックをしていかなければいけないだろうと思います。
この法律単独を取り上げるだけではなくて、日本の社会全体が本当に民主主義的な仕組みとして運用されていかなければいけないわけでありまして、そうした全体像について今まさに、衆議院総選挙が行われているわけでありますから、しっかりと議論をしてもらいたいと思います。基本的人権の尊重、国民主権、平和主義、こうしたものはしっかりこれからも堅持されるべきものと考えております。
- 【藤岡議員】
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聞き取りと回答のみで、国からの十分な説明を受けたと知事は判断されたと理解致しました。
国連の自由権規約委員会も「情報へのアクセス権を定めた規約19条」に反しているとして、日本政府に対して「基本的人権」と「表現の自由」を守るよう強く勧告中であることも紹介しておきます。
国民の目、耳、口をふさぎ、民主主義を破壊する違憲立法であるこの秘密保護法は撤廃を!集団的自衛権の行使を始めとする戦争する国づくりは絶対に許さない!との決意を申し述べさせていただきまして、私の質問を終わります。