「長野県いじめ防止対策推進条例案」反対討論
長野県いじめ防止対策推進条例案が提案され、賛成多数で可決されました。日本共産党県議団から、高村議員が反対の立場で討論に立ちました。
第43号「長野県いじめ防止対策推進条例案」について日本共産党県議団として反対の立場を表明し討論をいたします。
学校での集団生活の中、どの子もいじめられたり、いじめをする側になったり、無視をしたり、立場が逆転する関係になるなど、子供たちの背景を察することなく、さまざまな発達過程にある子供たちに第4条は、「児童生徒はいじめをしてはならない」と上から威圧的訓示的に命令しています。いじめがどういうものかも理解できない子供たちに禁止を強要して、いじめはなくなるとは思えません。むしろいっそう表に出さないよう陰湿ないじめが水面下で広がるのではないか、と危惧します。
また7条では、学校及び教職員に対して「教職員の言動が児童生徒に与える影響を十分に認識して教育活動を行わなければならない。いじめを確認したら適切かつ迅速に指導助言をしなければならない」と教職員の責務を掲げますが、現状の教職員は、月平均で過労死の水準と言われる80時間以上の激務の中におかれ唯でさえ忙しく、授業以外の多くの仕事も抱えています。校長以下いっそうの管理意識をうみ、むしろ学校現場のいじめの解決にはつながらず、問題を深刻化することになるのではーと心配します。
8条でも保護者に対して,「監護する児童生徒に規範意識を養うための教育を行うよう努めなければならない」とし、非正規雇用や長時間労働など、ギリギリのところで生活をしていて、家庭教育に時間が取れないなどそれぞれのご家庭の現状を推し量ることなく保護者の責務を求めています。
一方長野県教育委員会の役割や取り組みについては具体的文言はなく曖昧となっています。平成17年5月からスタートした。長野県教育委員会子供の権利支援センターの取り組みでは「いじめを受けている子供に寄り添うことはもちろん、いじめをしている子供もまた悩みを抱えており、子供の隣に座って十分に聞き信頼関係を築きながら対応策を集団で検討し、家庭とも情報を共有して、子ども自身が冷静に話し考えることができる環境を作ってあげることが大」と当時の子ども支援課長は述べています。長野県教育委員会の取り組みの教訓も踏まえていません。
日々の学校生活の中で起こる問題を子供たち自身が主体者として、解決する環境を整えるのが教育委員会の責務ではないでしょうか。子供たちや教職員を激励する心や決意がこの条例にはありません。1年前の3月にまとめられた大津市のいじめに関する行動計画案では、二度と悲しい事件を起こさないために、自ら命を絶った事件に立ち返って考えること、子供の主体性を尊重し子供の声を大切にすることを掲げ、問題点を洗いざらい明らかにし、いじめ対策担当委員を各学校に配置するなど具体的な対策をとっています。
大津の事件の最大の教訓は、教育委員会の秘密主義閉鎖性を克復し、情報の公開と「知る権利」を保障することですが、この条例にはその規定が全く欠如しています。
さらに、「知事が重大な事案には再調査をし関与することができる」としていますが、知事が教育委員会の役割を飛び越えて教育に介入することとなり、知事の意向や価値観に学校が影響を受ける体質とならないか危惧します。
国連子どもの権利委員会から日本政府に対し再三勧告が出されています。「過度の競争的な環境によって引き起こされるいじめ等の悪影響を回避するために学校制度を再検討することを求める」内容です。県の中高一貫教育や全国学力テスト・グローバル人材育成教育など競争を激化させる方向は見直すべきではないでしょうか。今回提案の条例ではそのことは全く触れられず、一方的に子供・学校教職員・家庭にいじめ防止の責務を押し付ける内容となっています。これではいじめ問題の解決にはなりません。
長野県の未来を担う子供の支援に関する条例の具体化もこれからーと言う時、不十分なままのこの条例は賛成できないことを申し上げて反対討論といたします。