2015年9月定例会 山口典久議員一般質問
1.地方再生の基本的な立場について
- 【山口議員】
- 日本共産党県議団の山口のりひさです。最初に地方再生について伺います。
人口減少、地域の活力の低下や衰退の原因につきましては、長野県人口定着・確かな暮らし実現総合戦略案において、人口増加と大都市への集中を前提にした政策が原因だ と上げています。しかし私は、なぜ一極に集中したのか、そこが大事ではないかと思います。地方の産業や雇用が不安定になり失われていったことが原因ではないでしょうか 。
働き方では、労働法制の相次ぐ規制緩和によって不安定で低賃金、長時間労働などが強いられる非正規雇用が拡大してまいりました。大店法を廃止し、一方で「まちづくり 3法」は機能せず、商店街はシャッター通りに変わっていきました。大型店の身勝手な出店と撤退が最大の原因です。農産物の輸入自由化と家族農業の切り捨てが後継者不足 と荒廃農地を広げたのではないでしょうか。小泉「構造改革」による「三位一体の改革」で地方交付税は3兆円も削減されました。多くの地方自治体が財政難から合併へと追い立てられて、長野県も120あった自治 体は77になりました。多くの自治体では、旧市町村地域の拠点がもう維持できず、住民サービスは後退し地域経済も大きな打撃を受けました。 このように、地方の産業や雇用が失われたこと、地方の切り捨てが行われたことこそ長野県に人口の減少や地域の衰退をもたらした原因ではないでしょうか。知事の見解を伺 います。
- 【阿部知事】
- 地方衰退の原因、克服のための政策転換、総合戦略の位置づけというご質問でございます。地域それぞれの個性、強みを持っているわけですけれども、私はこれから地 方創生に取り組んでいかなければいけない上で、大きな時代の流れをとらえなければいけないんだろうというふうに思っています。
さまざまな地方の活力が失われていく要因あるかと思いますけれど、私なりの見方では、大きく3つ申し上げておきたいと思います。まず一つは産業構造が大きく転換してき たわけであります。かつての農林、漁業中心の産業で、いわゆる一次産業中心の社会は当然のごとく農山村、活力があり、まさにそうしたところで多くの方たちが生業を成り 立たせていたわけでありますけれども、それが時代の変化とともに、工業社会に移り、今金融サービスそうしたもののウェイトが高くなっている中で、どうしても人の働く場 が大都市にシフトしていったということがあるいうふうに思います。
それから二点目としては例えば政府機関であるとか、大学であるとか、こうした必ずしも経済原理に伴って大都市に立地しなくてもいいような施設、機関、こうしたものも 日本の場合は諸外国では必ずしも大都市に政府機関があるわけではないわけですけれども、日本の場合は経済的な中心のところにこうした機能も集中してきたと、そういうこ とが経済産業の側面以上に大都市に人をひきつける要因になってしまったんではないかというふうに思います。
それからこれは若干情緒的な話ではありますけれども、いわゆる都市的な暮らしへの憧れのようなものがかつては存在していたのではないかというようなことが言えるので はないかと思います。
こうしたものをわれわれ大きく転換していかなければならないと思っています。
今回の総合戦略の中では、例えば産業の分野では、地域資源を徹底活用して地域で 生産するものを地域で消費する、地消地産と言うことを掲げています。なんというか地域で持っている価値をもっともっと生かす可能性があるにもかかわらず、そうしたもの を十分生かしきれてこなかったという部分があると思います。そうしたことを最大限生かすことによって地域内の経済循環をもたらし、そして地域の産業の活性に力を更に高 めていかなければいけないというふうに思っています。
それから政府機関あるいは大学でありますけれども、県として高等教育の振興、これまでとかなりスタンスを変えて相当程度力を入れていかなければいけないというように 思っておりますし、政府機関の移転についてもこれも国が積極的に提案募集をしたわけでありますので、それに応えて私どもも具体的な提案をさせていただいているわけであ ります。こうした動きを契機に、もっともっとこうした機関の地域への地方への分散が進んでいっていただきたいというふうに思っています。
それから都市的な暮らしと農山村の暮らしどちらがいいという話ではありませんけれど、やはり農ある暮らしを求めるような方、あるいは豊かな自然環境に惹かれる方が増 えている、そういう中で長野県に居を移されたいと、移住したいという方々も大変大勢出てきています。そういう意味では、こうした皆様方のニーズにしっかりと対応して、 長野県に人を呼び込んでいくとこういう移住政策の推進ということも重要なものだと考えています。
今のような大きな時代の流れを踏まえて、今回地方創生の総合戦略策定をさせていただいておりますので、ぜひ県議会の皆様方にもご理解いただいたうえで、一緒になって 進めていきたいというふうに考えております。以上です。
- 【山口議員】
- 知事からは、時代の流れ、具体的には産業構造の転換などのお話がありました。
しかし私は、やはり一番大きな問題は、農業でも林業でも中小企業でも、店を継いでも、地方で食えなくなっている、食べていけなくなっている、子育てができない、これ が問題ではないかと思うわけであります。そういう点では改めて、地方の衰退をもたらした要因の検証は、過去の話ではなくて、地方を再生するうえでも重要だと思っていま す。
例えば、長野東須坂インターの近くに新たな大型店舗の出店が明らかになっています。総務省が地方自治体に策定を求めている「公共施設等総合管理計画」によって、合併 した市町村ではさらに支所機能の縮小、並びに身近な住民サービスがさらに切り捨てられることや、公立小中学校の統廃合などへの不安も広がっています。
こうしたこれまでの延長線上の政策が推進され、一方で長野県が頑張って少子化や地方の衰退に歯止めをかけようと思っても、それは絵に描いた餅になりかねないと思うか らです。
長野県人口定着・確かな暮らし実現総合戦略では、人口減少、地方の衰退の原因の踏み込んだ検証を求めたいと思います。さらに政策的な転換を位置付けることをご要望し たいと思います。
2.子育て支援について
- 【山口議員】
- (雇用の安定と所得の向上)
次に、人口減少問題でも子育て支援について伺います。
最初に雇用の安定、所得の問題についてであります。
長野県内では、男女ともに未婚者の割合が上昇しています。そして、結婚を抑制する要因として交際機会と雇用形態等の問題、所得の低下が指摘されているところです。 長野県内の企業における平均月間総労働時間は全国よりも長く、しかし残念ながらその一方、給与総額は全国より低く推移しております。平成16年度327万円だった給与 総額は、平成25年度は297万円と30万円も低下しております。
就業形態では、非正規雇用の割合が上昇を続け、いまや38.8%であります。そして問題は、若者の婚姻率が、正規雇用では27.5%に対し、非正規雇用はわずか4. 7%です。
子育の環境を整えるためには、雇用形態の安定と改善、所得の向上が不可欠だと思います。私は、そこで以下の3点提案し、産業労働部長の見解を伺います。①最初に、県内でも多額の補助金を受けながら、雇用や地域経済への社会的な責任を投げ捨てたと思われるような大企業の身勝手な撤退が相次いで問題になっています。県が こうした企業に社会的責任をしっかり果たすよう指導することや、場合によっては、例えば補助金の返還を求めるなど、県としての施策が必要ではないでしょうか。
②二つ目に、所得の向上に関し、中小企業への抜本的な支援とあわせて最低賃金の引き上げ、それも思い切った引き上げが重要と考えます。必要性についてどのように考えて おられるでしょうか。
③三つ目に、雇用形態の安定と改善についてです。非正規雇用の実態や苦しみを調査し広く明らかにすることが改善の一歩と考えるが、その予定はあるでしょうか。 産業労働部長に以上の見解を伺いたいと思います。
- 【産業労働部長】
- 3点順次お答え致しします。
①まず誘致した大企業をつなぎとめる施策についてのご質問でございます。企業はグローバルかつ熾烈な企業間競争におかれており、それぞれの生き残りをかけまして、最終 的に撤退と言う経営判断にいたることもございますが、行政の施策のみでそれを止めることはきわめて難しいことと考えております。むしろその様な経営状況となる前に、工 業技術総合センターの技術支援や、テクノ財団の産学官連携などを通しまして、新しい事業の創出を支援することなどにより県内での事業の継続・拡大をしていただくようしっ かりと支えてまいりたいと考えております。
またもし不幸に撤退という事態に至った場合には、県といたしましてはその企業に対し、従業員の再就職先の斡旋を徹底して行っていただくよう要請するとともに、ハロー ワークと連携した職業面接会の開催や、次なる企業の誘致、創業の支援などにより、離職された従業員の方々の雇用の確保に努めてまいります。
なお、県の「ものづくり産業応援助成金」を交付した企業が撤退する場合には、助成金の全部又は一部を返還していただくこととなっております。②次に最低賃金についてのご質問でございます。最低賃金は、正社員、非正規社員など雇用形態に関わらずすべての労働者が対象となり、その引き上げは賃金の低い労働者に とって直接その所得の向上に結びつく大変重要なものと認識しております。
今年10月から適用されます長野県の最低賃金は746円でして、前年度に比べ18円引き上げられております。これは3年連続の二桁引き上げとなっております。
なお最低賃金についての指導監督権限は労働基準監督署にございますが、県としても最低額が事業者に徹底されることが重要と考えておりますので、国と連携してわかりや すいPR資料の配布や広報誌、ホームページなどによりその周知を図ってまいりたいと考えております。③次に非正規雇用者の労働実態調査についてのご質問でございます。非正規労働者の処遇や就業に実態につきましては、おおむね3年に一度県独自の調査を実施し、その結果を 公表しております。平成25年度に実施いたしましたその調査「多様化する就業形態の労働環境実態調査」では、非正規社員が増加している事業所の割合が増加していること、 不本意な非正規社員が増えていること、賃金・収入について半分以上の非正規社員が将来への不安を抱いていることなどの実態を再確認したところでございます。
このような労働環境に係る調査は、労働実態を把握するためにも、また具体的な施策を構築するためにも大変重要なものと考えております。今後も設問の内容や調査時期を 含めまして、調査の具体的実施を検討してまいります。以上でございます。
- 【山口議員】
- つづいて、とりわけ県職員の労働状況について伺います。雇用の安定化、待遇改善を県が率先して取り組むべきという観点からお伺いします。
①現在、知事部局において、非正規雇用の職員の人数、割合はどれくらいでしょうか。今後、非正規雇用者の人数は拡大するのでしょうか、それとも縮小していくのでしょう か。
②現在、民間企業でも非正規から正規への流れ、採用を拡大している企業も県内にもありますが、非正規職員として働いている方でも、一定の経験や能力がある方については 、正規雇用への道を県も開くことを検討すべきと考えますがいかがでしょうか。総務部長に伺います。
- 【総務部長】
- 知事部局における非正規雇用者についてのお尋ねでございます。
①まずその数と割合についてでございますが、平成27年4月1日現在、知事部局の非正規職員数は1,027名、その割合は16.8%でございます。その非正規職員中いわゆる業務補助 の純非常勤職員が3割、特定の知識や経験を有する方を業務量に応じて雇用している行政嘱託員が6割を占めております。残りの1割は臨時的任用職員と月給任期付職員となって おります。
今後の予定についてでございますけれども、純非常勤職員は減少傾向にございます。行政嘱託員につきましては年度ごとに業務の繁寡に応じましてその必要性を精査し職員 数を確定する性質がございますので、現時点で非正規職員数全体の今後の方向性を申し上げるということは困難であるということをご理解いただきたいと思います。
今後とも組織が円滑に運営され多岐にわたる県政課題を適切に対処できる県組織を構築するために、正規、非正規職員を含めた適切な職員配置に努めて参りたいと思ってお ります。②それから非正規職員の正規雇用についてでございますが、正規職員の採用については、地方公務員法の規定に基づきまして、平等の条件で公開された競争試験などにより能 力に実証に基づいて行わなくてはならないものとされております。したがって、同法22条6項におきまして臨時的任用は正式任用に際していかなる優先権をも与えるものではな いというふうに確認的に規定されているとおり、正規職員の採用に当たりまして臨時的任用職員や非常勤職員であることをもって有利に取り扱うこということはできないとい うことになっております。
一方で多様化複雑化する行政課題に的確に対応するためには、新規学卒者に限ることなく多様な人材を確保することが重要であるというように認識しております。このため 平成23年度から臨時的任用職員や非常勤職員を含めて社会人経験を有する方を対象とした採用選考を行いまして、様々な経験や実績を正規職員として生かしていただく道を開 いているところでございますので、引き続き取り組んでまいりたいと考えております。
- 【山口議員】
- 同時に教職員についてです。
①非正規雇用の職員の人数、割合はどれくらいでしょうか。今後、非正規雇用者の人数は拡大するのでしょうか、それとも縮小していく予定でしょうか。
②非正規雇用の教員は教員免許を有しております。一定の経験や能力がある方については、これも正規雇用への道を開くことを検討すべきだと考えますがいかがでしょうか、 以上、教育長にお伺いをいたします。
- 【教育長】
- 非正規雇用の教員の人数と割合、今後の展望についてのお尋ねにお答え申し上げます。
①平成27年5月1日現在、小中学校、特別支援学校、高等学校の非正規雇用の教員は2,072人、その割合は12.0%でございます。その中で産育休補充等の非正規雇用の教員を除く 欠員補充に関わる雇用の教員は前年と比べ12人減の1,432人、その割合は0.3ポイント減の8.6%となっております。またその内訳を見ますと、高等学校と比べ小中学校と特別支 援学校で欠員補充に係る非正規雇用の教員の割合が高くなってございます。
このため小中学校、特別支援学校の教員につきましては新規採用教員を増やす取り組みにより、欠員補充に係る非正規雇用の教員の人数と割合の減少を図っているところで あり、引き続き新規採用者数の確保に努めてまいりたいと考えております。②次に非正規雇用の教員の正規雇用への転換についてのお尋ねでございます。教員の採用は教育公務員特例法により選考によるものと規定されており、非正規雇用の教員をそ のまま正規雇用に転換することはできないところでございますが、教職経験を有し、能力のある優秀な人材を採用選考により確保することが重要であると認識しております。 このため本年度実施した採用選考ではこれまで実施してきた教職経験者を対象とした一般教養試験の免除に加え以前に県内で正規教員として勤務していたが出産、育児および 介護等より退職し現在講師を経験している方を対象とした特別選考を新たに設けたところでございます。
今後も教職経験者も含めた優秀な教員の採用について研究し、採用に努めてまいりたいと思っております。
- 【山口議員】
- それぞれお答えをいただきました。
県職員の正規雇用化について、例えば消費者問題や、DV、不登校やいじめの相談や対応、さまざまな困難を抱える子どもたちが増えている学校現場など、やはり一定の経 験や能力とともに、人間関係・信頼関係・継続性も求められる職場も多くあろうかと思います。こういう職場では何よりも県民サービスを重視する、県民への対応を重視する 、そういう立場から、正規雇用の職員を増やしていただきたいと思うところであります。ぜひ実現を求めます。(経済的支援)
次に子育てへの経済的な支援について質問いたします。
県の調査でも、出産については、「理想の子どもの数」第一位は3人で44.9%、二位は2人で39.6%です。しかし、「予定の子どもの数」は1.84人と下回って おり、その理由は「子育てや教育にお金がかかりすぎる」これが60.7%でダントツです。
子どもが生まれて成人するまでの間、子育てには少なく見積もっても3000万円以上という莫大な費用がかかるといわれています。この子育てへの経済的な支援についてどう やって支援していくのか、今問われているところです。
先日私は、出生率が1.8をこえ全国から注目されている下條村へも行ってお話を伺ってまいりました。子どもの医療費の助成、若者定住住宅や給食費の補助など様々な子 育ての負担軽減のメニューが充実されておりました。そしてその結果、成人するまで子育てにかかる費用は、村では半分くらいで済むのではないかというお話もお聞きしまし た。
子育て世代の経済的な負担を軽減していくうえで、県と市町村が共同し、負担軽減の目標を設定することも検討すべきではないでしょうか。長野県なら子育ての負担は2割減 る、3割減る、こうしたメッセージは子育て世帯への支援への強いメッセージにもなると思います。県民文化部長にお伺いします。
- 【県民文化部長】
- 子育てについての経済的支援についてのお尋ねでございます。子育ての経済的支援といたしましては、理想の数の子ども特に3人以上の子どもをもてるようにと議員から もご指摘がありましたが、親の経済的負担を軽減するため、今年度県では市町村と協同する中で第3子以降の保育料に対する助成を始めておりますし、また子どもの医療費では 特に負担の大きい入院について対象年齢の拡大にも取り組んでまいりました。
また経済的理由で大学等への進学が困難な学生に対する入学金等の給付支援でございますとか、経済的負担を軽減する必要があると認められる者に対する奨学給付金の支給 による高等学校への就学支援など、経済的格差の固定化を防ぐ観点に立ちまして、経済的支援に努めているところでございます。
議員からは対策を立てる上でも目標の設定と市町村との協同というような話でございましたけれども、子育て費用に対する経済的支援の割合について目標を数値を立てると いうことにつきましては、おのおののご家庭の経済状況等が異なります中、子育てにかける費用も一律ではないということもございまして、また施策はその必要性、ニーズが あって作り上げていくということでございまして、最初から金額ありきと申しますか、割合を設定するなかでということではないのかなというふうに思っているところでござ います。
ただ対策を推進する上で、目標設定をして進めていくことは大変大切なことでございますので、総合戦略の中では理想の子どもの数が持てない理由として経済的負担を掲げ た者の割合を現状の6割から低下させることを評価指標に設定してございまして、県といたしましてはこの目標達成に向けて努力をしてまいりたいと考えているところでありま す。以上でございます。
- 【山口議員】
- 経済的な負担では、子どもの教育にかかる負担の軽減を求める声も切実です。教育に関わって以下4点について教育長に質問いたします。
①小中学校でかかる学用品や学校給食費について。現在、負担額はどれくらいになっているでしょうか。
②運動着や上履きなど学校指定の見直し、書道セットや彫刻刀、そろばんなど、再利用や学校予算での購入について、現場や父母と話し合いながら検討していくべきではない かと思いますがいかがでしょうか。
③子どもたちの貧困が広がり、給食費を払えない世帯が増加しております。家庭で満足な食事がとれないために学校給食が主な食事になっている子どもさえ生まれていると言 われています。学校給食は、今日では「食育」――人間生活の基本となる食事、食文化を支える教育の柱のひとつになっています。
憲法26条は「義務教育は、これを無償とする」と明記されています。この憲法の精神にたてば、学校給食も無償とするのが本来ではないでしょうか。
兵庫県相生市は、幼稚園から小中学校すべて無料に、群馬県前橋市や安中市は第3子以降が無料になりました。すでにこうした無料や一部負担軽減を実施している自治体が50 以上に及びます。長野県だけ、市町村だけでは財政的には困難があるとしても、県と市町村が協力して推進・実施していけば、給食費の負担の軽減、無料化も実現可能ではな いでしょうか。④次に通学定期代について伺います。
通学定期の負担も家計に重くのしかかっているところです。例えば、長野市の戸隠営業所から長野駅までのバスの通学定期は、一か月34,500円、鬼無里からは36,000円、新 町からは36,000円。3年間で100万円、兄弟二人なら200万円になります。
こうしたなかで、独自の補助も始まっています。信濃町は、しなの鉄道北しなの線等の開業により運賃が引き上げになることから、長野方面に通学する高校生の通学定期運 賃に対して20%の補助を始めました。ちなみに黒姫駅から長野駅までは、一か月22,960円の定期代ですから、その20%といえば約4500円になるわけです。おとなりの新潟県 妙高市も長野方面への通学定期に20%の補助を決めています。
経済的理由により就学困難な高校生に対して、遠距離通学費を貸与しています。今、すべての遠距離通学者に対し補助を行うことができないでしょうか、以上、教育長にお 伺いをいたします。
- 【教育長】
- 教育費負担の軽減に関しまして4点お尋ねをいただきましたので順次お答えを申し上げます。
①まず小中学校でかかる学用品、また学校給食費の負担額の現状についてでございますが、学用品につきましては文部科学省の子どもの学習費調査によりますと、公立小中学 校の9年間で約16万円かかることになっております。また学校給食費については県で集計してございます学校給食実施状況等調査によりますと、公立の小中学校の9年間で約50 万円かかると、このような状況でございます。②次に学校指定学用品の再利用の取り組みについてというようなお尋ねでございます。学用品、基本的には個人が利用するものでございますので、あくまで個人所有のものに なりますので、基本的には個人が購入するというような形になろうかと思いますけれども、経済的に困難を抱える家庭に対しては、生活保護や就学援助制度によって市町村が 支援を行っているところでございますし、また制服等一部耐用の十分あるものについては、それぞれの学校などにおいても卒業生が自ら使用したものをおいていきながら再利 用するというような取り組みをしているというのも聞いているところでございまして、そういったものをうまく活用しながらそれぞれ地域において取り組んでいただくことが 必要なのかなと思ってございます。
③続いて給食費の無償化についてでございますが、給食費の無償化につきましても今申し上げましたように経済的に困難を抱える家庭に対しましては、生活保護や就学援助制 度によって市町村が支援を行っているところでございまして、今後ともそういった支援制度の周知に努めてまいりたいというふうに思ってございます。 しかしながら、すべての子どもの給食費を無償にするということに関しましては、給食自体は基本的には給食にかかる例えば調理に要する人件費等については公費で負担をし 、保護者に負担をしていただくのはその食材に係るもの、これは学校に通わなくとも家庭においても当然食材にかかる費用というのはかかっているわけでございまして、そう したような性格のものでございますので、経済的困難を抱えていない家庭を含めてすべての給食費を無償にするということは憲法も要請していることではないというように思 っておりますし、その実現は困難と考えております。
④4点目は高校生の通学定期代の補助についてでございます。議員ご指摘のように現在経済的理由によって就学が困難である者の高校への通学費の負担を軽減するために、県の 教育委員会では遠距離通学費の一部を無利子で貸与しているところでございます。すべての生徒に対してというお尋ねでございますが、高等学校の場合は義務教育ではござい ません。高等学校に行くかどうか、またどの学校を選ぶかということについても必ずしも義務的になっているわけではございませんので、経済的に困難を抱える家庭以外に対 しそうした支援をするということについては、私ども考えていないところでございます。以上でございます。
- 【山口議員】
- 今答弁いただきました。
高校生の通学定期への補助についてです。現在この定期代の負担が重いこともあり、またバスの便も悪くなっているなどもあって、親御さんが送迎している家庭も増えてい るとお聞きしています。それは、父母のまさに重い負担だと思うわけです。公共交通の維持、そして公共交通の存続にとっても、ひいては地域の維持・存続にとっても、通学 定期への補助というのはこれから大事な施策になっていくのではないかと思うわけであります。教育長並びに関係の部局においても、再度ご検討をお願いしたいと思います。(児童相談所の体制)
次に貧困、虐待など困難を抱えている子どもや家庭への支援体制について伺います。
県内でも生活保護の保護率や就学援助制度の対象が広がってきております。こうしたなかで、とりわけ児童虐待の増加は深刻な事態だと指摘されています。長野県内の児童 虐待の原因、児童相談所への相談数の推移や今後の見通しについて、県民文化部長にお伺いをいたします。
- 【県民文化部長】
- 児童虐待の原因および相談所への児童虐待の相談数の推移等のお尋ねでございます。児童虐待の原因と致しましては、核家族化や地域のつながりが希薄化してきたこと によりまして、家庭での子育てが孤立しやすくなっている面があることが指摘をされているところでございます。また現在社会情勢、家庭を取り巻く環境が変わるなか、生活 上のストレス等が増大し虐待のリスクが高まっていることも否定できないところと考えてございます。
児童相談所におきます児童虐待の相談対応件数でございますけれども、平成24年度に1,016件、平成25年度に1,358件、平成26年度には1;638件と3年連続で過去最高を更新し ている状況でございます。
今後の見通しでございますけれども、児童相談所が受け付ける相談件数については、児童をめぐる状況が大きくは変わらないと見込まれること、また児童虐待に対する認識 の高まり等から、同様の傾向が続くのではないかと考えているところでございます。以上でございます。
- 【山口議員】
- ただいまご説明いただきました。
平成24年度1016件が25年度は1358件、そして26年度は1638件、これほどまでに急増しているのかと思うと本当に胸が痛みます。
児童相談所について、こうした相談が増えていることは、やはり闇に沈んだままの虐待がまだまだたくさんあるということ、計り知れないということの現われだと思うわけ です。子どもたちは人権侵害などの様々な困難を抱えるリスクが高くなっています。
そこでお伺いをいたします。相談を受け支援する児童相談所の役割もますます重要になっています。児童相談所の体制や活動の強化は図られているのでしょうか。
児童福祉司のみなさんのレベルはすでに高いと感じておりますが、さらに質の向上をめざすことはできないでしょうか。県民文化部長に伺います。この間、児童相談所の現地調査などでもお伺いをしてきました。激増する相談に体制が追いつかず、「業務の優先順位で上からこなさざるを得ない。子どもたちに丁寧に手 を入れたくてもなかなかできない」、「貧困の連鎖を断ち切るためにここで対応したいと思っても手が回らない」、「職員が多忙で健康も心配だ」。こうした声をお聞きして まいりました。
3月に県が策定した「ながの子ども子育て応援総合計画」では、児童相談所の相談体制・専門機能の充実・強化などが位置付けられています。カナダやイギリスで児童福祉 司1人当たりの担当ケース数が約20件と言われています。日本は100件を超えています。
県民文化部長にお伺いをいたします。この児童福祉司の増加、児童相談所の体制の強化は図られているのでしょうか。ご答弁をお願いします。
- 【県民文化部長】
- 児童相談所の体制の強化に関するお尋ねでございます。お話がございましたように児童虐待相談の対応におきましては、子どもの生命も左右することがあることを深く 認識し、子どもの最善の利益を念頭において職務を遂行することが求められていると認識してございます。
加えて近年相談対応件数の増加とともに児童相談所の繁忙度が急速に増している状況にありますことから、児童福祉士や児童心理士などの職員体制につきましては、県全体 が職員削減に取り組むなか、平成22年度の83名体制から現在は90名体制へと徐々にではございますが増員するなど体制の強化を図ってきたところでございます。
今後につきましては、職員の増員だけではなく相談、援助の質の向上をはかることも大変重要と考えてございまして、経験年数に応じました研修や事例検討を通じまして、 実践的な対処スキルを習得する等職員の専門性の向上にも意を用いてまいりたいと考えているところでございます。
- 【山口議員】
- ご答弁をいただきました。平成22年83人が現在90人ということでした。しかしこれは残念ながら増え続けている相談件数には追いつかない数だと思います。ぜひ目標・ 計画を明確にして、児童福祉司の増員に努めていただきますことを要望いたします。
3.県立短期大学の4年制化について
- 【山口議員】
- 県立短期大学の4年制化について伺います。
新大学のポリシーにあるグローバルやイノベーションは確かに大事かもしれません。しかし、長野県の財政を投入し運営していく公立大学として、長野県の地域経済、県民 の食と健康、子どもたちの保育のプロフェッショナルをどう生み出すのか、新大学の理念にしっかりと位置付けるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
そのことをお伺いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
- 【県立大学設立担当部長】
- 新県立大学における教育・研究についてのお尋ねでございます。新しい県立大学では議員ご指摘のような長野県の発展に貢献できる人材を育成するため、現在専門部会 で金田一学長予定者を中心にカリキュラムの検討を行っております。
具体的には英語集中授業、学生全員が参加する海外プログラム、ディスカッション重視の総合教 育、ゼミ形式の少人数教育、人間形成の場を目指す一年次全寮制などを通じて、ひとり一人の資質に合わせた身に付く教育を行う予定にしております。また長野県の特徴であ る健康長寿社会に貢献できる力の習得に向けて健康社会マネジメントプログラム、仮称ですがこれを配置し、学生が学部学科に拘らず履修できるようにする方向で検討が進め られております。こうした教育を行うことにより、県内の地域や企業で活躍することができる人材育ててまいりたいと考えております。現在新大学の教育・研究を担う教員の選 考を進めているところであります。熱意ある教員の皆様方に地域課題を解決する研究、地域を担う人材育成の両面で取り組んでいただき、本県に貢献できる大学としてまいり たいと考えております。以上でございます。