2016年6月定例会 藤岡義英議員一般質問
1.熊本地震を受けての今後の防災対策について
- 【藤岡議員】
- 日本共産党県議団の藤岡義英です。順次質問いたします。
災害対策について質問します。東日本大震災から5年。そして4月には熊本地震が発生しました。お亡くなりになられた方々にご冥福と、全ての被災者の皆様に心からのお見舞いを申し上げます。(1)政府は4月15日、特に女性や子育て家庭にとって、被災地での避難生活を安全・安心なものとし負担を緩和することが重要として、「男女共同参画の視点からの避難所運営等の災害対応について」という通達を出しています。
避難所に対するプライバシーの確保、入浴および洗濯の機会確保をはじめ、生活環境の改善とそのための設備・備品を確保するとしています。
また、栄養バランスの確保や適温食の提供、福祉避難所を設置など、これまでの震災の経験を踏まえた対策が重視されています。
しかし、「一日一食しか食べてない」など、食料が被災者に行き届かない、福祉避難所も一般の避難者が殺到し機能せず、別の施設で対応したとの報道もあり、現地の実態とかけ離れていたようです。長野県としてもこの通達を反映させた新たな災害対策に改善がなされるべきと考えますがいかがでしょうか。例えば、仮設トイレ、間仕切り用パーティション、その他生活必需品等の物資の備蓄はされているかも含めて、危機管理部長にお聞きいたします。
(2)長野県においても今回の地震のような災害も今後想定される中、避難場所に指定されている建物の耐震化対策について、更なる見直しの必要性を感じますがいかがですか。熊本地震の被災地に見られるように、どうしても車中泊、テント泊という事態も想定されると思います。テントや仮設住宅の準備、それらの設置場所の確保が必要だと考えますがいかがですか。危機管理部長にお聞きいたします。
(3)これまでも日本共産党県議団は県産材を生かした木造の仮設住宅の研究・普及促進を提案してまいりました。熊本県は全国木造建設事業協会と災害協定を結び、木造仮設住宅を建設するとりくみをすすめています。長野県もそうした協定を結んでいますが、木造の仮設住宅については、実績は今のところなしと認識しています。その協定をさらに発展させ、研究と万全の備えをより進めるべきと考えますがいかがでしょうか。建設部長にお聞きいたします。
(4)私も4月21〜23日に熊本市や御船町へ支援物資を届けに行ってまいりました。
御船町の避難所では、震災直後から全国からボランティアの方々と町の職員が連携して支援物資の仕分け、そして各避難所へ配送、がれき撤去などの活動に取り組まれていました。
災害直後からの連携は珍しいケースで様々試行錯誤もあるようでしたが、あらたな希望ある取り組みとして注目しました。長野県はすでに市町村との連携を強化されていると認識していますが、行政とボランティアとの連携も発展させていく必要があると思います。その点はいかでしょうか。これは健康福祉部長にお聞きいたします。
- 【危機管理部長】
- (1)熊本地震を受けての今後の防災対策につきまして、私から2点お答え申し上げます。まず男女共同参画の観点から必要な物資の備蓄についてのご質問です。
熊本地震におきましては避難者が多数発生し長期化する中で、避難所における女性やこども、高齢者等への配慮が課題となり、プライバシーの確保や衛生環境の改善が必要となりました。
長野県では大規模災害に備えて、松本広域公園内の防災備蓄倉庫にプライバシーの確保に必要なマルチルームや簡易トイレ等の生活必需品の備蓄を行うとともに、長野県建設機械リース協会等のリース業者やホームセンターなどの企業、長野県商店会連合会等の業界団体と協定を締結して、災害発生時の必要な物資の確保を行っているところでございます。 今回の熊本地震では長野県からもチーム長野の枠組みで備蓄物資を支援物資として搬送したところでございますが、熊本市が要望していた生理用品や大人用おむつなどは数量が限定的となりました。今後女性や高齢者等の視点から、備蓄物資の種類や量も検証を行ってまいりたいと考えております。(2)2点目の避難場所の耐震化、車中泊の想定、仮設住宅の用地の事前準備等でございます。熊本地震では、避難所に指定されている施設等が損壊し使用できなくなるなどの事態が生じましたが、長野県内の避難場所に指定している文教施設、体育館、公民館等の耐震化率は、平成27年3月末時点ですけれども92.9%で、全国平均の91.7%を若干上回っている状況です。しかし耐震化されていない施設もございますことから、第2期の長野県耐震改修促進計画、および長野県強靭化計画におきまして、一定規模以上の学校等の耐震化率の目標を100%に設定するなど、着実に向上化させてまいりたいと考えております。
熊本地震では震度7が2回発生したことに加えまして、余震の発生回数が多く、余震への恐怖心や他の避難者への配慮、プライバシーの確保等の理由から、自宅や避難所等の建物内に入ることを躊躇し、車中泊やテント泊等が発生している状況でございます。
県では、長野県テントシート装飾工業組合やプレハブ建築住宅協会、全国木造建築事業協会および県建設協会と、テントや応急仮設住宅の確保に関する協定を締結しております。
また、仮設住宅の設置場所の確保につきましては、平成25年12月時点でございますけれども、発災時の建設を円滑に行うことを目的に市町村の建設候補地の取りまとめを行いましたところ、選定済みの市町村は56、候補地総数330という状況でございました。
今回の熊本地震を受け、備えが十分であるかどうか、市町村や関係団体とともに、点検を改めて致しまして必要な改善を行ってまいりたいと考えております。
- 【建設部長】
- (3)県産材を生かした木造仮設住宅についてのお尋ねでございます。
木造仮設住宅につきましては、一般社団法人の全国木造建設事業協会および長野県建設業協会と、それぞれ災害時における応急木造住宅の建設に関する協定を締結しております。
これらの協定における、木造仮設住宅の1か月あたりの供給可能戸数は、全国木造建設事業協会は100戸程度、長野県建設業協会では270戸程度となっております。
またこれらの協定では、柱、梁などの構造材や外壁材に県産材のマツやカラマツを用いるなど、できる限りの県産木材の活用を行うこととしております。
災害発生時において早期に木造仮設住宅を着工できるよう、県産木材や大工技能者の確保等について、引き続き協定者と準備を進めてまいります。
- 【健康福祉部長】
- (4)災害時におけるボランティアとの連携についてのお尋ねでございます。
県ではこれまで災害ボランティア活動の受け入れ調整にあたる市町村社会福祉協議会のコーディネート力の強化を図るとともに、県社会福祉協議会による災害ボランティア登録者への情報提供等を支援するなど、ボランティアとの連携強化に取り組んでまいりました。こうした取り組みの効果もあり、平成26年11月の神城断層地震の際には、白馬村、小谷村の社会福祉協議会に設置した災害ボランティアセンターが復興支援のコーディネートを行い、県内外からのべ2109名のボランティアの皆様に被災者支援を行っていただきました。
今回の熊本地震でも、被災者の多様なニーズにこたえるため、多くのボランティアが活躍されておりますので、県としても今後の大規模災害の発生に備え、引き続き災害ボランティアの事前登録を呼びかけるとともに、平時の訓練や研修会などを通じ、災害ボランティアグループや団体等との連携をいっそう強化してまいります。
- 【藤岡議員】
- ぜひ、熊本地震を教訓にしながらさらに防災・减災対策の強化を、また熊本地震の被災地支援につきましても、引き続きのご尽力をお願いいたしまして次の質問に移ります。
2.長野県子どもを性被害から守るための条例案について
- 【藤岡議員】
- 子どもを性被害から守るための条例案について質問いたします。
条例案そのものが6月10日に発表されましたが、定例会直前であり公表後全県民的な議論が尽くされたとはいえません。また同日発表されたパブリックコメントにつきましても県議会での十分な分析は尽くされていません。これで7月1日に成立させるというのはあまりにも乱暴ではないでしょうか。知事にお聞きいたします。県は性被害関連犯罪の中で、5つの法律で検挙された人数が増えているとし、処罰規定が必要と主張されています。しかしこのデータを根拠とする主張には二つ問題があります。一つは県が、「処罰規定が抑止力になる」と主張していながら、すでに5つの法律によって処罰されるはずの犯罪が増えているという実態。つまり皮肉にも処罰が「抑止力」になっていないことを客観的に示すデータとなっていることです。もうひとつは性被害の実態把握はそもそも困難であるという専門家の指摘であります。つまり、何ら説得力をもたないデータです。
処罰規定の効果について科学的・客観的データが示されないままでは、県民的理解は得らないと考えます。知事は、議会で繰り返し、「県民のご理解が得られれば」と説明されてこられましたが、このまま議会に丸投げして良しとされるのでしょうか。知事にお聞きいたします。
- 【阿部知事】
- 子どもを性被害から守るための条例案につきまして、まず条例案公表後の議論の時間が短いのではないかというご指摘でございます。
何度も申し上げておりますけれども、この子どもを性被害から守るための検討、大変長い間議論してきたわけであります。一定程度具体的な形になってきたのが条例のモデルの段階、特にご議論いただいている罰則の規定は条例のモデルの段階だと思いますが、これについては昨年の9月に条例のモデルを公表させていただいてから、県議会の各定例会においてもご議論いただいたところでございます。
また本年2月には、これは執行機関として条例制定の必要があるとして基本的な方針をお示しをしました。そこでは、かなりこれまでの取り組みとか私どもの考え方、詳しく述べさせていただいたところでございますし、また条例骨子案をお示して2月県議会ではこれを基にご議論いただいたところでございます。
その上で、2月県議会でのご議論を踏まえて、県民運動を定義する等の一部修正をおこなったうえで、一か月間パブリックコメントを実施し、その間並行して県政タウンミーティングも行い、県民の皆様方と丁寧な対話を行ってきたところでございます。
パブリックコメントの結果につきましては、通常、今までの私どもの例からすると、議会の開会と同時に公開をさせてきていただいていると思いますが、今回議案の提出に先立ちまして頂いたご意見の全文を6月1日に公開をさせていただきました。
また6月10日の段階でパブリックコメントに対する県の対応につきましても公表させていただいて、これらについては通常の条例より早い段階でお示しをさせていただいたところでございます。
こうしたことも含めて、この条例につきましてはこれまで長野県が制定してきた条例のなかでもとりわけ丁寧に検討してきたものと考えておりまして、乱暴ではないかというご指摘は当たらないのではないかと考えています。
それから県民の理解であります。先ほども申し上げましたが、パブリックコメントでは、広い多くの県民の皆様方の、推進というか、待ったなしで早急にというご意見も含めて頂戴をしてきているところでございます。処罰してきても増えてきているではないかというお尋ねありましたけれども、これは子どもたちの環境が非常に大きく変化してきていることの表れではないかと思っておりますし、また表面化してきていない、表面化しづらいということを我々直視して対応していかなければいけないと考えております。
そういう観点で今回条例案を県議会にお示しをさせていただきましたので、ぜひともご理解をいただきたいと思っております。
- 【藤岡議員】
- 賛否の分かれる条例案ですから最後まで丁寧に進めてほしいと思います。
時間をかけて議論してきた場は専門委員会であり、ほとんどの県民は知らされていません。県民的議論はまだ始まったばかりだと私は考えております。条例推進を意図する県が行ったパブコメでは4分の3が賛成となっているとのことですが、長野県世論調査協会の4月に行った県民800人余を対象にした調査では「県の新たな条例による規制」が必要は14パーセントにとどまっています。
また、この間県民文化委員会で行った現地調査で子ども達をサポートする活動に取り組む青年学生4人と懇談した時に、条例の中身を理解していると答えたのはたったの1人。当事者となる青年には全く浸透していないな、このことを痛感しました。条例制定の機はまだ熟していないのではないですか。知事にお聞きいたします。処罰規定の内容についても質問します。まず、条例案の第16条を読むと真摯な恋愛は処罰しないと解釈してしまいそうになりますが、真摯な恋愛であれば実際に処罰対象にはならないのでしょうか。県民文化部長にお聞きいたします。
- 【阿部知事】
- 世論調査協会の調査あるいは学生の皆様方との対話を踏まえて、機はまだ熟していないのではないかとのご質問でございます。
この世論調査協会の調査については、私は会見で、この調査が本当にこのやり方でいいのでしょうかということを指摘させていただいたこともございます。まず、私としてはこの調査の内容が、まず条例制定賛否ありますということでニュートラルに聞かずに予断を与えてしまっているというところもありますし、これ選択肢が7つあるんですけれども、その中でも2つしか選べないと、自由に3つも4つも選べないというなかで、条例の部分については非常に下の方の位置に置かれています。
また、これは新たな条例による規制ということしか書かれていません。今回の条例については再三ご説明させていただいておりますように、規制だけを意図している条例ではなくて、性被害全般、教育から被害者支援まですべて対応している条例であるにも関わらず、条例イコール規制というような形の選択肢になっているわけでありまして、また昨日もご答弁申し上げましたけれども、今回の条例は、私は他県のいわゆる青少年保護育成条例とは相当違う条例でありますが、単に新たな条例による規制ですと、これも私は従前から気になっておりますけれども、他県のいわゆる青少年保護育成条例を想起させかねないというようなこともありまして、会見の場でもこの調査については、率直に申し上げて、額面どおり受け取りづらいなというふうに考えているところでございます。
私の方も、若い世代の皆様方も含めて丁寧な対話をさせてきていただいたわけでありますが、私が受けている実感として申し上げれば、先ほどのパブリックコメントの結果も概ね4分の3の方々からは前向きなご意見でありますし、私が特に子どもの支援をされている方々と対話した感覚では一刻も早い条例制定を望まれている方が多いと考えております。そうしたことを考えれば、条例制定を、これ以上議論に議論を重ねるなかでいたずらに先延ばしをすることはできないというふうに考えています。
- 【県民文化部長】
- 条例案の第16条の關係でのお尋ねでございます。
条例案の第16条では、「大人は、真摯な恋愛を除き、判断未熟な子どもに対し、性行為又はわいせつな行為を行うことは、子どもの成長発達を見守り、支える責任として許されないものであることを自覚しなければならない」と規定しているところでございます。この規定は訓示規定でございまして、具体的な処罰対象行為を示しているものではなく、罰則が付されているものでもございません。条例案の処罰規定は、真摯な恋愛ではないことは構成要件とはしておりませんで、あくまで「威迫、欺き、困惑または困惑に乗じて行う子どもへの性行為等を構成要件としているものでございます。
- 【藤岡議員】
- 世論調査ですが、2つの選択肢で14%しか選ばれなかったという事実を誠実に受け止めるべきだと思います。
部長の答弁についてですが、つまり、真摯な恋愛であるかどうかというのは処罰の構成要件としては位置づけていないということでありますが、これは真摯な恋愛であってもなくても関係なく、威迫、欺き、困惑があったと被害届が出されれば、捜査の開始、処罰の対象とするということでありますね。つまり「真摯な恋愛であっても規制する場合がある」ということでしょうか。明確にお答えください。県民文化部長にお聞きいたします。
- 【県民文化部長】
- 条例案の処罰規定が真摯な恋愛でないことを構成要件としているものではないことは、先ほどもお答えした通りでございます。
処罰に値する行為か否かは、先ほど申し上げました構成要件に該当することに加えまして、違法性や有責性について慎重に勘案して判断されるものというふうに考えているところでございます。
- 【藤岡議員】
- はっきりお答えいただきませんでしたが、つまり簡単に要約しますと、真摯な恋愛であっても規制する場合があるということなんですね。
ここで私、改めて質問いたします。実は同じ処罰規定の説明なのに、昨年11月議会では備前県議の質問に対して部長は、「真摯な恋愛を規制するものではございません」とはっきりお答えされておられます。
条例モデル案から処罰規定の部分は一切変更していないと何度も説明を受けてきました。にも関わらず、答弁が「真摯な恋愛は規制するものではない」と言ってみたり、「真摯な恋愛であっても規制する場合がある」となったり、これでは県民はどちらが本当か理解できなくなると思います。こんな状態で条例を制定するつもりでしょうか。もう一度県民文化部長にお聞きいたします。
- 【県民文化部長】
- 条例案の処罰規定では、真摯な恋愛ではないことは構成要件とはしておりませんで、あくまでも「威迫、欺き、困惑または困惑に乗じて行う子どもへの性行為」を構成要件としているものというところでございます。
- 【藤岡議員】
- 真摯な恋愛であっても規制する場合があるわけでありますが、この条例は、大変わかりにくいわけであります。基本的考え方のところでは、「真摯な恋愛をのぞき」と規定し、さも「真摯な恋愛」について捜査機関は介入しないかのような表現をしながら、実は罰則規定で、真摯な恋愛の下でも「威迫、欺き、困惑」があれば罰せられる場合があるよという内容になっています。「真摯な恋愛」は規制されないと多くの県民は誤解していると私は思います。これは大変危険だなと感じております。
では、真摯な恋愛関係の中で、「威迫、欺き、困惑」といった状態は存在しないのかであります。私は前回の2月議会で「恋愛は困惑だ」と申しました。困惑などは恋愛でもありうるという意味です。知事は「見解の相違だ」と答弁されましたが、果たしてそうでしょうか。今回は具体事例を出して質問いたします。
まず、一つ目。4月9日の県庁で開催されたタウンミーティングでも私お話ししました。「壁ドン」についてお聞きします。「壁ドン」とは、男性が壁際にいる女性に向かって壁に「ドン」と手をついて迫るシーンのことです。恋愛漫画やドラマ、CMでも恋愛表現の一つとしてこのシーンをよく目にします。この男女の恋愛の中で、「壁ドン」をされた。これ威迫ともとれる行為なんですね。通報があった場合はどうなんでしょうか。
2つ目、恋愛は困惑だ。困惑のある恋愛。よくあるケースは片思いの恋愛であります。子どもの側は大人に対して恋愛感情は最初はなかったけれども、しかし、大人の側が「好きだ!好きだ!好きだ!交際して欲しい」と熱く、激しく真剣に迫ります。子どもは告白されて、「ん?どうなんだろう?好き?かな?」困惑します。そういった駆け引きの中で、関係が結ばれる。その後、子どもは気持ちが冷めてしまい、「困っていた」となる。そのケース。
この2つの具体的事例について被害届があれば捜査機関による捜査が始まる可能性はありますか?ないですか?また、捜査が行われれば、「威迫、欺き、困惑」とされ処罰される可能性はありますか?ないですか?県民文化部長にお聞きいたします。
- 【県民文化部長】
- 壁ドンということでのお尋ねでございました。
壁ドンでお答えをさせていただきたいと思いますけれども、壁ドンが威迫行為に該当するか否かは、当事者のそれまでの人間関係でございますとか壁ドンが行われた状況等が関係をいたしますので、一概に結論できるというものではないというふうには考えているところでございます。
壁ドンの後に性行為またはわいせつな行為が行われまして被害者またはその保護者などから捜査当局に訴えがなされた場合は、昨日寺沢議員それから村石議員のご質問に警察本部長が答弁された通り、警察捜査は具体的な事案にそくして、法令に規定する構成要件に該当する事実があるか否かについて、証拠に基づいて判断するとともに、捜査に当たっては個人の基本的人権を尊重しつつ公正誠実に行われるとされていることからも、壁ドンが威迫行為であったか否かは一方の主張のみによることなく、公正に判断をされていくものと考えております。
- 【藤岡議員】
- 知事にもお聞きいたします。条例案が7月1日にも成立するかもしれません。ぜひ誠実に答えていただきたいと思います。
この2つのケースについて、今県民文化部長にもお聞きしました。同じこの2ケース、知事の場合はどう受け止めておられるでしょうか。被害者側が「威迫、欺き、困惑」だと申告すれば、捜査が始まる可能性はあるでしょうか?ないでしょうか?
そして、処罰の対象になる可能性はあるでしょうか?ないでしょうか?ぜひ明確にお答えいただきたいと思います。
- 【阿部知事】
- 壁ドンの話、私も藤岡議員がご発言されたときにその場に居合わせた者として申し上げれば、その時有識者の方は即座に、その発想がおかしいという感覚で、そうしたこと自体がおかしいんじゃないかという趣旨でご発言されたかと思いますが、そうした記憶はございませんでしょうか。私はその感覚が、正直あそこでそういう議論があったにも関わらずそういうお尋ねになってくるということ自体がいささか理解しがたいというふうに感じております。
もとより、部長も答弁申し上げました通り、具体的に処罰の対象になるかどうか、これは捜査の過程においても目的であったり手段であったり動機であったり対応であったり、こうしたことを勘案していくわけであります。
条例に書かれている部分というのは、何度も申し上げているようにこの構成要件を明確化するということで議論してきているわけであります。そういうなかで、この構成要件に該当しうる、している可能性があるというものかどうかということで申し上げると、今ご質問にあったようなものは構成要件に該当する可能性がないわけではないといわざるを得ないだろうと思います。
ただ、それは非常に両者間の関係であったり、どういう環境下で行われていたか、そうしたことがこれは捜査の過程でも明らかになってくるというふうに思いますので、今回の条例では基本的人権を尊重すると、そして捜査にあたってはそうした人権を尊重しつつ公正誠実に行うということになっているわけでありますので、藤岡議員のご質問は最初のところから非常にそうした我々のこれまで積み上げてきたこととは違う視点でご質問されているわけでありまして、いささか違和感があるというのが正直な思いでありますが、今申し上げたように、構成要件の該当可能性ということで考えればまったく該当しないわけではないだろうなというふうに思います。
ただ、それはもちろん具体的な対応、関係性、こうしたものを全体として判断したうえで、最終的には構成要件該当性のみならず違法性、それから責任、可罰性、そうしたことが総合的に判断されて、裁判の上では処罰の対象になるという形になると思います。
- 【藤岡議員】
- 大変重要なご答弁いただきました。それまでの人間関係によって判断されるといったようなご答弁をいただいたと思います。つまり「威迫、欺き、困惑」という被害届があれば、男女の関係に捜査が入る、真摯な恋愛だったかどうかが捜査されて、心の領域に踏み込まれる恐れがある、と私は認識しました。
私は内心の自由が侵害される、憲法違反の可能性がある捜査が始まると懸念しております。
また4月のタウンミーティングで報告された性被害者を支援されている専門家の方は、そういった考えは理解されないといったお話もあったと思いますが、その方がはっきり言われたことは、「壁ドン」は威迫に当たると思いますと、ハッキリ発言していただきました。
恋愛漫画やドラマ、CMなど、社会一般に定着している恋愛表現の一つ「壁ドン」これが、捜査対象にされ、罰せられるおそれがあるということを、私は皆さん認識していただきたいと思います。
そして困惑をともなう恋愛、片思いの恋愛ですね。ある法律の専門家は「恋愛は駆け引きだから」との話を思い出しました。この駆け引きそのものが処罰されるおそれがあると私は心配しております。
ここで、処罰規定について不安を抱く県民からのご意見を紹介します。 「同じ二人の間においてさえ、一方の心変わりによって客観的には全く同じ行為が、昨日までは喜びであり、今日からは犯罪になるおそれがあると思うからです。被害者側の故意の判定がどのように行われるかに不安があります」との意見をいただきました。
ある法律の専門家の方は、「紙一重で有罪になる」とも指摘されました。つまり冤罪を生む危険が明らかに存在するわけですね。
冤罪に関しても質問します。
6月1日の記者会見において知事から、「冤罪の危険があるから刑法から殺人罪を削除しようという議論はあるのですか」、とのコメントがあったと確認していますがこれはどういう意味でしょうか。その真意を教えていただきたいと思います。
- 【阿部知事】
- お答えします。まず、藤岡議員いろいろおっしゃっていただきますけれども、刑事事件の基本的な原則とか考え方、そうしたものをまず前提としてご質問いただかなければ、何でもかんでも構成要件に該当すればすぐ警察の捜査が入って、そしてそれが有罪になるというのは、あまりにも短絡的なご議論であるということを明確に申し上げておきたいというふうに思います。
私に対してご質問いただきましたのが、記者会見において、冤罪の危険があるから刑法から殺人罪を削除しようとする議論はあるのですかということ、これは記者との一連のやり取りの中で私はそういう発言をさせていただいております。その真意ということでありますが、私が何を申し上げたかお伝えした方がお分かりになると思いますので、冤罪の懸念についての一連のやり取りの中でありますけれども、冤罪の懸念があるということのみをもって処罰の対象にするべきではないという結論にはおそらく多くの人はならないという理解だと思います。
たとえば、殺人罪の冤罪の危険があるから刑法から殺人罪を削除しようという議論は、あるのだったら教えていただきたいんですけども、多分そういう議論はないのではないか。一部そういうご意見を主張される方もいるかもしれませんが、社会全体の感覚としてそういうものではないだろうと思っています。ということを申し上げたわけであります。
そもそも冤罪があるから罰則規定をつくらないということは本末転倒の議論だと私は思っておりまして、本来社会的に非難されるべきもの、処罰の対象にすべきもの、それは何かというものを考えたうえで、それに対して冤罪の懸念が仮にあるとすればそうしたものをどう抑止するかというのが、一般的な考え方ではないかという文脈で申し上げたところでございます。
- 【藤岡議員】
- 殺人罪については、殺人を犯せば罪となります。刑法の記述には曖昧な規定はなく冤罪はおこりえません。あるとすれば捜査段階でのものになるでしょう。
一方、県が提出した条例案に対して冤罪の危険性の指摘、懸念の意見がなくならないのは、捜査機関の能力があるとかないとかではなく、条例案の条文、「威迫、欺き、困惑」という曖昧な規定そのものにその危険性が潜んでいるからです。
子どもの性被害は絶対にあってはならない犯罪ですが、冤罪も絶対になくさなければならない犯罪です。「子どもを守るために、多少は冤罪が生まれても仕方がない」との考えだとすれば、それは権力側の立場に立った危険な考えであり、6月1日の会見での知事の発言は、県民に誤解を与える発言であると指摘したいと思います。
条例案の性教育の部分でも質問いたします。
全中高生への性教育が不十分であることは、この間のタウンミーティングや、私たち県議団で開催した意見交換会でも明らかにされてきました。現実を見れば、インターネットや雑誌等から誤った情報がもたらされ、子ども同士の性行為によって妊娠するというケース、中には誰の子どもかもわからないケース、という深刻な子どもの実態も出されました。
どの中高生も性被害を受ける可能性がある中、全中高生を対象にして教材を揃えた上で性教育の授業を行うことは出来ないのでしょうか。条例にも性教育について盛り込まれていますが、十分と考えておられるでしょうか。教育長にお聞きいたします。
- 【教育長】
- 全中高生を対象にした教材による性教育授業の実施についてのお尋ねでございますが、さきほど清水議員にもお答えしましたように、県教育委員会では子どもを性被害から守るためには性に関する指導の充実が必要だというふうに認識し、取り組みの内容を一新強化を図ったところであります。
教員による一方的な知識の伝達やしつけ的な指導ではなくて、児童生徒が自ら考え自ら判断できる力を育めるよう、新しい手引きや専門研修の内容を活用して、教員が授業を工夫していくことが重要であると考えております。この取り組みを継続しすべての学校現場に定着させることに努力をしたいと思っております。
- 【藤岡議員】
- 再質問いたします。学習指導要領では「安易に具体的に避妊方法の指導等にはしるべきではない」とするなど性教育に対して抑制的であり、学校現場では、性教育への取組が後退せざるを得ないのが現状であることは、タウンミーティングでも学校関係者から指摘されました。文科省のこうした姿勢を改めることを県としてもぜひ求めていただきたいと思いますがいかがですか。もう一度教育長にお聞きいたします。
- 【教育長】
- 文科省への要望についてのお尋ねでございます。
中高生の性教育に対する抑制的な姿勢ということだと思いますが、誤解の無いように現状を申し上げたいと思います。まず学校におきましては、学習指導要領に基づきまして発達段階に応じて指導を行っているところでございますが、高校生になりますと性行や避妊等も取り扱っているところでございます。
一方中学生の段階ですと、思春期を迎える時期でありまして、生徒による発達の差が大きい、また保護者の思いも様々でございます。そこで、集団で行う一律的な指導につきましては、妊娠の経過等は取り扱わないものとされておりますけれども、一方必要な子どもには個別指導ということで、個別に丁寧に指導をしているところでございます。
こういうことを考えますと、現段階においてただちに議員ご提案の、文部科学省に要請をするという必要はないというふうに認識しております。
- 【藤岡議員】
- 引き続き性教育をどう進めるか、この検討はぜひ行っていただきたいと思います。
性被害を受ける子どもがいる現状を「看過できない」「悪い大人をほっておいていいのか」と言った意見がございます。もちろんこの状態をほっておいていけないことは当然であります。
しかし、県や捜査機関が「悪い」と決めるものが、全て「悪い」ものにしてしまっていいのか?ここを全県レベルで真剣にトコトン考えないといけない。そう思います。
またここにきて真摯な恋愛を規制するのか答弁が曖昧だと私は感じました。これでは私は条例案に賛成できません。
長野県内で問題にされている性被害の実例は、インターネットを通じて呼び出されたケースがほとんどです。性の大切さやインターネットの危険性を学ぶ場が十分に保障されていないことが問題であると考えます。
「子どもを性被害から守るために、性被害をなくすために」どうするかを一致点に全県民的議論を行い、県民的合意をはかること。条例制定に固執するのではなく、まず最優先で子どもたちに自ら考え行動する力をつける場を保障するとりくみを県民と力を合わせて発展強化すること。以上のことを要望いたしまして一切の質問をおわります。