2016年11月定例会 毛利栄子議員一般質問
1.「学びの改革」基本構想について
- 【毛利議員】
- ①学びの改革基本構想について教育長に伺います。
構想案では、高校の枠組みの定義を「都市部普通高校」「都市部専門校」「中山間地校」「山間地校」と大きく4つに分類しています。また学ぶべき内容についても都市部普通高校は「探究的な学び」で学力の伸長をはかり、上級学校での学びの準備を、中山間地校や専門高校は地域や企業との連携を強化し、課題研究や地域学習をすすめキャリア形成を図るといった例が挙げられています。
これは、都市部で学ぶ生徒はしっかり学力をつけて上級学校をめざし、中山間地で学ぶ生徒はキャリアを身につけ、地域に残って地域のために役立てばいいとするものであり、立地場所によって学びの中身を機械的に分類し固定化しており、生徒の発達可能性を閉ざすことにつながり、高校教育の在り方としてはたして適切なのか。疑問を感じざるを得ません。県教委が県下の高校をこのような視点で俯瞰し、学びの中身まで決めつけていることは教育基本法が定めている「教育の目的」や「教育の目標」に即しても問題がありはしないか見解を伺います。②また、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」で示されている方向「郷土の歴史や人物等を採りあげた地域教材を用い、地域を理解し、愛着を深める教育により、地域に誇りを持つ人材の育成を推進し、地域力の強化につなげていく」にそって「探求的な学び」の核に「信州学」を置くとしています。自分たちの住む地域の歴史や風土、自然環境や産業などをきちんと把握することは重要であり必要なことは理解します。しかし全教科・特別活動・自主活動のすべてを含む全校統一的なものととらえるべきであるとして、全県一律に信州学を押し込もうとしていることは疑問です。各学校にゆだねられている教育課程の自主編成権を侵すことにはならないでしょうか。教育長の見解を伺います。
③特別支援教育について伺います。
中学校の特別支援学級に在籍した生徒の約7割が高校に進学しているとの記述があります。今年9月の調査結果によると、高校における医師の診断がある発達障害の生徒は915人、1、84%在籍しています。高校独自のスクリーニングをした生徒を加えれば全日制で1655人の3、4%、定時制では273人24、8%となり特別支援教育の強化は待ったなしの課題です。
高校における具体的な対応方向をどうするつもりでしょうか。平成30年から制度化される通級指導はどう進めていくのか。十分な準備期間と学校の理解が必要ではないか教育長のご所見をうかがいます。
- 【教育長】
- 学びの改革基本構想案についておたずねをいただいておりますが、今回お示ししているものはあくまでも基本構想の案でございまして、今後の本日の議論も含め、県議会でのご議論やパブリックコメント等のさまざまな御意見を踏まえて、今年度末の策定を目指しているものであることを申し上げまして、順次ご質問にお答えいたします。
➀まず、立地場所ごとに学びを分類化、固定化しているのではないかというご質問でございますけれども、都市部校、そして中山間地域校の枠組みは、あくまでも本県における立地の特性を生かして、望ましい学びの環境を整えようとするものであります。
議員引用の箇所でございますけども、その特性を活かして、各校が進めていく探求的な学びの推進方法の一例でありまして、高校の立地場所によって学びの中身を分類化、固定化するのではございません。➁次に、探究的な学びの核に信州学を位置づけることについてでありますが、信州学は地域に根差した探求的な学びの総称でありまして、その指導内容や単位数を指定するような独自の教科科目を指しているものではございません。探究的な学びは、次期学習指導要領の改訂の方向性にも示されている通り、変化の激しいこれからの社会を生きていく生徒たちが新たな社会を創造する力を育成していくためにふさわしい学習手法でありまして、教育活動全体を通じて、推進していくことが求められております。 各学校ではそれぞれの生徒や地域の特性を生かし、自校の生徒の力を最大限に伸ばすことができる魅力的な教育課程を編成することが肝要であり、その実現に向けて県教育委員会として支援してまいる所存でございます。
➂次に高校における特別支援教育の具体的な対応方向についてでございます。県内の高校には、発達障害の診断を受けている生徒が、御指摘のように1.84%在籍しているなど、高校における特別支援教育への取り組みは重要な課題だというふうに考えております。
これまでも、インクルーシブ教育推進のためにすべての学校で校内委員会を設置し、特別支援教育コーディネーターを中心に、学校全体として特別支援教育に取り組む体制づくりを推進してきているところであります。また県としても、特別支援教育に係る研修を毎年実施するほか、研究指定校の施設等、多様化する生徒への支援体制の整備にも取り組んできてまいりました。
今後、中学校と高校との連携強化、特別支援学校のセンター的機能の活用、専門機関とのネットワークの活用等に努めるなど、各校における特別支援教育の体制づくりを引き続き推進してまいりたいと考えております。
通級指導についてでございますけれども、現在、箕輪信州高校が平成26年度から3年間、通級指導のモデル校として通級指導を実施しております。このモデル事業の成果や課題を県内すべての学校で共有することで、通級指導に対する各校の理解を深め、国の動向を注視しながら、導入に向けてしっかり研究準備を進めてまいりたいというふうに考えております。
- 【毛利議員】
- ➀学校の再編基準について教育長に伺います。第1期再編では適正な学級数は1学年6学級を標準とし、2学級から8学級を配置するとして柔軟な考え方をもっていました。今回は1学年6学級以上が望ましく、8学級が理想的としています。しかし8学級はあまりに過大であり、現状では県下に上田市内3校、松本市内3校の6校しかありません。これからますます少子化が進んでいくというのに過大学級が望ましいというのはあまりに現状を無視した考え方ではないでしょうか。8学級が理想的という考え方の根拠をお聞かせください。
➁また、探究的な学びが必要と強調するのであれば、他県ではすでに24の県で40人以下学級を実施してきめ細かな対応をしているのに、なぜ長野県では少人数学級を視野に入れないのでしょうか。高校においても30人規模学級を学校の存在がまさに地方創生に直結している中山間地の学校から導入するべきだと思いますがいかがでしょうか。
➂実施方針をどう作っていくかについて伺います。検討スケジュールでは「実施方針」を平成29年10月に公表し、30年3月には策定していくとしています。しかし、県が示したものに対して各方面から意見を聞くのみで、トップダウン的な進め方の手法であり問題がありはしないでしょうか。
県民参加で検討・協議できる機関を作り、策定していくプロセスをとるべきではないか教育長の見解を伺います。
- 【教育長】
- ➀まず、1学年6学級以上が望ましく、8学級までが理想としている根拠ございます。議員ご指摘の1学年6学級以上が望ましく、8学級を理想的としている基準は、都市部の普通高校を対象としたものであります。
都市部普通校は、規模の大きさを生かした学校づくりを通して新たな社会を創造する力をはぐくむ環境を目指すものであります。
生徒の進路希望や進学希望等に対応するためには、多様な科目を開講できる教員数の確保が必要であります。地歴公民や理科という教科では、それらがさらに日本史、世界史、地理、あるいは物理、化学、生物等の科目に細分されますけれども、現在の教員配置のルールからすれば、6学級240人規模の学校では、それに対応する専門性を有する教員の配置が可能となります。さらに8学級320人規模の学校になりますと、そうした科目ごとに教員の複数配置を実現できまして、生徒の進路希望や学習ニーズに応じた教育活動の展開が一層重視するものと考えられます。
また、これだけの規模であれば、特別活動・自主活動では、クラブ活動、クラスマッチ、文化祭等が活性化し、生徒が希望する多様な活動が可能となるということから、このようにしたところでございます。➁次に、探究的な学びと少人数学級、および30人規模学級の導入についてでありますが、探求的な学びは自ら課題を見つけ、自ら問題の解決に当たり、そこから新たな課題を見つけていくという学習のプロセスであります。各人がそのプロセスを踏むことで学びを深めていくことが肝要でありまして、学級の人数とは必ずしも結びつくものではないというふうに考えております。
また、高校のクラス編制はこの基準により1クラスの人数を40人としておりますけれども、実際の授業では、学級とは別に必要に応じて少人数の学習集団を形成して、習熟度別授業や選択制授業等を実施しておりまして、すでに生徒のさまざまなニーズや多様な進路希望にこたえる教育活動を行っているところでございます。➂次に、学びの改革実施方針において県民参加の策定プロセスを取ることへの所見でございますが、この基本構想案、今お示しておりますけれども、これについては、パブリックコメントや議会のご議論など、さまざまなご意見を踏まえて来年3月には基本構想として決定する予定でありますが、来年度はこの基本構想をもとに、地域懇談会や産業界等との意見交換会を開催した後に、10月に各旧通学区ごとの方向性を定めた実施方針案を公表し、さらにパブリックコメントや地域懇談会等で広く県民の皆様からのご意見をお聞きし、実施方針に反映させていくこととしております。
このように実施方針を決定するまでには広く県民のご意見をお聞きし、県民参加のプロセスを踏んでいくこととしております。さらに、実施方針決定後は、地域の総意を得るべく、地域ごとの検討を丁寧に詰めていく所存でございます。
- 【毛利議員】
- 高校における少人数規模学級の導入については、習熟度別に学校で学習をしていることによって、余り必要ないというふうなご答弁でございましたけれども、高校の先生方が今、格差と貧困がこれだけ進行するもとで、やっぱり1人1人の子どもたちに即した進路指導や、それから生活指導していく上でも、少人数学級を私は絶対に必要だというふうに思いますので、ぜひ今後検討していただきたいと思います。
あわせて、現在パブコメを12月10日までということで実施をされておりますけれども、往々にしてパブコメでいろんな意見は聞くけれども、当初予定したものに加えないというふうなことがありがちなので、ここはぜひ、パブコメの中身をよく精査していただいて、県としても取り入れていただくよう教育長にお願い申し上げ、次に移ります。
2.長野県地方税滞納整理機構の徴税の在り方について
- 【毛利議員】
- ①平成27年度、機構が構成団体から引き受けた件数や滞納額、徴収実績はどうなっているのでしょうか。そのうち差し押さえなどによる滞納処分はどのような状況になっているのか総務部長に伺います。
②納税は憲法に示された国民の義務です。支払い能力があるのに払わない一部悪質な滞納者を解決することや、きめ細かい滞納整理の努力で税収を確保することは大事なことだと認識しています。しかしもう一方で地方税等の滞納が増えている背景には厳しい経済・雇用情勢の中で失業や倒産、低賃金や病気などがあり、払いたくても払えない境遇に陥っている皆さんも少なからずおられます。格差と貧困の広がりの中で下流老人、ワーキングプア、貧困女子、奨学金破産、医療・介護難民など、生活苦を表現する言葉が飛び交っています。
滞納者の多くは地方税や国保税だけが滞っているのではなく、公共料金やライフラインにかかわる料金なども滞っている場合があり、多重債務に陥っている場合も少なくありません。
地方税滞納整理機構の発足目的は大口滞納者、悪質滞納者に対応するとのことだったはずですが、最近、町と分納の相談をしていたのにいきなり機構に送られわずかな預金さえ差し押さえにあった、給料の差し押さえにあった、売掛金を差し押さえられた、一括での納税を迫られたと様ざまな事態が続発しています。機構は納税者の失業や病気、障害など個別の事情に即した丁寧な納税相談に応じているのでしょうか。
国税徴収法にさだめられている「徴収猶予」や「換価の猶予」「超過差押えの禁止」など、ケースに応じて履行されているのか。差し押さえありきの強権的なとりたてになってはいないか総務部長にうかがいます。
- 【総務部長】
- 長野県地方税滞納整理機構の徴税のあり方についての御質問に順次お答えいたします。
➀まず、滞納処分の状況についてでございますが、長野県地方税滞納整理機構は、市町村税および県税の未収金縮減を目的といたしまして、県と県内全市町村を構成団体とする広域連合として、平成22年12月に発足し、翌年4月から業務を開始したところでございます。
平成27年度に機構が県や市町村の構成団体から引き受けた件数は、1028件、滞納額は23億8457万円、徴収実績は8億1975万円であり、このうち、預貯金の差し押さえ等、滞納処分による徴収は1011件、徴収金額は2億6320万円で、徴収金額全体の約3割となっているとこでございます。
➁次に、徴収のあり方についてでございますが、この機構に移管される案件は、市町村において交渉を行う中で対応が困難とされた案件で、機構では、多くの納期内納税者の視点を念頭に置きつつ、税の公平性を確保するという観点から強い使命感を持って滞納整理に当たっていると聞いております。
本県の場合で申し上げれば、税の徴収にあたっては、あくまでも個別の滞納者の生活状況、財産状況等を客観的に踏まえた上で、議員ご指摘の差し押さえなどの滞納処分により徴収するのか、徴収猶予や換価の猶予、または滞納処分の執行停止等の徴収緩和の措置をとるのか、法令に基づき、ケースに応じて適正な執行を努めるところでございまして、その点については、機構も変わらないと考えているとこでございます。
- 【毛利議員】
- いくつか例をご紹介します。
〇58歳の男性。派遣切りにあい、家賃2万円の部屋を借りてアルバイトで生活。国保税・市県民税などを滞納。アルバイト代が8万円入ったとき預金を差し押さえられた。持ち金もつき、食べるものも買えずにフードバンクから2週間分の食べ物をもらい命をつないだ。〇67歳男性。小児まひで両足に障害。年金収入月15万円。国保税・固定資産税・市県民税など130万円を滞納。当年度分から月2万円払っていたが機構送りに。機構と分割納付を相談したが、月6万円の返済では1年かかっても終わらない、1年延長しても終わらないということで、自宅を公売にかけ全額回収すると主張。話し合いを続けたがらちが明かず月9万円なら分割を認めるとのことで9万円返すことに。1カ月でも滞納すれば公売にかけると脅かされています。
そこで、総務部長に伺います。
➀平成27年4月から、国では納税緩和措置が見直され、全国的には納税猶予は制度見直し前の3倍、換価の猶予は見直し前の8倍に増えています。ところが長野県地方税滞納整理機構の差し押さえ件数は、平成26年度は市町村から1090件引き受け、825件の差し押さえ。制度の見直しがあった後の平成27年度は1028件引き受け、841件の差し押さえ。28年度は996件引き受けて、半期ですでに409件も差し押さえています。
引き受けた件数の中に、一件当たり複数の差し押さえがある場合もありますので、それらを緩和することは当然といたしましても、全国では減っているのに、長野県は全く逆の対応です。国の制度変更がきちんと徹底履行されているのか大いに疑問であります。総務部長に、制度の徹底はどうなっているのか再度伺います。➁次に企画振興部長に伺います。
機構が発足して5年、負担金は納付していても約4分の1の自治体は利用していません。また年間1000件相当の滞納解決とのことで、構成団体は移管枠内の件数で機構に滞納処分をお願いしていますが、自治体によっては事案を見つけるのにも苦慮していると聞いています。強権的なとりたてといい、無理をして移管事案を探す問題といい、機構の在り方は問題がありはしないか。構成団体の意向を聞く中で、機構の解散を含め見直しを検討すべきではないか見解を伺います。
- 【総務部長】
- ➀機構の徴収のあり方についての再度のご質問いただきました。私どもといたしましては先ほどご答弁申し上げた通り、機構においても、強い意識を持って徴収に当たっているというふうに考えておりますが、これはあくまでも、法にのっとって行っていると考えているところでございます。
また地方税法がそうしたことで申し上げますと、準用する国税徴収法におきましては、給与生活者の最低生活の維持等に充てられるべき金額の差し押さえは禁止されているということもございます。こうしたこともふまえまして、私どもは対応していただいているというふうに考えているところでございます。
- 【企画部長】
- ➁機構のあり方の見直しについてのご質問でございます。機構設立から3年を経過いたしました平成26年度におきまして、全構成団体へのアンケートを実施するとともに、構成団体によるワーキンググループや運営協議会におきまして、業務内容等の見直しの検討を行ったところでございます。
この見直しによりまして、ご指摘の移管枠につきましても、構成団体の状況に応じ柔軟に対応することとした他、職員に対する研修の充実や、統一的な方針の策定など、機構の業務改善を行ったところでございます。
機構におきましては、今後も構成団体の意見を聞きながら、現行の業務内容等を検証し、必要な見直しを行っていく予定と聞いております。現在機構は、県および市町村の税収確保に重要な役割を果たしており、県といたしましては、機構のより適正な運営に向け、他の構成団体との連携や情報共有を図ってまいりたいと考えております。
- 【毛利議員】
- 先ほど法にのっとってやっているというふうなご答弁ありましたが、国の国税徴収法の中身の中には一括で押さえられない場合、分納や、それから徴収猶予、1年以内に限って猶予することができる、あるいは差し押さえにあうことによって生活や営業が成り立たないということがあれば、納税者の側から換価の猶予、つまり差し押さえをしないで欲しいということを求めることもできる、というふうな内容等ございますけれども、なかなか知られていないというのも実情であります。ぜひ、広く県民に広報していただいて、制度があることを知らせていただきたいと思います。
3.総合事業について
- 【毛利議員】
- ①総合事業について健康福祉部長に伺います。
要支援1、2の「介護予防・日常生活支援総合事業」の本格実施が来年の4月に迫っています。現在実施しているのは18市町村のみで、今年度中に実施が1町1村、43の保険者は来年4月からとのことです。それぞれ苦労しながら準備を進めているところですが、準備状況と、現状での課題や問題点は何か、来年4月から一斉実施できる見通しはあるのか伺います。②多様なサービスということですが、例えば現行のデイサービスから入浴をなくした「緩和した基準によるサービスA」はすでに実施しているところの例では70%から90%の介護報酬であり、今のサービスより単価が切り下げられ、結果として利用者に現行と同じ水準のサービスを提供できない懸念があります。さらにボランテイア主体で行う体操や運動等などの「住民主体による支援B」は地域に受け皿を作るのに時間がかかるのが実情で困難を極めていると伺っています。単価を引き下げて事業者に委託すれば、今でも赤字の事業者はますます厳しくなり撤退も予想されます。一方、利用者のサービスの質は下がりかねません。県はこの状態をどのようにとらえ、解決しようとしているのか見解を伺います。
③すべての要支援認定者には移行後も同じサービスが継続して利用できること、特に介護認定の切り替え時には利用者の希望に基づく選択の保障が得られるよう地域包括支援センターに求めてほしいと思いますがどうでしょうか。
高い介護保険料を払い続けてもいざ必要となった時に基本チェックリストでふりわけ、要介護認定申請から排除し、現行の必要なサービスが使えなくなることが懸念されます。介護認定を受けたい意志があればいつでも申請を受け付けるべきだと思いますがいかがでしょうか。
- 【 健康福祉部長】
- 総合事業の準備状況等についてのお尋ねに、順次回答させていただきます。
➀介護予防日常生活支援総合事業の準備状況については、議員ご指摘のとおり、県内63保険者のうち、現在18保険者が移行済みであり、今年度中の移行予定が2保険者、平成29年4月に移行予定が43保険者となっております。
各保険者では、これまで給付事業として実施していた事業者や新たな担い手となるボランティア、NPO 等の協力のもとそれぞれ準備が進められており、11月の県で行った進捗状況に関する調査においては、すべての保険者が平成29年4月までに移行できる見通しとなっております。
今後の課題として移行した18保険者のうち、住民主体によるサービス提供も実施しているのは5保険者にとどまっており、多様な担い手によるサービス提供を普及する必要があることが挙げられます。県としては、引き続き進捗状況の確認、保険者等の職員を対象とした総合事業移行のための研修会、サービスの受け皿づくりやNPO 、ボランティアの育成を行う生活支援コーディネーターの養成研修の実施などを行い、保険者を支援してまいります。➁サービス水準の確保についてのお尋ねがありました。介護予防日常生活支援総合事業においては、これまで介護予防訪問介護、通所介護として提供されてきたサービスと同じサービスの提供が可能であり、すでに移行した18保険者すべてでこれまで受けられたサービスか引き続き実施されております。
これに加えて、全国一律のサービス内容ではなく、多様な担い手によるサービス提供を行うことができるため、これまでのサービスで対応できなかった多様なニーズへの対応が可能となり、すでにこうした保険者の中にも、庭掃除、灯油入れ、ゴミ出しを行っているところもございます。
多様な担い手によるサービスの構築についてはご指摘の通り、一朝一夕に行うことは困難であり、時間をかけて取り組む必要性があると認識しております。県では受け皿で受け皿づくりを行う人材育成のための研修実施等により、地域でのサービス構築を継続的に支援するとともに、提供されているサービスの内容や単価等に関して、移行後の実態を把握し、必要な助言、支援を行ってまいります。
➂次に、要支援認定者へのサービス提供につきましては、地域包括支援センターは本人に必要なサービスを提供するため、本人の希望を踏まえて新しい総合事業サービス、介護予防の訪問リハビリテーションや、訪問看護などの予防給付サービスを利用するための計画を策定しております。
その際、単に利用者ができないことを代行するのではなく、利用者が主体的にサービスを選択していく過程を援助し、その援助過程を通じて利用者が力を取り戻していくことが重要であると考えております。
県では、地域包括センター職員を対象とした介護予防ケアマネジメント研修を、本年6月、11月に実施し、必要な方に必要なサービスを提供できるよう取り組んでいるところであり、引き続きこうした取り組みを実施してまいります。
要介護認定申請の受け付けについてのお尋ねがありました。基本チェックリストは要介護認定の申請を排除するためのものではなく、介護予防日常生活支援総合事業のサービスを迅速に提供、利用できるようにするためのものであります。要介護認定については基本チェックリストの結果にかかわらず、本人が希望すれば、いつでも申請が可能であります。
県では、要介護認定申請を含むサービス利用の手続きが適正に行われるよう、市町村や地域包括支援センター職員を対象とした研修等を通じて徹底してまいります。
- 【毛利議員】
- 今度の新しい制度の見直しは介護給付費全体の削減ということが大きな前提としてあるわけでありますので、今部長にご答弁いただきましたけれども、チェックリストで振り分けてなるべく介護保険が使えなくというふうなことのないようにぜひ配慮していただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
最後に知事に伺います。
国の介護保険をはじめとした社会保障の切り捨てと負担増は目に余るものがあります。高齢化率の高い長野県、他県より10年早く高齢化の進む長野県にとって、安心の老後が保障される制度であるべきではないでしょうか。介護保険は現状のままでは介護保険料や利用料負担をどんどん引き上げるか、サービスを限りなく切り下げるか、その両方を同時に行うかのどちらかであり、すでに破綻状態です。抜本解決のために社会保障費の増額をするしかありません。国に財源確保を求めてほしいとともに、県として希望するサービス、必要なサービスを受けることができるように保険者に手厚い支援策をお願いしたいと思いますがいかがでしょうか。
- 【阿部知事】
- 介護保険制度に関連してのご質問でございます。高齢化が進む中で、お年寄りの皆様方が、住みなれた地域で安心して生活できる社会をつくっていくということが大変重要だと思いますし、そのためには、相応の公的な負担は必要だというふうに思っております。
国の責任により、財政措置を行うべき部分ということについては、これは県としても国に対して要望させていただいております。また県としては、こうした社会の構築を目指して、地域医療介護総合確保基金等も活用して、市町村の取り組みを支援するとともに、施設整備の支援等に取り組んでいるところでございます。
- 【毛利議員】
- 国では介護給付費の削減のために補足給付の廃止や利用料の2割負担の導入、特養入所用件を要介護3以上にする、要支援1、2は介護保険から外す、と高齢者の負担増が耐えられないほど続けられてきました。そのうえさらに現役並み所得者には自己負担を3割にする方針が打ち出されています。
安倍内閣は社会保障の自然増を3年間で1、5兆円に抑える方針を閣議決定し、17年度概算要求では通常8000億から1兆円ある自然増を6400億円に絞り、さらに5000億円に抑え込む計画です。その標的が高齢者の医療・介護です。高い保険料を払っても医療も介護も受けられない事態が進行しようとしています。
日本共産党はこれでは「国家的詐欺だ」と国会でも指摘し、税金の集め方、使い方、働き方を変え、産業構造を転換させることを提案しています。暴言・強行採決で国民の声に耳を貸さない横暴政権はやめていただく以外にありません。野党の共闘と市民の共同をさらに発展させて国民の声を反映する政治を作ることに全力を挙げることを約束し、質問を終わります。