日本共産党長野県会議員団

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議会質問

2017年2月定例会 日本共産党代表質問

2月23日、日本共産党県議団を代表して毛利栄子議員が質問に立ちました。

1.知事の政治姿勢について

  ①安倍内閣の国会運営について   
  ②沖縄の基地強化と長野県でのオスプレイ飛行訓練について   
  ③アベノミクス破綻と格差の貧困の拡大、地方の拡大について   
  ④共謀罪について

2.新年度予算と県財政について

3.子育て支援について

  ①医療費窓口無料化について   
  ②実施年度について   
  ③受給者負担金を残す理由について   
  ④待機児童の実態について   
  ⑤保育士不足解消のための対策と待遇改善について   
  ⑥保育料支援について   
  ⑦子どもの貧困対策について   
  ⑧現状把握について   
  ⑨貧困問題の検討の場について   
  ⑩多面的な指標と目標値について

4.中小企業支援について

  ①休廃業の原因と対策について   
  ②県が実施している支援について   
  ③既存企業への直接的な支援について   
  ④航空機産業振興について   
  ⑤航空機産業と軍需産業との関わりについて

5.農業問題について

  ①農政改革について   
  ②今後の長野県農業の維持発展について

6.林業振興について

  ①大北森林組合不正事件      
     県の事務執行について   
  ②大北森林組合不正事件      
     補助金返還請求の妥当性の検証について   
  ③大北森林組合不正事件      
     知事の設置したいとする委員会と百条委員会について   
  ④大北森林組合不正事件      
     補助金のあり方と組織風土について   
  ⑤森林税について   
  ⑥信州F・POWERプロジェクトについて

7.医療と介護問題について

  ①地域医療構想案について   
  ②国保坂下病院について   
  ③医師不足の現状と対策について   
  ④地域包括ケアシステムについて   
  ⑤介護保険の改悪と対応について   
  ⑥高齢者の行き場と特養の整備について

8.メガソーラー発電と景観・環境破壊について

9.学びの改革基本構想について

  ①学びの内容について   
  ②学級の規模について   
  ③パブリックコメントの分析と策定スケジュールについて

1.知事の政治姿勢について

【毛利議員】
日本共産党県議団を代表し、代表質問を行います。最初に知事の政治姿勢についてです。

1-①安倍内閣の国会運営について
今年は憲法施行70年、安保法政・戦争法の強行可決により立憲主義が危うくなっている下で、知事の政治スタンスが重要な意味を持ってくると思われますので、まず、安倍内閣の国会運営について伺います。
 昨年暮れの臨時国会は、強行採決に次ぐ強行採決で、まさに異常な国会運営でした。TPP、年金、カジノと3つの重大法案は、いずれも会期末に衆議院で強行採決によって可決。山本農水大臣は、審議前からTPP承認案を強行採決する発言を行い、三権分立を犯す大問題となりました。
 年金カット法案では、衆議院厚労委員会で安倍総理は「私が述べたことを全く理解いただけないのであれば、こんな議論を何時間やっても同じ」と、審議打ち切りを示唆する発言まで行いました。カジノ解禁推進法案に至っては会期延長して審議入りし、わずか6時間足らずで強行採決、さらに再度の会期延長まで行い成立させました。
 朝日新聞は「これほど強引な国会運営がテーマになった国会はなかった」と書き、東京新聞は「臨時国会の目的はカジノを解禁することにあったのかと疑いたくなる」と書きました。長野県世論調査協会が2月3日発表した最新の世論調査結果を見ると、カジノ法案について反対77%、賛成13%、年金カット法案については、読売の12月5日付調査で反対57%、賛成33%と、反対が多数であります。
 国民世論を受け止めず、国会の民主的運営も無視し、数の力で押し切る横暴な安倍政権の国会運営手法について、阿部知事はどう受け止めていますか、見解を伺います。

1-②沖縄の基地強化と長野県でのオスプレイ飛行訓練について
続いて沖縄の基地強化と長野県でのオスプレイ飛行訓練について伺います。
 安倍政権は、沖縄の基地負担軽減と言いながら、海兵隊基地を一層固定、強化しようとしています。沖縄では名護市長選挙、県知事選挙、総選挙、参議院選挙と、新基地建設反対派が圧倒的な勝利を収めて、自民党の国会議員は1人もいなくなりました。にもかかわらず、新基地建設を強行しています。しかも沖縄の基地強化は、全国の基地強化と一体のものとして行われています。
 昨年12月、名護市の海岸に墜落したオスプレイは、日本の捜査権も及ばず原因も究明されないのにたった6日間で訓練が再開され、安倍政権はそれを容認いたしました。沖縄県民や国民の命より、日米関係を重視する態度に怒りが広がっています。
 沖縄に配備されている米海兵隊のオスプレイは、横田基地・厚木基地・キャンプ富士・岩国基地などに飛来し、訓練を繰り返しています。長野県は米軍機の訓練ルートのブルールートになっており、27の自治体が関係します。アメリカでも「未亡人製造機」と言われている欠陥機オスプレイが長野県上空を飛べば、墜落し被害が及ぶ危険が懸念されます。
 3月には、群馬県相馬原演習場と新潟県の関山演習場で、陸上自衛隊と米海兵隊が合同実施訓練を実施し、今朝のニュースによりますと、墜落後初めて6機のオスプレイの参加があり、長野県上空も飛行する可能性があります。
 県は昨年9月20日、防衛大臣に対し、市長会、町村会連名で、オスプレイの飛行訓練問題で要請書を提出しています。日本共産党・藤野保史衆議院議員も、長野県上空でのオスプレイ飛行訓練に関する質問主意書を昨年11月に出していますが、政府答弁は、環境影響はない、通告義務はない、飛行経路は知らない、のないないづくしで、全くひどい内容でした。
 軽井沢町長は「1953年、浅間山麓への米軍演習場建設が持ち上がったときに、長野県全体で阻止してきた。オスプレイだから反対ではなく、町上空で訓練すれば、事故が起こるかもしれない。静かな環境が壊されることは認められない」と語っており、信濃町の町長も「バタバタと爆音を響かせられたら、森林セラピーの町がやっていけなくなる」と、基本的に反対の立場を表明しています。
 知事、日本全土にオスプレイの配備訓練が拡大する状況をどう考えていますか。また長野県の上空をオスプレイが飛ぶことで住民の不安は高まっていますが、県民の立場に立ち、政府に対しオスプレイの住宅地上空での飛行禁止をしっかり求めていただきたいと思いますが、いかがですか。

1-③ アベノミクスの破綻と、格差と貧困の拡大、地方の衰退について
アベノミクスの破綻と、格差と貧困の拡大、地方の衰退について伺います。
アベノミクスが始まって4年、当時地方が恩恵を受けるには時間がかかるなどと言われましたが、長野県の世論調査でも、社会的格差が広がっていると答えた人は76%、縮小している11%、この7倍で、いまやアベノミクスは、生活が豊かになったなどと信じる者は少数派ではないでしょうか。
 つくられた円安株高で富裕層には富が集中し豊かになったけれども、中間層は、労働者の平均賃金が、1997年をピークに年収で55万6000円も減少し、「板子一枚下は地獄」と言われるほど不安定で疲弊し、明日はわが身と切迫しています。
 貧困が広がり、子どもの貧困は社会問題にもなっています。長野県でも年収1億円を超える高額所得者は、2009年から2014年までの5年間で68人から108人へと増えています。しかし同じ時期に、生活保護率は4.2パーミリから5.5パーミリへと増えています。就学援助率は、2003年6.73%から2013年には10.84%へ、1.6倍に増えています。
 また長野県の非正規雇用の割合は、昨日も議論がありましたけれども、平成14年以来全国平均より高く、直近では全国2位になっています。昨日、知事は求人倍率が上がったと答弁を行っておりましたけれどけれども、正規の求人は4割しかありません。知事は県民生活の現状をどう捉えていますか。県民生活向上に必要な政策は何だと考えますか。見解を伺います。

1-④共謀罪について
次に共謀罪について伺います。
 政府は、東京オリンピック・パラリンピックを控え、テロ対策の名の下に組織犯罪処罰法改正案を通常国会に提出し、共謀罪を新設しようとしています。テロ対策というなら、既に日本が締結している国際的な条約が13本あり、これで対応は可能であります。
 日本の刑法は実際に犯罪が行われることで処罰を設けており、未遂犯を処罰することは例外であります。相談・計画しただけで罪に問うことは、思想や内心を処罰対象とする違憲立法であり、現代版治安維持法とも言えるものです。
 長野県弁護士会では昨年10月、「内心を広範に処罰し、監視社会を招く共謀罪に断固反対する」との会長声明も出しており、全国52の単位弁護士会のうち、33の弁護士会が会長の反対声明を発表しています。今から85年前、長野県で治安維持法による大量逮捕者が出て2・4事件が起こり、そのことが契機となって満蒙開拓に全国一送り込んだ痛苦の歴史を踏まえるなら、提出は断念すべきだと思いますが、阿部知事の共謀罪に対する見解を伺います。

【阿部知事】
毛利議員の代表質問に、順次お答えを申し上げたいと思います。
1-①まず私の政治姿勢というご質問の項目で、何点かご質問いただきました。
 私は、県知事として県民の負託を受けたわけであります。そういう意味で、日々県政の推進に全力を投球させていただいております。国会等でもさまざまな議論が行われているわけでありますが、それは国会の先生方が中心になって議論がされているわけであります。国会の先生方も、私も、いずれも国民の代表でありますが、それぞれ役割分担があるということが、これは議論の大前提だというふうに考えています。
 そういう観点で申し上げれば、まず、政権の国会運営の手法ということであります。私は評論家でもありませんし、国会議員でもありません。国権の最高機関であります国会の運営手法、これは報道等でいろいろ報道されているということは承知をしておりますけども、しかしながら、どういう背景で、どういう深い検討の結果そうなっているかということは承知をしておりません。
 したがいまして、どうこう申し上げる立場ではありませんし、国会運営のあり方につきましては、国会の中で十分議論していただき、国民の代表が集まる場でありますから、国民の皆さんに対する説明責任をしっかり果たしていくということが重要だと思っております。

1-②それから、オスプレイの配備・訓練についてということであります。
 まず、日本全土に配備・訓練が拡大する状況についての見解ということでございます。これも、安全保障のあり方については、国が責任を持って対応すべきものと考えております。
 しかしながら、住民生活の安全・安心を守るということは、これは都道府県であったり、市町村の使命でもあると考えております。そういう観点で県民、あるいは観光客等の安全・安心について懸念がされる場合には、しっかりとした対応を国に求めるということが重要だと思っております。これまでも折に触れて必要な要請を国に行ってきておりますし、今後もそうした対応を行ってきたいと思っています。
 住宅地上空での訓練の中止についてということでございます。昨年9月、市長会、町村会と私ども県との三者連名で防衛大臣、環境大臣に対して、日米合同委員会合意事項の遵守を強く求めております。ご承知のとおり、この合意事項の中には、低空飛行訓練の際に人口密集地域あるいは学校・病院等を避けて飛行するということが盛り込まれております。引き続きこうしたことを、国に対して求めてまいりたいと考えております。

1-③それから、県民生活の現状と県民生活向上のための必要な政策についてのご質問でございます。
 昨日の小島議員へのご質問にもご答弁申し上げたとおり、県民生活の現状はさまざまな統計指標がある中で、やはり多面的に、単なる数字だけではない捉え方もしていくということも重要ではないかと思っています。
 昨日は1人当たりの家計可処分所得の数字を申し上げました。この数字を見る限り、県民生活全体としての全国的な水準よりは平均的には高い状況であります。ただ、お話ありましたようにお一人お一人の状況を見れば、まだまだ格差あるいは貧困という状況の中で、お困りの方々もいらっしゃるというふうに考えております。
 そういう意味で、私も全体として経済を元気にして雇用を創出していくということはもちろん大前提でありますけれども、そうしたことだけではなくて、やはり個別の皆さんのニーズにも対応することが必要だと考えております。そういう意味でパーソナル・サポートセンターを設置し、今「まいさぽ」というかたちになっておりますけども、そういう中で、さまざまな課題を抱えている皆様方の相談に乗り、生活・就労の支援も行ってきております。
 また保育料、そして医療費の助成等も通じて、一定程度子育てに要する負担の軽減にも、これまで以上に取り組みを始めています。また、給付型奨学金、対象者はわずかではありますが、ただ、児童養護施設の若者たち、なかなか進学できないという子どもたちに対する奨学金制度の創設も行ってまいりました。
 昨日も答弁いたしましたが、子どもカフェ、あるいは子ども食堂、こうした取り組みを全県で広げていこうということでフォーラムを開催したところ、多くの皆様方のご協力、ご参加いただいています。
 ぜひ、こうした県民の皆様方の思いを県としてしっかりコーディネートし、あるいは結集して、こうした貧困あるいは格差ということで困っている人たち、とりわけ子どもたちが、将来に向けて夢を持って暮らしていけるように頑張っていかなければいけないというふうに思っています。今申し上げたような政策は、これからも充実する方向でさらに検討を行っていきたいと思っております。

1-④それから、組織犯罪処罰法についてという、提出は断念すべき、違憲立法ではないかというご指摘でございます。
 これも国会で議論するべき問題だというふうに思っておりますし、法案の内容も承知をしておりませんので、コメントすることはなかなか難しいと思っております。ただ、一般論として申し上げれば、日本国憲法があるわけでありますので、憲法で保障されている思想および良心の自由等々の関係について、国会の場で慎重かつ十分なご審議が必要というふうに考えております。

2.新年度予算と県財政について

【毛利議員】
新年度予算と県財政について、知事に伺います。
平成29年度の県予算は、社会保障費の伸びが25億円増える中で、地方交付税が58億円マイナスとなり、基金を97億円取り崩し、臨時財政対策債、つまり赤字県債を前年比24億円増の460億円発行して、何とかやりくりする厳しいものになっています。義務的経費が政策的経費を圧迫しており、社会保障費や扶助費など、義務的経費を昨年比53億円減らすかたちでしわ寄せされる予算編成がされました。
 こうした中で、新県立大学109億円、信濃美術館の建て替えに110億円、武道館建設に50億円、リニア関連道路に500~700億円、さらに中部縦貫道、中部横断道、松本糸魚川連絡道路など大型事業が目白押しです。一方で、2017年度予算編成に当たっては、242事業を廃止・縮小することで歳出を31億円余を削減し、県立総合リハビリテーションセンターの診断書や諸証明の文書料などを1割余値上げするなど、各種手数料、使用料などを値上げして、県民負担を強いながらやりくりしています。
 一度減った借金は再び増え続け、年間予算の2倍、過去最高の1兆7000億円を超えました。人口減少に歯止めがかからず高齢化が進行する中、後世の若者に過度な負担がかぶさっていくことが心配されます。
 大北森林組合の国への返還と制裁金など、採用抑制と残業代カットなどで厳しく対応してきている中で、大型事業の規模が本当に適正なのか、他の施策の圧迫につながらないか、運営費の増大に毎年度対応できるのかが懸念されるものであります。大型公共事業についてなぜ今必要とされているのか、県民への説明と、どのように合意形成を図っていくのか知事の見解を伺います。
【阿部知事】
それから、新年度予算と県財政についてということで、大型事業の規模が適正なのか、他の施策の圧迫につながらないか、運営費の増大への対応など懸念がある、大型公共事業について県民への説明等と、どのように合意を図っていくのか見解を問うというご質問でございます。
 まず、ちょっと私、先ほどご質問を伺っていくつかデータ的に気になるご指摘がありました。こうした財政状況の議論をする上では、やはり適正・正確なデータに基づいて検討していく、議論していくということが重要だろうというふうに思っています。
 例えば臨時財政対策債、これは何度も申し上げておりますけれども、赤字地方債でありますけれども、後年度交付税措置が全てなされるという前提の起債であります。交付税の原資が足りない中で、臨時財政対策債を当面地方が発行して賄っておけという国の制度の下で発行しているわけでありますので、何と言うか、単純に赤字の地方債ということでは当然ありません。
 また、県債残高も今減少を基調にやっとなりかかってきているところでありますし、また、義務的経費のしわ寄せというご指摘もありましたが、例えば、公債費等は抑制をするに越したことはないはないという認識で私はおりますので、いささかそうしたデータを踏まえた上でのご議論いただけるとありがたいと思います。
 そういう中で、県政運営に当たりましては、財政状況を、私も今申し上げたように十分念頭に置きながら、県民の皆様方にとって必要な事業は実施しつつ、しかしながら、持続可能な財政運営を図ってくると、そういう姿勢で取り組んできております。
 県財政の状況は提案説明でも申し上げましたけれども、社会保障関係費、これは毎年増加基調にあります。その財政負担が大きくなりつつあるというふうに考えております。
 他方でご指摘があったような大規模な建設事業費、あるいは公共事業といった投資的経費、これは県債に関する財政指標、実質公債比率や将来負担比率は年々改善しているということからも言えるように、財政に対する影響額、負担感というのは少しずつ小さくなってきているという状況であると考えております。また建設費に充てるための通常債の残高も着実に減少しておりますし、今後も減少の見込みというふうに考えております。
 もとより、こうした状況だから安穏としているわけではありません。常に財政改革にしっかり取り組んでいかなければいけないというふうに思っておりますし、こうした事業の必要性等についても、県民に対してしっかりご説明をさせていただく中で、一つ一つ着実に進めていくということが重要だというふうに考えております。
 そういう意味で、これまでも県民の皆様方からのご意見を十分踏まえながら、それぞれ、例えば基本構想案、あるいは計画案、そうしたものをつくりながら、可能な限り事業の規模であるとか、スケジュールであるとか、事業効果、財政負担、こうしたものをお示しをしてきております。また、パブリックコメント、説明会等を通じて、計画段階から県民の皆様方にできるだけご説明に心掛けてきているところであります。
 もとより、こうした大規模な事業については、最終的には県議会でご審議いただき実行していくということになるわけであります。今後とも県議会を初め、県民の皆様方のご理解をいただきながら、着実に必要な事業推進を図ってまいりたいと考えております。
 私に対するご質問は以上でございます。

3.子育て支援について

【毛利議員】
次に、子育て支援についてです。

3-①医療費窓口無料化について
最初に子ども医療費窓口無料化について、健康福祉部長に伺います。
 平成28年12月22日付厚生労働省国民健康保険課長通知で、平成30年4月1日からは、未就学児までの子ども医療費の窓口無料化について、国のペナルティを科さないこととされました。長野県議会としても何回か国に意見書を上げてきた経過があり、ようやくかと歓迎するものであります。
 党県議団は、関係の皆さんと署名行動や要請活動を実施するとともに、この間数十回にわたって議会で子ども医療費の窓口無料化を取り上げてきました。地方議会でも、55の市町村、71%が意見書を採択しています。若いお父さん、お母さん方の切実な願いが実現に向かって動き始めたことは、嬉しい限りです。
 全国的には、現物給付しない県は長野県を含め残り6県となってしまいました。県は1月27日、関係4市町村長と健康福祉部長からなる県福祉医療給付事業検討会の初会合を開き、検討を開始したと伝えられております。今後どのようなスケジュールで検討していくのでしょうか。検討していく上での論点は何でしょう。その際、市町村関係者だけでなく、切実な願いを持っている保護者や障害者等の当事者をぜひ加えていただきたいと思います。
 過日の知事申し入れの際に、課長は「市町村レベルでの調整が主になるので難しい」と答えています。当事者の切実な声が反映されてこそ、よりよいものになるのではないでしょうか。ぜひ当事者を入れていただきたいと思いますが、いかがですか。

3-②実施年度について
 さらに実施年度についてであります。午前中の知事答弁によりますと、就学前、中学卒業までとさまざまな意見があり、今後しっかり方向性を探るとのことですが、全ての市町村が中学卒業まで入院通院とも実施しているため、就学前で線引きしにくい状況があります。全市町村の意見も聞きつつ、最低でも中学卒業まで入院通院ともできる限り早期に窓口無料にしてほしいと思いますが、いかがでしょうか。

3-③受給者負担金を残す理由について
 新聞報道では、1レセプト当たり500円の受給者負担金は残す方向で一致したと書かれていますが、それほど待ちに待った保護者をがっかりさせる対応はありません。そんな無料化なんてあり得ないという声が圧倒的であります。500円の受給者負担金を残す理由は何ですか。完全無料化を実施してほしいと思いますが、いかがですか。

3-④待機児童の実態について
続いて、保育問題について県民文化部長に伺います。
 厚労省は、待機児問題について全国的に定義がまちまちだとして、隠れ待機児問題などの把握も行うよう検討しているとお聞きしています。長野県は、以前にお聞きしたときも待機児がいない県とのことですが、未満児が途中入所を希望してもほとんど入ることができず、やむなく祖父母に預けたり、育休を延長したり、職場を辞めざるを得ない状況が各所で出てきています。
 北信のS市では、申し込みに行くと市の窓口で「育休をもっと取ってください」「子どもは自宅で見るのが一番いいんですよ」などと酷い対応し、申し込みを受け付けない事例もあるそうです。女性が活躍する社会といくら叫んでみても、保育所にすら預けられない現状は早急に改善すべきだと考えます。そのためには、県としてぜひ現状を把握すべきだと思いますが、待機児数の実態はどうなっていますか。

3-⑤保育士不足解消のための対策と待遇改善について
 待機児問題の原因の一つに、保育士不足が挙げられます。専門職であるのに、他の職種と比べて人件費が、厚生労働省賃金構造等計基本調査によると月9万円も安いことを挙げられています。保育士の処遇改善が急務と考えます。
 国が待遇改善として新年度打ち出した保育士の処遇改善の4万円は、キャリアアップ研修をした副主任や、専門リーダーにしか支給されず、その数も園長、主任を除く保育士全体のおおむね3分の1ということで、わずか数人が該当になるだけです。特定の人だけ値上げするわけにもいかず、該当者に支給されるお金はその他の職員で配分できるという国の指示に基づいて対応するのが一般的で、保育士の配置基準も、国を上回って大抵1.6から1.8倍人数を配置していることから、みんなで配分すれば2000~3000円のアップにしかなりません。国の4万円アップは誇大宣伝ではないでしょうか。保育士不足解消のための方策と、待遇改善に対する部長の見解を伺います。

3-⑥保育料支援について
保育料問題について伺います。
 子育て支援策として、県の保育料第3子への支援は評価しますが、子どもを1人しか持たない若年世帯は、国立社会保障人口問題研究所の平成27年第15回出生動向基本調査によりますと18.6%、20年前の倍に増えています。ちなみに2人はほぼ横ばいの54.1%、3人は17.8%となっています。子育てにお金がかかるのが子育て世代の大きな悩みにもなっていることから、ぜひ2人産む動機づけのためにも、少子高齢化が大きな問題になっている長野県として、思い切った第1子への保育料支援が必要ではないかと考えますが、部長の見解を伺います。

3-⑦子どもの貧困対策について
子どもの貧困対策について伺います。
 県は貧困対策推進計画を作成し、取り組みを始めています。計画は総花的であり、スローガン的な感が否めませんが、1年間の取り組みの成果と課題について伺います。
県貧困対策推進計画は、平成28、29年の2カ年計画であり、さらなる計画づくりが必要であります。平成27年、県が実施したひとり親家庭の実態調査結果は貴重な資料ではありますが、全体像が十分つかめていないのではないでしょうか。
 ひとり親以外にも深刻な状況は存在していますし、顕在化しない貧困、いわゆる見えない貧困もあります。アルバイト漬けの生徒が学校に来なくなったので訪ねたところ、片親の母にほとんど巻き上げられ、それがパチンコに使われていた、子どもを使って近所にお金を借りに行かせている親がいる、友達に買い物に誘われたが、お金がないので「用事がある」と嘘を言って断った、家族でやっと入れた県営住宅、尋ねてみたら、寒さの中で火の入らないコタツがぽつんと置いてあるだけなど、実態が寄せられています。

3-⑧現状把握について
 子どものいる世帯の所得状況、雇用の状況、就学援助の状況、進学の保障、公共料金の滞納状況、衛生保持状況、食事摂取の状況、虐待の状況、本も買ってもらえない新しい靴や服を買えない、検診を受けても医者や歯医者にかかれず放置されているなど、剥奪に関わる指標など、本気で貧困問題を解決するためには、さらにリアルな現状把握に努めるべきではないかと思いますが、部長いかがでしょうか。

3-⑨貧困問題の検討の場について
 子どもの貧困対策大綱では、地方自治体でも貧困対策についての検討の場を設けるよう示されており、新年度子ども支援団体や行政、経済団体で構成するオール信州の官民協同組織「長野県将来世代応援県民会議」を立ち上げるとのことですが、見守り活動や青少年サポーター拡大などと、いくつもの課題を扱う団体になっています。子どもの貧困が持つ重大性に鑑み、貧困問題に特化した検討の場が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

3-⑩多面的な指標と目標値について
 さらに貧困対策を推進する上で、県の指標はたった5項目で、あまりに部分的であり対象が狭いので、例えば34項目を持つ沖縄県のように、もっと多面的な指標と目標値を持つべきと考えますが、部長の見解を伺います。

【健康福祉部長】
3-①福祉医療費給付事業に関するご質問に、順次お答えいたします。
 まず、検討会のスケジュールと論点については、1月27日に開催いたしました第1回福祉医療費給付事業検討会では、現物給付の導入の要否と、現物給付導入の対象範囲、現物給付導入に係る受益者負担金の3点について、各委員からご意見をいただいております。
今後のスケジュールにつきましては、いただいたご意見を踏まえ、改めて市町村の皆様のお考えをお聞きしているところであり、意見集約の状況にもよりますが、年度内には次回の検討会を開催してまいりたいと考えております。
 検討会への保護者、障害者の参加についてのご質問がございました。
 県では、これまで多くの団体等の皆様から現物給付化のご要望いただいてきたところであり、そうしたご要望を重く受け止め、国に対して国保の減額調整措置を廃止するよう強く求めてきたところであります。今回の国の見直しは、こうした地方のさまざまな行為に応え、国としての方向性を変更して一歩踏み出したものと考えております。

3-② しかしながら、現物給付の導入に際しては、健康保険組合における付加給付の停止や、就学児を現物給付の対象とした場合の国保の減額調整措置などにより、市町村において新たな財政負担が生じることとなります。したがいまして、県といたしましては、事業の実施主体である市町村の皆様のお考えを丁寧にお聞きしつつ、検討していくことが重要であると考えております。その際には、これまでいただいたさまざまな立場の方のご要望を踏まえて、検討してまいりたいと考えております。
 検討会では、現物給付導入の対象範囲について、未就学児までとするご意見や、県内市町村の取り組み状況を踏まえ、中学校卒業まで足並みをそろえてはどうかとするご意見をいただいております。また、国保ペナルティ額に対して国の財政支援をお願いしたいとするご意見もいただいております。対象範囲をどうするかについては、事業の実施主体である市町村の皆様のお考えを丁寧にお聞きするとともに、県の支援のあり方も含めて、今後県全体の方向付けをしてまいります。

3-③ 受給者負担金については、現行の自動給付方式を導入した際に、福祉サービスの受益と負担の関係を明確にし、ともに制度を支え合う一員であることを受給者に自覚していたことを目的に設定したものであります。平成15年の導入時には、1レセプト当たり300円とし、その後、福祉医療費給付額が急激に増加した状況に鑑み、将来にわたり持続可能な制度として、県民福祉の向上に寄与するために、平成21年10月からは500円としております。
 現物給付導入に際しての受給者負担金のあり方についても、現行制度における受給者負担金の趣旨を踏まえつつ、市町村の皆様と検討してまいります。
 以上でございます。

【県民文化部長】
子育て支援に関しまして、順次お答えを申し上げます。

3-④ まず、待機児童の関連でございます。待機児童に関しましては、例年4月1日現在および10月1日現在の状況を、保育の実施主体でございます市町村に対して調査をしているところでございます。直近の平成28年10月1日現在におきましても、市町村から3歳以上児、3歳未満児ともに、待機児童の報告はなかったところでございます。
 なお、待機児童に含めないものといたしましては、同じく平成28年10月1日現在で産休・育休明けに保育所の利用を希望し、事前に申し込みがされている者が31名、利用可能な保育所があっても保護者の個人的な理由により他の保育所等を希望し待機している者が126名、計157名の報告があったところでございます。

3-⑤ 保育士不足解消のための方策についてのお尋ねでございますが、保育士確保に関しましては、年度途中の3歳未満児の受け入れに対応するための保育士確保がまず喫緊の課題であるというふうに考えてございます。また、中長期的には3歳未満児保育や病後児保育等の充実のため、さらなる保育士確保や養成が必要であると認識しているところでございます。
 こうしたことから、県といたしましては、これまでも年度途中の0歳児を受け入れ対応するための保育士確保に要する費用の助成を民間保育所に行っているほか、今年度からは潜在保育士の復職支援や、保育士を目指す学生の就学支援のための返還免除型の貸付金を制度化してまいりました。
 これに加えまして、平成29年度からは保育士人材バンクを設立し、広域的な情報収集や提供、マッチングを行う体制を整備いたしまして、潜在保育士の再就職支援等を行い、年度途中初めとする保育士の確保を図ってまいりたいと考えております。
 また待遇改善の内容についてでございますけれども、保育士の処遇改善に関しましては、平成29年度におきまして、国が2分の1、県が4分の1、市町村が4分の1の負担によりまして、民間の保育所等に勤務する全ての職員に2%、月額6000円程度の処遇改善を行うことに加えまして、経験年数がおおむね7年以上で、県等が実施する研修を経た中堅職員対しまして月額4万円、経験年数が概ね3年以上で研修を経た職員に対して月額5000円の追加的な処遇改善を実施するものでございます。
 これまで保育士の定着確保のために、給与等抜本的な処遇改善につきまして、県からも国に要望してまいったところでございますが、平成29年度からはこのように一定の処遇改善が図られるものと認識をしているところでございます。

3-⑥ 続きまして、第1子からの保育料支援についてのお尋ねでございます。
第1子の保育料につきましては、昨年度まで生活保護世帯および年収約260万円未満のひとり親世帯等は無料としてきたところでございますが、これに加えまして、今年度からは年収約360万円未満のひとり親世帯等につきまして、保育料の上限額を従来の半額以下の月額1万5000円以下としたところでございます。
 平成29年度におきましては、子育てをしやすい環境をつくるという観点で、年収約360万円未満のひとり親世帯等の第1子保育料につきまして、上限額を月額9000円以下とするさらなる負担軽減を行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

3-⑦ 続きまして、子どもの貧困対策推進計画の取り組みの成果と課題というお尋ねでございます。
 子どもの貧困対策推進計画では、子どもの貧困に関わる課題を3点に整理いたしまして、関係する部局が連携してその施策に取り組んでまいりました。主な取り組みとして具体的に申し上げますと、まず家庭の養育環境が十分でない状況に対応するため、一場所多役の子どもの居場所である「信州子どもカフェ」を今年度モデル事業としまして、県内2カ所で実施したところでございます。
 朝食がとれていない、学習習慣が身についていないなどの課題を有する子どもに対しまして、地域の大人やボランティアの学生などの温かい触れ合いを通じた支援を行うことができたものと考えてございます。
 今後、地域全体で子どもたちを支えるこうした取り組みを県内に広げるため、過日「信州子どもカフェ推進フォーラム」を開催したところ、県内全域から官民合わせまして約280名と、予想を超える多くの皆様にご参加をいただき、熱心な意見交換が行われたところでございます。県の子どもカフェの取り組みがきっかけの一つになりまして、居場所づくりに向けた機運が大変高まってきていることは、大きな成果であると考えているところでございます。
 子どもの居場所づくりには多くの県民の皆様の参加が不可欠であることから、NPOや行政機関など関係者からなるプラットホームの構築が大変重要と考えているところでございます。今年度、佐久・諏訪の2広域で取り組み始めました地域プラットホームの構築を、平成29年度は県内10広域に拡大してまいりたいと考えております。
 2点目の多様な教育資源が選択できない状況に対しましては、平成27年4月の進学者から支給しております給付型奨学金である「飛び立て若者奨学金」や、県内大学進学のための入学金等給付に加えまして、平成28年度には、県内大学就学のための奨学金を創設し、新たに33人の県内大学等への就学を支援したところでございます。また、高等学校等につきましては、市町村民税所得税非課税世帯の第1子に対する奨学給付金を増額するなど、低所得世帯の子どもの学びを支援したところでございます。
 また3点目の要支援家庭の孤立化の対策につきましては、市町村への母子保健の技術支援を行います母子保健推進員を新たに配置するなど、信州母子保健推進センターの機能拡充を行いますとともに、スクールソーシャルワーカーを予算ベースで8人から18人に増員するなど、要支援家庭をきめ細かく支援してまいりました。
 今後の課題といたしましては、例えば社会的養護を必要とする子どもたちが家庭的な養育環境で育つための里親委託等の推進でございますとか、教育費の負担のさらなる軽減のほか、要支援者を早期に発見し、よりきめ細やかに支援するための相談体制の充実等があるものと考えております。

3-⑧ 次に、現状把握についてのお尋ねでございます。
 平成28年9月定例会におきまして、坂井議員のご質問にお答えしましたとおり、子どもの貧困の実態を定量的に把握することは重要と考えてございます。子どもの貧困対策推進計画を初め、子ども・若者支援に関連する複数の計画につきましては、平成29年度末で計画期間が満了するますことから、子どもと子育て家庭の実態の把握や、先ほど申し上げた課題などを整理した上で、新たな計画を策定してまいりたいと考えております。
 このために、実態調査に必要な予算を平成29年度当初予算案に計上させていただいております。この調査によりまして、食事をとることができない、新しい衣類を購入することができないなどの剥奪状態に置かれている子どもの状態含め、より詳細な実態把握に努めてまいりたいと考えております。

3-⑨ 次に、貧困問題に特化した検討の場についてのお尋ねでございますが、来年度、将来世代応援県民会議(仮称)を設置しまして、子どもの貧困対策を含め、子ども・若者支援にオール信州で切れ目なく取り組む体制を構築してまいりたいと考えております。
 子どもの貧困問題は複合的な課題でございますので、官民さまざまな主体が参画するこの県民会議の部会におきまして、支援方策を多面的に検討し、新たな計画に反映してまいりたいと考えております。

3-⑩ 次に、多面的な指標と目標値についてのお尋ねでございます。
 先ほど申し上げました実態調査や、また沖縄県などの他府県の取り組みも参考とさせていただきながら、子どもの貧困対策を推進する上で最も適切な指標と目標値について検討してまいりたいと考えております。
 以上でございます。

【毛利議員】
保育士の処遇改善を抜本的に変えるためには、昭和23年以来変わっていない職員配置基準、つまり、0歳児3人に1人、1~2歳児は6人に1人、3歳児は20人に1人、4~5歳児は30人に1人の保育士を配置するという基準を実態に合ったものに変え、公定価格をもっと上げるべきではないでしょうか。国に対して、先ほど処遇改善に対する予算措置を要望していくというお話がございましたけれども、配置基準の見直しと、公定価格の引き上げを求めていただきたいと要望しておきます。

4.中小企業支援について

【毛利議員】
次に中小企業支援について、産業労働部長に伺います。

4-①休廃業の原因と対策について
 帝国データバンク発表の平成28年の県内企業の倒産集計によると、倒産件数は前年比3件増の96件、業種別に見ると、小売業が24件、サービス業が23件、製造業が22件、建設業が17件と続きました。一方、平成27年度では倒産の4.8倍も休廃業・解散があり、7年連続で、先ほどもご答弁がありましたように450件を上回っています。
 最も多かったのは建設業の143件、31.7%、小売業の93件、20.6%、サービス業75件、16.6%で、代表者の年代別では60代から80代が75.8%となっています。倒産と休廃業で毎年50件近い事業所が消えていきます。いくら高齢化とはいえ、地域の空洞化は加速しています。後継者難も問題視されています。県は休廃業の原因をどう把握し、どのような対策を取ろうとしているのか伺います。

4-②県が実施している支援について  県外からの企業誘致の10倍も既存の事業所が消えていく現状は、地域づくりにとっても深刻ではないでしょうか。山口議員が2015年11月議会の質問で、「中小企業の振興のために、現場にどれだけ足を運ぶかが成否を握る」と求めたことに対し、部長は「各企業を訪ねることは大事、県だけでなく、商工会、商工会議所、金融機関と連携して課題を伺ってまいりたい」と答えています。
 町工場などを訪ねさせていただきますと、「いろいろな調査は次々来るが、アンケートはもういい」という声が強いです。中小企業を実際に訪ね、ともに仕事確保や販路の拡大、資金繰り、元請からの単価切り下げへの対応、人材の確保について相談に乗り、知恵を出してくれる行政の援助を求めています。県が実施している支援策について伺います。

4-③既存企業への直接的な支援について
 呼び込み型の企業へは戦略的企業誘致ということで、不動産取得税の課税免除や取得した生産設備や建物等に対し、投資額に応じて5億円から10億円の支援、新規雇用や転入者に対しては1人当たり80万円の雇用促進助成はしているのに、既存の小規模事業者には直接的な支援はほとんどありません。小規模事業所は地域づくりのかなめであることの位置づけを、もっと高める必要があるのではないでしょうか。呼び込み型企業に匹敵する直接的な助成、例えば社会保険料の事業者負担分の助成、水光熱費や家賃補助など、既存企業にも実施してほしいと考えますが、いかがですか。

4-④航空機産業振興について
 次世代産業創出に関わって、航空機産業振興について伺います。
平成27年11月、国産初の三菱リージョナルジェットが初フライトに成功しました。MRJ は、現在ANAホールディングスや日本航空、米国の航空会社などから計447機を受注していますが、1月末に5回目の納期を延期するということが明らかにされました。
2020年半ばにずれ込むことが予想され、度重なる延期できちんと納品できるのか心配されています。中国では既にARJ21が数十機飛んでおり、小型旅客機は国際的な競争にさらされております。
 飯田下伊那地域では、YS-11以来の国産小型旅客機としてMRJ に夢と期待が集まっていますが、安全性認証の型式証明が取れるかどうか恐れも出ています。飯田下伊那地域には共同受注グループ「エアロスペース飯田」があり、技術力を磨いてきています。県は国際戦略総合特区への参画による優遇制度の導入や、クラスター拠点工場整備などを支援し、国内外の航空機市場が拡大すると見通しを持って、経済産業省や信州大学、JAXA などの力もかりながら取り組みを強め、上伊那や諏訪地域にも特区を広げ、航空機産業の拡大を図ろうとしています。
 航空機産業の日本の生産額は1.7兆円で、2020年には3兆円の産業規模になると見込まれています。自動車製造業の出荷額52兆円からすれば少ないですが、1機300万点と、自動車の100倍の部品が使用されていることから考えると、製品のハードルは高いけれども広い視野を擁しており、期待の次世代産業であることは理解できます。製造業に手詰まり感がある中では新たな開拓の必要性はあるものの、長野県のシェアリングは、現状わずか0.6%95億円です。
 委員会で飯田市の部品製造会社を訪ねさせていただきましたが、試作の5年間は赤字、量産になっても利益は出ない、実際に製品にするまでにはほとんど儲けにならず、補修や改造等のMRO ビジネスなどで稼いだお金をつぎ込んで、苦労を重ねているとのことでした。
 長野県はシステム関連、装備品の受注を目指していますが、技術力はあっても、企業収益の問題、ハードルの高さの問題、製品化するまでには時間を要する問題など、クリアしなければならない問題はたくさんあります。加えてMRJ の納入が次々に延期される中では、先行きの不透明さが気にかかるところであります。
 県は、リスクもあるこれらの問題をどのようにとらえているのでしょうか。イケイケドンドンで大丈夫なのか、部長の見解をお聞きいたします。

4-⑤航空機産業と軍需産業との関わりについて
 次に航空機産業と軍需産業との関わりについて伺います。
 航空機産業は重層構造で、三菱重工や川崎重工、富士重工など軍需産業も関わっており、下請けではどんな部品をつくっているかわからないとも言っておられたことを考えますと、長野県の企業が軍需産業の一翼を担わされることも懸念されます。安倍政権の下で武器輸出三原則に代わり、防衛装備移転三原則となる中で、新年度軍事研究には18倍の予算がつき、日本学術会議では、軍事研究に手を染めるのかどうか大議論が続いています。
 地元信州大学では、軍事応用可能な防衛省公募の研究は当面見合わせる方針と聞いております。産業労働部長の見解を伺います。

【産業労働部長】
5点、順次お答えいたします。
4-①まず、休廃業の原因把握とその対策についてのご質問です。
 ご指摘のように県の休廃業、それから解散の件数はここ数年、年間410件前後となっております。これは経営者の高齢化が進んでいることと、小規模な企業の多くで後継者がいないことなどが主な原因となっております。県といたしましては、こうした後継者対策として、事業引き継ぎ支援センターと連携し、譲渡と譲受希望者の後継者バンクへの登録を促すとともに、特に譲り受けたい希望者の掘り起こしに力を入れて取り組んでおるところでございます。

4-②次に、県が実施している支援策についてのご質問です。
 県ではこれまでも、産業労働部や地方事務所の職員が直接企業を訪問し、企業の声やニーズをお聞きし、産業政策を進めてまいりました。例えば、販路開拓では、中小企業振興センターに配置しました受発注取引推進員が企業等に赴き、毎年1200件を超える受発注をあっせんしております。また、資金繰りでは、急激な経済変動や災害などに迅速に対応するため、市町村や関係する商工団体と連携して、早期の相談窓口を開設や、その広報を実施してまいりました。
 さらに、制度資金面でも企業や金融機関の意見を伺いながら、適宜、金利の引き下げなどを実施するとともに、来年度は経営健全化支援資金において、要望のありました借り換え制度を新設することとしたところでございます。今後も、経済変動に迅速に対応できるよう、企業の声をしっかりとお聞きしながら、産業振興に取り組んでまいります。

4-③次に、既存の小規模事業者への直接的な支援策についてのご質問です。
 県では、信州ものづくり産業投資応援条例で、この中では県内企業の方であっても一定以上の投資と雇用を行った者に対しましては、助成金を交付することにしております。また税制面では、より多くの県内企業にご利用いただけるよう、助成金よりも適用要件を引き下げ、不動産取得税の課税免除、これも実施しているとこでございます。
 このほか、中小企業者からの要望の多い数百万円クラスの設備投資におきましては、国のものづくり補助金が活用できるよう、その申請手続につきましても、具体的なお手伝いを行っているところでございます。
 企業に対する支援におきましては、企業が将来にわたり持続的かつ自立的に発展成長していただくことも重要と考えております。そこで、助成制度のみならず、先ほど申し上げました販路開拓や融資制度、さらには技術支援など、さまざまな施策を総合的かつきめ細かく展開いたしまして、中小企業の振興に取り組んでまいります。

4-④次に、航空機産業についてのお尋ねです。
 三菱リージョナルジェットはYS-11以来、わが国が半世紀ぶりに開発する旅客機であり、この間のブランクが開発に影響していると感じております。しかし、ボーイング社が製造している中型旅客機787の部品の約3分の1は日本製であり、航空機産業はしっかりと準備することで、決して参入が難しい分野ではなくなってきております。  また、航空機部品は実際に製品化するまでに長い時間がかかるものの、製品化されれば、その機種が運航する長期間安定した受注が約束できる特殊な産業分野でもございます。さらに高度な技術と高い品質が要求される航空機分野を企業経営の柱の一つとすることができれば、高い技術力、品質のレベルアップにより、外部からの評価が上がる一方、医療や環境といった航空機以外の分野でのビジネス拡大、さらには高度な人材育成などが期待できます。
 そのため、県といたしましては、国や航空機産業界の見通しやご意見を丁寧に聞きながら、必要とされる人材育成や研究開発などにつきましては、信州大学や国の研究機関と連携して機会を失することがないよう、積極的に事業を進めてまいりたいと考えております。

4-⑤最後に、軍需産業界への懸念についてのご質問です。
 今回の事業における認証取得や試験機整備の支援は、民間航空機の開発や試験に必要なものであり、防衛産業は念頭にございません。また、県の航空機振興ビジョンでも、民間航空機産業への参入を目的としております。今後20年間で、民間航空機市場が倍増するこの機会に他県に先行するかたちで取り組み、県内での集積を図ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。

5.農業問題について

【毛利議員】
農業問題について、農政部長に伺います。
5-①農政改革について
 昨年末の臨時国会でTPP 承認案を強行可決しましたが、アメリカのトランプ大統領は、TPPからの離脱を決めました。アメリカが加わらないTPPは宙に浮くだけで、むしろ、今後日米二国間の自由貿易協定で、さらなる厳しい条件をのまされることが危惧されます。
政府・自民党は、TPP対策として体質強化をあおり、規模拡大と法人化、農地の大区画化と集積の加速、輸出促進、高性能機械の導入と、集荷施設の再編など、攻めの農政、強い農業を推し進めてきました。
 創造プランでは、農業政策としての輸出の促進、6次産業化、農業構造の改革と生産コストの削減、農協改革の促進などを打ち出しましたが、その議論の過程で、規制改革推進会議が乱暴な農協改革を持ち出してきました。農協の販売事業と購買事業を最大の焦点にし、全農たたきを行っています。全農は1年以内に委託販売から買い取り販売に転換すべき、資材販売などの購買事業をやめよ、信用事業を含むJAを3年後に半減させるなど、政府が口出しすべきことではなく、組織が自主的に改革すべきことではないでしょうか。まさに政権党のおごりです。
 長野県の農家が1戸当たりの生産規模は小さいけれども、農家戸数は11万7000と、少なくなったとはいえ全国一であります。中山間地で耕作しているために農協を頼りにしており、全農県本部の取扱高は全国一で、共販率が高くなっています。地域の維持振興という観点から、総合農協としての役割をしっかり保護することが大事ではないでしょうか。農協は、組合の要求、意見をもとに共同や団結を大切にし、地域や生産実態に合った対応をしていくことが不可欠です。農協をつぶせば、地域は今以上に耕作放棄地ができ、農村が疲弊していくでしょう。

5-②今後の長野県農業の維持発展について
 農政部長に伺います。政府農政改革はあまりに乱暴で押し付け的であると思いますが、いかがお考えでしょうか。長野県農業と農村を守るために押し付けをやめよ、農協の自主的改革を尊重せよと国に意見を上げていただきたいと思いますが、いかがですか。また県は、国の方針に従ってTPP対策に前のめりの大規模化や輸出促進を推進し、ベトナムなどとも可能性を探ってまいりました。
 過日、諏訪圏域の農業関係者と地元選出県議の懇談会があったおりに、「政府は大型化ばかり進める。大規模農家でないと補助対象にもならない。かつて20人いた仲間は今4人になってしまい、地域で集まりを持っても集まらず、農業機械の買い換えもできない」との声も出されました。担い手不足をどう解消し、どうやって食べていける農業にするか地域は悩んでいます。
 TPP 大筋合意を前提に、県は強い農業を目指し、輸出を含め対応策を推進してきましたが、TPP は破綻であります。米の生産調整の廃止ではなく、経営所得安定対策の維持継続や食料自給率を高めるために、地産地消を安全で安心な食物を提供し、国内消費の増大に力を注ぐことこそ必要だと思いますが、今後どのように長野県農業を維持発展させていくのか、部長の考えをお聞かせください。

【農政部長】
農業問題へのご質問に、順次お答えをいたします。
5-① 初めに、国の農協改革に対する見解等についてでございますが、国は昨年11月に策定した農業競争力強化プログラムにおいて、全農(全国農業協同組合連合会)に対し、入札等による有利調達の検討など、生産資材の買い方の見直し、委託販売から買い取り販売への転換など、農産物の売り方の見直し、この2つの見直しを求めておりまして、見直しについては、全農の自己改革をフォローアップしていくとしているところでございます。
 一方、全農長野県本部は、農家が生産した成果物などをJAを通して委託販売より、全国の卸売市場に出荷しております。一例としては、夏場のレタスの本県の市場占有率は9割を占めておりますが、その主体は全農長野県本部が扱っております。このことは、強い価格形成力による県内農業者の所得の確保、また国民への農産物の安定供給に重要な役割を果たしていると認識しているところでございます。
 現在、全農が取り組む改革案の内容は見えておらず、全農長野県本部の運営への影響は不明でありますが、今回の改革が、JA長野県グループが進めている自己改革に沿ったものであり、本県農業者の所得向上につながるものとなるよう強く望むところでありまして、今後の動向を注視してまいりたいと考えております。

5-② 次に、今後の本県農業を維持発展させる取り組みについてですが、人口減少や高齢化による国内消費が縮小し、また農業従事者が急激に減少していく中においては、TPP協定の発効のいかんにかかわらず、長野県農業の体質強化を図り、県内の農業者が、これからも安定した農業経営が維持できる環境を早急に整えていく必要があるとの基本的な考えに基づき、農政部の施策を進めてきたところでございます。
 具体的には、基盤整備により、乗用田植え機やコンバイン作業ができる区画への拡大、担い手への農地の集積・集約や、ICTの活用による生産コストの低減、また県オリジナル品種など、収益性の高い農産物の生産拡大や輸出など、多様な販路の開拓による所得の向上などに取り組んでいるところでございます。これらの施策は、第2期長野県食と農業農村振興計画に位置づけており、今後も着実に推進することで、本県農業の維持発展を図ってまいりたいと考えております。
 なお、経営所得安定対策につきましては、平成30年からの米政策の見直しにおいて、米の直接支払交付金は廃止されるものの、他の交付金は全て維持されますので、これらの助成制度を最大限に活用し、農業者の所得確保に向け、引き続き取り組みを進めてまいります。
 以上でございます。

6.林業振興について

【毛利議員】
次に、林業振興について伺います。
6-①大森林組合不正事件
  県の事務執行について
最初に大北森林組合不正事件について、林務部長に伺います。大北森林組合の事件は、依然として真相究明が尽くされていません。補助金適正化法違反と詐欺罪に関しては、長野地裁で裁判が行われ判決が3月末には出されますが、政治的な解決はまだまだであります。
 県が大北森林組合に対して返還請求した8億8000万円のうち、1000万円の返還済みを除く8億7000万円は、過日森林組合から再計画が出され、向こう33年間で返済するとのことです。50年の返済期間では長すぎ、33年なら返済できる保証があるのかという問題ではないと思います。
 計画の確実性、実効性を論ずる以前に、そもそも時効を除く8億8000万円を返還請求したことの妥当性が、もっと厳密に精査されなければならないのではないでしょうか。つまり県の検証委員会は、行き過ぎた助言に組合が付け込むかたちで事件が始まったとしていますが、この間の裁判で被告の元専務は、県職員が既に作業道等が開いている場所の補助金の交付申請についてもこれを認めていたと陳述しており、予算消化のプレッシャーのために県が年度末に事業を持ちかけ、開いている作業道と同じ場所であっても申請可能にした上で、完了確認もしないまま、補助金を不正に支出していたことがほぼ明らかになっています。であれば、全額組合に請求したことは、果たして妥当かどうか問われなければなりません。
 ここで問題になるのは、県の関わり方です。北安地方事務所関係者は、架空申請の認識はなかった、いずれ事業を完了してくれるものと思ったと供述しています。でも、同じ路線を何回も申請してくるのにおかしいと思わなかったことが不思議です。
 例えば霊松寺線。党県議団も何回か現地調査してきましたが、ここは分収造林地に行くための林業公社管理する作業道で、昭和56年に森林組合が開設した立派な道が開いています。そこにまた、平成23年度に道を開けるための申請が出てくるわけですから、図面を見ればすぐチェックできるはずです。それなのに、現場にも行かずチェックもしない、完了検査もしないで書類だけは出させて、工事もしないのに補助金を出す、これが架空申請でなくて、何と言えばいいのでしょうか。
 このような申請は、マムシ平線、こぼれ沢線、大峰キャンプ場線、中の貝出口線など多数あります。既に道が開いているところにこんなかたちで申請させて、補助金をノーチェックのまま出していくことが果たして許されるでしょうか。こんなことで、県の事務執行が適正に実施されたと言えますか、部長の見解を伺います。

6-②大森林組合不正事件
補助金返還請求の妥当性の検証について
私は、県の責任も大きいことから、共同正犯あるいは過失相殺的な意味合いもあり、全額組合に返還を求めたことが果たして妥当なのか検証が必要だと思いますが、知事の見解を伺います。

6-③大森林組合不正事件
知事の設置したいとする委員会と百条委員会について
 知事は議会初日の16日、関係者に対する損害賠償をするに当たり、難しい問題をたくさん含んでいるために専門家の視点で方向づけを行うとし、弁護士などからなる委員会を設置して、検討を加速するとの提案説明を行いました。その直後の20日、監査委員は、補助金の国庫返還に係る加算金3億5300万円余について、関わった県職員に対し、関係法令にのっとって賠償請求の検討を行い、責任が認められれば厳正に対処することを求める勧告を行いました。
 そこで知事に伺います。知事が設置したいと考えている委員会は、県からも森林組合からも独立した第三者で構成すべきであること、さらに、事件の経過も踏まえた対応がなされなければ責任の所在が明らかにならないために、県行政の関わり方についても踏み込んだ対応のできる委員会であるべきだと考えますが、どんな性格の委員会にするのか、知事の考え方を伺います。
東京都議会は豊洲問題で百条委員会を設置し、真相究明をすることを決めました。
長野県議会も、嘘を言えば偽証罪に問われる百条委員会を設置し、議会権能をしっかり発揮して、徹底的な真相究明を行うべきではないかと呼びかけさせていただきます。

6-⑤大森林組合不正事件
補助金のあり方について
補助金のあり方について知事に伺います。
 今回の事件では、本庁林務部から年度末になって予算消化の依頼が来る、あるいは北安地方事務所の農林部課で予算を使い切れなくなり、担当職員が上司に叱責されたり、予算消化のために作業道の長さを書類上で延長してつじつま合わせをやったりなど、補助金執行に関する県のあり方も問われています。年度末に仕事を依頼して予算消化させようとすること自体が、合理性を欠いています。
 予算を残せば次年度に減らされるために、無理やり使い切るといった消化のための予算執行のあり方について、見直すことが必要ではないでしょうか。予算消化ありきで仕事するような組織風土を変えていくべきと考えますが、知事の見解を伺います。

6-⑥森林税について
森林税について、林務部長に伺います。
 地域の林業関係者の皆さんは、大北森林組合の事件以来、きちんとやってきた者にしわ寄せが来て、書類がうるさくなり、予算も減って、森林整備が進まないと嘆いています。森林税は6億数千万円。使い勝手の悪い国の補助金の隘路を埋める役割もあったと思いますが、どこに使われているのかなかなか目に見えないこと、さらに2015年度執行額が、収入の3分の2にとどまったことなど問題視されております。森林税が執行できなかった原因をどのようにとらえておりますか。
 また、30年度以降の継続の可否も判断しなければなりませんが、林務行政に県民の厳しい目が注がれている中、どのように考えて取り組んでいくのか、林務部長にお聞きいたします。

6-⑦信州F・POWERプロジェクトについて
林業は植えて育てて使ってこそ好循環となります。そこで県産材利用の信州F・POWERプロジェクトについて林務部長に伺います。
 森林資源の有効活用と林業再生を旗印にした産学官連携のF・POWERプロジェクトが平成24年4月から始まりました。10万立米の原木を製材用として使い、10.5万立米は発電用として使う、総事業費126億円という巨大なものです。
 製材施設は27年4月より稼働し始めましたが、発電施設は当初計画より2年近く遅れ、いまだ着工に至っておりません。県が肝いりで進めてきた事業で、遅れの責任の一端は県も担っています。製材事業は既にスタートしていますが、製材に使う端材などはバイオマス発電に使うとされていました。この間事業内容に変更がありましたが、なぜを遅れているのか、どのような変更があったのか、その理由について林務部長の説明を求めます。
 共産党県議団は、計画当初より発電量1万4500キロワットは巨大すぎ、原料となる材の調達に無理がありはしないかと指摘してきました。
 木質バイオマス発電は、再生可能エネルギーとしては熱源調達にお金のかからない太陽光や風力発電と違い、木材を調達するのに費用がかかるため、発電規模を大きくして発電コストを抑えようとします。しかし、変動費である燃料費は常に発電コストの一定の割合を占めることから、排熱も徹底的に利用することで採算を取ろうとします。
 ですから、自然エネルギーで先行する欧州諸国では、木質バイオマスは発電ではなく、熱利用を基本としながらバイオエネルギーを発展させてきた経過があります。F・POWERは当初は熱利用もすることになっていましたが、検討の結果中止するとのことですから、ますます大規模な発電をしても、採算は取れないことになります。
 製材用原木は、県内原木流通4団体、サプライチェーンセンターから供給するとのことですが、材を集めてくるのも大変、熱利用もできないとなれば、発電事業の先行きに明るい見通しは望めません。この際規模の縮小を検討し、例えば5000キロワットで3カ所など、熱利用もでき、小規模にして県内分散にするほうが林業振興に役立つと考えますが、いかがでしょうか。

【林務部長】
林業振興に関してのご質問いただきました。順次お答えを申し上げたいと思います。

6-①初めに、大北森林組合の補助金不適正受給事案における県の事務執行についてのご質問でございます。
 裁判におきましては、詐欺罪等に問われている組合の元専務理事は、当時の北安曇地方事務所林務課職員が、全く工事を行わない既設道の補助申請を認めていたと陳述しておりますが、県職員の証人尋問におきましては「そのような申請とは認識していなかった」と証言をしておりまして、県においても再確認をしているところでございます。
 当時の地方事務所林務課では、地域の森林整備への要望の高まりを受けまして、組合が森林整備に乗り出すよう、本来組合が行うべき集約化業務の肩代わりをするなど多忙を極める中で、内規等で定められた現地調査を適切に実施しておりませんでした。
 作業道整備につきましては、全箇所の現地調査が義務づけられている中で、規定どおりに現地調査を実施せず、不適正な申請を見逃してしまったことはあってはならないものであると、検証委員会の報告においても厳しく指摘され、平成27年12月には、関係した職員に対し厳正な懲戒処分が行われております。
 二度とこうした不適切な事務処理が行われないよう、平成27年10月に、林務部コンプライアンス推進行動計画を策定いたしまして、職員のコンプライアンス意識の改革とともに、補助金申請時のチェックリスト作成など、書類調査の厳格化や、2人体制での現地調査による県政体制の強化などに現在取り組んでいるところでございます。

6-⑥ 次に、森林づくり県民税についてのご質問でございます。
 森林税を活用し、これまで里山整備を重点的に実施してまいりましたが、平成26年度以降の実績が、目標でございます年間3000ヘクタールに達していない状況となっております。里山整備につきましては、近年、特に国庫補助を活用できるまとまった区域での整備実績が低下してきており、このことは、現在未整備で残されている里山の所有が、細かく大きくまとめて整備を行うことが困難になってきていることなどによるものと考えております。
 今後の里山整備につきましては、整備が必要な箇所を地域の皆様にお示ししていくことや、地域が持続的な里山の整備利用を行うための計画づくりや、支援のあり方など、今後の必要な取り組みの方向性について、改めて整理することが必要だと考えております。その上で、超過課税というかたちで県民の皆様に森林税のご負担をお願いするには、何を目的としてどのような事業を行っていくのか、そして、そのためにどれぐらい財源が必要になってくるのかといった検討が必要となってまいります。
 現在、森林づくり県民会議や税制研究会において、これまでの取り組みの検証を始めていただいておりまして、こうした議論を踏まえながら、森林税の今後のあり方について検討してまいりたいと考えております。

6-⑦ 次に、信州F・POWERプロジェクトの発電施設に関するご質問でございます。
 このプロジェクトの木質バイオマス発電施設は、平成26年度末に公表させていただきましたが、さまざまな状況変化に対応するために計画の変更を行っております。
 その主な変更点といたしましては、為替変動や消費税率の引き上げなどに伴いまして事業費を増額したこと、資本強化のために事業主体を1社から共同体制へ変更したこと、より効率的な発電システムを実現するためプラントメーカーを変更したこと、そしてプラントの直接的な熱利用から製材工場で発生するおが粉を活用したペレット利用に変更したことなど、確実な事業運営に資する変更内容となっております。
 その複数の主要施策とともに、企業の収益性でありますとか、木材調達の確実性の精査などに十分時間をかけて取り組んできた結果、当初の建設スケジュールから遅れは生じておりますが、現在着工に向けて、建設工事の工程でありますとか、出資契約、融資契約、プラントの保守管理契約などの詳細な内容について、最終の調整が進められておるところでございます。
 次に、発電の規模に関するご質問でございます。
 発電施設の規模でございますが、このプロジェクトの木材加工用の丸太を伐採する際に発生する低質材と、併設の製材工場の製材端材を合わせた量、約18万立方メートルを無駄なく活用できる規模ということになっております。現在、県内の木材流通4団体で構成いたしますサプライチェーンセンターによりまして、このプロジェクトへの木材の安定供給体制が既に整ってきている中で、収益性の向上を図り、森林所有者の利益還元を最大限に導くためには、計画した規模の発電施設が適当と考えておるところでございます。
 県といたしましては、森林県から林業県の飛躍に向けた重要なプロジェクトとして、事業の推進に対しまして引き続き全力で取り組んでまいる所存でございます。  以上でございます。

【阿部知事】
林業振興に関連して、3点ご質問いただきました。
6-② まず、大北森林組合に対する補助金の返還請求についてのご質問でございます。
 今回の組合に対する返還請求は、補助金等交付規則に基づき補助金交付決定を取り消し、組合に対して既に交付している補助金の返還請求を行ったものでございます。法令の趣旨にのっとったものというふうに考えております。

6-③ 損害賠償等に関する弁護士等による委員会、第三者で構成すべきではないか、県の関わり方について踏み込んだ対応ができる委員会となるのか、こうしたご質問をいただきました。今回設置する弁護士等による委員会は、損害賠償請求等に関して、法的な観点から複数の専門家による協議の中で方向づけを行っていただくことが必要と考え、設置をいたしたいと考えております。
 今回設置する委員会、日本弁護士連合会が平成22年に策定しております、企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン、これを参考としながら委員の選定を行っていきたいと考えております。委員会におきましては、損害賠償に関し必要な検討をしっかりと行っていただいきたいと考えています。

6-⑤ 予算執行のあり方に係る組織風土についてでございますが、これは県民の皆様方にとって、あるいは納税者の皆様方にとって、予算を使い切るなどという発想はあってはならないものだと思っております。年度当初に予算執行方針で通知をいたしておりますけれども、この中でも予算を使い切るという考えを払拭し、効率的な執行や契約差金などによる不用となった予算については不執行とするということを指示しているところであります。
 常にコスト意識、目的意識を持って、最小のコストで最大の効果が発揮できるように、県庁挙げてこの業務の推進、そしてこうした意識の徹底を図っていきたいというふうに考えております。
 以上でございます。

【毛利議員】
知事に再度伺います。
地方公務員法は服務規程の中で、第32条に職員の法令等及び上司の職務上の命令に従う義務を定めており、職員は法令とともに上司の職務上の命令には忠実に従わなければならないとしています。
 大北森林組合問題でも、上司に「過去に開設した道でも木が生えているような道は申請したらどうか」「開いている道を活用すればいい」と言われ、部下が組合に架空申請を示唆したり、「調査要領に基づいて調査しろ」と命令された部下が、現場がないものは調査ができないと困惑している様子などが裁判で証言されています。
 この場合は実際に書類を書かせた者が責任を問われ、予算消化の発信元は本庁だったのに、地方事務所の末端の職員が責任を取らされることになっております。だから厳密な再検証が必要だと申し上げているのですが、賠償責任を問う観点として、職務命令も考慮に入れて責任の所在に応じてやるべきだと考えますが、知事の見解を伺います。
【阿部知事】
大北森林組合の事案に関して、損害賠償等に関する委員会について再度ご質問をちょうだいいたしました。
 この委員会におきましては、関係法令に基づきまして大北森林組合や同組合元専務理事、あるいは関与した県職員などについて、それぞれの行為の状況や不適正受給に至った経過、職員の職責等も踏まえて、損害賠償請求に関し必要な検討をしっかり行っていただく必要があるというふうに考えております。  以上です。

7.医療と介護問題について

【毛利議員】
続きまして、医療と介護問題について健康福祉部長に伺います。

7-① 地域医療構想案について
2025年には2割が75歳以上になるという中で、医療機能ごとの病床数を推計し、病床の機能分化や連携、医療と介護が一体となった体制づくりを進めるとの国の方針に基づき、現在より1681床削減する長野県地域医療構想が策定されました。
 長野県の入院患者は2030年には、2013年と比較し1割程度増加する、75歳以上は3割増えると予測しています。後期高齢者が増えるわけなので、入院受療率も高まります。しかし病床数は、稼働病床からほぼ1割削減することになっていて真逆の方向です。病床が削減されれば入院できず、患者は在宅医療とならざるを得ません。在宅と言っても、そもそも訪問診療できる医師がいるのかといえば、私の住む岡谷市でも対応できるとしているのは医療機関の2割にもなりません。
 受け皿もないのに病床削減することは、医療難民をつくります。県はあくまでも推計値と言っていますが、法律の審査の過程で厚生労働大臣は、「都道府県知事は医療審議会の意見を聞いて、過剰な医療機能への転換の中止の要請・命令や、稼働していない病床の削減要請ができる」と答えています。長野県は、ベッド数の削減を強制することも踏み込むこともないということでいいのでしょうか。
 医療費抑制が国の方針の中、国から厳しく対応が迫られることが予想されます。高齢者世帯が多く、地理的状況も厳しい中で、低い医療費で頑張ってきた長野県がさらなる削減を迫られることのないよう、国には毅然と対応していただきたいと思いますが、部長、いかがですか。

7-②国保坂下病院について
 国保坂下病院について伺います。
病院利用者の3割は、南木曽町や大桑村など、木曽南部の患者です。地域の命綱になっている病院が診療所化することに大きな反対運動が起こっており、中津川市の皆さんと共同の運動が続けられています。私も、何度か現地調査と住民の皆さんとの話し合いに出させていただき、中津川の議員とともに坂下病院の関係者からもお話を伺ってまいりましたが、最大の問題は医師不足と経営悪化とのことでした。
 昨年の12月中津川市長は、平成30年に向けて入院機能を縮小した上で、外来機能を維持し、他から80床の老健を移し、地域包括ケアの拠点にすると発表しました。既に救急の受け入れは夜間は対応せず、受け入れる曜日も限定的で縮小されており、外科の外来は中止しています。地域住民の要望とはかけ離れた方向に進みつつあることに、不安が広がっています。
 県を越えた問題で対応しにくい面があろうかとは思いますが、部長は岐阜県庁にまで出向いて、要請をしていただいたと伺いました。そのことは歓迎しますが、具体的な内容、何らかの前進面について伺います。
 ぜひとも国に対しては、県をまたいでいる問題ですので、医師確保を働きかけていただき、住民の切なる思いに応えていただきたいと思いますが、いかがでいかがでしょうか。
7-③医師不足について
木曽病院、県内では、ほとんどの病院で慢性的な医師不足であり、先生方の献身的な努力によって何とか診療していただいています。しかし、医療崩壊が始まりつつあります。坂下病院と並んで深刻なのは、木曽地域の皆さんにとっての命綱である木曽病院です。  木曽病院の医師不足も深刻で、地域住民が病院を守ろうと、木曽病院、木曽の地域医療を守る会の運動を続けています。木曽谷の皆さんが安心して住めるよう、現状と対策について伺います。

7-④地域包括ケアシステムについて
 地域包括ケアシステムについて伺います。
2025年を見据え、病院から施設へ、施設から在宅への流れが急速に進みつつあります。しかし問題は、その流れがきちんとコーディネートできる仕組みと体制が確立されているかどうかです。
 在宅の場合、いつでも困ったときにお医者さんや看護師が来てくれれば安心感に繋がります。そもそも在宅を支える医師も看護師もいません。運良くいた場合でも、長野県は山間地もために何かあったときにすぐ対応できない困難さがあります。医師の側にしてみれば、1人で24時間対応することは無理ということになります。そこで県下の在宅医療を担う医師及び看護師の体制はどの程度可能なのか、現状を伺います。
7-⑤介護保険の改悪と対応について
介護保険の一連の改悪はあまりに人間の尊厳を無視したものです。要支援1、2の介護保険外しが本格的に4月から始まり、新総合事業になります。今利用している皆さんは現状のまま利用可能だと言われていますが、総額が決められているので、枠内に抑えるために介護認定の更新時に緩和した水準によるサービスA、もしくはBに切り下げられることはないでしょうか。
 さらに新規の場合チェックリストだけで判断され、介護認定から外される懸念があります。市町村ごとにサービスが違い、対応も違う中で、利用者の立場に立った対応はきちんとチェックできていくのか伺います。
7-⑥高齢者の行き場と特養の整備について
 独居や老老介護の多い長野県では、所得による減免が利用できる特養の入居希望者も多いわけですが、要介護1、2が外されたことによって、行き場がなくなっている現状があります。病院を追い出され、施設からも追い出され、家庭の介護力はないという状況では、長野県の老人は漂流して行き場を失ってしまいます。在宅を勧めることと併せ特養の整備は不可欠ですが、特養の整備について伺います。
 

【健康福祉部長】
医療・介護分野のご質問に、順次お答えいたします。
7-①まず、地域医療構想については、患者の病状に応じた病床の整備や、病院ではなく自宅や介護施設などで療養したいという県民の希望を実現するための在宅医療等の整備を図るなど、医療費の抑制ではなく、患者の医療ニーズに応じた安全で効率的な医療提供体制を整備していくことに主眼があると考えております。
 必要病床数の推計は、地域の関係者が将来に向けて地域の医療需要に応じた医療提供体制を構築するための参考値であると考えております。県には稼働している病床を削減する権限はなく、県としては地域の関係者が将来の医療需要の変化を共有し、それに適合した医療提供体制を構築するための自主的な取り組みを促進してまいりたいと考えております。
 また医療費については、県としては社会保障制度の充実を図るため、国の責任により国民健康保険の財政基盤の強化を図ることなどを、全国知事会等を通じて国に要望してきたところであります。

7-②坂下病院に関する岐阜県への要請についてのお尋ねがございました。
国保坂下病院については、平成28年12月21日に中津川市長から、外来機能と在宅医療担う病院として、医師確保が可能な診療科を残すという方針が示されました。坂下病院は、木曽地域南部の多くの住民の方々が利用していることから、私が岐阜県庁に出向き協議を行い、坂下病院での勤務を希望する医師等の情報を両県で共有していくこと、今後も県境地域で問題が発生した場合には両県で協議をしていくことを合意したところです。引き続き坂下病院の動向を注視するとともに、岐阜県との連絡を密接に行い対応してまいりたいと考えております。

7-③医師確保に関する取り組みについては、地域医療を維持・充実する上で、県で行っているドクターバンク事業や就学資金の貸与などの取り組みだけでは、十分な医師を確保することは困難であります。特に木曽圏域でも見られるような医師の地域や診療科の偏在については、国における抜本的な改善策が必要であり、これまでも国に対して、診療報酬による誘導策、専門医や病院長の要件として、医師不足地域での勤務を一定期間義務づけるなどの制度構築を要望してまいりました。
 現在国では、医師の需給を見通し、医師の確保策や地域偏在対策の検討を行っており、県としても国の検討を踏まえて対応してまいります。
 木曽圏域の中核的な機能を担う木曽病院では、医師の数が十分とは言えない中で、坂下病院の医療機能の再編により、新たな需要への対応が求められることが予想されます。県では、ドクターバンク事業や地域医療介護総合確保基金の活用のほか、信州大学や県立病院機構などと連携して、引き続き医師の確保に取り組んでまいりたいと考えております。

7-④在宅医療を担う医師・看護師の現状と対策についてのお尋ねがございました。
 県内の在宅医療の現状については、平成29年2月現在、訪問診療を行う医療機関が575、訪問看護ステーションは162ございます。医師については、県内の医師が不足している中、在宅医療を担う開業医が高齢化しており、在宅医療を担う医師の確保は重要な課題であると認識しております。
 県ではこれまで、在宅医療を担う医療機関の運営費に対する支援を行うとともに、在宅医療ではさまざまな職種の連携が重要であるため、関係団体が参加し、在宅医療体制のあり方について協議を行う長野県在宅医療推進連絡協議会の運営などへの支援を行ってきたところです。
 また看護師については、訪問看護師数は増加傾向にありますが、今後在宅医療のニーズがより一層増加すると考えられるため、訪問看護師の養成、定着が重要な課題となっております。このため、訪問看護に必要な知識・技術を習得するための研修や、訪問看護事業所の運営等に関する支援などを実施しているところであります。
 今後とも、医師や看護師などの多職種が連携し、県民の皆さんが安心して在宅医療が受けられる体制づくりを進めてまいります。

7-⑤介護予防・日常生活支援総合事業については、県では保険者の取り組み状況を把握するため、昨年11月に意向調査を実施するとともに、その後も実態把握に努めております。これらの調査結果では、これまでの介護予防、訪問介護、通所介護と同じサービスは、県内63保険者のうち既に移行している20保険者で実施され、今年4月に移行する43保険者においても実施されることとなっております。また、新たに始まる住民主体のサービスの実施は、地域住民やNPO等多様な担い手が必要であり、既に移行した20保険者においても5保険者の実施となっております。
 県としては、引き続き多様なサービスの受け皿づくりを行う生活支援コーディネーターの養成研修の実施等により、地域でのサービス構築を支援するとともに、全ての保険者が、介護予防・日常生活支援総合事業に移行後も、提供されているサービスの内容や単価等に関して実態を把握し、必要な助言・支援を行ってまいります。

7-⑥特別養護老人ホームについては、これまでも将来の要介護者数の推計を踏まえ、市町村の意見を聞きながら策定した県の高齢者プランに基づき、計画的に整備をしてきたところであります。現在の第6期高齢者プランでは、特別養護老人ホームの定員数が、平成27年3月末の1万2221人から、平成30年3月末には1万3330人へ、1109人増える見込みとなっており、同プランに基づき整備を行っているところであります。
 平成29年度には、今後の介護需要を改めて把握し、平成30年度から始まる第7期高齢者プランの策定作業を行う予定であります。入所希望者が多い特別養護老人ホームについては、身近な地域で家庭的なサービスを受けることができる地域密着型や、入所者のプライバシーに配慮した個室ユニット型などについて、地域の意見、地域の意向に配慮した上で続き計画的に整備してまいります。  以上でございます。

8.メガソーラー発電と景観・環境破壊について

【毛利議員】
メガソーラー発電と景観環境破壊について、環境部長に伺います。
 自然エネルギー導入の取り組みが急速に広がっています。とりわけ太陽光発電は大規模化し、巨大な森林を伐採して土地を改変し、環境破壊や災害の危険も高まるなど、住民と業者との間でトラブルになっています。
 県は全国に先駆け太陽光発電も環境アセスの対象に加え、今、諏訪市四賀ソーラー事業、一条メガソーラー長野佐久穂海瀬発電所、佐久市メガソーラー発電所がアセス対象事業として手続が行われています。条例の対象になる太陽光発電所は、森林面積20ヘクタール以上であり、それ以下の設置は県内至る所で行われています。
 市町村ごとに条例や要綱ガイドラインをつくって対応してきていますが、困っているのが実情です。県では連絡会をつくり情報やノウハウを公開してきており、この間市町村対応マニュアルをつくってきていただいていることは評価しますが、解決のためには時間もかかり、住民運動による多大なエネルギーが必要となっています。業者は県外が多く、全量売電ということで、長野県の自然が壊され災害の被害を被るだけで、何の恩恵もない状況は憂慮すべき事態です。
 県は市町村マニュアルを業者向けに作成し、県下5カ所で説明会を開いて業者への配慮を求めたところですが、参加状況や、そこで出された質問等について部長に伺います。
 メガソーラー設置に当たっては、地元説明をまずするよう求めていますが、私は、住民理解が大事であって、反対運動が根強く起こっているところでの設置は不適切だと考えています。県には、事業者に対して住民理解が前提があることをしっかり指導していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 県内でさまざま起こっているトラブルの原因として、国できちんとしたメガソーラーに対する規制がないことが大きな問題だと思います。県としても国に対し、メガソーラー設置のための乱開発に何らかの規制を設けるよう求めてほしいと思いますが、いかがですか。
【環境部長】
メガソーラー発電に関連して、3点ご質問いただきました。
 1点目の太陽光発電の事業者向け説明会の開催状況についてのお尋ねでございます。太陽光発電を適正に推進するための市町村対応マニュアルは、市町村におきまして環境影響評価制度の対象とならないものも含め、太陽光発電に関わる住民の不安等に対応できるよう策定したものであります。
 これは事業者にも活用していただくことで、地域と調和した発電事業が実施されるよう、事業者向けの抜粋を昨年11月に取りまとめました。この内容を事業者に十分周知するため、12月以降、この抜粋を活用した事業者向け説明会を東北中南信の4会場に加え、諏訪地域においても開催をし、計5回にわたり約100名の出席を得て実施したところであります。
 事業者からは、地域と締結する協定案の考え方や、県景観規則の改正の適用範囲、法人事業税の課税方法などについて質問が寄せられました。私どもからは、例えば、協定案については地域と約束した事項を書面に残す際に活用をしてもらい、地域合意の下で事業を進めていただきたいといった趣旨の説明を行っております。
 2点目の太陽光発電事業者への指導についてのお尋ねであります。市町村対応マニュアルでは、太陽光発電が自然環境に大きな負荷を与えるものであったり、防災上懸念を生じさせるものであってはならないこと、事業者が住民理解の下、地域と調和した事業を進めていくことが重要であること、こういったことなどを盛り込んでおります。
 また、固定価格買取制度による発電事業は、20年という長期にわたる取り組みでありますことから、法令を遵守することはもとより、地域との合意形成の下で事業を進めていくことが発電事業の安定につながり、結果的には事業者にとってもプラスになるものと認識しております。
 このため、事業者には地域住民の皆さんに対して、地域への貢献策といったプラス面に加え、自然環境や生活環境への影響等についても明らかにして、地域の意見に耳を傾けることが重要である旨を説明しているところであります。
 最後に、太陽光発電事業への規制に関する国への要望についてのお尋ねでございます。県では、太陽光発電事業に伴う一定規模以上の開発に対して昨年度条例を改正し、環境影響評価制度の対象とするとともに、防災のための調整池の対象降雨確率の引き上げなどにより対応をしてまいったところであります。本年度は県景観規則を改正し、県景観計画の区域での一定面積を超える太陽光発電施設の建設について、事前届け出の対象としたところであります。
 また、固定価格買取制度の設備認定の権限は経済産業大臣にあることから、これまでも国に対して地域との調和の観点から、さまざまな提言・要望を行ってまいりました。長野県からの提言については、自治体向けに認定情報を提供するシステムの導入や、発電事業の各プロセスで、事業者が遵守すべき事項などを明らかにしたガイドラインの策定、また、条例など他法令違反も含め、認定基準に適合しないとみなされた場合の認定取り消し措置の導入など、国の仕組みに順次反映されてきておりますが、認定に際して地域の意見を聞く仕組みを構築するよう、引き続き国に求めてまいります。  以上であります。

9.学びの改革基本構想について

【毛利議員】
学びの改革基本構想について教育長に伺います。
9-①学びの内容について
最初に学びの内容について伺います。パブリックコメントや各種の意見交換を受けて、県教委がまとめた論点の中で、基礎的・基本的な学びは、都市部校、中山間地校などにかかわらず、全ての高校で共通して展開すべきものという考え方は、立地のいかんにかかわらず教育権を保障していくものであり、納得できるものです。
 しかし、発展的・応用的な学びは、学校の立地を生かして展開することが効果的だと、相変わらず差別的な考え方を示しています。都市部校では専門性を有する教員を複数配置し、多様で専門性の高い学びが可能とする一方、中山間地校や山間地校の生徒には、教職員の体制は不十分であっても、小規模の強みを生かした学びが可能であり、キャリア教育を進めるとしています。
 生徒の学びの保障に差をつける考え方は、教育の機会の均等の原則からいっても、疑問を感じます。パブコメの中でも批判が集中しました。つまり、中山間地の子どもたちには質的な保障が不十分でもいいということでしょうか。この問題では12月議会に質問させていただいたおりに、教育長は立地の特性を生かして学びの環境を整えるものであり、探究的な学びの一例にすぎないと答えています。
 学校がどこに立地していようと、学びの内容が保障されることが原則です。立地によって学びの内容に差があってもいい根拠は何ですか。こんな説明を繰り返していては、実施段階で地域の皆さんに納得のいく説明はできません。改めるべきです。教育長の見解を伺います。

9-②学級の規模について
学級の規模について伺います。
 今回、都市部普通高校は6学級以上望ましく、8学級規模の設置を目指すとしています。
1学年8学級にすれば、単純に計算しても都市部の学校数は半分に減り、一方学校の規模は1000人と巨大なものになります。さまざまな困難を抱えた生徒が増える傾向にある中で、きめ細かな対応ができるのか疑問ですし、教室のキャパもありません。
 私の11月議会の質問に対して教育長は、8学級にすれば、社会科にしても理科にしても、全ての分野で専門性を持つ教員は複数配置できる、部活動や自主活動、クラブ活動も活性化し、多様な活動ができるとしています。
 しかし、学級数が多ければ活力が出て、少なければ活力がないという発想はあまりにステロタイプの発想ではないでしょうか。県民アンケートの結果をどう受け止め、生かそうとしているのかお答えください。
 中学校の特別支援学校に在籍していた生徒の7割が高校に進学している現状や、多様な学習歴、生活歴を持つ生徒も数多く高校に進学しており、見えない貧困も広がっています。こうした多様性に対するためには、細やかな教育が必要ではないでしょうか。
 標準法による教員配置、つまり40人学級は学びの改革の大前提だとの考え方のもとに、学校を大規模化すれば遠くまで通わざるを得ず、通学に伴う金銭的・体力的負担も増やすばかりです。統廃合が進み、地域の活力の低下にもつながります。
 長野県は中学3年生まで30人規模学級を導入し、全国でも先進的な役割を果たしています。地方創生と言っているのですから、できるところから少人数学級編制を導入し、かけがえのない思春期の大切な時期を豊かなものにして、地域の学校を残すべきと思いますが、教育長の見解を伺います。

9-③パブリックコメントの分析と策定スケジュールについて
教育は国家百年の計とも言われます。当事者としての高校生の意見を取り入れようと努力した点は評価しますが、パブコメを分析しただけでも、賛成より反対の声が多数という状況です。保護者も地域も、どんな構想が出されているか知りません。こういう下で基本構想策定を3月中に行うことは拙速すぎます。パブコメの内容も一つ一つ真剣に検討すべきであり、さらなる県民的議論も必要です。3月末までの策定スケジュールは変更すべきと考えますが、いかがでしょうか。

【教育長】
学びの改革基本構想についてのお尋ねでございます。
9-①まず立地による学びの内容の差というお尋ねでございますが、当然でありますけれども、学習指導要領にのっとった教育課程を全ての県立高校で展開しておりまして、この点では、学校がどこに立地していようと、同じ学びの内容が保障されるわけであります。
 一方で、義務教育を修了した生徒に対して、自らの進路、生き方を見据えた多様な学びの選択肢を提供することが、高校教育の使命の一つであると考えております。学校規模や設置されている学科などにより、学校の特色や実情に応じた学びをそれぞれ展開し、学校の立地の特徴を生かした探求的な学びを進めていくことが重要であると考えております。

9-② 次に、学級数の基準に対する県民アンケートの受けとめでございます。平成27年に実施したアンケートでは、適当と思う1学年の学級規模、5~6学級が41.4%、3~4学級が38.9%、2学級以下が9.6%、7~8学級が7.1%という結果でありました。この結果から見ますと、県民の方から、まず1学年の規模は3学級以上が望ましいというふうに考えていると受け止めております。
 そして、ご指摘のありました学びの改革基本構想案にあります都市部普通高校の記述の中で、学級規模は8学級が理想的であるというふうに記述がありますが、これに関してパブリックコメント等のご意見の中では、都市部普通校の全てが8学級規模を理想とするかのような記述であるというご意見が複数寄せられました。
 それらを踏まえまして、2月の教育委員会定例会におきまして、規模の根拠をより明確に示すとともに、この記述については、6学級以上の規模が望ましく、規模の大きさを最も生かせる8学級規模の学校の設置も目指して検討する、という趣旨であることを明らかにしたところであります。
 次に高校での少人数学級等導入に関する考え方でありますが、高校は卒業後の自立を見据えた学びも必要であり、少人数学級の必要性については、学級単位の授業を基本とする義務教育とは異なる状況にあるというふうに考えております。高校では、これまでも習熟度別学習や選択講座、専門学科の実習の少人数実施等、学級とは別の学習集団を形成し、多様な生徒に対応してきたところであります。
 各校の少人数学習集団編成の支援のほか、特別支援教育、生徒指導等、課題に応じた教員を配置できるよう努めているところでありまして、今後もこの手法により、学習環境の充実を図ることが望ましいと考えております。
 一方で、高校における特別支援教育の重要性は増しております。通級による指導につきましてはモデル校を設け、教育課程の編成や指導体制との研究を進めているところでありまして、このモデル校での実践をもとに国の政策に合わせ、導入を目指してまいりたいと考えております。

9-③最後に、学びの改革基本構想の策定スケジュールに対する考え方でありますが、パブリックコメントでは、131名から290件のご意見が寄せられました。このうち今回示された枠組みは、学びをカテゴリ化する、あるいは都市部普通校の学級規模の根拠が不明であるなど、今後の検討やさらなる説明が必要と思われるご意見が86件、約3割という状況でありました。
 こうしたパブリックコメント、あるいはその他の意見交換等でいただいたご意見、ご要望、疑問に答えるべく、先ほど申し上げました都市部普通校の学級規模など主要な論点について、県教育委員会の考えを2月の教育委員会定例会において明らかにしたところであります。またご意見の中には、各地域の状況に言及したものと、さらに一歩進めた議論を望むものも多く含まれておりました。
 社会の激変等少子化が進む中で、学びの改革は待ったなしであり、将来にわたって高校教育の学びの質を保障することは、次世代に対する私たち世代の責任であると考えております。今後も意見交換しながら、学びの改革基本構想を当初計画した3月に決定し、来年度からこの基本構想をより具体化し、地域や学校の特色を生かした探求的な学びの普及に向けた方策や、旧通学区ごとの再編の基本方針、方向性等を盛り込んだ「学びの改革実施方針」の検討に入ることが必要であり、望ましいことと考えております。

【毛利議員】
大北森林組合にかかわって、知事にこの点をお聞きさせていただきたいと思うのですが、監査委員の勧告の中で、損害賠償について検討を開始するということがあり、その中に道義的な問題についても検討をしてほしいという内容がありました。私はこれ、異例な勧告だなというふうに思いました。
 それで、地方公務員法に基づいて、上司の命令で末端の者が具体的に実行したら、その人たちが重い処分を受け、命令した者がさほど責任を問われないということは、これはいかがなものかというふうに思いますので、そういう点でその法律の専門家が法律にのっとってやるだけではなく、いわゆる監査委員の勧告でありますところの道義的という部分をどう受け止めるかという点を、再度お聞かせいただきたいと思います。
 格差と貧困が広がり生活の困難が深刻化している中でも、今県下ではあちらこちらで自分たちが声を上げて政治を変えていこうという向きが広まっています。各所で実施されている子ども食堂の動きもその一つです。
 第1次高校再編を経験した当時の高校生生徒会役員が、先月「学びの改革構想を考える意見交換会」に参加し、「急に統廃合の学校名として自分の高校が出て戸惑い、知事を呼んで意見を聞く場を設けようと働きかけ、真剣に調べて議論を交わしたことで高校生自身が成長した成功体験を持って大人になってほしい」と語っていましたが、ここにこそ主権者を育てる貴重な取り組みがあるのではないでしょうか。
 国づくり地域づくりの主人公は他でもない、国民一人一人です。政治への不信感を取り除くために、子ども医療費の窓口完全無料化など、まっとうな要求には真正面から応えていく政治が必要だと思います。
 代表質問で十分お答えをいただけなかった分については、引き続き一般質問及びそれぞれの委員会で団の同僚議員が取り上げさせていただきますことを申し上げ、質問を終わります。
【阿部知事】
大北森林組合の委員会に関連して先ほどご質問にお答えしたのは、委員会に関連してという趣旨のご質問だと受け止めてあのような答弁をさせていただきました。
 もとより、この弁護士等による委員会というのは、私はやはりしっかり法的な検討していただくということが重要だというふうに思っております。
 先ほど上司と部下との関係という話もありました。例えば、ほかのケースでも、悪意の第3者がいたときに、間接的に事務は問題があったけれども、その相手方がより根本的な問題があったとき、誰が損害賠償責任を負うのかというようなことも、実は法的な検討する上では極めて重要な論点だと私は思っております。
 そういう意味で、この弁護士等による委員会の中で法的な検討をしっかり行っていただいて、県民の皆様方にも説明責任を県として果たせるようにしていきたいというのが私の思いであります。
 また、道義的という部分は、これは文字どおり道義的な話だと思います。この監査委員の皆様方から出されたと勧告というのは、私も真摯に受け止めて対応していかなければいけないと思っています。そういう意味で、出された内容についてはしっかりと受け止めながら、今後、県としての対応はきちんと行っていきたいというふうに思っております。  以上です。

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