日本共産党長野県会議員団

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議会質問

2017年2月定例会 山口典久議員一般質問

  1. 働き方の改革について
  2. 介護保険以降問題について
  3. 高校通学費援助について

1.働き方の改革について

【山口議員】
働き方の改革、特に労働時間、残業時間の問題について質問をいたします。
体も心も壊され、過労死、過労自殺に追いやられる異常な長時間労働が、深刻な社会問題になっています。
 こうした中、安倍首相が議長を務める働き方改革実現会議が、2月14日、残業時間の上限を特例で年間720時間、1カ月平均60時間も可能とする原案を示しました。これは年間360時間、1カ月45時間と定めた限度額、いわゆる厚生労働大臣告示の2倍もの残業を許容するものであり、今、働き方の改革のあり方が厳しく問われています。

①最初に長野県内の労働時間、残業等の労働環境の実態について伺います。
 「カローシ」という言葉が国際語になって、もはや20年以上になります。労働法制の規制緩和によって非正規雇用労働者の割合が急増し、労働者全体の賃下げ、労働条件全体の悪化をもたらし、正社員には異常な長時間、過密労働の常態化を招きました。過労死、過労自殺の労災認定件数は、1998年度の52件から、2015年度は189件へと4倍近くに激増をしています。
 昨年、電通の若い女性社員の過労自殺が労災認定され、大きな社会問題になりましたが、長野県内でも、建設関係で働いていた男性の過労自殺が、1月20日、伊那労働基準監督署において労災認定されています。悲惨な過労死事件を引き起こす異常な長時間労働、残業の解決は緊急の課題です。現在、県内労働者の労働時間、特に残業等の労働環境の実態はどうなっているのでしょうか。

②次に、労働時間の短縮への長野県の取り組みの進捗状況、成果、今後の取り組みについて伺います。
 労働時間短縮は、しあわせ信州創造プランや長野県人口定着・確かな暮らし実現総合戦略にも盛り込まれております。多様な働き方の導入や、職場環境の改善に取り組む企業をいきいきアドバンスカンパニーとして認証し、借入金利の優遇や減税を行うこと、また、労働局、経済団体、労働団体等の参画による取り組みを行うことなど具体的に掲げられています。こうした県の取り組みの進捗状況と成果はどうでしょうか。
 さらに来年度予算では、多様な働き方普及促進事業、事業費4053万2000円が盛り込まれております。事業の具体的な内容はどのようなものでしょうか。長時間労働の是正の効果をどの程度見込んでいるのでしょうか。
 この間、県内の実態をお聞きしてまいりました。年360時間の大臣告示の限度時間どころか、特別条項によって960時間の残業が行われていた製造業の事業所もありました。この事業所はその後是正されましたが、それでも720時間の残業が行われているそうです。  製造業やサービス業だけではありません。医療や介護の現場でも深刻です。労働組合が行った生活実態調査の話を聞きました。病棟勤務のある男性の介護職員は、ナースコールや赤外線センサーが頻繁に鳴り続ける中で、走って対応することも多いそうですが、深夜勤や準夜勤も交えながら週7日連続出勤のこともあり、もう毎日疲れが取れず、帰宅する車の運転もフラフラだと訴えています。この生活実態調査では、ぎりぎりのところで働いている深刻な実態が次々と報告されています。

③こうした長時間超過密の労働は、医療や介護の事故やトラブルの要因ともなるものです。
業種や事業所の規模などによっても、労働時間や残業などの労働環境はさまざまな違いがあります。こうした中でこの問題を解決していくために、労働局や労働団体を初めとした関係機関や団体とともに、より一層の踏み込んだ対策を検討してほしいと思いますが、いかがでしょうか。
 以上3点、産業労働部長にお伺いいたします。

【産業労働部長】
3点を順次お答えいたします。
①まず、県内の労働環境の実態についてのご質問でございます。
国の調査によりますと、平成27年の県内の労働者の年間総実労働時間は、2030.4時間となっております。リーマンショック以降、以前に比べますと短くなってはいるものの、ここ数年ほぼ横ばいで推移しております。また1年間の現金給与総額は455万5656円、リーマンショックで一時落ち込みましたが、その後、緩やかに増加してきております。

②次に、県の労働時間短縮に向けての取り組み状況と成果についてのご質問です。
働き方改革を進める県の職場いきいきアドバンスカンパニーの認証を受けた県内企業は、今日現在53社になっております。この認証を受けますと、県などの融資制度において金利の優遇措置が受けられるほか、29年度と30年度の競争入札参加資格審査における加点措置も受けられることとなっております。現在200社近い県内企業が認証取得を検討中ですので、その背中を押すものと考えております。
 また昨年2月には、労働団体、経済団体、長野労働局、長野県から構成される長野県働き方改革女性活躍推進会議を新たに設置し、労働環境の分析や過重労働の解消に向けた対策などを議論してまいりました。その中、先月17日には推進会議と共催で、経営側と労働側の双方に働き方改革についての理解を深める、長野県働き方改革シンポジウムを開催したところです。
 また、今後長時間労働を是正するためには、企業の主体的な取り組みと働く方々の意識改革も必要です。そこで、多様な働き方普及促進事業では、企業に対しましては多様な勤務制度の導入や、アドバンスカンパニーの認証取得を積極的に働きかけるとともに、県民の皆様には、働き方改革の機運の醸成を図ることとしております。
 県といたしましては、この事業によりまして、フレックスタイムや在宅勤務、年休の時間単位取得など、各事業所に合った改善策の導入を促進し、長時間労働の是正につなげてまいりたいと考えております。  

③最後に、労働組合等と一体となった取り組みについてのご質問です。
 昨年の推進会議の議論を通じまして、今後働き方改革を進めていくためには、業種や規模によって働く環境が異なっていることから、具体的な取り組みは、各職場で労使がよく話し合って、現場に合った取り組みを進めることがポイントであると、共通認識を得ることができました。
 これを踏まえまして、昨年12月に開催した推進会議では、今年の取り組みとして、長時間労働の削減や年次有給休暇の取得促進に向け、働く方々と経営者が各職場で話し合いを進めることを確認したところでございます。
 県といたしましては、今後もこの推進会議や関係団体と一緒に長時間労働の是正について働きかけを行うとともに、県独自の取り組みも連携して進めてまいりたいと考えております。以上でございます。

【山口議員】
ただいまご答弁で、県独自の取り組みも行っていきたいというふうに答弁いただきました。
産業労働部長に再度お伺いいたします。
 次期総合5カ年計画も策定するということですが、労働時間、そして残業時間の数値はもちろんのことですが、それにとどまらない健康状態、疲労の度合い、子どもたちや家族と向き合う時間があるかなど、生活の実態を丸ごと捉える調査も踏み込んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 また、職場いきいきアドバンスカンパニーの認定基準に労働時間や残業の短縮目標の設定も加えるなど、実効力を高める見直しも行っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。再度、産業労働部長にお伺いをいたします。
【産業労働部長】
実態調査につきましては、県で取り組んでおります毎年行っております調査の中で、検討を加えてまいりたいと考えております。
 またアドバンスカンパニーの認証の基準の見直しにつきましては、関係する方々ともう一回話をする中で、良い方向、これを見いだしてまいりたいと思っております。以上でございます。

2.介護保険以降問題について

【山口議員】
介護保険の移行問題について伺います。
次に、障害者が65歳を迎えた際に、障害者福祉サービスから介護保険に移行する制度について伺います。

①この制度の運用に関して最初に伺います。2013年に施行された障害者総合支援法が、昨年改定をされました。しかしこの改定は、障害者と家族らが改善を求めていた内容からはかけ離れ、現場ではさまざまな混乱や失望が広がっています。
 その1つが、65歳を超えた障害者が半ば強制的に介護保険に移行させられる介護優先原則です。65歳で介護保険を適用されることにより、障害者はそれまで無料だった福祉サービス利用料が一部自己負担になったり、これまで受けていたサービスが介護保険のメニューになって受けられなくなってしまったりと、65歳を境に生活の質と水準が引き下がることが問題になっています。
 このことについては、2014年9月定例会、2015年2月定例会で高村京子議員が質問をしています。15年2月定例会の答弁では、同2月に厚労省からの通知があり、利用者の意向を聞き取り、介護保険サービスにより適切な支援を受けることが可能か判断すること、あるいは介護保険の支給量では十分なサービスを受けられない場合には、障害福祉サービスを支給するなど、適切な運用に努めることなど、市町村に周知徹底するということでした。
 しかしその後も、現実には、例えば障害者グループホームは65歳を過ぎても利用できるのに、介護保険関連のグループホームは制度上3年ごとの更新なので、運営事業者が65歳以上は更新契約しない傾向があります。
障害者の方からは、「65歳過ぎたらホームを追い出されるのですか」こうした不安の声も上がっています。また、視覚障害者の方が介護保険に移行したら、それまで週3回ヘルパーに来てもらっていたのが週1回だけとなり、その上サービス利用料の自己負担も課せられ悩んでいる方もいます。
 県は制度の適切な運用について、市町村に周知徹底を図るとしてまいりました。どのように周知徹底や改善の手だてを取っていただいたのでしょうか。介護保険への移行の実態を把握するとともに、一層の周知徹底や改善を求めますが、いかがでしょうか。  

②次に総合支援法に先立つ自立支援法については、2010年、自立支援法違憲訴訟を起こした原告団、弁護団と国が和解を行いました。そして障害者の基本的人権の行使を支援する新法の制定を約束しました。さらに新法である総合支援法制定時にも、障害者の意見を反映させて検討するとしました。
 しかし、先ほどの介護保険優先原則一つとっても、障害者や家族との約束をほごにするものといわざるを得ません。県として障害を持つ皆さんの思いや不安を踏まえ、障害者総合支援法の介護保険優先原則の規定を廃止するよう、国に強く求めてほしいと考えますが、いかがでしょうか。

③次に、障害者福祉の社会資源や人材の確保について伺います。
 こうした障害者福祉をめぐる問題は、入所施設、通所施設等の社会資源の不足また福祉人材の不足と無関係ではないと思われます。社会資源や福祉人材の不足により、多くの障害者が家族の介護に頼らざるを得ず、こうした生活の長期化が障害者の自立を困難なものにしている面もあります。
 県は平成27年度から29年度まで、第4期長野県障害福祉計画に取り組んでいます。障害者の地域生活への移行、地域生活継続の支援、就労支援等の課題に対応したサービス提供体制の整備等を進めていただいておりますが、現在、グループホームやショートステイは求められているニーズに対して足りているのでしょうか。今後必要な方策を求められている改善について、どのように考えているのでしょうか。  以上、健康福祉部長に伺います。

【健康福祉部長】
3点ご質問いただきましたので、順次回答させていただきます。
①まず、介護サービス移行制度については、県ではこれまで市町村に対し、制度の考え方を十分認識して適切に対応するよう、文書による周知に加え、担当者会議や障害支援区分認定調査員研修会を通じて取り扱いの徹底を図ってまいりました。
 その一方で、市町村により制度の運用に差があるとも聞いていることから、障害者が必要なサービスを受けられるよう、引き続き市町村に対し、制度の適切な運用について周知徹底をしてまいります。

②介護保険優先制度の廃止に向けた国への要請について、ご質問いただきました。
障害者総合支援法第7条の規定に基づく介護保険優先の原則は、介護保険導入時に考え方が整理されており、国では社会保障制度の一般原則である保険優先のルールに沿ったものとしております。
 しかしながら、介護保険に移行することにより、新たに利用者負担が生じる、従来の障害福祉サービス事業所が利用できなくなる場合があるなどの課題が、国の審議会の中でも指摘されていたため、障害者総合支援法の改正により、平成30年4月から利用者負担の軽減措置が講じられるほか、障害福祉サービス事業所が介護保険事業所の指定を受けやすくなる仕組みの導入等に関する法案が、国会に提出されているところであります。
 県といたしましては、制度の周知を図るとともに、今後の国の動向等を注視してまいりたいと考えております。

③グループホームやショートステイなど地域で生活する障害者を支えるための基盤整備については、現在第4期障害福祉計画に基づき、国の補助制度を活用し、計画的に進めており、平成26年度からこれまでに、グループホームを48カ所、ショートステイを17カ所新たに整備しております。
 しかしながら、地域によってはグループホーム等の整備が十分ではないなど、さらなる整備の要望が多く寄せられているとともに、運営面でも安定したサービス提供を図るための世話人や支援員等の人材確保に課題があると認識をしております。
 県としては国に対し、施設整備に係る予算の十分な確保と、利用者への適切な支援に必要な人員配置のための報酬制度の改善等について、引き続き要望してまいりたいと考えております。以上でございます。

【山口議員】
障害を持つ皆さんが、安心して暮らしの場を選択できるようになるかどうか、これが大事なポイントだというふうに思います。
 今、ご答弁ありましたが、とりわけグループホームやショートステイに関しては、国に対して、補助の必要性をぜひ積極的に要望していただきたいと思いますし、県としても独自の努力をお願いをするものであります。

3.高校通学費援助について

【山口議員】
次に、高校生の遠距離通学について伺います。
 私は一昨年の9月定例会、昨年の6月定例会で、高校生の遠距離通学の定期代への補助を求めました。
文部科学省が行った子どもの学習費調査によりますと、公立高校に通う高校生1人当たりの教育費は年間約41万円、私立高校の場合は100万円になるそうです。
この中で通学関係費については、文科省の調査では、公立高校の全国的な平均が年間7万5000円だそうです。一方、例えば長野市内でも鬼無里や戸隠から通学をした場合、年間30万円、40万円を超えるケースもあります。
これが、例えば兄弟が2人通う場合や、親の通勤費なども重なれば、とりわけ重い負担となり家計は大きく圧迫されます。
 中山間地、過疎地域では、どこへ行ってもこの通学費の負担の切実な悩みが出されます。このことによって市街地へ転居が進み、一層の人口流出を招くことにもなりかねません。

①高校生の通学費助成については、平成27年度の長野県貧困対策推進計画の策定時において、市町村に調査を行っていると思いますが、この調査の結果はどうなっているでしょうか。県民文化部長にお伺いいたします。

②昨年6月定例会の私の質問に教育長のご答弁は、「遠距離通学にかかわる経済的負担がどのような影響を与えているかについて、その実態把握が必要であると考えていること、県の貸与制度はあるが、これを利用していない生徒で経済的負担の影響はないかなど、実態把握を取りまとめたい」というものでした。この実態調査の結果はどのようなものだったでしょうか、教育長に伺います。

③長野県には、今も述べましたが、奨学金制度としての遠距離通学費の制度があります。
通学費、下宿代、寮費など月額の10分の7、2万6000円を限度に無利息で貸与する制度です。しかし、貸与を受ける条件には収入基準もあります。また償還は、1年据え置きで2年目から始まりますので、大学へ進学した場合は一番お金がかかるときに返済も始まります。
 こうした中で、この制度を使いたくても使えない家庭も少なくないと思われます。この遠距離通学費の貸与制度の充実や見直しも必要と思われます。また通学費助成を行っている市町村に対し、その一部を県も支援することで、県と市町村の共同の事業としていくことは、市町村にも喜ばれる対策になるでしょう。
この間県が行った実態調査の結果も踏まえて、こうした対応をぜひ検討してほしいと思いますが、いかがでしょうか。教育長にお伺いをいたします。

【県民文化部長】
①高校通学にかかります市町村の補助についての調査の内容についてのお尋ねでございます。
 この調査は、子どもの貧困対策推進計画の策定に当たりまして、市町村の通学費補助の状況を把握するため、平成28年1月に調査を実施したものでございます。
その結果、高校生に対します通学費補助を行っている市町村数は20の市町村となっているところでございます。その内容を見ますと、住民税非課税世帯や児童扶養手当支給対象のひとり親世帯など、経済的困難を抱える家庭を対象に補助している自治体が6団体、所得等の要件は設けずに、通学距離の長さや公共交通機関の交通費負担の大きさに着目して補助している自治体が10団体、今、申し上げました両方の補助を実施している自治体が2団体、その他2団体という状況となっているところでございます。
 したがいまして、調査時点におきましては、いわゆる貧困の関係で申し上げますと、経済的困難を抱える家庭を対象に補助している自治体は、合計8団体となっている状況でございます。以上です。
【教育長】
②実態調査の結果についてでございます。
 昨年の9月に県立高校を通じて、市町村民税所得割額の非課税世帯のうち1、2年生の保護者にアンケート調査を実施いたしまして、1501人から回答をいただきました。高校進学先を決める際に、自宅から学校までの距離が理由で希望校を変更したのは181人、回答者の12.1%でございました。
 その181人に対してその理由を複数回答可能ということで聞いたところ、そもそも公共交通機関がない、あるいは通学に長時間かかるなどの意見も多く、通学費の負担だけが理由ではなく、さまざまな実情がある中で進学校を変更しているということがわかりました。
 また進学先を検討する際に、遠距離通学費貸与制度を知っていたかということも聞いたところ、1383人、92.1%が知らなかったという回答結果でございました。

③その結果を踏まえた対応についてでございますけれども、遠距離通学費貸与制度の周知が不十分であったということから、11月には全中学3年生の保護者への周知を中学校へ依頼するとともに、新たにポスターを作成いたしまして、中学校、高校それから市町村教育委員会等へ掲示を依頼しましたほか、ラジオ、テレビを通じた広報などにも取り組んで、周知を図っているところでございます。
 遠距離通学費貸与制度の一層の活用を図ってまいりたいというふうに思っていますし、また、高校生を持つ家庭の経済的負担の件につきましては、平成26年度から、市町村民税所得割額の非課税世帯を対象に高校生等奨学給付金を支給しているところでありますけれども、新年度予算では、支給単価を増額してさらなる支援拡大を図ることとしております。
 各市町村では、こうした県の支援を前提として、地域の事情を踏まえ通学費の助成を行っているというふうに考えておりますので、それぞれに役割分担をしながら、生徒の学習環境を引き続き努めてまいりたいというふうに思っております。

【山口議員】
安心して子育てのできる長野県をつくる、豊かな自然とともに暮らしたいという大都市の人たちの移住などを進めるというのは、長野県人口定着・確かな暮らし実現総合戦略で知事も強調されていらっしゃることです。
 遠距離通学費の負担は、そのためにもクリアすべき重要な課題であると思います。今後も一層前向きな検討を要望して、質問を終わります。

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