2017年6月定例会 藤岡義英議員一般質問
- 【藤岡議員】
- おはようございます。まず最初に、6月25日に木曽地方を中心に発生いたしました地震により、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。
1.共謀罪法案について
- 【藤岡議員】
- 日本共産党県議団、藤岡義英です。まず、共謀罪法案について質問いたします。
共謀罪盛り込んだテロ等準備罪を新設する改正組織犯罪処罰法が、15日、自民党、公明党、日本維新の会などの賛成で強行成立されました。
共謀罪は思想信条の自由、内心の自由など基本的人権を侵害する違憲立法です。説明が不十分だとの国民の不安や批判の声が圧倒的であったにもかかわらず、委員会審議を一方的に打ち切り、委員会採決を抜きにした中間報告という卑劣な国会ルール無視の禁じ手を行使し、強行成立させました。議会制民主主義を踏みにじる暴挙であり、断じて許されません。
共謀罪は犯罪が実際に起こっていない段階でも、2人以上で計画し、そのうち1人が実行準備行為をしたと捜査機関がみなせば全員を処罰できるものです。きつい処罰が大原則の日本の刑法体系が大きく変わることとなります。実行されていない犯罪を処罰するとなると、国民の心の中に踏み込んだ捜査は避けられません。市民活動や市民の話し合いも監視の対象にされ、盗聴捜査等の拡大が懸念されています。
衆議院と参議院での政府の説明が大きく変わりました。安倍首相は、一般人は対象外、組織的犯罪集団に限定しているなどと説明していましたが、参議院では環境保護団体や人権保護団体でも”隠れみの”とみなされることや、組織的犯罪集団の構成員でない人も周辺者と判断すれば逮捕処罰の対象となる、つまり、一般人は誰かを決めるのは自分たちでなくではなく、捜査機関であることが明らかになりました。テロ対策とか国際組織犯罪防止条約の締結のためという口実も完全に崩れました。
法律の内容も憲法違反、成立のさせ方も究極の強行採決という共謀罪法についての知事の御所見をお聞きいたします。
- 【阿部知事】
- テロ等準備罪の内容とする組織犯罪処罰法の一部改正についての所見という御質問でございます。
国会運営でのあり方については、これは国会の場でしっかり検討いただくものというふうに考えておりますので、県知事としてコメントすべき立場にはないというふうに思っております。この組織犯罪処罰法の成立を受けての新聞各紙の世論調査を見ると、国民の賛否は分かれているなというふうに思っております。
毎日のように、昨今海外でのテロのニュースが報じられている中で、やはり国民の中にはこうした日本の平和安定というものをどう維持していくべきかというふうに思いを至らせる人たちも多いと思いますし、またその反面、思想・良心の自由、あるいは表現の自由、こうしたものはこれからも守り続けなければいけないという強い思いを持ってる方も大勢いらっしゃるわけであります。
まさにグローバル化の中で世界が大きく変わろうとしている中で、日本がどういう道を選択するのか、これは国民、主権者としての国民一人一人に突きつけられている大きな課題だというふうに受け止めております。以上です。
- 【藤岡議員】
- 知事におかれましては、県民の基本的人権を守る立場に立って御発言されることを期待し、次に進みたいと思います。
2.佐久市樋橋地区開発について
- 【藤岡議員】
- 佐久市樋橋地区の開発計画について質問いたします。
佐久市では、佐久平駅の南に位置する樋橋地区約22ヘクタールについて、地権者による準備組合と連携し、イオンモールやホテル、企業の本社機能等を誘致することにより、雇用創出や市の魅力向上を図るとしています。
しかし、もともとこの地域をはじめとする岩村田地域の水田について、県は農業農村整備計画で、良食味米生産を支援するとして、基幹的農業水利施設の補修更新を行い、農業用水の確保のための対応を行っていました。
樋橋地区は平成23年から28年度に事業が行われた千ヶ滝湯川地区県営かんがい排水事業の受益地であったわけですが、平成28年度中に離脱し、農振除外の手続を行っております。同じくイオンモールが大型商業施設の進出を検討している千曲市屋代の用地を含む一帯は、昨年度まで土地改良事業を行っており、8年間は農振法に基づき除外に制限がかかります。一方樋橋地区は制限がかかりません。県営かんがい事業の工事が完了する前に離脱したから良いというのです。これは県民理解が得られるはずがないと思います。①そもそも農振法第13条第2項に定める農振除外の5要件の5では、「土地基盤整備事業が完了した年度の翌年度から起算して8年が経過していること」とありますが、ここに整備事業中に離脱して農振除外を受けられるという項目は書いてありません。つまり受益地だった樋橋地区は29年度から8年間は農振の除外に制限がかかると解釈できます。 よって、県は農地転用の許可をすべきではないのではないかと考えますがいかがでしょうか、農政部長にお聞きいたします。
②この樋橋地区に来る予定のイオンモールは、すでに佐久市にあるイオンモールの約3倍の規模の施設と言われています。佐久市も例外でなく人口が減少しております。市議会では否決されましたが、佐久市病院組合や佐久市ホテル旅館組合から、樋橋地区の開発について慎重な対応を求める陳情が寄せられております。
この開発計画は、地元商店街が衰退し、周辺地域との格差を広げてしまうと考えておりますが、県の認識と対策を産業労働部長にお伺いいたします。③農振除外の手続のほかに用途地域の編入、土地区画整備事業の決定の手続も同時に進められています。
6月4日に佐久市都市計画公聴会が行われ、この事業の決定に対しての意見陳述が行われました。賛成意見は1名、反対意見は2名でした。今後、知事への協議が必要となるかと思いますが、時期はいつになるでしょうか。決定権限は佐久市であっても、県として佐久地域全体の均衡ある発展を考えた都市計画となるよう、必要な助言を行うべきではないかと考えますがいかがでしょうか。これは建設部長にお聞きいたします。
- 【農政部長】
- ①佐久市樋橋地区の開発計画における農地転用についてのお尋ねですが、樋橋地区の開発計画地18.5ヘクタールを含む343ヘクタールを受益とする千ヶ滝湯川地区県営かんがい排水事業を、地元土地改良区からの申請により平成23年度から実施しております。
平成27年6月に開発計画地の受益者全員から地元土地改良区に対し、事業受益者地から除外を求める申し出がされ、地元土地改良区から県に協議がなされております。県としましては、当該事業の計画実施に影響を及ぼさないものであり、受益地からの除外はやむを得ないものと判断し、事業計画の変更を公告縦覧するための手続きを行い、平成28年9月に変更計画を確定し、除外しております。
計画地は佐久平駅の南に位置し、市街化が見込まれる農地転用許可が可能な農地であり、佐久市においては、農振除外にかかわる農業振興地域整備計画の変更案の公告を本年4月に行い、異議申し出なく、縦覧が終了しております。
県といたしましては、農業振興地域整備計画の変更協議、また農地転用許可に当たっては、法令に従って適正に審査を行ってまいりたいと考えております。以上でございます。
- 【産業労働部長】
- ②佐久市樋橋地区への大型店出店と、地元商店街への影響についてのお尋ねでございます。地域における大型店の出店に当たりましては、地域経済の活性化や住民の利便性の向上が期待されます一方で、地域コミュニティーや高齢者の買い物の場といった役割を持つ地元商店街の振興と、いかに両立させていくかということが課題でございます。
この点につきましては、大店立地法等の法規制により対応できるものではございませんで、大型店と地元商店街が連携したまちづくりを進めていくことが、解決への道であるというふうに考えているところでございます。
当該地区では、平成11年にイオンモール佐久平が開店した際に、地元商店街と共同で電子マネーカードを発行するといった実績もあり、また今回の計画の中でも、岩村田本町商店街への交通アクセスを改善するなど、地元佐久市による取り組みも予定されているところでございます。
県といたしましては、地域住民にとってよりよいまちづくりとなるよう地元の動向を注視いたしますとともに、商店街に対する必要な支援策について、地域の皆様と一緒になって考えてまいりたいというふうに思っております。以上でございます。
- 【建設部長】
- ③佐久市樋橋地区における都市計画の用途地域及び土地区画整備事業施行区域の決定についてのお尋ねでございます。
都市計画区域、都市計画決定に係る法定の県知事への協議は、本年秋ごろに行う予定と佐久市より聞いております。県としましては、これまで佐久市との事前協議の中で、近隣市町村への情報提供や、既存商店街を含めた関係団体からの意見聴取を促す等、広域的な見地から適宜助言を行ってまいりました。
また佐久市では、平成28年7月に佐久市都市計画マスタープランの見直しを行うとともに、人口減少社会を見据えた立地適正化計画を平成29年3月に公表しておりますが、これら計画との整合も確認してまいりました。今後も佐久市との打ち合わせや県知事への協議において、住民の合意形成がされた市の目指すべき都市像の実現に向けて、法令に定められた広域の見地からの調整を図る観点、または県が定める都市計画との適合を図る観点から、適時的確に助言を行ってまいります。
- 【藤岡議員】
- これ以上の大型商業施設の進出に手をかすことが、地方創生につながるのか甚だ疑問です。 県には開発計画を引き続き注視していただきたいと強く要望しておきます。
農政部長に再質問いたします。農地転用の許可・不許可について、今後のスケジュールはどのように考えておられますか、お聞きいたします。
- 【農政部長】
- 農地転用手続のスケジュールについてお答えをいたします。佐久市による農振農用地区域からの除外および都市計画法上の用途地域への編入が終了した後において農地転用許可の申請を受け付け、審査いたします。
転用申請面積は約18.5ヘクタールの見込みと聞いておりますので、審査にあたっては、関東農政局との協議が必要となる案件と考えております。これらの手続を経まして、県として適正に判断してまいりたいと考えております。以上でございます。
3.望月高校の対応について
- 【藤岡議員】
- 続いての質問に移ります。望月高校の対応について質問いたします。
①第1次高校再編の対象になってしまった望月高校は、地域高校としての役割を発揮し、さまざまな活動に取り組んできました。同じく再編の対象となった白馬高校は、例外中の例外とのことでありましたが、同じように取り扱うべきではないでしょうか。白馬高校で対応したように、望月高校でも対応してほしいと思いますがいかがでしょうか。教育長に見解をお聞きいたします。
②学びの改革基本構想についても質問いたします。3月30日に学びの改革基本構想が決定されました。
生徒・教職員を含め、県民からの意見の聞き取りが不十分だとして決定を急ぐべきではないとの声もあったわけですが、大変残念であります。実際、「この学びの改革について知っていますか」と地元の方々に尋ねても、再編の問題など中身を知らないのが現状であります。
今後、基本構想から実施方針を策定すべく、旧通学区12地区で行われる地域懇談会や各種団体から意見聴取を行うとされていますが、各地区1回2時間となっており、これでは地域の意見をくみ取ることはできないと思います。回数も時間もふやすべきと考えますがいかがでしょうか。
また、地域懇談会とは別に学校関係者や高校生自身の意見を聞く場を設けるべきではないかと考えますがいかがでしょうか。いずれも教育長にお聞きいたします。③都市部存立校と中山間地存立校の考え方について質問いたします。地歴公民科や理科の分野で、都市部校では専門性を有する教員の配置は可能ですが、中山間地内校は専門性を有する教員による事業が受けられない科目が出てくる場合があるのではないかと感じました。先の2月県議会で教育長は、「全ての県立高校で基本的には同じ学びの内容が保障される。」と答弁されていましたが、いかがでしょうか。教育長にお聞きいたします。
④基本構想を読んでみて、都市部存立校と中山間地存立校の学びの差がさらに目立つ印象を受けました。学校を立地によって差別し、教員配置、設備の面など教育条件の上でも差がついてしまうのではと危惧しています。市内に住む子供たちの学力が、町村に住む子供たちと比較してもほとんど変わらないという学力の地域格差の分析結果もあるようです。ですから、交通の便の悪い長野県において、都市部の学校に上級学校を目指す生徒を集中的に集めることは効率的ではありません。居住する近くの学校で上級学校を目指すのか、地元の企業に就職し地域の担い手となるのか、生徒が入学後、選択できるようになれる環境を整えることこそが必要ではないでしょうか。教育長にお聞きいたします。
⑤少子化が進む情勢は、少人数学級の実現の好機であるとの意見は多数寄せられたと思います。しかし、基本構想は、逆に高校統廃合のチャンスだと捉えていると感じられます。国の標準法に基づいて40人学級を前提としており、少人数学級を導入すると県独自の負担が生じることを理由に、最初からこの考えを除外しているのではないでしょうか。少人数学級に対する県民の意見をスタートからシャットアウトするものであり、基本構想で、結論付けなくてもよいのではないかと思いますがいかがですか。教育長にお聞きいたします。
- 【教育長】
- ①望月高校への対応と学びの改革基本構想についてのお尋ねでございます。
まず、白馬高校と同様の対応を求めるということに関してでございますが、望月高校は創立90周年を迎え、近年では先進的な学びを導入する試みや、生徒へのきめ細やかな支援、地域の祭りへの参加やボランティア清掃等、地域の高校として教育活動の充実に努めてきておりますし、また、県教育委員会でもこれまで教員の加配に努める等支援をしてきたところでございます。しかしながら、平成29年5月1日の在籍生徒数をもって第1期高等学校再編計画の基準に該当したことから、再編対象ということになったわけでございます。
一方白馬高校は、その将来像が世界水準の山岳高原観光地づくりを目指す県の観光政策に合致するとともに、少子化を見据え、白馬・小谷両村が再編基準に該当する以前から存続に向けた検討を始め、そして基準該当時には寮や公営塾の設置等の具体的な支援策の提案がなされたところでありまして、そういう意味では、白馬高校と同列に論じることはできないのではないかというふうに考えているところでございます。②次に、学びの改革に係る地域懇談会についてであります。学びの改革基本構想は、県議会での御議論をはじめとして、パブリックコメント、各種団体との意見交換等により幅広い県民の皆様から多くのご意見をいただき、3月に策定したものでございます。その中で、高校生、若手教員等とも有意義な意見交換ができたというふうに考えております。そして3月以来、県内の小中高等学校、市町村、産業界や大学関係者等への周知にも努めてきたところでございます。
今年度は7月から8月にかけて、旧12通学区ごとに地域懇談会を開催し、学びの改革基本構想を基に、新たな教育の推進や新たな学校づくりについて広く意見交換を行う予定であります。さらに、2回目の地域懇談会についても開催する予定としているとしているところでございます。
地域懇談会はどなたでも参加可能としておりまして、学校関係者や生徒についても積極的な参加を促しており、幅広い参加を得て活発な議論を期待しているとこであります。さらに、地域懇談会とは別に、8月には中学生及びその保護者との意見交換会を県内6会場で開催する予定としております。学びの改革実施方針の策定に向けまして、学校関係者や生徒を含め、県民の皆様との幅広い丁寧な議論を重ねてまいります。③次に、中山間存立校での専門性を有する教育についてでありますが、全ての県立高校には各教科に専門性を有する教諭を配置しておりまして、どの学校においても、学習指導要領にのっとった教育課程を展開しておりまして、そういう意味では同じ学びの保障をしているというところでございます。 今後も各校の課題に応じた教員の配置や学校間の連携、ICTの活用、専門性を有する地域の人的資源の活用等によりまして、中山間地存立校のさらなる教育の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。
④次に、居住地近くでの学校での進路保障についてでありますが、まさに中山間地が多く県土が広い本県の地理的特性を踏まえて、都市部にも中山間地にも高校が存立し、立地の特性やそれぞれの高校の特徴を生かした高校づくりを進めることが望ましいというふうに考えて、今回の学びの改革基本構想を策定したところであります。これからも都市部存立校、中山間地存立校のいずれにおいても、生徒の多様な進路が可能となるよう環境を整えていきたいというふうに考えております。
⑤少人数学級についてでありますが、高校は、学級単位の授業を基本とする義務教育とは異なり、卒業後の自立を見据えた学びも必要でありますので、少人数学級の必要性については義務教育とは異なるものだというふうに考えておる面もあります。高校では、これまでも習熟度別学習や選択講座、専門学科の実習の少人数実施等、学級とは別の学習集団を形成し、多様な生徒に対応してきたところであります。
各校の少人数学習集団編成への支援のほか、特別支援教育、生徒指導等課題に応じた教員を配置できるように努めてきているところでありまして、今後もこうした取り組みにより、学習環境の充実を図ってまいりたいというふうに考えており、学びの改革基本構想もこうした考えのもとに策定したところであります。以上であります。
- 【藤岡議員】
- 望月高校は地域と共に育ち、地域に愛される学校づくりを目指して90年歩んでこられました。
長野県は信州型コミュニティースクールを構築し、学校と地域住民の協働による地域に開かれた信頼される学校づくりを進めてきたと認識しております。望月高校は、その信州型コミュニティースクールの先駆けて取り組んできた模範校ではないでしょうか。教育長の答弁は大変冷たいと感じました。
この地域で役割を存分に発揮している望月高校を、数人分基準を下回ったからといって機械的に再現対象にされることに強い疑問を感じております。地域住民も同窓会の皆様も納得されておりません。特に高校生たちはどう思っているのでしょうか。
偶然ですが今年の3月、望月高校の卒業式に出席する機会がございました。卒業生代表の方が答辞を読まれたときに、「望月高校がなくなるかもしれないということをいつも心配しながら学校生活を送ってきました」と語られたのです。いろんな思い出を振り返られながらスピーチされていましたが、その部分で胸を詰まらせ、涙ながらに語られていたことに高校再編の問題が生徒さんたちを苦しめていることを知り、大変衝撃を受けました。
長野県として、望月高校の地域での役割をどう評価しているのでしょうか。第1期高校再編計画の基準の適用について慎重に対応を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。再度教育長にお聞きいたしす。
- 【教育長】
- 望月高校の地域での役割についての評価についてのお尋ねでございます。先ほどお答えしたとおり、これまで望月高校が地域の中で果たしてきた役割については十分に評価をしているところでございます。県教育委員会でもこれまで教員の加配に努める等支援してきたところでございます。
一方、第1次再編計画の中で基準に該当した地域においては、各地域において真剣に議論がなされ、それぞれの対応をとってきたところでございます。今回、生徒数の減少によって第1期高校再編計画の基準に該当しているとこでありますので、今後のあり方については、基準にのっとって検討していく必要があるというふうに考えてるとこでございます。
- 【藤岡議員】
- ぜひ教育長には、地元の意見にしっかり耳を傾けて対応していただきたい、慎重に対応していただきたいと重ねて申し上げます。
4.大北森林組合補助金不正問題について
- 【藤岡議員】
- 続いて、大北森林組合補助金不正問題について質問いたします。
3月28日に大北森林組合の補助金不正受給事件の裁判の判決が出されました。注目されたのは県の関与を認めたことでありました。判決では、「県に重大な落ち度があったと言うべきである」と厳しく県の関与を指摘しています。①県はこれまで、組合が主体的、能動的に不正をしたと主張しており見解が食い違っています。知事は議会開会日の議案説明で刑事裁判について言及されていましたが、司法が県の不正容認を認定したことについては全く触れられていませんでした。
司法の認定をどう受け止めておられますか、知事にお聞きいたします。②職員へ処分はすでに行われております。これは検証委員会の検証結果を受けてなされたものでありますが、判決を受けての処分は妥当であったかと考えられますでしょうか。これは総務部長にお聞きいたします。
③県は大北森林組合等補助金不正問題の関係者に対する損害賠償請求等について検討するため、法的課題検討委員会を設置しました。この委員会は非公開で行われています。すでに裁判でも関係者は実名での証言がなされております。もちろん報道等での配慮は必要だと思いますが、どのような議論が行われているのか、ほとんど明らかにされていないことには違和感を感じております。県民に報告できる範囲で検討委員会での議論内容を説明すべきではないでしょうか。総務部長にお聞きいたします。
④昨年11月に初めて開催されたこの問題の県民説明会について、今後再び開催される可能性も示しておられましたが、その後一切開催されておりません。前回の説明会では、知事が出席されていなかったことが批判の一つになっていました。本来判決後にすぐに開催しなければならなかったと考えますが、知事も出席する説明会を直ちに開催すべきではありませんか。知事にお聞きいたします。
- 【阿部知事】
- ①大北森林組合の補助金不適正受給について、2点、私に御質問いただきました。 まず、刑事事件の判決が出たことについての受け止めであります。内容の受け止めでございます。
今回、まさに刑事事件としての裁判であります。まず、思い起こしていただきたいのは、私ども長野県として、今回刑事告発させていただいたということを端緒にして、今回の裁判に至っているということであります。私としては、今回の事案の真相究明ということに全力で取り組む必要があるということで、あえて行政としても刑事告発させていただき、その判決が出たわけであります。
内容、その争われた内容というのは、これは刑事事件でありますから、大北森林組合と同組合の元専務理事の補助金等適正化法違反、そして元専務理事の組合に対する詐欺が問われた事件であります。これが裁判の本質部分でございます。
確かに県側の問題についても、厳しく御指摘をいただいております。これは私ども、しっかり受け止めなければいけないと思っておりますが、藤岡議員の御質問にもありましたように、県としては県職員にも厳正な処分、これまで行わせていただいてきております。今回の判決の本質であります補助金適正化法違反、そして詐欺の部分でありますけれども、まず補助金適正化法違反については、元専務理事が主導的役割を果たしたものという認定がなされたところであり、組合職員らと共謀の上、森林作業道整備を実施した事実はないのに実施したかのように偽って補助金の交付を申請し、交付を受けたものであるというふうに判示されております。
また詐欺につきましても、工事請負代金の水増し請求を行い、犯行に至る経緯に酌むべきものはなく、利欲的な動機で強い非難に値し、その犯行は常習的で誠に悪質との指摘もなされているところでございます。こうしたことは昨年11月に改革推進委員会から事案の全体像として、発表させていただいた内容と合致するものというふうに受け止めているとこでございます。 -
④ それから県民への説明についてでございます。先ほど申し上げたように、私は今回、極めて多額の不正受給が長期間にわたって行われた案件でありますので、ことあるごとにできるだけ丁寧に県としての考え方あるいは、私、知事としての考え方、この議場でも、再三にわたってお話をさせていただきましたし、会見でも丁寧に、途中で質問を打ち切るというようなことは全く行わずに、質問がある限り、丁寧に対応させてきていただいております。
また、第三者の観点での検証も必要だということで、検証委員会も立ち上げ、第三者の皆様方にも、この事実関係の解明に取り組んでいただいてきたわけでありますけれども、昨年の11月には改革推進委員会の委員の方から、私が出席しなくて批判されているというのがご質問の中にありましたが、むしろ第三者の視点でご説明いただく必要があるということを基本にして実施をさせていただきました。
当日、ご記憶と思いますけれども、当初の予定時間を大幅に上回る4時間にわたって、こちらでも全てのご質問にお答えをさせていただき、できるだけ丁寧に分かりやすくお伝えするよう、私どもとしては最大限の努力をさせてきていただいております。
今回の事案については、補助金の返還請求、あるいは国庫補助金の国への返還、先ほど申し上げた刑事事件の対応、さらには県職員の処分、さまざまな局面で、その都度その都度厳正かつ適切な対応を心がけ、またその都度、県民の皆様方にも対応を丁寧にご説明をさせてきていただいております。
残された課題は関係者に対する損害賠償請求だというふうに考えております。これにつきましては、現在、法的課題検討委員会において御検討いただいております。今後、委員会での検討結果を踏まえて、県としての方向性が定まった時点で改めて考え方をお伝えしてまいりたいというふうに考えております。以上です。
- 【総務部長】
- 御質問に順次お答えをいたします。
②まず、職員の処分の妥当性についてでございますが、県といたしましては、今回の判決において、県職員の落ち度として指摘された部分については、処分時に大きな問題と認識してございまして、処分にあたっては、関係書類の精査や職員からの徹底的な聞き取りなど詳細な調査に基づき厳正に行ったものでございます。また、公判における県職員の証言も、こうした聞き取り調査に反するものではなかったというふうに考えてございます。
したがいまして、平成27年12月25日に実施いたしましたご指摘の処分につきましては、現在も妥当なものと考えております。③次に、大北森林組合補助金不正受給事案に係る法的課題検討委員会の公開についてでございます。
この委員会は、県から関係者への損害賠償請求等について検討するものでございまして、第1回の委員会におきまして、審議会等の設置及び運営に関する指針、これは会議を原則公開とし、非公開の決定が行うことのできる場合を定めているものでございますが、この指針によりまして、県の争訟に関する事務であること、あるいは、関係する個人や法人その他の団体について議論するものであること、また、公正かつ円滑な審議を行うために会議そのものは非公開とすることとされたものでございます。
しかしながら、会議の議事要旨および資料のうち、公開可能なものを公開するとともに、委員会終了後に、委員長が報道関係者からの取材に対応することなどによりまして、県民への説明に努めているところでございます。以上であります。
- 【藤岡議員】
- 司法の認定をどう受け止めるのか、ここが大事でありまして、知事はその点について一切答弁されていなかったなと感じております。残念であります。
判決文では、組合を信頼していたなどとする県職員らの証言が信用できないことは明らか。降雪期で補助金の対象となる工事や作業が不可能であるのに、県林務部から執行未了の予算の消化を割り当てられ、本来は補助金の交付が許されない工事や作業が完了してない事業について補助金を交付する「闇繰越」などとも呼んでいた違法な手段を使っても予算消化をするよう迫られていた、地方事務所職員が予算消化を迫られていたこともあり、不正な補助金申請を始めるきっかけを与え、その後も容認し続けていたことは明らかで、県側に重要な落ち度があったとなっております。
これを読めば、全く工事がされていない架空申請を容認していないとしてきた県の主張が信用できないと司法が厳しく指摘していると私は解釈しております。そして本庁林務部に対しても、闇繰り越しを前提に地方事務所職員に予算消化を押しつけてきたとも認定しております。明らかにこれまでの県の説明と食い違っております。
県政世論調査協会が4月11日行った世論調査でも、判決を受け、県が職員の再調査をすべきかとの質問に、71%が必要と答えています。県は真摯に司法の結果を受け止めるべきであります。
法的課題検討委員会についてですが、当時、現地でいた地方事務所職員だけに責任が押しつけられてしまうのではないかと懸念しております。7年間も不正問題が続いていたことは組織的に問題があったからであり、私たちは真相究明を行ってから責任の所在を明確にして対応すべきと考えます。
再質問いたします。知事も検証委員会の結果を受けて自ら報酬の1割カットを3カ月という責任を取られました。裁判を受けて知事自身の責任の取り方についても妥当であったとお考えですか。知事にお聞きいたします。
- 【阿部知事】
- 大北森林組合医の問題については、先ほど申し上げたように私としては、厳正かつ、しっかりとした対応を行うということは当初から心がけて取り組んでおります。 裁判についてはちょっと私の説明が理解いただけなかったのかもしれませんが、刑事事件であります。県は当事者性がないわけであります。県の意見とか考え方というのを直接聴取する機会があるわけではなくて、先ほど申し上げた組合とそれから専務理事、これが犯罪に該当する行為を行ったのかということが争われた裁判でありますので、その裁判の内容だけをもって私どもの対応についておかしいのではないかというふうに指摘されるのは、もうちょっと私どもの考え方もぜひ、丁寧に御説明しておりますので、それも受け止めていただいた上で行っていただきたいというふうに思っております。
真相究明については、私も先ほどから申し上げておりますように、県としても第三者委員会を設けたり、あるいは、職員についても再三にわたる聞き取り調査を行って、この県議会の場でもそうした説明を行わせてきていただいております。裁判の証言と、県での確認内容についても、齟齬(そご)があり得るのではないかというふうに感じた点についても、改めて県職員に対して確認をしているという旨は、この場でも御説明を既にさせていただいているというふうに思っております。
相当丁寧な対応に努めさせて来ていただいております。ただ、判決文で、さまざま県の問題点も御指摘をいただいておりますし、私どもも、県側にも大変大きな問題があったということについては、これも再三この場でも御説明をさせてきていただいているわけであります。私は長野県庁として、林務部の風土自体、個々の職員の責任は懲戒処分で対応させていただいておりますけども、それのみならず、やはり県の組織の風土を変えなければいけないということで、コンプライアンスの推進ということを高く掲げて取り組みを始めているところでございます。
ぜひ県議会の皆様方には、こうした状況について十分ご理解いただいた上で、私も今回の問題、県側に問題がなかったということは申し上げているわけではありません。県側に問題があったからこそ、コンプライアンス推進が県として重要だということを申し上げてきているわけであります。そういう中で、私の責任についても言及いただきましたけれども、これは県職員を処分するに当たって、私自身も、県議会に給与減額に関する条例案を提案させていただき、県議会の皆様方の御同意をいただき、減給させていただいたところでございます。
これからの県民の皆様からの信頼回復に向けては、組織風土の改革を県職員全体でしっかりと取り組んでいくということが重要だと思っておりますので、どうか藤岡議員におかれましても、こうした観点での私どもの取り組みを、ぜひ、監視していただくと同時に、応援いただければありがたいなというふうに思っております。以上でございます。
- 【藤岡議員】
- 司法の認定を無視するのかと私は感じました。大変残念であります。
今、都議会議員選挙が行われている東京都の小池都知事は、豊洲問題で、豊洲新市場建設決定時の直接的な責任はないのですが、この問題で都民へ謝罪をし、自ら報酬の2割カット3カ月という責任を取られました。参考にしていただければと思います。
知事は議会開会日の議案説明で、森林税について継続を視野にと言及されました。大北森林組合の問題で県と司法との間で見解が食い違っている中、県民は納得しておりません。このような状態で森林税だけ継続を前提にされるのは、コンプライアンス的にいかがなものかと御指摘させていただきます。
これまで県議会は調査に強制力を持つ百条委員会の設置について、裁判が継続していることを理由にして、判断を先送りにしてきました。判決は出ました。いよいよ百条委員会の設置は待ったなしであることを申し上げ、質問を終わります。