2017年9月定例会 高村京子議員一般質問
1.新たな住宅セーフティーネット制度について
- 【高村議員】
- 新たな住宅セーフティーネット制度についてお伺いします。低年金生活者、生 活保護者、一親家庭、障害者など低廉で安心して入居できる住宅を求めている方々を 、「住宅確保要配慮者」として今年4月、衆参両院において全会一致で、住宅確保要配 慮者に対する法律の一部を改正する法律が可決成立し、国は4月26日に公布しました。
低い年金の高齢者、Wワークで働いても生活がギリギリの母子家庭、非正規労働者な ど、低所得に置かれている人々は月5万円以上も家賃がかかる民間賃貸住宅に入れず困 窮の中に置かれています。そのような人々を支援するための新たな住宅セーフティー ネット制度がスタートすることになり、国と地方公共団体の責務、住宅支援協議会の 組織等について定められました。まず、この新たな制度はどのような支援制度かご説 明ください。併せて、県が行う役割や責務はどのようなものがあるでしょうか、御認 識をお伺いいたします。対応をお伺いいたします。建設部長、お願いいたします。
- 【建設部長】
- 新たな住宅セーフティーネット制度における県の役割や責務に関するお尋ねで ございます。
この制度は、高齢者等の住宅確保要配慮者の増加が見込まれる一方で、民間の空き家 等が増加傾向にあることから、これらの空き家を住宅確保要配慮者の入居を拒まない 賃貸住宅として活用するものでございます。
県が行う役割や責務といたしましては、法律により、国や市町村とともに、住宅確 保要配慮者に対する賃貸住宅の供給を促進するための必要な措置を講ずるよう努めな ければならないとされております。具体的には、住宅確保要配慮者向け賃貸住宅の供 給促進計画の策定や、賃貸住宅の登録、住宅確保要配慮者の居住支援が主な内容でご ざいます。
県といたしましては、新たな制度について、市町村、関係団体などと協議を行うと ともに、住宅確保要配慮者の需要や、賃貸住宅を提供する貸主の意向を把握する必要 があると考えております。
- 【高村議員】
- 公営住宅に入りたくても入れない、また公営住宅の保障する賃貸の低廉制度、 これが実現するものと思います。ぜひこのことを促進していただきたいと思います。
私は平成24年9月県議会で、低所得のため低廉な住宅を切望されている人々の受け皿 を、公営住宅の整備とともに民間賃貸住宅を活用して、公営住宅の家賃低廉化のよう な施策を検討していただきたいと質問をさせていただきました。当時の北村建設部長 は、県住生活基本計画で、平成23年から平成32年までの10年間、住宅の安定供給で誰 もが安心して入居できる住宅づくりに努め、建設部だけでなく、関係者との協議をも って、公営・民間賃貸住宅等の入居環境の向上を図っていきたいと答弁をされました 。
そこで、平成23年度から今年は7年目となりますが、その進捗状況はどうですか。県 営住宅の戸数と応募状況、倍率等はどうでしょうか。住宅確保要配慮者の入居希望に 対する県営住宅と民間賃貸住宅の両方の現状について、どう認識されておられますか 。以上3点について建設部長に伺います。
- 【建設部長】
- 住生活基本計画策定後の状況についてのお尋ねでございます。住生活基本計画 に位置付けました県営住宅の供給目標は、平成23年度から10年間で7200戸であり、う ち平成27年度までの前半5年間では3600戸としておりました。平成27年度までの5年間 に統一募集による募集戸数の実績は3357戸で、目標に対して93.2%であり、統一募集 以外にも随時募集しているものもありますので、目標達成に向けて順調に推移してい るものと考えております。
また、住宅確保要配慮者の民間賃貸住宅への入居支援として行っているサービス付 き高齢者向け住宅の登録につきましては、平成23年度の202戸から平成28年度末は2968 戸と、大幅に増加しております。
次に、県営住宅の戸数と応募状況、倍率についてですが、現在1万5000戸余りの県営 住宅を管理しており、平成24年度から平成28年度までの5年間の統一募集における年度 別の平均応募倍率は、1.6倍から1.8倍となっております。住宅確保要配慮者の経営住 宅への入居世帯の状況は、65歳以上の高齢者同居世帯が約47%、障害者世帯が約16% 、一人親世帯が約14%などとなっており、県営住宅はセーフティーネットの役割を担 っているものと考えております。
また、民間賃貸住宅の状況につきましては、不動産関係団体や社会福祉関係団体か ら、住宅確保要配慮者の入居状況の情報収集をするなど、実態の把握に努めてまいり ます。
- 【高村議員】
- ただいま御答弁をいただきました。建て替えやリフォームなど環境改善を図っ た県営住宅の倍率は、平均では1.6から18倍ということですけれども、3倍以上にもな っているところがございます。
低廉で良好な住環境のところに入りたい人々がたくさんおられます。その方々に、民 間賃貸住宅でも安心して入居できる環境をつくろうと、衆参両院全会一致で成立した 新たな住宅セーフティーネット制度の施策を、年度内にぜひとも具体化していただき たいと思います。実行していただくよう要望するところです。
そのためには、福祉分野の県健康福祉部も参加して、民間住宅事業者や市町村とも 協議調整を図るための住宅支援協議会を持つ必要があります。この機能と運営が大切 と思います。この運営はどうなっていますでしょうか。また、要配慮者住宅登録制度 はいつから開始されますか。住宅相談や支援の窓口を県として位置付けていただきた いですが、強化していただきたいですがどうでしょうか。建設部長に再度伺います。
- 【建設部長】
- 新たな住宅セーフティーネット施策の具体化に関するお尋ねでございます。賃 貸住宅支援の協議会につきましては、平成28年3月23日に設立をしております。この協 議会は、健康福祉部や不動産関係団体等で構成しておりまして、新たな住宅セーフテ ィーネット制度についても、国の改正法案の段階から情報共有しております。今後、 制度の検討にあたっても連携をしてまいります。
また要配慮者の住宅登録制度につきましては、改正法が施行される来月25日から開 始する予定です。
住宅相談や支援の窓口につきましては、法に基づき県がNPO 等の居住支援法人を指定 することができるとされておりますので、今後活動法人等の情報収集を行い、指定に 向けて検討を進めてまいります。
この制度を導入するに当たっては住宅確保要配慮者の入居需要の把握や、既存の住宅 セーフティーネットである公営住宅の供給計画との整合性を図る必要があると考えて おります。
県といたしましては、この制度の導入に当たって、基本となる住宅確保要配慮者の 賃貸住宅の供給促進計画について、市町村や関係団体等の御意見をお聞きしながら、 できる限り早い時期の策定を目指して検討を進めてまいります。
2.国民健康保険の都道府県管理に移行について
- 【高村議員】
- 次に、国民健康保険の来年度4月から都道府県管理に移行することについて伺い ます。県は市町村に県への納付額を定め、県全体の保険財源と運営を行うこととなり 、今その準備に精力的に取り組んでおられます。
県の資料によりますと、平成27年の国保加入者は52万人で減少傾向ですが、65歳以 上の高齢者は増加しています。世帯主構成は無職が42%で増加傾向、有職者の国保加 入者が36%で微増、高齢化に伴い年金生活者は増加していきます。自営業15%、農林 水産5%と減少傾向です。加入者の1人当たりの年間平均所得は86万円と、生活自体が 大変厳しい方々が多く加入しているのが国保であります。
一方1人当たりの保険料の格差、一番高いのは川上村の年間13万3000円余、一番低い のは大鹿村で3万8000円余と、3.4倍もの保険料格差があり、長野県は全国一格差が多 い県となっています。
地域医療の状況、年齢構成、世帯収入の違いで大きな保険料の格差が出ています。 このような市町村の現状を踏まえ、国保運営の基本をどのようにとらえ、市町村ごと の納付額の算定に当たってどう配慮されるのか、また激変緩和措置はどのように行う のか、健康福祉部長に伺います。
- 【健康福祉部長】
- 国民健康保険の制度改正に関する御質問をいただきました。県の国保運営の基 本につきましては、保険給付費等の急増にも対応でき、安定した財政運営を行うこと と考えております。また、市町村間格差が生じている中で、国の基本的な算定の考え 方を踏まえ、市町村間の公平性を保つ納付金額の算定方法について、市町村とともに 検討してまいりました。
具体的には、1人当たり医療費の格差が生じている状況については、市町村の健康づく りの取り組み状況や医療サービスの利用状況にも配慮し、医療費水準を全て反映する こととしたところであります。1人当たり所得の状況の違いについては、市町村間の相 互扶助の考え方から、所得水準の低い市町村に配慮した算定方法としております。
激変緩和措置については、医療費等の自然増加分を除き、納付金制度の導入に伴う 負担の増加分を対象としております。本年8月に実施した第3回目の納付金の試算にお いては、自然増加分の0.65%を超えて保険料が増加する市町村を激変緩和措置の対象 として算定を行っております。
対象となる市町村に対しては、国及び県からの交付金等を充当することにより、本 来市町村が納付すべき納付金額を減額させることにより、被保険者が負担する保険料 額の急激な増加の抑制を図ってまいります。以上でございます。
- 【高村議員】
- 各市町村は保険料の値上げを抑えるために基金からの拠出や、独自に一般会計 から年間合計県内約30億円余を繰り入れるなどの努力をされてきましたが、それでも 年間3万5000世帯以上、11.5%が保険料滞納となっています。
県が15日発表した市町村ごとの平均保険料試算では、46市町村が現状よりアップす るものとなっています。この現状に対して、県はどのように市町村に説明されるので すか。県は市町村の一般財源からの法定外繰入を認め、県も最近同様に保険料増加の 抑制のための法定外繰入を認める事態です。県独自にもさらなる激変緩和策を講じる べきではないかと考えますがいかがですか。健康福祉部長に伺います。
- 【健康福祉部長】
- 国民健康保険制度に関する第3回の試算結果と、激変緩和策についてのお尋ねを いただきました。今回発表した平成29年度の保険料推計額は、現状で各市町村が実施 している基金からの繰入れや一般会計からの法定外繰入等を搬入していないものであ ります。県としては、今回の制度改革の趣旨や内容について、市町村とともに丁寧に 情報発信に努めてまいりたいと考えております。また、今回の制度改革に伴う負担増 については、先ほどお答えいたしました激変緩和措置をしっかりと講じてまいりたい と考えております。
また市町村においては、県から示される標準保険料率を参考に、実際の保険料率を 決定することとなりますので、市町村個々の実情に応じて基金からの繰入れを活用す るなど、被保険者の保険料負担増の緩和について慎重に検討していただきたいと考え ております。以上でございます。
- 【高村議員】
- 上田市は激変対象市ではございませんけれども、県が示した納付額を確保する ことができるか、さらに低所得者の負担が増えることを危惧し、対策をどうするのか 悩んでいます。保険料滞納世帯は長野市、松本市、上田市など大きな自治体ほど多く なっています。一番多い長野市では、一般財源からのかなりの繰入れを行っています が、納付率は89%です。このことをどのように認識されますか。
平成27年度で見てみますと、1カ月から3カ月ほどの短期保険証は8431世帯、保険証 未交付世帯、実際には資格証明書等ですけれども、380世帯があります。医療費全額負 担となり、医療にかかることはできないと思いますが、このような実態についての認 識をお伺いします。
本来国民健康保険は国民皆保険制度として運営されてきました。さまざまな生活上 の困難を抱えている方々こそ保険証が交付され、医療機関にいつでもかかれることが 基本になくてはならないと思います。
この基本理念に沿って、特に生活困窮者に対する対応策が必要と考えますが、併せて 健康福祉部長に伺います。
- 【健康福祉部長】
- 国民健康保険の収納率の実態と、生活困窮者に対する対応についての御質問に 順次お答えをさせていただきます。大規模自治体においては、限られた職員で多くの 滞納案件を処理する必要があり、職員数の面で小規模自治体と同様に、きめ細かい徴 収の取り組みを行うことは難しいものと考えております。しかしながら、収納率の向 上は保険料の増収につながるほか、保険料率の引き下げが可能となり、国保の被保険 者の保険料の減額にもつながるため、口座振替の促進を図るなどの収納率向上対策に さらに取り組むよう、市町村に対して助言を行ってまいりたいと考えております。
生活困窮者に対する対応策につきましては、国保制度では現在も低所得者に配慮す るため、所得に応じて保険料の軽減がなされております。この軽減措置に対して県で はその4分の3を負担しており、こうした措置は、今後の制度改正後も継続されます。 さらに、国において今般の制度改革に合わせて、低所得者対策として、平成27年度か ら毎年1700億円の公費の拡充を実施しておりますが、平成30年度からはさらに公費の 追加も予定されております。
また、市町村においては個別に保険料の減免措置を設けており、低所得者と相談の 上、必要に応じて減免や生活保護制度への移行などを行っているところですが、県と しましては、よりきめ細やかな相談対応という制度周知を図るよう引き続き市町村に 助言を行ってまいりたいと考えております。以上でございます。
- 【高村議員】
- 保険料納付率は市町村ごとに差がありますが、小さい町村では100%のところも あります。それは住民の一人一人の顔が見え、生活実態が役場で把握でき、援助が行 き届いていくからではないでしょうか。
県国民健康保険運営方針では、滞納者の状況把握に努め、納付の促進に取り組み、 差し押さえ等の滞納処分を積極的に行うとしています。県地方税滞納整理機構には、 年間75%の市町村から約1000件の税金滞納者への対応整理が依頼されています。その 内、国保保険税が28%前後を占めています。滞納整理機構では資産や収入を確認し、 悪質な場合には差し押さえをせざるを得ず、9%の加算金も膨らむことなどもありまし て、担当職員は納付促進と財産差し押さえに悩みながら仕事をされています。
そこで、県地方税滞納整理機構の連合長でもある知事に伺います。①収入が減少し生活がギリギリで保険料を滞納してしまい、役場に行きにくくなり、 健康保険証が交付されない方々に対し、さらに財産差し押さえなど生活を追い詰める 、憲法25条の精神に逆行していることをどのように受け止めておられますか、まず温 かい支援の手を差し伸べるべきではありませんか。
②国保加入者のほとんどが低所得者です。市町村の努力とともに、県としても保険料 の値上げを抑えるために、県独自の一般財源からの拠出を行うとともに、国への財源 の一層の増額を強く求めていただきたいと思いますがいかがですか。阿部知事に伺い ます。
- 【阿部知事】
- ①国民健康保険に関連いたしまして、まず国民健康保険税の徴収についてでござ います。国民健康保険制度、基本的にまずは所得に応じて保険料負担をいただくとい う形になっているわけであります。その上で市町村、この保険料、保険税を滞納され ている方のうち、納付の約束を守らない方、あるいは、資産や収入があるにもかかわ らず納税されない方などで、大口かつ処理困難な案件については、地方税滞納整理機 構に徴収委託をするという形になっております。
地方税滞納整理機構におきましては、財産調査を行い、資産や収入がある方は法令 に基づき適切に差し押さえ等の措置を行っているところでございますけれども、滞納 者の方の生活の維持や、事業の継続に影響を与えるような財産の差し押さえにつきま しては、個々の滞納者の事情を十分に考慮した上で対応しているところでございます 。②それから、国保の財政の関係で、保険料の値上げを抑えるため一般財源からの拠出 、そしてまた国への財源の増額を求めるべきという御質問でございます。先ほど保健 福祉部長が御答弁させていただいたように、現時点でも、低所得者の方に対しては所 得に応じた軽減措置が講じられておりますし、また県としても、その財源を負担をし ているところでございます。
また、国保が都道府県単位化されます平成30年度以降につきましても、県の一般会 計から県としての国保特別会計、仮称になりますけれども、ここに繰り出しを行って 、その一部を活用して保険料負担の増加を抑制するため、激変緩和措置を講じていき たいと考えております。
もとより国民健康保険制度は社会保障制度の根幹でありますので、私どもとしても これは国がしっかり財政的な観点での責任を持つべきだというふうに考えております 。そうしたことから、これまでも全国知事会を通じてこの国保財政の安定化に向けた 要請を行ってきております。こうした中で、財政安定化基金につきましては、平成29 年度には、これまでの積み立て分と合わせて1700億円規模が全国で確保されるという 形になっているとこでございます。今後も引き続き、この医療費の増高に耐えられる 安定的な財政基盤の確立に向けて、国に対してさまざまな要請を行っていきたいとい うふうに思っております。以上です。
- 【高村議員】
- 滋賀県の野洲市では、福祉の心遣いで滞納者への温かい対応に取り組んでいま す。納税の以前に市民の生活が健全でなければならず、生活を壊してまで滞納整理す るのは本末転倒、生活を壊さずに納付してもらうのが原理原則としています。住民税 が滞っていれば国保税も納められず、水道や電気料金などの支払いも滞っている可能 性もある。困難な状況をまるごと受け止め、心に寄り添って生活支援するのが職員の 仕事と胸を張って頑張っています。この精神を県と市町村で共有し、低所得者の方々 にも保険証が手渡され、安心の国保となるよう対応を求めます。
また今年の9月に北海道の高橋知事は、来年からの保険者支援金制度、既に1700億円 交付されていますけど、さらに3400億円に来年から交付するということですが、これ では少なすぎると、1兆円は全国で必要ではないかと要請もされていますので、全国知 事会とも一層力を合わせていただきたいと思います。
3.森林づくり県民税について
- 【高村議員】
- 最後に、森林づくり県民税について伺います。阿部知事は、税制研究会がまだ 結論を出していない時点の6月県議会冒頭で、継続を視野に今後の方針を定めると表明 され、また今県議会開会日冒頭でも、来年度以降の5年間も森林づくり県民税を継続さ せる方針と表明されました。
私はちょっと待ってくださいと申し上げたい。そもそも森林づくり県民税の導入に ついて当時の村井知事は、戦後に一斉に植林された人工林が60年を迎えるころまでに 間伐を行わなければ、森林の多面的な機能が発揮できなくなるので、国の補助制度で はカバーできない里山の整備を今後10年間をめどに集中間伐を行うことを視野に進め たい、こういうことで導入されました。それから10年目となります。
この目的に対し、しっかりとした検証が求められています。多くの県民は500円の税 負担をし、法人税5%と合わせて年間約6億5000万円規模の超過課税がどのように活用 されているのかわからないと言っています。改めてこの10年間を振り返ってみる必要 があります。
①そこで第1期、第2期それぞれで目指した計画の到達について、成果と現状の課題を どのように認識されておられるでしょうか。特に間伐事業についてどうだったかを詳 しく御説明ください。
②また基金残高は今年度末、さらに来年度当初でいくらになるのか林務部長にお伺い します。
- 【林務部長】
- 森林税についてお尋ねいただきましたので、順次お答え申し上げます。
①森林づくり県民税では、これまでの財源では対応できなかった里山の間伐等を集中 的に推進してきており、導入第1期に当たる平成20年度から平成24年度は、5年間で2万 3400ヘクタールの目標に対しまして実績2万503ヘクタール、達成率は88%となってお ります。第2期に当たる平成25年度から本年度までの5年間では、本年度の見込みを含 めて間伐面積1万5000ヘクタールに対し、実績見込みで1万1707ヘクタール、達成率は 78%でありまして、第1期と合わせて、これまで取り組むことができなかった里山の土 砂災害の防止や水源の涵養など、多面的機能の向上に一定の成果を上げることができ たと考えております。
なお第1期で支援対象とした間伐は伐採木を林内にとどめるいわゆる切り捨て間伐で したが、第2期からは間伐材を搬出して地域で活用推進するため、間伐材の搬出経費支 援を新たに実施し、排出材積は4年目の昨年度末時点で目標1万4000立方メートルに対 し、実績7289立方メートルで、達成率は52%の状況です。
これまでの課題としては、間伐につきましては、国の制度変更により規模の小さな 森林の整備が補助対象となりにくくなったことに加え、所有者の不在村化や境界の不 明瞭化など山離れが一層深刻化し、条件が困難な森林が未整備のまま残されていると いうことが挙げられます。また、こうした小さな森林にも対応できるように要件緩和 が必要といった課題もございます。さらには市森林関係の課題は全県に及んでいると いった状況もございます。②基金残高につきましては、国の制度変更により、規模の小さな森林の整備が補助対 象になりにくくなったことに対しまして、県の課題分析が遅れて機動的に事業の見直 しを行わなかったこと、あるいは、事業のより確実な執行を図るため実施予定箇所を 精査し、予算を一時抑制したことなどによりまして、平成29年度末で4億9000万円とな る見込みでありますし、また平成30年度の歳入としては法人からの納付分、約1億1000 万円が入りますので、これは性格がやや異なりますが、合わせますと来年度には6億円 となる見込みでございます。
- 【高村議員】
- 2期目の森林づくり県民税について検討していた平成24年、この時点で既に大北 森林組合の補助金不正が行われていました。一昨日の和田県議の質問に対し、山崎林 務部長は、北安曇地方事務所林務課で大北森林組合補助金の闇繰越が発生していた、 本庁林務部は適切な指導対応を取らなかったので反省している、との御答弁がありま した。
このことは当時検討していた森林づくり県民会議にも、地方税研究会にも、県議会に も、県民にも報告されず、森林税は有効に活用されているとの判断で継続が決まりま した。この大問題について林務の最高責任者である林務部長、当時は山崎部長であり ませんが、どのように考えておられるのか伺います。
- 【林務部長】
- 森林づくり県民税と大北森林組合の補助金不適正受給事案に関するお尋ねでご ざいます。森林税第2期に向けての検討は、大北森林組合等の補助金不適正受給事案の 発覚前である平成23年度から開始されておりまして、この時点で、不適正受給事案に ついての検討がなされなかったことはやむを得ないと考えております。しかしながら 、長期にわたる補助金不適正受給事案を発生させ、その一部に森林税を財源とする事 業が生まれていたことは大変重く受け止めております。
今後の対応といたしましては、森林税をはじめとする補助事業全体において、2人体 制の現地調査や位置情報を持った写真添付の義務化など、事業適正に執行するための 取り組みを徹底するとともに、県組織全体としても、県民基点の意識改革や風通しの 良い組織づくりなどコンプライアンスの推進に取り組み、県民の皆様からの信頼回復 に向けて全力で取り組んでまいります。
- 【高村議員】
- やむを得ないという御答弁をいただきました。しかし、その第1期目の平成20年 前後から既に大北森林組合の補助金不正は発生をしておりました。総額14億5000万円 余でございます。こういう御答弁でいいのか、本当に強く反省を求めたいと思います 。
税制研究会の報告は3期目の具体的な事業内容や財源規模が示されていない、継続の 判断ができる状況にないとしました。もし継続するとする場合には6つの課題があり、 検討すべきとしています。
①ゼロベースでの検討、情報公開
②搬出間伐材へのシフト
③国の補助金との併用してきた裏負担問題、既得権問題、説明責任等についてどのよ うに認識し、検討されてきたのか林務部長に伺います。
- 【林務部長】
- 地方税制研究会で報告された検討課題に対するお尋ねでございます。長野県地 方税制研究会からは、森林づくり県民税を継続する場合の克服すべき問題点の御指摘 をいただいております。県としましては、これらの指摘を受け、改めてゼロベースで 超過課税の必要性等を検討し、このほど県の考え方を基本方針案として取りまとめた ものでありまして、全ての指摘事項に対して真摯に対応したものと考えております。
①具体的には、まずゼロベースでの再検討と情報開示の徹底についてですが、県の財 政状況や基金残高の取り扱い、課税期間や税率について、森林税を徴収しない場合等 も含めてゼロベースで多角的に検討を行いました。
②また、搬出間伐のシフトについてですが、市町村等の声も踏まえ、従来支援対象外 だったロ号整備を含めて、間伐作業と搬出作業を同時一体的に行うための支援を新た に行う必要があるとしたところでございます。
③次に基金残高の合理的な解消と県民への説明についてですが、第2期分の森林税は、 里山の間伐を中心に活用することを県民の皆様にお示しして賦課徴収しているもので あることから、現在約4億9000万円となっている基金残高は、第2期分の税収として来 年度の歳入となる法人からの納付分約1億1000万円と合わせて、第2期の趣旨に合致し た里山整備に活用することが必要と考えており、今後、県民の皆様に対しまして丁寧 に説明をしてまいる所存でございます。
また、国庫補助事業の地方負担分への充当についてですが、県義務負担分について は、理論上国から地方交付税が措置されることになっていることから、そこは一般財 源を充当すべきとの指摘がなされておりますが、本県においては、地方交付税の措置 額以上に積極的に造林事業に取り組んでいる状況であり、今以上に造林事業に一般財 源を充当することは困難であることから、国庫補助対象となる場合は対象を絞りつつ も、県義務負担分と独自かさ上げ分に森林税を充当したいという考えをお示ししたと ころでございます。
また、森林税の既得権化問題の打破についてですが、今後林務部だけではなく全庁 的に森林づくりを推進し、また庁内組織を設置して事業の精査や成果検証等を実施す ることとしております。また森林づくり推進支援金についてでございますが、役割を 明確化し財政調整を図るための制度として、総額を縮減することとしたところでござ います。以上でございます。
- 【高村議員】
- 森林づくり県民会議の提言も出されましたが、10圏域での地域会議での論議も 踏まえる必要があります。北アルプス地域では、昨日が会議ですし、最後の長野地域 では10月中旬の予定となっています。地域ごとの森林の特徴や条件の違いがあるわけ で、地域会議での意見も尊重すべきと考えます。
ある地域会議では2期目からの搬出間伐と国の補助金との合体により大変使いづらく なった、活用できないとの発言もありました。9月15日、私たち県議団から知事への要 望の場でも、県民参加の懇談会を県内数カ所で開催してほしいと申し上げ、その後今 県議会が終わった10月中に、県下4会場での懇談会開催の計画を発表されました。
そこで改めてこの10年間の税の活用がどうだったのか、現在の里山の状況はどうな のか、森林荒廃の原因や林業の活性化の課題は何かなど、広く県民参加での意見を聞 くことが大切だと思います。国が導入を検討している森林環境税についても、その内 容が明らかではありません。基金も1年分は十分にありますというよりも、部長御答弁 からいただきますと、来年継続した場合には9億円規模の基金となってまいります。
私たち党県議団は、今拙速に継続を判断するのではなく、さらに来年の秋ごろまで1 年かけて十分に県民参加で検討して、県民合意を図りながら結論を出すことを提案い たしたいと思います。来年1年間は森林税を徴収せず、凍結の判断もできるのではあり ませんか。知事に伺います。
- 【阿部知事】
- 森林づくり県民税につきまして、これまで県民会議、地域会議の皆さんからの 御意見ということもお伺いしながら、県民会議、あるいは税制研究会で誠に非常に多 角的な角度から御議論いただいてまいりました。
また県民の皆様方のお考えをお伺いするということで、一般の県民の皆様方、ある いは企業からも聴取をさせていただいておりますので、企業の皆様方に対するアンケ ート等も行ってきたわけであります。
そうしたことを踏まえて今回方針を定めさせていただいたわけであります。これは 山崎部長からも御答弁申し上げましたように、私ども文字どおりゼロベースで検討さ せていただきました。議員各位には、森林づくり県民税に関する基本方針案を配りを させていただいているかと思いますけども、かなり詳細に現状と私どもの考え方をお 示しをさせていただいたと思っております。
これをこれから県民の皆様に対する説明会も行わせていただきますし、またパブリ ックコメントもしっかりとった上で、私として最終的な判断を行っていきたいという ふうに思っておりますけども、いくつかのケースを比較をいたしましたが、現時点で は、現行の税率で5年間課税をさせていただくということが望ましいというのが私の判 断であります。
一時休止ということも含めて私どもも検討させていただきましたけども、ここで単 純に1年間立ちどまるということでは、今回新しい改革の方向性ということも出させて いただいておりますけども、それではなくて、今までどおりの使い方を粛々と、基金 残高を使って行っていくということになってしまいます。これは県民のアンケート等 から見ましても、必ずしも私は県民の皆様方の御期待に応えるものではないというこ とで考えているところでございます。
こうした考え方について、この基本方針の中にかなり私どもの考えを明確に支持を 示しをさせていただいているとこでございますので、ぜひ十分ご覧をいただいた上で 、ぜひ御理解いただければというふうに思っております。以上です。
- 【高村議員】
- 大北森林組合補助金不正問題はなぜ起こったのか、なぜ7年間もの闇繰越がされ 、未実施でも補助金を支払ったのか、県本庁の関与と県幹部職員の責任はあるのでは ないか、いまだ真相が解明されない中で、課税継続ありきで進めることは許されない と申し上げ一切の質問を終わります。