日本共産党長野県会議員団

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議会質問

2017年11月定例会 山口典久議員一般質問

  1. 国民健康保険都道府県化について
【山口議員】
 国民健康保険の都道府県単位化について以下、健康福祉部長に伺います。
①知事の議案説明では、国民健康保険は被保険者の高齢化、1人当たりの医療費等の市町村間格差など構造的な課題を抱えており、安定的な財政運営や効率的な事業運営の確保のために、財政単位の広域化を行うと述べられました。
本県における1人当たりの保険料の市町村間格差は、最大で3.6倍と全国で最も大きく、1人当たり医療費については2.2倍と、北海道に次ぐ2番目の水準ということでした。
 こうした市町村間の格差もさることながら、被保険者にとっては保険料の負担が増大しており、その軽減は切実な要望になっています。そこで、長野県の被保険者1人当たりの保険料および1人当たりの所得はいくらか、またその比率は何%か、それぞれ本県と全国の数値を伺います。さらに、協会けんぽや組合健保についても同様に伺います。

②今回の都道府県単位化に当たり、保険料の大幅な引き上げが見込まれる市町村には、その対策として激変緩和措置が講じられます。県が9月に公表した第三次の試算では、この激変緩和措置後の保険料についても公表が行われました。しかし、この激変緩和措置を講じた後でも、46市町村において、1人当たり保険料の負担が増加しています。そのうち2村では150%の負担増、9市町村が120%以上の負担増で、全県的にも平均103%です。
 保険料については都道府県単位化が行われても、保険料算定方式は市町村ごとに条例で定めるものであり、その決定権は市町村にあります。こうした中、保険料の決定に当たっては、負担軽減のために一般会計からの法定外繰入を選択せざるを得ないのも現実だと思います。しかし、この一般会計からの法定外繰り入れに関し、国は当面認めるものの、今後解消削減の方針は変わらないとされています。
 長野県はどうでしょうか。先日、答申が行われ、知事が年内に策定すると表明された長野県国民健康保険運営方針の答申では、昨日の健康福祉部長の答弁にもありましたが、法定外繰入は解消すべき赤字と位置づけられ、翌々年度に解消が見込まれない場合は、赤字の要因分析、目標年次、赤字解消削減のための具体的な取り組みを記載した赤字解消計画を策定し、赤字を解消削減していくと具体的に記されています。また、県は計画の策定に対して必要な助言を行うとしています。
 結局、市町村にとって被加入者の負担を軽減する手が縛られて、保険料負担の増加を余儀なくされることになりかねません。こうした事態を避けるためにも、法定外繰入をはじめ、市町村が被保険者に対して必要な配慮を行うことができるように、その市町村の自主性を尊重した柔軟な対応が県に求められていると考えますが、いかがでしょうか。また、事業費納付金の算定に当たっては、今後も市町村からの要望や意見を踏まえた対応が必要と考えますが、いかがでしょうか。

③次に、保険料の収納について伺います。今回設けられた保険者努力支援制度では、その指標に保険料収納率も挙げられています。そして、保険者規模、5万人以上が91.5%、1万人から5万人が95.0%。5000人から1万人が96.0%など標準的な収納率が示されています。
 また、国民健康保険運営方針では、収納強化のために県は必要な助言を行うとし、口座振替措置や直接面談、短期被保険者証の交付により滞納者の状況把握に努め、個別の事情に応じた納付の促進、そして悪質滞納者に対しては差押え等の滞納処分を積極的に実施、滞納整理機構に委託することなどが具体的に示されています。
 現在でも県内の滞納世帯は3万5000世帯と、加入世帯の1割を超えています。中でも保険証が行政窓口で留め置きされ、短期保険証、1ヶ月から6ヶ月の期限付きの保険証の発行世帯は1万世帯を超えています。また滞納により無保険者となり、病院に行けない事例や年金、給与、児童手当まで差し押さえられる。いわゆる行き過ぎた取り立ても県内で報告されています。
 こうした中、今回の運営方針により、一層無理な収納や滞納を招くことにならないか危惧するものです。本来、無理な収納や滞納が行われないようにきめ細かな相談対応をするよう、県として市町村に助言することこそ求められていると考えるものですが、いかがでしようか。

④医療費適正化計画について伺います。県国民健康保険運営方針では、医療費適正化に向けた取り組みの中で、健康づくりの意識の向上は保険料の抑制や保険財政の安定に繋がるとし、信州ACEプロジェクトなどが位置づけられています。健康増進を進めることによって、保険料の抑制や保険財政の安定を図ることこそ本来の姿であると考えます。
 その際、特に長野県らしさといいますか、長野県の健康づくりの歴史や伝統を生かした取り組みが重要だと考えます。市町村における特定健診受診率や保健指導実施率は、全国平均より長野県の高い状況をどのようにとらえているのでしょうか。また、今後さらに受診率や実施率を引き上げていくための取り組みはいかがでしょうか。以上、健康福祉部長に伺います。

【健康福祉部長】
国保財政の都道府県単位化について4点御質問をいただきましたので、順次お答えをさせていただきます。

①まず、各保険制度の保険料等の状況についてであります。国が公表している数値を申し上げますと、平成27年度の本県の市町村国保の1人当たりの保険料、税額は約78,000円で、1人当たり所得は約59万2000円となっており、その比率は13.2%であります。次に全国の国保の状況ですが、1人当たりの国保料、税額は約8万4000円で、1人当たり所得は約68万3000円となっており、その比率は12.3%です。次に協会けんぽおよび組合健保ですが、国が公表しているのが平成26年度全国のみとなります。協会けんぽの1人当たりの保険料額は、約10万7000円で、1人当たり所得は142万円となっており、その比率は7.6%であります。最後に、組合健保ですが、1人当たりの保険料額は約11万8000円で、1人当たり所得は約約207万円となっており、その比率は5.7%であります。
 保険料、税の最終的な賦課徴収権限は引き続き市町村に残るため、市町村は県が提示する納付金額や標準保険料率をもとにして、現状を踏まえた上で、個々の保険料、税を決定することとなります。

②法定外の繰り入れにつきましては、市町村の参画のもと策定された国保運営方針において、長野県においても対象を諮ることとされております。今回の納付金算定に当たっては、市町村の意見を聞きながら算定方式等を決定してまいりましたが、今後も県・市町村国保運営連携会議での議論や市町村への意見照会を行いながら、納付金の算定を行ってまいります。

③被保険者の公平な保険料負担と国保財政における必要な財源確保の観点から、保険料収納率の向上対策は重要な取り組みと考えております。収納対策に取り組む上で、現在も市町村においては、納付相談の機会を設け、滞納者の方の個別の状況を把握した上で対応しており、県においても引き続き丁寧な対応を行うよう助言を行ってまいります。

④特定健診受診率等の状況と今後の取り組みのお尋ねであります。平成27年度の状況で見ますと、特定健診受診率の全国平均36.3%に対して、長野県は45.2%で全国第3位、特定保健指導実施率の全国平均25.1%に対して、長野県は52%で全国第6位となっております。長野県の受診率および実施率が高いことにつきましては、市町村の皆様の積極的な取り組みの成果であり、また県民の高い健康意識のあらわれと思っております。
 県といたしましては、ACEプロジェクトを推進する中で成果を出している市町村の好事例等の情報提供することで、市町村間の情報共有を図り、さらなる受診率や実施率の向上に向けて取り組んでまいります。以上でございます。

【山口議員】
 国民健康保険被保険者1人当たりの保険料、そして所得の比率が長野県は13.2%ということでした。協会けんぽの全国の平均ですが、7.6%、組合健保、5.7%ですから、国民健康保険の負担の重さは明らかだと思います。国民健康保険に国や地方自治体が財政的な支援を強化することは、他の保険との公平性という観点からも求められていると考えるものです。

⑤医療費適正化について再質問いたします。
健診の受診率の全国に誇るべき到達は長野県の医師・保健師・保健補導員等の取り組みが大きな役割を発揮したと考えます。とりわけ長野県の保健師数は全国でダントツだそうですが、その保健師が地域に密着した活動を粘り強く重ねてきたことが、県民の健康づくりの大きな役割を果たしてきたと考えます。医師・保健師・保健指導員等との連携を一層強めて取り組んでこそ、昨日の本会議でも語られましたデータヘルス計画も力を発揮するのではないでしょうか。以上、健康福祉部長に伺います。

⑥国民健康保険の問題の最後に知事に伺います。安定的な財政運営や効率的な事業運営の確保を目的とする新たな制度ですが、加入者への一層の負担増や無理な収納が行われることは、知事が議案説明で、県民の皆様が必要とする医療サービスを安心して受けることができるとしたその方向に、逆行しかねないと考えます。国民健康保険の事業が安定しても、県民の暮らしが不安定になるのでは本末転倒になりかねません。
 言うまでもなく、国民健康保険法第1条は、この法律は国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もって社会保障および国民保健の向上に寄与することを目的とするとうたっています。9月定例会では、高村京子議員が国民健康保険の会計に対して、国庫負担の抜本的な増額を求めるよう知事に要望をいたしました。国保の収入に占める国庫支出金は、1984年49%あったものが、30年後の2011年には24.8%に激減をしています。まさに半減です。このことが1人当たり保険料がこの間2.4倍になった大きな要因であり、国庫負担の増額は構造的解決の最大の鍵だからです。
 そこで、知事に伺います。同時に今や地方分権の時代です。法定外一般会計繰入をはじめとした県や市町村の独自の努力、運営方針について、その自主性を尊重するよう国に強く求めていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。

【健康福祉部長】
⑤生活習慣病対策を進める上での医師・保健師等の関係者の連携の推進についてのお尋ねをいただきました。健康増進、また医療費の適正化を進める上で、近年、糖尿病性腎症の重症化の予防の取り組みが非常に重要となってきております。これにつきましては、人工透析を導入することとなった場合には、住民の方々に多大な負担を強いるともに、医療費としても、1人当たり年額500万円程度必要となるということが大きく問題となってきております。
 こうした問題に対応するために長野県としては、先般、医師会等と連携の上、糖尿病性腎症の重症化予防プログラムを策定し、地域における医師、保健師等の連携を促進するための取り組みを推進しているところでございます。今後とも引き続き、各地において関係者の連携のもと取り組みが推進されるよう、県としても取り組んでまいります。以上でございます。
【阿部知事】
⑥国民健康保険制度に関連しまして、市町村の自主性を尊重するように国に求めるべきだというご質問でございます。分権の時代でありますので、例えば、医療費の適正化の努力みたいなところは、できる限り地方の取り組みをしっかり尊重してもらうことは私も重要だと思っております。
 他方で、この社会保障制度の根幹的なものでありますので、山口議員の御質問の趣旨とちょっと違うかもしれませんけども、やはり国がしっかりと責任を持って安定的な制度にしていくことが重要だと思います。今回我々都道府県も、これまではどちらかというと市町村の努力に任されていた部分がありますけれども、私どもも保険者、財政運営の責任を持つ立場として関わっていくわけでありますので、市町村とも十分協議をした上で、そして何よりも被保険者の皆様方の御理解いただきながら、より安定的な制度になるように努力をしていきたいと思いますし、財政的な負担については、都道府県単位化をしたから国が何か一歩引くというようなことではなくて、引き続き国が、社会保障制度のこの国保制度というのは根幹をなすものでありますから、しっかりと責任を果たしてもらうように求めていきたいと思っています。

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