日本共産党長野県会議員団

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議会質問

2017年11月定例会 備前光正議員一般質問

  1. 地熱発電の推進について
  2. 信州F・パワープロジェクトについて
  3. 県職員の働き方について
  4. 教員の長時間労働の改善について
  5. 「学びの改革」について
  6. 種子法の廃止について

1.地熱発電の推進について

【備前議員】
 まず地熱発電の推進について伺います。11月6日から18日までCOP23、ドイツで国連気象変動枠組み条約締約国会議が開かれました。米国トランプ政権のパリ協定離脱表明の問題もありますが、この7月にはイギリスとフランスが相次いで、2040年までにガソリン車、ディーゼル車の販売禁止を、また世界最大の自動車市場の中国も電気自動車化を進めようとしており、世界の流れは脱化石燃料時代へと加速しております。
 そこで今回は、24時間安定的に発電でき、炭酸ガス排出もほぼ0の準国産エネルギーである地熱発電について、党県議団は、大分県でのバイナリー等の地熱発電や、先月は1064年日本初の商用発電を開始した岩手県松川地熱発電所を視察し、このことにつきまして質問をしたいと思います。
 火山国日本は地熱資源が豊富で、環境省や経産省の調査でも、火山の数では米国やインドネシアに次いで世界3位で、地熱資源も3位で2347万kWのポテンシャルを持っていると言われております。さらに東日本大震災による原発事故を受け、地熱発電は天候などに左右されず、常時自給できるエネルギーとして注目され、位置付けが上がりました。これまでは資源が国立や国定公園に分布していることが施設設置のネックでありましたが、規制緩和等もあり開発が可能となってまいりました。
 そこで本県は火山に囲まれ地熱資源が相当量あると予想されます。環境省の再生エネルギー導入ポテンシャル調査に、地熱資源の賦存量および導入ポテンシャルの結果が出されておりますが、長野県は、高温域の150℃以上は少ないのですが、53℃から120℃の賦存量は北海道に次ぐ2位で、64万kWと推計されております。
 そこでまず、火山に囲まれ温泉が多い本県は、比較的低温でも発電が可能であるバイナリー発電が有効であると思いますが、ほぼ無尽蔵な地産地消のエネルギーとしての地熱資源の活用についての可能性はどのように認識されているのでしょうか。また、地熱発電はエネルギーの地産地消に寄与しし、温泉県信州のアピールにもつながると思いますが、導入のためにはどういったことが必要で、課題と考えられているのでしょうか。以上環境部長に伺います。
【環境部長】
 まず、地熱発電等の可能性についてのお尋ねであります。温室効果ガスの削減を目指すパリ協定が発効し、再生可能エネルギーの重要性が一層高まる中で、我が国の地熱利用は世界第3位という豊かな資源量に対し、利用率は2%強と低くとどまっており、開発の余地が多く残されていると言われております。
 長野県の地熱の賦存量は、議員ご指摘のとおり熱資源全体では全国6位でありますが、そのうちの53℃から120℃の低温では全国第2位となっております。しかしながら、県内の地熱発電の現状を見ますと、水よりも沸点の低い、議員ご指摘のバイナリー発電という形で低い媒体を活用した低温の蒸気で発電する方式について1件のみとなっておりまして、県内での今後の導入拡大の余地は大きいものと考えております。
 次に、地熱発電を導入するためにはどういったことが必要かについてのお尋ねであります。地熱発電の開発には地熱資源を確保するための調査や評価、発電の方式や出力の決定、地域合意の形成、温泉法や自然公園法等の許認可手続、そして発電所の建設といった多くの手順があります。このため、発電開始までのリードタイムが長くかかり、それに耐えうる資金やノウハウが必要になってきます。
 また、地熱発電には既存の温泉利用にどのような影響が出るかについての懸念や、景観や自然保護の観点からの懸念などが多いことから、地域での丁寧な合意形成を経ながら事業を進めることが特に重要であります。
 これに加えまして、地熱発電の経済性を向上させるためには、発電だけではなく、農業や暖房などでの熱の有効利用も併せて検討することや、稼動後に課題となる定期的なスケールの除去等への対応も必要となります。県では、こうしたさまざまな課題の解決を支援しながら、地域での合意形成を経て、地域の活性化につながるような地域発電の事業化を促してまいりたいと考えております。
【備前議員】
 焼岳の岐阜県側では、中尾温泉でこのたびに2メガワット級の地熱発電がスタートしているそうであります。長野県の火山やまた温泉でも、こうした可能性を探求していただきたいというふうに要望したいと思います。

2.信州F・パワープロジェクトについて

【備前議員】
 次に、信州F・パワープロジェクトについてお尋ねいたします。本事業に対し党県議団はこれまで、先進事例を紹介しながら、政策部門の事業の安定的な確立を求めつつ、小規模分散での熱効率も高い利活用計画への変更も提案をしてまいりました。そこで今回私たち先進地の岩手県釜石地方森林組合などを視察し、改めて質問をしたいと思います。
 まず製材部門は稼働しましたが、今年9月には赤松材の受け入れを中止し、さらには床材の販路開拓にも課題があるとのことでありました。知事は9月議会での両角議員の質問に対し、製材事業の安定化を図っていかなければならない。そして販路拡大。原木の安定供給の課題解決に取り組み、情報共有をしつつ、事業者に対して指導すると答弁されております。
 そこで、稼働中の製材事業の進捗状況はどうなのでしょうか。原木としての持ち込み量、また製品として床材はどのくらい販売されているのか、販売額も含め、当初計画との関係ではどう推移しているのでしょうか。また、本事業は27年3月にグリーンファイナンス推進機構が5億円の出資を決定されたと報じられており、これは現在どうなっているのでしょうか。このままバイオマス発電が着工も稼働もしないままで推移すれば、失効や返金は生じないのでしょうか。
 さらに、先の寺沢議員の質問で征矢野建材の決算状況の質問があり、個別企業の問題ということでありましたが、それでは議会はこの事業者がしっかりと対応できるのかの判断はできないわけであります。そこで事業状況の指標として本事業の四半期の経営状況の説明を議会に求めますが、以上、林務部長の答弁を求めます。
【林務部長】
 信州F・パワープロジェクトについてのご質問に対しまして、順次お答え申し上げます。初めに原木の持ち込み量は平成28年度7万㎥、当初計画に対しまして5割の状況となっておりまして、また販売量は約5400㎥となっているところでございます。
 当初想定外の事故等があったことから、事業主体におきましては、製材ラインを調整し、大手メーカーとの販路開拓を着実に進め、平成32年度を目途にさまざまな課題を改善しつつ、安定した経営体制の構築に取り組んでいるところでございます。県としてもしっかり所期の目的の実現に向け、役割を果たしてまいります。
 続きまして、木質バイオマス発電事業に対するグリーンファイナンス推進機構の出資に関するお尋ねでございます。平成27年3月27日付で、グリーンファイナンス推進機構が公表した出資決定について、事業主体から現在もその状況に変化はないと聞いております。
 発電事業に関しましては、寺沢議員の御質問にお答えいたしましたとおり、現在出資間で発注に向けた大詰めの調整が行われており、予定どおり出資を受けて事業実施するものと見込んでおります。
 続いて、プロジェクト全体の経営状況についてのお尋ねでございます。本プロジェクトは、現在1社を事業主体とする製材工場のみの稼働の状況でございまして、結果として、個別の企業の状況となってしまうというものでございます。そうしたことから、この場でのお答えは差し控えさせていただきたいというものでございます。
 なお本プロジェクトは、製材事業と発電事業が一体で稼働してこそ所期の目的が達せられるものでございます。県としましては、製材施設は補助施設でありますので、円滑な運営がなされるよう指導を行うとともに、プロジェクト全体の調整役としての役割をしっかりと果たし、プロジェクト推進をしてまいりたいと考えております。
【備前議員】
 ただいまのご答弁では、やはり私も議会質問に当たり資料をいただいて、赤松材の納材実績というのは毎月ごとのグラフで示され、これは非常に詳細に毎月ごとのデータが分かっているわけですが、その他についても全く1年ざっくりという形で非常に分からない。これは、今日は委員会のほうに任せたいと思いますけれども、詳細についてしっかりとこの事業がどのように運営されているのかということを、またお示しをいただきたいというふうに思います。
 岩手県の釜石地方森林組合を視察しましたけれども、未利用材のストックを常に必要とする量というのは、4倍量は維持していないと安定的な運用ができないと聞きました。これは岡山県真庭市でも共通しております。
 また木質バイオマス発電は製材部門の余剰金で運営し、それ自体で収益を上げるものではないと説明されました。先の部長答弁では、製材事業と発電事業は両輪であるとの答弁ですが、集めた材の8割近くを燃やしてしまう方法は本末転倒ではないでしょうか。
 2月議会でも指摘させていただきましたが、自然エネルギー財団やNEDO、さらには農林中金総合研究所の調査報告でも、未利用材の供給不足が数年以内に起こると警告しております。特に農林中金総合研究所の調査では、長野県を含む中部地方の未利用材の不足量が一番多く、年31万tにもなると試算しています。そうすると、輸入チップやパーム椰子殻などを燃料とせざるを得なくなると警鐘し、県産材を利用する本事業は特に不利になると考えられます。林務部長はサプライチェーンセンターでの供給で大丈夫だと答弁しておりますが、現状でも計画量の半分も供給されておりません。
 そこで本事業に供給される県産材の賦存量をどう見積もり、製材供給と発電への燃料供給が継続的に行えると考えているのでしょうか。
 さらには中信地方の林業関係者からも、到底賄い切れないだろうと異口同音に話されております。こうした状況で発電量1万4500kWの規模を維持していくのは、どう見ても過大ではないでしょうか。この際発電事業は計画を一旦見直し、まずは製材事業の安定的運用にしてから取り組むべきではないでしょうか。林務部長に伺います。
【林務部長】
 続きまして、製材や発電への木材の供給の仕組みに関するお尋ねでございます。
 製材発電への木材供給は、県内林業木材産業関係の4団体で構成するサプライ支援センターが担い、将来にわたって安定的な供給が行われるよう、製材については毎年度安定供給に係る協定書が締結され、発電については平成27年に安定供給に係る交渉が締結されたところでございます。また、事業者間で安定的に需給調整会議を開催し、実態に応じた供給が行われるような仕組みとなっており、事業者に対しては約8割の納入実績となっているところでございます。
 本県の森林資源は2億㎥に迫り、その成長量は毎年約200万㎥と着実に充実しているところでございます。また、平成28年の素材生産量は49万8000㎥で、過去5年で1.4倍と増加にあり、未利用材の質材に不可欠な素材生産量の伸びも期待できる状況と考えております。県といたしましては、林業の担い手の育成、路網整備および高性能林業機械の導入等を原木の安定供給体制整備を支援するとともに、製材発電に関する関係者間の調整役をしっかりと担ってまいりたいと考えております。なお発電用の燃料につきましては、塩尻市および北熊井区、事業者間で締結している環境保全協定において、間伐材等の未利用材および製材事業で発生する端材由来のチップとされております。
 続いて、発電事業および製材事業の計画等に関するお尋ねでございます。先般寺沢議員の御質問にもお答えしたとおり、このプロジェクトはA材から未利用材までの赤松材等を、製材発電の多段階で利活用し、安定した事業展開を図るとともに、山側にまたその収益を還元していくというものでございます。その実現のために現在事業者間において、製材加工施設および発電施設の規模等を決定し、必要な施設の整備等を進めているものでございます。
 現在このプロジェクトの関係者、それぞれが主体的に役割を分担し、責任を果たしながら連携し、製材事業の販路の開拓および原木の安定供給、発電事業の早期着手に向けた取り組みを進めているところでございます。こうした中では、発電事業に関しては、所期の目的に沿って円滑に進むよう、また製材施設につきましては、補助事業施設として円滑な運営がなされるよう、引き続き指導をしてまいります。
【備前議員】
 供給量につきまして私も資料を持ち合わせていたところですけれども、かなり違うところもありますので、また私自身も精査して伺いたいというふうに思います。

3.県職員の働き方について

【備前議員】
 引き続きまして、県職員の働き方について伺います。過日私どもに、県職員の方から年々職場環境がひどくなったことを憂慮する相談がありました。それは「県民のために尽くそうと情熱に燃えて県職員になったにも関わらず、志半ばで早期退職の道を選択したり、病気で休んだり、最悪の場合には自ら死を選択する仲間が後を絶たない。その原因は上司から皆の前で暴言を浴びさせられたり、いじめ的な扱いを受け、また夜遅くまでサービス残業を強いられ、精神的に追い詰められ、職場の雰囲気も暗くなりがちで、いかにして上司に睨まれず、つぶされないように自分を守るのかに気を使わざるを得ません」と、深刻な状況を語っておられます。
 そこで県職員のサービス残業を含めた時間外労働や休職者、特に精神的な疾患での休職者や早期退職者、また長時間労働やパワハラ等の実態をどのようにつかんでいるのでしょうか。また特にパワハラなどハラスメントは、秘匿性の高い問題であります。そこで、匿名で記述できる実態調査を行い、対策を講じていただきたいと思いますが、総務部長に伺います
【総務部長】
 県職員の働き方についてのご質問に、順次お応えいたします。まず、職員の時間外勤務についてでございますが、サービス残業を含めてということでございましたが、県といたしましては、職員の申告に基づき、所属長が命令した時間外勤務についてはこれを把握し、その全てに対して手当を支給している状況でございまして、年間1人当たりの平均時間は、平成28年度で78時間となっており、平成26年度以降は着実に減少してございます。
 次に、早期退職者数についてでございますが、定年前の早期退職者につきまして、その事由は必ずしも明確ではないところでございますが、転職等さまざまな事情が考えられてございます。その数は平成28年度は57人となってございまして、近年は5、60人程度と、年間で若干の増減はあるものの、ほぼ同水準で推移しております。
 次に、精神疾患による長期休職者等の数でございます。精神疾患により、休職あるいは30日以上の療養休暇を取得した職員数につきましては、平成28年度は、実人数で43人となってございまして、近年は40人前後と、年間で、これも若干の増減はあるもののほぼ同水準で推移してございます。
 次に、パワハラ等の職場環境に関する調査についてでございます。県では昨年度実施した職員意識調査の中でパワーハラスメントについても項目を起こし、匿名で自由記述もできるようにするなど、職員の率直な意見をできるだけ聞こうということで調査を実施したところでございまして、今後も継続して調査を実施してまいりたいと考えております。
 これに加え、本年3月には従来の要綱を改正し、パワハラはもとより、あらゆるハラスメントに対応した職場におけるハラスメント防止要綱を策定し、ハラスメントを未然に防ぐ体制づくりを進めているところでございます。また、本年度は職場等における新たな相談提案制度、通称シグナルフラッグと申し上げておりますが、それを創設いたしまして、事案の軽い重いに応じて相談提案できる窓口を、身近な職場から外部の有識者まで幅広く設けることによりまして、ハラスメント対策に資する体制を充実したところであり、今後も引き続き、風通しの良い対話に溢れた組織づくりに向けて取り組んでまいりたいと考えております。以上でございます。
【備前議員】
 ただいまお答えがあったということでありますけれども、やはりこうした勇気ある投書といいますか、私たちへの相談です。そうした方々が、やはり県民益のために働ける職場環境をつくっていくためにも、そうした匿名性の高い丁寧な対応をお願いをさせていただきたいというふうに思います。

4.教員の長時間労働の改善について

【備前議員】
 引き続きまして教員の長時間労働の改善について伺います。教職員の長時間労働が深刻となっております。教育委員会は、今年も時間外勤務の調査を行っていると聞きますが、長野県の教職員の時間外勤務は、小中で1カ月当たり平均64時間、最も多い学校の平均は114時間と報告されております。
 県教職員組合調査では、実際に取れていない休憩時間や持ち帰り仕事、また休日勤務等を含めて実に月平均83時間20分にもなっているわけであります。時間外労働が80時間を超えるということは、厚労省の過労死ラインを超えているわけであります。
 このような中、県教育委員会は11月、学校における働き方改革推進のための基本方針を定めております。
 そこで、このように教員の時間外労働について改善がされていない結果が出ているわけですけれども、県教委は状況をどう把握し、改善しようとしているのでありましょうか。また、この基本方針の直ちに取り組むことでは、まずは教員の時間外勤務の時間が年間を通じて1カ月45時間以下、年間で最も忙しい時期であっても1カ月80時間以下になることを目指すとされております。月45時間でも異常な働き方だと思います。繁忙期には過労死ラインの80時間ギリギリを設定することは、重大な問題であると考えます。なぜこのような設定にしているのでしょうか。
 また、県教委調査では、長野県内の教員の平均的な残業時間を先ほど言ったように、月64時間程度、最も多い学校が114時間ということでありますが、これは教員の人数ではどのくらいの不足が起き、またその人件費がどのくらいになると試算されているのでしょうか。以上、教育長に伺います。
【原山教育長】
 教員の長時間労働の改善についての御質問でございます。
 まず、時間外労働の把握と改善についてのご質問ですが、全ての学校でタイムカードなどを用いて、今後年間を通して全教員の勤務時間を適正に管理するということが必要だと思っております。
 そして教育事務所の主管指導主事が具体的な実態を把握しつつ、学校における働き方改革推進のための基本方針に沿った取り組みを進めてまいりたいと思っております。
 それから時間外勤務時間の指標の設定理由であります。この基本方針においては、今年度当初の教員1人当たりの時間外勤務の平均が月64時間程度で月100時間を超えている学校もあったことを踏まえて、指標として当面の最低限の数値を設定したものであります。
 文部科学省におきましても、勤務時間に関する数値で示した上限の目安を含むガイドラインというものを検討して示すということも聞いておりますので、そうした状況も踏まえ、随時見直しをしながら取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、教員の人数の不足と人件費というお話であります。現在の学校は教員以外の者が担うことができる業務も全て教員が担っているといった問題意識などのもとに、この学校における働き方改革推進のための基本方針を策定したものでありますので、教員の不足数やその場合の人件費といった観点ではとらえておりません。しかしながら、小学校英語の教科化でありますとか特別支援教育の充実など、新たな教育課題への対応のため、純粋に教員の業務が増加しているものもありますことから、教員の定数改善については国に要望しているところでございます。
【備前議員】
 教員の給与につきましては、公立義務教育諸学校等の教職員の給与等に関する特別措置法、いわゆる給特法が昭和41年、当時残業の平均が8時間程度の時代に規定されております。法では、教員には時間外労働を命じてはならないとされ、認められる残業は非常に限定的で、修学旅行など宿泊的行事、職員会議等4項目に限られ、残業は存在しないということであります。
 しかし、実態は限定された4項目以外、部活動指導や、テスト採点、また近年深刻ないじめや不登校対応など様変わりした勤務に膨大な時間を要しても、残業代が支払われないという実態があります。さらに休日や夏休みなども、研修会や部活動等で埋められております。
 しかし、教師には、職務の特質性により同法で月額給与の4%の教職調整額が支給されております。この4%というのは、1日の時間外労働で計算すると、わずか20分程度の調整額の上乗せで解消させられ、これが長時間勤務の温床となっております。そこで教員の働き方改革が課題となる中、定数改善や、先ほど国に要望されてるということはおっしゃいましたけれども、この給特法の改正を国に求めるべきではないでしょうか。再度、教育長に伺います。
【原山教育長】
 給特法の改正についてでございます。
 県教育委員会は、全国都道府県教育長協議会を通じまして、教員の勤務実態を踏まえた教職員給与等の改善等につきまして、教職調整額も含め、要望しているところでございます。中央教育審議会の学校における働き方改革特別部会で、教員の長時間勤務の改善の一環として、教職調整額についても議論されているというふうに聞いておりますので、国の動きを注視してまいりたいというふうに考えております。
【備前議員】
 ただいま、国を見守るという話もありました。是非とも要望をしっかり出していただいて、教員として誇りを持ち、それはやはり子どもの教育に資するわけでありますから、そうした立場でこの問題に対応していただきますようお願いをしたいと思います。

5.「学びの改革」について

【備前議員】
 引き続きまして「学びの改革」について伺います。この「学びの改革 基本構想」には、本年7月から8月に旧通学区ごとに開催された地域懇談会でも、さまざまな質疑がたくさん出されました。そして、当初10月に予定していた実施方針案の公表は議会での議論もあり、来年3月へと変更されました。この変更はこうした意見を得る中での延期であると思うのですが、方針案を半年延ばした理由は何か、教育長にお尋ねいたします。
 またこの11月に示された実施方針策定案は、これまでの学びの改革から「高校改革~夢に挑戦する学び~」と名称まで変え、それまでの内容とは全く異なる記載となっており驚きました。まず、今後のスケジュールに関して、地域ごとに状況が違うのにも関わらず、基本構想で示した再編基準に該当する学校があるかどうかとは無関係に、いきなり2021年3月までに全県の再編計画を確定するよう、「高校の将来像を考える地域の協議会」に求めております。
 これはこれまで、県民的に旧通学でそれぞれの地域の実情を「1クラス何人になったら再編の検討開始する」などと述べてきたものとは大きく異なり、県民合意ではありません。これは議会に対しての説明とも異なり、これまでの議論は一体何だったのか、県民や議会を軽視していると言わざるを得ません。
 改めて県民、議会に説明をし、県民的な議論を一から行うべきであると思いますが、教育長の御認識を伺います。
【原山教育長】
 「学びの改革」についてでございますが、まず実施方針案を半年延長する理由についてというお尋ねです。
 これまで行ってきました地域懇談会等において、全体として改革の方向性に一定の御理解をいただいた一方で、再編基準ですとか、望ましい学校規模、今後の進め方等についてのご意見、ご質問を多くいただいたところでございます。
 これを総括する中で、「学びの改革 基本構想」の理解をさらに深める必要があること、単球的な学び等今後の高校教育の具体像をより明確に示す必要があること、地域全体および県全体の高校の将来像をさらに議論する必要があるということであります。
 これらを踏まえてさらに議論を深めた上で、実施方針案をお示しすることが適切であるというふうに考えまして、本年9月にはスケジュールの見直しを行い、今回「策定に向けて」というものを公表したところでございます。
 「策定に向けて」の議論のテーマと県民への説明ということですが、これまで「学びの改革」は、課題解決型の「探究的な学び」の導入等によります新たな教育の推進と、再編等を含む新たな高校づくりに一体的に取り組むというふうにしてきたものでありまして、これは今後も変わらない一貫した方針です。今回の「県立高校『学びの改革 実施方針』策定に向けて」においても、実施方針案のたたき台として、「新たな学びの推進」と「再編整備計画」を示し、それぞれに3つの方針、方針1から方針6を立てたところであります。
 これまで地域懇談会等でいただいたご意見を踏まえて、「探究的な学び」等、今後の高校教育の具体像についても議論のテーマとして、より明確に示したところであります。この「策定に向けて」と題した県教育委員会の考え方を今後開催する2回目の地域懇談会等でご説明し、さらに議論を深めた上で、高校改革実施方針案を策定してまいりたいというふうに考えております。
【備前議員】
 ただいま、「探究的な学び」等を深めるということで変わらないということでありますけれども、やはり県民的な議論を一からということで私は言いたいんですけれども、特に方針1では全ての県立高校が3つの方針DP、CP、APの策定という概念を新たに前面に打ち出しております。これは県立高校がどのような生徒を望み、どのような教育をし、どのような人物を育てるのか、の方針だそうであります。
 しかしこれは、文科省が大学教育改革で大学に求めていたもので、これを議論も全くないままいきなり高校現場に持ち込もうとするものであります。
 公立高校にはどの地域であっても、等しく教育の保障がなされることが求められます。それを各校に特色を競わせ、個別化をことさら追求するということは、結果的に入試制度に連動させ、県立高校が育てたい人物像をあらかじめ選別させ、これまで以上に希望する生徒の排除に作用する大きな懸念を抱かせます。
 併せて今後設置予定の「高校の将来像を考える地域の協議会」の構成には、市町村長等に加え、産業界から選出を必ず含むとしていることにも違和感がつきません。やはりこうした唐突な理念展開で打ち出す以上、最初から県民的な説明を行うべきであると思いますが、教育長のお考えを伺います。
【原山教育長】
 3つの方針についてのご質問でございます。この3つの方針につきましては、県内の高校がそれぞれの特色を発揮し、新たな学びの体系を構築する上で有効であり、「学びの改革」にとって必要なものであるという観点からお示ししたものであります。
 そして議員ご指摘のアドミッションポリシー=生徒受け入れ方針については、現在も示しております入学者選抜に係る生徒募集の観点をより具体化することによって、志願者が学校を選ぶ段階から高校生活のビジョンを明確にし、入学後の学校生活を充実したものにするためのものでありまして、議員ご指摘のような、入学希望者を排除するものではないというふうに考えております。
 さらに、「高校の将来像を考える地域の懇談会」でございますけれども、これにつきましても、実施方針を半年延長するという中の地域懇談会等におけるご意見の中で、今後のスケジュール、どういう形で進めていくのかということをもっと明確に示してほしいというご意見を踏まえて作ったものでありまして、産業界が入るということに関しましても、地域の将来を考えるにあたって産業界は必須であるというふうに考えて、このメンバーの中に加えたものでございます。以上でございます。
【備前議員】
 また唐突という意味では、予算的なところで現状もエアコン設置やトイレ改修さらには老朽逼迫化する特別支援学校の建設の課題があるのに、この中ではICTの普及を進めるといいますが、これには膨大な予算が必要だと思いますけれども、どう措置するのか教育長に伺いたいと思います。
 また、これまでも要望してきております少人数学級は限定的なモデル校方式ではなく、県独自に予算措置してでも全県に対象校を広げることを要望をしておきたいと思います。
【原山教育長】
 ICTの整備と老朽化した学校環境をどうするかというお話でございます。
 私どものこの「策定に向けて」のたたき台の中で方針3として、「新たな学びにふさわしい環境を整備します」ということを掲げてあります。
 この中には、ICT環境の充実とともに学習環境、生活環境の整備も挙げてあるところでございます。
 子どもたちの新たな学びにふさわしい環境整備に努めるということは、私ども教育委員会の責務だというふうに考えておりますので、引き続き鋭意努力していきたいというふうに思っております。

6.種子法の廃止について

【備前議員】
 時間がないので次にまいりたいと思います。種子法の廃止について伺います。65年にわたり日本の食と農を支えてきた主要農産物種子法が来年3月末に廃止されることになりました。廃止後も関係者の廃止の反対の声は鳴り止みません。農民運動全国連絡会は、種子を多国籍アグリビジネス企業に売り渡すもののほかならないと抗議声明を発表。種子法は稲・麦・大豆の種子の生産・普及を国が責任を持って都道府県に義務づけをしてまいりました。この廃止方針への批判に対し、国会も都道府県の取り組みが後退することのないよう、交付税措置を努める旨の付帯決議をしているように、種子は、農業や食料生産の基盤であり国民の共有財産です。
 そこで法の廃止による県農業への影響について質問します。
 まず、農水大臣は、種子を民間に任せればコストの削減が図れると答弁しております。しかし実際には民間種子として発売されている”ミツヒカリ”等の種子価格は、公的品種の10倍もするというデータもあり、コスト削減になるのでしょうか。
 また長野県でも地域に合ったものを奨励品種にし、県が税金を使って種子を開発普及してきた地消地産を図ってきておりますが、こうした取り組みに多大な影響が出ると思いますが、これについての農政部長の見解をお尋ねします。
 さらに、すでに11月15日、事務次官名で運用基本要綱、種子制度等の運用を廃止すると通知をしてきていると思いますが、ここには国会で附帯決議された出資法廃止後の都道府県の役割についても、これまで実施してきたこの種子に関する全てを直ちに取りやめるものではないと記載はありますが、国の予算措置の根拠法がなくなったことによりまして、こうした中において、国の支援がどうなるのでしょうか。
 また、農業試験場等の体制の後退などあってはならないと思いますけれども、農政部長のお考えを伺います。
【農政部長】
 主要農作物種子法の廃止についてのご質問につきまして、お答えをさせていただきます。
 始めに廃止によります新品種の育成や普及などへの影響についてですが、長野県の試験場では、一般財源や試験研究にかかわる外部資金等を活用して、標高差が大きく多様な気象条件の長野県において、それぞれの地域に適して安定生産ができる品種を数多く開発してまいりました。
 近年では、食味の優れた水稲の”風さやか”や、機能性成分が豊富に含まれるもち性大麦”ホワイトファイバー”などを育成普及しているところでありまして、新品種の開発は、本件の農作物生産の維持発展に欠かせない取り組みであるというふうに認識をしております。
 今後とも、県試験場における品種の開発研究を推進するとともに、普及に当たりましては、県、市町村、JAグループ等の出資により設立され、種子の生産と供給を担っております長野県原種センターと密接に連携し、高品質な種子の安定供給に取り組んでまいりますので、主要農作物種子法の廃止による影響はないものと考えております。
 次に、法律の廃止によります種子生産への今後の国からの支援のご質問でございますが、農林水産省は、主要農作物種子法廃止後も、都道府県が種子生産等を行うために必要な経費について、引き続き地方交付税で措置されるよう要望しているというふうに承知をしております。私どもとしては、しっかりと今までと同様の対応をしてまいりたいというふうに考えております。以上でございます。
【備前議員】
 種子法の廃止の際、農水大臣は、万全な予算措置を行う決意と、法律がなくなっても国として予算措置をすることは明言はしています。そこで、種子法の廃止を踏まえ、食料を守る立場で今後の長野県での新品種の育成や、これまで県が開発してきた種子を継続的に生産供給する仕組みを堅持していくために、知事はどのようにお考えかお伺いしまして、以上の質問とさせていただきます。
【阿部知事】
 新品種の育成あるいは種子の生産供給に対する、今後どう取り組んでいくかということでございます。本県の米・麦・大豆等の主要農作物、本県農業の基幹部門であると思っております。
 とりわけ米につきましては、全国1位の一等米の反収を誇っておりまして、これは立地条件、農業者の技術力、こうしたことに加えて長野県原種センターが供給しております高品質な種もみで安定生産されているということも、大きな要因だと考えております。
 今後少子高齢化が進展する中で、国内消費量の減少が見込まれる中、本県農業の競争力強化を図っていくためには、高品質化、ブランド化が進められる魅力ある県オリジナル品種の開発が重要です。したがって、引き続き農業関係試験場での新品種の開発に取り組んでまいります。
 また、原種センターを中心とした種子の生産供給システムについては、今後とも維持して、高品質な種子の安定供給に努めて行きたいと考えております。以上です。

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