日本共産党長野県会議員団

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議会質問

2019年6月定例会 毛利栄子議員一般質問

  1. 四賀メガソーラー事業について
  2. 福祉医療のさらなる充実について
  3. 「長野県主要農産物及び伝統野菜の種子に関する条例」について

1.四賀メガソーラー事業について

【毛利栄子議員】

 四賀メガソーラー事業について伺います。再生可能エネルギーの本格的導入は、温暖化対策としても喫緊の課題です。しかし、日本ではきちんとした規制やルールがないまま、儲けを優先した乱開発が起き、特に2012年7月の固定価格買取制度開始以降、事業用太陽光発電をめぐって、急速に認定・導入がされることになり、安全性や環境保全に住民との間にトラブルが起きております。

 霧ヶ峰に計画されている四賀メガソーラーは、全国初の環境アセス対象にした事業ですが、開発面積200ヘクタール、諏訪湖の面積の7分の1に相当する広さであり、その半分を伐採し、31万枚のソーラーパネルを敷き詰め89 メガワットの電力を創出するというもので、全国的に見ても巨大な計画です。

 ここは環境省の特定植物群落にも指定され、長野県のレッドデータブックに記載されている指定希少野生動植物、また貴重な高層湿原群落もある場所であり、諏訪市の酒蔵5蔵の水源や、茅野市民の4分の1に当たる飲料水を供給する大清水水源を涵養しており、諏訪湖や上川の漁業にも、大きな影響が及ぶことが憂慮されています。

 また大規模な伐採は保水力を奪い、横河川下流域の茅野市米沢では、過去に河川の氾濫や土砂災害も経験しており、米沢北大塩地区の93%の区民が反対の意思を表示し、全体で5万を超える署名も集まっています。

 そこで、以下、環境部長に質問いたします。環境アセスに沿って、会社側から準備書が出される段階ですが、いつごろになるのでしょうか。会社側の説明では、発生土は18万7000立方メートルとのことですが、沢を埋める当初計画から、県の指導もあり、2カ所の隣接する砕石場に変更になりました。事業者はアセス対象区域外と言っています。住民の皆さんは、盛り土の防災面や環境面の管理を心配されています。どこが責任を持つのでしょうか。

 次に建設部長に伺います。四賀メガソーラーは、中央高速道路から、張り巡らされたパネルが目に飛び込んでくる位置にあります。2月議会で山口典久議員の代表質問に対し、景観届け出制度に新たなルールの追加を検討しているとの答弁でしたが、検討の中身と進捗状況はどうなっているのかお聞かせください。

 次に建設部長に伺います。四賀メガソーラーは、中央高速道路から、張り巡らされたパネルが目に飛び込んでくる位置にあります。2月議会で山口典久議員の代表質問に対し、景観届け出制度に新たなルールの追加を検討しているとの答弁でしたが、検討の中身と進捗状況はどうなっているのかお聞かせください。

 次に知事に伺います。準備書が出された後に、知事意見を述べるに当たって、環境の保全上の意見を聞く必要があると認めるときには公聴会を開くとなっております。4月22日付で米沢地区区長代表と米沢地区Looopソーラー対策協議会会長名で、知事宛に公聴会を開くよう求める要望書を出されていますが、どのように受け止めておられるのか。また、実施していただけるのでしょうか。

 富士見町では10キロワット以上の事業者に対し、町長への事前協議、周辺住民・関係区への説明を義務付け、住民の求めに応じ、合意取り付けや協定締結を行うよう規定し、実施に当たって、町長の許可を受けなければならないという画期的な条例を6月議会で可決しました。県内各地で起こっているトラブルは、環境の大規模な改変を伴うものも多く、観光県長野にとっても看過できない状況です。そこで県としても、新しいルール、知事の認定を得る条例の制定が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

【環境部長】

 2点ご質問いただきました。初めに、準備書の提出についてでございますが、6月24日付で事業者から準備書が提出されました。現在、公告に向けて手続きを進めているところでございます。

 次に、残土処理の管理についてでございます。この事業で発生する残土につきましては、当初のソーラー事業者による事業用地内処理から、別の近隣採石事業者による採石跡地整備への利用に変更されました。このため、ソーラー事業とは別の採石事業の内容となり、環境アセス制度上では、検討事項から外れることとなります。この採石跡地での残土処理につきましては、内容に応じて、採石法や森林法に基づく許認可が必要となるため、これらの法令手続きの中で、防災や環境の観点も含め、審査されるものと承知しております。以上でございます。

【建設部長】

 景観届け出制度の見直しに関する検討状況についてのお尋ねです。本年4月1日時点で、県内では諏訪市など23の市町村が景観行政団体となっており、県はそれ以外の54の市町村の区域において、景観行政を担っています。県では、太陽光発電施設をはじめとする一定規模以上の工作物の設置等の行為に対して、景観法及び景観条例に基づき、事前の届け出を義務付けているところですが、この手続きの見直しを進めており、具体的には、地域にとって重要な景観の眺望点からのシミュレーションと、住民説明の状況等届け出に際して提出を求めることを検討しています。

 この方針について、本年1月の景観審議会に説明し、現在詳細について有識者による専門委員会にてご審議いただくとともに、景観行政団体を含め、市町村へ情報提供し、意見交換を行っているところです。今後パブリックコメントを行った後、景観審議会にお諮りした上で、本年度中の施行を目指し、届け出制度の見直しを行ってまいります。以上でございます。

【林務部長】

 林地開発許可に係る進捗状況と、伐採木の処理についてのお尋ねです。現状では事前協議を行っております。事前協議では、土砂災害の防止、水害の防止、水源の涵養、環境の保全について審査を行い、内容が適正と認められた場合に、申請書を提出するよう通知をします。なお、申請に当たっては、環境アセスの内容が反映されるよう指導してまいります。申請がなされた場合は、森林審議会で専門的な意見をお聞きし、許可・不許可を判断します。伐採木の処理につきましては、事業によって発生する伐採木が産業廃棄物になる場合は、適正な処理を行うよう指導してまいります。

【知事】

 諏訪市四賀のメガソーラー事業について、私には大きく2点でご質問を頂きました。まず、公聴会の開催と要望書の受け止めについてというご質問でございます。今回の環境アセスにおける準備書段階での手続きにおきましては、環境保全の見地からの意見を有する者の意見をお伺いするため、公聴会の開催を計画をしております。また4月20日付の要望書につきましては、地域住民の皆様方が、太陽光発電施設設置のために計画されております森林伐採によりまして、地域の水源涵養機能の低下や、水道水源等に利用している湧水の水量減少について、ご懸念・ご不安を抱いているということを、強く受け止めさせていただいているところでございます。

 条例の制定についてというご質問でございます。太陽光発電施設の設置に当たりましては、環境面、あるいは防災上の懸念が生じることのないよう、地元の皆様との合意形成を図りながら、事業を進めていただくということが重要だと考えております。県としては、太陽光発電が地域と調和したものとなるように、全国に先駆けて環境影響評価条例を改正して、太陽光発電事業を対象とさせていただいたほか、林地開発許可等の手続きについても、積極的に見直しを行ってきたところであります。

 先ほどの建設部長からも答弁したように、景観届け出制度の見直しも行っているところであります。今後とも、必要な取り組みを行っていきたいというふうに考えております。以上です。

2.福祉医療のさらなる充実について

【毛利栄子議員】

 今、知事からもご答弁いただきましたが、重ねてお伺いをさせていただきます。豊かな自然環境を売りにする長野県が、事業用太陽光発電で儲けを狙う業者のターゲットにされています。国もようやく問題意識を持ち、ソーラー発電も環境アセスの対象にしようと取り組み始め、大量の未稼働案件の固定価格買い取り制度に、規制や低減をかけるなど始めています。

 全国に先駆けて実施した長野県の太陽光発電に関わるアセスは、森林の面積が20ヘクタールと大きいために、アセスの対象にならずに設置されている例が増えています。和歌山県では、50キロワット以上の事業用発電に知事の認可を必要とする条例が、昨年の3月制定されました。県は市町村対応マニュアルなどを示していますが、市町村では対応しきれない事例があるため、県での対応が必要だと思いますが、重ねて知事の所見を伺います。

 続けて質問させていただきます。その後、ご答弁をお願いします。福祉医療のさらなる充実について伺います。県下全ての市町村で、昨年8月から子ども医療費の中学まで所得制限なしで現物支給にしていただいたことは大歓迎されています。「月末や金銭面の余裕がないときに子どもを病院に連れて行かれないことがあった。これからは安心して受けられる」「支払いが以前より少なくて済み助かります」「手持ちのお金を気にせずかかれるようになりました」など、喜びの声が届いています。

 福祉医療給付制度の改善を進める会が、昨年10月から11月にかけアンケートを実施、698世帯から回答を得ました。アンケートでは現物給付になったことに対して、76. 9%が大変良い・良いと答え、県の制度を評価しています。一方で、「やっとかという思いだ」といった受け止めや、「500円の自己負担分を払うのなら窓口無料とは言えない」など、完全無料化を求める声も多く聞かれます。県内では完全無料化の自治体が11町村、14. 3%まで広がっています。

 そこで健康福祉部長に伺います。格差と貧困が広がるもとで子育て支援の充実が求められています。中学卒業までの子ども医療費窓口一部負担金をなくすのに、必要な財源は幾らでしょうか。県として、ぜひ完全窓口無料化を実施してほしいと思いますがいかがでしょうか。

 また、同じ福祉医療である障害者医療給付もぜひ現物支給にしてほしい、そういう要望が強く寄せられています。障害者の場合、働けない上に、医療費が高い傾向にあるからなおさらです。見解を求めます。

 福祉医療の改善を進める上で、当事者の思いや願いを聞くことが何より大事だと思います。子育て中のお父さんお母さん、また障害をお持ちの皆さんに、完全無料化に関わる意見を幅広く聞く機会を実施してほしいと思いますが、いかがでしょうか。

 次に知事に伺います。日本共産党は、国の制度として、さしあたって就学前までの医療費を所得制限なしで無料にすることを求めております。全国で助成制度が広がるもとで、住むところによって命に関わる子育て支援策が違うのがおかしい、国が就学前までを無料化すれば、さらに自治体の助成制度を前進させることができると考えているからであります。子ども医療費の就学前までの無料化をぜひ国に強力に求めてほしいと思いますが、いかがでしょうか。

 県下78%、60の市町村では、入院・通院とも高校卒業まで無料です。また、100%の市町村で中学卒業までの通院給付を実施しています。市町村の努力で、このような事業が前進してきていると思いますが、市長会からも県の補助を、通院も、今の就学前から中学卒業まで拡大してほしいと、重ねて要望が上げられています。知事の考えを伺います。

【知事】

 まず太陽光発電事業につきまして、再度質問を頂きました。条例の制定について改めて問うということでありますが、太陽光発電事業につきましては、地域ごとに課題や事情が異なるわけであります。幾つかの県内市町村におきましても、既に条例化が行われている市町村もあるわけでありますし、県として、こうした動きをこれまでもしっかり応援をさせてきていただいたところでございます。今後とも、市町村と十分課題を共有しながら、再生可能エネルギー事業が適正に導入され、また、地域と調和したものとなるように取り組んでいきたいと考えております。

 続きまして、福祉医療費に関連して、子ども医療費就学前までの医療費無料化を国に求めてほしいがどうかというご質問でございます。私ども、就学前と言わずに、国の社会保障政策にしっかり位置づけよという要請をしているところでありまして、ご承知のとおり、現在子ども医療費助成制度が全国全ての自治体で行われているわけであります。しかしながら、受益者負担金の有無であったり、対象年齢、補助対象区分等、さまざま自治体ごとに制度が分かれているわけであります。

 こうした中で、もうある意味子育て支援においての子ども医療費無料化は全ての自治体で行われているわけでありますから、国において、やはり社会保障の中でしっかり向き合うべきものというふうに私は考えております。そういう意味で、全国一律の制度とするよう国に求めてきているところでありますし、これからも引き続き求めていきたいというふうに思っております。

 それから子ども医療費助成の補助対象の拡大ということでございます。市長会からも小・中学生まで、中学生まで県の通院補助対象となるようにご要請いただいているところであります。こうした市町村におけるご努力、中学まで所得制限なしで現物給付方式で医療費助成が行われているということは、市町村の皆様方のご協力、お取り組みのおかげだということで、大変私としてはありがたく思っております。全国的に見ても、非常に充実した制度となっているというふうに考えております。

 県の補助対象を拡大すべきというご要請の趣旨については、私も問題意識はしっかり共有させていただいているところであります。しかしながら、県の限られた財源を有効に活用していく上では、単に県と市町村との間で財源振替を行うということにとどまってはいけないのではないかというふうに考えております。より望ましい子育て支援等にどう繋げていけばいいのかということについて、十分検討していきたいと考えております。以上です。

【健康福祉部長】

 福祉医療費につきまして3点ご質問いただきました。まず子ども医療費の窓口一部負担金をなくすために必要な財源についてでございます。子ども医療費に係る受給者負担金を廃止した場合ですが、県市町村を合わせた新たな財政負担としては、8億円と試算をしております。

 完全無料化の実施についてでございます。子ども医療費の窓口負担金の取り扱いについては、この制度が市町村と共同の制度でありますことから、財政負担をお願いする市町村の考えも十分聞き、尊重していく必要があると考えております。平成28年度に現物給付方式の導入について検討を行った際に、受給者負担金のあり方については、市町村の意向調査を実施し、現行と同様とするとの回答が、77市町村の8割を超える結果となりました。この調査結果を踏まえ、長野県福祉医療費給付事業検討会において、将来にわたり持続可能な制度として、県民福祉の向上に寄与するため、現行の1レセプト当たり500円を維持することが、適当であるとの議論の取りまとめがされたところであります。

 子ども医療費に係る受給者負担金の廃止については、ご要望があることは承知をしております。財源が限られる中で、福祉医療制度全体のバランスの取れた充実を図ることが必要であり、また現物給付方式の導入による受診動向が与える財政面の影響等も、総合的に勘案して判断をする必要があると考えております。

 次に、障害者の医療給付も現物給付とすることについてでございます。福祉医療制度における現物給付方式につきましては、国民健康保険国庫負担金等の減額調整措置が、未就学児まで廃止されたことを踏まえ、検討の結果、子育て支援の観点から、子どもの医療費について現物給付方式を導入することが適当であるとされ、昨年8月より導入させていただきました。

 障害者の医療費助成を現物給付方式の対象とするようご要望があることは承知をしておりますが、仮に現物給付方式の対象とした場合には、国保減額調整措置による国庫負担金の減少、健康保険組合の付加給付の停止の影響により、県及び市町村に新たな大きな財政負担が生じてまいります。現物給付方式の拡大については、財源が限られる中で、福祉医療制度全体の観点、財政面の持続可能性の観点から、総合的に判断する必要があると考えております。

 最後に、当事者の意見を聞く機会の実施についてでございます。受給者負担金の補助対象の考え方はさまざまであり、制度見直しに当たっては、実施主体である市町村とともに、関係団体等、当事者の皆さんの意見をお聞きしながら判断をしていく必要があると認識をしております。

 そのため昨年秋以来、福祉医療給付制度の改善を進める会をはじめ、5団体の当事者皆様から、受給者の置かれている現状や、対象範囲の見直しに関するご意見を直接お聞きしてまいりました。貴重な限られた財源を、福祉医療も含めてどのような政策に使わせていただくことが最も子どもや障害者の支援に繋がるかを、さまざまな機会を通じて当事者の皆様とも丁寧に意見交換をさせていただき、今後の福祉医療のさらなる充実の判断に生かしてまいりたいと考えております。以上でございます。

【毛利栄子議員】

 先ほど知事にご答弁いただきまして、ちょっと聞き取れない面もありましたが、普通いろんな社会保障の全体の中で考えなければならないという問題であるという点や、それから財源を市町村が持つか、県が持つかというふうなこともあるというふうにおっしゃっておられましたが、ことは子どもたちの命に関わる問題ですので、私は、これは一般の社会保障と同列に扱うという問題ではなくて、長野県内どこに住んでいようとも、本当に長野県民として、県が責任を持って命を守っていくという立場で、どうしてもこの問題では、市長会が求めているような受益者負担金の撤廃、それから中学卒業までの通院補助やっていただきたいと思うんです。

 要はお金の問題というよりも、私は、知事の決断一つにかかっているのではないかと思っております。 例えばお金の問題ということであれば、6月議会でも財政が厳しいと言いつつ、やりくりすることによって25億円が新たに基金への繰り入れができたことを考えれば、未来への投資として、知事には大胆な決断を求めたいと思いますが、いかがですか。

【知事】

 子ども医療費の助成については、これまでも、再三改善をしてきているところであります。 先ほど受益者負担金については部長から答弁申し上げましたとおり、この制度は私ども県が単独で行っている制度ではなくて、市町村と共同で行っているものでありますので、市町村と一緒に検討していかなきゃいけない課題だというふうに思っております。

 私もお母さんたちと話したことがあります。受益者負担金どうですかと。確かにないにこしたことはない、だけどその総額が億単位、他のことにもっと使ってもらったほうがいいんじゃないかと言う方もいらっしゃるということも事実でありますので、全て財源を行政が負担するということは、他のところを削減する、あるいは抑制するということにもつながるわけでありますので、全体のバランスを見ながら考えていくべきものというふうに思っております。

 そして、通院補助の拡大については先ほどもご答弁申し上げましたが、これは今、市町村皆様方が支えていただいてるわけであります。県の負担部分を拡大するということで市町村負担は軽減されますが、単にそれだけだと、県民の皆様にとっては直接影響がないということは、これ、毛利議員も重々お分かりのことだと思いますので、そういう意味で、先ほど私が答弁申し上げましたのは、県民の皆さんにとって望ましい形にするには、どうしていけばいいのかということを考えていく必要があるということを申し上げたところでございます。以上です。

3.「長野県主要農産物及び伝統野菜の種子に関する条例」について

【毛利栄子議員】

 最後に、長野県主要農作物及び伝統野菜等の種子に関する条例について伺います。昭和27年に主要農作物種子法が制定されて以来、農業者と国、県農業試験場をはじめとした農業関係者の努力によって、米・麦・大豆の品種改良と種の保存、生産・供給が進められ、長野県農業の発展に多大な役割を果たしてきました。

 昨年種子法が廃止され、農業関係者や消費者の間に大きな不安が広がりました。そうした中で、長野県が県民の不安払拭のために、全国でも評価される米・麦・大豆に加え、そばや伝統野菜を加えた条例を、県民の意見も取り入れつつ、スピード感を持って提案されたことは歓迎できるし、高く評価したいと思います。

 そこで以下、農政部長に伺います。種は最も基礎的な農業生産資材であり、大切な遺伝資源です。その開発・生産・普及・保存などに公的機関が責任を持って対応していくことは必要不可欠で、国連の提唱するSDGsの食料の安定確保と、持続可能な農業の推進にも合致しています。

 過日、種子管理団体に指定予定の原種センターを視察させていただき、お話を伺ってまいりました。 他県には見られない施設として、主要農作物の種子・原種生産供給事業や園芸用種苗・きのこ母菌生産販売事業、遺伝資源の保存事業などをされており、長野県農業の根幹を支えていただいていることに認識を新たにしたところです。

 条例第8条では、種子計画を原種センターが実施するとなっていますが、長野県農業の根幹を担う部分のため、県がイニシアを発揮し、種子管理団体と協議しながら、責任を持って策定する必要があると考えますが、いかがでしょうか。原種センターにした理由などもお聞かせください。

 条例に魂を入れて実効性あるものにしていく上で大切になるのは、種子生産をする後継者の育成や担い手の確保です。種採りや交雑を防ぐためには、長年の経験と巧みな技術が必要であり、手作業に頼らざるを得ない部分のある根気のいる仕事です。担い手の確保にどう対応していくのでしょうか。

 加えて種子を調製する専用施設の老朽化が進んでいる現状もあります。中川ひろじ議員の質問に、部長は、今年は産地ごとに調査をして課題を洗い出すと述べておられました。しかし老朽化の現状は待ったなしです。調査と並行して速やかに対応していただきたいと思いますが、いかがですか。

【農政部長】

 2点ご質問いただきました。まず、種子計画の策定についてでありますが、種子計画は主要農作物の種子の需給見通しや生産量等を定めるもので、毎年の種子の必要量、在庫量、種子更新率や生産現場の実態等を十分考慮して作成する必要があります。本県では、先ほど議員からお話ございましたけれども、他県には例のない県、JAグループ、市町村等の出資により設立をしました長野県原種センターが、種子の需給調整や在庫管理を行っており、この原種センターを中心とした種子の生産供給システムが確立をされております。

 のため種子の生産と安定供給の中核を担い、種子産地の巡回等を実際に行っている原種センターが、種子計画を作成することが適当と考えております。また、計画の作成に当たりましては、原種センターの原案を、県及びJAグループ等で構成する専門委員会におきまして、十分に協議し決定してまいります。

 次に、種子生産に係る課題への対応についてでありますが、種子の生産現場におきましては、後継者の育成や担い手の確保、種子調製施設の老朽化への対応は、大変重要な課題であると考えております。このため、後継者の育成や担い手の確保も含めた産地の将来的なあり方や、労働力の削減につながる育苗・防除作業等の共同化の推進について、関係者が話し合う場を設けるとともに、共同作業に必要な機械の導入などについても、支援を検討してまいりたいと考えております。

 また種子調製施設の設備につきましては、多額の費用を要することから、施設の統廃合や共同利用なども視野に、国の交付金の活用なども含め、産地の実情に合わせた支援を検討してまいります。以上でございます。

【毛利栄子議員】

 昭和41年に建てられて、既に50年余を経過している信里の種子センターを視察してまいりました。種もみの調製機の部品がないために、壊れたときには自分たちで手探りの工夫をしながら対応しているとのことでした。コシヒカリなど285 トンの契約を請け負っており、倉庫も手狭であります。何か故障があったときには、階段もないような3階部分に相当するくらいの機械の高さまで登っていって、本当に危険な状況の中で管理をしているというお話を伺ってまいりました。

 施設の機能が働かなくなれば、種の供給に支障が出ます。そこで働いている若いJAの職員は、質の良い種を調製するために、1回終わるごとに機械に残っているもみが混雑しないように、丁寧に取り除く作業に神経を注いでおられました。また1人だけでチェックするのではなく、ダブルチェックということで、種を残さないという努力をされておりました。

 輝いて働いていた彼らの姿を本当に見るにつけても、後継者づくりにもヒントがあると思います。現場で生産し、管理されている皆さんの立場に立ち苦労に報いることができ、消費者にも安全・安心の持てる生きた条例になることを願って質問を終わります。

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