日本共産党長野県会議員団

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議会質問

2019年9月定例会 山口典久議員一般質問

  1. 精神障がい者への福祉施策について
  2. 障がい者共生社会づくりの条例について
  3. 学校給食の安全について
  4. 米軍機の低空飛行への対応について

1.精神障がい者への福祉施策について

【山口典久議員】

 最初に暮らしやすい地域づくりに関して、2点伺います。精神障がいは、統合失調症、うつ病、躁うつ病をはじめ、脳内の神経を伝達する物資のバランスが崩れることによって引き起こされる脳の病気とされています。平成29年3月末現在、県内の障害者手帳所持者数は、身体障がい者9万3000人、知的障がい者1万8000人、そして精神障がい者1万8000人であり、精神障害手帳の所持者は、この5年間に37.3%増加しています。身体障がい者は減少傾向にありますが、精神障がい者の増加傾向は顕著であり、生活支援や社会参加へのニーズも多様になっています。

 先日、精神障がい者の団体の皆さんからお話を伺いました。この中で真っ先に出されたのは、医療費の負担の軽減など、福祉医療費給付事業についての要望でした。障がいの等級が、身体障がい者や知的障がい者と同程度でも、精神障がいの場合は、福祉医療費給付事業の対象が限定されています。例えば、精神障がいの場合、最も重い1級でも入院は対象になりません。2級は、入院はもとより、内科や外科、歯科など精神以外の診療科目は対象となりません。これは障害者の権利に関する条約や、障害者基本法の規定等を踏まえても、解決が急がれる課題ではないでしょうか。

 障がい者が置かれている経済的な状況は大変厳しく、中でも精神障がい者は、疲れやすい、症状に波がある、こうした特性から、長時間、また長期間安定して働くことが困難であり、こうした精神障がい者の生活を支援する上でも、身体・知的障がいとの格差の是正のためにも、福祉医療の給付事業対象を、今、見直すときではないでしょうか。

 加えて、公共交通機関の運賃の割引について伺います。JRや長野電鉄では、精神障がい者の割引制度がありません。作業所で1カ月働いて受け取る工賃が数千円にもかかわらず、運賃が1万円に上る場合もあります。

 県内のNPO法人ポプラの会、長野県ピアサポートネットワーク、長野県精神保健福祉連合会、せいしれん、きょうされん長野支部長、長野県障害者運動推進協議会など、14団体からなる長野県障がい者の地域交通を考える会は、平成23年2月、阿部知事に1万4745名の署名とともに、運賃の割引を陳情いたしました。これを受けて、しなの鉄道で割引制度の実現につながったとお聞きしています。

 また、同会の皆さんが本県議会に提出した「交通運賃割引に関する支援を求める請願」は、平成23年3月11日に、全会一致で採択されています。 しかし、残念ながらJRや長野電鉄においては、精神障がい者の運賃の割引制度がいまだに実現していません。何がネックになっているのでしょうか。割引制度の実現への県の積極的な取り組みを求めるものですが、以上、健康福祉部長の見解を伺います。

 障がいを持つ当事者が、対等、仲間の立場で、病気のこと、悩み事、家族との関係についてなど話を聞き、相談に乗ったり、また情報を提供するピアサポート事業について伺います。この事業は県の委託事業で行われ、当事者団体の主体性と取り組みを尊重しながら行われておりますが、当事者の皆さんは、障がいを持ちながらの活動であり、団体の運営もさまざまな苦労を抱えていることをお聞きしています。精神障がいにおけるピアサポート事業の果たしている役割、今後の課題をどのように捉えておられるでしょうか。またピアサポート事業を担う当事者団体の支援の強化について、健康福祉部長の見解を伺います。

【健康福祉部長】

 精神障がい者への福祉政策について、3点ご質問いただきました。

 まず、精神障がい者の福祉医療の給付事業対象を、身体・知的障がいと同等に見直すことについてでございます。県では、平成22年に精神2級の方の自立支援医療の精神通院医療を対象に加え、平成27年には、18歳年度末までの障がい児に対する所得制限を撤廃するなど制度の充実に努めてきており、通院に係る補助対象範囲については、全国でも上位にあると認識をしております。

 しかしながら、他の障がいと比較をすると、精神障害者保健福祉手帳2級の通院に対する補助を、自律支援医療費の精神通院医療費のみに限定していることについては、課題の一つであると認識をしております。

 福祉医療費については、子ども医療費の補助対象や、現物給付方式の拡大、受給者負担金の廃止などさまざまなご要望いただいておりますので、実施主体であります市町村の考えも十分お聞きしながら、持続可能な制度とするため、慎重な判断が必要であるというふうに考えております。

 次に、公共交通機関の割引についてでございます。県内の一部交通事業者において、身体障がい者や知的障がい者については、運賃の軽減措置が取られているにもかかわらず、精神障がい者が対象になっていない状況があります。これは全国的な傾向でもあります。事業者でネックとなっている点でございますが、各事業者における経営上の理由があるとお聞きをしております。

 県はこれまで国や交通事業者に対し、精神障がい者についても運賃の割引制度が適用されるよう要請を行ってまいりました。今年度、私も直接障がい当時者、支援団体の皆さまとも意見交換し、課題として認識をしております。また複数の団体からも要望いただく中で、国に対しては、今年6月に要請活動を行っております。また、交通事業者に対しても要請を行うべく、現在準備を進めております。

 最後にピアサポート事業の役割と、今後の課題についてでございます。精神障がい分野におけるピアサポート活動では、精神科病院に入院中の障がい者に対し、当事者支援員が同じ障がいや病気の経験に基づいた助言をする等の支援を行っており、仲間同士との支え合い、地域移行、地域定着につながっていく効果が期待されております。このようなピアサポートの取り組みをより一層進めていくことが必要でありますが、その一方でピアサポートの活動状況には県内の地域間で差があり、県全体としてこの活動広げていく必要があると認識をしております。

 当事者団体の支援強化についてでございます。障がいのある当事者や家族の団体は公益性の高い事業に取り組まれる一方、多くは小規模で財政的に厳しいと承知をしております。このため県では、当事者団体に障がい者支え合い活動支援事業委託し、当該団体の活動を促進するとともに、ピアサポートのノウハウを、県内各地へ広げるよう現在取り組んでおります。また精神保健福祉センターは、精神障がい分野の団体を対象に、教育研修の開催や技術指導等、組織育成に資する支援を行っております。

 当社団体等の要望を聞きながら、こうした取り組みをさらに強化していきたいと考えております。以上でございます。

2.障がい者共生社会づくりの条例について

【山口典久議員】

 次に、現在、県が推進している障がい者共生社会づくりの条例案について伺います。共生社会をめぐる条例については、平成24年11月に提出された、長野県「障がいのある人もない人も共に生きる社会を目指す研究会」が提出した報告書において、差別等の問題を、権利の擁護と機会の平等という観点から捉えることが重要であること、そのためにも差別等に当たる行為の具体的な定義付け、障がい者と共生するための県民共通のルールなど法的な位置づけが必要であるとして、県条例の制定を強調してきた経過があります。

 そして阿部知事は、今年2月の定例会の答弁で、障害者差別解消法の成立以来、障がい者への合理的な配慮などは前進したその一方で、障害者差別解消法の窓口への相談件数は年々増加していること、また、知事自身が障がい者団体の皆さんと意見交換をし、さまざまなお話を伺ったことを踏まえ、本県として共生社会の実現に向けた条例を検討すると述べられました。

 先ほど精神障がいをめぐる課題を何点か挙げさせていただきましたが、知的障がい、身体障がいもそれぞれに、障がい者に対する理解不足、そのことから来る差別的な対応や、また障がいによる生きづらさなど、多様で複雑な解決が求められている課題があると考えます。

 こうした中、長野県の条例の推進にあたっては、詳細な調査や丁寧な県民的な意見交換を踏まえてこそ、長野県らしい条例となるものと考えます。共生社会をつくるために、いかに実効ある条例にしていくのか、阿部知事の見解を伺います。

【知事】

 障がい者共生社会づくり条例(仮称)の制定に関連して、実効性をどう確保していくのかというご質問でございます。

 大きく申し上げて3つの観点があるんじゃないかというふうに思っております。一つは、まずそもそも毎年度の予算措置に基づく事業推進ということだけではなくて、条例、県議会の皆さま方のご議決をいただく中で、条例という形で定めていこうということ自体が、ある意味持続性を担保しつつ、実効性を高めていこうということにつながるというふうに思っております。

 また今、社会保障審議会障害者権利擁護専門分科会の中でもご議論いただいておりますけれども、負の部分を解消していこうということにとどまらず、スポーツや文化芸術など、共生社会を前向きにつくり上げていくような取り組みを、できるだけ条例に盛り込んでいこうというご議論をいただいています。

 それに加えて3点目としては、障がい者の方々が差別を受けているというふうに感じられているような、具体的な事象を解決する仕組みの検討が必要だというご意見もいただいておりまして、このような観点からの議論を、さらにこの分科会の中で深めていっていただきたいというふうに思っております。

 私としては、ご指摘のように実効性のある条例にしていくということが大変重要だというふうに思っておりますので、この社会保障審議会でのご議論を踏まえた上で、県としての方向性を検討していきたいというふうに考えております。以上です。

【山口典久議員】

 先ほど、精神障がい者の福祉医療制度の見直しは課題の一つという部長のご答弁がありました。 私は、やはり本当に大事な課題の一つであり、大きな課題の一つだと思っています。この精神障がい者の福祉医療制度と公共交通機関における運賃の割引については、先ほどご紹介しましたけれども、長野県障がいのある人もそしてない人も共に生きる社会を目指す研究会の報告書でも、国等への提言や、県独自の取り組みの検討も必要ですと強調されておりました。

 時間をかけた団体の皆さんの粘り強い取り組みもありますし、何よりも切実な声だと思います。条例の制定も見込みながら、どうしてもこの課題は解決をしていただきたい、そのことを強く要望をいたします。

3.学校給食の安全について

【山口典久議員】

 次に、学校給食の安全について質問をいたします。この間、輸入小麦でつくられたパンから発がん性の疑いのある除草剤グリホサートが検出をされて、農民運動全国連絡会の食品分析センターの調査では、学校給食のコッペパンからも検出がされておりました。このグリホサートは、国際がん研究機関におきましては、5段階の上から2番目にリスクが高いとされており、環境ホルモン作用、発達神経毒性も指摘する研究も増えています。

 日本は小麦の8割超を輸入していますが、その多くはアメリカ・カナダからの輸入で、両国では収穫効率を上げるために、収穫前のグリホサートの使用が一般化していることが検出の要因だと考えられます。

 こうした輸入小麦の安全性への不安が広がる中で、長野県の学校給食のパンについて伺います。県内の学校給食のパンの残留農薬の検査は、どこでどのように行われているのでしょうか。検査の結果は、どのように県民に提供されているのでしょうか。教育長に伺います。

 学校給食のパンに使用する小麦は、全量国産の小麦を使用している県もあれば、一方、全量外国産というところもあります。 長野県の場合、国産の小麦と外国産の小麦の比率はどのようになっているのでしょうか。子どもたちの健康被害や人体への影響を防ぐためにも、学校給食で用いる小麦は、全量安全・安心な長野県産、国産に踏み切るべきと考えますが、教育長の見解を伺います。

【教育長】

 学校給食の安全についてのお尋ねでございます。学校給食用パンの原料となる小麦の検査につきましては、輸入小麦については、農林水産省が産地国で検査を実施し、日本の検疫所で厚生労働省が再度検査を実施し、食品衛生法で定める基準に適合していることを確認しているところであります。また、県産を含む国産小麦につきましては、農林水産省が栽培農家において検査を実施しているほか、生産者団体、団体農協が、検査機関において検査を実施しておりまして、いずれも食品衛生法で定める基準に適合していることを確認している、こういう仕組みになっているところでございます。なお、国が行う検査結果につきましては、国のホームページで公表されております。

 さらに、本県において学校給食用パンを提供している公益財団法人長野県学校給食会におきまして、市町村、県民からの問い合わせに対応しているところでございます。

 次に、小麦の比率でございます。長野県学校給食会によりますと、小麦の比率は、現在国産が80%、外国産の小麦が20%という状況ですが、本年の11月からは、今の県産の小麦の比率が35%、全体の平均して35%ですが、これを10%高めることによりまして、国産比率90%とする予定でございます。国産あるいは県産の小麦が、5月から6月の天候によりまして収量とか品質が大きく変わるために、各年度の生産状況、品質等を考慮しながら、長野県学校給食会と長野県製粉協会が協議し、配合割合を決定しているところであります。

 県教育委員会としては、農政部等と連携を図りながら、長野県学校給食会が目標としています長野県産小麦100%の安全で安定した品質のパンが、早期に提供できるよう支援してまいりたいというふうに考えております。

【山口典久議員】

 残留農薬については、国の動向にも不安が広がっています。厚生労働省は2017年末、輸入小麦の残留農薬基準を6倍に規制緩和をいたしました。さらに、TPP協定は、アメリカの要求で輸入食品の検査時間を半分にカットするルールを導入しています。現状でも基準値を超えた野菜が発見されたときは、既に消費者の口に入っているのが実態です。子どもたちの健康を守るために、学校給食の小麦は100%長野県産、国産に踏み出すことを改めて強く要望をいたします。

4.米軍機の低空飛行への対応について

【山口典久議員】

 続いて、米軍機の低空飛行への対応について質問いたします。この間、長野県内では米軍機の低空飛行が繰り返され、騒音被害、墜落など事故への不安が広がっています。最近でも、8月6日には、米軍輸送機オスプレイとみられる機体が、長和町、上田市、中野市、須坂市、原村、伊那市、宮田村、大鹿村などで目撃されたと報じられています。雷のような音が響き体に振動が伝わった、家が振動した、防災ヘリが飛ぶ高度よりも低かったなどの声も報じられています。

 6月定例会で小林君男議員が、県として飛行の高度や騒音などをつかむことを求めたのに対し、基地がなく飛行を特定できないので掌握は困難だという答弁でありました。

 こうした中、日本共産党佐久地区委員会は5月30日に、佐久地方を飛行した米軍の輸送機2機について、住民から寄せられた動画・画像情報をもとに、専門家に依頼して飛行高度を分析いたしました。その結果、日米合意で定められた最低安全高度を下回る230 mほどで飛行していたことも明らかになっています。

 繰り返される低空飛行の実態をつかむことは、住民の命と暮らしを最優先に考える自治体として当然の責務と考えます。長野県のホームページでは、MV-22オスプレイの訓練飛行の目撃情報を県民から収集しています。しかし、ツイッターやフェイスブックなどでも、この佐久地方の低空飛行は市民からの画像や動画が多くアップされ、いろんな情報が出てきております。県として、画像や動画も含めて、さらに広く情報の提供を住民や市町村に呼び掛けていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。加えて、そうした情報をもとに、高度や飛行ルートなどの分析を県として行うべきではないでしょうか。危機管理部長の見解を求めます。

 この間、県は、政府や防衛局に対して飛行情報の事前の公開や、住宅地や観光地の上空を避けることなどを要請していますが、聞き入れられておりません。高知県では今年4月に、米軍のジェット戦闘機2機が超低空で飛行訓練をしたその40分後に、同じ空域でドクターヘリが患者を緊急輸送しています。もし時間が重なっていたら、重大事故につながりかねませんでした。

 日米合意で定められた最低安全高度が守られていれば良いというような問題ではありません。こうした住民の命と暮らしが、現実に脅かされている重大な事態だと思います。 今後どのように政府に対応されるのか、知事の見解を伺います。

【危機管理部長】

 米軍機の低空飛行に係る呼び掛け、飛行高度などの分析についてのご質問でございます。県民への呼び掛けにつきましては、私ども前から、市町村あるいは県を通じて広く県民に目撃情報の呼び掛けをしているところでございます。

 また、飛行高度の件でございます。5月30日に佐久地方を飛行した米軍のC 130輸送機について、共産党佐久地区委員会などが飛行高度を分析され、推計値が公表されたことは承知しておりますが、計測方法の詳細は承知しておりません。また、撮影された画像などをもとにして飛行高度を測定するため確立された調査方法はないとも聞いており、今回の分析につきましても推計値で、必ずしも正確な高度を表すものではないと認識しております。

 さらに、飛行高度より重要な点は、飛行によって現に不安や恐怖を感じられた県民がいらっしゃったことだと考えており、5月31日の米軍機の飛行も、そうしたことから6月5日には国へ要請を行ったところでございます。今後とも県民や観光客に不安や恐怖を抱かせるような飛行があった場合には、その状況に応じて国などに要請してまいります。以上でございます。

【知事】

 県内における米軍機の飛行に対する対応についてご質問いただきました。

 米軍機の県内での飛行につきましては、これまで市長会、町村会とも連携をしながら、訓練飛行の事前情報の提供等、在日米軍に強く求めるよう国に要請をしてきております。また全国知事会では、米軍基地負担に関する研究会を設置をして、現状や改善すべき課題について確認をし、その上で昨年、訓練ルートや時期についての速やかな情報提供や、日米地位協定の見直し等について国に提言を行っているところでございます。

 県としては、その後の状況も踏まえ、明日10月1日でございますけれども、小岩副知事、そして市長会、町村会にも、共同で防衛省本省に対しては要請を行っていきたいというふうに考えております。日米合同委員会合意事項の遵守、あるいは県民や観光客に不安や恐怖を抱かせるような飛行の自粛等求めていきたいというふうに考えております。

 今後も米軍機の飛行状況等を踏まえ、市長会・町村会はじめ全国知事会とも連携をしながら、対応していきたいと考えております。以上です。

【山口典久議員】

 この間、米軍機の飛行については、県などが問い合わせても、防衛省側は米軍側の運用なので把握していないと繰り返すばかりです。しかし米軍機の飛行計画は、航空法に基づき、出発飛行場、出発時刻、飛行ルートなど、自衛隊経由で国土交通省に事前に通報されています。しかしそれが把握していないという回答になってしまう。その背景にあるのが、両国政府の合意なしには公表しないという取り決め、いわゆる日本側にとって非常に不平等な密約が存在するからです。

 しかし、ことは県民の命と暮らしに関わる重大問題です。知事も今ご答弁いただきましたが、全国知事会は米軍優位のこの不平等な地位協定の抜本的な見直しを求めた米軍基地負担に関する提言を、史上初めて知事会の総意として採択をしています。この提言の実現のために、阿部知事が積極的に取り組んでいただくことを要望し、質問を終わります。

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