2019年9月定例会 和田明子議員一般質問
1.知事の政治姿勢について
- 【和田明子議員】
-
初めに、知事の政治姿勢について伺います。
阿部守一氏が県護国神社の支援組織「崇敬者会」の会長を務め、鳥居修復事業に際し、「県民の皆さまの幅広いご協賛を」と寄付集めの趣意書に名を連ねていたことに関して知事に伺います。
知事は、そもそも護国神社に対してどういう認識を持っておられるのか伺います。
護国神社の支援組織「崇敬者会」の会長を、2011年4月に受けたとされています。2010年9月に知事に当選されてから、県護国神社からの要請を受けてのことと思います。知事は1期目から現在も、崇敬者会会長を務めていますが、どのような経緯で会長を受けたのか知事に伺います。
県護国神社によると、崇敬者会は神社の活動を物心両面で支援する組織だと、はっきり意思を表明しています。鳥居の修復のための寄付集めの趣意書に崇敬者会会長として名を連ねたのは、知事ご自身の判断でされたのか伺います。
- 【知事】
-
お答え申し上げます。
まず、護国神社に対する認識というご質問でございます。長野県護国神社に関わる私の個人的な活動については、戦争犠牲者の方々に哀惜の意を表するとともに感謝の誠を捧げ、また戦争の悲惨さや平和の尊さを次の世代へと引き継ごうという思いで、私人として行わせていただいているところでございます。
会長を務めるようになった経緯でございますが、これは護国神社からご依頼をいただいて、個人としてお引き受けをいたしたところでございます。
鳥居修復の事業の趣意書に名前を連ねたことに関する判断というご質問でございますが、当然でありますが、これは私個人としての判断によるものでございます。以上です。
- 【和田明子議員】
-
知事はこの問題に関して、崇敬者会会長は私人(わたくしびと)、私人としての活動、県の活動とは一線を画しており、憲法には違反しないと認識している等と言われ、政教分離に違反する行為をした認識はないと述べていることには驚いております。
公が自らの都合で私と使い分けていたら、政教分離の原則は空洞化してしまうとの指摘があります。知事の言動の多くは公人と捉えられ、県民的にもそのように受け止められていると認識すべきと思います。
そもそも護国神社側は、阿部守一氏が知事であるからこそ会長を頼んだのではありませんか。知事でなければ頼まなかったのではありませんか。崇敬者会は神社の活動を物心両面で支援する組織であり、さらに鳥居修復の寄付集めに名を連ね関与したことは、宗教活動に当たる疑いが濃いとされています。崇敬者会会長に就いていることは、特定の宗教を援助、助長、促進する効果があるかということに照らしてみても、憲法の政教分離原則に反するものと考えます。このことについて、知事はどう認識されているのか、どう対処されるのか、改めて知事にお伺いいたします。
- 【知事】
-
憲法の条文、私も何度も何度も読ませて、読み返して、また、かつ憲法の基本書も改めて何度も何度も読み返させていただいております。憲法第20条1項は、信教の自由は何人に対してもこれを保障するというふうにされているわけでありまして、これは例えば、内閣総理大臣等においても、信教の自由を保障されているというふうに言われているところでございます。憲法20条3項では、国およびその機関は宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならないという規定であります。
私の活動は、行政機関としての知事の活動でなく私人としての活動であります。県の活動とは一線を画しておりますことから、憲法には違反しないものというふうに認識をしております。
憲法上の信教の自由は極めて重要なことというふうに私は考えておりますので、今後自分なりに、考え方を慎重に整理していきたいというふうに考えております。以上です。
- 【和田明子議員】
-
今、知事もご答弁で言われたとおり、憲法20条は、信教の自由を保障するというものであります。一方で、宗教によって民主主義的な決定過程が歪められないよう、政治と宗教は分離しなければならない、政教の分離の原則が定められています。
靖国神社や護国神社などは国家神道の中核を成し、天皇の神格化と相まって、戦意高揚と戦争遂行の役割を果たしてきました。戦死者を天皇のために命を捧げた英霊として祀り、国民を戦争に動員する機能を果たしてまいりました。
憲法に記されている政教分離の原則は、アジア太平洋戦争の痛苦の経験と反省から導き出されたものです。戦争で犠牲になられた方々に対しては、国も地方自治体も戦没者追悼式において哀悼の意を表し、慰霊をしております。何よりの慰霊は二度と再び戦争への道を歩まない、憲法を遵守することだと申し上げて、次の質問に移ります。
2.森林整備について
- 【和田明子議員】
-
森林整備についてです。
森林整備事業の国の補助事業が大規模化、集約化を図り、森林経営計画の認定を要件としており、搬出間伐においてでも5ヘクタール以上のまとまりが補助要件、また森林づくり県民税においても、里山整備利用地域の認定要件は、対象森林面積が5ヘクタール以上の森林整備が主流になっています。
しかし、その対象とならない小規模な森林においても、森林整備を行うことができる森林所有者への支援が必要ではないかと考えます。そこで県として、小規模な森林整備を進めることの必要性についてどう考えておられるのか、また小規模な森林整備ができるような制度があるのか、林務部長にお伺いいたします。
- 【林務部長】
-
小規模な森林整備についてのお尋ねでございます。
長野県では、利用期を迎えた森林資源を持続的に利用していくために専用地を集約し、路網整備等を進め、生産性の高い林業を目指しているところです。一方で、森林の所有者がみずから行うような小規模な森林整備についても、里山の再生、地域の振興などの観点から、重要な取り組みであると認識をしています。このため、国庫補助の対象とならない小規模な森林等に対しても整備が進むよう、県単独事業による補助制度を設け支援をしております。
さらに第3期森林づくり県民税を活用した事業では、防災・減災の観点や県民協働で行う森林整備について、小規模な森林整備も対象としているところでございます。
- 【和田明子議員】
-
国の森林整備の補助事業に乗らない小規模な森林整備の必要性を、県としても重要視し、県単独事業があるというご答弁をいただきました。使い勝手のいい事業として活用されていくことを願うところでございます。
私たち共産党県議団は、8月半ばに岐阜県の自伐林家型地域森林整備事業費補助金の仕組みと、補助金を使って整備をした山や森を見てきました。岐阜県では、自伐林家型地域森林整備事業費補助金を進めるにあたって、現状と課題として、森林整備事業の国の補助事業は、施業の大規模化・集約化、森林経営計画の認定を要件としているなどなど、こうした要件に合致しない中小規模森林所有者についても、林業事業体とともに、地域における重要な森林整備の担い手であることから、こうした担い手を支援・確保する必要がある、国の補助対象とならず放置されている森林についても、公益的機能の回復と向上を図る必要性があると規定しておりました。
そこで、補助事業の目的は、国の補助対象にならない中小規模森林において、意欲ある中小規模森林所有者がみずから行う森林整備を支援し、担い手の確保および森林の公益的機能の回復を図ることとしておりました。
岐阜県では、自伐林家型地域森林整備事業費補助金を、平成29年度実績では980万円、平成30年度実績は1,600万円、昨年度は81件の補助金利用があり、個人では30名、団体50社、今年度は1,800万円を予算化し、予算が足りない状況になっているとお聞きをしました。来年度は、2,000万円を要求していくことを検討しているそうです。このことで得られる事業効果として、一部の小規模な森林整備が進むことで、周辺の森林所有者の森林整備への意欲・関心の高まりが期待できるとしております。
長野県の県単事業においても、この小規模な森林所有者が県の単独事業を活用することによって、現状では国の補助要件に合致しない小規模な森林所有者の森林管理に関わる金銭的負担が重いことから、森林管理への関わりを難しくしている。こういう方たちに対して、県単で、国庫補助対象とならない隙間を埋めるような小規模な間伐等の森林整備に使える、そういう県単事業をやる気を持って使ってもらえる、そういう事業として、せっかくの県単事業ですから、予算もあるようですから、こういうニーズのあるところに届くよう、積極的にPRをして、もっと制度が活用されるような取り組みをしてほしいと思います。この点について、再度、林務部長に伺います。
- 【林務部長】
-
小規模な森林整備を支援する制度の活用についてのお尋ねでございます。
小規模な森林整備は、森林所有者や地域住民の皆さまが事業主体となることが多く、制度の内容等が伝わりにくいため、十分な周知に努めることが必要だと考えております。従いまして、さらに制度の活用を進めるために市町村や林業事業体と連携して、説明会の開催や広報活動などを行い、きめ細かな分かりやすい周知に努めてまいります。
また森林づくり県民税を活用して、里山の整備や利活用を牽引できる人材を育成しておりまして、このような取り組みを通じて制度の活用が進むものと期待をしております。
今後も集約化等による林業と小規模な森林整備をあわせ、持続的な林業経営や適切な森林の管理に取り組んでまいる所存でございます。
- 【和田明子議員】
-
集約化して事業を進めていくこと、これも大変大事なことでありますし、林業県、この長野県の方向としてそれも進めていただくこととあせて、今本当に、森林経営管理法では、森林所有者の経営意欲の有無が問われることになってまいりました。小規模な森林所有者においても、県の事業の活用ができること、こういうことを通じて、意欲がある、こういう方々になっていただけるような支援を、今後ともよろしくお願いしたいと思います。
長野県は、それぞれ地域によって実情が異なります。間伐から枝打ち、竹林整備など、地域の実情を踏まえて多岐にわたって使える、より活用されることを期待しておりますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
3.社会福祉総合センターの廃止について
- 【和田明子議員】
-
次に、社会福祉総合センター条例を廃止する条例案が、今県議会に提案されました。社会福祉総合センター廃止に伴う諸課題について、質問をいたします。
昭和47年に社会福祉の増進に寄与することを目的として、県民の福祉の向上と生活・文化の振興に資するための場を提供するとともに、県民生活に関する各種の相談に応ずるため、社会福祉総合センターを長野市に設置して以来47年。建築物としては耐震性能の基準が満たされず、老朽化していることは承知していますが、社会福祉総合センターが社会福祉の増進に寄与することを目的として、これまで、子ども、高齢者、障害者など、幅広く福祉に携わる活動の拠点として果たしてきた役割、機能については、どう捉えておられるのか、健康福祉部長にお伺いいたします。
また、社会福祉総合センターには、長野県精神保健福祉センターが併設されているほか、県社会福祉協議会、県保育連盟、老人クラブ連合会などなど20近い団体が入居し、センターを拠点にして活動を継続してきました。
社会福祉総合センターが老朽化し、取り壊す方向ということは数年前から言われてきましたが、今回この廃止という条例が提案されるに当たっては、どのような説明が行われたのでしょうか。この点も、健康福祉部長にお聞きします。
センターに入居している多くの団体は、長野保健所に移ることになって、受け入れる保健所の改修もされていくということですが、県視覚障害者福祉協会、声の図書館などをやっている団体は一定のスペースが必要になることから、なかなか移転先が決まらないという状態であったと認識しています。こういうことについては、今どういう状況になっているのか、健康福祉部長にお伺いいたします。
- 【健康福祉部長】
-
社会福祉総合センターの廃止につきまして、3点ご質問いただきました。
まず、今まで果たしてきた機能をどのように捉えているかについてでございます。同センターに入居する県社会福祉協議会以下20団体が1カ所に集まることによりまして、県民生活に関するさまざまな相談や困りごとに連携して支援することができたと、また小規模な団体が多いことから、研修会の情報を広く共有したり、あるいは各種イベントを共同開催することなどにより、事業効果を高め、社会福祉の増進に寄与してきたものと考えております。
また、貸し会議室等備えることにより、財政的に厳しい福祉団体やボランティア団体の皆さんが安価に利用でき、さまざまな団体が会議、研修あるいは文化サークル等の活動に利用することにより、この場が情報交換、交流の場として非常に機能してきたものというふうに考えております。
次に団体への説明状況でございますが、県から入居する20団体の皆さまに対して、まず、建物の耐震強度が基準を満たさないため、現行センターの改修を行わず、建物を除却することをお伝えしました。そして、長野保健福祉事務所庁舎への移転を原則としますが、事務スペース以外の面積の必要な団体は別の移転場所の検討についても、情報提供等支援をいたしますというふうに申し上げております。また、移転に当たっての運送費については、県として支援を検討する旨お話をしてございます。今後につきましては、長野市内の県有施設等の動向を踏まえながら検討するなどの基本的方針を、説明させていただきました。
最後に、移転先の決まらない団体の活動拠点の確保についてでございます。20団体のうち移転先が決まっていない1団体につきましては、支援担当者を決めて、移転先の紹介や相談支援をこれまで行ってきております。県といたしましては、引き続き県の施設の中で適切な移転先がないか現在探しておりますが、団体の活動拠点の確保に向け、できる限りの支援をしてまいります。以上でございます。
- 【和田明子議員】
-
部長から、今まで社会福祉総合センターが、ただ箱物というだけでなく、十分なその役割を果たしてきたことを、そう捉えているというご答弁をいただきました。そして今回、建物を除却するということに際しても、移転先の情報提供などについても丁寧にやっていただいたというふうに思いますけれども、これからまだ移転先が決まらない1団体については、どういう方向になるのか私も心配をしているところでございます。例えば、その移転先が県有施設などではなく、民間施設に移転をせざるを得ないということも考えられるわけです。
精神障害者支援の絆の会、福祉喫茶「りんどう」も、継続は厳しいのではないかというような受け止めをしているということもお聞きをしておりますし、またポプラの会など精神障害者を支える人、支えられる人の居場所があることが大切という、そういう団体が移転先がはっきりと決まるということが大変大事でありますが、もし仮に移転先が民間施設にということになれば、これらの団体は財政基盤が大変弱いことは部長もご承知のとおりですから、家賃などが生じる民間施設への移転の場合には、家賃補助を支援していただきたいということを要望させていただきます。
最後に知事に伺います。県社会福祉総合センターは、耐震機能が基準を満たさず、また老朽化が著しく、多額の改修費用が必要となることから、令和2年3月31日をもって廃止しますと、廃止の条例案が今議会に提案されました。確かに築47年、老朽化していることは私も十分承知しております。建物の除却は仕方がないことだと思いますが、私が納得ができないのは、社会福祉総合センターが老朽化していても、その先、廃止の先が示されていないことです。
知事、この先はどのようにするのでしょうか。新たな活動拠点の設置も含めて検討していただけるのかどうか、知事にお伺いいたします。
- 【知事】
-
社会福祉総合センターの廃止に伴う入居されていた団体に対する支援、今後のあり方というご質問でございます。
健康福祉部長の方からもご答弁させていただいたように、私どもとしても、それらの団体と連携を取りながら、この移転先をどうするかといったようなことについて考えてきているところでございます。 県の施設に移転いただく18団体につきましては、従来と同様、使用料の減免等を行っていきたいというふうに思っておりますし、また移転先が決まっていない1団体につきましては、今後の活動に支障が生じないよう、移転先の確保等について団体の希望を十分お伺いをしながら、対応していきたいというふうに思っております。
その先の話につきましては、これはまだ各団体が移転していませんので、移転後の活動状況等も踏まえさせていただきながら、県として検討していきたいと考えております。以上です。
- 【和田明子議員】
-
実は、移転先がどうなるのか心配をしておりました視覚障害者福祉協会については、移転先が県リハビリテーションセンターに決まったというお話をお伺いいたしました。この移転先の県リハビリテーションセンターも昭和49年設置ですから、社会福祉総合センター、昭和47年に設置された建物とあまり変わらない、耐震はどうなのか、老朽化の対応はどうなのか、大変心配しているところでございます。
知事においては、これらの福祉に関連する施設には、福祉の心で行政の手を、光を差し伸べていただきたいと申し上げまして、私の質問の一切を終わります。