2020年2月定例会 両角友成議員一般質問
1.公立・公的病院の再編・統合の動きについて
- 【両角友成議員】
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皆さん、おはようございます。日本共産党県議団の両角友成です。私は発言通告に沿って一般質問を行います。
まず初めの質問事項は、公立・公的病院の再編・統合の動きについてであります。
厚生労働省は昨年9月26日、再編統合が必要として全国424病院の実名リストを公表しました。今年に入り1月17日、対象にした病院にデータ入力漏れがあったとして新たに約20病院を加え、集計にミスがあったとして7病院を除外。結果、再編統合が必要を440病院に修正しました。長野県内では15病院が公表され、病院関係者からは「うちの病院が、なくてもいい病院と言われているようだ」、住民からは、病床・ベッド削減につながると不安の声が上がっています。
私の地元中信地域でも2つの病院名が公表されました。その1つ、安曇野日赤病院。院長いわく、「うちの病院は、安曇野市を中心とした中核医療を担っていると自負しています。救急車搬入件数は、年間2,751件にのぼるんです。国からの評価は機械的。まず病院に打診するべきでは」と不満を表しています。
今回公表された病院は、2017年当時のデータを基にがん治療や救急医療の実績が少なかったり、車で20分以内に似た診療実績のある施設が存在する病院などをリストアップしたものとされ、病床の削減や診療所の集約への動きを加速させることが狙いです。リスト作成のために使ったデータは、レセプトが基もおかしな話です。
診療実績は地域の人口や年齢構成、その病院の置かれている地方の特性を抜きに画一的に論じられるものではありません。分析で診療実績が少ないなどと判断した病院を公表したと言いますが、地域ごとの実状と歴史を踏まえたものと言えるのでしょうか。
実状は、診療のニーズがあっても医師が確保できず患者を受け入れられない病院もあります。また、中山間地、豪雪寒冷地などの考慮もなされずに、車の移動時間を尺度にするのも長野県には無理があります。たとえ不採算病院でも、災害対応など重要な機能を担っています。最後の砦、今も拡大を続ける新型コロナウイルスに対応する隔離病棟を持つ感染症指定医療機関の約8割は公立・公的病院とのことです。画一な基準で公立・公的病院の再編統合を進めれば、いまでも医療提供体制が十分整っていない現状に置かれている地域医療の疲弊に一層拍車をかける危険があります。
全国知事会など地方3団体は、「地域住民の不信を招いている」とする意見書を国に提出しました。知事会のそれは15項目に及び、文面には病院名公表にあたりその理由など地域住民に説明責任を果たすこと、厚労省が再編・統合を進めるべき公立・公的医療機関の実名を公表したことは、むちゃくちゃ思い切った乱暴なやり方だと断じています。厚労省が昨年10月より開始した各地の説明会でも、地方創生に相反するという声が相次いでいます。
厚労省は機械的な対応はしない、強制はしないと繰り返しますが、公表した病院名リストの撤回を求める声には応じようとしていません。対象病院の再編統合について議論を本格化させ、本年9月までに結論を求める方針も変えていません。
先日の酒井議員の質問にもありました。期限を守らなければ基金配分にペナルティーを科すこの姿勢、とんでもないことです。安倍政権は団塊の世代全員が75歳以上になる2025年に向け、公的医療費を抑え込むための制度改悪を推進しています。地域医療の再編統合もそのひとつです。
昨年6月に閣議決定した「骨太の方針」では、民間病院も含め再編統合を図ることを強く求めています。しかし、住民にとって身近な病院や診療科がなくなることは深刻な事態であり、国の思惑通りに進展させてはなりません。厚労省が病院名公表という強硬手段に出たのは、焦りのあらわれといえます。県民の命と健康に責任を持つ県として、独法(独立行政法人)とはいえ県立の病院を持つ県です。今回一連の国の動きに対する県の対応と見解を健康福祉部長に伺います。
- 【土屋健康福祉部長】
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公立・公的病院の再編統合についてのお尋ねでございます。
少子高齢化、人口減少社会を迎える中で、将来にわたって安全・安心な地域社会を維持するため、持続可能な医療提供体制を構築していくこと、これは、それぞれの地域にとって避けては通れない課題であるというふうに認識してございます。であるからこそ、それは誰かに押し付けられてするというものではなく、地域の皆さまの合意によって成し遂げるべきものであるというふうに考えます。
県では医療の現場の皆さまに加えて、行政や住民の代表などで構成される地域医療構想調整会議を開催し、各種データを提供するなど活発な議論に向けた支援を行っております。また同会議は、公開で開催するとともに、会議資料や議事録など、その内容については速やかに公表し、広く周知するよう努めているところでございます。今後も、地域の皆さまの意向を反映させた医療提供体制が構築できるよう努めてまいりたいというふうに考えてございます。
- 【両角友成議員】
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知事に伺います。日本医師会横倉義武会長が、厚生労働省が昨年、再編・統合の議論が必要とする公立病院などの実名を公表したことを、「あんな乱暴なことをしてはいけない。病床減少は人口が減れば当然起こる。計画的にどんどん減らせということがナンセンス」と厳しく批判しています。
今、県がやるべきは、公立・公的病院の果たしている役割を再評価し、維持発展させることではないでしょうか。そのためには、まず厚生労働省の440病院の再編統合リストの撤回を求めることでは。知事におかれては長野県内の地域医療を、病院を守る立場で、国に対してまずは白紙にとリスト撤回を求めていただきたいがいかがでしょうか。加えて、地域医療担当部長を置いて進めようとする病床機能の再編・統合などは、強引に進める国と同じような手法を取らないでいただきたいがいかがでしょうか。知事の見解を伺います。
- 【阿部知事】
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地域医療構想の推進にあたっての国の進め方、私もこの場でも何度も答弁しているようにいささかの拙速感もあって、地域の実情をしっかり踏まえたものにしてもらいたいというふうに思っています。
昨年9月、突然、再検証の対象医療機関が公表された際には、県内、あるいは国内のいろいろなところで大きな不安が起こったわけであります。そういう意味で厚生労働省に対しては、地域の実情をしっかり踏まえた対応ということを我々からもお願いをしてきているところであります。
そうした中で、今年の1月に県に対しては再検証、あるいは診療実績データの提供が行われています。この医療機関の今回提供されているものは診療実績データ等が示されているものでありまして、確認をしてもらいたいと、我々に対して確認してもらいたいと、修正が必要なら修正の内容と理由を報告してもらいたいという内容になっておりますので、このことについては、撤回をする・しないというようなものではなくて、我々の方からしっかり意見を言っていかなきゃいけないものというふうに思っております。
地域医療構想、あるいは持続可能な医療提供体制を構築していく上では、我々としては丁寧な対話を通じて、多くの皆さんの理解と協力を得られる形で進めていきたいというふうに考えております。以上です。
2.教職員の長時間労働の是正について
- 【両角友成議員】
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次の質問事項は、教職員の長時間労働の是正についてであります。
国は、公立学校の教員に1年単位の変形労働時間制を導入可能とする法案、改正教育職員給与特別措置法を強行成立させました。昨年12月4日です。「過労死が増える」「先生を続けられなくなる」など強い反対の声を押し切っての導入です。これを受け、今年は各都道府県・政令市で制度導入の是非が否応なしに検討される年になるのではと考えます。
今回の制度は、教員や教育行政から要望があったわけではありません。言い出したのは国側であります。その国が認めるように、教員の長時間労働は依然として極めて深刻で、早急に手を打つ必要があります。最近では、教員志望者が減り始めています。先日開催の「こんにちは県議会です」でも、大学生から今のままでは特に小学校教員のなり手がいなくなるの意見が出されました。
こんな状況でも国は潤沢に予算を投入するつもりはない、そこでお金のかからない夏休みのまとめ取りを言い出したわけです。繁忙期に1日10時間まで可能とし、閑散期と合わせて平均で1日8時間にする。学期中を繁忙期にすること自体、教員の働き方をさらにひどくします。
例えば現在、定時が午後4時45分なら、それが6時、7時になります。これでは午後4時45分終了をめどに設定されてきた会議が6時、7時まで可能となり、教員はそれから次の日の授業準備などを行うことになりかねません。まさに長時間労働を固定化するものです。人間の心身は、繁忙期の疲労を閑散期で回復できるようにはなっていません。この制度は、人間の生理に合った1日8時間労働の原則を破るものです。日々の労働時間削減が課題なのに、これでは問題が解決するわけがありません。
学校現場は深刻です。休憩時間は45分あるが現実的には取れない。5分ぐらいで昼食を食べ、児童会の打ち合わせの時も。ある養護教諭は朝6時30分に出勤し23時30分に退勤の時も。子育て中の教員はもっと大変で土日出勤している先生も。新人の教員を見ていると授業の準備に時間をかけられているか心配とのこと。子どもの日記を見てコメントを書いてあげるのが本来の仕事だと思う、日記で子ども一人ひとりとつながっていると感じる、しかしそれができないなどなど。本来、長時間労働の是正は教員の定数増、行政研修の削減、学校閉庁日の実施など抜本的な対策が必要だと考えます。この制度導入の動きに対する県教育委員会の見解を教育長に伺います。
- 【原山教育長】
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変形労働時間制導入に対する見解についてというお尋ねでございます。
国は、この制度導入の目的を夏休み等における休日のまとめ取りを可能とするためというふうにしております。一方で、昨年の中央教育審議会の答申でも、1年単位の変形労働時間制を導入することで、学期中の勤務が現在よりもさらに長時間化しては本末転倒であることが指摘されております。
そのため国会の法案審議の段階でも、制度導入にあたって今後定める省令や指針の中で勤務時間の上限の遵守をはじめとして、長時間勤務を抑制するさまざまな条件を課していく旨の答弁がなされているものと承知しております。こうした条件をクリアして初めて制度導入が可能となるものでありまして、学校における働き方改革を着実に進めることが必要だというふうに感じております。
- 【両角友成議員】
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1日平均12時間近く働いている教員の所定勤務時間を、どんな理由があっても、どんな理由があっても長くすることは決してやってはならないことだと申し上げます。その上で、仮に導入しようとしても、「勤務時間の上限に関するガイドライン」、残業月45時間、年360時間以下が守られなければ導入は不可とも言われています。
文科省の2016年度の教員勤務実態調査を見ると、残業時間をオーバーしている教員は8割を超えています。長野県でも2019年6月実施の県教組勤務実態調査では78時間40分と、過労死ラインに迫っています。県の義務教育課発表の昨年12月の数値でも47時間42分です。制度は適用できないのではないでしょうか。既に市町村教育長からの反対の声も上がっています。こんな状況下でも、県教育委員会として国の方針どおり制度導入を目指すのか、教育長に伺います。
- 【原山教育長】
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制度導入を目指すのかというお尋ねであります。
お答えしましたとおり、教育職員の長時間勤務が是正されて初めて制度導入が可能であるというふうに国も述べているところであります。県教育委員会としては、学校の働き方改革のために既にさまざまな施策を実施しているところでありますけれども、喫緊の課題であるという認識の下、さらに取組を進めていくことが必要だというふうに考えております。
今後示される予定の省令や指針の内容も注視しながら、制度導入の適否について慎重に検討してまいりたいというふうに考えております。
- 【両角友成議員】
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この問題は大変重要な問題ですので、ころを見てまた質問をいたしたいと思います。未来を、将来を託す子どもたちを教え育てる、本来教職は夢のある仕事ではないでしょうか。時間が、ゆとりが、学校現場こそ必要です。教員をこれ以上長時間働かせることのないよう、逆にゆとりの手立てを申し上げ私の質問を終わります。ありがとうございました。